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Li 置換したラーベス相 Ca-Mg-Ni 系合金の 結晶構造と水素化特性

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(1)

平成27年度修士論文

Li

置換したラーベス相

Ca-Mg-Ni

系合金の 結晶構造と水素化特性

平成28215 三重大学大学院

教育学研究科 理数・生活系教育領域 物理学専攻 214M028 竹尾将吾

指導教員 牧原義一 教授 新居淳二 教授 國仲寛人 准教授

(2)

目次

1序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.1水素エネルギーの利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.2水素貯蔵技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

1.3 LaNi5について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

1.4Ca-Mg-Ni系水素貯蔵合金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

1.5(Mg1−xCax)Ni2について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

2研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

3実験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.1試料の作製・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 3.2グローブボックス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 3.3アーク溶解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3.4高周波誘導加熱溶解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 3.5熱処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 3.6旋盤による試料の取り出し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 3.7結晶構造解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

3.8PCT測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

4結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

4.1PCT装置の調整・試運転・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

4.2アーク溶解による(Mg1−xCax)Ni2の作製 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4.3高周波溶解装置の試運転と調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 4.4高周波溶解法による(Mg0.68Ca0.32)Ni2と(Mg0.68Ca0.32)(Ni0.9Li0.1)2の作製とPCT測定

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55 4.5高周波溶解法による(Mg0.56Ca0.44)(Ni0.9Li0.1)2の作製とPCT測定 ・・・・・・・・70

5総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79

(3)

1

1 序論

近年、地球温暖化やエネルギー問題が話題になっている。工業が発展していく一方で、

化石燃料の大量消費によるエネルギー資源の枯渇や二酸化炭素濃度の増加、それに伴う地 球温暖化問題が深刻化してきているからである。表1-12011年時点での主な化石燃料の データを示す[1]。それぞれの可採年数を見ると、石油と天然ガスが約50年、石炭は112 と残りわずかしか残っていないことがわかる。そこで、これまでのエネルギー源に変わる 新しいエネルギーの開発が求められている。こういった流れの中で、天然資源の少ない地 域でも生産可能で、二酸化炭素などの有害物質を排出しない、水素エネルギーを媒体とし た新しいクリーンエネルギーが注目されている。これには、既に実用化されている各種燃 料電池の他、水素貯蔵合金ヒートポンプの開発などがあり、様々なエネルギーシステムの 中に水素や水素貯蔵合金の利用が広がっている。2014年にはトヨタ自動車から水素自動車

MIRAIが発売され、近年では、岡山県の徳山動物園でコンビナートから発生した水素でゾ

ウ舎の電力をまかなうなど、地元産の水素を活用した取り組みも盛んになってきている(表 1-2)[2]しかし、まだ技術上の課題は多く残されている。

本項では、水素エネルギーを利用するにあたってのメリットとデメリット、さらに、開 発の進んでいる燃料電池や水素エネルギーシステムについて、その水素貯蔵技術や実用例 を述べていく。

1-1 2011年末時点での化石燃料の現状[1]

(4)

2

1-2 各都市での水素を利用した取り組み[2]

都市 取り組み

北海道室蘭市 地元の製鉄所から出る水素を使い電力の一部をまかなう構想 秋田市 風力発電の電力で水素を製造・貯蔵する構想

山口県周南市 周南コンビナートで発生する水素で電力の一部をまかなう構想 長崎県五島市 離島沖の風力発電の余った電力で水素を製造・貯蔵する実験を支援 福岡市 下水からつくった水素を燃料電池車に供給する実験を開始

東京都 2020年の東京五輪で選手村の電力の一部を水素でまかなう構想 川崎市 水素を燃やしてタービンを回す水素発電所の集積をめざす

北九州市 製鉄所で発生する水素を使い、一般住宅の電力の一部をまかなう実験を展

1.1

水素エネルギーの利用

(1)

燃料電池

水に電気を流すと、水素と酸素が発生する。これは、よく知られている水の電気分解で ある。これとは逆に水素と酸素を化合させることで水を得ることができ、その反応の過程 で電気エネルギーを取り出すことができる。この仕組みを利用して電気エネルギーを得る 装置が燃料電池である。燃料電池は電池という名称ではあるが、発電装置の一種である。

燃料電池の利点の1つとして、エネルギー変換効率が高いことが挙げられる。他の発電方 式の例として火力発電の発電方法を考えると、まず燃料の持つ化学エネルギーを熱エネル ギーに変換する。この熱を利用してタービンを回すことで運動エネルギーに変換する。最 後に運動エネルギーを変換することで電気エネルギーとして取り出すことができる。この エネルギー変換の過程で損失が生じ、結果エネルギー変換効率を下げてしまう。燃料電池 は、電気エネルギーを取り出す際に燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーとして取 り出すことができ、これがエネルギー変換効率の高さに繋がっている。火力発電のエネル ギー変換効率が約35~43%であるのに対して、燃料電池の発電効率は約60%である。[3]さら に、反応の過程で水と熱しか生成しないことから、クリーンなエネルギーとして注目され ている。

燃料電池は、使用する電解質の種類によって分類される[4]。表1-3に主な燃料電池の4 類の方式についてまとめた。この中でも代表的な方式であるPEFCについて説明する。[5]

(5)

3

1-3 燃料電池4方式の比較[4]

方式 固体高分子型

(PEFC)

リン酸型

(PAFC)

溶解炭酸塩型

(MCFC)

固体酸化物型

(SOFC)

電解質 イオン交換膜 リン酸 炭酸リチウムなど 安定化ジルコニア 燃料 水素 水素 水素や一酸化炭素 水素や一酸化炭素 移動イオン 水素イオン 水素イオン 炭酸イオン 酸化物イオン

