は じ め に 正 蔵 率 一 分 制 と 率 分 所 川
本 龍 市
一 、 正 貴 幸 分 制 の 成 立
九 世 紀 半 ば に 国 司 交 替 時 の 欠 負 未 納 補 填 策 と し て 成 立 し た 格 率 分 の 刺
度 ' 及 び 九 世 紀 末 に 調 庸 物 の 旧 年 未 進 解 消 策 と し て 制 度 化 さ れ た 未 進 率
分 の 制 度 は 、 と も に よ ‑ 知 ら れ る と こ ろ で あ る 。 一 方 ' こ の 両 制 度 に 対
し て ' 本 稿 で 論 ず る 正 蔵 率 分 の 制 度 は こ れ ま で 本 格 的 に 考 察 さ れ た こ と
は な ‑ 、 そ の 成 立 ・ 内 容 等 に 関 し て 不 明 確 な 点 が 多 い 。 し た が っ て ' 検
討 す べ き 問 題 は 末 だ 多 ‑ 残 さ れ て い る の が 現 況 で あ る と 言 っ て よ い 。
従 来 の 研 究 成 果 と し て は ' 正 蔵 率 分 の 制 度 を 調 庸 制 の 変 質 過 程 に 位 置 ‑■ づ け た 泉 谷 康 夫 氏 の 研 究 等 が 僅 か に 見 受 け ら れ る 。 し か し な が ら ' そ れ J・,r E に 対 す る 長 山 泰 孝 ・ 中 野 栄 夫 両 氏 の 批 判 も あ り ' 泉 谷 氏 の 所 説 を 改 め て
再 検 討 す る 必 要 性 も あ る よ う に 思 わ れ る 。
そ こ で ' 本 稿 で は 以 上 の 状 況 を 踏 ま え て ' 特 に こ の 制 度 の 成 立 ・ 内 容
等 を 中 心 に 考 察 し ' 併 せ て 正 蔵 率 分 所 の 機 能 や 職 員 も 一 瞥 し て お き た い 。
そ れ を も っ て ' 平 安 中 期 の 中 央 財 政 を 究 明 す る T 助 と な れ ば 幸 甚 で あ る 。
※ 本 文 中 の 付 表 州 冊 は 本 文 末 に 1 括 し て 掲 載 し た 。 H 成 立 時 期
正 蔵 率 分 制 に 関 し て は ' ﹃ 拾 芥 抄 ﹄ ( ﹃ 新 訂 増 補 故 実 叢 書 ﹄ 所 収 本 ) に '
大 蔵 省 .納 物 割 二 十 分 之 二 一為 二 別 納 1 以 二 弁 官 一 人 .掌 二 其 華 以 二主 計
頭 大 蔵 輔 大 監 物 軍 為 二 勾 当 1 叉 年 科 長 殴 者 へ 尚 為 二 歳 被 管 云 々 へ 無 二
正 蔵 率 分 .国 者 、 五 畿 管 国 井 陸 奥 出 羽 周 防 志 摩 淡 路 伊 加貝 ' 依 二 興 福 寺
修 造 .免 TT 除 之 T (3 ) と み ら れ る よ う に ' 大 蔵 省 へ の 貢 納 物 の 内 ' 十 分 の 二 を 割 い て 諸 国 に 別 (1 ) 納 さ せ る 制 度 で あ る 。 そ の 別 納 物 (正 蔵 率 分 ) を 管 掌 ・ 収 納 す る の が 正
蔵 率 分 所 で あ り ' そ の 職 員 は 弁 官 以 下 ' 主 計 頑 ・ 大 蔵 輔 ・ 大 監 物 等 の 兼
任 と な る 。
さ て ' 右 の よ う な 内 容 を も つ 正 蔵 率 分 制 は 何 時 頃 成 立 し た の で あ ろ う
か 。 先 ず こ の 問 題 か ら 考 え て み た い 。 泉 谷 氏 の 所 説 に よ れ ば ' 氏 は ﹃ 別
衆 符 宣 抄 ﹄ 所 載 の 天 暦 六 年 (九 五 二 ) 九 月 十 一 日 官 符 に よ り 成 立 し た と
さ れ ' 当 初 の 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 以 外 に そ の 十 分 の 一 を 別 納 す る 制 度 で あ
り ' 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 二 を 割 い て 別 納 す る も の で は な か っ た と さ
れ る 。 さ ら に 氏 は 、 右 の 官 符 は 未 進 率 分 に 関 す る 内 容 を も つ と と も に 、
同 時 に 正 蔵 率 分 制 へ の 転 換 を も 示 し 、 正 蔵 率 分 制 は 未 進 率 分 制 か ら 転 換
・ 発 展 し た 制 度 で あ る と 見 徹 さ れ た 。
一 方 ' 長 山 泰 孝 ・ 中 野 栄 夫 両 氏 に よ る 泉 谷 説 へ の 批 判 は 、 特 に 泉 谷 氏
の 天 暦 六 年 官 符 の 解 釈 ' 及 び 正 蔵 率 分 制 と 未 進 率 分 制 の 制 度 上 の 関 連 性 、
の 二 点 に 向 け ら れ た 。 中 野 氏 に よ る 批 判 は 、 天 暦 六 年 官 符 は あ ‑ ま で も
未 進 率 分 と の 関 連 で 把 握 し な け れ ば な ら な い も の で あ り 、 こ れ を も っ て
