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アメ リカ合衆国における行政機関による 制定法解釈 と司法審査 ( 2 )

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(1)

アメ リカ合衆国における行政機関による 制定法解釈 と司法審査 ( 2 )

一 法親命令 ・行政規則二分論の再検討 をめざして ‑

今 本 啓 介

は じめ に

第 1 章 アメ リカにお ける行政機 関の制定法解釈 の発現形態

第 2 章 シェ ヴロ ン判 決前の行政機 関の制 定法解釈 に対す る謙譲法理 と シェ ヴロ ン法理 の登場

第 1 節 スキ ッ ドモ ア法理 第 2 節 シェヴロン法理 の登場

1 シェ ヴロ ン判 決

2 シェヴロ ン法理 の位置づ げ と問題点 ( 以上 5 9 巻 4 号) 3 シェヴロ ン判 決以 降の展 開

4 ′ ト 括 ( 以上 本号)

第 3 章 ク リステ ンセ ン判決 ・ミー ド判決 とその後 の展 開 第 1 節 ク リステ ンセ ン判 決 と ミー ド判 決

1 ク リステ ンセ ン判決 2 ミー ド判 決

第 2 節 ミー ド判決以 降の展 開及びその位置づ け むす ぴに

第 2章 シェヴロン判決前の行政機関の制定法解釈 に対す る 謙譲法理 とシ ェヴロン法理 の登場

第 2 節 シ工ヴロン法理の登場 3 シ工ヴロン判決以降の展開

( 1) 既 に述べたように,シェヴロン法理では,その審査方法の是非以外に,シェ ヴ ロン法理が通用 される対象が, シェヴロン判決で問題 となった立法規則のみ

〔 1 3 1 〕

(2)

13 2 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2・3 号

なのか,あるいは非立法規則 に も及ぶのかが問題 となった。本項 では, この点 に関 して シェ ヴロ ン判決以 降 どの ように解 されて きたか を概観 してお きたい。

( 2 ) シェヴロ ン判 決が先例性 を持 ち出 したのは, 1 9 8 6 年 に文理主義者 のス カリ アが連邦最高裁裁判官 として着任 して以 降の ことであ ることは既 に述べ た とお

りであるが, 当時特 にシェヴロ ン法理 の適用 の是非 については検討 されること はなか った よ うであ る1 ) 。 ここでは, シェヴロ ン判決が先例性 を持 ち出 した時 期 に出 された ,1 9 86 年 のヤ ング対地域 栄養学研 究所判決 ( 以下 ,「ヤ ング判決」

とい う。) 2) について概観 してお く 。

ヤ ング判決 の事実 関係 は以下 の通 りである。連邦食 品医薬 品及び化粧 品 に関 す る法律 ( Fede r a lFo od,Dr uga ndCo s me t i cAc t ) ( 以下,ヤ ング判 決 を論ず る限 りにお いて 「本件法律」 とい う。) 3 4 6 条 3) は,「〔 食品に加 え られる有毒 物 質が食品製造 の際 に必要 とされ る場合,又 は安全 な製造慣 行 によって避 け られ ない場合 , 〕 保健社 会福祉省長官 は,食 品 に含有 され又 は食品 に添加 され る有 毒 物 質の量 を,長官が公衆衛生 の保護 に必要 と認 める限 りにおいて制 限す る規 則 を公告す る もの とす る」 と規定 していた 4) 。 ヤ ング判決で問題 となってい る 食物 で育 った真 菌 に よ り生 み 出 され る発 ガ ン園で あ るア フラ トキ シ ンにつ い て,食 品医薬 品局 ( Fooda ndDr ugAdmi ni s t ra t i on;FDA) は, もと もと許 容 値 ( t ol erancel eve l ) を設 定 せ ず, 行 動 指 針 値 ( act i onl eve l ) を 20 ppb

( par t sperbi l l i on) に設 定す る旨定め られていた 5) o Lか し 1 9 80 年,食品医

1)Ca s s R . Suns t e i n, Che v r o n St e pZe r o , 9 2Va . LRe v. 1 8 7 ,2 0 8( 2 0 0 6 ) ( 「 多 くの判 決はシェヴロン法理の第一段階を何 ら深 く考慮することな く,シェヴロン判決の枠 組みを適用 した」。 ) ,

2)Yo u ngv. Co mmu ni t yNut r i t i o nI ns t i t u t e , 4 7 6U. S. 9 7 4( 1 9 8 6 ) . 例えば,ジェルム は,ヤング判決は最高裁の分析 に変化が現れた最初の事例であると指摘する。 Li n‑

daJ e l l um, Che vr on' s De mi s e:ASur L J e yO fCh e vr o nf r o mhl f a Z l C yt OSe n e s c e J l C e . 5 9Ad mi n. LRe v. 7 2 5 , 7 4 8( 2 0 0 7 ) .

3)2 1U. S. C . § 3 4 6 .

4)Yo u l l g , 4 7 6U. S. a t9 7 7 .

5) 行動指針値は,許容値がフォーマルな規則制定に近いかなり入念な手続によって

設定されるのに対 して,あまりフォーマルでない手続により設定されるもので,香

(3)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈 と司法審 餐‑( 2) 1 33

薬 品局は,連邦行政命令集 における通知の中で, ノース ‑カロライナ州,サ ウ ス ‑カロライナ州及びヴ ァージニア州で収穫 された1 9 8 0 年分 の収穫物の うち, 1 00 ppb 未満のア フラ トキ シンしか含有 しない トウモ ロコシの州 間での出荷 に つ いては,連邦食品医薬品及び化粧品に関す る法律違反に対す る規制的活動 を 勧 奨 しない旨決定することを明 らかに し, またこの通知の中で, この ような ト

ウモ ロコシは,成長 し授乳 していない家畜類や成長 した家禽類の飼料 としての み利用 しうる旨明記 した 6) 。 そのため, 2 つの公益 団体 と消費者が,食品医薬 品局長を相手 に,本件法律 は,食品医薬 品局がアフラ トキ シンを含有す る食 品 の州際通商 における発送 を認める前 に,アフラ トキシンの許容値 を設定す るこ とを求めてい ること,食品医薬品局 はた とえ許容値の設定が求め られていな く て も,入念 とはいえない手続 を用いてアフラ トキ シンの行動指針値 を設定 して

きたこと,食品医薬品局に よる1 9 80 年の 許容値 を免除するとい う汲定は,本件 法律 及 び食 品 医薬 品局 自身 の規則 に違 反 す るこ とを主張 して訴訟 を提 起 し た 7) 。 食品衛生局の長年の解釈 による と,本件法律 346 条の 「 長官が公衆衛生 の保護 に必要 と認める限 りにおいて」 とい う文言 は,「 〜 もの とする ( s ha l l ) 」

とい う部分 を修飾 しているのであって,規則が必要か否か は食品医薬品局 によ り決め られ るとの ことであった 8) 。 こ才 吊こ対 して原告 は, 当該文言 は 「 〜に含 有 され又は添加 され る量 ( t hequa nt i t yt he r e i no rt he r e on) 」 とい う部分 を修 飾 しているのであって,食品医薬品局 には許容値 を設定す るかを決めるとい う 裁量 はな く,一定の許容値 を設定する とい う裁量があるにす ぎない と主張 して いた 9)0

この点につ き,連邦最高裁は, シェヴロン判決 を引用 した上で,連邦議会は

動指針値を設定する際,食品薬品局は食品製造業者に対 して,食品に含有される有 毒物質の量が行動指針値で定めた量を下回る場合には,一般的な私意品に関する条 項 ( a d ul t e r a t i o np r o vi s i o ns )を実施 しないことを保証 している .1 d. a t9 7 7 , 6)1 d. a t9 7 8 .

7) 1 d.

8) 1 d. a t9 7 9 .

9) 1 d. a t9 8 0 .

(4)

1 3 4 60 2 ・3

制 定法の文言の選択 によって 自らの意思 をはっ き りと示 していない こと 10) , 食品医薬品局の本件法律3 4 6 条の解釈は十分 に合理 的であ り,裁判所が判断代 置 することがで きない こと 11) ,本件法律 の立法経緯 による と,連邦議 会は本 件法律3 46 条が許容値 について義務 的な もの と意図 していたか,あるいは任 意 の もの と意図 していたかについて,画一的な考え方があるわけではなかったこ と 12) ,そ して,最高裁 の解釈 は,議会が食品医薬品局 に対 して本件法律 の効 率 的な実施のために規則 を公告することを認める とい う決定 をしたことにかん がみて も,本件法律 3 46 条 を不必要 な もの とは していないこと 1 3) か ら,食品医 薬品局の解釈 に対する謙譲 を認めたのである 。

ヤ ング判決 は,通知 の レベ ルで示 された行政機 関の制定法解釈 に対 して も シェヴロン法理の通用 を認めた事例 として注 目されるであろ う 。 そのため,ヤ ング判決の下では,「 行政機関が法の解釈 を行 う場合 にはいつで も,その解釈 はシェヴロ ン判決的な枠組みにあてはまる 」1 4) とい う極端 な解釈 さえも生 まれ えたのである

もっとも, こうした法廷意見に対 して,ステ イ‑ヴンズ裁判官が反対意見を 述べている 。 ステ イ‑ヴ ンズ裁判官は,法廷意見の結論 は 「 判断や審判の欠如

( abs enceo fj udgmenta ndofj udgi ng) を反映 した ものである 」1 5) として, 法廷意見 による本件法律 が暖昧であるとい う認定は支持で きない とした1 6 ) 0 その上で次の ように述べた。

制定法解釈の任務は,単 に暖昧 さをでっち上げ,行政の謙譲 を引 き 起 こす以上の ことを求めている。制定法は,「 われわれが当該制定法 の 2 つの対立する解釈 のそれぞれにまともな議論があると考えない限

1 0 )1 d.

ll) 1 d ,a t9 8 1 . 1 2) 1 d. a t9 8 3 . 1 3) M.