触媒 白金など 白金など 不要 不要

出力 ~100kw ~10000kw ~100kw ~100kw 動作温度 常温~100℃ 200℃ 650℃ 1000℃

1-1PEFC型燃料電池の模式図である。イオン交換膜を挟んで、負極(燃料極)に 水素、正極(空気極)に酸素を供給することで発電する。イオン交換膜はH+イオンしか通 さない性質を持っており、電子はイオン交換膜以外の経路を通って空気極に移動する。こ の際に電気エネルギーを得ることができる。また、イオン交換膜は水がないと働かないた め、適切な水分管理が必要となる。動作温度が比較的低温であるため最も実用化が進んで いるが、出力が低いため、その利用分野は家庭用や小型業務用などに限られてしいる。

1-1 PEFC型燃料電池の模式図[5]

燃料電池の課題として、まずはコストの問題が挙げられる。燃料電池メーカー各社が様々 なコスト削減に努めているほか、国や自治体による補助金制度が整備されてきているが、

負荷

(6)

4

一般消費者が簡単に手を出せる金額ではない。そして、将来的な目標である小型化技術の 確立にはまだまだ時間がかかる。また、燃料電池は寿命が限られており、現状では約4 時間(4~5年)とされている。

(2)

エネファーム[6]

家庭内の光熱費削減を主な目的として2008年に誕生したのがエネファームである。正式 名称を、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムという。コージェネレーションと は、発電の際に発生する排熱を他の用途に利用することであり、エネファームは燃料電池 とコージェネレーションの両方の機能を有したシステムである。燃料電池ユニットで発電 した電気を照明やテレビ等に、その際に発生した熱を給湯などに利用する仕組みである。

エネファームの1次エネルギーは天然ガスであり、遠くの発電所で発電して電気が送られ る従来のシステムでは約40%であったエネルギー利用率が約94%にもなる。発電のメリッ トとして省エネかつ電気代削減が挙げられるが、製品自体のコストが高いことや、天然ガ スは海外から輸入しているため、価格が安定しないこと、寿命があることなどデメリット も多い。

1.2

水素貯蔵技術

水素エネルギーの利用は、可動式と定置式に分けられる。可動式については、システム に安定して水素を必要な量だけ取り出せる状態で高容量かつ安全に貯蔵しておく必要があ る。貯蔵法については、気体のまま高圧で保存する方法、低温で、液化して保存する方法、

水素貯蔵合金などを用いて格子間構造中に貯蔵させる方法など様々な手法の研究が進んで いる。

これらの貯蔵法の優位性を考える要素として、重量水素密度(wt%)と容積水素密度

(kg/m3)が挙げられる。重量水素密度とは、貯蔵材料全体の質量に対しての水素の質量の割

合を表すものである。また、容積水素密度とは、貯蔵容器全体の容積に対しての水素の質 量の割合を表すものである。これらの値が大きいほど、軽量でコンパクトな貯蔵方法であ ると言える。

(1) 圧縮水素

気体の水素を貯蔵するタンクは、既に天然ガスを貯蔵するタンクにおいてその技術が確 立されているので、これをそのまま水素ガスに応用して用いられている。各種合金で作ら れた容器に炭素製の繊維を巻きつけることで、高圧に耐えられるように強度を上げている。

繊維の巻き方は、容器に対して垂直に巻くフープ巻きと斜め方向に巻くヘリカル巻きがあ る。(図1-2)

(7)

5

フープ巻き ヘリカル巻き

1-2 炭素繊維巻きつけによる水素タンクの強度の補強[7]

(2)

液体水素

水素を-253℃の極低温にすることで液体化させると、体積を常温の水素ガスの約1/800 にすることができる。しかし、極低温を保つ必要があるため、保存には断熱性の高い容器 が必要となる。

また、液体水素には、ボイルオフという問題がつきまとう。これは、液体水素が気化消 失することであり、この問題を解消しなければ水素ガスを貯蔵することは難しい。気化し た水素を集め再利用するシステムなどの実用化に向けた研究も進められている。[8]

(3)

水素貯蔵合金

水素は多くの金属と反応して金属水素化物を生成する。それらの金属水素化物には安定 なものと不安定なものが存在する。例えば、Mg、Ti、Laなどは安定な金属水素化物を作り、

FeNiは不安定な金属水素化物を作る。この2種類の金属を組み合わせた合金は、水素 を可逆的に吸収および放出する性質を持つ。これらのうち、常温常圧付近で水素を吸蔵・

放出する能力を持ち、かつ反応量と反応速度が大きいものを水素貯蔵合金と呼ぶ。表1-4 にこれまで開発されてきた主な水素貯蔵合金を示す。

1-4 主な水素貯蔵合金[9]

タイプ 合金組成

(化学式)

水素貯蔵量

(wt%)

平衡水素圧

(MPa)

水素化物生成熱

(kJ/molH2

AB5

LaNi5 1.4 0.4 -30.3 MmNi5 1.4 3.4 -26.4 CaNi5 1.2 0.4 -33.5

AB2

TiMn1.5 1.8 0.7 -28.5

TiCr1.8 2.4 0.2~5 -20.2

ZnMn2 1.7 0.1 -38.9 ZrV2 2.0 10−9 -200.8

AB TiFe 1.8 1.0 -23.0

A2B Mg2Ni 3.6 0.1 -64.4 水素タンク

(8)

6

表中の平衡水素圧とは、水素吸蔵の際に必要な水素圧である。表中の水素貯蔵量には質 量水素密度を記した。また、合金に水素が吸蔵される際の発熱量を水素化物生成熱として 記した。水素分子1molを吸蔵するときの発熱量をkJで記してあり、符号がマイナスであ ることは、熱化学方程式における発熱反応であることを表している。この値は、エンタル ピーとも呼ばれ、水素化物の安定性を示す。表中の ZrV2 では水素化物生成熱は-200.8

kJ/molH2と大きいため、とても安定しており、水素を放出させることが困難になる。この

値は、-20~30 kJ/molH2程度が適しているといわれている。水素化においては、この熱を取

り除かなければ反応は継続しない。

(4)