直 ち に 正 蔵 率 分 制 の 成 立 と 見 徹 す こ と は で き な い 点 に あ る 。 長 山 氏 に よ
る 批 判 は 、 正 蔵 率 分 制 と 未 進 率 分 制 の 制 度 上 の 関 連 性 に つ い て で あ る 0
す な わ ち 、 氏 に よ れ ば 「 正 蔵 率 分 (刺 ) は 大 蔵 省 に 納 入 さ れ る 諸 国 の 貢
納 物 の 十 分 の 二 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 度 で あ っ て 、 未 進 境 納 の た め 年 料
に そ え て そ の 十 分 の 一 を 加 納 さ せ る 未 進 率 分 (刺 ) と は ま っ た ‑ 異 質 の
制 度 で あ る 」 (括 弧 内 筆 者 ) と さ れ る 。 そ こ で 、 泉 谷 氏 の 主 張 さ れ る 、
正 蔵 率 分 制 が 未 進 率 分 制 か ら 転 換 ・ 発 展 し た 制 度 で あ る と い う 見 解 の 当
否 を 先 ず 確 認 し て お き た い 。 (5 」 未 進 率 分 制 は 、 周 知 の ど と ‑ 寛 平 五 年 (八 九 三 ) 五 月 十 七 日 官 符 に よ
り 制 度 化 さ れ た 調 庸 物 の 旧 年 未 進 解 消 策 で あ る 。 そ の 内 容 は 年 輪 額 に そ
の 十 分 の 一 を 加 算 し た 額 を 毎 年 京 進 さ せ ' そ れ に よ り 累 積 し た 旧 年 末 進 分
を 解 消 さ せ る も の で あ る 。 一 方 、 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 額 の 十 分 の 二 を 年 輪
額 か ら 割 い て 別 納 さ せ る も の で あ り 、 決 し て 年 輪 額 に 加 納 さ せ る も の で
は な い 。 ま し て 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 以 前 と 以 後 で は 応 輸 額 の 量 的 変 化 は
吃 ‑ 、 未 進 率 分 制 に み ら れ る 旧 年 未 進 の 解 消 せ い う 性 格 は ま っ た ‑ 見 出
さ れ な い 。 よ っ て 、 泉 谷 氏 の 主 張 さ れ る 、 正 蔵 率 分 制 が 未 進 率 分 制 か ら 転 換 ・ 発 展 し た と す る 見 解 は 成 立 せ ず 、 両 者 は あ ‑ ま で も 別 個 の 制 度 と
し て 把 握 し な け れ ば な ら な い 。 こ の 点 、 長 山 氏 に よ る 批 判 は 正 当 で あ る
と 考 え ら れ る 。
こ の よ う に 正 蔵 率 分 利 を 未 進 率 分 制 と は 別 個 の 制 度 と 見 徹 し 、 さ ら に
中 野 氏 の 言 わ れ る よ う に 、 天 暦 六 年 官 符 を 未 進 率 分 と の 関 連 か ら と ら え
る な ら ば 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 は 根 本 的 に 再 検 討 し な け れ ば な ら な い 。
そ こ で 、 問 題 と な っ て い る 天 暦 六 年 官 符 の 全 文 を 次 に 掲 載 し 、 検 討 し て
み た い 。
太 政 官 符 五 畿 内 七 道 諸 国 司
応 三納 レ 官 調 帯 群 中 男 作 物 交 易 雑 物 及 年 料 米 等 年 輪 十 分 之 一 別 副 二 解
文 "辛 ︹七 ︺ 右 検 二 案 内 ↓ 調 庸 雑 物 精 好 合 期 可 二 進 納 一之 状 '去 天 暦 元 年 閏 正 月 廿
三 日 下 知 既 畢 ' 左 大 臣 宣 ' 宜 F 仰 二国 軍 自 今 以 後 ' 納 レ 官 調 庸 井 中 男
作 物 交 易 雑 物 及 年 料 米 年 輪 十 分 之 一 別 副 二 解 文 ↓ 合 期 令 中 進 納 い 若 錐 レ
究 1 進 年 輪 之 準 不 し別 丁 納 十 分 之 l 嘉 ' 仰 二 所 司 一停 二 勘 抄 帳 .者 ' 諸
国 承 知 依 レ 宣 行 レ 之 、 符 到 奉 行 '
左 大 弁 大 江 朝 臣 左 大 史 阿 蘇 宿 祢
天 暦 六 年 九 月 十 一 日
右 の 官 符 は 多 ‑ の 先 学 に よ り 、 未 進 率 分 に 関 す る 官 符 と し て 考 察 ・ 引 用 (rL ) さ れ て お り 、 は ば 通 説 化 し て い る と 言 っ て よ い 。 泉 谷 氏 に お い て も 同 樵
の 見 解 を 提 示 さ れ て い る こ と は 先 述 し た 通 り で あ る 。
右 の 官 符 を 通 説 に よ っ て 解 釈 す れ ば 、 調 庸 ・ 中 男 作 物 等 々 の 年 輪 の 十
分 の 一 (未 進 率 分 ) を 年 輪 と は 別 に 進 納 し 、 た と え 年 輪 を 進 済 し て も 未
