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と率 制 率一 蔵 正

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Academic year: 2021

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(1)

は じ め に 正 蔵 率 一 分 制 と 率 分 所

本 龍 市

一 、 正 貴 幸 分 制 の 成 立

九 世 紀 半 ば に 国 司 交 替 時 の 欠 負 未 納 補 填 策 と し て 成 立 し た 格 率 分 の 刺

度 ' 及 び 九 世 紀 末 に 調 庸 物 の 旧 年 未 進 解 消 策 と し て 制 度 化 さ れ た 未 進 率

分 の 制 度 は 、 と も に よ ‑ 知 ら れ る と こ ろ で あ る 。 一 方 ' こ の 両 制 度 に 対

し て ' 本 稿 で 論 ず る 正 蔵 率 分 の 制 度 は こ れ ま で 本 格 的 に 考 察 さ れ た こ と

は な ‑ 、 そ の 成 立 ・ 内 容 等 に 関 し て 不 明 確 な 点 が 多 い 。 し た が っ て ' 検

討 す べ き 問 題 は 末 だ 多 ‑ 残 さ れ て い る の が 現 況 で あ る と 言 っ て よ い 。

従 来 の 研 究 成 果 と し て は ' 正 蔵 率 分 の 制 度 を 調 庸 制 の 変 質 過 程 に 位 置 ‑■ づ け た 泉 谷 康 夫 氏 の 研 究 等 が 僅 か に 見 受 け ら れ る 。 し か し な が ら ' そ れ J・,r E に 対 す る 長 山 泰 孝 ・ 中 野 栄 夫 両 氏 の 批 判 も あ り ' 泉 谷 氏 の 所 説 を 改 め て

再 検 討 す る 必 要 性 も あ る よ う に 思 わ れ る 。

そ こ で ' 本 稿 で は 以 上 の 状 況 を 踏 ま え て ' 特 に こ の 制 度 の 成 立 ・ 内 容

等 を 中 心 に 考 察 し ' 併 せ て 正 蔵 率 分 所 の 機 能 や 職 員 も 一 瞥 し て お き た い 。

そ れ を も っ て ' 平 安 中 期 の 中 央 財 政 を 究 明 す る T 助 と な れ ば 幸 甚 で あ る 。

※ 本 文 中 の 付 表 州 冊 は 本 文 末 に 1 括 し て 掲 載 し た 。 H 成 立 時 期

正 蔵 率 分 制 に 関 し て は ' ﹃ 拾 芥 抄 ﹄ ( ﹃ 新 訂 増 補 故 実 叢 書 ﹄ 所 収 本 ) に '

大 蔵 省 .納 物 割 二 十 分 之 二 一為 二 別 納 1 以 二 弁 官 一 人 .掌 二 其 華 以 二主 計

頭 大 蔵 輔 大 監 物 軍 為 二 勾 当 1 叉 年 科 長 殴 者 へ 尚 為 二 歳 被 管 云 々 へ 無 二

正 蔵 率 分 .国 者 、 五 畿 管 国 井 陸 奥 出 羽 周 防 志 摩 淡 路 伊 加貝 ' 依 二 興 福 寺

修 造 .免 TT 除 之 T (3 ) と み ら れ る よ う に ' 大 蔵 省 へ の 貢 納 物 の 内 ' 十 分 の 二 を 割 い て 諸 国 に 別 (1 ) 納 さ せ る 制 度 で あ る 。 そ の 別 納 物 (正 蔵 率 分 ) を 管 掌 ・ 収 納 す る の が 正

蔵 率 分 所 で あ り ' そ の 職 員 は 弁 官 以 下 ' 主 計 頑 ・ 大 蔵 輔 ・ 大 監 物 等 の 兼

任 と な る 。

さ て ' 右 の よ う な 内 容 を も つ 正 蔵 率 分 制 は 何 時 頃 成 立 し た の で あ ろ う

か 。 先 ず こ の 問 題 か ら 考 え て み た い 。 泉 谷 氏 の 所 説 に よ れ ば ' 氏 は ﹃ 別

衆 符 宣 抄 ﹄ 所 載 の 天 暦 六 年 (九 五 二 ) 九 月 十 一 日 官 符 に よ り 成 立 し た と

さ れ ' 当 初 の 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 以 外 に そ の 十 分 の 一 を 別 納 す る 制 度 で あ

り ' 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 二 を 割 い て 別 納 す る も の で は な か っ た と さ

(2)

れ る 。 さ ら に 氏 は 、 右 の 官 符 は 未 進 率 分 に 関 す る 内 容 を も つ と と も に 、

同 時 に 正 蔵 率 分 制 へ の 転 換 を も 示 し 、 正 蔵 率 分 制 は 未 進 率 分 制 か ら 転 換

・ 発 展 し た 制 度 で あ る と 見 徹 さ れ た 。

一 方 ' 長 山 泰 孝 ・ 中 野 栄 夫 両 氏 に よ る 泉 谷 説 へ の 批 判 は 、 特 に 泉 谷 氏

の 天 暦 六 年 官 符 の 解 釈 ' 及 び 正 蔵 率 分 制 と 未 進 率 分 制 の 制 度 上 の 関 連 性 、

の 二 点 に 向 け ら れ た 。 中 野 氏 に よ る 批 判 は 、 天 暦 六 年 官 符 は あ ‑ ま で も

未 進 率 分 と の 関 連 で 把 握 し な け れ ば な ら な い も の で あ り 、 こ れ を も っ て

直 ち に 正 蔵 率 分 制 の 成 立 と 見 徹 す こ と は で き な い 点 に あ る 。 長 山 氏 に よ

る 批 判 は 、 正 蔵 率 分 制 と 未 進 率 分 制 の 制 度 上 の 関 連 性 に つ い て で あ る 0

す な わ ち 、 氏 に よ れ ば 「 正 蔵 率 分 (刺 ) は 大 蔵 省 に 納 入 さ れ る 諸 国 の 貢

納 物 の 十 分 の 二 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 度 で あ っ て 、 未 進 境 納 の た め 年 料

に そ え て そ の 十 分 の 一 を 加 納 さ せ る 未 進 率 分 (刺 ) と は ま っ た ‑ 異 質 の

制 度 で あ る 」 (括 弧 内 筆 者 ) と さ れ る 。 そ こ で 、 泉 谷 氏 の 主 張 さ れ る 、

正 蔵 率 分 制 が 未 進 率 分 制 か ら 転 換 ・ 発 展 し た 制 度 で あ る と い う 見 解 の 当

否 を 先 ず 確 認 し て お き た い 。 (5 」 未 進 率 分 制 は 、 周 知 の ど と ‑ 寛 平 五 年 (八 九 三 ) 五 月 十 七 日 官 符 に よ

り 制 度 化 さ れ た 調 庸 物 の 旧 年 未 進 解 消 策 で あ る 。 そ の 内 容 は 年 輪 額 に そ

の 十 分 の 一 を 加 算 し た 額 を 毎 年 京 進 さ せ ' そ れ に よ り 累 積 し た 旧 年 末 進 分

を 解 消 さ せ る も の で あ る 。 一 方 、 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 額 の 十 分 の 二 を 年 輪

額 か ら 割 い て 別 納 さ せ る も の で あ り 、 決 し て 年 輪 額 に 加 納 さ せ る も の で

は な い 。 ま し て 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 以 前 と 以 後 で は 応 輸 額 の 量 的 変 化 は

吃 ‑ 、 未 進 率 分 制 に み ら れ る 旧 年 未 進 の 解 消 せ い う 性 格 は ま っ た ‑ 見 出

さ れ な い 。 よ っ て 、 泉 谷 氏 の 主 張 さ れ る 、 正 蔵 率 分 制 が 未 進 率 分 制 か ら 転 換 ・ 発 展 し た と す る 見 解 は 成 立 せ ず 、 両 者 は あ ‑ ま で も 別 個 の 制 度 と

し て 把 握 し な け れ ば な ら な い 。 こ の 点 、 長 山 氏 に よ る 批 判 は 正 当 で あ る

と 考 え ら れ る 。

こ の よ う に 正 蔵 率 分 利 を 未 進 率 分 制 と は 別 個 の 制 度 と 見 徹 し 、 さ ら に

中 野 氏 の 言 わ れ る よ う に 、 天 暦 六 年 官 符 を 未 進 率 分 と の 関 連 か ら と ら え

る な ら ば 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 は 根 本 的 に 再 検 討 し な け れ ば な ら な い 。

そ こ で 、 問 題 と な っ て い る 天 暦 六 年 官 符 の 全 文 を 次 に 掲 載 し 、 検 討 し て

み た い 。

太 政 官 符 五 畿 内 七 道 諸 国 司

応 三納 レ 官 調 帯 群 中 男 作 物 交 易 雑 物 及 年 料 米 等 年 輪 十 分 之 一 別 副 二 解

文 "辛 ︹七 ︺ 右 検 二 案 内 ↓ 調 庸 雑 物 精 好 合 期 可 二 進 納 一之 状 '去 天 暦 元 年 閏 正 月 廿

三 日 下 知 既 畢 ' 左 大 臣 宣 ' 宜 F 仰 二国 軍 自 今 以 後 ' 納 レ 官 調 庸 井 中 男

作 物 交 易 雑 物 及 年 料 米 年 輪 十 分 之 一 別 副 二 解 文 ↓ 合 期 令 中 進 納 い 若 錐 レ

究 1 進 年 輪 之 準 不 し別 丁 納 十 分 之 l 嘉 ' 仰 二 所 司 一停 二 勘 抄 帳 .者 ' 諸

国 承 知 依 レ 宣 行 レ 之 、 符 到 奉 行 '

左 大 弁 大 江 朝 臣 左 大 史 阿 蘇 宿 祢

天 暦 六 年 九 月 十 一 日

右 の 官 符 は 多 ‑ の 先 学 に よ り 、 未 進 率 分 に 関 す る 官 符 と し て 考 察 ・ 引 用 (rL ) さ れ て お り 、 は ば 通 説 化 し て い る と 言 っ て よ い 。 泉 谷 氏 に お い て も 同 樵