水素貯蔵合金の構造と特性

水素貯蔵合金は、その構造内に水素を水素原子として取り込むため、非常に高密度に水 素を貯蔵できる。この水素が入り込む隙間を水素占有サイトという。このサイトの大きさ は水素平衡圧に大きく影響する。一般的に、サイトが小さければ水素原子が入り込みにく くなるので水素平衡圧は高くなる。[10]

水素貯蔵合金は他の水素貯蔵材料・方法と比べて重量の点で劣るが、優位に立っている 点として、容積水素密度の高さが挙げられる。表1-5に様々な水素貯蔵媒体とその容積水素 密度を示す。水素貯蔵合金の容積水素密度は、常温・常圧の水素ガスと比べて約1000~2000 倍とはるかに大きい。また液体水素と比べても若干大きい。これより、水素貯蔵合金を用 いればより高密度に水素を貯蔵できると言える。

1-5 各状態の単体水素と水素貯蔵合金における容積水素密度[10]

貯蔵媒体 容積水素密度(kg/m3 水素ガス(0度、0.1MPa) 8.87×10−3

液体水素(-253℃) 70.8

MgH2 110.2

VH2 171.0

V7.45 Ti10 Cr12.5 Mn3 ~130

Mg2 NiH4 93.6

Ti FEH1.9 98.5

LaNi2H5 98.6

NaAlH4 70.6

水素ボンベ(15MPa、46L) 16.4

(9)

7

(5)

水素貯蔵合金の結晶型とその特徴[11]

・AB5

LaNi5をはじめとする希土類吸蔵合金がこの AB5型にあたる。この合金は活性化の容易 さ、反応性の高さ、体積水素貯蔵密度の高さの点で優れており、ニッケル水素電池や水素 貯蔵容器などに広く応用が進んでいる最もポピュラーな水素貯蔵合金である。

・AB

このタイプの水素貯蔵合金は室温での水素吸蔵・放出が可能で原価が安価である。Ti-Fe 系合金を用いた水素貯蔵容器はコスト面の優位さから、欧米や日本で数多く作製されてい る。2006 年にはミュンヘン空港内を走行する水素バスの水素供給ステーションで TiFe 貯蔵合金が用いられた。

・A2B

Mg系合金は水素化・脱水素化によってMgH2を生成して不均化し、合金組成が変化する 傾向が強いが、Mg2Niは高温でMg2Ni H4を生成して3.6wt%もの水素を可逆的に吸蔵する。

しかし、低温で水素貯蔵が進行し平衡水素圧が0.1MPaとなる温度が255℃と高温であるた め実用化には至っていない。

・AB2

A 原子とB原子の原子半径が1.225付近の最蜜充填構造をもつ金属間化合物であり、ラ ーベス相合金とも呼ばれる。TiNi2ZrMn2、TiCr2などの六方晶 C14型、ZrV2TiCr2

などの立方晶C15型、MgNi2などの六方晶C36型の3種類に分類される。前者の2種に水 素貯蔵合金として知られるものが多い。図1-3にそれぞれの結晶構造を示した。

ラーベス相構造は A,B 原子のかなり広い組成範囲で存在する場合が多く、合金組成が正確 AB2であるとは限らない。しかし、ラーベス相合金では多少化学量論比から外れていて も過剰な原子が別のサイトを占めることができるため安定な構造が形成される。このよう に、組成の点で柔軟性があり、組成を変えて様々な特性の水素貯蔵合金を得ることができ ることが他の型にはないメリットである。

(10)

8

C14 C15 C36 1-3 ラーベス相合金の結晶構造[12]

(6)

今後の課題と展望

1-4は横軸に質量水素密度、縦軸に体積水素密度をとって、各貯蔵技術についてグラフ 化したものである。また、ガソリンについても燃料エネルギーを水素換算した場合の値を とって載せた。

質量水素密度が大きいほど軽量に、体積水素密度が大きいほどコンパクトに水素貯蔵で きることを意味する。よって、グラフの右上ほど効率の良い水素貯蔵技術であるといえる。

現状では、無機系素材は水素放出速度や可逆性の点で、液体水素は蒸発の問題で課題を抱 えており、使い勝手の良さでは圧縮水素ガスが優位に立っている。各技術は今後、ガソリ ンの特性を目指してグラフの右上に向けて改善されてゆかなければならない。

(11)

9

1-4 体積水素密度と質量水素密度の関係[13]

1.3 LaNi

5について

LaNi5は代表的なAB5型水素貯蔵合金である。LaNi5は、安定な水素化物を作る Laと水 素化物が不安定なNiとの合金である。この2原子は様々な組成比で金属間化合物を作るが、

Niが多いほど水素が解離しやすくなる。LaNi2LaNi3は安定な水素化物を作るが、水素を 放出できる量が少ない。LaNi5では、常温常圧で水素を吸蔵・放出し、水素貯蔵に適した性 質を持っている。現在使用されているAB5型の水素貯蔵合金はこのLaNi5を他の元素で置換 して特性改善したものである。

LaNi5CaCu5型の六方晶をとる金属間化合物で、両元素で作られる面とNiのみで作ら れる面とが交互に重ね合わさっている。図1-5に単位胞を、表1-6に結晶構造パラメータを それぞれ示す。[14]

(kg/m3

質量水素密度(wt%)

500

(12)