1 4 )S uns t e i n ,S ゅ r a no t e1 , a t2 0 8 .

1 5) Yo u7 1 g , 4 7 6 U . S .a t9 8 5( St e ve ns . J . ,d i s s e n t i ng ) .

1 6) Z d. a t9 8 7( St e ve ns , J , , d i s s e nt i ng ) .

(5)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈 と司法審 餐 ( 2) 135 り,明確 でない」 とい うことはない。 それゆ え,制定法 が法廷意見 の 述べ る よ うに 2つ の疑 わ しい意味が あ る とい うこ とは, いずれかが受 容可能 であ る とい うこ とではないのであ る 。 さ らに,法廷 意見が述べ るよ うに,長官 の制定法 の解 釈 が謙譲 され る価値が あ る とい うことは, 行政機 関の選択 の限界 を示す とい う唯一 の司法府 の役 割 が最終 的な も のであ る とい うこ とで はない。 フラ ンクフ ァー タ裁判官 が われわれ に 思 い 出 させ てい る ように,「 解釈 の 目的は意味 の確 定である ことか ら, そ うした問題 の解 決のため に行 われ るあ らゆ る考慮 は, この 日的のた め だ け に捧 げ られ な けれ ばな らない」。 ‑‑法廷 意見 は司法府 の役割 の限界 を正 しく意識 してい るが,判 断の手法 をつ ま らない もの にす る 紋切 り型 の推論 を採 用 してい るのであ る 。17)

この よ うに,ステ イ‑ ヴ ンズ裁判官 は反対 意見 を述べ てい るが,ステ イ‑ ヴ ンズ裁判官 の反対 意見 の枠 組み にはや は りシェヴ ロ ン判決が あ り,法廷意見 と ス テ イ‑ ヴ ンズ裁判官 の反対意見 の相違 はあ くまで もシェヴロ ン法理 の当ては めか ら生 じた もの に過 ぎない。 この こ とか らも, 当時はそ もそ もシェヴロ ン法 理 の通用 の是非 とい う問題 が生 じていなか った こ とが うかが われ る。

( 3 に う した 中, シェヴロ ン法理 の通用 をめ ぐって論議 を呼 んだ判例 に, 1 9 87 年 の移民 国籍 局対 カル ド‑ザ ーフ ォ ンセ カ判 決 ( 以下, 「カル ド‑ザ ーフ ォン セ カ判 決 」 とい う。) 1 8) が あ る。 カル ド‑ザ ーフ ォ ンセ カ判 決 は次 の ような事 件 であ る。

1 7 )1 d. a t 988 ( St e ve ns ,

. . di s s e nt i ng. quot i ng 氏 . DwoRKI N. LAWI SEMPI RE352 ( 1 9 8 6 ) a ndFe l i xFr a nkf u r t e r , So meRe j7 e c t i o J l SO j l t h eRe a di J l gO fSt at u t e s ,4 7 Co

um. LRe v . 5 2 7 , 5 2 9( 1 9 4 7 ) ) .

1 8) I mm i gr at i o na ndNa t ur a l i z a t i onSer vi c ev. Ca r do za ‑ Fo ns ec a ,48 0U. S. 4 21 ( 1 98 7) . なお,カル ド‑ザ ‑フォンセカ判決に行政法的視点か ら言及する邦語文献

として,たとえば,高橋正人 「 規制に好する合理性審査の二面性 一厳格審査手法 と

『 非民主的』な裁判所 としての審査手法 ‑」法学 ( 東北大) 2 5 号 1 6 3 頁 〜1 6 5 頁 ( 2 0 0 5 年) ,筑紫圭一 「アメリカ合衆国における行政解釈 に対する敬譲的司法審査 ( 下 ・完)

‑Che vr o n 原則の意義 とその運用 ‑」 上智法学論集 48 巻 2 号 2 7 2 頁 ( 2 0 0 5 年),正

木宏長 「 行政法 と官僚制 ( 3 h 立命館法学 3 0 3 号 5 4 頁 ( 2 0 0 5 年) 0

(6)

1 36 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2・3

移民 国籍法 ( I mmi gr a t i o na ndNa t i o na l i t yAct ) 2 43 条 h 項 19) は,法務総裁 に対 して,国外退去 される と,列挙 されている要 因の うちの‑の要 因によ り「 生 命叉は 自由が脅か されてい る」 と主張す る外国人 に対 して,国外退去手続を す る ことを留保 す る よう求 めてい る2 0 ) 。一万, 1980 年難民法 ( Re f uge eAc to f 1980)208 条 a 項 21 ) は,法務総裁 に対 して,「 人種,宗教,国籍.特定の社 会 団体 に在籍 していること,あるいは政治的な意見 によ り迫害 されている,ある い は迫害 されるおそれが十分 にある, との理 由で」 ,祖 国に戻 れない,叉 は戻 る ことを望 まない外 国人に対 して,裁量で亡命 を認 める権 限を認めている 2 2) 0 被告 は,38 歳のニ カラグア人で1979 年 に訪問者 ( vi s i t o r ) としてアメ リカ合衆

国 に入国 したが,不法 滞 在 に よ り,移民帰化 局 ( I mmi gr at i ona ndNa t i ona ‑ 1 i z a t i o nSe r vi c e ) は被告の国外退去手続 を開始 した 2 3) 。被告 は,移民国籍法243 条 h 項 に基づ く国外退去 の留保 と1980 年難民法208 条 a 項 に基づ く難民 として の亡命 を求めた 24) 。移民審判官 ( I mmi gr a t i o nJ udge ) は,移民 国籍法243 条 h 項 の国外退去 の留保 の判 断 と, 19 80 年難民法208 粂 a 項 の亡命の 申請 に対す る判断 とで同 じ基準 を適用 した上で,迫害の明白な可能性 を立証 してお らず, いずれの形 の救済 も受 け られない と認定 した 2 5) 。被告の不服 申立てに対 して, 入 国管理不服 審判所 ( Boa r do fI mmi gr a t i o nAppe a l s ) は認容裁決を したが, 第 9 巡 回区連邦控 訴裁判所 は, 19 80 年難民法208 条 a 項 にある亡命手続 にお け る 「 おそれが十分 にある」 とい う基準 は,移民 国籍法2 43 条 h 項 にある国外退 去手続の留保 における 「 明 白な可能性」 とい う基準 とは異 な り,それよ りは寛 大 な ものであ るとし,亡命 の主張 については入国管理不服審判所 に対 して適切 な法 的基準 の下で判 断す ることを求めて差 し戻 した2 6 ) 。 連邦最高裁 は この重 1 9 )8 日 . S . C . 隻1 2 5 3( 姉

2 0 )Ca r do Z a ‑ Fo J l S e C a ,4 80U.S. a t 4 23.

21 )8U.S. C . § 1 1 58 ( a) .

2 2 )Ca r do Z a‑ Fo l l S e C a , 4 8 0 U.S. a t 4 23 . 2 3 )1 d. a t 424 .

2 4) 1 d.

25) 1 d. a t 4 25 .

26) 1 d ̲ a t 4 25 ‑ 42 6 .

(7)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審査 ・( 2) 137

要 な問題 について解決するため,裁量上訴を認めた 27) 0

連邦最高裁は,移民帰化局の主張である,たとえ控訴裁判所の当該制定法の 読み方の方が より連邦議会の意思に従 っていると結論づけた として も,入国管 理不服審判所の1 9 80 年難民法の解釈は実質的な謙譲 を受けるという主張につい て説得力がないとした 28) 。連邦最高裁は,「 連邦議会が当該 2 つの基準が同一 であると意図 していたか否かは,裁判所が判断すべ き制定法解釈 という純粋な 問題である」とした上で 29) ,シェヴロン判決に言及 しなが ら次のように述べ, 連邦控訴裁判所の判断は支持で きると判示 した。

当該 2 つの基準が同一であるか否か という狭義の法律 問題は,行政 機関が特定の一連の事実に対 して一方又は双方の基準を適用すること が求め られる各々の場合 において生ずる解釈問題 とは, もちろん大い に異 なる。 「 おそれが十分 にある」 というような文言 には何 らかの暖 昧さが当然存在 してお り,そうした暖昧 さには,事例 ごとの審決手続 によってのみ具体的な意味が付与 され うる。「 連邦議会によって,暗 黙的にせ よ明示的にせ よ残 されたずれ」を埋めるそ うした手続の中で, 裁判所は,連邦議会が制定法上の施策を施行する責任 を委任 した行政 機関の解釈 を尊重 しなければな らない。‑‑・ しか し,今 日のわれわれ の任務は,よ り狭いものであ り,司法部の領域に十分にあるものであ る。われわれは,「 おそれが十分にある」かというテス トがいかに通用 されるべ きかについての詳細 な説明を行 うことを試みていな い 。代 わ りに,われわれは単に移民審判官 と入国管理不服審判所が当該 2 つの 基準が同一であるとした点で誤っているとい うことを判示する。 30)

以上のような法廷意見に対 して,スカリア裁判官は,補足意見の中で,移民

2 7 )I d. a t 4 2 6 . 2 8) 1 d. a t 4 4 5 . 2 9 ) 1 d. a t 4 4 6 .