進 率 分 を 合 期 別 納 し な け れ ば 抄 帳 を 勘 し な い 、 と な る 。 所 謂 、 未 進 率 分
の 別 納 を 制 定 し た も の と 解 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 右 の 通 説 の 解 釈
に は 二 ・ 三 の 問 題 点 が 提 示 さ れ る 。
第 一 に 、 通 説 で は 未 進 率 分 制 が 旧 年 未 進 の 解 消 に 有 効 で あ っ た か 否 か 「丁 一 と い う 機 能 面 に つ い て 否 定 的 で あ る に も か か わ ら ず 、 未 進 率 分 制 の 成 立
期 か ら 五 十 余 年 経 た 天 暦 六 年 に お い て も 、 こ の 制 度 が 存 続 し 、 少 な ‑ と ヽ. も 機 能 し て い た と い う こ と で あ る 。 末 進 率 分 制 の 成 立 時 で も 年 輪 そ の も
の の 未 進 が 毎 年 累 積 し て い た の で あ り 、 そ の よ う な 状 況 下 、 年 輪 と は 別
に そ の 十 分 の 一 を 加 納 さ せ る 未 進 率 分 利 が 、 は た し て 順 調 に 施 行 さ れ 、
機 能 し て い た の か 甚 だ 疑 問 視 し な け れ ば な ら な い 。 ま し て 充 分 な 機 能 杏
発 揮 し た と は 考 え ら れ な い 未 進 率 分 制 が 、 成 立 以 後 五 十 余 年 経 た 天 暦 六
年 に 制 度 と し て 存 在 し て い た と は 到 底 考 え ら れ ず 、 な お 問 題 が 残 る 。
末 進 率 分 制 の 成 立 以 降 、 こ の 制 度 の 施 行 事 例 と し て 確 定 で き る 史 料 は 、
管 見 の 限 り で は 管 孝 次 郎 氏 所 蔵 文 書 延 長 六 年 (九 二 八 ) 五 月 九 日 上 野 国 LET, ) 牒 だ け で あ る 。 し か し な が ら 、 こ れ と て 中 央 へ の 未 進 率 分 の 進 納 事 例 で
は な ‑ ' あ く ま で も 造 東 大 寺 所 へ 進 納 す る 封 戸 物 の 未 進 率 分 に 関 す る 事
例 で あ る 。 こ れ か ら 、 封 戸 物 に 関 す る 未 進 率 分 は お よ そ 延 長 六 年 頃 ま で
存 在 し て い た と 解 せ る が 、 こ れ を も っ て 直 ち に 中 央 へ 進 納 す る 未 進 率
分 が 、 こ の 時 期 に 存 在 し て い た 論 拠 と す る こ と は 早 急 に 過 ぎ る で あ ろ う 。
第 二 の 問 題 点 は ' 通 説 で は 天 暦 六 年 官 符 を 未 進 率 分 の 別 納 を 制 定 し た
も の と 解 し て い る が t で は 何 故 こ の 時 期 に 未 進 率 分 の 別 納 が 制 定 さ れ た
の で あ ろ う か 。 さ ら に 未 進 率 分 を 別 納 す る こ と は 末 進 解 消 に と っ て 如 何
な る 意 義 が あ る の か 。 こ れ ら の 問 題 ‑ 未 進 率 分 別 納 制 の 成 立 契 機 と 意 義 I に 関 し て は 、 従 来 の 研 究 で は ま っ た ‑ 論 及 さ れ て い な い が 、 通 説
の 解 釈 を と る な ら ば 看 過 す べ き も の で は な ‑ ' 一 考 の 余 地 が あ る と 考 え
ら れ る 。
最 後 に 、 天 暦 六 年 官 符 の 出 さ れ た 契 機 を み る と 、 調 庸 雑 物 等 の 違 期 ・
鹿 悪 に 対 し て 合 期 進 納 ・ 精 好 を は か る 点 に あ り 、 決 し て 旧 年 未 進 に 対 す
る も の で は な か っ た こ と が 指 摘 で き る 。 天 暦 年 間 の 調 庸 違 反 に 関 す る 官
符 ・ 宣 旨 と し て は 、「 応 三 調 庸 合 期 進 納 兼 令 二精 好 一事 」の 事 書 を も つ 天 暦 元 (10 ) ︹11 ) 年 官 符 、 及 び 天 暦 元 年 官 符 と 同 趣 旨 の 内 容 を も つ 天 暦 四 年 宣 旨 が み ら れ
る が 、 こ れ ら は い ず れ も 調 庸 物 の 合 期 進 納 ・ 精 好 に 関 す る も の で あ る 。 こ
れ ら か ら す れ ば ' 天 暦 年 間 の 詞 庸 違 反 に 関 す る 官 符 ・ 宣 旨 は 、 違 期 ・ 鹿 悪
へ の 対 策 を 意 図 し た も の で あ り 、 決 し て 旧 年 未 進 に 対 す る 内 容 を も つ も
の で は な か っ た と 言 え る 。 天 暦 六 年 官 符 も 天 暦 元 年 官 符 を 引 用 す る よ う