10

1-6 LaNi5の構造パラメータ

1-5 LaNi5の単位胞

1.4 Ca-Mg

系水素吸蔵合金

CaMgは多量の水素を吸蔵し、その軽さ、価格の安さ、資源の豊富さから注目を集め ている水素吸蔵金属である。CaCaH2の形で4.8wt%の、MgMgH2の形で7.6wt%の 水素を吸蔵する。しかし、これらの水素化物は安定した化合物を形成し、水素を放出しな い。軽さは、水素吸蔵合金の重要な課題である質量水素密度の点で重要な要素である。こ れらのことから、CaMgなどの軽い金属を含み、可逆的に多量の水素を吸蔵放出する合 金の研究が多くなされている。表1-7にこれまで研究されてきたCa-Mg系合金についてま とめる。

パラメータ

結晶系 六方晶

A(Å) 5.0228

B(Å) 5.0228

C(Å) 3.9826

α(°) 90.00 β(°) 90.00 γ(°) 120.00 単位胞体積(Å3) 87.01

La

Ni

α β γ

(13)

11

1-7 これまでに報告されているCa-Mg系水素吸蔵合金の性質

合金名 吸蔵量

(wt%)

その他

Ca 4.8 CaH2を形成

Mg 7.6 MgH2を形成

CaMg2[15] 2.3 4MPa,573Kで吸蔵、その後不均化。NiLaを置換

することで構造が安定。

(Ca1−xMgx)Al2[16] / CaH2Alに分解

Ca1−xMgx(Ni0.9Al0.1)[17] 1.33 x=0.6でプラトーが出現。繰り返し水素を吸放出する

と著しく水素吸蔵量が低下する。

Ca0.6Mg0.4(Ni0.9Al0.05M0.05) (M=Cu,Mn,Cr,Co)[18]

1.34~1.44 M置換前と同程度の吸蔵はしたが、繰り返し性能の改

善は見られず。

CaLi2−xMgx[19] 1.8~6.0 水素化後、CaLi2CaMg2に分解し、水素を放出しない。

Ca3−xMgxNi9[20] 1.1~1.6 x=1.5~2.0で良好な水素吸蔵放出

(Mg1−xCax)Ni2[21] 1.4 x=0.32で可逆的に水素吸蔵放出

CaLi2[22] 6.8~7.1 水素化の際にCaH2LiHに分解し、水素を放出しない

1.5 (Mg

1−x

Ca

x

)Ni

2について21

Ca-Mg 系合金の中でも、2001 年に N.Terashita らが報告した(Mg1−xCax)Ni2合金は、x 組成が大きくなるにつれC36 構造がなくなり、C15構造の単相になる(図1-6)。そして、

x=0.32では、完全にC15の単相となり、水素を可逆的に吸蔵放出し、合金は313K,3.5MPa

の時に最大で 1.4wt%の水素を吸蔵した。論文中の x=0.32 について 278K,313K,353K での水素放出時の測定結果を図1-7に示す。この結果から、x=0.32313K(40℃)で0.1MPa 程度のプラトー圧を有することが分かる。また表1-7に示すように、この合金は室温で水素 を可逆的に吸蔵放出する唯一のCa-Mg系合金であることが分かった。

一般に、軽い原子で合金を置換すれば質量あたりの水素吸蔵量は増加する。さらに、原 子半径の大きな原子で合金を置換すれば、合金の格子は大きくなり水素を吸蔵するサイト が大きくなるため、水素吸蔵量は増加する。そこで、(Mg1−xCax)Ni2合金のNiを一部Ni りも軽く、大きな原子半径をもつLiで置換することで、さらに水素吸蔵量が大きくなり水 素化特性が向上するのではないかと考えた。

(14)

12

1-6 (Mg1−xCax)Ni2の各組成xでのXRDパターン

(A(x=0),B(x=0.24),C(x=0.32),D(x=0.44),E(=0.69),F(x=0.86,G(x=1.00))[21]

(15)

13

1-7 x=0.32の各温度での水素放出曲線[21]

(16)

14

2 研究目的

N.Terashita によって報告された、(Mg0.68Ca0.32)Ni2合金は、室温で水素を可逆的に吸蔵 放出する唯一のCa-Mg系ラーベス相合金である。この合金のNiの一部をLiで置換するこ とにより六方晶ラーベス相CaLi2の水素化特性を取り入れ、より軽量かつ、多量の水素を吸 蔵する合金の生成が期待される。

そこで本研究では、(Mg1−xCax)Ni2を基本合金として、そのNiサイトをLi10%置換し た (Mg0.68Ca0.32)(Ni1−xLix)2および(Mg0.56Ca0.44)(Ni1−xLix)2を作製して水素化実験を行い、

結晶構造とその水素化特性を明らかにすることを目的とした。

(17)

15

3 実験方法

以下に研究手順の大まかな流れを示す。

3-1 実験の流れ

(𝐌𝐠

𝟎.𝟔𝟖

𝐂𝐚

𝟎.𝟑𝟐

)(𝐍𝐢

𝟎.𝟗

𝐋𝐢

𝟎.𝟏

)

𝟐

(𝐌𝐠

𝟎.𝟓𝟔

𝐂𝐚

𝟎.𝟒𝟒

)(𝐍𝐢

𝟎.𝟗

𝐋𝐢

𝟎.𝟏

)

𝟐の作製

b.アーク溶解法

c.高周波誘導加熱溶解法

②結晶構造解析

a.粉末X線回折実験

③水素吸蔵放出特性の測定

a.PCT曲線の測定

(18)

16

3.1

試料の作製

(1) 試料の秤量

水 素 化 前(Mg0.68Ca0.32)(Ni0.9Li0.1)2(Mg0.56Ca0.44)(Ni0.9Li0.1)2を 作 製 す る た め 、

Mg,Ca,Ni,Liをそれぞれ化学当量比で秤量後、MgCaNiに比べて融点が低く溶解中

に気化しやすいので、計算値よりもMg10%,Ca3%多く秤量した。[16]使用した金属の 純度、形状、販売元を表3-1に示す。秤量は金属の酸化を防ぐため、全てAr雰囲気中のグ ローブボックス内で行った。

