北陸地質研 究所報告
HGIReport No.3 0ct.1993 p.95‑106
日本海の発生について
藤 田 至 則 *
( }
1theGenerationoftheJapanSeaYukinoriFUJITA*
(1993年7月14日受理) (Received14,July,1993)
Abastract
Thelarge‑scalecollapsebasinandtheJapanSeabasinthatwereformedduringthe Mesozoic‑Cenozoicerasaresimilarintheprocessesoftheirgenerationanddevelopment.From suchastandpoint,thewriterhasdiscussedthisproblem manytimes.Ⅰnthepresentarticle,the writermentionsthepointsthathavenotbeensufficientlydiscussedinthepreviouspapers.
Heconsiders,inparticular,thatthecontinentalcrustwhichlaterbecamethestageofthe greatcollapsebasinandtheJapanSeabasinhadsufferedupheavalanddenudationinthe Proterozoicera,followedbydenudationduetoupheavalintIhePaleozoiceratoo,andsimilar processescontinueddowntotheMesozoicera.Thecollapseinthiscasestartedwiththewest sideandadvancedeastward,SothatthedurationofupheavaLdenudationwaslongerontheeast side.Accordingly,therateofthinningofthecrustwashigherinthecollapsebasinontheeast side.ThecrustoftheJapanSeaisespeciallythin,indicatingthattheeasternpartoftheJapan Seacametohavethethinnestcrust.
まえが さ
太平洋周縁の大陸や 島弧 な どには,幅数千kmにわたる,はげ しい火成活動 を伴 う中生代 〜新生代 のアルプス変動帯 に属す る環太平洋変動帯が分布す る (藤 田,1979,1980,1982,1986;王 ・李, 1985).
東ア ジアの環太平洋変動帯 には, 日本列 島にほぼ平行す る北北東 〜南南西方向の4列程 の大型の
ふ じた ・ゆ きの り
自宅 :〒214川崎市 多摩 区長尾6‑19‑8
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接 曲性 〜陥没性の堆積盆地群 がみ られ る (王 ・李,1985)が, その うちの最東部のそれに 日本海深 海部 と沖縄 トラフの盆地群が含 まれてい る.
東アジアには,環太平洋変動帯 と同時に発生 した, ヒマ ラヤか ら天 山にかけて東西方向のテ‑チ ス変動帯が分布す る (王 ・李,1985;藤 田,1986).
東 ア ジ ア環 太平 洋 変 動帯 にお け る損 曲性 〜 陥 没性 堆積 盆 地 と内海 深海 盆 地 の発 生 につ いて 大型の撞 曲型〜陥没型堆積盆地 と内海性深海堆積盆地の配列, それ らと小型の火成岩体や小型陥 没盆地の分布,操曲型 〜陥没型盆地 の発生順序, 日本海深海盆地の発生 についてのべ る.
1.大型の境 曲型〜陥没型盆地 と内海性深海盆地の配列 について
東アジアの環太平洋変動帯 には,北北東 一南南西方向のほぼ4列 の大型堆積盆地群 な らびに内海 型深海盆地群が配列 している.
一番西側がオル ドス‑四川の撞 曲型堆積盆地の系列, その東隣 りが松遼 一華北の陥没型堆積盆地 系列 であ る.
また, その東隣 りが,蘇北陥没型堆積盆地が 中心で,北方の沿海州西隣 りの堆積盆地,南方の中 国南西部 の小型の陥没盆地群 な どが この系列 に属 している.
一番東側の列 は, 日本海の深海部 の陥没盆地 と,沖縄 トラフの深海盆地の系列が これに属 してい る. なお, 中国の南東部の沖合か ら海南島北東方にかけて分布す る海底の陥没盆地が分布 している が, これは, この第3列 E]の盆地群 の一つである可能性がある.
2.火 山性〜迷入性の小型陥没群 と松遼陥没盆地 ・日本海深海盆地の相関悼
大型の撹 曲ない し陥没盆地の, ときとして内部,大部分 はその外側 に, はげ しい中性,酸性,そ して塩基性 の火 山活動 と, その後の中性,酸性,お よび塩基性 の迷入活動が生 じる場所がある.図 1には, こうした地域 を示 してある.