に 、 そ の 一 環 と し て 把 握 し な け れ ば な ら な い 。 し た が っ て 、 天 暦 六 年 官
符 の 出 さ れ た 契 機 か ら す れ ば 、 同 官 符 を 旧 年 未 進 の 解 消 策 た る 未 進 率 分
制 に 関 す る も の と 見 倣 す 通 説 の 解 釈 は 、 問 題 が あ る と 考 え ら れ る 。
以 上 、 通 説 の 解 釈 に 対 す る 問 題 点 を 提 示 す る こ と に よ り ' 天 暦 六 年 官
符 を 通 説 で は 解 釈 で き な い こ と を 指 摘 し た 。 そ れ で は 、 間 宮 符 を 如 何 に
解 釈 し た ら よ い で あ ろ う か 。 そ れ に 対 す る 私 見 を 述 べ る 前 に 、 一 方 の 正
蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 を 、 他 の 史 料 を も っ て 跡 付 け て お き た い 。 ﹃別 衆 符 宣 抄 ﹄ 所 載 の 天 暦 十 年 (九 五 六 ) 六 月 廿 日 宣 旨 は 、
左 中 弁 藤 原 朝 臣 文 範 伝 宣 、 左 大 臣 宣 、 民 部 大 輔 源 保 光 朝 臣 、 大 蔵 大
輔 源 朝 臣 公 輔 、 大 監 物 橘 朝 臣 惟 寧 等 宜 レ 為 二 正 蔵 所 レ 納 大 事 井 諸 国 調 庸
交 易 雑 物 及 鋳 銭 司 年 料 銭 率 分 勾 当 一着 、
天 暦 十 年 六 月 廿 日 大 史 我 孫 有 村
少 録 海 口
と み え る よ う に 、 正 蔵 率 分 所 の 勾 当 補 任 に 関 す る も の で あ る 。 こ れ に よ
れ ば 、 天 暦 十 年 に は 正 蔵 率 分 を 管 掌 ・ 収 納 す る 正 蔵 率 分 所 が 成 立 し て お
り 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 が 天 暦 十 年 以 前 で あ っ た こ と が わ か る 。 ﹃ 北 ∴ 、 山 抄 ﹄ 巻 第 十 (吏 途 指 南 ) に は 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 に 関 し て 興 味 深
い 記 事 が み ら れ る 。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ( 上 略 ) 天 暦 聖 朝 ' 率 分 事 初 立 之 後 '両 三 国 司 有 レ 過 TT 進 年 料 丁不 レ ● ● ● ● ● 究 二 率 分 一 之 者 、 諸 脚 奉 レ 仰 l苧 申 加 階 給 否 」 左 衡 脚 以 下 皆 申 云 ' 公 物
不 レ 夫 ' 可 レ 給 二 加 階 丁 師 ヂ 脚 猶 申 云 ' 若 率 分 之 欠 ' 可 レ解 TT 却 見 任 一之
由 ' 科 条 己 存 ' 然 而 不 レ 処 二 其 科 ( 在 二 公 物 之 不 実 .' 何 更 得 レ 預 レ 賞 乎 '
拙 走 従 レ 之 ' 両 三 年 後 ' 有 二 恩 給 .之 、 云 々 ' ( 傍 点 筆 者 ' 以 下 同 )
右 の 史 料 は 先 学 に よ り 紹 介 ・ 引 用 さ れ る こ と は な か っ た が 、 正 蔵 率 分 刺
の お よ そ の 成 立 時 期 を 示 す も の で あ る 。 史 料 中 に み ら れ る 「率 分 」 は 村
上 天 皇 の 治 世 に 初 め て 立 て ら れ た と あ る よ う に 、 末 進 率 分 で は な い こ と
が わ か る O ま た 両 三 国 司 の 年 料 過 進 が 「 不 レ 究 .l率 分 . 」 に よ っ て な さ れ
た こ と は 、 こ の 「率 分 」 が 従 前 の 率 分 ‑ 未 進 率 分 等 と は か な り 異 な る
内 容 の も の で あ っ た こ と を 示 す 。 よ っ て 、 史 料 中 に み ら れ る 「率 分 」 は
正 蔵 率 分 と 解 し て 大 過 な い で あ ろ う 。
以 上 の 二 史 料 を 勘 案 す れ ば 、 正 蔵 率 分 制 は 天 暦 年 間 (天 暦 十 年 以 前 )
に 成 立 し 、 未 進 率 分 制 と は か な り 異 な る 内 容 を も つ 制 度 で あ っ た と 言 え
よ う 。
そ こ で 再 び 天 暦 六 年 官 符 に も ど れ ば 、 間 宮 符 が 末 進 率 分 の 別 納 を 制 定 し た も の と 解 す る 通 説 に は な お 問 題 が 多 ‑ 、 首 肯 で き な い こ と は 先 述
し た が 、 一 方 、 正 蔵 率 分 制 は ﹃ 北 山 抄 ﹄ の 前 掲 記 事 等 か ら 天 暦 年 間 に 成
立 し た こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ れ ら の 諸 点 か ら ' 天 暦 六 年 官 符 は 正 蔵
