清拭 に よる脈波,心拍数お よび皮膚温 の変化
An Observation on theChangeofPlethysmogram,HeartRate and Skin Temperatureby Cleansing ofBed Bath
1) 2) 3) 1)
阿 部 テ ル子 西沢 義子 工藤 千賀子 大串 靖子
TerukoAbe YoshikoNishizawa ChikakoKud6 YasukoOhgushi
(1985.12.26受理)
AbStraCt
Plethysmogram,heart rate and skin temperatureofthe patients were observed duringthecleansingofbedbath,inordertoinvestigateitsinfluencetoblood circu‑
一ation.
Tberesultswereasfollows;
Accordingtostartofcleansingofbed bath,heightof plethysmogram,heart rate andskintemperature weretemporary reduced,and then,they gradually increased afterthecleansingwasover. Thereductionrateofplethysmogram waslowestand thereductionrateofskintemperaturewashighest.On the recovery stageofeach, risingofskintemperature was most rapidly.However,it was not recognized the statisticaldifferencebetweenthedateofeachstage,respectively.
Conclusionally,inthecleansillgOfbedbathwithoutactivemovingofthepatients, theincreasingsignofwhole‑bodyorlocalblood circu一ation could notberecognized difinetlywiththeseexperiments.
Ⅰ は じ め に
清拭は入浴がで きない場合に,床上で身体を清潔にす る方法である。温湯で しぼ った タオルを用い,皮膚 表面を適度の摩擦を加えなが ら全身を清拭す るので,その 日的および効用については身体の清潔 とともに, 血液 ・リンパの循環 を促進す ること,関節や筋群 の運動機能を刺激す る こと,感覚的に も爽快感を与え,意
1)〜ll)
欲 の向上を もた らす ことな どが考えられている。特に血液循環の促進は安静保持によ り運動不足の傾 向にお かれ る病人に とって,心臓 ・循環系,呼吸,代謝な ど全身の壊能に好影響を与え,局所的な皮膚血行の促進 は裾癒予防に も役立つ と考えられている。 しか し,清拭が適用 され るのは,入浴が制限 され る程の病人であ るところか ら,湯の温熱作用 と清拭す る時の摩擦 作用および清拭のための体動,体位変換な どの受動的な動 きに よって生 じるこれ らの生理的影響の程度が問題 とされ る。 これまでに報告 された研究によれば体温,舵 拍,呼吸,血圧な どのバ イタルサ インの変化や酸素消費量,エ ネルギー代謝な ど労作 ・負荷の程度は,生理 的変動の範囲であることが確認 されている。 この ことは清拭を必要 とす る状態にある病人に とって の, この ケアの有用性,安全性を立証す るものである反面,その生理的機能へ の影響が ごく軽微 な ものであることを 1)弘前大学教育学部看護学科教室 DepartmentofNursingScience,FacultyofEducaion,HirosakiUniversity.
2)弘前大学教育学部養護学科教室 DepartmentofSchoolnurse‑TeacherEducation,FacultyofEducation,Hirosaki University.
3)元弘前大学教育学部看護学科教室 Retiredfrom DeparhnentofNursingScience,Faculty ofEducation,Hiro‑
sakiUniversity.