の 見 解 を 提 示 さ れ て い る こ と は 先 述 し た 通 り で あ る 。

右 の 官 符 を 通 説 に よ っ て 解 釈 す れ ば 、 調 庸 ・ 中 男 作 物 等 々 の 年 輪 の 十

分 の 一 (未 進 率 分 ) を 年 輪 と は 別 に 進 納 し 、 た と え 年 輪 を 進 済 し て も 未

(3)

進 率 分 を 合 期 別 納 し な け れ ば 抄 帳 を 勘 し な い 、 と な る 。 所 謂 、 未 進 率 分

の 別 納 を 制 定 し た も の と 解 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 右 の 通 説 の 解 釈

に は 二 ・ 三 の 問 題 点 が 提 示 さ れ る 。

第 一 に 、 通 説 で は 未 進 率 分 制 が 旧 年 未 進 の 解 消 に 有 効 で あ っ た か 否 か 「丁 一 と い う 機 能 面 に つ い て 否 定 的 で あ る に も か か わ ら ず 、 未 進 率 分 制 の 成 立

期 か ら 五 十 余 年 経 た 天 暦 六 年 に お い て も 、 こ の 制 度 が 存 続 し 、 少 な ‑ と ヽ. も 機 能 し て い た と い う こ と で あ る 。 末 進 率 分 制 の 成 立 時 で も 年 輪 そ の も

の の 未 進 が 毎 年 累 積 し て い た の で あ り 、 そ の よ う な 状 況 下 、 年 輪 と は 別

に そ の 十 分 の 一 を 加 納 さ せ る 未 進 率 分 利 が 、 は た し て 順 調 に 施 行 さ れ 、

機 能 し て い た の か 甚 だ 疑 問 視 し な け れ ば な ら な い 。 ま し て 充 分 な 機 能 杏

発 揮 し た と は 考 え ら れ な い 未 進 率 分 制 が 、 成 立 以 後 五 十 余 年 経 た 天 暦 六

年 に 制 度 と し て 存 在 し て い た と は 到 底 考 え ら れ ず 、 な お 問 題 が 残 る 。

末 進 率 分 制 の 成 立 以 降 、 こ の 制 度 の 施 行 事 例 と し て 確 定 で き る 史 料 は 、

管 見 の 限 り で は 管 孝 次 郎 氏 所 蔵 文 書 延 長 六 年 (九 二 八 ) 五 月 九 日 上 野 国 LET, ) 牒 だ け で あ る 。 し か し な が ら 、 こ れ と て 中 央 へ の 未 進 率 分 の 進 納 事 例 で

は な ‑ ' あ く ま で も 造 東 大 寺 所 へ 進 納 す る 封 戸 物 の 未 進 率 分 に 関 す る 事

例 で あ る 。 こ れ か ら 、 封 戸 物 に 関 す る 未 進 率 分 は お よ そ 延 長 六 年 頃 ま で

存 在 し て い た と 解 せ る が 、 こ れ を も っ て 直 ち に 中 央 へ 進 納 す る 未 進 率

分 が 、 こ の 時 期 に 存 在 し て い た 論 拠 と す る こ と は 早 急 に 過 ぎ る で あ ろ う 。

第 二 の 問 題 点 は ' 通 説 で は 天 暦 六 年 官 符 を 未 進 率 分 の 別 納 を 制 定 し た

も の と 解 し て い る が t で は 何 故 こ の 時 期 に 未 進 率 分 の 別 納 が 制 定 さ れ た

の で あ ろ う か 。 さ ら に 未 進 率 分 を 別 納 す る こ と は 末 進 解 消 に と っ て 如 何

な る 意 義 が あ る の か 。 こ れ ら の 問 題 ‑ 未 進 率 分 別 納 制 の 成 立 契 機 と 意 義 I に 関 し て は 、 従 来 の 研 究 で は ま っ た ‑ 論 及 さ れ て い な い が 、 通 説

の 解 釈 を と る な ら ば 看 過 す べ き も の で は な ‑ ' 一 考 の 余 地 が あ る と 考 え

ら れ る 。

最 後 に 、 天 暦 六 年 官 符 の 出 さ れ た 契 機 を み る と 、 調 庸 雑 物 等 の 違 期 ・

鹿 悪 に 対 し て 合 期 進 納 ・ 精 好 を は か る 点 に あ り 、 決 し て 旧 年 未 進 に 対 す

る も の で は な か っ た こ と が 指 摘 で き る 。 天 暦 年 間 の 調 庸 違 反 に 関 す る 官

符 ・ 宣 旨 と し て は 、「 応 三 調 庸 合 期 進 納 兼 令 二精 好 一事 」の 事 書 を も つ 天 暦 元 (10 ) ︹11 ) 年 官 符 、 及 び 天 暦 元 年 官 符 と 同 趣 旨 の 内 容 を も つ 天 暦 四 年 宣 旨 が み ら れ

る が 、 こ れ ら は い ず れ も 調 庸 物 の 合 期 進 納 ・ 精 好 に 関 す る も の で あ る 。 こ

れ ら か ら す れ ば ' 天 暦 年 間 の 詞 庸 違 反 に 関 す る 官 符 ・ 宣 旨 は 、 違 期 ・ 鹿 悪

へ の 対 策 を 意 図 し た も の で あ り 、 決 し て 旧 年 未 進 に 対 す る 内 容 を も つ も

の で は な か っ た と 言 え る 。 天 暦 六 年 官 符 も 天 暦 元 年 官 符 を 引 用 す る よ う

に 、 そ の 一 環 と し て 把 握 し な け れ ば な ら な い 。 し た が っ て 、 天 暦 六 年 官

符 の 出 さ れ た 契 機 か ら す れ ば 、 同 官 符 を 旧 年 未 進 の 解 消 策 た る 未 進 率 分

制 に 関 す る も の と 見 倣 す 通 説 の 解 釈 は 、 問 題 が あ る と 考 え ら れ る 。

以 上 、 通 説 の 解 釈 に 対 す る 問 題 点 を 提 示 す る こ と に よ り ' 天 暦 六 年 官

符 を 通 説 で は 解 釈 で き な い こ と を 指 摘 し た 。 そ れ で は 、 間 宮 符 を 如 何 に

解 釈 し た ら よ い で あ ろ う か 。 そ れ に 対 す る 私 見 を 述 べ る 前 に 、 一 方 の 正

蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 を 、 他 の 史 料 を も っ て 跡 付 け て お き た い 。 ﹃別 衆 符 宣 抄 ﹄ 所 載 の 天 暦 十 年 (九 五 六 ) 六 月 廿 日 宣 旨 は 、

左 中 弁 藤 原 朝 臣 文 範 伝 宣 、 左 大 臣 宣 、 民 部 大 輔 源 保 光 朝 臣 、 大 蔵 大

輔 源 朝 臣 公 輔 、 大 監 物 橘 朝 臣 惟 寧 等 宜 レ 為 二 正 蔵 所 レ 納 大 事 井 諸 国 調 庸

交 易 雑 物 及 鋳 銭 司 年 料 銭 率 分 勾 当 一着 、

(4)

天 暦 十 年 六 月 廿 日 大 史 我 孫 有 村

少 録 海 口

と み え る よ う に 、 正 蔵 率 分 所 の 勾 当 補 任 に 関 す る も の で あ る 。 こ れ に よ

れ ば 、 天 暦 十 年 に は 正 蔵 率 分 を 管 掌 ・ 収 納 す る 正 蔵 率 分 所 が 成 立 し て お

り 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 が 天 暦 十 年 以 前 で あ っ た こ と が わ か る 。 ﹃ 北 ∴ 、 山 抄 ﹄ 巻 第 十 (吏 途 指 南 ) に は 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 に 関 し て 興 味 深

い 記 事 が み ら れ る 。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ( 上 略 ) 天 暦 聖 朝 ' 率 分 事 初 立 之 後 '両 三 国 司 有 レ 過 TT 進 年 料 丁不 レ ● ● ● ● ● 究 二 率 分 一 之 者 、 諸 脚 奉 レ 仰 l苧 申 加 階 給 否 」 左 衡 脚 以 下 皆 申 云 ' 公 物

不 レ 夫 ' 可 レ 給 二 加 階 丁 師 ヂ 脚 猶 申 云 ' 若 率 分 之 欠 ' 可 レ解 TT 却 見 任 一之

由 ' 科 条 己 存 ' 然 而 不 レ 処 二 其 科 ( 在 二 公 物 之 不 実 .' 何 更 得 レ 預 レ 賞 乎 '

拙 走 従 レ 之 ' 両 三 年 後 ' 有 二 恩 給 .之 、 云 々 ' ( 傍 点 筆 者 ' 以 下 同 )

右 の 史 料 は 先 学 に よ り 紹 介 ・ 引 用 さ れ る こ と は な か っ た が 、 正 蔵 率 分 刺

の お よ そ の 成 立 時 期 を 示 す も の で あ る 。 史 料 中 に み ら れ る 「率 分 」 は 村

上 天 皇 の 治 世 に 初 め て 立 て ら れ た と あ る よ う に 、 末 進 率 分 で は な い こ と

が わ か る O ま た 両 三 国 司 の 年 料 過 進 が 「 不 レ 究 .l率 分 . 」 に よ っ て な さ れ

た こ と は 、 こ の 「率 分 」 が 従 前 の 率 分 ‑ 未 進 率 分 等 と は か な り 異 な る

内 容 の も の で あ っ た こ と を 示 す 。 よ っ て 、 史 料 中 に み ら れ る 「率 分 」 は

正 蔵 率 分 と 解 し て 大 過 な い で あ ろ う 。

以 上 の 二 史 料 を 勘 案 す れ ば 、 正 蔵 率 分 制 は 天 暦 年 間 (天 暦 十 年 以 前 )