率 分 制 の 成 立 と 関 連 づ け て 解 釈 す る の が 妥 当 で あ る と 考 え ら れ る 。 こ の
立 場 か ら 同 官 符 を 解 釈 す れ ば 、 詞 庸 ・ 中 男 作 物 等 々 の 年 輪 の 十 分 の 一 を ● ● ● 年 輪 内 か ら 割 い て 合 期 別 納 し 、 た と え 年 輪 を 進 済 し て も 十 分 の 一 を 年 輪
内 か ら 割 い て 別 納 し な け れ ば 抄 帳 を 勘 し な い 、 と な る 。 か く し て 、 成 立 ● ● ● ● 当 初 の 正 蔵 率 分 制 は 、 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 一 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 皮
で あ っ た と 考 え ら れ る 。
天 暦 六 年 官 符 に 関 す る 従 来 の 解 釈 は 、 末 進 率 分 の 別 納 を 制 定 し た も の 、
或 い は 未 進 率 分 制 か ら 正 蔵 率 分 制 へ 転 換 を は か っ た も の と 解 し た が 、 い
ず れ も 成 立 し 難 い と 思 わ れ る 。 間 宮 符 は あ ‑ ま で も 正 蔵 率 分 制 の 成 立 を
示 す も の で あ っ た と 解 さ れ る の で あ る 。 ● と こ ろ で 、 先 述 し た よ う に 成 立 当 初 の 正 蔵 率 分 利 は 年 輪 内 か ら そ の 十 ● ● ● 分 の 一 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 度 で あ っ た が ' 一 方 ' ﹃ 拾 芥 抄 ﹄ の 前 掲 記 ● ● ● ● 事 で は 、 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 二 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 皮
で あ る と 記 し て い た 。 こ こ で 問 題 と な る の は 、 こ の 十 分 の 一 ・ 十 分 の 二 (13 ) と い う 率 分 の 相 違 を 如 何 に 解 釈 す る の か と い う こ と で あ る 。
正 蔵 率 分 利 が 成 立 し た 天 暦 六 年 の 十 一 年 後 、 応 和 三 年 (九 六 三 ) に 興 (E ) 味 深 い 官 符 が み ら れ る 。 必 要 部 分 だ け を 掲 載 す れ ば '
而 頃 年 不 レ 守 二 参 期 .' 多 致 ,.違 越 .' 僅 済 二 率 分 之 法 数 .' 都 忘 二其 余 之 兄 上 .I
倉 度 巳 空 ' 職 比 之 由 、 夏 至 二 千 神 事 有 レ 限 、 国 用 無 u 止 ' 仰 TT宛 在 下 .I
暗 成 二 日 収 丁 論 二 之 政 遠 .' 尤 多 二 公 損 .' 非 レ 加 二 懲 粛 へ 何 改 二 之 弊 (
と な る 。 こ れ に よ れ ば 国 司 は 僅 か に 正 蔵 率 分 だ け を 進 済 し 、 自 余 の 年 輪
を 進 済 せ ず 、 神 事 ・ 国 用 に 開 意 を 来 し て い た 状 況 が わ か る 。 正 蔵 率 分 刺
の 成 立 期 か ら 僅 か に 十 余 年 後 に 、 正 蔵 率 分 だ け の 進 済 と い う 状 況 と な り 、
正 蔵 率 分 が 年 輪 に と っ て 代 る 傾 向 と な っ て き た 。 右 の 状 況 に 対 す る 中 央
政 府 の 対 策 は 、 合 期 進 納 の 遵 守 を 諸 国 に 再 び 下 知 す る と と も に 、 天 暦 四
年 二 月 十 日 宣 旨 の 施 策 確 認 に 止 ま り 、 具 体 的 施 策 を 何 ら 打 ち 出 し て い 吃 一15 一 い 。 し た が っ て 、 右 の 状 況 を 解 消 で き な か っ た こ と は 当 然 で あ ろ う 。
こ の よ う に 年 輪 末 進 の 深 刻 化 に 伴 っ て 、 正 蔵 率 分 だ け を 進 済 す る よ う
に な っ た こ と 、 そ れ に 対 す る 具 体 的 施 策 を 中 央 政 府 が 打 ち 出 し て い な い
こ と を 考 慮 す れ ば 、 正 蔵 率 分 が 中 央 政 府 に か な り 重 要 視 さ れ る よ う に 皮
っ た と 考 え ら れ る 。 中 央 財 政 が 正 蔵 率 分 だ け で 運 営 で き る 性 格 の も の で
は な い が 、 年 輪 末 進 の 深 刻 化 に 伴 い 、 中 央 財 政 に お け る 正 蔵 率 分 の 重 要
性 は 増 し て い っ た も の と 考 え ら れ る 。 こ う し た 経 緯 を 経 て 、 中 央 政 府