84 阿 部 テル子 西沢 義子 工藤千賀子 大串 靖子
示唆 してい る。
したが って血液循環 の促進等 もおそ ら く期待す る程大 きい ものではな く微細な変化を捉 えることので きる よ り直接的な血流状態 の測定等に よって確認す る必要が ある もの と考 える。皮膚血流状態 の研究法 の中で臨 床的に用い ることので きる ものでは皮膚温 測定,皮膚 の熱伝導 度測定,皮膚 の容積変化の測定な どがあ り, 皮膚 の容積 変化 の中では,光 の透過度を利用す る指尖容積脈波 が,局所 の血液量 とほぼ比例す るとみな され12) てい る。
目的 :清拭に よる血液循環 の変動を指尖容積脈波 の変化に よって確認 し,併せて,皮膚温や心拍数 の変化 との関連性を検討す る。
l 実 験 方 法
1.被験者
20‑22歳 の健康な女子11名で あ り,血圧は表1に示す通 りで ある。
表 1被験者 の血圧 (mmHg)
2.被験者 の心身の状態
実験 は食直後を避けて行 った 。被験者には事前に排尿を させ, ガ 被験者 Nol最大血 圧 L最小血圧 ‑ゼ製寝衣1枚を着用後・診察用ベ ッ トに臥床 させた 。ベ ッ トには
12345678901日日日 08080816軸10仙00100201111111111 606068m朗68626874錦70
マ トレスバー ド1枚,下 シー ツ1枚を敷 き,掛け物 は タオル ケ ッ ト 1枚を用いた o清拭中は′ミス タオルで覆 いなが ら行 った 。体位は仰 臥位で下肢 は伸展位 とした。臥床 させた後, 目は閉 じるが眠 らない よ うに指示 し,実験 の手順 を説 明 した後,心理的に リラ ックスす る よ うオ リエ ンテーシ ョンを行 った。その後図1の様 に右第3指に脈 波測定用 ピ ックア ップを,左右手関節 内側部に心電 図の電極を, 普 た胸乱 大腿,下腿 に皮膚温 用セ ンサ ー,右手掌栂指球 と前腕 内側 中央 部に皮膚電気反射用 の草子を設置 した 。図2に示す様に この状 態で約30分間安静に した後,清拭を行 い実験を開始 し,清拭終了後 20分間安静に保 って実験 を終了 した 。
3.環境 条件
実験時期 は昭和59年8月28日〜 8月31日であ り,表2の通 り室温 は26‑2Boc,湿度70‑84%,風 力は無風状態 とし, 時に窓 の端 を少 し開閉 し室温 を調節 したが, ス ク リー ンに よ り被験者には直接風が当 らない よ うに した。室 内では会話を避け,物 音をたてないよ うに した 。測定 中,室外での物音が入 った時はその時点をチ ェックしておいた。
4. 実験手順
表 2 清拭時の条件 清 拭 タ オ ルr35.5×33.5cm
清 拭 速 度 L約25cml往復/see 摩 擦 の 強 度il.0‑1.5kg
安静臥床後25分か ら5分間皮膚温 を1分毎に測定, 同時に心 拍数,皮膚電気反射,脈波 を5分 間継続 して測定 し, その後清 拭を行 った 。
1)清拭 の方法
清拭 の部位 およびその順序は胸部,腹部,右 大腿部前面,右 下腿部前面,左大腿部前面,左下腿部前面 と し た 。 表3の 通 り, ウ ォッシ ュクロスは綿100%タオ ル地で35.5×33.5cm,乾 燥時重量約34gの物 を使 い,清拭車を用いて使用時50oCにな るよ うに保温 して用いた 。各部位 は タオ′レを3回交換 して清拭 し,その速度は約23‑25C皿を1往復/secとし,摩擦 の強度は 約 1‑1.5kgで あ った。
2) 指尖容積脈波 の測定方法
右第3指 の指尖部に反射光電式脈波計の ピ ックア ップ (三栄 測器製)を皮膚に軽 く密着 す るよ うに巻 きつ け,手掌を下 向 き