に 成 立 し 、 未 進 率 分 制 と は か な り 異 な る 内 容 を も つ 制 度 で あ っ た と 言 え

よ う 。

そ こ で 再 び 天 暦 六 年 官 符 に も ど れ ば 、 間 宮 符 が 末 進 率 分 の 別 納 を 制 定 し た も の と 解 す る 通 説 に は な お 問 題 が 多 ‑ 、 首 肯 で き な い こ と は 先 述

し た が 、 一 方 、 正 蔵 率 分 制 は ﹃ 北 山 抄 ﹄ の 前 掲 記 事 等 か ら 天 暦 年 間 に 成

立 し た こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ れ ら の 諸 点 か ら ' 天 暦 六 年 官 符 は 正 蔵

率 分 制 の 成 立 と 関 連 づ け て 解 釈 す る の が 妥 当 で あ る と 考 え ら れ る 。 こ の

立 場 か ら 同 官 符 を 解 釈 す れ ば 、 詞 庸 ・ 中 男 作 物 等 々 の 年 輪 の 十 分 の 一 を ● ● ● 年 輪 内 か ら 割 い て 合 期 別 納 し 、 た と え 年 輪 を 進 済 し て も 十 分 の 一 を 年 輪

内 か ら 割 い て 別 納 し な け れ ば 抄 帳 を 勘 し な い 、 と な る 。 か く し て 、 成 立 ● ● ● ● 当 初 の 正 蔵 率 分 制 は 、 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 一 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 皮

で あ っ た と 考 え ら れ る 。

天 暦 六 年 官 符 に 関 す る 従 来 の 解 釈 は 、 末 進 率 分 の 別 納 を 制 定 し た も の 、

或 い は 未 進 率 分 制 か ら 正 蔵 率 分 制 へ 転 換 を は か っ た も の と 解 し た が 、 い

ず れ も 成 立 し 難 い と 思 わ れ る 。 間 宮 符 は あ ‑ ま で も 正 蔵 率 分 制 の 成 立 を

示 す も の で あ っ た と 解 さ れ る の で あ る 。 ● と こ ろ で 、 先 述 し た よ う に 成 立 当 初 の 正 蔵 率 分 利 は 年 輪 内 か ら そ の 十 ● ● ● 分 の 一 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 度 で あ っ た が ' 一 方 ' ﹃ 拾 芥 抄 ﹄ の 前 掲 記 ● ● ● ● 事 で は 、 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 二 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 皮

で あ る と 記 し て い た 。 こ こ で 問 題 と な る の は 、 こ の 十 分 の 一 ・ 十 分 の 二 (13 ) と い う 率 分 の 相 違 を 如 何 に 解 釈 す る の か と い う こ と で あ る 。

正 蔵 率 分 利 が 成 立 し た 天 暦 六 年 の 十 一 年 後 、 応 和 三 年 (九 六 三 ) に 興 (E ) 味 深 い 官 符 が み ら れ る 。 必 要 部 分 だ け を 掲 載 す れ ば '

而 頃 年 不 レ 守 二 参 期 .' 多 致 ,.違 越 .' 僅 済 二 率 分 之 法 数 .' 都 忘 二其 余 之 兄 上 .I

倉 度 巳 空 ' 職 比 之 由 、 夏 至 二 千 神 事 有 レ 限 、 国 用 無 u 止 ' 仰 TT宛 在 下 .I

暗 成 二 日 収 丁 論 二 之 政 遠 .' 尤 多 二 公 損 .' 非 レ 加 二 懲 粛 へ 何 改 二 之 弊 (

(5)

と な る 。 こ れ に よ れ ば 国 司 は 僅 か に 正 蔵 率 分 だ け を 進 済 し 、 自 余 の 年 輪

を 進 済 せ ず 、 神 事 ・ 国 用 に 開 意 を 来 し て い た 状 況 が わ か る 。 正 蔵 率 分 刺

の 成 立 期 か ら 僅 か に 十 余 年 後 に 、 正 蔵 率 分 だ け の 進 済 と い う 状 況 と な り 、

正 蔵 率 分 が 年 輪 に と っ て 代 る 傾 向 と な っ て き た 。 右 の 状 況 に 対 す る 中 央

政 府 の 対 策 は 、 合 期 進 納 の 遵 守 を 諸 国 に 再 び 下 知 す る と と も に 、 天 暦 四

年 二 月 十 日 宣 旨 の 施 策 確 認 に 止 ま り 、 具 体 的 施 策 を 何 ら 打 ち 出 し て い 吃 一15 一 い 。 し た が っ て 、 右 の 状 況 を 解 消 で き な か っ た こ と は 当 然 で あ ろ う 。

こ の よ う に 年 輪 末 進 の 深 刻 化 に 伴 っ て 、 正 蔵 率 分 だ け を 進 済 す る よ う

に な っ た こ と 、 そ れ に 対 す る 具 体 的 施 策 を 中 央 政 府 が 打 ち 出 し て い な い

こ と を 考 慮 す れ ば 、 正 蔵 率 分 が 中 央 政 府 に か な り 重 要 視 さ れ る よ う に 皮

っ た と 考 え ら れ る 。 中 央 財 政 が 正 蔵 率 分 だ け で 運 営 で き る 性 格 の も の で

は な い が 、 年 輪 末 進 の 深 刻 化 に 伴 い 、 中 央 財 政 に お け る 正 蔵 率 分 の 重 要

性 は 増 し て い っ た も の と 考 え ら れ る 。 こ う し た 経 緯 を 経 て 、 中 央 政 府

は 率 分 を 十 分 の 一 か ら 十 分 の 二 へ と 改 定 し 、 正 蔵 率 分 の 比 重 を 増 大 し よ ・ト 、 う と し た の で は な い か と 思 わ れ る 。

率 分 の 改 定 を 定 め た 史 料 は 、 管 見 の 限 り で は 見 出 せ ず 、 そ の 改 定 時 期

を 確 定 す る こ と は 不 可 能 で あ る が 、 お よ そ 十 世 紀 末 頃 で は な か っ た か と

推 定 さ れ る 。 正 蔵 率 分 が 年 輪 の 十 分 の 二 を 基 準 と し て 算 定 さ れ た 初 見 史

料 は 、 管 見 の 限 り ﹃ 左 経 記 ﹄ 長 元 七 年 ( 一 〇 三 四 ) 十 一 月 十 七 日 条 で あ

る 。 同 条 に は 、 大 事 府 進 上 の 当 年 料 と し て 「 率 分 縮 六 百 疋 」 「 率 分 綿 二

万 屯 」 が み ら れ る が 、 大 事 府 の 絹 ・ 綿 の 年 輪 額 は 絹 三 千 疋 ・ 綿 十 万 屯 で I・ あ り 、 正 蔵 率 分 が 年 輪 の ト 分 の 二 を 規 準 と し て 算 定 さ れ て い た こ と が わ

か る 。 こ れ 以 降 の 正 蔵 率 分 に 関 す る 史 料 で も 、 正 蔵 率 分 は 総 て 年 輪 の (18 ) 十 分 の 二 と な っ て い る 。

こ の よ う に 十 一 世 紀 初 頭 に は 正 蔵 率 分 が 年 輪 の 十 分 の 二 を 基 準 と し て

算 定 さ れ て お り 、 率 分 の 改 定 が こ れ 以 前 に な さ れ た こ と は 明 ら か で あ る 。

し か も 、 率 分 の 改 定 が 先 述 し た よ う に 年 輪 未 進 の 深 刻 化 を 契 機 と し て な

さ れ た と す れ ば 、 そ の 改 定 時 親 は 前 掲 の 応 和 三 年 官 符 を そ れ ほ ど 降 ら な

い 時 期 で あ っ た と 推 定 さ れ る 。

以 上 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 、 及 び 内 容 に つ い て 概 括 す れ ば 、 次 の ど

と ‑ で あ る 。 正 蔵 率 分 制 は 天 暦 六 年 に 成 立 し 、 成 立 当 初 は 年 輪 内 か ら そ

の 十 分 の 1 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 度 で あ っ た . し か る に 、 十 世 紀 末 頃 、

年 輪 末 進 が 深 刻 と な り 、 そ れ に 伴 っ て 正 蔵 率 分 が 重 要 視 さ れ る よ う に 皮

っ た こ と を 契 機 と し て 、 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 二 を 割 い て

別 納 さ せ る 制 度 へ と 改 定 さ れ 、 整 備 ・ 確 立 す る に 至 っ た の で あ る 。 以 上

の 諸 点 が み と め ら れ る な ら ば 、 次 に 問 題 と し な け れ ば な ら な い の が 、 何

故 当 該 期 に 正 蔵 率 分 制 が 成 立 し た の か と い う 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 契 機 で

あ る 。

口 成 立 契 機

正 蔵 率 分 制 の 成 立 契 機 に 関 し て は 、 先 ず 当 該 期 の 中 央 財 政 の 状 況 か ら

考 え て み た い 。 中 央 財 政 は 特 に 天 慶 期 か ら 天 暦 期 初 頭 に か け て 、 窮 乏 化

の 様 相 を 呈 し て い た と 言 え る 。

天 慶 ・ 天 暦 期 に お け る 中 央 財 政 の 窮 乏 化 を 最 も 如 実 に 伝 え て い る も の

は 行 事 費 用 に つ い て で あ ろ う 。 そ の 具 体 例 と し て は 、 天 慶 元 年 (九 三 八 ) 一旧 L の 施 米 費 用 の 欠 乏 、 同 五 年 (九 四 二 ) の 摩 院 収 納 米 の 無 実 化 に 伴 う 賑 給

(6)

・⊥ 費 用 の 欠 乏 等 が あ げ ら れ る が 、 同 九 年 (九 四 六 ) に は 春 季 細 読 経 の 布 施

・ 供 養 料 に つ い て 、

公 家 此 度 御 読 経 布 施 只 有 レ 絹 ' 無 二 綿 布 1 「念 雪 盲 廿 余 僧 供 養 不 レ 得 者 、

是 往 古 不 レ 聞 之 事 也 、 一21 ) と あ り 、 貞 信 公 記 の 記 主 藤 原 忠 平 が 「 往 古 不 レ聞 之 事 」 と 評 す る よ う に '