3 0 )L d. at 4 4 8 ( C i t i ng Che L , r o n U .S.A J nc .V .Nat uf l alRe s o ur c e sDe fe l Z S eCo u3 1 C 2 ' 1 ,

I J l C . ,4 6 7 U . S. 8 3 7 ,8 4 3( 1 9 8 4 ) ) .

(8)

138 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2・3 号

帰化局の解釈が謙譲 されるか否かについて,そ もそ も移民帰化局の解釈が謙譲 され るか否かの議論 自体必要でなか った ことを指摘 している 3 1 ) 。すなわち, スカリア裁判官は, シェヴロン判決は,行政機関の制定法解釈が明確 に示 され た議会の意図に反 しない限 り,合理的な行政機関の制定法解釈 に対 して効力 を 付与 しなければな らないと判示 した ものであると連邦最高裁は解 してきたので あ り,本件 におけ る議論はこの十分 に定着 した解釈 に矛盾 した ものであると逮 べ た。そ して,本件でのアプローチは謙譲 を 自暴 自棄の法理 ( doct r i neofde

sper at i on) にす る ものであ り,裁判所 に対 して,裁判所が問題 となっている 法律 を解釈す ることがで きない場合のみ謙譲することを認めるものであると述 べ た 32) 。その上で,行政機関が特 定の一連の事実 に通用す ることを求 め られ ている解釈の問題ではな く裁判所が判断すべ き制定法解釈 という純粋 な問題 に 裁判所が直面 した時に常 に, 自らの制定法の解釈 を行政機関の制定法の解釈 に 代 えるとい う法廷意見で示 された命題 は, シェヴロン判決以降支持 されていな い とした 33) 。 また,パ ウエル裁判官他 の反対意見では, シェヴロ ン判決 自体 に言及せず,立法経緯等 を詳細 に判断 して移民帰化局の解釈 を合理的な もので あると判断 している 3 4)0

このようにカル ド‑ザ ‑フォンセカ判決は,審決で示 された移民帰化局の解 釈 に対 して謙譲 を認めなか ったのであるが, この判決に対 しては,1 9 40 年代の 連邦車高裁判決 にみ られた ように,「 法律問題 ( ques t i onso fl a w) 」 と 「 法の 適用の問題 ( que s donsofl a w a ppl i ca t i on) 」 とで謙譲の是非を分けて考 え,節 者 には謙譲 を行わず,後者 には謙譲を行 うという判断を行 った という評価が さ れている 35) 。ただ これに対 しては,ス が ノア裁判官 も述べ るように,法律問 題 には謙譲が行われないとなると. シェヴロン判決で問題 となった 「 固定発生

31 )1 d̲a t4 5 3( Sc a l i a ,

I

. . c o ェ I C u r r i ngi nj udg e me nt ) . 3 2 )M.a t4 5 4( Sc a l i a , J . , c o nc l ∬r i ngi nj udg e me nt ) . 3 3 ) 1 d.a t4 5 4 ‑ 4 5 5( Sc a l i a , J . , c o nc ur r i ngi nj udge me nt ) .

3 4) 1 d.a t4 5 5 ‑ 4 6 9( Po we l l , i di s s e nt i ng ) .

3 5 )Tho masW.Mer r i l l Judi c i alDe fe r e ) l e et OExe c ut i l J eJud ge me 7 1 t ,1 01Ya l e L. J .

(9)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈 と司法審 杏 ( 2) 139

源 」 の解 釈 は まさに法律 問題 で あ る こ とか ら, シェヴロ ン判 決 と矛盾す る との 指溝 が されて い る ところで あ る3 6 ) 0

( 4 は た,シェ ヴロ ン法理 の適用 を認 め ない判例 も出 されてい る。その一 つ が, 1 99 0 年 の ア ダム ズ ‑フルー ツ社 対 パ レ ッ ト判 決 3 7 ) ( 以 下 , 「ア ダム ズ判 決 」 と い う。) であ る。 ア ダム ズ判 決 は次 の ような事件 であ る。

ア ダム ズ ‑フルー ツ社 に雇 用 され て い た 出稼 ぎ農作 業 者 は, ア ダム ズ ‑フ ルー ツ社 のバ ンで仕 事場へ 行 く途 中 に事故 に よ り負傷 したため, フロ リダ州労 災 補 償 法 に基 づ き補 償 金 を受 け取 って い た 38) 。 出稼 ぎ農作 業 者 はそ の後 , ア ダム ズ ‑フル ー ツ社 を相手 に連邦地 方裁判所 に出訴 したが, その際, 自分 の負 傷 はあ る程 度, ア ダム ズ ‑ フルー ツ社 が意 図 的 に 出稼 ぎ季 節 農作 業 者 保 護 法 ( Mi gr a ntandSea s o nalAgr i c ul t ur a lWo rke rPr ot e ct i o nAc t;AWPA) ( 以 下, ア ダム ズ判 決 を論 ず る限 りで 「 本 件 法律 」 又 は 「本件制 定法 」 とい う0) にあ る 自動串 の安 全 に関す る規 定,及 び関連 す る規則 に意 図的 に違 反 してい た こ と に よる もの で あ る と主張 して い た3 9 ) 。 出稼 ぎ農 作 業 者 の主 張 に よる と, 出稼 ぎ農作 業 者 を送 迎 して い たバ ンは車 両 の重 量 を支 え るの に十 分 な もの で は な く,バ ンの乗 車 人員 は座席 数 を超 えてお り,座席 は乗客分 供給 され てお らず,

9 6 9 , 9 8 6( 1 9 9 2 ) .1 9 4 0 年代の連邦最高裁判決については本論文 では詳 しく述べ なかっ たが,たとえば,本論文でも簡単 に取 り上げた全国労働関係委員会対ハース ト的版 社判決 ( NLRBv. He a r s tPubl i c a t 工 o ェ l S , 32 2 U . S.1 11( 1 9 4 4 ) ) ( 拙論 「アメリカ合衆 国における行政機関による制定法解釈 と司法審査 用 一法艶命令 ・行政規則二分瀞 の 再検討 をめ ざして ‑」商学討究59巻 4 号 1 1 3 頁) は,新聞配達員が被用者 に入 るか 否か という法の適用が問題になってお り,これに対 しては謙譲が認め られたが , 1 9 4 7 年のパ ッカー ド自動車会社好全国労働関係委員会判決 ( Pa c ka r dMo t o rca rCo . Ⅴ.

NLRB. 3 3 0U.S. 4 8 5( 1 9 4 7 ) ) では,現場監督が団体交渉の交渉代表になるか否かは 法律 問題であるとして,全国労働関係委員会の審決に対 して謙譲的な審査憶行われ なかった. Me r r i l l . s u P P l a , a t9 8 6n. 6 9 .

3 6 )Me r r i l l , S u Pr a not e3 5 , a t9 8 6( c i t i ng Ca r d o Z a ‑ Fo J l S e C a , 4 8 0U. S. a t4 5 5( Sc a l i a ,I. ,

c onc u rr王 ngi nj udge ment ) ) 『 発生源』 とい う判定法の文官の適切 な意味はいかな る ものか というシェヴロン判決の閥題は明 らかに 「 純粋な法律 問題」であ り,それ ゆえ連邦最高裁の区別の下では謙譲 をうけることはないであろう 。 」) .

3 7 )Ada msFr ui tCo .V. Ba r r et t ,4 9 4U. S. 6 3 8( 1 9 9 0 ) . 3 8)L d. a t6 4 0 .

3 9 )1 d. a t6 4 0 .

