Ⅹ症候群 の 心予 備 能に関する臨床的検 討
金 沢 大 学 医学 部 内科 学 第二講 座 ( 主 任: 竹田亮 祐 教 授)
由 雄 裕 之
運 動 誘 発性の狭心症 様 症 状を有し b電 図上 S T 部 分の低 下を認め るにもか か わ らず, 冠動 脈 造 影上 ほ異 常を認め ない症 候 軋 Ⅹ症 侯群における 心予 備 能を明ら かにする た め, 正常 対照 者6名, 異 型 狭心症愚 者5名お よ び Ⅹ症 候 群 患 者5 名を対象 と し て ト冠動 脈 造 影 時に冠 循 環 時 間を測 定し′ 冠血管 予 備 能を検 討した・ ま た本 症の運 動 負荷 時の左 室 予 備 能を明ら か にする た め・ 正常 対 照 者1 3名お よ び Ⅹ症 候群 患 者1 3名を対 象と し て一 携 帯 型 持 続心機 能モ ニタ ー を用い て連 続 的 経 時 的に運 動 負 荷 時
の左童 顔 能を検 討し た・ さ らに アデノ シン受 容 体 遮 断薬であるア ミ ノ フィリンが左 室予 備 能に与え る影 響を 明 ら かにする た め・ Ⅹ症 候 群 患 者1 1名を対 象と して, ア ミ ノ フィ リン投 与前 後における運 動 負 荷時の左 重 機 能を検 討した. 冠 予備 能に関 する 検討では, Ⅹ症候 群におい て, 第一 に ア セ チ ル コ リン投 与によ る導 管血管の反 応は 正常であり, 第二 に アセチ ルコ リン投 与に よ る冠 循 環 時 間の短 縮は対照 群に比べ小さく, その短縮の程 度ほ異 型 狭心症 候 群が導 管血管末梢で 冠攣締を起こした状 態と同 程 度であり, 第三に硝 酸イソ ソ ル ビ ド投 与後の導 管血管の反 応や冠 循 環 時 間は 正常であった・ 左 室 予 備能に関 する検 討では,
Ⅹ症 候 群は運 動 初 期の心 電 図上 S T 部 分が ま だ低 下し ない間は, 左 室の収 縮 機 能は良く 保た れて いた が, S T 部 分の低下 を境
に左 室収 縮 末 期 容 帝が減少か ら増 加へ , 左 童 駆 出 率ほ 上昇か ら低 下へと変 化し た・ さ らに S T 部 分が低下 するに連れて左 室収 縮 力は低 下し た・ 運 動 中止 後に見ら れ る左 室 駆 出率の 一過 性上昇である オ ー バ ー シ ュ
ー ト現 象の出 現 も 遅 くか つ低 下して い た・ ア ミ ノ フィ リンの与え る影 響についての検 討でほ, ア ミ ノ フィ リン投 与に よ り運 動 耐 容 能と S T 部 分の低 下度が改 善し,
全 例で胸 痛が消 失ない し軽 減しJ 左 室駆 出率は安 静 時よ り 上昇し, 運 動 初期のS T 部分が低 下 する ま での時 間も 延 長した が, 一 旦 S T 部 分が低 下し始め れば 非 投 与時と同 程 度ま で左 室駆 出率は低下し た・ 以上 よ り, Ⅹ症供 群でほ導 管血管ほ 正常だ が抵 抗血管レ ベル の微 小循 環に おいて内皮 細 胞 由 来 弛 緩 予 備 能が低下してお り, その低 下の程 度ほ冠 動 脈の 一枝 末 梢に閉 塞が起
こった状 態に相 当する と考え ら れ た・ ま た運 動 時には 心電 図上の S T 部 分の低 下と ともに著明 な左 室 収縮 力障 害を 呈 し, その
障 害は 回復 過程にも及ぶこと が 示 さ れ た・ さ らに ア ミ ノ フ ィリンは本 症の運動 耐容 能を改善し虚血閲 値を 上昇さ せ る効 果を有 する が, S T 部 分が低下した後に出 現 する左 室 収 縮 障 害ほ防 ぎ待ない ことも示 さ れ た・ これ らの所 見は Ⅹ症 候 群の病 態を解明 する 上 で極め て意 義 深 く, ま た最 近 提 唱されている仮 説, 胸 痛におけるアデノ シ ンの重 要な役 割, に対しても新た な知 見を与
え るものと思わ れ る.