3-1 使用金属の詳細

物質名 純度(%) 形状 販売元

Ca 99.5 5~8mm 粒状 レアメタリック

Ca 99.99 樹枝状結晶 ALDRICH

Mg 99.99 2~3mm 粒状 レアメタリック

Ni 99.99 10mm 針状 レアメタリック

Ni 99.99 直径5mm長さ150mm ロッド状 レアメタリック

Li 99.5 Rod diam 12.7mm ALDRICH

各金属の原子量をそれぞれMg=24.31,Ca=40.08,Ni=58.69,Li=6.94とし(表3-2)x=0.0

x=0.1について試料作製に必要な金属の質量を算出した。Niは他の金属と比べて硬く、

細かい質量の調整が難しいため、先にNiを秤量してた金属の秤量の基準とした。

3-2 各物質の原子量と質量の表記

物質名 原子量 質量の表記

Mg 24.31 mMg

Ca 40.08 mCa

Ni 58.69 mNi

Li 6.94 mLi

・(Mg0.68Ca0.32)(Ni1−xLix)2の秤量

モル比 Mg : Ca : Ni : Li = 0.68 : 0.32 : 2-2x : 2x …① より

mMg

24.3140.08mCa58.69mNi6.94mLi = 0.68 : 0.32 : 2-2x : 2x …②が成り立つ。よって

(19)

17

ⅰ) x=0のとき

mMg 24.31mCa

40.08mNi

58.69 = 0.68 : 0.32 : 2 より mNi = 7.10mMg = 9.15mCa …③ となる。

ⅱ)x=0.1のとき

mMg 24.31mCa

40.08mNi

58.69mLi

6.941 = 0.68 : 0.32 : 1.8:0.2 より mNi = 76.39mMg = 8.24mCa=76.10Li …④ となる。

・Mg0.56Ca0.44)(Ni1−xLix)2の秤量(x=0.1)

mMg 24.31mCa

40.08mNi

58.69mLi

6.941 = 0.56 : 0.44 : 1.8:0.2 より mNi = 7.76mMg = 5.99mCa=76.10Li …⑤ となる。

試料の秤量にはグローブボックス中に あるメトラー・トレド製のAT天秤(図3-2)

を用いた。この天秤の最小表示は

0.00001gであり、左上の0.1/0.01mgボタ ンで最小表示を0.0001gに切り替えるこ とができる。試料はプラスチック製のボー トの上に乗せて秤量した。秤量は次の手順 で行った。

①↑↓ボタンで天秤横のガラス窓を開け、

ボー トを乗せる。

②Re-Zeroボタンを押して0.00000gを表 示させる。

③ボートを取り出し、試料を乗せてガラス

窓を閉めた状態で表示されている値を読み取る。

3-2 AT天秤

3.2 グローブボックス

試料の酸化を防ぐため、試料の秤量、取り出し、粉末化などの際にグローブボックス(図 3-3)を使用した。グローブボックスは作業を行うメインボックスと、その横のサイドボッ

クス(図3-4)から構成されている。グローブボックスの下部にはメインボックスやサイド

(20)

18

ボックスを真空引きする本引とメインボックス内の圧力を自動で一定に保つ内圧のモード を選択できるつまみがある。サイドボックスはメインボックスに試料や器具を入れる際に 一時的に利用する。また、メインボックス内は高純度の Ar ガス(99.9995%)で満たされ ており、試料の酸化を防ぐことができる。また、水分を除去するための気流循環式乾燥機 も設置されている。実験では、以下の手順で作業を行った。

①真空になっているサイドボックスのリーク弁を緩め、再度ボックス中の気圧を外と同じ にする。

②サイドボックスを開き、試料や器具を入れる。

③リーク弁を閉じ、モードを本引きにして真空ポンプでサイドボックス内を 5 分間真空引 きする。

④0.03MPaまでArガスを導入する。

⑤③、④の手順を5回繰り返す。

⑥0.1MPaまでArガスを導入し、メインボックスとサイドボックスの間の扉を開いて、試 料や器具をメインボックスに入れる。

⑦モードを内圧にし、グローブに手を入れてメインボックス内で作業を行う。

3-3 グローブボックス 図3-4 サイドボックス

3.3 アーク溶解

水素化用の試料とする金属間化合物は、それぞれの金属の融点よりも高い温度で溶解す ることで合成できる。まず第一の方法として、金属の酸化を防ぐための真空状態と、融点 を超える高温を作り出すことのできるアーク溶解炉(図3-5,3-6)を用いて試料作製を試み た。アーク炉の中央には溶解する金属を置く銅ハースがあり、針状のW電極の先から銅ハ

(21)

19

ース上の金属にアーク放電することで高温を作り出す。アーク炉の周りは円筒状のガラス で囲まれており、真空ポンプ、Ar ボンベ、大電流電源装置などと接続されている。円筒状 のガラスは、高真空シール用のグリースで上下の金属部分と接着され、密封状態を保つ構 造となっている。アーク炉内の圧力は、ピラニゲージと電離真空計(図3-7)を用いて測定 した。実験では溶解前に十分に真空引きし、溶解の際はArガスを常時流すことによって金 属の酸化を防いだ。さらに、溶解中は、銅ハースが溶解しないよう、冷却水を循環させた。