これ らの うち,火 山性 〜送入性 の火成活動が集 中 しているのは,松遼陥没盆地の周辺, 日本海の 周辺である.ついで,大型の蘇北陥没盆地 と, 中国南西部 の黄海 ・南海 ぞいの地帯の小型陥没盆地 に もみ ることがで きる.
こうした地帯の火 山活動の全貌 はIgnatyev,etal.(1992)に詳 しい.とくに中国の南西部の一部に は, 日本列 島において,筆者や筆者 ほかが,かねてか ら主張 して きた,径20km以下 の隆起 一陥没一 火 山活動 で生 じる地質形態 と似 ているものが 多 く分布 している といわれている*.
日本海深海部の まわ りでは, 日本列 島の 日本海側,朝鮮半 島東海岸一帯, そ して,沿海州 な どに は, 白亜紀 〜鮮新世 にかけて,酸性 ・中性 ・塩基性の火 山活動 を伴 う小型陥没盆地や小型貫入岩が 広 く分布 している. こ うした相 関性 は,上記に指摘 した関係 と同 じとみ るこ とがで きる (図1).
また,図1に も示 しておいたが, 日本海深海部 に白亜紀の閃緑岩体 が10ヶ所程 も現われているこ と, 中新世 〜鮮新世 の火 山岩体 が30ヶ所以上 も分布 しているこ とは注 目すべ き現象である (細野, 1992の資料). とい うこ とは,白亜紀や新第三紀に, 日本海の周辺部 のはげ しい火成活動 は,陥没盆 地 内に も局所的なが ら進行 したこ とを意味 しているか らであ る.
3.大型の損曲型〜陥没型堆穂盆地な らびに日本海深海盆地の形成慣序
* 中国科学院大地構造研 究所 での聴 き取 りに よる.
図 1 東
前記の北北東 〜南南西方向の4列の大型の摸 曲型〜陥没型堆積盆の うち,最西部 のオル ドスー四 川系列の堆積盆地群 は, ご く一部 に陥没が現 われ るだけで,主 として接 曲型である.
なぜ陥没でな く,操 曲型になったかにつ いては,すでに筆者は次の ように説明 してい る (藤 田, 1986).す なわち,古生代 の名残 りの二畳紀の浅海域が三畳紀 中期 まで残 された本地域 の地下に,マ ン トル溶融体 のつ き上 げが生 じたため,先二畳紀 な どの固い岩盤 は陥没 した ものの,表層の軟弱な 中〜下部三畳系や上部二畳系 な どは摸 曲 しつつお ちこみ,上記の擁 曲盆地が出現 した とい うことで あ る.四川堆積盆地 の東西断面 に よるデボン紀 〜三畳紀 に至 る地質構造 を復 元 した来 夏編 の論集 (1983)には, この見方が よ く示 されてい る. ちなみに, そこに指摘 されてい る, 四川堆積盆地の 西側 の陥没は, とくに,西側基盤のつ き上 げが大 きか ったことを意味す るのであろ う. さらに,班 川盆地全体 が断裂 一陥没で性格づ け られている とい うこ とが同論集で指摘 されてい るが, その解釈 は正 しい と思 われ る. こうした構造が何 回 もつ き上げ られつつ活動 し,今 日の高地熟流地帯の完成 をうなが し, それが,石油 ・石油ガス資源形成の要 因になっていると考 え られ る. こうした大型陥 没盆地の底が,盆地発生期 に断裂 し,ブ ロック化す るのが,環太平洋変動帯の大型堆積盆地や 内海 の深海部 の特徴 といって よいであろ う.
つ ぎに,西側か ら2列 目の,松遼 一華北の陥没性の堆積盆地群 につ いてみ ると,松遼陥没盆地の 場合 は,二畳紀 までの台地性 の海域が二畳紀前半期 に消滅 し, ジュラ紀 に陥没がは じまっている.
華北陥没盆地 にあっては,二畳紀末に台地性海域が姿 を消 し,大型湖沼盆地 となって三畳紀 まで残 っ たが,陥没は ジュラ紀か らは じまっている.