Key w ords syndr om e X , COrO n a ry flo w r es er ve, endotheliu m ‑deriv ed rela x ing fa ctor, 1eft
Ventricula r fu nction al re s e r ve, aden osin e re c ep tor
典 型 的な運 動 誘 発 性の狭心症 様 症 状を有し心電 図上 S T 部 分
の低 下を認め る にもか か わ らず 冠 動 脈 造影上 は異 常を認め ない
疾 患 群一 Ⅹ症 候 粁)の存 在は古くか ら知ら れ て お り2 ) 3), その特 異 な病 態か ら常に興 味が持た れてきた. し か しその較 序や病 態 生 理学上の詳 細ほ, 最 近の研 究に よ り ようやく 明ら かにさ れ てき た ところ である榊). 本 症 候 群にほ通 常の冠 動 脈 造 影で ほ捉え ることの できない内 径2 0恥m 以下の前 細 動脈や細 小 動 脈に障 害が存 在し桐 ), こ のような微 小 循 環レベル にお け る負 荷 時の 冠血管弛 緩 予 備 能の異常と7 卜 9 ), そ れ に よ りもたらさ れ る負 荷 時の左 室 収 縮 予備 能の異 常の存在が推 測されている が1 0 卜 1 2 )
, 未
だ確定さ れて いない. これは従来の報 告に は対象 症 例に速いが あることに加 え, 左 室 予備 能の評 価を主に 心 プ ー ルシ ンチグラ フ ィ ー を用いていること が挙 げら れる. 心 プ ー ル シンチグ ラフ ィ ー は, 本 来 連続 的 な心機 能の変 化を安静 時と運 動 時の2点で し か判 定できない こと, 心拍 数が急 激に変 化した場 合のデ ー タ の信頼性が低い こと1 3)な どの欠 点を有している か らである. ま た最近アデノ シン受 容 体 遮 断 薬であるア リ フ
ィ リ.ソが本 症の
平 成5 年6 月1 8 日受付, 平 成5 年8 月4 日受 理
運動 耐容 能を改 善し, 胸 痛お よ び虚血性S T 部 分の低 下を軽減 する という 報 告 も 見 受 けられる が1 4), その機 序や程 度お よ び左 室の反 応に ついての検討が 不十 分な た め, 未だ臨 床上広 く用い
ら れ て はいない.
本 研 究の目的は Ⅹ症 候 群の心予 備 能につい て臨 床 的 検 討を行 うことであり, まず 冠血管の予 備 能を冠 循環 時 間1 5) 1 6) を測 定 す ること で検 討し, 次に左 室 予 備 能を携 帯 型 持 続心機 能モニ タ
ー1 7 )1 8 )
を 用いて検 討し, さ らに ア ミ ノ フィ リン を投 与して本 薬 剤が左 室 予 備 能に与え る影 響について検 討した.