(10)

1 40 商 学 討 究 第60巻 第 2 ・3号

過積載 になってお り,座席 にはシー トベル トが備 え付け られてお らず,アダム ズ社 は意図的にこの ような違反を行 っていた とのことであった 40) 。そ こで, 出稼 ぎ農作 業 者 は, 本 件 法律 にあ る出訴私 権 に基 づ い て現 実 的損 害賠 償 ( a c t ua lda ma ge s ) と制定法上の損害賠償 ( s t a t ut o r yda ma ge s ) を求めた 4 1 ) 0 アダムズ‑フルーツ社 は,同社の労働者の補償的救済が排他的な ものであ り, 雇用者の被用者 に対する他 の全ての責任 に代 えて行われる もの とフロリダ州の 法が定めていること,そ して,被用者が労災補償の給付 を受け取 った場合 には, 同 じ負傷 につ き本件法律の下での賠償金を受けることはで きないことを主張 し て,略式判決 ( s umma r y3 ' udge me nt ) を求めた 42) 。その際,アダムズ‑フルー ツ社が主張 したことによる と, 議会が出稼 ぎ労働者の出訴私権 を創 設する時に, 州の労災補償の枠組み よ りも先 占 した り, これを妨げた りす ることを意図 して いなかった との ことであった 43) 。特 にア ダムズ ‑フルーツ社 は,本件法律が 先 占的な ものであるとい う点についての議会の明示的な意見表明がないことか ら,連邦最高裁 は労働省の規則 にある, 「 州の労災補償法が適用 され,補償が 出稼 ぎ農作業者ない し季節農作業者賠償 に対 して雇用者 によ り行われる場合 に は,負傷や死亡の際の労災補償給付 は本件法律の下での排他 的な救済 となる」

とい う立場 に謙譲すべ きであると主張 した 44 ) 。 この点 につ き,連邦最高裁 は シェヴロン判決を引用 しなが ら次のように述べた。

‑‑当裁判所は,本件法律が州法の排他性 に関する規定が先占して いることについて直接言及 していないことによ り, シェヴロン判決の 意味 における制定法上 の 「 ずれ ( ga p) が生み 出 され,議会 は労働 省がそのずれを埋 めることを意図 していた, という原告 ( 訳者注 :ア ダムズ‑フルー ツ社)の主張 を認めない。「 ずれ 」 は,単 に州が連邦

4 0 ) 1 d. a t 64 1 . 4 1 )1 d.

4 2) I E l . 43 ) 〟

4 4 ) 〟 a t 649 .

(11)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審査‑( 2 ) 1 4 1

法 を先 占 してはならない とい う自明の理 を制定法が再度述べていない とい う理 由か らのみでは,制定法上の枠組みの中で作 られない。

さらに,た とえ出訴私権 を定めている本件法律 の文言が暖味であっ た として も,当裁判所 は1 854 条 ( 訳者注 :本件法律の. 出訴私権 を定め た規定)の範囲についての労働省長官の見解 に謙譲する必要はない。

何 となれば,連邦議会は明示的に労働省ではな く司法府 を,本件制定 法の下で生ず る出訴私権の裁断者 として定めていたか らである。 シェ ヴロン判決の下での謙譲の前提条件は,議会 による行政権の委任であ る。‑‑本件法律 の実施規定についてのこうした委任 は,本件制定法 の中で明 白ではない。 む しろ,連邦議会は執行府か らは独立 した実施 枠組み を創 出 してお り,本件制定法の下で不服のある農業従事者の権 利が侵害 されている場合 には,不服のある農業従事者 に対 して連邦裁 判所へ の直接的な請求権 を与 えていたのである。こうした状況の下で, 本件法律 の司法上実現可能な救済の範囲をめ ぐる暖昧 さを解決するた めに.1 85 4 条の執行府の解釈 を考慮 に入れることは不適切であろう 。

ヽ ヽ 連邦議会は,本件法律 にある自動単 についての規定を実施する基準 を労働省長官が定めることを求めることによって,制定法 を運用する 際の労働 省の役割 を明確 に想定 してお り, 実際に明示的に命 じていた。

‑‑・ しか しなが ら, このような委任は,制定法 によ り与 えられた司法 権の範囲を規制す ることを労働省長官 に授権 している ものではない0 委任範囲内における行政機関の決定が謙譲を受けるものであったとは いえ,「 行政機関が管轄 のない分野 に努めて踏み込んではな らない 」

ことは基本である。‑‑それゆえ,労災補償給付が利用可能な場合 に 本件法律違反の排他 的な救済 となる,という労働省長官の結論 は,シェ ヴロン判決の謙譲 を受 ける ものではない。 45)

以上のように,アダムズ ‑フルーツ社判決では,判断の管轄が行政機関にで

45 )1 d. a t 6 4 9 ‑ 6 5 0 .

(12)

1 4 2 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2 ・3号

はな く裁判所 にある場合の行政機関の規則 についてはシェヴロン法理の通用 を 否定 してお り,あ くまで も委任 された権限行使に基づいた行政機関の決定 に対

してのみ シェヴロン法理が適用 されることを示 した 46 ) 点で注 目される。

( 5 ) さらに,非立法規則の事例でスキ ッ ドモア法理 を再確認 した判決 も出され ていることも注 目されるところである その一つが, 19 91 年の雇用機会均等委 員会対アラビア ・アメリカ石油会社判決 ( 以下,「アラムコ判決」 といい,「ア

ラビア ・アメ リカ石油会社」 を 「アラムコ社 」 という。) 47) である。

アラムコ判決は,合衆国に帰化 した レバ ノン生 まれのプルランが解雇 される までサ ウジアラビアでの勤務 を余儀 な くされたことについて,アラムコ社 によ り人種 ・宗教 ・出身国を考慮 して嫌が らせ を受け解雇 されたことか ら,雇用機 会均等委員会‑の不服 申立ての後,州法 と公民権法第 7章の下での救済を求め た事件である 48) 。一審 ・控訴審はともにプルラ ンの訴えを認めなかったため, プルランと雇用機会均等委員会が裁量上訴を求め,連邦最高裁は制定法解釈 と い う重要問題 を解決するために裁量上訴を認めた 49) 0

連邦最高裁 は,雇用機会均等委員会の行 った,連邦最高裁は公民権法第 7章 の 「 一貫 した」解釈 に謙譲 し, 「 合衆国外 のアメリカ人に対する差別 に対 して 通用す」べ きであ り, この政策表明にある解釈は控訴審判決前 に,当初口頭で の議論の後 に出された表明 において正式 に示 されていた,とい う主張 に対 して, 197 6 年のゼネラル電子判決 を引用 しなが ら次のように述べている 50) 0

ゼネラル電子判決において,当裁判所は雇用機会均等委員会の指針 に与 え られるべ き適切 な謙譲 について扱 った。当裁判所は,議会が 〔 公 民権法〕 第 7章を制定する際 に雇用機会均等委員会に対 して規則を公 告する権 限を付与 していなかった と認識 していることか ら,与 えられ

4 6 )Mer r i l l , S u P r a not e3 5, a t9 8 7 .

4 7 )EEOC v. Ar abi anAme r i c anOi lCo .( ARAMCO) ,4 9 9 U. S. 2 44( 1 9 91 ) . 4 8 )1 d. a t247 ,

49 ) 〟

5 0) I d. a t2 56 ‑ 2 5 7 .

(13)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審査 ( 2) 143

る謙譲の レベルは,雇用機会均等委員会の考慮の中で明白な完全性が あるか,雇用機会均等委員会の推論が有効か,雇用機会均等委員会が よ り早い時期の表明とよ り遅い時期の表明で一貫 しているか,そ して, 雇用機会均等委員会に続制力がない場合 に,雇用機会均等委員会に対

して説得力 を与えるこれ ら全ての要因があるかにかかっている, と判 示 した。

雇用機会均等委員会の解釈は, これ らの基準 に当てはまらない もの である。最初の問題 として,雇用機会均等委員会によって採 られた立 場は,準拠法制定時によ り近 い初期に公表 した立場 とは矛盾 している。

本件問題 に関する雇用機会均等委員会の初期の表明は,当該制定法が 国内の適用 に限 られているという結論 を支持 していた。雇用機会均等 委員会は後 に当該制 定法が海外 に適用 されることを暗 に示 していた が, この立場 は,当該制定法可決後2 4 年余 りまで,政策指針の中で明 示的に反映 された ものではなかった。雇用機会均等委員会は, この変 化 に対 して経験の中で根拠 を与 えていない。本件 における当該制定法 の雇用機会均等委員会 による解釈 は,それゆえ当該制定法の制定 と同 時期の ものではな く, また当該制定法が施行 されてか ら一貫 した もの ではなか った。上述 したように,雇用機会均等委員会の解釈は当該制 定法の文言 による支え も欠いていた。当裁判所が 1 9 8 8 年の指針 に対 し て与 え られる重要性 を全て割 り引いているわけではない一方で, 1 9 8 8 年の指針 の説得的価値 は,スキ ッ ドモア判決で示 された基準 により判 断される場合 に限 られるもの となる。当裁判所は,原告の他の主張 と 結びつけて考 えた場合 であって も,雇用機会均等委員会の解釈は海外

において適用 しないとする推定を覆すほど十分 に重みのあるものでは ない。 51)

もっ とも,ア ラム コ判決ではス が )ア裁判官が補足意見を述べている 52) こ

5 1 )L d. a t2 57 ‑ 2 5 8( c i t a t i o nso mi t t ed ) .

5 2 )L d. a t2 5 9 ‑ 2 6 0t Sc a l i a , J . , c o nc ur r i ngi nj udge me n t .c i t a t i o nso m it t ed) .

