• 検索結果がありません。

M 閉

4 結果と考察

4.1 PCT 装置の調整・試運転

本実験では、水素吸蔵放出特性を評価するためにPCT装置を用いた。今回使用したPCT 装置は以前東京大学の物性研究室で使用されていたもので、三重大学で使用するのは初め てだったため、標準試料のLaNi5を作製しPCT装置の試運転、操作マニュアルの作成を行 った。

(1) LaNi

5

の作製

まず、LaとNiを化学当量比に秤量した。Laは表面が酸化していたため、表面をやすり で削って使用した。Niは株式会社レアメタリック製の純度99.99%のものを使用した秤量は、

硬くて質量調整のしづらい Ni の質量を基準に行った。2 つの LaNi5を作製しそれぞれ LaNi5-No1, LaNi5-No2とした。表4-1に秤量の結果を示す。

表4-1 LaとNiの秤量結果

Ni【g】 La【g】 合計質量【g】

LaNi5-No1 1.682 0.797 2.479

LaNi5-No2 2.615 1.239 3.854

次にアーク溶解を行った。融点の高いNiから溶解していき、全体が溶けてから10秒程度 円を描くように溶解を行った。これを試料を裏返しながら3回繰り返した。溶接電流は50A から開始し、最大で約100Aまで徐々に上げていった。アーク溶解前後での試料の質量を表 4-2に示す。

表4-2 アーク溶解前後の質量

アーク溶解前【g】 アーク溶解後【g】 質量変化率【%】

LaNi5-No1 2.479 2.473 -0.242

LaNi5-No2 3.854 3.857 +0.079

表4-2よりアーク溶解前後ではほぼ質量変化が見られなかった。これはLaやNiがアーク 溶解により気化したり飛散したりすることが無かったことを示している。アーク溶解後、

それぞれの試料の結晶構造をXRD測定によって調べた。それぞれのXRD測定の結果を図 4-1,2に示す。測定条件は、9.989°≦2θ≦140.000°,回転速度0.059638°/s,線源Cu,

1=1.5406Å,Kα2=1.443Å,電圧45kV,電流40Aで行った。特徴的なピークが現れて

いる20°≦2θ≦70°の付近を拡大して図示する。

グラフの横軸は入射角θの2倍角の2θ、縦軸は受光したX線の強度を示す。赤い線の

41

グラフが測定結果で、これをデータベース付き分析ソフトPDF-2を用いて解析した。図中 の●で示したピークはLaNi5のピークでNo1,No2ともに単相のLaNi5が得られたことが 分かった。

図4-1 LaNi5-No1のXRD測定結果

図4-2 LaNi5-No2のXRD測定結果

● LaNi5 LaNi5-No1

LaNi5-No2

● LaNi5

42

(2) LaNi

5

-No1 の PCT 測定

零点補正を行うため、Heを用いて空容器測定を行った。零点補正の結果を図4-3に示す。

グラフの横軸は平衡圧力(MPa)を、縦軸は吸蔵量(wt%)を表している。図中の赤のグ ラフが補正前、青のグラフが補正後を表しており、それぞれ補正値は0.2,0.0である。

図4-3 LaNi5-No1 の零点補正

ここでの補正値は試料管部分を除いた導入管部分の体積である。そのため、0以下の値はふ さわしくない。そこで、零点補正値は0.0010として測定を行った。測定に用いた各パラメ ータを表4-3に示す。

表4-3 PCT測定に使用したパラメータ

volume of Room-Temp(補正値) 0.0010(cm3)

Volume of Reactor 10.415298(cm3)

Sample Weight 1.6135(g)

Average Atomic Weight 72.063(g)

Total C-C volume 24.48252(cm3)

PCT測定では、まず試料を活性化させるために40℃で何度か測定を行った。測定の結果、

2回目の測定で試料は活性化され3回目で綺麗なPCT曲線を得られた。その後、再現性を

43

確認するためもう1 度同じ条件で測定をした後、60℃,80℃と測定温度を変えて測定を行 った。また、図4-4,5,6に測定結果を示す。

図4-4 LaNi5-No1の40℃でのPCT測定結果(1~3回目)