日本海の深海部 の陥没*がいつ発生 したかにつ いては,次項の火成活動の状況か ら推定す るこ とが で きるが,上記の ような,西側2列 の操曲〜陥没盆地群 の発生状況か らす ると,西側 の列 ほ ど早 い 年代 に発生 しているこ とか らして,第3列 としての,西 シベ リアの沿海州 内側 の "陥没盆地"や 中 国東部の蘇北陥没盆地, そ して中国南東部 の小 陥没群 な どや,第4列 としての 日本海や沖縄 トラフ (木村,1983)な どの陥没は, ジュラ紀 ない しは, それ よ りおそい白亜紀 に発生 した可能性がある.
ちなみに,筆者 (藤 田,1987b)は, 日本海深海部の発生 を白亜紀後期 と規定 した.
4.某アジア環太平洋変動帯の火成活動か らみた境曲型一陥没型堆積盆地 と日本海深海盆地の発生 図2に表現 されてい るように, ジュラ紀, 白亜紀後期, そ して古第三紀 にかけての東 アジア環太 平洋変動帯 内におけ る活動域の中心部 は,次第に,東方‑収赦 しつつ, さいごに 日本海‑集 中 して い くとい う傾 向があ る (藤 田,1979;藤 田 ・雁沢,1982;藤 田,1990).つ ま り,活動域が東方‑
移 るとい うこ とでな く,互 いに活動域の一部がつねに重 な り合 いつつ, その中心部が東‑移動す る とい うのが真相 であ る. そ して,図2に示 したように,少 な くとも白亜紀後期以後,古第三紀 まで に,火成活動が繰 り返 し活動 したのは 日本海 とその縁辺部 だけである.
また, この図には示 していないが,新第三紀の 中新世 になると,大陸側 で も日本列 島側 で も,か っての 白亜紀におけ る火成活動域 に までその活動域が拡大 ・復活 し, それがその まま第四紀に引 き つがれている. したが って, 日本海域 は, 白亜紀後期 以後,第四紀に至 るまで,火成活動が連続 し て進行 した地帯 である.
この ような事実 は, 日本海の陥没が, 白亜紀以後の火成活動 をもた らした地球深部か らの何 らか
* 日本海が陥没で生 じたこ とを, その周辺部の直線的な地形か ら主張 したのは,茂木 ・川上 (1966)であった. この 見方は正 しい と考 える.
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鞠ジュラ紀後期99
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図2東アジアにおける中生代 中期〜古第三紀の火成岩の分布略図細破線:日本海の深海部.ジュラ紀の火成岩は 北の変動 に支配 されて生 じたこ とを裏づ け るもの と考 える. この場合,火成活動 をもた らした何 らか の変動 の内容 に関 して,図3に示 したように考 えるこ とがで きる.
まず, ジュラ紀のマ グマだ ま りは,松・遼陥没盆地の周辺か ら, その東隣 りの蘇北陥没盆地の系列 下 に まで広 く発生 し, 日本海の西隣 りの朝鮮半島の付近 にまで発生 したが, 日本海域 には群生 しな か った とみ られ る (図3の1参照).
つ いで, 白亜紀 になると,松遼陥没盆地 だけでな く,東隣 りの蘇北系列の陥没盆地系 は勿論,最 東翼 の 日本海の周辺部 の地殻 に までマ グマだ ま りが群生 し,火成活動が生 じた(図3の2参照). 冒 本列 島の広 島変動 はその一つの現 われであろ う.
つ ぎの古第三紀 になる と,図3の3か らわか るように, 日本海域 を中心 とした地帯にだけ,マ グ マだ ま りが群生 したのである.
この ように, 日本海深海盆地が, こうしたマ グマだ ま r)群 の集 中発生 した白亜紀 〜古第三紀 を中 心に発生 した可能性 につ いては,すでに指摘ずみである (藤 田 ・雁沢,1982).