費 用 欠 乏 が か な り 深 刻 な 問 題 と な っ て い た こ と が わ か る 。 こ れ ら は 年 中

・ 恒 例 行 事 の 費 用 欠 乏 の 状 況 を 如 実 に 伝 え る 事 例 で あ る が 、 こ の 陪 期 は

斎 宮 入 京 や 践 作 大 嘗 会 の 最 重 要 行 事 の 費 用 に も 欠 乏 を 来 し て い た の で あ る 。 ﹃貞 信 公 記 抄 ﹄ 天 慶 八 年 (九 四 五 ) 三 月 十 日 条 は 、 こ の 時 期 の 斎 院 ・

斎 宮 用 途 物 の 弁 備 状 況 を 知 る う え で 重 要 な 記 事 で あ る O そ れ に よ れ ば 、

斎 院 用 途 物 は 「在 庫 在 所 無 二有 一 物 二 と い う 状 況 で あ り 、 斎 宮 入 京 用 途

に 関 し て も 「更 無 二 一 物 二 と い う 状 況 で あ っ た 。 一 方 、 ﹃ 九 暦 ﹄ 天 慶 九

年 (九 四 六 ) 十 月 廿 八 日 条 に よ れ ば 、 村 上 天 皇 即 位 の 践 杵 大 嘗 会 に 際 し

て 、 供 奉 諸 司 の 装 束 料 は 「官 唾 無 レ 物 」 と い う 状 況 で あ っ た o こ の 二 つ

の 事 例 は 中 央 財 政 の 窮 乏 化 が 如 何 に 深 刻 な 問 題 で あ っ た か を 示 す も の で

あ ろ う 。 そ の 他 、 給 禄 に 関 し て も ' 白 馬 ・ 豊 明 両 節 会 に 際 し て の 節 禄 の (R1. I := ) 不 給 、 賀 茂 斎 院 頑 日 の 両 度 禄 停 止 等 、 l 般 に 禄 料 の 欠 乏 に よ っ て 給 禄 が

で き な い 状 況 で あ っ た 。

こ の よ う に 天 慶 期 か ら 天 暦 期 初 頭 に か け て は 、 殊 に 行 事 費 用 の 欠 乏 に

み ら れ た よ う に 、 中 央 財 政 の 窮 乏 化 は 深 刻 な 問 題 と な っ て い た 。 正 蔵 率

分 制 は ま さ に こ の 中 央 財 政 窮 乏 化 を 背 景 と し て 、 採 用 さ れ た 制 度 で あ っ

た と 言 え よ う 。

と こ ろ で ' ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 巻 第 四 (定 受 領 功 課 事 ) に は 正 蔵 率 分 に 関 し て 次 の よ う な 記 事 を 載 せ て い る 。

率 分 、 公 事 物 也 、 依 .古 破 立 勘 文 . 注 レ 之 、或 抄 云 、 調 庸 雑 物 十 分 之 二 、 ● ● ● ● 毎 年 別 納 宛 二 無 レ 止 公 用 一也 、

右 の 記 事 に 引 く 「 或 抄 」 に つ い て は 不 明 と し な け れ ば な ら な い が ' 正 蔵

率 分 の 用 途 を 明 文 化 し た 唯 一 の 史 料 で あ る 。 そ れ に よ れ ば 、 正 蔵 率 分 は 「無 し 止 公 用 」 に 充 当 さ れ る も の で あ り 、 尋 常 の 支 出 に 充 当 さ れ る も の

で は な か っ た 。 す な わ ち 、 正 蔵 率 分 は そ の 用 途 か ら ' 非 常 の 用 に 充 当 す

る た め の 財 源 で あ っ た こ と が わ か る 。

そ こ で 、 正 蔵 率 分 が 右 で 述 べ た よ う な 財 源 で あ っ た と 見 徹 す な ら ば 、

正 蔵 率 分 制 の 成 立 期 で あ る 天 暦 年 間 に は 、 「無 レ 止 公 用 」 に 充 当 す る 財 源

を 既 存 の 中 央 財 源 で は 賄 う こ と が で き ず ' 諸 国 に 正 蔵 率 分 と し て 、 年 輪

内 か ら 一 部 を 別 納 さ せ た と み な け れ ば な ら な い 。 こ の よ う に 考 え る と 、

先 述 し た 中 央 財 政 窮 乏 化 と 正 蔵 率 分 制 の 成 立 と は 非 常 に 密 接 な 関 係 に あ

っ た こ と が 明 ら か と な り 、 正 蔵 率 分 利 は 中 央 財 政 が 窮 乏 化 し て 、 特 に 罪

常 の 用 に 充 当 す る 財 源 を 確 保 す る た め に 案 出 さ れ た 制 度 で あ っ た と 解 さ

れ る の で あ る 。

一 方 ' 正 蔵 率 分 の 性 格 を 右 の よ う に 解 す る な ら ば 、 正 蔵 率 分 を 年 輪 と

は 別 に 合 期 進 納 さ せ て ' 確 保 す る こ と が 必 要 不 可 欠 と な る 。 こ の 点 は 前 掲 の

天 暦 六 年 官 符 の 「若 堆 レ究 TT 進 年 輪 之 数 .' 不 レ 別 nI納 十 分 之 l 一着 、 仰 二 所

司 一停 二勘 抄 帳 二 と い う 記 載 か ら も わ か る 。 す な わ ち 、 た と え 年 輪 を 進 済

し て も 正 蔵 率 分 を 別 納 し な け れ ば 抄 帳 を 勘 し な い と い う 厳 し い 措 置 を 請

じ て い る こ と は 、 正 蔵 率 分 の 別 納 を 諸 国 に 厳 守 さ せ よ う と す る 中 央 政 府

の 意 向 を あ ら わ す も の で あ り 、 そ れ は 正 蔵 率 分 が 非 常 の 用 に 充 当 す る た

(7)

め の 財 源 で あ る こ と か ら す れ ば 、 当 然 の 措 置 で あ っ た と 言 え よ う 。 天 磨

六 年 官 符 に 関 す る 従 来 の 解 釈 を み る と 、 「別 納 」 の も つ 意 味 が 明 確 に さ

れ ず 、 ほ ■と ん ど 無 視 さ れ て い た と 言 っ て よ い 。 し か し な が ら 、 「 別 納 」

と い う 語 が こ の 天 暦 六 年 官 符 を 解 釈 す る 際 に 如 何 に 重 要 な 意 味 を も っ て

い た か は 、 以 上 の こ と か ら 明 ら か で あ ろ う 。

l 「 正 歳 事 分 の 用 途

正 蔵 率 分 の 用 途 に 関 し て は 、 前 節 で ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 所 載 の 「 或 抄 」 の 記

事 を 引 い て 考 察 し た が 、 本 章 で は 特 に そ の 用 途 の 変 化 を 検 討 し 、 そ れ が

先 述 し た 率 分 の 改 定 と 如 何 な る 関 係 に あ る の か を 考 え て み た い 。

正 蔵 率 分 の 具 休 的 な 用 途 事 例 を 、 管 見 の 限 り 一 覧 に し た も の が 付 表 H で

あ る 。 先 ず 、 こ の 表 を 通 覧 し て 指 摘 で き る 点 と し て は 、 用 途 の ほ と ん ど が (24 ) 恒 例 ・ 臨 時 の 行 事 費 用 で あ る こ と で あ る 。 こ の こ と か ら 、 正 蔵 率 分 は 行

事 費 用 に 充 当 さ れ る 場 合 が 多 か っ た と 言 え よ う 。 ﹃ 北 山 抄 ﹄ ﹃ 西 宮 記 ﹄

等 の 有 職 故 実 書 に よ れ ば 、 正 蔵 率 分 は 白 馬 ・ 新 嘗 両 節 会 の 禄 料 、 御 斎 会

布 施 料 、 諸 社 奉 幣 料 、 祈 年 穀 奉 幣 料 等 に 充 当 さ れ る こ と に な っ て い た 0

殊 に ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 巻 第 六 (平 野 祭 ) に は 、 平 野 祭 幣 料 請 奏 の 書 様 が み ら

れ る の で 、 次 に 掲 載 す れ ば 、

内 蔵 寮

請 五 色 絹 八 疋

生 絹 十 二 疋

糸 十 五 絢 綿 百 屯

調 布 綿 十 五 段 ︹木 ︺ 布 綿 五 斤 ● ● ● 右 来 月 日 平 野 祭 御 幣 料 ' 以 二 諸 国 所 レ 進 率 分 内 . 依 レ 例 所 レ 請 如 レ 件 、

年 月 日 正 六 位 上 行 上 属

正 六 位 上 行 少 允

と な る 。 こ の 書 様 か ら 、 正 蔵 率 分 は 平 野 祭 幣 料 に 常 に 充 当 さ れ る も の で

あ っ た こ と が わ か る 。 同 じ ‑ ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 巻 第 五 (円 宗 寺 最 勝 会 事 ) に

は 、 円 宗 寺 法 華 全 用 途 料 に 正 蔵 率 分 を 充 当 す る 請 奏 の 書 様 が み ら れ る 0

こ れ ら は 正 蔵 率 分 が 1 定 の 用 途 に 充 当 さ れ る と い う 、 用 途 の 固 定 ・ 定 着

化 を 示 す も の で あ る と 言 え る 。 す な わ ち 、 前 節 で み た と こ ろ の 、 正 蔵 率

分 が 「無 レ止 公 用 」 に 充 当 さ れ る と い う 「 或 抄 」 の 記 事 と は ま っ た ‑ 様 相

を 異 に し て お り 、 正 蔵 率 分 の 用 途 が 明 ら か に 固 定 ・ 定 着 化 し て き て い る

の で あ る 。 こ の 点 は 、 付 表 州 を 通 覧 し て 、 正 蔵 率 分 が 幣 料 ・ 季 御 読 経 用 (25 ) 途 料 ・ 節 禄 料 に 充 当 さ れ て い る 例 が 多 ‑ み ら れ る こ と か ら も 首 肯 さ れ る 。