次の手順でアーク炉を用いて試料を合成した。

①秤量した試料を銅ハースの中央に置き、アーク炉にセットする。

②ロータリーポンプで真空引きを行う。

③ピラニゲージの電源を入れ、アーク炉内の圧力が 0.01[Torr]前後になるまで真空引き を行う。

③ピラ二ゲージの電源を切り、ディフュージョンポンプで真空引きを行う。

④電離真空計の電源を入れ、アーク炉内の圧力が約2.0×10−6[Torr]になるまで真空引き を行う。

⑤電離真空計の電源を切ってフィラメントを冷却し、その30分後にディフュージョンポン プを切る。

⑥ディフュージョンポンプを切るのと同時にArガスを30cmHgまで導入し、その後ロータ リーポンプで真空引きする。

⑦⑥をさらに2回繰り返し、アーク炉内をArガスで置換する。

⑧Arガスの流量を5L/mmに調節し、Arガスが常時アーク炉内を流れるようにする。

⑨アーク炉を冷却する冷却水を流し、大電流電源装置の電源とブレーカーを入れる。

⑩溶接電流制御つまみを50Aにセットし、アーク電極棒を支持しているベークライト製保 持具を外す。

⑪試料上方5mm程度の位置にW電極をセットし、フットスイッチペダルを踏んで放電を 開始する。

⑫放電を確認したら、試料の端からゆっくりと円を描くように溶解していき、融点の高い 金属から溶かしていく。さらに、電流値を少しずつ上げていき、試料全体が溶解するま で溶かす。

⑬冷却後、試料を裏返し、試料が均一に溶解するように⑩~⑫を 3 回程度繰り返す。この 際電流値は50~100Aの間で適当な値に設定する。

⑭銅ハース下部に触れ、十分に冷却されたことを確認した後、Arガスを止め、大電流電源 装置の電源、ブレーカーを切る。

⑮銅ハースごと静かに試料を取り出す。

⑯アーク炉内、銅ハースを清掃し銅ハースを本体にセットしてロータリーポンプで 1 時間 程度真空引きした。ディフュージョンポンプが十分に冷却されたことを確認したあと、

(22)

20 ロータリーポンプの電源を切る。

3-5 アーク溶解炉操作部

3-6 アーク溶解炉全体 3-7 ピラ二ゲージ(上)と電離真空計(下)

(23)

21

3-8 アーク溶解炉概略図

3-9 アーク溶解の流れ

秤量試料をセット

銅ハースの中央に配置

ロータリーポンプで真空引き

0.01Torr前後まで 約1時間

拡散ポンプで真空引き

2.0×10−6Torrまで 約4時間

試料溶解

Ar気中 約3 50A~100A

バルブ

W

電極

(24)

22 3.4 高周波誘導加熱溶解

アーク溶解法は、気化した金属が排気され質量欠損が起こりやすく、溶解電流の設置を 手作業で行うため温度を制御することも難しい。そこで、セキスイ電子株式会社製の高周 波誘導加熱装置(図 3-11)による試料の作製を行った。高周波誘導溶解では、試料をモリ ブデン(Mo)製の試料管に密封して溶解するため気化による質量欠損が起こりにくく、電流 値の制御による温度調整も容易である。装置は、下部の電源や電流値の設定を行う制御部 と上部の加熱コイルがある加熱部からなっている。加熱コイルに交流電流を流すことで電 磁誘導によって高密度の渦電流が発生し、それによって発生するジュール熱で試料を溶解 する仕組みになっている(図3-10)

横には加熱する試料を封入するガラス管があり、その先は真空ポンプに接続されている。

溶解の際には、水道の蛇口から直接水を循環させ装置を冷却した。

試料はグローブボックス内で秤量しMoの試料管に封入した。その後、試料管をアーク炉 にセットし、アーク溶解炉でアーク溶解のときと同様に真空引きを行い、試料管の蓋を溶 接して密封した。このとき、電流値は50~60Aでゆっくりと1方向に円を描くようにした。

高周波溶解加熱装置ではセラミックるつぼを用いて試料管が加熱コイルの中央部に中心が くるように固定した。その際に、試料管の振動を抑えるために山八歯材工業株式会社製の セラミックリボンをるつぼの底に敷き、そして、試料管に巻きつけることでるつぼの隙間 を埋め試料管の振動を抑えた(図3-12)。試料の温度は、ミノルタ製の放射温度計(図3-13)

を用いて測定した。溶解後、ガラス管に付着した汚れはアセトンを用いて洗浄した。次の 手順で高周波誘導加熱装置を用いて試料の溶解を行った。

3-10 高周波誘導加熱の原理

(25)

23 3-11 高周波誘導加熱装置

①グローブボックス内で試料を秤量し、Moの試料管に封入する。

②試料管の蓋をアーク炉で溶接する。

③セラミックるつぼの底にセラミックリボンを敷き、試料管にセラミックリボンを巻きつ け、隙間を埋めて固定する。

④高周波炉溶解部のガラス管の中央に試料管をセット し、ロータリーポンプで 1 時間真空引きを行う(真空 度~0.02Torr)。

⑤装置の電源を入れ、水道の蛇口から冷却水を循環させ る。

⑥ 出 力 調 整 器 で 電 流 値 を 少 し ず つ 上 げ て い き 、 約

1200℃(電流値5A)で5分間溶解する。このとき、排

水された冷却水の温度が 30℃を超えないように水量 を調整する。

⑦溶解終了から30分以上装置を止めて装置を冷却する。

⑧⑥,⑦をさらに2回繰り返す。

⑨装置の電源を切り、十分に試料管が冷えた状態で試料 管を取り出す。

3-13 放射温度計

3-12 試料管をセットした状態

(26)

24

3-14 高周波誘導加熱装置概略図

3.5 熱処理

高周波誘導溶解によって試料を溶解した後、手製の電気炉(図3-15)で熱処理を行った。

電気炉には、CHINO 製のデジタル指示調節計(図 3-16)が接続されており、電気炉内に 入れた熱電対の先端の温度を読み取ることで、電気炉内の温度を設定した温度に保つこと ができる。以下の手順で熱処理を行った。