対 象 および 方法
Ⅰ. 冠 予 備 能に関 する検 討
1 . 対 象
対 象ほ, 種々運 動 負荷 試験に よ り再 現 性のある胸 痛お よ び 心 電 図上 S T 部 分の低 下を認め るもの の, 冠 動 脈 造影上動 脈 硬化 所 見を認めず, ア セチルコ リンの冠 動 脈 内 投 与にても冠 攣縮は 誘 発され ず, 左 窒造 影上壁 運 動は 正常で肥 厚を認めず, 安 静時
Ⅹ症 候 群の心予備 能 555
Tat)lel. Cha nge sin c o 【O n a [)・dia r n e t e r a nd cir c ula tio n いm ea(l e r ACh a ndI S D N adminislr a t血一
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Co r o n a ry dia me t e r(m m) % cha nge( % ) Co r o n a ry cir c ula tio rLtim e(S e C) % cha nge(%)
Ba s elin e AChbJ tSD Nr) ACh ISD N Ba s elin e A C h I S D N A C h I S D N
Co nlr 81 gr o up
1 3 7 M
2 3 9 M
3 4 2 M
4 49 M
5 5 3 F
6 61 F
Me a n士SE 47 ± 4
1.7 3 1.8 2 2.3 9
2.0 7 2.76 2.81
2,0 3 2.6 6 2.40
1.6 3 1.81 1.8 5
1.7 6 2.0 6 1.9 3
1.1 4 1.3 0 1.5 1
1.7 3 士0.1 4 2.0 7 士0.2 3 2.15士 0.2 5 Va ria雨 a ngin agr o up
7 49 M l.8 0 1.4 0 3.10
8 5 3 M
9 5 6 F
l O 6 0 M
l1 6 3 M
Me a n±S E 5 6± 3 Syndr o me X gr o up
1 2 4 4 F
1 3 5 5 F
1 4 6 1 F
1 5 6 6 F
1 6 64 F
Me a n±S E 5 8± 4
2.2 1 1.54 2.4 9
1.3 3 l.0 9 2.0 3
1.6 8 1.31 1.93
1.66 1.3 4 1.6 9 1.7 4土0.1 4 1,34 士 0.0 7 2.2 5±0.2 5
2.3 3 2.7 3 3.0 0
1.7 9 1.8 9 2.3 3
1.5 7 1.8 6 1.8 4
1.8 3 1.80 2.36
2.03 1.9 8 2.1 1 1.9 1士0.13 2.0 5±0.17 2.33 ±0.19
5.2 : 娼.2 3 3.3 35.7 3 1.0 18.2 11.0 1 3.5
17.0 9.7
14.0 32.5 18.6 土4.6 24.6 土5.0
‑2 2.2 7 2,2
‑30.3 1 2,7
‑1 8.0 5 2.6
‑2 2.0 14.9
‑19.3 1.8
‑2 2.4±2,1■ 事 3 0.8 士13.4
1 7.2 2 8.8 5.6 3 0.2 18.5 1 7.2
‑1.6 2 9.0
‑2.5 3.9
7.4 土4.5 21.8 士5.0
7.53 3.59 8.4 3 5.93 2,6 0 6.0 7 5.51 2.9 0 5.20 6.る1 3.7 2 6,71 7.67 3.3 0 7.09 6,16 3.36 4.30 6.0 6土0,3 6 3,2 5士0.17 6.3 0士0.5 9
6.57 3.7 3 6.8 8 6.3 0 4,9 2 7.19 6.54 3.5 7 6,87 6.8 9 3.8 1 7.5 1 6,35 4.7 3 7.2 7 6.53 ±0.10 4.15±0.28◆ 7.1 4±0.12
8.46 4.8 1 6.7 3 6.41 3.62 6.31 6.2 0 4.03 8.00 5.60 4,6 2 5.57 7.2Z 4.4 9 6.2 4 6.38± 0.2 6 4.3 1 ±0.2 2事 6.57 ±0.4 0
‑5 2.3 1 2.0
‑5 6.2 2.4
‑4 7.4 ‑5.6
‑4 5.4 ‑1,5
‑5 7.8 ‑7.6
‑4 5.5 ‑3 0.2
‑5 0.6士2.2 ‑5.1 士5.8
‑43.1 4.8
‑21.9 14.2
‑4 5.4 5.0
‑4 4 / 7 9.0
‑2 5.6 1 4.4
‑3 6.1士5.1■ 9.5 士2.1
‑2 5.5 4.2
‑4 3.5 ‑1.4
‑3 5.8 2 9.0
‑17.6 ‑0.6
‑3 7.8 ‑13.7
‑3 1.9 土4,6暮 3.5土 7.0
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§ 匂 6 缶 十相 場t■M
Fig・1. Repr e s e ntativ e‑e X a mp le of left c o r o n a ry a rte riogr a m s a nd tim e de n sit y c u r v e s in a c o ntr oI s ubje ct(3 9
‑
ye a r s old, m ale). T heleft c o r o n a ry cir c ulatio n tim e m e a s u r ed fr o m theleft m ain tr u n c u s to the c o r o n a ry sin u s w a s5:9 3 s e c o nd. C C T, C O r O n a ry
Cir c ulatio n tim e; R O I,r egio n of inte r e st ; L M T,1eft m ain tr u n c u s; C S, C O r O n a ry Sin u s.