ただ し, こうした群生マ グマだ ま りの発生が,陥没の引金 になった とは考 えられない.む しろ, このマ グマだ ま r)をもた らした,マ ン トル上部 に生 じた溶融体 の膨張に よる地殻の隆起 一断裂が生 じ,続いて上記の火成活動が進行 しつつ, 日本海の深海盆地が陥没 したのではあるまいか.
なお,す でに指摘 したが,大陸側の巨大陥没盆地の付近 の構造史か らす ると,隆起 は1回だけで な く, 当然 なが ら,隆起 ・陥没が何 回 も進行 した とみ られ る (藤 田,1987a,b).
上記の, 日本海 を中心 とす る顕著 な火成活動 の2回の活動 も,陥没の2回のフェー ズの反映であ ろ う. しか し, 日本海 を中心 とす る地域や, 日本海 内部 に発生 した中新世 と鮮新世 の少 な くとも2 回の新 しい火成活動があ るので,新第三紀 に も, 日本海は最低2回の隆起 ・陥没が生 じた と推定す ることがで きる (藤 田,1987a,b).
以上 の こ とをま とめ る と,東ア ジアの環太平洋変動帯 にあっては,三畳紀末に, オル ドス ・四川 の系列 の摸 曲型盆地群 の下方のマ ン トルに溶融体 が生 じ, それが地殻 をつ き上げて表層が摸 曲 した 陥没盆地群 が生 じた とみ るこ とがで きる.溶融体 の活動度が小 さか ったために,表層‑マ グマ活動 を及ぼすほ どのマ グマだ ま r)や深部断裂群 をもた らす こ とが なか った とみ られ る.
ジュラ紀 になって,松遼 ・華北の系列 と, その東側 の蘇北系列の陥没盆地の直下 に,、マ ン トル溶 融体が生 じ,地殻が隆起 して,新 しい2列 の巨大陥没盆地群が生 じた. これにやや先立 って表層の はげ しい火成活動が,松遼陥没盆地,華北 と蘇北 と, 中国南西部 な どの陥没盆地の周辺 に進行 した のであ る.
白亜紀 になると,上記の ジュラ紀におけ る溶融体 は引 きつづ き活動 しているが,全 く新 し く, 日 本海 とその周辺部 に溶融体が活動 をは じめた. そ して引 きつづ いて古第三紀 になると, 日本海 とそ の周辺部 だけに,溶融体 が活動 したのである.
この ようなことか ら, 日本海の深海部の陥没は,少 な くとも白亜紀 と古第三紀 におけ るマ ン トル 溶融体 の2回の膨張に よるつ き上 げが契機 となって発生 した と考 え られ る.沿海州 の沿岸 では 日本 海深部 の縁辺に よって陸側 の 白亜紀後期 の火砕岩層が切 られているので, 日本海の陥没がか りに白 亜紀 に生 じた として も, それだけで深海部が生 じたのではな く,古第三紀に も, また,前記の よう
系列松遼 系列日本海 日本列島
第四紀〜鮮新世5 中新世
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32
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白亜紀
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に新 第三紀に も,何 回に もわたって陥没が進行 した とい うのが真相 と思われ る. い うまで もな く, 鮮新世以後の海進 (藤 田,1960;星野,1962,1973)も存在 した と考 え られ る.
某 ア ジ アの 環 太 平 洋 変 動 帯 の 大型 換 曲型 〜 陥 没 型 の 堆 積 盆 地 と 日本 海 深 海 盆 地 の 削 剣 と薄 化
日本海の深海部 の地殻が海洋型であることを説明す る仮説の一つに,隆起 ・削剥説 とい う見方が 知 られている.筆者 もこの仮説 を支持 している. この ことにつ いてはす でにのべ た. ここでは, そ の仮説のあ らましと, その後に発想 した若干の新見解 につ いてのべ る.
1.隆起 一別剥説 について
日本海の深海部 の地殻が,かつて陸上 で継続 した隆起 のために薄化 したの ち, アイソスタシイの 不均衡 をとりもどす ために沈降 して今 日の ような状態 となった とす る仮 説は,年来(1967),Gorai
(1968)に よって提唱 された.筆者 (藤 田,1972,1973)も,Minato (1972)や 湊 (1973)もこの見 解 を支持 した.湊 は,先 カンブ リア代か ら古第三紀 までの 日本海深海底の隆起 一削刺 を示す古地理 図 を画いてそれ を説明 した.