(14)

144 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2 ・3号

とに注 目しなければならない。スカリア裁判官は法廷意見の判断に賛成 は した ちのの,次の ように述べている。

私 は,法廷意見が雇用機会均等委員会の見解 につ き,本件で問題 と なってい る特定の点のみな らず明白に一般的な問題 としてシェヴロ ン 判決の下で行政機関に通常与 え られる謙譲を受けることはで きない,

としている部分 を除いて,法廷の判断及び法廷意見に賛同する。 シェ ヴロン判決は,雇用機会均等委員会の解釈は 「 説得力 」 か ら生 じた力 のみを持つ とい う命題 に代 わって依拠 された ものであ り,いわゆる「 立 法漫則」 のみ に対 して ( 「 説得力」 とは対照的な)謙譲 を付与する傾 向となった時代 に判示 された ものである。ゼネラル電子判決の推論は, 雇用機会均等委員会が謙譲 を受けるというものではな く,雇用機会均

ヽヽ

等委員会の指針は,明白な規則制定権のない全ての行政機関の指針 と 同様立法規則 とは考え られず,それゆえ謙譲 を付与 され得ない という

ものであった。

行政機 関の立場 のわれわれの扱いが シェヴロン判決によって統制 さ れている時代 において, 「 立法規則対他 の活動」 とい うギルバー ト判 決 ( 訳者注 :ゼネラル電子判決。本補足意見中ではゼネラル電子判決 のことを 「 ギルバー ト判決」と略 しているが,以下,「ギJ t , バー ト判決」

は本論文中と同様 「 ゼネラル電子判決」 と称す る。)の区別は前時代 的な ものである。そ して,ゼネラル電子判決が雇用機会均等委員会‑州 は謙譲 を受けることはで きないと判示 したとい うことは,そうした前 時代性 を正 しく説明 した もの とさえいえない。われわれは,たった 3 年前の‑‑雇用機会均等委員会対商業事務用品会社判決 53) ( 以下了 商 業事務用品会社判決」 とい う。) でその ことを認識 していた。 われわ れは, シェヴロン判決 に引 き続 く事例 においてよく知 られた言葉では あるが,「 雇用機会均等委員会の暖味な文言 の解釈が謙譲 を受 けるた

5 3 )EEOCv. Co mmer c i a l O f Ec ePr oduc t sC 0 . , 48 6U . S.1 07( 1 98 8) .

(15)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈 と司法審 餐 ( 2) 145

めには合理的であることのみが必要である」 と述べた。商業事務用品 会社判決 は,今 日の判 決理 由では覆 されてお らず ( あるいは言及 さえ されてお らず),雇用機会均等委員会 に対す る謙譲 に関す る法の状態 は末だ解 決 されていない。

私は, これ らの事例 を,雇用機会均等委員会が問題 となっている特 定の点 について謙譲 を受け られる と判 断せず仮定することによって解 決 したい。 しか し,謙譲は 〔 判 断の :訳者注〕放棄ではな く,われわ れに対 して裁判所が通常採用す る解釈原理 に照 らして合理的な行政機 関の解釈 のみ を受け入れることを求めている 。 連邦最高裁が正確 に説 明す る治外法権 に反す る推定があ り,それを克服す る とい う意思が「 明 示的に示 されている」 な らば,私の見解 では,雇用機会均等委員会が 行 った ような制定法上 の文言か らの単 なる含意に対 して効力 を与える

ことは合理的ではない 。54)

この ようにスカリア裁判官は,立法規則対非立法規則の図式 を 「 時代遅れ」

の もの とし, アラムコ判決 で問題 となった ような非立法規則 について も, シェ ヴロ ン判決第二段 階の合理性の審査で判 断すべ きとしたのである。

( 6 ) Lか し他方で,非立法規則のq 場合で もシェヴロン法理 を適用する事例が現 れ る 55) 。 その うちのい くつかの判例 を概観 してお く 。

第‑は,19 89 年の ミー ド社対 テ ィリー判決 ( 以下了 テ ィリー判決」とい う。) 56)

で あ る。 テ ィリー判決 では,年金給付保証公社 ( Pens i onBe ne f i tGuar ant ee Cor po r a t i on;PBGC) の意見書 ( Opi ni onLe t t er s ) の扱いが問題 となった 。 事

5 4 )ARAMCO. 499U. S.a t25 9‑ 2 60( Scal i 孔J . ,c o ncur r i ngi nj udgment , quot i ng Co mme r c i a 1 0 ni c ePr o duc t s , 4 8 6 u S . a t1 1 5 ) .

5 5 )なお,控訴裁判所 レベルでは,非立法規則の審査の際に多 くの控訴裁判所がシェ ヴロン法理 を適用 していたことが指摘 されている. Se eRobertA.Ant hony , Whi c hAge nc yh2 t e r l ) r e t at i o f l SSho ul dBi ndCi t i z e 7 2 Sa7 1 dt heCo ur t s P .7Yal eJ . o f Re g.1 , 42 ‑ 4 3( 1 9 9 0 ); J o hnF,Ma nni ng . No J l l e gi s l at i y eRul e s ,7 2Ge o .Wa s h.LRe v.

89 3 ,9 3 7n. 21 5( 2 0 0 4 ) .

5 6 )Me a dCo r po r a do nv.Ti l l e y, 4 9 0U.S . 71 4( 1 9 8 9 ) .

(16)

1 46 6 0 2・3 実 の概要は次 の通 りである 。

1 97 4 年被用者退職所得保証法 ( Empl oyeeRe t i r e mentI nc omeSe cur i t yAct of1 974;ERI SA) ( 以下, この判 決 を級 うに限 り 「本件法律 」 とい う。 ) は, 個 人の年金制度 によって提供 される給付 の保証 をすべ く,労働省内に年金給付 保証公社 を創 設 し 57) ,年金給付保証公社 は,認定 された年金給付制度 によっ て提供 された一定 の剥奪す ることので きない給付 を保証す る 58) , と規 定 して いた 59) 。そ して,雇用者が 自主的に確 定給付保証制度 ( de f i nedbe ne 五 tpl a n) を終了 させ る際には,当該制度に給付 の特例があるにかかわ らず,生 じた給付 額全額が給付 される 60) とされてお り 61) ,年金制度の資産は まず年金保証給付 公社 によ り保証 された剥奪不能な給付 に,次 に 「当該年金制度の下で剥奪不能 な他 の全 ての給付」 に,最後 に 「 当該年金制度の下での他 の全 ての給付」 に配 分 す るとい う枠組み に したがって年金加入者 に配分 される ( 被用者退職所得保 障法40 44 条 a 項 62) )6 3) O被告であるテ ィリーは ミー ド社 で勤務 してお り,一企 業 の確 定給付 保 証 制 度 で あ る ミー ド社 退 職給付 制 度 に よ りカバー され てい た 64) が,この制度の下では,給付 には 65 歳で支払い可能な通常の退職給付 と, 55 歳 で受 け取 る早期退職給付 (5 %減額)があ り,補助又は減額 されない早期 退職給付 は,勤続30 年以上 で6 2 歳時に退職することを選択 した者が受け取 るこ

とがで きる 65) , とされていた。 ミー ド社が この年金制度 を終了 させた時,勤 続 30 年以上で62 歳未満のテ ィリー らは,65 歳で退職 したな らば受 け取ることが で きるであろ う通常 の退職給付 の現在価値 と等 しい額 の支払 い を受 けたが, ミー ド社が年 金制度の資産 を年金制度加入者 に配分 し終 えた時,年金制度基金

5 7 )2 9 U . S. C . § 1 3 0 2 . 5 8 )2 9U.S. C .81 3 2 2 . 5 9 )Ti l l e y , 49 0 U. S.a t71 7 . 6 0 )2 6U. S. C . § 41 1( a)( 3 ) . 61 ) Ti l l e y , 49 0U. S.a t71 7 . 6 2 )2 9U. S. C. $4 04 4 ( a ) .

6 3 )Ti l l e y , 49 0 U . S.a t71 7 ‑ 71 8 . 6 4)1 d. a t71 9 .

6 5 )〟

(17)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審 餐 ( 2) 147

に多額の残額があった。そ こでデ イリー らは,減額 していない早期退職給付の 現在価値 を支払わなかった ことは被用者退職所得保障法 に遠反するとして出訴 した。その中でテ ィリー らは,偶然 に生ずる早期退職給付 はた とえ生 じなかっ た として も 「当該年金制度の下での給付 」 にあたると主張 した。 これに対 して 連邦最高裁は,年金給付保証公社の考え方によると,「 本件法律40 44 条 a 項は, 付加 的な給付 の権利 を創設す る ものではな」 く,「 単 に確定給付保証制度の条 件の下で既 に得 られ,ない しは本件法律の他 の規定による終了時 に求め られる 利益 を順 に配分す ることを定めているのみである」が,これは年金給付保証公 社 の意見書 にあることを指摘 した 66) 。その上で シェヴロン判決を引用 し,シェ

ヴロン法理 に従 って判断を行い,テ ィリーの主張 を認めなか った。

第二は, 1995 年の ノース ・カロライナ州 ネイシ ョンズ銀行対変額年金生命保 険会社 ( 以下, 「ネイシ ョンズ銀行判決」 とい う。 ) 67) である。事実の概要は次 の通 りである 。

ネイションズ銀行 とその委託売買を行 う子会社 は,委託売買を行 う子会社が 年 金 ( annui t i e s )販 売の代理人 として活動 を行 うことに係 る許可 を通貨検査 官 ( Compt r ol l eroft heCur r ency)か ら得 ることを申請 した ところ 6 8) ,通貨 検 査官 は,連邦免許銀行 ( na t i ona lbanks ) は 「 銀行業」の中で年金 を委託売 買す る権 限を有す ること,5, 0 00 人未満の町での銀行 による保険販売を規定 し た州立銀行法 に抵触せず,年金は 「 保 険 ( i ns ur a nce ) 」ではない としたことか

ら,その申請 を認めた 69) 。 これに対 して,変額年金生命保険会社が この決定 に対 して宣言的差止命令 による救済 を求 めた 70) 。 ここで,通貨検査官 の許可

6 6 ) 1 d. a t 7 22 ( c i t i ngPBGCOpi ni onLe t t e r sNo s . 87 ‑ l l( Oc t .22,1 987 ):86‑ 5 ( Ma r . 6 , 1 9 8 6):8 6‑ 1 ( J a m. 1 5.1 986) .