は 率 分 を 十 分 の 一 か ら 十 分 の 二 へ と 改 定 し 、 正 蔵 率 分 の 比 重 を 増 大 し よ ・ト 、 う と し た の で は な い か と 思 わ れ る 。
率 分 の 改 定 を 定 め た 史 料 は 、 管 見 の 限 り で は 見 出 せ ず 、 そ の 改 定 時 期
を 確 定 す る こ と は 不 可 能 で あ る が 、 お よ そ 十 世 紀 末 頃 で は な か っ た か と
推 定 さ れ る 。 正 蔵 率 分 が 年 輪 の 十 分 の 二 を 基 準 と し て 算 定 さ れ た 初 見 史
料 は 、 管 見 の 限 り ﹃ 左 経 記 ﹄ 長 元 七 年 ( 一 〇 三 四 ) 十 一 月 十 七 日 条 で あ
る 。 同 条 に は 、 大 事 府 進 上 の 当 年 料 と し て 「 率 分 縮 六 百 疋 」 「 率 分 綿 二
万 屯 」 が み ら れ る が 、 大 事 府 の 絹 ・ 綿 の 年 輪 額 は 絹 三 千 疋 ・ 綿 十 万 屯 で I・ あ り 、 正 蔵 率 分 が 年 輪 の ト 分 の 二 を 規 準 と し て 算 定 さ れ て い た こ と が わ
か る 。 こ れ 以 降 の 正 蔵 率 分 に 関 す る 史 料 で も 、 正 蔵 率 分 は 総 て 年 輪 の (18 ) 十 分 の 二 と な っ て い る 。
こ の よ う に 十 一 世 紀 初 頭 に は 正 蔵 率 分 が 年 輪 の 十 分 の 二 を 基 準 と し て
算 定 さ れ て お り 、 率 分 の 改 定 が こ れ 以 前 に な さ れ た こ と は 明 ら か で あ る 。
し か も 、 率 分 の 改 定 が 先 述 し た よ う に 年 輪 未 進 の 深 刻 化 を 契 機 と し て な
さ れ た と す れ ば 、 そ の 改 定 時 親 は 前 掲 の 応 和 三 年 官 符 を そ れ ほ ど 降 ら な
い 時 期 で あ っ た と 推 定 さ れ る 。
以 上 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 時 期 、 及 び 内 容 に つ い て 概 括 す れ ば 、 次 の ど
と ‑ で あ る 。 正 蔵 率 分 制 は 天 暦 六 年 に 成 立 し 、 成 立 当 初 は 年 輪 内 か ら そ
の 十 分 の 1 を 割 い て 別 納 さ せ る 制 度 で あ っ た . し か る に 、 十 世 紀 末 頃 、
年 輪 末 進 が 深 刻 と な り 、 そ れ に 伴 っ て 正 蔵 率 分 が 重 要 視 さ れ る よ う に 皮
っ た こ と を 契 機 と し て 、 正 蔵 率 分 制 は 年 輪 内 か ら そ の 十 分 の 二 を 割 い て
別 納 さ せ る 制 度 へ と 改 定 さ れ 、 整 備 ・ 確 立 す る に 至 っ た の で あ る 。 以 上
の 諸 点 が み と め ら れ る な ら ば 、 次 に 問 題 と し な け れ ば な ら な い の が 、 何
故 当 該 期 に 正 蔵 率 分 制 が 成 立 し た の か と い う 、 正 蔵 率 分 制 の 成 立 契 機 で
あ る 。
口 成 立 契 機
正 蔵 率 分 制 の 成 立 契 機 に 関 し て は 、 先 ず 当 該 期 の 中 央 財 政 の 状 況 か ら
考 え て み た い 。 中 央 財 政 は 特 に 天 慶 期 か ら 天 暦 期 初 頭 に か け て 、 窮 乏 化
の 様 相 を 呈 し て い た と 言 え る 。
天 慶 ・ 天 暦 期 に お け る 中 央 財 政 の 窮 乏 化 を 最 も 如 実 に 伝 え て い る も の
は 行 事 費 用 に つ い て で あ ろ う 。 そ の 具 体 例 と し て は 、 天 慶 元 年 (九 三 八 ) 一旧 L の 施 米 費 用 の 欠 乏 、 同 五 年 (九 四 二 ) の 摩 院 収 納 米 の 無 実 化 に 伴 う 賑 給
・⊥ 費 用 の 欠 乏 等 が あ げ ら れ る が 、 同 九 年 (九 四 六 ) に は 春 季 細 読 経 の 布 施
・ 供 養 料 に つ い て 、
公 家 此 度 御 読 経 布 施 只 有 レ 絹 ' 無 二 綿 布 1 「念 雪 盲 廿 余 僧 供 養 不 レ 得 者 、
是 往 古 不 レ 聞 之 事 也 、 一21 ) と あ り 、 貞 信 公 記 の 記 主 藤 原 忠 平 が 「 往 古 不 レ聞 之 事 」 と 評 す る よ う に '
費 用 欠 乏 が か な り 深 刻 な 問 題 と な っ て い た こ と が わ か る 。 こ れ ら は 年 中
・ 恒 例 行 事 の 費 用 欠 乏 の 状 況 を 如 実 に 伝 え る 事 例 で あ る が 、 こ の 陪 期 は