図4-5 LaNi5-No1の40℃で活性化後のPCT測定結果比較(3回目、4回目)

44

図4-6 LaNi5-No1の各温度でのPCT測定結果比較(40℃3回目,60℃,80℃)

図4-4は40℃での活性化の様子である。赤で示したグラフが1回目、青で示したグラフ

が2回目、緑で示したグラフが 3回目の測定結果を示しており、それぞれ白抜きの点が吸 蔵過程、塗りつぶされた点が放出過程を表している。2 回目の測定の吸蔵過程において 2MPa付近で活性化され水素吸蔵が見られた。3回目の測定では完全に活性化されているこ とが分かる。さらに、図4-5は同条件で測定した4回目の測定と3回目の測定を比較した ものである。図中の赤のグラフが3回目、青のグラフが4回目の測定を示している。2つの グラフはほぼ一致しており、これにより再現性の確認と、3回目の試料が完全に活性化され ていたことが確認できた。

図4-6は40℃,60℃,80℃での測定を比較したものである。図中の赤のグラフが40℃で

3回目に測定したグラフ、青のグラフが60℃、緑のグラフが80℃で測定したものを示して いる。表4-4に各温度での水素吸蔵量とプラトー圧の値をまとめた。プラトー圧は吸蔵、放 出過程の平衡圧力の平均値とした。

表4-4 各温度でのプラトー圧と水素吸蔵量

温度(℃) プラトー圧吸蔵(MPa) プラトー圧放出(MPa) 水素吸蔵量(wt%)

40 0.35 0.26 1.67

60 0.85 0.65 1.70

80 1,75 1.25 1.73

LaNi5は標準試料であり、多くの測定結果が報告されている。今回の測定の結果、プラト ー圧は報告されている結果とよく一致した。しかし、吸蔵量は報告されている値が約

45

1.4wt%であるのに対して結果が約 1.7wt%と大きな値を示した。そのため、測定手順、設

定値に誤りが無かったか再度検討を行った。

(3) 水素吸蔵量の補正

水素吸蔵量(wt%)の算出式は、水素の質量【g】/( 試料の質量【g】+ 水素の質量【g】) で求められる。PCT装置の説明書より、PCT装置では水素吸蔵量(wt%)を算出する際に分 母に水素の質量を足していないことが分かった。これより、PCT 装置により算出された水 素吸蔵量に水素の質量を加味して40℃の3回目の測定結果に補正を加えた。図4-7に補正 をする前後の測定結果を示す。図中の赤のグラフが補正後の、青のグラフが補正前のグラ フを示している。補正により僅かに水素吸蔵量は減少したが、報告されている値よりも大 きな値を示した。

図4-7 LaNi5-No1の水素吸蔵量補正

(4) LaNi

5

-No2 の PCT 測定

LaNi5-No1 の測定において、吸蔵量が大きく測定されたこと、零点補正の値が極めて小 さな値を取ったことから、測定に使用したCharge Chamber Volume の値が大きな値であ ったことが原因であると仮定し、過去のデータをもとに以前使用されていた数値を検索し た。そして、No1の際に使用した24.48252を多く使用されていた21.09734の値に変更し、

40℃で測定を行った。測定に使用した値を表4-5に、零点補正と測定結果をそれぞれ図4-8、

図4-9に示す。

46

表4-5 PCT測定に使用したパラメータ

volume of Room-Temp(補正値) 0.7(cm3)

Volume of Reactor 8.808513(cm3)

Sample Weight 3.0858(g)

Average Atomic Weight 72.063(g)

Total C-C volume 21.09734(cm3)

図4-8 LaNi5-No2 の零点補正

47

図4-9 LaNi5-No2のPCT測定結果

測定結果より、プラトー圧は吸蔵過程で0.35MPa,放出過程で0.25MPaであり、水素吸

蔵量は1.41MPaとなった。この値は、プラトー圧、水素吸蔵量ともに報告されている値と

よく一致した。以後の測定では、同様の測定パラメータを用いて実験を行った。

関連したドキュメント