6 7) Nat i ons Ba nko fNo r t hCa r ol i nav. Var i a b l eAnnui t yLi f eI ns ur anc eC0 . , 51 3U.

S . 251( 1 995) . なお,ネイションズ銀行判決について触れた邦語文献として,高橋正 人 ・前掲論文 注1 8 ) ・1 75 頁以下を挙げてお く。

6 8 )Nat i o ? t s B a n h ,51 3 U .S. a t 25 4.

6 9 )1 d. a t 255 .

7 0 ) 1 d.

(18)

1 4 8 第6 0 2 ・3

が解釈規則 である通貨検査官書簡 ( Co mpt r ol l e r ' sLe t t e r ) に基づ いて行 われ ていたことが問題 となったが,連邦最高裁 は.単 に次の ように述べ るだけで, 通貨検査官書簡 によってなされた解釈 に対 してシェヴロ ン法理 を適用 したので

ある。

現在 よ く知 られた形式 の下 において,われわれが専 門家である行政官 の制定法 に関す る説明 に直面 した場合 には, われわれはまず 「 議会の 意思が争点 となってい る問題」 について 「 明 らかで 」 あるか否かを検 討す ることとなる。 71)

以上概観 したデ イリー判 決やネイシ ョンズ銀行判決では,年金給付保証公社 の意見書や通貨検査官書簡 とい う,非立法規則た る解釈規則 に対 して もシェヴ ロ ン法 理 が適 用 され うる こ とを特 に蹟糟 す る こ とな く認 めた点 に特 徴 が あ る 7 2) 。 ただ一方 で,非立法規則 に対 して シェヴロ ン法理 を適用す ることに若 干 の篠路がみ られる判例 もある。その例 として ,1995 年の レノ対 コライ判決 73)

( 以 下, 「コ ラ イ判 決」 とい う。) を挙 げ て お く 。 この 判 決 で は, 監 獄 局 ( Bur ea uo fPr i s o ns; BOP) の内部的指針 ( i nt e r na la ge nc ygui de l i ne ) の扱 いが間蒐 とな った。事実 関係は次 の通 りであるO

法律上,被告人は通常 「 拘禁期 間の服役 に向けて,刑が開始す る前に正式の 留置 ( o f f i c i a lde t e nt i on) に よ り過 ご した時間につ き,保釈 ( c r e di t ) を与 え られなければな らない」 と規定 されてお り 74) ,被告 の連邦法 による刑 が 開始 す る前 に,連邦治安判事 は 1984 年保釈改革法 ( Ba i lRe f o r m Ac to f 1984) によ る保釈 に基づ き釈放 し,地域処遇 セ ンター ( c o mmuni t yt r e a t me ntce nt e r ) に監禁 され る よう,被告 人 に命 じていた 75) 。 ここで問題 にな るのが,被告人 71 )1 d. a t 257

7 2 ) Tho ma s W. Me r r i l la ndKr i s t i n E . Hi c kma n , Che vr o n ' sDo mai J l ,89 Ge o . L J .

833,842( 2001 ) ( 連邦最高裁は,審決やよりインフォーマルな決定の文脈で示され た行政機関の解釈に好 して,何度も特にコメントすることなくシェヴロン判決を適 用 してきた。 ) .

73 ) Re n ov . Ko r a y ,51 5U.S.50( 1 9 95) . 7 4)1 8 U .S. C . § 3 585( 執

7 5 )Fo r a y ,51 5 U .S. a t 52.

(19)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈 と司法審査 ・( 2) 149

が 「 正式の留置場」にいた ことか ら,地域処遇セ ンターで過 ごした時間につ き, この法律 の下 で刑 の保釈 を受 けることが で きるかである 76) 。連邦最高裁 は, この ような被告人は保釈 を受けることがで きない と判示 したが,その際,監獄 局の解釈 につ いて次の ように述べ た。

監獄局 は・ ・ ・ ‑同様 に 〔 当該法律 の〕「 正式の留置」とい う文言 について,

‑‑・「 留置命令 」 の下 で被告人が過 ごした時 間について保釈 を求める と解釈 して きたのであ って, 要件がた とえ厳 しかった として も‑‑「 釈 放命令 ( r e l ea s eo r de r ) 」 の下 で過 ご した時間について保釈 を求める と解釈 していない。われわれが説明 して きた ように,監獄. 局の解釈 は 当該法律 の 「 正式 の留置」 とい う文言 につ き最 も自然で合理 的な読み 方 で あ る。 監 獄 局 の解 釈 が 「 公 開の告 知 ・コメ ン トを伴 う厳格 な APA に服 す る公 布 され た規 則」 で はな く, 「 施 策説 明 ( Program St at e ment ) 」 とい う内部的 な行政機 関の指針 においてのみ現 れてい

ることは確かである。 ‑‑ しか し,監獄 局の内部的な行政機関の指針 は,告知 コメ ン トを必要 としない 「 解釈規則」 と同種 の ものであ り,

ヽヽヽヽ

なお何 らかの謙譲 ( s omede f e rence ) を受 ける ものである。 ‑‑・ 何 となれば,内部的な行政機関の指針 は 「 制定法の許容 された解釈」で あるか らである ‑ ‑ 77)

この ように,非立法規則 について もシェヴロ ン法理 を通用す ることに対 して は批判 もされている 例 えばア ンソニー教授 は,非立法規則 については, シェ ヴロ ン法理の第二段 階ではな くスキ ッ ドモア法理が適用 されるべ きである とす る 78) 。す なわちア ンソニー教授 による と,非立法規則 の形式 で示 された解釈

7 6 )1 d.

7 7 )1 d. 61( c i t i ng2F. 3 da t3 6 2 , Shal al aL J .Gue nZ S e yMe ) m r i aiHo s pi t al ,51 4 U. S.

8 7 , 9 9( 1 9 9 5 ) , a ndChe u r o l lL l .NRDC4 6 7U. S. 8 3 7 , 8 4 3( 1 9 8 4 ) ) . なお,傍点筆者O 7 8 )Anl h o ny , S u Dr ano t e55 , a t5 6 ( 「 審査裁判所が 〔 解釈覚別や政策表明のような〕

形式で正式に ( a ut ho r i t a t i ve l y) 解釈する権限を委任 していることを認定 してこな

かった場合,適切なアプローチはシェヴロン判決の第 2 段階によるものではな く,

スキッドモア判決によるものである 」 。 ) .

(20)

1 50 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2・3 号

は 日常受け入れるとい う慣行が生 まれることによ り初めて非立法規則 に対 して 法的効力が付与 されるのであ り,議会の委任 のない非立法規則 にはシェヴロン 法理が通用 されることはない 7 9 ) 。 コライ判決 にあ る 「 何 らかの謙譲 」 とい う 場合 にどの程度の謙譲 を意味するかば不明であるが,非立法規貝: r j に対 してシェ ヴロン法理 を通用することに対する批判 を考慮 している可能性 はあると思われ

が 0)a

f 7 ) ただ, シェヴロン法理の適用範囲が広がる一方で,特 に立法規則について シェヴロン法理の適用 範囲に修正 を加 える判例 も現れ出 した。

第一 は,1 99 9 年 の合衆国対ハ ガ‑アパ レル社判決 81) ( 以下,「 ハ ガ‑アパ レ ル判決」 とい う。) である 。 ハ ガ‑アパ レル判決では,一定の輸入品の関税分 類 に関する規則が国際貿易裁判所で授起 された閏税還付訴訟 において裁判所 に

よる謙譲 を受 けるか否かが問題 となった。事実関係は次の通 りである 0

合衆国調整 関税表 ( Harmoni zedTar i f fSchedul eoft heUni t edSt at e s) 9802. 0 0. 80 82) は, 関税 の一部免除を受け られる もの として,外 国において全 部又は合衆国製の一部の部品で組み立て られた物品の うち,組立 ( f abr i c a t i on) や組立 に付随する作業,た とえば洗浄,注油,塗装以外 によって価値や状態が 外 国において向上 していない ものを挙げてお り, この制定法 を解釈する規則 に おいて次のように規定 していた 83)0

租立以外 の重要な工程,作業,処理の うち,主な 目的が組立,仕上げ, 部品の物理的化学的加工 にあ り,あるいは製品の実質的な変質を起 こ すか否か を問わず,組立工程に関係 しない ものは,組立 に付随 した も

7 9)1 d. a t5 7 .