筆者は, 日本海の深海部の広大 な地帯の削剥物質が,周辺地域 の海域 に収容 されつ くされ るこ と に若干の疑問 をもち,隆起 一削剥が基本 と考 えなが らも,隆起過程 で,地殻下方がマ ン トル と交互 作用 をして破壊 された可能性 も考 えた. こ うした見方は,ベ ロウソフ とルーデ イツチ (1961)の大 洋化 説 (塩基性化説)の影響 をうけた見方であった.
牛来 (1982)は, その後,隆起 ・削剥説 を取 り下げ,地球膨張説に基づ く,隆起 による地殻の引 張裂か説 を考 えるようになった.
その後,筆者は, 日本海の背後の大陸に配列す る中生代 〜新生代 に発生 した大型の撞曲型〜陥没 型の堆積盆地が, 日本海の深海盆地 と,性格が似 ているこ とか ら, それ らを比較 して, 日本海の発 生過程 を推定 したこ とにつ いては,前述 した.
その類似点 とは,G):両者 とも, 多角形の断裂 で囲 まれた巨大陥没盆地 であ るこ と,② :両者 と も周辺地帯下の地殻 に くらべ ると盆地下の地殻が薄 いこと,③ :両者 とも地熱流量が,盆地の まわ りの地域 よ りも高いこ とな どである.
この ように両者が 多角形の陥没盆地 であ るこ とは,筆者 たち (藤 田ほか,1968)がのべ たように, マ ン トル側か らの隆起 に よって生 じた陥没であることを意味 してい る. この こ とは,前記の牛未が 主張 した 日本海深海部 の隆起 一削剥説 と整合的である.
この場合,大陸型の大型接曲型〜陥没型堆積盆地下の地殻が大陸型であ るのに対 し', 日本海深海 部下方の地殻が海洋型 ない し大陸一海洋 中間型地殻であるとい うちがいは,後者の地殻の上部の削 別 で説明で きる と,筆者たちが考 えているこ とは周知 である.
ところで,筆者 たちの主張す る隆起 ・削剥説が成立す るためには,次にのべ る2つの問題 に対す る正 当な論理がなければな らない.第1に,大陸の隆起 ・削剥が, いつ頃行 われたかにつ いて どの ように考 えるか とい うこ とであ り,第2には,隆起過程 で削剥 された物質が どこ‑供給 され, どの ような ところで安定 した地層へ転化 したか とい う問題 である.
2.隆起 一別剣の年代 につ いて
湊 (1973)は, 日本海の深海部 は,先 カンブ リア代 か ら古第三紀 まで陸地 であ り,長 い年代 にわ たって, その地帯が削剥 され, 削刺 され た砕屑物 は, 日本列 島 を中心 とした当時の海盆 に堆積 した と考 えた.
筆 者 もほぼ この見方 に立 ってい るが, こ うした状 態 を, 日本海付近 だけでな く, 日本海深海盆地 と同 じ経過 を辿 った と考 え られ る大陸側 の,大型榛 曲〜陥没盆地一帯 におけ る構造発達 史 と日本海 付近 の それ とを比較 ・検討す るこ とに よって,次 にのべ るよ うな,基盤の隆起 ・削刺 に よる大陸地 殻の薄化 の過程 を検討 した.
原生代後半の隆起 と侵食 :筆 者 は,東 ア ジアの大型の摸 曲型 〜陥没型の堆積盆地付近 は,先 カン ブ リア代後期 の19億年前〜6億年前の,長 い年代 にわたって,陸化 していた といわれ るので,その間 に地殻 は削刺 をうけ続けていたため に,地殻 の厚 さは, まわ りのそれ よ り薄化 した と推定 し(藤 田, 1987b), 日本海深海部 も, 多分,大陸側 の大型堆積盆地 と同 じよ うに, この年代 に侵 食 をうけた も の と推定 したのであ る.