①透明石英ガラス管に試料管を入れ、真空ポンプでガラス管内を真空にした状態でガスバ ーナーを用いてガラス管を切断し、試料管を真空密封する。

②試料管入ったガラス管を電気炉の中央にセットする。

③熱電対を試料管の反対から挿入し、先端が熱処理釜の中央にくるようにセットする。

④熱の出入りを防ぐため、石英ウールを用いて電気炉両端の隙間を埋める。

⑤指示調節器を操作し、電流値が20Aを超えないようにゆっくりと温度を上昇させ 900℃

に設定保持する。

(水冷)

(27)

25

3-15 熱処理用電気炉 図3-16 電気炉操作部

3.6 旋盤による試料の取り出し

作製した試料の入っている試料管はMo製のため、非常に硬く試料を取り出すのは難しい。

そこで、教育学部技術棟の旋盤を用いて試料管から試料を取り出した。旋盤は加工材料を セットするチャック、主軸台を回転させるレバー、往復代、横送りハンドル、縦送りハン ドルから構成され、ハンドルにはマイクロメーターが付属している。往復台には材料を削 るためのバイトがついており、ハンドルを操作することで動かすことができる(図 3-17) 実験では、以下の手順で旋盤を操作し、試料管を削った。削った試料管はグローブボック ス内でニッパー等を用いて粉砕して試料を取り出した(図3-18)

①チャックの中心に試料管を取り付ける

②試料管にバイトを当て、そこから数cm横送りハンドルで水平方向にバイトを離す。

③レバーを下に下げ、旋盤を回転させる。

③縦送りハンドルで0.25mmバイトを送り、横送りハンドルで試料管の底から約1.2cm る。

④②,③を繰り返し、試料管を1mm削る。

⑤レバーを戻し、旋盤の回転を停止する。

⑥チャックから試料を取り出す。

製した試料は、薬包紙やバイアルに入れ、グローブボックスや真空デシケーター内で、

Ar気中もしくは真空中で保存した。

図のデシケーターは真空ポンプと接続されており、高真空を保つため、一週間に一度 1

電気炉

(28)

26 時間程度真空引きを行った。

3-17 旋盤操作部

3-18 Mo試料管加工部

(29)

27

3.7

結晶構造解析

(1)

粉末

X

線回折実験

結晶に対して X 線を照射すると、結晶ごとに決まった角度で回折反射が見られる。この ことを利用して、粉末X 線回折から試料の同定や結晶構造の決定を行うことができる。測

定には、PANalytical製のX線回折装置を用いた(図3-19)。この装置はコンピュータを用

いて測定ソフトウェアで測定条件の決定や制御を行う。

3-20は測定部のゴニオメータである。中心部に解析する試料をセットし、測定条件を 設定すると、X線源から試料に対しX線が照射され、回折X線を検出器が受光する。この とき、回折 X 線の強度と反射角θが記録される。測定は、ゴニオメータがゆっくりと回転 しながら反射角θを徐々に大きくしていく。測定後、反射角θの2倍角の2θにおける回折 X線の強度が出力される。これをX線回折パターンと呼ぶ(図3-21)

3-19 X線回折装置外観 図3-20 ゴニオメータ

3-21 (Mg0.68Ca0.32)Ni2X線回折パターン

(30)

28

(2)

粉末

X

線回折法の原理[23]

粉末X線回折法は、粉末試料にX線を照射し、回折されたX線の強度を測定することに より、試料を同定したり、格子定数、結晶構造などの情報を得たりする手法である。

X線は振動数νと波長λをもつ電磁波であり、光の速度で直進しその進行方向に垂直な平 面に広がりをもつ交番電場を伴っている。このような X 線が原子と衝突すると、核外電子 X線の交番電場によってX線と同じ振動数νで電場と平行に強制的に単振動させられる。

電子が振動すると、電子から同心円状に同じ波長λをもった電磁波が放射され広がってい く。これをトムソン散乱と呼ぶ。トムソン散乱は、その特性から干渉性散乱とも呼ばれる。

結晶の場合、原子が周期的に配列しているため、特定の方向で散乱波の位相が強め合う 干渉が起こり、回折X線として観測される。この回折X線が出現する条件には、ブラッグ の条件という条件式が用いられる。図3-22のように同種の原子が等間隔で配列している仮 想的な面があるとする。各点は原子配列の周期を表す点で、散乱体にあたる。ここに、平 行なX1,2が入射したとき、鏡面反射が起こった場合のみ、ad=bcとなり散乱X線の位 相が揃い互いに強め合う。

3-22 散乱波の干渉

次に、図3-23のようにdの間隔で平行に配列している面P1P2があるとする。この ような面に入射した波1と波2は、波2の方がAC+BC=2dsinθだけ位相が遅れて出射す る。この光路差がX線の波長の整数倍であれば波1と波2は互いに強め合う。すなわち、

入射した波長λのX線が面間隔dの周期的配列によって回折されるための条件は、

2dsinθ=nλ (nは整数) …⑤

を満たすような角θで X 線が入射し鏡面反射することである。この式⑤をブラッグの条 件という。

単結晶試料に X 線を照射し、いろいろな面からの回折波を測定するにはブラッグの条件 を満たすように単結晶試料を動かさなければならない。粉末X 線回折法で用いる粉末試料

1

2 a

b

c

d

(31)

29

は、微細な単結晶の集合体であるため、ブラッグの条件を満たす結晶が任意の方向に無数 に存在している。そのため、試料を動かさなくても十分な強度の回折X 線を得ることがで きる。