8 0 )たとえば,アンソニーが引用 している控訴審判決では,「 何 らかの謙譲及び重み」

という言葉が使われている oL d. a t56( c i t i ng AFL‑ CT O v .Donov an , 7 57F.2 d3 30 .

3 41 ‑ 3 4 2 ( D . C. Ci r .1 9 8 5 ) ) .

81 )Uni t edSt at e s v. Hagg arAppa r e lC 0 . , 52 6U. S. 38 0( 1 9 99 ) , ) 、ガ‑アパレル判決 について触れた邦語文献として,たとえば正木宏長 ・前掲論文注1 8)・5 6 頁がある。

8 2 )1 9 U . S. C . § 1 2 0 2 .

8 3 )1 9CFR § 1 0 . 1 6( C )( 1 9 9 8 ) .

(21)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審査 ・( 2) 151

の とはみ なされず, このような物品の関税一部免除規定は適用 されな い。次 に掲げるものが,組立 に付随するとは考えられない作業の例で ある 。 ・ ‑‑

( 4 ) 新 しい性質の ものにするための部品や組み立て られた物品の化学 的処理。例 えば,布地の摸水加工 ( s ho we r pr o o f i ng) ,形状記憶加工 ( pe r ma pr e s s i ng) ,防縮加工 ( s a nf o r i z i ng 上 染色加工 ( dyi ng) ,脱 色加工 ( bl e a chi ng) 0

被告であるハ ガ‑アパ レル社は,本件規則 にシェヴロン法理は適用 されない と 主張 したが,その際,①本件規則の通用 は税関職員 自身に限定 されてお り,本 件規則は国際貿易裁判所における輸入者の還付裁判 を統制す るものではないこ と 84) ,② た とえ財務省が本件規則が還付 訴訟の決定に影響す ることを意図 し ていた として も,国際貿易裁判所は,行政機関の発する規則 に対 して行 う通常 の謙譲 を与 えることな しに関税 についての制定法 を解釈する権限を付与 されて いること8 5 ) を主張 した。

これに対 して連邦最高裁 は, まず① の主張 について,制定法の枠組みは本件 規則の効力や効果 について,被告が主張 しているような限定的な考え方を支持 していない と判断 した 86) 。 とい うの も,連邦最高裁 によると,税 関は第一次 的 に関税表の適切 な規定の下 に輸入品の分類 を行 うこととなってお り 87) ,財 務省長官は税 関長に対 して,財務省長官の同意の下 に一般 に通用可能な規則 を 発する権限を委任 して きた 88) か らである。また被告は,財務省長官 に対 して 「 す べ ての通関地 」 向けに分類の規則 を制定するよう一定の命令が行われていたこ とに依拠 し,制定法 は国内の現場 の税 関職員が同一で一貫 した枠組みに沿 って 商品を分類す る以上の ことは行わないような規則の制定を認めてお り, このよ

8 4 )Ha g garA如 J l e l ,526U.S. , a t 3 86 ‑ 3 87 . 8 5 )1 d. a t 3 87 .

8 6 ) 1 d.

8 7 ) 1 d.

8 8) 1 d. a t 387 ‑ 38 8 .

(22)

1 5 2 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2 ・3 号

うな制定法の下 に発せ られた規則は輸入者の権利 に対 して影響 を及ぼさないと 主張 したが,この点 も連邦最高裁は認めなかった 89) 。連邦最高裁は,問題 となっ ている文言は,分類の決定が商品の輸入する港において決定 されなければな ら ない という単純な事実によって説明されてお り,連邦議会がすべての通関地の 税関職員が統一的な決定を行 うことを保障することにのみ関心 を持ち,商品が 国に入 り司法手続が始 まった時には統一性に関心 を持 っていないとは考えてい ない とした 90) 。その上で,行政機関がその吏員や職員に対 して公衆 を拘束す ることを意図せずに一つの形式ない し別の形式で指導や法的意見を付与するこ とはあ り得 ることであ り,一般的なことでさえある 91) が,本件での制定法の 規則への委任 は, この ような形 に限定 された ものではない と指摘 し 92) ,他の 政府 と被規制 団体間の法的関係を定めるのに役立つ他の規則 と同様,税関規則 は輸入者の少 な くとも部分的に権利や義務を明確 にするために議会により認め られた ものであると判示 した 9 3 ) 。 また,規則において,「 以下の定義及び規則 は,一般人に対 して合衆国関税局が関係する制定法の文言に付与 している解釈 を知 らせるため,そ して.一部関税が免除とされる商品に対する関税をあ らゆ る通関地で公平 に,統一的に賦課することを確実 にするために公布 され 」94) ,

「これ らの規則のいずれ もが,輸入者他の法的権利 を規則に含まれる問題 につ いての司法審査に限定することを意図されている ものではない 」9 5 ) と定め られ ていることによって も,通常のシェヴロン法理を置 き換 えるに十分なものでは ないとした 96) 。 さらに,規則の公告前 に告知 コメン トによる規則制定の手続 を行政機関が用いていることか らも, これ ら規則が司法による謙譲を受けるこ

8 9 )Z d.a t 388 . 9 0) M.

9 1 )1 d. ( c f . Cr a ndo nv.Uni t edSt a t e s , 4 9 4 U.S. 1 52 ,1 77( 1 99 0 日Sc a l i a , J . , c o nc ur r i ng i nj udge me n肋

92 ) 1 d.a t 3 88 . 93) 1 d.

9 4)1 9CFR§1 0. l l( a) ( 1 998 ) . 95) 1 d.

9 6 )1 1 a g garA柳 r e l ,52 6U. S. , a t 389 .

(23)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審 杏 ( 2J J5 3

とを意図されていない とい う主張 は,現代の一般的な行政慣行か ら十分に離脱 す るものを伴 っていることも指摘 した 97) 0

次 に② の主張に関 して,被告はさらに,法律上国際貿易裁判所は初審的審査 を行 うとされているのであって, このことと行政機関の規則 に謙譲することは 矛盾すると主張 した 9 8) が, この点 について次の ように述べた。

有効な規則は,法的規範 を生み出す。裁判所 は,法 を新 しく認定 され た事実 に対 して通用す る一方で,有効な規則 に対 して適切な効果を も 付与 しうる。それは,第一審において審理を行 った裁判所のいずれ も が, 自らの解釈 を統制 している制定法や親則,司法府の先例 と一致 さ せ るの とちょうど同 じことである。連邦議会は,裁判所 に対 して行政 機関の見解 に謙譲するよう命ずることを選択することはなかったであ ろ う 。 ‑‑初審的手続 は,法の創設を前提 とするものである。 ここで の問題 は,規則が統制 している法の一郭か否かである。裁判所が事実 決定を行い事実決定を法 に適用す る権限,すなわち初審的審査の権 限 を減 じることな しに,規則 に対 して謙譲は与 えられる ものである 。99)

そ の上 で, シェヴ ロ ン法理 の第一段 階で当該制 定法が 暖味 な ものであ る と し 1 00) ,第二段 階については控訴裁判所が検討 していなかった 101) ことか ら, 控 訴裁判所 に差 し戻 した 102) 0

このようにハ ガ‑アパ レル判決は,た とえ制定法が裁判所 に対 して初審的審 査 を行 うことを求めていた として も,そのような中で出された規則 はシェヴロ ン法理 によ り裁判所が謙譲 を行 うべ きか否かを判 断され うることを明 らか にし た判決であ り, シェヴロン法理 を行政機関の規則の司法審査 における 「 通常の

) \ノ \ノ \1‑ノ ) ) 0 1 2 7 〇八U 9 nU 0 0 9 9 9 1 1 1 彪 此 此

a t3 9 0 .

a t3 9 0 ‑ 3 9 1 ( c i t i ng2 8U . S. C . § 2 6 3 8 , § 2 6 4 0 ( a)a nd § 2 6 4 3 ) . a t3 9 1 .

1 d. a t3 9 3 .

1 d. a t3 9 4 ‑ 3 9 5 .

1 d. a t3 9 5 .