図1測定事項
手雷 拭 前 安 静 i雷 拭 後 安 ★争
図2 実験の経過
指 尖 容 積脈 波
・亡、電 園
皮 何■i孟 皮 Jf 電 二司 反 身寸
86 阿部 テル子 西沢 義子 工藤千賀子 大串 靖子
に し,体側‑約5cm離 してベ ッ ド上に置いた 。計測 および記録には生体観察用電気増 巾器多用途 監 視 装 置 (日本光電製) を用い,ペ ン書 きオ ッシ ログラフで記録 した 。記録は清拭5分前か ら清拭後20分までを経時 的に行 った 。以下,心拍数 ,皮膚電気反射 も同様に測定 ・記鐘 した 。増 巾1.2mm/lmVの波高を基 準 とし, 描記 された脈波高の解析は30秒 お きに30秒間の ものを定規で計測 した 。
3) 心拍数 の測定方法
左右手関節 内側部を皮膚処理剤 および70%エ タノールで清拭,乾燥後電極を固定 し多用途監視装置に心電 図を記録 し1分 間当 りの心拍数を算定 した 。
4) 皮膚温 の測定方法
測定部位 は胸骨中央部,麟左 方5cn,左 大腿,下腿 の各前面 中央部 の4ヶ所 とし, ポケ ッタブル複合 モー ド温度計DIGrMULTID611 (宝工業製)平型 のセ ンサ ーを網 目状紙鮮 創膏で固定 した.臥床 と同時にセン サ ‑を固定 し, タオルケ ッ ト1枚で皮膚面を覆い,25分経過後測定を開始 した O清拭開始後は30秒毎に,宿 拭終 了後は20分間を1分毎に測定 した。各部 の清拭時間は約1‑1.5分であ り,そ の間 タオルケ ッ トを開放
した 。
5) 皮膚電気反射 の測定方法
脈波 に影響す る情動の変化をチ ェックす る指標 として皮膚電気反射を測定 した 。右 手掌栂指球 と右 前腕 内 側中央部に電極を固定 し,経時的に多用途監視装置に記録 した 。
Ⅲ 結 果
1. 脈波高
被験 者11名の安静時,清拭時,清拭後 の脈波高 および心 拍数 の平均値 を図3に示 した っ安静時 の脈波高は 平均5.0土2.4mV/Vで あ り,清拭時は4.2土1.4mV/V, 清拭後は4.4土1.7mV/Vで あった 。清拭時 の脈波高 は安静時 よ り0.8mV/V減少 した。また,清拭後は清拭時 よ り0.2mV/V増 大す る傾 向が認め られたが, いず れ も統計学的な有意差はなか った 。
心拍数即‑o
50
舟■L■.⊥やし ̲9分
̲7分
は分
̲3分
分
9分
‑令
5分
3分
清拭後‑令
7分
5分
3分
清拭‑令
29分
安静2‑令
図3 脈波高 心拍数 の変化
安さ時
図4 被験者別脈波高の変化
清拭時脈波高の変動幅について一応20%を基準に して詳細に調べ ると, 土20%未満者が7名, 土20%
以上の者が4名であった。その変動の様子を被験者 別にみ ると図4に示 した ように,清拭時の脈波高が 安静時 よ り増大 した者が3名,減少 し た 者 が8名 で,変化 の様子や程度は異な るが,被験者の 3分の
2以上 の者が減少の傾 向を示 した。
また,清拭後脈波高の変動幅は, 土20%未満者が 8名, 土20%以上の者が3名であ った。 そ の 内 訳 は,増大 した者が6名で,その うち3名は安静時 よ り高 くな っていた。また,清拭時 より減少 した者は 5名であった。
安静時,清拭後の脈波高変動 の1例を図5に示 し た 。
2.心拍数
心拍数は図3に示 した ように,安静時は平均65.0 土5.4回/分, 清拭時は62.4土5.9回/分, 清拭後は 64.1土5.6回/分であった。経時的にその変化をみる と,清拭時は安静時 より平均3.5回/分減少 し,清拭 後の7分 目までは徐 々に増加 し,その後ほぼ安定 し た。 この ように清拭時 お よび後は安静時 より減少 したが,統計学的な有意差はなか った 。