これ らの大型の堆積盆地や 日本海 の深海部 の陥没盆地 をきめ た断裂 の方向は, ほぼ,北北東 〜南 南西 と,東西性 の2つ を認め るこ とが で きる. この2つ の方向は,先 カンブ リア代 に支 配的 であっ た,北北東 一南南西,北北西 一南南東,お よび東西性 の断裂群 (Moody,1966;コスイギン,1987)の うちの2方向の ものに相 当す る と推定 で きる*.
こ うした2方向の断裂 の発生 の要 因 としては,Meyerhoffetal.(1992)が主張す るように,19 億年前 には じまる地球 の収縮 のため,地球規模 の圧縮(MacDonald,1963)が考 え られ る*. そ して, こ うした圧縮 の過程 でいち じるしい撞 曲 (隆起 と沈降)が生 じつつ断裂 が生 じたため,隆起部 の削 剥が進 んだ といった可能性 も期待 で きよ う.以上が先 カンブ リア代 におけ る大陸地殻薄化 の可能性 であ る.
古生代の隆起 と侵食 :まず, オル ドスー四川系列 の堆積盆地群 には,古生代前期 の カンブ リア紀
〜デ ボン紀初期 と,古生代末 の二畳紀 に, 台地型の海域 におおわれ, この系列 の東隣 りの華北 な ど の堆積盆地 に も, カンブ リア紀 〜デボン紀初期や石炭紀初期,二畳紀 な どに台地 型の海進が あった が, その間の年代 にはそれ ぞれ,隆起期 (海退期 )が あった. と くに, ここで注 目すべ きこ とは, た とえ, こ うした海進が生 じた年代 にあって も, 中生代 以後 に生 じた大陸の堆積盆地 の分布域 は, つねに, まわ りの地域 よ りも,堆積環境 は よ り浅 い環境 にあ り,堆積層の層厚 は,つ ねに, まわ り の地域 よ りも薄か った とい うこ とであ る.
なお, よ り日本海 に近 い,松遼 陥没盆地 の場合 は,古生代 を通 じて, まわ りに台地型の海進が知 られていい るに も拘 らず,松遼 陥没盆地 を中心 とす る地域 は,つねに隆起地域 であった とされてい る (中国地質科学院地質研究所 ・武漢地質学院,1985).
日本海の深海盆地 には,Choi(1984)の主張 と,細野 (1992)の提示 した地質 図 (Bersenevand Krasny,1984,に よる)に よる見方か らすれば,古生代未 に一時的 な海進が あったほか は,漢 (1973) がのべ たよ うに,古生代 には, ほ とん ど隆起域 であった とみて よいであろ う.
この ように,古生代 に も,大陸の大型堆積盆地 と日本海 の深海盆地付近 の地殻 は削剥 ・薄化 が周
* じつ はMoody(1966)は,他 に もいろいろな方向が ある としてお り,た とえば,南北方向のそれ もある としてい る.
したが って地球 の収縮 だけでな く,19億年以前の地球 の膨張期 (MacDonald,1963)に生 じた もの もあ るのか もし れ ない.
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辺部 よ り進んでいた とみ られ る.
中生代〜舌第三紀の隆起 :すでにのべ たように, 中国大陸か ら日本海にかけて,北北東 一南南西 方向に配列す る4列 の擁 曲〜陥没盆地群 の うち,西か ら2列 目の松遼陥没盆地 な どが ジュラ紀 に発 生 し,3列 目の盆地 と4列 目の 日本海深海盆地が 白亜紀か ら古第三紀 にかけて発生 した. この よう なことか ら考 えると, 日本海の深海域 は,三畳紀 〜ジュラ紀 にはまだ隆起 一削剥がつづ いていたこ とになるのであって, 中生代 の中期 までは, 日本海域の深海部 の隆起 一削剥が進行 していて,地殻 は薄化 し続けていた と推定 で きるのである.これに地殻の下方か らの変質が加 わったか もしれない.
この ように,日本海の深海部 の地殻が,大陸地域 の挨 曲〜陥没性の巨大堆積盆地下の地殻 よ りも, とくに薄化がいち じるしいのは,非常 に長 い年代 にわた る隆起 〜削除が継続 したため と考 えられ る のである.