こ の 用 途 の 固 定 ・ 定 着 化 が 、 用 途 の 変 化 を み る う え で 、 先 ず 指 摘 で き る

と こ ろ で あ る 。

さ ら に 、 付 表 附 か ら 指 摘 で き る 点 と し て は 、 正 蔵 率 分 が 毎 年 施 行 さ れ

る 年 中 行 事 の 費 用 に も 充 当 さ れ て い る よ う に 、 そ の 用 途 が か な り 広 範 囲

に 及 び 、 尋 常 の 支 出 に も 充 当 さ れ て き た と い う こ と が あ げ ら れ る 。 そ の

一 端 を 示 す 具 休 例 と し て 、 ﹃ 朝 野 群 載 ﹄ 巻 第 五 (朝 儀 下 ) 所 載 の 内 裏 御

八 講 の 用 途 請 奏 が あ げ ら れ る 。

内 蔵 寮

(8)

綿 州 屯

池 六 斗

大 豆 二 石 三 升

塩 二 石 四 斗 三 升

和 布 三 百 四 十 帖 ● ● ● ● ● ト1 右 従 二.今 月 廿 五 旦 被 レ 行 御 八 講 用 途 料 '以 二 諸 国 所 レ 進 年 料 率 分 内 .、

所 レ 請 如 レ 件 、

治 暦 元 年 九 月 十 三 日 正 六 位 上 行 少 属 紀 朝 臣 時 成

正 六 位 上 行 少 允 惟 宗 朝 臣 俊 忠

右 の 請 奏 に よ れ ば 、 正 蔵 率 分 は 年 料 と 同 じ ‑ 徹 八 講 用 途 料 に 充 当 さ れ る

も の で あ っ た こ と が わ か る 。 こ れ は 正 蔵 率 分 が 年 料 と と も に 同 じ 用 途 に

充 当 さ れ て き た こ と を 示 す 一 例 と 見 徹 す こ と が で き る が 、 こ の よ う な 例 Lr 一 は 他 に も 数 多 ‑ 見 出 す こ と が で き る 。 し た が っ て 、 正 蔵 率 分 の 用 途 は

「 無 レ 止 公 用 」 に 止 ま ら ず 、 か な ケ 広 範 囲 に 及 ん で き た と 言 え る の で あ り 、

ま さ に 正 蔵 率 分 の 用 途 拡 大 と 解 す る こ と が で き る 。

以 上 が 、 止 蔵 率 分 の 用 途 の 変 化 を み る う え で 指 摘 で き る お も な 点 で あ

る が 、 こ こ で 留 意 し な け れ ば な ら な い の は 、 正 蔵 率 分 の 運 用 に お い て 宣

旨 の 有 無 が 重 要 な 意 味 を も っ て い た こ と で あ る 。 ﹃ 権 記 ﹄ 長 徳 三 年 ( 九

九 七 ) 七 月 十 九 日 条 に よ れ ば 、 当 日 は 祈 年 穀 奉 幣 に 伴 う 一 条 天 皇 の 八 省

院 行 幸 が 行 わ れ た 。 そ の 際 、 伊 勢 幣 料 は 開 怠 の 状 況 と な っ て お り 、 そ の 幣

料 に 去 春 越 前 国 司 進 上 の 率 分 綾 を 充 当 し よ う と し た 。 し か し な が ら 、 そ ● ● ■ ● ● の 率 分 綾 は 行 事 官 掌 の 安 倍 尚 点 が 宣 旨 に よ り 御 斎 会 講 師 装 束 料 ・ 臨 時 秦

幣 料 に 充 当 し た と 言 い 、 伊 勢 幣 料 に 充 当 す る こ と が で き な か っ た 。 と こ ろ が 、 尚 点 が 率 分 綾 を 御 斎 会 講 師 装 束 料 に 充 当 し た 際 に は 宣 旨 が 下 っ て

お ら ず 、 尚 点 の と っ た 措 置 は 不 当 で あ る と 評 さ れ て い る の で あ る 。 こ れ

に よ れ ば 、 正 蔵 率 分 の 運 用 は 宣 旨 に よ っ て な さ れ て い た こ と が わ か る 0

同 じ ‑ ﹃ 権 記 ﹄ 長 徳 四 年 ( 九 九 八 ) 正 月 七 日 条 は ' 白 馬 節 会 に 際 し て の

公 卿 以 下 の 禄 料 に 関 す る 記 事 で あ る が ' そ の 記 事 に は 、 ● ● ● ● 大 蔵 史 生 成 正 申 云 、 率 分 絹 可 レ 召 、 而 宣 旨 末 レ 下 云 々 、 即 以 二 陸 奥 臨 時

交 易 絹 十 疋 . 倍 下 、 可 レ 返 TT 納 其 代 . 之 由 仰 了 、

と い う 記 載 が み ら れ る 。 公 卿 以 下 の 禄 料 に 率 分 絹 を 充 当 し よ う と し た が 、

宣 旨 が 下 っ て い な い の で 、 陸 奥 臨 時 交 易 絹 を 借 用 L 、 そ の 臨 時 的 措 置 杏

講 じ て い た の で あ る 。 右 の 記 事 で も 、 宣 旨 が 正 蔵 率 分 の 運 用 に 重 要 な 意

味 を も っ て い た 。

こ の よ う に 正 蔵 率 分 の 運 用 に は 、 宣 旨 の 有 無 が 非 常 に 重 要 な 意 味 を も

っ て お り 、 正 蔵 率 分 の 運 用 は ま さ に 宣 旨 に よ り 決 定 さ れ て い た と 言 え る 。

こ の 点 は 正 蔵 率 分 の 用 途 を 考 え る う え で ' 留 意 し な け れ ば な ら な い で あ

ろ う 。

と こ ろ で ' 先 述 で 正 蔵 率 分 の 用 途 が 固 定 ・ 定 着 化 L t ま た 拡 大 し て い

っ た こ と を 指 摘 し た が 、 で は 、 右 の よ う な 用 途 の 変 化 は 一 体 何 を 意 味 す

る の で あ ろ う か 。 こ れ は 中 央 財 政 に 占 め る 正 蔵 率 分 の 比 重 が 増 大 し た と

と も に 、 正 蔵 率 分 が 中 央 財 政 に と っ て 重 要 な 財 源 と な っ て き た こ と を 意

味 す る こ と は 論 を ま た な い で あ ろ う 。 し か も 前 節 で み た よ う に 、 年 輪 末

進 の 深 刻 化 に 伴 っ て 中 央 財 政 に お け る 正 蔵 率 分 の 重 要 性 は 増 し 、 率 分 は

十 分 の 二 へ 改 定 さ れ た の で あ る が 、 こ の 率 分 の 改 定 と 用 途 の 変 化 と は ま

さ に 軌 を 一 に す る も の で あ っ た 。 そ れ は 率 分 の 改 定 に み ら れ た 正 蔵 率 分

(9)

の 比 重 増 大 が 、 用 途 の 変 化 か ら も 同 じ く う か が わ れ た こ と か ら 指 摘 で き

る の で あ る 。 し た が っ て 、 正 蔵 率 分 の 用 途 は 率 分 の 改 定 を 契 機 と し て 、

変 化 し て い っ た と 考 え ら れ る 。 そ し て 、 正 蔵 率 分 は 非 常 の 用 に 充 当 す る

た め の 財 源 以 上 の 重 要 な 意 義 を 担 う 財 源 と し て 、 中 央 財 政 に 確 固 た る 位

置 を 占 め た と 言 え よ う 。 こ の 点 は 、 次 章 に み る 正 蔵 率 分 を 管 掌 ・ 収 納 す

る 正 蔵 率 分 所 に つ い て も 同 様 に う か が わ れ る の で あ る 。

三 、 正 歳 事 分 所

‖ 機 能 ﹃大 内 裏 図 考 証 ﹄ 第 廿 五 に よ れ ば ' 正 蔵 率 分 所 (以 下 、 率 分 所 と 略 す )

は 大 蔵 省 正 倉 蔵 院 内 に 位 置 し 、 所 内 に は 率 分 蔵 ・ 率 分 倉 な ど と 称 さ れ る (I,i, l 蔵 が あ っ た よ う で あ る 。 そ の 機 能 は 主 に 諸 国 か ら 京 進 さ れ る 正 蔵 率 分 杏

管 掌 ・ 収 納 す る こ と に あ る 。

こ の 率 分 所 に 関 し て は 、 ﹃左 経 記 ﹄ に 率 分 蔵 修 造 の 記 事 が あ る 。 万 寿

二 年 ( 一 〇 二 五 ) 五 月 七 日 条 に よ れ ば ' 率 分 蔵 の 当 時 の 状 況 は 「是 数 十 ∴‑ 年 不 丁一修 琴 之 間 、 破 損 殊 甚 ' 雨 脚 不 レ 陣 云 々 」 と 、 か な り 荒 廃 し て い た 。

そ こ で 去 春 か ら 修 造 を 始 め 、 こ の 日 の 終 功 と な っ た の で あ る 。 こ の 修 造

完 成 に 伴 い 、 綾 ・ 糸 ・ 麻 布 が 納 入 さ れ た の を 始 め と し て 、 同 年 六 月 に は

伯 書 ・ 能 登 ・ 相 模 等 国 進 上 の 綾 ・ 糸 ・ 布 ・ 金 等 が 、 長 元 元 年 ( 一 〇 二 八 )

四 月 に は 因 幡 国 進 上 の 調 布 二 千 端 が 、 同 年 五 月 に は 伯 書 国 進 上 の 手 作 布 二川二 百 端 ・ 麻 布 五 百 端 が 各 々 納 入 さ れ て い る 。 率 分 所 の 収 納 機 能 は 率 分 蔵 修

造 に よ り 、 漸 次 増 大 し て い っ た と 考 え ら れ る 。 率 分 所 の 収 納 機 能 に 関 し て は 、 ﹃左 経 記 ﹄ 長 元 五 年 ( 一 〇 三 二 ) 六 月