清拭時お よび清拭後の変動の割合は,安静時の心拍数を0とした時, 図6の ように清拭時は被験者全員が 安静時 より減少 し,その程度は平均‑5.3%であった。清拭後は心拍数が清拭時 より増加 したが,安静時 と 比較す ると平均‑2.7%であった。心拍数が清拭後20分で安静時値 まで増加 したのは被験者11名車3名で, 増加 しない者が8名であった。また, この8名車 3名は清拭律の心拍数が清拭時 よりさらに減少 していた,
胸 戟 請 拭
■''1rl' ‑r'''1:‑''.'TTT171"11''l州 '■1一・一rH l 腹 部 清 拭
t.r・,‑Tr1‑‑1 (.‑・rl.‑・‑ P,.,【叩●一一「'm「lTmll'T'「
PlethysrTk)
1.fd.恥 叫 wl.ll'w Gq・.・'dp‑1・'.m・‑・'/''・''・・,,・・.J 〜柵 J hvq仰 柵 ‑ 姉肺d㈱ 帆 .I.7,.・机 ・紬 tWW
G.S.R ̲ iiiiiiim
Trn「 rrr'''Tlnl'【¶1llPT'Tl̀T叫'「llJl仙川1.r■''TT
ー「 ¶'「''T'T'lq lr''TT''ThiTbTlh TlrW '1‑'nTTMrr'Tl mnTM l叩 '叩 qmrrrT'r'PPT'rT 仰 ・
; ; i
部 終 安
漂 了 貫
… ・;"h……."""., ,;".I .."..".,.....1. ...言 .("9..,."り 日." ...""..".州 .i...."州 .".
・IHl'lL'llrr¶一Tl【■■''nlTrlr''1'「†【
図5 清拭前,中,後の心粕,脈波,お よび皮膚電気反射の変化例
88 阿 部 チ レ/ 子 西 釈 義 子
安 清 清
静 拭 拭
時 時 後
図6 被験者別心拍数の変化
0 千賀千蘇工
大串 靖子
19分17分15分13分11分9分7分5分3分清拭後1分7分5分3分
清拭1分29分安静27分
図7 皮膚温の経時的変化
3.皮膚温
清拭部位 の皮膚温 は図7の ように,清拭前30分間の臥床安静中に全員が安定 し,安静時皮膚温の平均値は 胸部が35,7土0.4Qc,腹部が35.1土0.7Oc, 大腿部が34.4土1.OoC,下腿部が34.8土0.8oCであった。清拭 時の皮膚温は各部位共に一時下降 し,図8に示 した ように胸部において下降の程度は最 も大 き く‑0.9±0.3 oCであ り,安静時に比較 して有意差が認め られた (p<0.05)。 次いで大腿部が‑0.7土0.5oC, 下腿部が
‑0.7土0.4oC,腹部が‑0.4土0.4oCと下降 したが, 有意な差は認め られなか った。各部位毎の 清 拭 終 了 後,皮膚温上昇の経過をみ ると(図8),清拭直後か ら5分間で,胸部では44.4%(0,4oC),大腿部では28.6
0.0
‑叩∵u
‑0.8
‑1.2
‑1.6
% (0.2oC),下腿部では57.1% (0.4oC),腹部では50.0% (0.2oC)上昇 した。皮 膚温が安静時値 まで上 昇 したのは下腿部では19分であ り,清拭終了20分では胸部,腹部,大腿部 の皮膚温は安静時値 ま で 到 達 せ ず,胸部では0.2oC,腹部,大腿部では0.1oC低か った。
以上のよ うに,各部位に よって皮膚温の下 降及び上昇の程度は異な るが,傾 向としては清拭時,一時下 降 し再び元の皮膚温に もどるまでに19分以上の時間を要 した 。
4. 脈波高,心拍数 お よび皮膚温の関連