(24)

1 5 4 6 0 2・3

ルール」 及 び 「 慣 習的 な枠 組み」 と した点 に意義 があ る と評 されている 103) 0 第二 は, 2000 年 の 食 品 医薬 品 局 対 ブ ラ ウ ン& ウ イ リア ム ソ ン煙 草 会社 判 決 104) ( 以下 , 「ブ ラウ ン& ウ イリアム ソ ン判 決」 とい う。) であ る。 ブ ラウ ン

& ウ イリアム ソ ン煙草 会社 判決 は次 の よ うな事例 であ る 。

1 99 6 年 ,食 品医薬 品局 は,ニ コチ ンが 「 薬物 ( dr ug) 」 であ り,煙 草 及び無 煙煙 草 が 「 薬物 吸引装置 ( dr ugde l i ve r ydevi c es ) 」 であ り,食品医薬 品化粧 品 に関す る法律 ( Food,Dr ug,a ndCo s me t i cAct;FDCA) の下 で煙 革製 品 を 通常郎 l されてい る もの と して規制 す る管轄権 を持つ と判 断 し 105) , この権 限 に基づ いて,煙草製 品の販 売促進, ラベ ル,青少年 の入手 について定めた規則 ( 以下,ブ ラウ ン& ウ イリアム ソ ン判 決 を論ず る限 りで 「 本件規 則 」 とい う。) を定 め た 1 0 6) 。 なお,本 件規則 はパ ブ リックコメ ン トの手続 を経 て い る 1 0 7) こ とか ら立法規 則 であ る。原告 であ る煙 草製造業者 ,販 売業者 ,広告業者 の団体 は,食 品医薬 品局 には煙草薬 品 を通常取 引 されて い る もの と して規制す る管轄 権 はな く,本件 規則 は食 品医薬 品局 の権 限の範 囲 を逸脱 してい る 1 0 8 )と して,

1 0 3 ) Cl a i r e R . Ke l l y & Pa t r i c k C . Re e d,07 1 C eMo r eU7 l t Ot heBr e ac h:Re c o 7 Z C i l i n g Chevr o nAnal ys i saJ l d DeNo voJudi ci alRev i e wa ft e r Uni t edSt a t e sv. Ha gga r Appa r e lCo mpa ny,4 9 A. U. LRe v.1 1 67 .1 1 8 5( 20 0 0 ) ( 「 連邦最高裁判所は,ハガ‑

アパ レル判決に対 して, シェヴロン判決の分析が行政機関の鑑別に対する司法審査 の際の 「 通常のルール」であ り 「 慣習的な枠組み 」 であるという前提か らアプロー チ した 。 」 ) .

1 0 4)Fo o da ndDr ugAdmi ni s t a t i o nv.Br o w・ n & Wi l l i a ms o nTo b a c c oCo r p. , 5 29 U.

S.1 2 0( 2 0 0 0 ) . なお,この判決について触れた邦語文献に,藤倉陪一郎 「 薬物 を体内 へ取 り込む用具 として煙草を規制する権限 」 ジュ リス ト 1 1 8 3 号 1 9 5 頁 ( 2 0 0 0 年),柿 葉 治久 「 Fo o da I l dDr ugAdmi ni s t a t i o nv. Br o wn & Wi l l i a ms o nTo b a c c oCo r p :

米食品医薬品局 ( Fo oda ndDr ugAdmi ni s t r a t i o n ,以下, FDA という)には,食 品医薬品化粧 品浅 く Fo oda ndDr ug , a ndCo s met i cAc t ,以下, FDCA という)の もとで,タバコ製品の販売や広告を規制する管轄権はないとした事例 」[ 2 0 01 ‑1 ]ア メリカ法 2 5 4 頁 ( 2 0 01 年),筑紫圭一 ・前掲論文注 1 8 ) ・47 及 び5 4 頁がある。

1 0 5 )Br o w ) i & WL ' l l i a ms o Z l , 5 2 9 U . S . a t1 2 7 . 1 0 6 )I d. a t1 2 8 .

1 0 7 )〟 a t1 2 6 .

1 0 8) 食品医薬品化粧品に関す る法律は 3 6 0 j条 e 項 において,器具に有毒 な効果のあ

る可能性があるか,器具の利用に必要な付随的な制約があることか ら,食品医薬品

局が器具の安全性や効果 を合理的に保証する手段が他にないと判断する場合には,

(25)

アメリカ合衆国における行政機関による制定法解釈と司法審 餐‑( 2) 155

本件規則 につ き略式判決を求めた 109) 0

連邦最高裁 は, まず人口問題 として,食品医薬品局が煙草製品を規制す る権 限を有するとの主張を分析 する際の適切 な分析枠組みがあるとした上で,本件 が行政機関の行 う制定法解釈 に関する ものであることか ら, この判決の分析は シェヴロ ン判決 によって統制 され る, とした 110) 。そ して, シェヴロン法理の 第一段 階 につ き,rわれわれは ここでの問題 に対 して連邦議会が直接 に述べて お り,食品医薬品局は煙草製 品規制の管轄権 を与 えなかった,と認定 した 」111)

と述べた。 この限 りで連邦最高裁は,管轄権 の有無の問題 もシェヴロン法理の 第一段階の問題 として処理 しているが, さらに次のように述べてシェヴロン法 理の通用の有無の問題 について も触れた上で,連邦議会の意図について判断 し た。

‑‑連邦議会が直接 に争点 となっているまさにその間題 について直 接 に述べて きたかについての当裁判所の吟味は,少な くとも何 らかの 手法で,現在ある問題の性質によって形成 される。行政機関の運用す る制定法の解釈 に対す るシェヴロン判決下の謙譲は,制定法の暖昧 さ によ り議会か ら行政機 関に対する制定法のずれを埋めることの暗黙の 委任が形成 されている とい う理論 に基づいている。 しか しなが ら,過 常でない場合 には,連邦議会が このような暗黙の委任 を意図 していた

と結論づ ける前 に蹄躍 して当然であろう。

本件 は通常の事例 とは言い難い。1 91 4 年以来の食品医薬品局の連邦 議会に対する説明 とは逆 に,食品医薬品局は今ではアメリカ経済の重 要な部分 を構成する産業 を規制す る管轄権 を主張 して きた 。 実際,餐 品医薬品局は次の ように主張 している。すなわち,煙草製品が 「 合理

食品医薬品局は親別の中で定めうる他の条件に基づいて当該器具の販売や配布,使 用 を制限することを求めることができると定めていた ol d. a t 1 2 9 ( c i t i ng 21U. S.

C . § 3 6 0 j ( e) ) .

1 0 9 )Br o wJ l & W 2 ' l l i a ブ ナ ぴ 0j l , 5 2 9 U . S . a t 1 2 9 . i l o ) 1 d . a t 1 3 2 .

1 1 1 )I d. a t 1 3 3 .

(26)

1 56 商 学 討 究 第 6 0 巻 第 2・3 号

的な安全性の保証」を行 っていないと食品医薬品局が判断するな らば, 煙草や燈 のでない煙草 を全体的に禁止する権 限を持つ ことになろう,

と。・ ‑‑煙草 は,アメ リカの歴史や社会において独 自の地位 を占めて いることか ら,独 自の政策の歴史を有 している。連邦議会は,良かれ 悪かれ,煙草製品につ き明確 な規制枠組みを作 り,煙草 に対する管轄 権 を食品医薬品局に付与 しようとす る提案をはっきりと拒否 し,繰 り 返 しいかなる行政機関 もこの分野での重要な政策決定権限を行使 しな いように して きた。 こうした歴史や食品医薬品局が主張 して きた権 限 の範囲を考えれば,われわれは行政機関の広範な制定法の解釈ではな く,食品医薬品局 に対 してこうした権限を否定するとす る連邦議会の 一貫 した判断に対 して謙譲せ ざるを得ない 。112)

このように,ブラウン&ウイリアムソン判決は立法規則が問題 となった事例 であ り,通常はその ような規則 を審査する際にはシェヴロ ン法理が適用 される が,管轄の ような重大 な問題の場合 にはシェヴロ ン法理が通用 されない場合 も あることを明 らか に した点で注 目される 113) 。 ただ,この点 に対 しては,た と えばサ ンステイ ンがかねてか ら暖昧であると批判 している 11 4) 。サ ンステイ ン によると,本判決の引用す る,連邦議会は主要な問題 に焦点 を当て答える傾向 にあるが,他方で隙間問題 については,制定法の 日々の運用の中で答えるよう に してお くべ きとい うブライヤー裁判官の見解 115) には正当性がな く,管轄の 問題 はシェヴロ ン法理の第一段 階で解 決すべ きであるとす る 11 6) 。 また,当の

1 1 2)〟. a t1 5 9 ‑ 1 6 0( c i t a t i o nso mi t t e d) ,

1 1 3 ) もっとも,ブラウン&ウイリアムソン判決より前にも既に紹介したアダムズ判 決においても,管轄についての行政機関に対する謙譲は許されない旨の判示がなさ れていた点に留意すべ きであろう oAdamsFr ui t .4 9 4U. S.a t6 4 9 二S e eal s os u py t l no t e3 7 ‑ 4 5 .

1 1 4)Suns t e i n , s a br a no t e1a t2 4 3: s e eal s o Suns t e i n , Lawa J l dAdmi J l i s t r at i o l la ft e r Cbe vr o n, 9 0Co l um.L Re v.2 0 71 , 20 9 7 ‑ 21 0 0( 1 99 0 ) .

1 1 5 )St e phe nBr e ye r Judi c i alRe L , l e wo fQue s t i o J l SO fLawal l dPo l i c y ,3 8Admi n. L Re v. 3 6 3 ,3 7 0( 1 9 8 6 ) .

1 1 6 )Suns t e i n , s u Pr a no t e1a t2 4 3 .

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