三 日 条 に 興 味 深 い 記 事 が み ら れ る 。 そ れ に よ れ ば 、 阿 波 前 守 義 忠 朝 臣 は 弐 数

中 を も っ て 、 渦 糸 を 斎 院 ・ 率 分 所 に 各 々 進 納 し た が 、 年 序 を 経 て も 返 抄

が 発 給 さ れ な い の で 、 そ の こ と を 愁 い 申 し た 。 一 方 、 こ れ に 対 す る 大 蔵

省 側 の 主 張 は 「不 レ 知 二 所 々 分 「 代 々 任 二式 数 .省 納 」 と 、 式 数 に 任 せ て 省

納 す る の が 代 々 の 例 で あ り 、 式 数 中 か ら 斎 院 ・ 率 分 所 等 の 所 々 の 分 を 除

い て 省 納 す る も の で は な い と す る 。 そ こ で 、 「 任 二 代 々 例 「 如 二 式 数 」 可 一

省 納 二 と い う 収 納 方 式 を と る か 、 或 い は 「 除 二 所 々 分 t之 外 可 二 省 納 二

と い う 収 納 方 式 を と る か が 問 題 と さ れ る が 、 そ の 結 果 は 後 者 の 収 納 方 式

を 定 め 申 し 、 大 蔵 省 側 の 主 張 と は 異 な る 収 納 方 式 を 採 用 す る こ と に な っ

た の で あ る 。 す な わ ち 、 諸 国 か ら 京 進 さ れ る 物 資 を 大 蔵 省 が 収 納 し 、 そ

こ か ら 斎 院 ・ 率 分 所 等 の 所 々 へ 物 資 を 分 給 す る 従 来 の 方 式 か ら 、 大 蔵 省

を 介 さ ず 諸 国 か ら 直 接 斎 院 ・ 率 分 所 等 の 所 々 へ 物 資 が 収 納 さ れ る 方 式 へ

と 改 変 さ れ た の で あ る 。

こ れ に よ り 、 率 分 所 は 大 蔵 省 を 介 せ ず 、 直 接 諸 国 か ら 物 資 (正 蔵 率 分 )

を 収 納 す る こ と に な り 、 物 資 収 納 の 点 で ' 率 分 所 は 独 立 性 を 強 め て い っ

た こ と が 推 測 さ れ る 。 具 休 的 に そ れ を 示 す も の と し て ' 率 分 所 が 物 資 収

納 に 伴 う 諸 国 へ の 返 抄 の 発 給 を 行 う よ う に な っ た こ と が 指 摘 で き る 。 ﹃ 朝

野 群 載 ﹄ 巻 第 廿 八 (諸 国 功 過 ) に は 美 作 国 の 寛 治 七 年 へ 一 〇 九 三 ) 料 に

対 す る 率 分 所 の 返 抄 が み ら れ 、 率 分 所 が 諸 国 へ の 返 抄 の 発 給 を 行 っ て い

た こ と が わ か る 。 同 じ ‑ ﹃朝 野 群 載 ﹄ 巻 第 廿 八 (諸 国 功 過 ) に は 、 隠 岐

前 司 の 功 過 に 関 す る 率 分 所 納 入 勘 文 も み ら れ 、 そ の 点 を 考 え る う え で 秦

考 と な ろ う 。

(10)

と こ ろ で 、 率 分 所 の 機 能 を み る う え で 看 過 で き な い も の に ' 切 下 文 の

発 給 が あ げ ら れ る 。 切 下 文 に 関 し て は 従 来 ほ と ん ど 考 察 さ れ た こ と は 吃 (3 ) ‑ 、 そ の 成 立 ・ 内 容 等 明 ら か で な い 点 が 多 い 。 そ こ で ' 先 ず 切 下 文 と は

如 何 な る 文 書 な の か と い う 問 題 か ら 検 討 し な け れ ば な ら な い が 、 詳 細 は

別 稿 で 述 べ る 予 定 な の で 、 本 稿 で は そ の 概 要 を 述 べ る と と も に 、 特 に 率 ■

分 所 の 切 下 文 を 中 心 に 考 え て み た い 。 ﹃職 原 紗 ﹄ 上 (大 蔵 省 ) に は 、 ' + + '= 此 省 掌 二 諸 国 租 税 ( 諸 公 事 之 時 ' 成 二 切 下 文 .' 令 レ 支 TT 配 干 国 々 .臭 '

と あ る よ う に 、 切 下 文 と は 諸 公 事 の 際 に 大 蔵 省 か ら 諸 国 に 発 給 さ れ る 文

書 で あ っ た 。 ﹃標 注 職 原 紗 別 記 ﹄ に は 、

切 下 文 ( 中 略 ) も し 京 都 に 於 て 、 公 事 の 雑 用 に 売 ら れ む と す る に 、

大 蔵 の 貯 物 不 足 な る 時 は 、 省 よ り 未 進 の 国 々 へ 、 切 下 文 と い ふ も の 杏

送 り て 、 催 促 せ ら る 〜 な り 、 標 注 に 云 る 如 ‑ 、 切 下 文 は 、 即 今 世 の 切

手 切 符 の 類 也 、

と 説 明 さ れ て い る 。 和 田 英 松 氏 も 右 の 記 事 と 概 ね 同 様 な 解 説 を し て お ら t3 ) れ る 。 こ れ ら に よ れ ば ' 切 下 文 と は 諸 公 事 に 充 用 す る 大 蔵 納 物 の 不 足 杏

契 機 と し て 、 未 進 国 へ の 催 促 の 手 段 と し て 発 給 さ れ る も の で あ り ' し か

も 大 蔵 省 独 自 の 発 給 文 書 で あ っ た と 解 さ れ て い た よ う で あ る 。 し か し 吃

が ら 、 切 下 文 の 発 給 官 司 は 管 見 の 限 り 、 大 蔵 省 の 他 に 、 率 分 所 ・ 大 炊 寮 (33 ) ・ 造 酒 司 ・ 主 殿 寮 ・ 太 政 官 厨 家 ・ 蔵 人 所 の 中 央 諸 官 司 が あ げ ら れ 、 切 下

文 は 大 蔵 省 独 自 の 発 給 文 書 で な か っ た と 言 え る 。 1 万 、 切 下 文 を 未 進 催

促 の 手 段 と し て 発 給 さ れ る 文 書 と 見 倣 す こ と は 、 切 下 文 の 一 面 を と ら え

て い る に す ぎ な い 憾 み が あ る 。 こ の 点 、 詳 し ‑ は 別 稿 に 譲 り ' 先 ず は 率

分 所 の 切 下 文 の 具 休 的 事 例 を 紹 介 し 、 検 討 し た い 。 率 分 所 の 切 下 文 の 初 見 史 料 は 、 管 見 の 限 り ﹃ 権 記 ﹄ 長 徳 三 年 (九 九 七 ) 七 月 十 九 日 条 で あ る 。

今 日 八 省 行 幸 也 ' (中 略 ) 右 少 弁 明竺 石 、 伊 勢 幣 料 己 可 二 閑 怠 .' 報 云 ' ● ● ● ● 率 分 下 文 近 江 駿 河 等 国 各 三 疋 成 了 、 何 国 未 進 乎 、 此 間 近 江 介 則 思 又 ● ● ● ● 参 会 云 、 便 部 等 昨 夕 持 TT来 率 分 下 文 ( 綾 三 疋 絹 三 疋 之 中 ' 絹 令 レ進 了 、

至 二 千 綾 .者 忽 無 二 其 儀 .者 、 須 猶 可 レ 進 由 可 レ 示 也 ' (下 略 )

当 日 は 先 述 し た よ う に ' 祈 年 穀 奉 幣 に 伴 う 1 条 天 皇 の 八 省 院 行 幸 が 行 わ

れ た 。 そ の 際 ' 伊 勢 幣 料 に 関 し て は 、 予 め 率 分 下 文 を 使 部 等 に 持 た せ 、

近 江 ・ 駿 河 等 国 に 綾 ・ 絹 各 三 疋 を 進 済 す る よ う に 催 促 し た が 、 近 江 国 の

綾 三 疋 未 進 に よ っ て 幣 料 腕 恵 の 状 況 と な っ た の で あ る 。 こ の 後 、 伊 勢

幣 料 が 如 何 な る 物 資 を も っ て 充 当 さ れ た か は 先 述 し た の で 割 愛 す る が 、

右 の 記 事 か ら 、 率 分 所 は 使 部 等 を 派 遣 し ' 切 下 文 に よ っ て 諸 国 か ら 行 辛

費 用 を 催 促 徴 収 し て い た こ と が 判 明 す る 。 同 じ ‑ ﹃権 記 ﹄ 長 保 二 年 ( 一

〇 〇 〇 ) 四 月 廿 日 条 に は ' 率 分 所 が 土 佐 国 に 発 給 し た 切 下 文 に 関 す る 記

事 も み ら れ る 。

寛 弘 二 年 ( 一 〇 〇 五 ) 賀 茂 斎 院 の 顧 祭 に 関 し て ' ﹃ 小 右 記 ﹄ 同 年 四 月

十 四 日 条 に 、 ● ● ● ● ● 斎 院 硬 祭 日 御 車 副 ・ 手 振 紫 褐 ・ 青 褐 等 井 紫 蓋 料 染 絹 、以 二率 分 下 文 「 ● ● ● ● 令 レ 召 二 諸 国 4' 忽 不 レ 可 二 出 来 「 仇 触 二事 由 於 左 府 .' 令 レ 借 ヨ 下 後 院 納 絹 .I

後 白 以 二率 分 絹 一 可 二 返 納 .也 、 (下 略 )

と あ る 。 こ れ に よ れ ば 、 斎 院 硬 祭 日 に お け る 車 副 ・ 手 坂 の 装 束 料 た る 褐

・ 絹 を 、 率 分 下 文 に よ り 諸 国 に 召 進 さ せ て い た こ と が わ か る 。 た だ ' 率

分 縮 を 早 急 に 弁 済 で き な い の で 、 後 院 納 縞 を 借 用 し 、 後 日 率 分 縮 を も っ

て 返 納 し た の で あ る 。 ﹃春 記 ﹄ 長 暦 二 年 二 〇 三 八 ) 十 月 十 六 日 条 に は '