斎 宮 入 京 や 践 作 大 嘗 会 の 最 重 要 行 事 の 費 用 に も 欠 乏 を 来 し て い た の で あ る 。 ﹃貞 信 公 記 抄 ﹄ 天 慶 八 年 (九 四 五 ) 三 月 十 日 条 は 、 こ の 時 期 の 斎 院 ・
斎 宮 用 途 物 の 弁 備 状 況 を 知 る う え で 重 要 な 記 事 で あ る O そ れ に よ れ ば 、
斎 院 用 途 物 は 「在 庫 在 所 無 二有 一 物 二 と い う 状 況 で あ り 、 斎 宮 入 京 用 途
に 関 し て も 「更 無 二 一 物 二 と い う 状 況 で あ っ た 。 一 方 、 ﹃ 九 暦 ﹄ 天 慶 九
年 (九 四 六 ) 十 月 廿 八 日 条 に よ れ ば 、 村 上 天 皇 即 位 の 践 杵 大 嘗 会 に 際 し
て 、 供 奉 諸 司 の 装 束 料 は 「官 唾 無 レ 物 」 と い う 状 況 で あ っ た o こ の 二 つ
の 事 例 は 中 央 財 政 の 窮 乏 化 が 如 何 に 深 刻 な 問 題 で あ っ た か を 示 す も の で
あ ろ う 。 そ の 他 、 給 禄 に 関 し て も ' 白 馬 ・ 豊 明 両 節 会 に 際 し て の 節 禄 の (R1. I := ) 不 給 、 賀 茂 斎 院 頑 日 の 両 度 禄 停 止 等 、 l 般 に 禄 料 の 欠 乏 に よ っ て 給 禄 が
で き な い 状 況 で あ っ た 。
こ の よ う に 天 慶 期 か ら 天 暦 期 初 頭 に か け て は 、 殊 に 行 事 費 用 の 欠 乏 に
み ら れ た よ う に 、 中 央 財 政 の 窮 乏 化 は 深 刻 な 問 題 と な っ て い た 。 正 蔵 率
分 制 は ま さ に こ の 中 央 財 政 窮 乏 化 を 背 景 と し て 、 採 用 さ れ た 制 度 で あ っ
た と 言 え よ う 。
と こ ろ で ' ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 巻 第 四 (定 受 領 功 課 事 ) に は 正 蔵 率 分 に 関 し て 次 の よ う な 記 事 を 載 せ て い る 。
率 分 、 公 事 物 也 、 依 .古 破 立 勘 文 . 注 レ 之 、或 抄 云 、 調 庸 雑 物 十 分 之 二 、 ● ● ● ● 毎 年 別 納 宛 二 無 レ 止 公 用 一也 、
右 の 記 事 に 引 く 「 或 抄 」 に つ い て は 不 明 と し な け れ ば な ら な い が ' 正 蔵
率 分 の 用 途 を 明 文 化 し た 唯 一 の 史 料 で あ る 。 そ れ に よ れ ば 、 正 蔵 率 分 は 「無 し 止 公 用 」 に 充 当 さ れ る も の で あ り 、 尋 常 の 支 出 に 充 当 さ れ る も の
で は な か っ た 。 す な わ ち 、 正 蔵 率 分 は そ の 用 途 か ら ' 非 常 の 用 に 充 当 す
る た め の 財 源 で あ っ た こ と が わ か る 。
そ こ で 、 正 蔵 率 分 が 右 で 述 べ た よ う な 財 源 で あ っ た と 見 徹 す な ら ば 、
正 蔵 率 分 制 の 成 立 期 で あ る 天 暦 年 間 に は 、 「無 レ 止 公 用 」 に 充 当 す る 財 源
を 既 存 の 中 央 財 源 で は 賄 う こ と が で き ず ' 諸 国 に 正 蔵 率 分 と し て 、 年 輪
内 か ら 一 部 を 別 納 さ せ た と み な け れ ば な ら な い 。 こ の よ う に 考 え る と 、
先 述 し た 中 央 財 政 窮 乏 化 と 正 蔵 率 分 制 の 成 立 と は 非 常 に 密 接 な 関 係 に あ
っ た こ と が 明 ら か と な り 、 正 蔵 率 分 利 は 中 央 財 政 が 窮 乏 化 し て 、 特 に 罪
常 の 用 に 充 当 す る 財 源 を 確 保 す る た め に 案 出 さ れ た 制 度 で あ っ た と 解 さ
れ る の で あ る 。
一 方 ' 正 蔵 率 分 の 性 格 を 右 の よ う に 解 す る な ら ば 、 正 蔵 率 分 を 年 輪 と
は 別 に 合 期 進 納 さ せ て ' 確 保 す る こ と が 必 要 不 可 欠 と な る 。 こ の 点 は 前 掲 の
天 暦 六 年 官 符 の 「若 堆 レ究 TT 進 年 輪 之 数 .' 不 レ 別 nI納 十 分 之 l 一着 、 仰 二 所
司 一停 二勘 抄 帳 二 と い う 記 載 か ら も わ か る 。 す な わ ち 、 た と え 年 輪 を 進 済
し て も 正 蔵 率 分 を 別 納 し な け れ ば 抄 帳 を 勘 し な い と い う 厳 し い 措 置 を 請
じ て い る こ と は 、 正 蔵 率 分 の 別 納 を 諸 国 に 厳 守 さ せ よ う と す る 中 央 政 府