3.日本海の深海盆地の変動
日本海の深海盆地が どんな基盤上 に どんな変動 に よって発生 したか とい うこ とは, 日本海の深海 部 の発生史に とって重要 である. また, どんな形式でそれが発生 したか とい うこ とも, それに劣 ら ず重要 であ る.
筆者は, 日本海の深海部 は,古い基盤上 に白亜紀 に生 じた陥没に よって発生 しは じめた と推定 し た (藤 田,1987a,1987b).そ して,その基盤は先 カンブ リア代 の原生代後期 か らジュラ紀 までの間, 隆起 一削刺 をこ うむ っていた とのべ た. ただ し,今 日の 日本海の大和唯や,沿海州 の沿岸 な どに, 古生代末の海成 らしい二畳系が分布 しているので,Choi(1984)がのべ たように深海部の一部 に も 古生代末期 の海成層が分布 していたのか もしれない.
こ うしたことは, 日本海の深海部が,古生代未の台地 に生 じたこ とを意味す る.星野(1991)が, 日本海は,新規の台地,つ ま りパ リスカンの台地 に発生 した とのべ ているが, その通 りである*.
図1に も示 したように, 日本海の深海陥没盆地 には,10ヶ所 ほ どの 白亜紀の貫入岩 と,30ヶ所ほ どの中新 〜鮮新世 の貫入岩が分布 している. このほかに,陥没盆地 の周辺の断裂 した とみ られ る部 分 に接 した陸側 に も, 同 じ年代 の火成岩が 多 く分布 してい る. しか も, それ らが しば しば深海底の
中央部 な どに線状 に分布 している場合がある.
こうしたこ とは,深海底部が最初 に陥没 した と推定 した白亜紀 だけでな く, その後 に くり返 して 生 じた中新世や鮮新世 な どの変動期 において も,深海底部が断裂 し,火成活動が生 じたこ とを示 し ている.
したが って, 日本海の深海底部 は,星野 (1991)が主張す るように, 白亜紀以前の台地が,海進 によって静かに深海化 したのではな くて, いわゆ る白亜紀以前の台地がはげ しく変動 し‑いわゆる 地窪の ような再活動 した台地 とな り‑,深海底がつ き上げ られて断裂 し, それに伴 って火成活動の 変動場 と化 しつつ陥没 した と考 え られ る. いわゆ る深海底 は, 白亜紀に も, 多分,古第三紀 に も, そ して, 中新世 〜鮮新世 に も, はげ し く隆起 一陥没 し,断裂 ぞいに多量の火成岩類が貫入 し,火砕 岩 を放 出 したのであ る.今 日の深海底が高熱流地帯 であるこ ともまた,深海底が第四紀 に まで,活 動的であったこ とを示す ものである. い うまで もな く,すでにのべ たように, この中生代 以後の変 動以前の先 カンブ リア代 か らの長い特殊 な条件下 に進行 した過程が, 中生代以後の変動過程 に大 き
*星 野(1991)は,筆 者が, グ リンタフ時代 に発生 した と主張 して い るの は まちが いであ る と批判 してい るが, それは 筆者 の古 い文 献 だけ をみての批 判であって,本文 でのべ た筆者 の文献 (藤 田,1987a,1987b)をみて いないための
な役割 を果 た した と思われ る. しか し, それはあ くまで発生条件の一つ と考 えるべ きであ り,星野 の指摘す る海水準の絶対上昇 も同 じく補助的条件 と考 えてそれ らを認め なければな らない.
いずれにせ よ, こうしたことを実証す るためには, 内陸盆の基底 までボー リングをおろ してi そ の発生年代 と, その基底層の層相 と地質構造 を復元す る必要がある.
最近, 日本海盆や大和海盆 のボー リングで, 中新世初期 の浅海層 までの探査 に成功 しているが, さらにその下位 に, どのよ うな年代 の地層が存在す るか,つ ま り基盤の地層や岩石 を確定す るこ と が, 日本海の発生問題 に関す る当面の決め手になるであろ う.
文 献
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