(11)

天 台 座 主 前 大 僧 正 慶 命 の 寂 滅 に 伴 う 御 修 法 の 親 涌 料 に 関 し て ●■ ︹ 率 蔵 人 章 祐 来 云 '・ 明 日 御 楓 謂 布 等 ' 律 ・か ・L JL I ・' ・ : i ・ ‑; ̲‑T ;.瑠

錐 二道 催 「 寄 二 事 於 左 右 「 不 一弁 申 「 叉 重 遣 催 己 畢 者 ' 予 云 ' 随 二 先 出

来 「 各 可 レ遣 二 彼 寺 「 其 残 追 々 可 二 催 遣 一 也 ' 其 布 所 二 出 来 一之 員 可 レ被 二

注 送 「 随 二其 員 .各 為 レ 遣 二 拙 状 .也 ' (下 略 )

と あ り ' 率 分 下 文 に よ り ' 下 野 ・ 武 蔵 ・ 相 模 三 ヶ 国 に 訳 詞 料 布 各 百 端 杏

進 済 さ せ て い る が 、 実 際 は か な り 未 進 を な し て い た 。 そ こ で ' 未 進 諸 国

へ の 催 促 と と も に ' 料 物 の 出 来 に 随 い ' 追 々 各 寺 (興 福 寺 ・ 延 暦 寺 ・ 東

寺 ) に 料 物 を 遣 わ す 措 置 が と ら れ た 。

こ れ 以 降 、 ﹃中 右 記 ﹄ 永 島 元 年 ( 一 〇 九 六 ) 四 月 十 八 日 条 に は ' 同 月

廿 日 に 施 行 さ れ る 塩 時 廿 二 杜 奉 幣 に 関 す る 記 事 が み ら れ る 。 必 要 部 分 だ

け を 掲 載 す れ ば ' ● ● ● ● ● ● ● ● 予 沙 汰 之 率 分 幣 料 下 文 ' 依 レ 有 二 別 院 宣 . 切 司 宛 大 国 筆 了 ' 是 期 日 近 々

易 二進 済 .之 故 也 '

と な る 。 「予 」 で あ る 中 右 記 の 記 主 藤 原 宗 忠 は ' 二 年 前 の 嘉 保 元 年 ( 一 一34 ) 〇 九 四 ) 六 月 に 率 分 所 勾 当 に 補 任 さ れ て お り ' こ れ に よ り 率 分 幣 料 下

文 の こ と を 沙 汰 し て い た と 思 わ れ る が ' 一 方 ' 幣 料 に 関 し て は ' 奉 幣 日

時 が 差 し 迫 っ て い る た め ' 幣 料 を 進 済 し 易 い 大 国 等 に 切 下 文 を 発 給 し た

の で あ る 。 こ れ は 「院 宣 」 に よ り な さ れ た こ と に 留 意 す る 必 要 が あ る が '

切 下 文 発 給 先 の 諸 国 が 如 何 な る 規 準 の も と に 選 定 さ れ た か を 示 し て お り '

興 味 深 い 事 例 で あ る 。 ﹃兵 範 記 ﹄ 仁 安 三 年 ( 二 六 八 ) 十 1 月 六 日 条 に

は ' 大 嘗 会 三 社 奉 幣 料 に 関 し て t . ︹ 切 ) ● ● 率 分 所 明 後 日 三 社 幣 料 物 、 付 二 諸 国 功 下 文 於 官 掌 「 即 令 二 催 促 ]了 、 と あ り ' 率 分 所 が 切 下 文 を 太 政 官 の 下 級 宮 人 た る 官 掌 に 付 し ' 諸 国 に 幣

料 を 催 促 し て い た こ と が わ か る 。 L35 ︺ 以 上 ' 率 分 所 の 切 下 文 の 代 表 的 事 例 を 列 挙 し た が ' 上 記 の 事 例 か ら 指

摘 で き る 諸 点 を あ げ れ ば ' 次 の ど と ‑ で あ る 。 ● 第 一 に ' 率 分 所 が 切 下 文 の 発 給 に よ り ' 直 接 諸 国 に 行 事 費 用 の 催 促 徴

収 を な し え た こ と で あ ろ う 。 率 分 所 が 何 時 頃 か ら 切 下 文 の 発 給 を な し え

た か は 未 詳 で あ る が ' そ の 初 見 史 料 が ﹃権 記 ﹄ 長 徳 三 年 七 月 十 九 日 条 (前

描 ) で あ る こ と か ら す れ ば ' そ の 時 期 は お よ そ 十 世 紀 末 頃 で な か っ た か

と 推 測 さ れ る 。 こ こ で 想 起 さ れ る の が 、 ほ ぼ 同 じ 頃 に 率 分 の 改 定 が な さ

れ た こ と で あ る ㍉

先 述 し た よ う に ' 十 世 紀 末 頃 ' 年 輪 未 進 の 深 刻 化 に 伴 っ て 中 央 財 政 に

お け る 正 蔵 率 分 の 重 要 性 は 増 し 、 率 分 は 改 定 さ れ た の で あ る が ' こ の 率

分 の 改 定 は 率 分 所 切 下 文 の 初 見 史 料 の 時 期 と は ば 同 時 期 で あ っ た こ と が

判 明 す る 。 し た が っ て ' 切 下 文 の 発 給 と 率 分 の 改 定 は ほ ぼ 同 時 期 に な さ

れ た も の と 考 え ら れ る 。 さ ら に ' 率 分 の 改 定 に 伴 い ' 正 蔵 率 分 が 中 央 財

政 に と っ て 重 要 な 財 源 と な っ て き た こ と は 、 正 蔵 率 分 の 用 途 の 変 化 か ら

指 摘 し た が ' 切 下 文 の 発 給 も ま さ に 上 述 の 点 と 関 連 づ け て 把 握 し な け れ

ば な ら な い 。 す な わ ち ' 率 分 所 が 大 蔵 省 ・ 大 炊 寮 等 の 令 制 宮 司 と 同 じ ‑ '

切 下 文 を 発 給 し て い る こ と は ' 正 蔵 率 分 が 重 要 な 財 源 と な っ て き た こ と

に よ っ て ' 正 蔵 率 分 を 管 掌 ・ 収 納 す る 率 分 所 も 中 央 諸 宮 司 の 中 で 重 要 な

位 置 を 占 め て き た こ と を 示 す も の で あ る 。 率 分 所 は ま さ し ‑ 中 央 諸 宮 司

の 中 で 重 要 な 位 置 を 占 め る ま で に ' 成 長 ・発 展 し て き た と 解 さ れ る の で あ る 。

第 二 に ' 上 記 の 代 表 的 事 例 を 見 る 限 り に お い て 、 切 下 文 が 明 ら か に 未

(12)

進 催 促 の 手 段 と し て 発 給 さ れ た 事 例 は み ら れ ず 、 あ ‑ ま で も 行 事 費 用 を

諸 国 に 割 り 当 て 、 催 促 徴 収 す る 手 段 と し て 発 給 さ れ る も の で あ っ た こ と

が 指 摘 で き る 。 こ の 点 、 大 蔵 省 ・ 大 炊 寮 等 の 切 下 文 と も 併 せ て 、 総 括 的

に 切 下 文 を 分 析 す る 必 要 が あ る が 、 そ れ は 別 稿 に 譲 る こ と と し て 、 本

稿 で は 特 に 率 分 所 の 切 下 文 を み る 限 り で の 問 題 点 を 指 摘 す る に 留 め て お

き た い 。

最 後 に 、 率 分 所 の 切 下 文 に よ っ て 諸 国 か ら 催 促 徴 収 さ れ た 行 事 費 目 杏

み る と 、 幣 料 に 関 す る 事 例 を 多 ‑ 見 出 す こ と が で き る 。 こ の 点 は 大 蔵 省 (3 ) の 切 下 文 に 関 し て も 同 様 に 指 摘 で き る の で あ り 、 幣 料 は 率 分 所 、 若 し ‑

は 大 蔵 省 の 切 下 文 に よ り 、 諸 国 か ら 催 促 徴 収 さ れ る 場 合 が 多 か っ た と 解

さ れ る 。 そ し て 時 代 が 降 る に 随 い 、 幣 料 の ほ と ん ど に 切 下 文 に よ る 徴 収

方 式 が 適 用 さ れ た も の と 考 え ら れ る 。 鎌 倉 時 代 の 先 例 を 多 ‑ 引 ‑ 公 幸 吉

﹃ 夕 拝 備 急 至 要 抄 ﹄ 上 に は 、 八 月 の 年 中 行 事 で あ る 北 野 祭 に 関 し て 、

信 ・i ・・j ・L l ㌦

:

.

. . ・. 玩 .・. I.‑ ] ・・[ ・.‑ .'.