の 意 向 を あ ら わ す も の で あ り 、 そ れ は 正 蔵 率 分 が 非 常 の 用 に 充 当 す る た
め の 財 源 で あ る こ と か ら す れ ば 、 当 然 の 措 置 で あ っ た と 言 え よ う 。 天 磨
六 年 官 符 に 関 す る 従 来 の 解 釈 を み る と 、 「別 納 」 の も つ 意 味 が 明 確 に さ
れ ず 、 ほ ■と ん ど 無 視 さ れ て い た と 言 っ て よ い 。 し か し な が ら 、 「 別 納 」
と い う 語 が こ の 天 暦 六 年 官 符 を 解 釈 す る 際 に 如 何 に 重 要 な 意 味 を も っ て
い た か は 、 以 上 の こ と か ら 明 ら か で あ ろ う 。
l 「 正 歳 事 分 の 用 途
正 蔵 率 分 の 用 途 に 関 し て は 、 前 節 で ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 所 載 の 「 或 抄 」 の 記
事 を 引 い て 考 察 し た が 、 本 章 で は 特 に そ の 用 途 の 変 化 を 検 討 し 、 そ れ が
先 述 し た 率 分 の 改 定 と 如 何 な る 関 係 に あ る の か を 考 え て み た い 。
正 蔵 率 分 の 具 休 的 な 用 途 事 例 を 、 管 見 の 限 り 一 覧 に し た も の が 付 表 H で
あ る 。 先 ず 、 こ の 表 を 通 覧 し て 指 摘 で き る 点 と し て は 、 用 途 の ほ と ん ど が (24 ) 恒 例 ・ 臨 時 の 行 事 費 用 で あ る こ と で あ る 。 こ の こ と か ら 、 正 蔵 率 分 は 行
事 費 用 に 充 当 さ れ る 場 合 が 多 か っ た と 言 え よ う 。 ﹃ 北 山 抄 ﹄ ﹃ 西 宮 記 ﹄
等 の 有 職 故 実 書 に よ れ ば 、 正 蔵 率 分 は 白 馬 ・ 新 嘗 両 節 会 の 禄 料 、 御 斎 会
布 施 料 、 諸 社 奉 幣 料 、 祈 年 穀 奉 幣 料 等 に 充 当 さ れ る こ と に な っ て い た 0
殊 に ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 巻 第 六 (平 野 祭 ) に は 、 平 野 祭 幣 料 請 奏 の 書 様 が み ら
れ る の で 、 次 に 掲 載 す れ ば 、
内 蔵 寮
請 五 色 絹 八 疋
生 絹 十 二 疋
糸 十 五 絢 綿 百 屯
調 布 綿 十 五 段 ︹木 ︺ 布 綿 五 斤 ● ● ● 右 来 月 日 平 野 祭 御 幣 料 ' 以 二 諸 国 所 レ 進 率 分 内 . 依 レ 例 所 レ 請 如 レ 件 、
年 月 日 正 六 位 上 行 上 属
正 六 位 上 行 少 允
と な る 。 こ の 書 様 か ら 、 正 蔵 率 分 は 平 野 祭 幣 料 に 常 に 充 当 さ れ る も の で
あ っ た こ と が わ か る 。 同 じ ‑ ﹃ 江 家 次 第 ﹄ 巻 第 五 (円 宗 寺 最 勝 会 事 ) に
は 、 円 宗 寺 法 華 全 用 途 料 に 正 蔵 率 分 を 充 当 す る 請 奏 の 書 様 が み ら れ る 0
こ れ ら は 正 蔵 率 分 が 1 定 の 用 途 に 充 当 さ れ る と い う 、 用 途 の 固 定 ・ 定 着
化 を 示 す も の で あ る と 言 え る 。 す な わ ち 、 前 節 で み た と こ ろ の 、 正 蔵 率
分 が 「無 レ止 公 用 」 に 充 当 さ れ る と い う 「 或 抄 」 の 記 事 と は ま っ た ‑ 様 相
を 異 に し て お り 、 正 蔵 率 分 の 用 途 が 明 ら か に 固 定 ・ 定 着 化 し て き て い る
の で あ る 。 こ の 点 は 、 付 表 州 を 通 覧 し て 、 正 蔵 率 分 が 幣 料 ・ 季 御 読 経 用 (25 ) 途 料 ・ 節 禄 料 に 充 当 さ れ て い る 例 が 多 ‑ み ら れ る こ と か ら も 首 肯 さ れ る 。
こ の 用 途 の 固 定 ・ 定 着 化 が 、 用 途 の 変 化 を み る う え で 、 先 ず 指 摘 で き る
と こ ろ で あ る 。
さ ら に 、 付 表 附 か ら 指 摘 で き る 点 と し て は 、 正 蔵 率 分 が 毎 年 施 行 さ れ
る 年 中 行 事 の 費 用 に も 充 当 さ れ て い る よ う に 、 そ の 用 途 が か な り 広 範 囲
に 及 び 、 尋 常 の 支 出 に も 充 当 さ れ て き た と い う こ と が あ げ ら れ る 。 そ の
一 端 を 示 す 具 休 例 と し て 、 ﹃ 朝 野 群 載 ﹄ 巻 第 五 (朝 儀 下 ) 所 載 の 内 裏 御
八 講 の 用 途 請 奏 が あ げ ら れ る 。
内 蔵 寮
請