3-23 面からの散乱派の干渉

(3) 粉末 X

線回折測定手順

初めに、試料の粉末化を行った。粉末化は、乳鉢と乳棒を用いた(図3-24)。粉末化した 後、測定時の酸化を防ぐため、試料をドーム型サンプルホルダ(図 3-25)に充填した。ド ーム型サンプルホルダの上面は X 線吸収量の小さい透明なスコッチテープ(Prescription

Label Tape 型番800)で覆われており、X線は強度を大きく減少されず、試料によって回

折される。ドームとサンプルホルダはグリースで接着されており、空気が入らないように なっている。試料の粉末化、ドーム型サンプルホルダへの充填は全てArガスを充填したグ ローブボックス内で行った。その後、以下の手順でX線回折装置を操作し、測定を行った。

P

1

P

2

3-24 乳鉢と乳棒 3-25 ドーム型サンプルホルダ

(32)

30

送水装置のバルブを開き、X線回折装置のブレーカーをONにする。

②装置の操作パネル左側のPower Onスイッチを押す。

PCを立ち上げる。

解析ソフトのX’Pert Date Collectorを開き、X線装置本体と接続する。

⑤System MaintenanceTube Breedingから管球の暖気運転を行う。このとき、前回の 装置の使用から 100 時間以上が経過している場合はnormal を、100 時間以内の場合は fastを選択する。

⑥暖気終了後、管球出力値を電圧45kV、電流40mAに設定する。

⑦サンプルホルダをサンプルステージにセットし、測定を開始する。

⑧測定後、解析ソフトを終了し、PCと測定装置を終了する。

(4)

格子定数の算出

結晶は、原子が 3 次元的に周期配列した固体物質である。このように規則的に配列した 原子の中では、周期的に配列した原子の集団を見つけることができる。この周期的に配列 した原子または原子の集団を代表する点を格子点と呼び、構造の繰り返しの最小単位であ る原子の集団を単位格子と呼ぶ。また、すべての格子点は互いに平行で等間隔の平面群に 乗せることができ、これらを格子面と呼ぶ。単位格子は、平行六面体となり、その形は、3

軸の長さ a,b,c とそのなす角α,β,γで一義的に決めることができる。これらのパラメータ

を格子定数という。そして、a,b,c3本の軸は、右手系といって、右手の親指が a、人差

し指がb、中指がcとなるように決定され、この3軸を結晶軸と呼ぶ。

格子面群の中で、単位格子の原点を通る格子面に最も近い格子面が結晶軸を a/h,b/k,c/l

(h,k,lは整数、a,b,cは単位格子の格子定数)の位置で切るとき、この格子面群をミラー指 数(hkl)で表し、その面間隔はdhklと表される。

ブラッグの条件式はどの結晶構造においても成り立つ。また、各結晶系では、(hkl)面 の格子面間隔(dhkl)と格子定数の間に一定の関係式が成り立つ。その関係式を表3に示す。

3 (hkl)面の格子面間隔(dhkl)と格子定数との関係

立方晶系 1

d2

=

h2+k2+l2

a2 菱面体晶系 1

d2

=

(h2+k2+l2) sin2α+2(hk+kl+lh)(cos2α−cos α) a2(1−3 cos2α+2 cos3α)

六方晶系 1

d2

=

4

3

(

h2+hk+k2

a2

)+

l2

c2

今回の実験で用いた(Mg0.68Ca0.32)(Ni1−xLix)2はラーベス相C15構造とラーベス相C36 造をもち、その結晶構造はそれぞれ立方晶系、六方晶系である。測定結果より各 hkl 面の

(33)

31

ピーク位置 2θの値がわかるので、この値と、測定に使用した X 線の波長(λ=1.5405×

10−10m:CuKα線)を用いてブラッグの条件式からn=1として結晶の格子面間隔(dhkl)を求 める。さらに、立方晶の式を用いて、測定データから抽出したいくつかのθと hkl の組み 合わせから最小二乗法により格子定数を求める。最小二乗法の計算方法について以下に示 す。

ⅰ)立方晶系の場合

1

d2

= y, h

2

+ k

2

+ l

2

= x,

1

a2

=A …⑦

とおくと、立方晶系の式は、

y=Ax

と表すことができる。最小二乗法の公式より、

A=

nΣxy−ΣxΣy

nΣx2−(Σx)2 …⑧

となり、⑦と⑧から立方晶の格子定数aを求めることができる。

ⅱ)六方晶系の場合

1 d2

= y,

4

3

( h

2

+ k

2

+ l

2

) = x

1

,l

2

=x

2 1

a2

=A,

1

c2

=B …⑨

とおくと、立方晶系の式は、

y=Ax

1+Bx2 …⑩ と表すことができる。この式の両辺を

x

2で割ると、

y x2x1

x2A+B …⑪ となるのでy

x2=Y,x1

x2=Xとおくと

Y=AX+B と表すことができる。最小二乗法の公式より、

A=

nΣXY−ΣXΣY

nΣX2−(ΣX)2,B==ΣXΣY−ΣXΣXY

nΣX2−(ΣX)2 …⑫

であるため、以上の値から六方晶系の格子定数a,cを求めることができる。

3.8 PCT

測定

水素化特性の評価には株式会社ヒューズ・テクノネット製のPCT装置(PCT-C08-01A)

を用いた。装置の外観を図3-26に示す。装置は本体の恒温槽、温度制御部からなり、真空 ポンプ、制御PC、He,H2ボンベ、試料管が接続されている。この装置は、制御 PCを用い

図 1-6  (Mg 1−x Ca x )Ni 2 の各組成 x での XRD パターン
図 1-7 x=0.32 の各温度での水素放出曲線 [21]
図 3-5  アーク溶解炉操作部
図 3-17  旋盤操作部
+7

参照

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