脈波高,心拍数 お よび皮膚温の関連を,清拭の順序に従 って経時的にみ ると, 図3,7に示す ように三者 とも清拭開始 と同時にわずかに減少 ・低下 し,清拭終了後三者共に上昇 ・増加 し始める。三者の変化の程度 を比較す ると脈波高は全期間を通 して変化が少 く,皮膚温 の低下 が最 も大 きか った。一度減少 ・低下 した値 が上昇 ・増加 し,大体安定す るまでにかか る時間は脈波高では約3分,心拍数が約7分, お よび皮膚温が約 19分であった。 しか し,安静時の値 までの回復の度合をみ ると,皮膚温は終了後20分までにほぼ回復 したの に対 し,脈波高,心拍数は安静時の値 まで到達 しなか った。
5.皮膚電気反射
被験者11名 の皮膚電気反射は安静時,清拭時,清拭後 ともに全 く動揺 がなか った者4名, ご くわずかな動 揺が認め られた老 5名,動揺が認め られた者2名であった。ほ とん どの被験者に,清拭に よる皮膚電気反射
の顕著な動揺は認め られなか った。
Ⅳ 考 察 13) 14)
清拭に よる血液循環促進については, これ までに村上,平松 らに よって実験的な検討が行われている。村 上は,清拭部位 の皮膚温上昇を指標に,温湯清拭が局所の血液循環の改善に効果的であった と報 告 し て お り,一方平松 らは熱布清拭 と温湯清拭に よる循環 と身体‑の負荷について検討 し,熱布清拭の方が循環促進 効果が大であ った としている。清拭に よる血液循環促進は,清拭行為を構成 し関与す る諸 々の要素の総合的 な効果 として発生す るものと考えられ る。その要素 としては清拭 タオルの温熱刺激,摩擦,体位変換や清拭 時の関節 の屈伸等の 自動的,他動的運動, アル コールの使用等が考えられ る。循環促進効果 とこれ ら個 々の 関連を分析的に検討す ることは,看護場面における清拭の可否や方法の選択にあた っての判断基準を得 るた めに有意義な ことである。
以上 の考えにた って今回我 々は清拭 タオルの温熱刺激 と清拭時の摩擦が血液循環に与える影響を確認す る ために清拭時 の指尖容若脈波,心拍数,清拭部位 の皮膚温を測定 し,検討 した。脈波,心拍数の変化に よっ て一定の実験条件下での血流状態を確認す るためには,脈波,心拍数等に影響を与える実験条件以外の田子 を可能な限 り排除す る必要がある。 このため清拭時の体位変換,関節運動等を行わず, また心理的動揺や緊 張を与えない ように し,その確認の為,皮膚電気反射を記録 し, ほ とん ど動揺は認め られなか った。
清拭に よる脈波高,心拍数には清拭前,中,後において統計学的に有意な差異がない ことが確認 された。 清拭中お よび後 の脈波高は前 と比較 して, 清拭中が平均0.8mV/V,後が0.6mV/V減少 し,被験者別にみ る12) と変動の範囲は20%未満の者が多か った。光電指尖容若脈波計の光透過度は局所血液量 とほぼ比例 し,その 波高か ら局所における血液量を推定す ることがで きる。上記の結果は脈波高の低下を示 してお り,今回の実 験条件においては清拭に よる血液循環 の促進を確認す ることはで きなか った。
15) また心拍数 は清拭直後に前 よ り3.5回減少 し被験者別の変動範囲は全 員10%以内であ った。石井は循環器 疾患患者の入浴時の影響について実験 し,20%以下 の心拍変化を軽微な変化 としてい る。入浴 と清拭 とでは 循環動態に影響す る度合が異なるので,本実験結果の10%以内の変化は当然の ことと考え られ,軽微な変化 とみなす ことがで きる。したが って心拍数か らみて も,本実験条件に よる清拭において も血液循環の促進は 確認 されなか った。
以上 の ような脈波高,心拍数 とい う全身的な循環動態を示す指標について考えると,安静状態での清拭の 16) 17) 18)