と あ り 、 幣 料 ・ 饗 料 は 総 て 、 率 分 所 ・ 大 蔵 省 の 切 下 文 に よ り 諸 国 か ら 催

促 徴 収 さ れ て い た こ と が わ か る 。 そ の 他 、 少 し 時 代 が 降 る が 、 ﹃ 三 長 記 ﹄

建 久 七 年 へ 一 一 九 六 ) 十 7 月 廿 九 日 条 、 ﹃ 勘 仲 記 ﹄ 弘 安 十 l 年 ( l 二 八

八 ) 二 月 十 二 日 条 、 同 年 四 月 廿 五 目 条 等 は 、 幣 料 に 関 す る 率 分 所 切 下 文

の 事 例 で あ り 、 参 考 と な ろ う 。

以 上 が 、 率 分 所 の 切 下 文 の 代 表 的 事 例 か ら 指 摘 で き る 諸 点 で あ る 。 率

分 所 は 切 下 文 を 発 給 し た こ と か ら わ か る よ う に 、 中 央 諸 宮 司 の 中 で 重 要

な 位 置 を 占 め る ま で に 成 長 ・ 発 展 し て お り 、 そ の 収 納 機 能 も 漸 次 増 大 し

て い っ た と 解 さ れ る 。 し か る に 、 十 二 世 紀 末 以 降 、 諸 国 か ら の 進 納 物 の 違 期 ・ 未 進 が 顕 著 に な っ て き た こ と を 契 機 と し て 、 そ の 収 納 機 能 は 支 障

を 生 じ て き た 。 「玉 葉 」 建 久 四 年 ( 一 一 九 三 ) 正 月 四 日 条 は 十 二 社 奉 幣

に 関 す る 記 事 で あ る が 、 そ の 記 事 に 「伊 勢 幣 料 率 分 所 難 レ 叶 、 僧 叩 一後

院 一 儲 レ 之 」 と あ る よ う に 、 率 分 所 は 伊 勢 幣 料 を 弁 備 で き ず 、 そ の 代 り と

し て 後 院 に 弁 備 さ せ て い た 。 ド ﹃玉 薬 ﹄ 建 暦 二 年 へ 一 二 一 二 ) 三 月 廿 二 日 条 に よ れ ば 、 新 制 廿 一 ヶ 条

中 に 「 一 可 三 如 し 法 勤 「 行 諸 社 祭 紀 神 事 軍 事 」 と い う 一 条 が み ら れ る 。 そ

の 記 事 に は 、 ● ● ● ● ● ● ■ ■ ● ● ■ ● ● 兼 叉 祈 年 穀 以 下 伊 勢 幣 、 率 分 所 納 物 国 、 或 近 年 李 充 猶 致 二 所 渋 り或 当

日 刻 限 穐 以 進 済 、 然 間 儀 式 空 入 二 夜 景 1 奉 遥 殆 及 二 晩 更 1 自 今 最 後 専

存 二 謹 憤 1 永 勿 二 慨 緩 T

と あ り 、 率 分 所 納 物 国 に よ る 幣 料 の 違 期 ・ 未 進 が 、 行 事 運 営 に 支 障 を 与

え て い た 。 こ れ は こ の 時 期 の 率 分 所 の 収 納 状 況 が 悪 化 し て い た こ と を 具

体 的 に 示 す 事 例 で あ る 。 ﹃ 民 経 記 ﹄ 寛 喜 三 年 ( 一 二 三 l ) 七 月 廿 五 日 条

に は 北 野 祭 の 饗 料 に 関 し て 、 「 北 野 祭 大 蔵 ・ 率 分 両 所 饗 散 状 申 レ之 、 於 レ

今 者 、 勤 足 国 々 面 々 対 搾 、 難 治 候 族 」 と あ り 、 北 野 祭 の 饗 料 を 諸 国 が 対

揮 し て い た 。 し か し な が ら 、 「率 分 所 少 々 可 レ 済 之 国 々 七 十 回 候 歎 、 於 二

大 蔵 省 一着 堅 固 無 二 其 国 二 候 」 と あ る よ う に 、 率 分 所 側 で は 饗 料 進 済 国 が

僅 か な が ら あ っ た よ う で あ る 。 そ れ に 比 し て 、 大 蔵 省 側 で は 饗 料 進 済 国

が ま っ た ‑ 無 い 状 況 で あ り 、 率 分 所 側 と は 対 照 的 で あ る 。

十 二 世 紀 末 か ら 十 三 世 紀 初 頭 に か け て の 率 分 所 の 収 納 状 況 を 示 す 上 記

の 事 例 に よ れ ば 、 率 分 所 の 収 納 機 能 は 十 二 世 紀 末 以 降 、 諸 国 か ら の 進 柄

物 の 違 期 ・ 未 進 が 顕 著 に な っ て き た こ と を 契 機 と し て 、 支 障 を 生 じ て き

(13)

たと 言 え よ う 。 し か し な が ら 、 ﹃ 民 経 記 ﹄ の 前 掲 記 事 に み ら れ た 大 蔵 省

の 状 況 と 対 比 す れ ば 、 率 分 所 は 不 充 分 な が ら も 末 だ 機 能 を 発 揮 し て い た

と解 さ れ る の で あ る。

口 職 員

率 分 所 の 職 員 は 、 ﹃ 拾 芥 抄 ﹄ の 前 掲 記 事 に 「 以 二 弁 官 一 人 一掌 二 其 事 」

以 一主 計 頭 大 蔵 輔 大 監 物 等 一為 二 勾 当 二 と あ る よ う に 、 弁 官 及 び 勾 当 の主 計

頑 ・ 大 蔵 輔 ・ 大 監 物 等 に よ っ て 構 成 さ れ る 。 勿 論 、 勾 当 の下 に は 使 部 等 Lpt̲ ) の 下 級 宮 人 が い た と 考 え ら れ る が 、 大 蔵 省 の 下 級 宮 人 の史 生 ・ 省 掌 等 ち ki'a L 率 分 所 の職 務 に関 与 し て いた よ う で あ る 。 ■ と ころ で、 主 計 頑 ・ 大 蔵 輔 ・ 大 監 物 等 は勾 当 と いう 職 名 が 付 さ れ て い

る が 、 一 方 、 率 分 所 の職 務 を 管 轄 す る 弁 官 に は 、 如 何 な る 職 名 が 付 さ れ

て い た の で あ ろ う か 。 ﹃ 拾 芥 抄 ﹄ の 前 掲 記 事 に は 「掌 二 其 事 二 と あ る だ

け で 職 名 は み ら れ ず 、 し か も 勾 当 の 一 員 で は な か っ た か の よ う に記 さ れ

て いる。 ま た 、 勾 当 補 任 の 初 見 事 例 で あ る ﹃ 別 衆 符 宣 抄 ﹄ 天 暦 十 年 六 月

廿 日 宣 旨 へ前 掲 ) で も 、 弁 官 は 勾 当 の 一 員 と し て み え てい な い 。 こ れ ら か

ら す れ ば 、 弁 官 に は勾 当 と 異 な る職 名 が 付 さ れ て い た 可 能 性 が 生 じ て ‑

る 。 ・い 、

和 田英 松 氏 は こ の 点 を 踏 ま え て、 弁 官 を 別 当 と 見 徹 さ れ た と 思 わ れ 、

首 肯 す べ き 見 解 の よ う に 見 受 け ら れ る が 、 し か し 、 弁 官 を 別 当 と 記 し た

事 例 は 管 見 の 限 り で は み ら れ ず 、 その ほ とん ど の 事 例 は 「 率 分 所 勾 当 」 な

い し は 「 率 分 勾 当 」 と 記 さ れ て いる の で あ る。 弁 官 に も や は り 勾 当 と い

う 職 名 が 付 さ れ て い た こ と が 判 明 す る 。 た だ 、 弁 官 に も 勾 当 と いう 職 名 が同 じ く 付 さ れ て いた と し ても 、 主 計 頭 ・ 大 蔵 輔 等 兼 任 の勾 当 と は 同 等

に 扱 え ず 、 あ ‑ ま で も 他 の 勾 当 を 指 揮 ・ 監 督 す る筆 頭 の立 場 に位 置 し て

いた こと は 言 う ま で も な い 。 一 体 、 和 田氏 が 如 何 な る 典 拠 を も っ て 、 弁

官 を 別 当 と 見 徹 さ れ た か は 判 然 と し な い の で、 氏 の 見 解 を ま っ た ‑ 否 定

す る こと は で き な いが 、 以 上 の よ う に 、 弁 官 にも 勾 当 と いう 職 名 が 付 さ

れ て い た と 解 す る の が 妥 当 の よ う に思 わ れ る。

そ こ で 、 改 め て 率 分 所 勾 当 に 焦 点 を あ て 検 討 し た い 。 率 分 所 勾 当 と し

てみ ら れ る 人 物 を 管 見 の 限 り l 覧 に し た も の が 、 付 表 冊 で あ る。 こ の義

を 通 覧 し て 次 の よ う な こ と が 指 摘 で き る0 第 一 に、 表 中 に み ら れ る 弁 冒

は総 て 中 弁 (権 官 を 含 む ) で あ り 、 率 分 所 勾 当 に補 任 さ れ る 弁 官 は中 弁 (権 官 を 含 む ) で あ っ た と 解 し て 大 過 な い で あ ろ う 。 第 二 に 、 弁 官 兼 任

以 外 の 勾 当 と し て は 、 ﹃拾 芥 抄 ﹄ の 前 掲 記 事 に み ら れ る 主 計 頭 ・ 大 蔵 輔

・ 大 監 物 の他 に 、 民 部 輔 ・ 主 税 頑 が 補 任 さ れ て いる 事 例 も み ら れ 、 勾 当

の 兼 任 は種 々 の 中 央 諸 宮 司 の 宮 人 に及 ぶ も の であ っ た こ と が わ か る 。

こ れ ら の 諸 点 を 前 提 と し て、 さ ら に指 摘 す れ ば 、 第 一 に 、 勾 当 の 宮 人

構 成 が 大 蔵 物 の出 納 に 関 与 す る宮 人 と は ぽ 同 様 な 構 成 を と っ て いる こ と ∴ で あ り 、 第 二 に 、 勾 当 に 補 任 さ れ る 宮 人 は 、 官 位 相 当 よ り み れ ば 五 位 ク

ラ ス の 宮 人 で あ り 、 し か も そ の ほ と ん ど が 中 央 諸 宮 司 の長 官 、 若 し ‑ は

次 官 に位 置 し て い る こと で あ る。 こ の 二 点 は 、 率 分 所 の 勾 当 が 如 何 に 重

要 な 職 で あ っ た か を 示 す も の で あ り 、 率 分 所 は 機 能 の面 の み な ら ず 、 職

員 の面 か ら も 重 要 視 さ れ て い た こ と が わ か る の であ る。

さ て 、 以 上 の よ う な 内 容 ・ 特 徴 を も つ 率 分 所 の 勾 当 に関 し て、 そ の人

選 が 如 何 な る 規 準 を も っ て な さ れ た の か が 問 題 と な る。 こ の点 を 考 察 す

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