影響はほ とん どみ られない。 この ことについては子安 ら,谷 ら,藤井 らの実験結果 と一致 してい る。 次に局所の皮膚血流の状態を清拭部位 の皮膚温の変化 で 見 る と,清拭直後に胸部の皮膚温が0.9oC低下 し,清拭前 と比較 して有意な下降が認め られた。他の部位 は腹部が0.7oC,大腿部 と下腿部は0.4oC低下 し
90 阿部テル子 西沢 義子 工藤千賀子 大串 靖千
たが有意差はなか った。各部位 の皮膚温は清拭後,徐 々に上昇 し,下腿部ではその部位 の清拭終了後安静20 分以内に安静時値に回復 した。
19)
皮膚温は皮膚血流 の定性的な指標 とす ることがで き環境条件を一定に保てば,皮膚温の上昇か ら皮膚血流 量の増加を推定す ることがで きる。実験中の環境温度は26‑28Oc, 無風状態であ り環境条件はほぼ一定に 保たれていたので被験者11名の清拭前,中,後の皮膚温は清拭に よる変 化と解釈で きる。
清拭部位の皮膚温は清拭 タオルか らの熱 と摩擦等・/1よ り上昇す る。同時に露出に よる皮膚表面か らの熱の 放散が水分の蒸発に よって促進 され,皮膚温が低下す る。清拭直後の皮膚温はそのノミランスにおいて決まる と考えられ る。
実験結果は, どの清拭部位において も皮膚温は清拭直後に一時低下 し,放散す る熱が大 きか った と考 えら れ る。またその後の皮膚温が しだいに上昇 した とは言え,安静時皮膚温以上にな らなか った ことから局所の 皮膚血管において も清拭に よって血流促進の変化がお こらなか った と考 えられ る。
次に脈波高 ・心拍数 お よび皮膚温の比較に於て考察す ると三者共,清拭直後に一時減少 ・低下 し その後 徐 々に上昇 ・増加す るが,いずれ も安静時値 まで回復 しない とい う定型的な変化を示 した。しかし, その変 化値はいずれ も標準偏差の範囲内であ り,血流促進の変化があった とは認めがたい。
Ⅴ 結 語
清拭に よる血液循環 の微少な変動を とらえるために,一定の条件下で清拭を行い,その時の指 尖 容 積 脈 波,心拍数 お よび皮膚温を測定 し検討 した結果,次 の所見を得た。
1.脈波高 ・心拍数は安静時に比べ,清拭時,清拭後 ともほ とん ど変化 しなか ったが,詳細にみると被験 者の 3分の 2以上の者は,清拭時脈波高が安静時 よ り減少 していた。また,清拭時の心拍数は安静時 より平 均5.3%減少 し,清拭後20分間の観察中に も安静時値 までに増加 しなか った。
2.清拭 した四部位 の皮膚温は清拭時に一時下降 し,最 も下降 したのは胸部で‑0.9土0,3oCであった。
清拭後は次第に上昇 し,最初 の5分間で大腿部の他は50%前後 回復 したが,以後なだ らかな上昇を示し,清 拭後20分までの観察では,下腿部は安静時値 まで回復 した ものの,胸部,腹部,大腿部では安静時値 まで到 達 しなか った。
3. 脈波高,心拍数 お よび皮膚温の関連をみ ると,三者共一様に清拭時測定値 は一時減少 ・下降 し,清拭 後次第に増加,上昇す るパ ターンであった。減少,下降の程度を比較す ると脈波高の変動幅が最 も小 さ く, 皮膚温の変動が最 も大 きか った。しか し変動 した値が もとの安静時値 まで増加,上昇す る時間は皮膚温が最
も早か った。
今 回の実験は体動を全 く行わず,清拭手技の刺激のみで,血液循環 の変動を とらえたの で あ る が,脈波 高,心拍数な ど直接全身の循環系の変動を反映す る指標において も, また 局所の血流促進を反映す るとみ ら れ る皮膚温において も変化 らしい変化は捉えられなか った。この ことか ら安静保持に留意 した温湯清拭を短 時間で行 うことは血液循環を刺激す る ような原田 とはな らない ことが示唆 された もの と考 える。今後,測定 の指標を考え直 し更に詳 し く確かめてみたい と考 えてい る。
最後に,実験に当た り多用途監視装置を使用 させて頂 き,かつ懇切な ご助言を賜 った本学部保健体育科教 室松下清子助教授,外の先生方に謝意を表す る。 (本論文の要 旨は第11回 日本看護研究学会総会に於て発表
した)
文 献
1)福 田邦三他監修 :看護学大系1,看護 の基礎,284,文光堂,1962
2)McClain,M.E.,Gragg,S.H∴ ScientificPrinciplesinNursing5th,158,TheC.Ⅴ.Mosby Company,1966
3)Fuerst,E.Ⅴ.,Wolff,L.Ⅴ∴ FundamentalsofNursing4th,193,∫.B.LippincottCompany, 1969
4)川島み どり:生活行動援助の技術,第1集,120,医学芸術社,1976
5)Henderson,V.,Nite,G.:PrinciplesandPracticeofNursing,6th,789,Macmillan pub‑
lishingCo.INC,1978
6)聖路加国際病院看護手順委員会編 :基本看護手順,79, メヂ カル フ レン ド社,1978 7)湯模 ます編 :系統看護学講座10,看護学総論 (第6版),218‑219,医学書院,1980 8)松下和子編 :看護 Mook,No.2,身体の清潔,101,金原出版,1982
9)沖中重雄監修 :看護学大辞典,第二版,1031, メヂ カルフ レン ド社,1982 10)氏家幸子 :基礎看護技術,278,医学書院,1982
ll)吉田時子,荒井蝶子 :最新看護学全書12,看護学総論 Ⅱ (第5版),328‑329, メヂ カルフ レン ド社, 1985
12)高木健太郎,永坂鉄夫 :身体各部皮膚血流 の特性 特にその周期性動揺,総合医学, 18(ll),49, il記1
13)村上静子,他 :皮膚温か らみた清拭方法の検討 (その1),京都市立看護短期大学紀要 第4号,27, 1979
14)平松菩美子,也 :熱布清拭 と温湯清拭 の比較検討,第13回 日本看護学会集録 看護総合,199,1982 15)石井靖夫 :循環器疾患 と温浴,昭和医学会雑誌,30(ll),41‑42,1970
16)子安静枝,也 :患者の生理学的状態に及ぼす清拭,洗髪の影響,第3回 日本看護学会集錬,184,1971 17)谷英子,他 :全身清拭'/1関す る臨床的検討,看護技術,23(2),110,1977
18)藤井郁代,森 田チェ子 :患者の生理 ・感覚的側面に及ぼす全身清拭の実験的検討,神戸市立看護短期 大学紀要 1,83,1982
19)大原孝吉 :皮膚温,温熱生理学 (中山昭雄編),13‑14,理工学社,1981
要 約
一定条件下での温湯清拭に よる血液循環 の微少な変動を とらえるために指尖容積脈波 ,心拍数,皮膚温お よび皮膚電気反射を測定 し,次の ような結果を得た。脈波高,心拍数 お よび皮膚温は三者共安静時に比べ, 清拭時は一時的に下降減少 し,清拭後 しだいに上昇増加す るとい うパ ターンであった。 しか し,その変動の 程度はいずれ も有意差 といえるものではなか った。清拭時に F降 ・減少 した各測定値 の変動幅を三者間で比 較す ると,脈波高の低下が最 も少 く,皮膚温の低下が最 も大 きか った。清拭後の上昇 ・増加 の速 さでは,皮 膚温の上 昇が最 も早か った。尚,情動 の変 化の有無を確め るために皮膚電気反射を測定 したが,変化は認め
られなか った。
以上の ことか ら,全身的,局所的に血流促進の徴候を とらえることはで きなか った。