スペイン語 EN 否定の極性条件とその について
田 林 洋 一
O . 序
本稿ではスペイン諾 EN 否定における酎生を分析することを目的とする。本稿にお ける fEN 否定 j とは、以下の例文における否定表現を指す。
( 1 ) a . En t o d a l a t a r d e a g a r r o una r a t a . b . En t u v i d a h a s t r a b a j a d o , P e d r o .
B r u y n e ( 1 9 9 9 )
(1)では否定辞 ( p a l a b r a sn e g a t i v a s ) が現れていないが、意味的に否定極性 ( p o l a r i d a d n e g a t i v a ) を持つ。本稿で、は特に明記しない限り、 EN 否定を rEN を伴 う前置詞句の存在による、否定辞を伴わない否定 J と定義する。
1 . 先行研究
本節では 8 a n c h e zL o p e z ( 1 9 9 9 ) 、 L i n e b a r g e r ( 1 9 9 1 ) 、 Ladusaw ( 1 9 8 0 ) 、奥野 ( 2 0 0 2 ) を先行研究と位麓づけ、諸々の問題点を指摘しながら EN 否定の極性について概観す る 。
1 . 1 先行研究における EN 否定の極性について
過去の研究で fEN 否定の極性 j のみを扱った文献はほとんどない。基本的に EN 否 定は主題化されるという特性を持つため、否定の作用域伯臨 b i 印 d el a n e g a c i 侃)は EN 前置詞句が c 統街J 1 している、それより右側の部分全体であり、焦点は作用域内の 語葉項目となる。更に、 EN 否定は特殊な ( 8 加 c h e zL o p e z に従えば f 半ば諾葉化さ れたJ ) 否定表現であるため、メタ言語的な解釈も許さない。
従って、 EN 否定では部分苔定やメタ言語否定の解釈はありえず、文否定としづ解釈 しかなされえない。本稿では専ら先行研究の立場を支持するが、 EN 否定が文否定であ
1
* 詩成素統御 ( c . c o m m a n d 、以下 c 統御)は、 R e i n h a r t ( 1 9 7 6 ) によって以下のよう に定義される。
( i )α 、戸いずれも地方を支配せず、かっ α を支配する最初の枝分かれ節点が。
を支配する時、節点 α は日を C 統御する。
R e i n h a r t ( 1 9 7 6 : 3 2 )
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ることを自明とした上で、一般的な否定の極性と関連付けながら、 EN 否定の極性を検 討する。
1 . 2 否定撮性研究の概略
K l i r n a ( 1 9 6 4 ) は、主に生成文法の枠組みから否定の問題を包括的に扱った最初の 論文である。Kl i 臨 a の主張のーっとして、文否定と構成素否定を明確に区別した点が あり、現在でも主要な否定研究の基盤となってい " ' ‑ ' 0
Kl i 臨 a は文否定と構成素否定を区別するために、深層構造で NEG という抽象的な 要素が、文否定では文の前に、構成素否定では構成棄の前に、それぞれ出現すると
えた。その際、肯定極性の環境にしか現れ得ない非確定的構成棄が、否定極性項目 ( N e g a t i v e P o l a r i t y 1 t e 臨 払 以 下 NP I)に c 統御されると 2 、不定構成素編入変形 ( i n d e f i n i t e i n c o r p o r a t i o n ) を起こして NP1 に変化する、と主張した o Kl i r n a の主張 は以下の Reinhart ( 1 9 8 3 ) のそれとほぼ同等である
O( 2 ) ある要素 α の c 統御領域が、その作用域になる。
( 1 9 8 3 : 1 3
開1 4 )
しかし、 J a c k e n d o f f( 1 9 7 2 ) や太田 ( 1 9 8 0 ) が正しく指摘しているように、これだ けでは否定極性を正しく捕らえていることにはならない。 ( 3 ) は語葉レベノレにおける Kl i r n a への反詑である。
( 3 ) a . 1 c o u l d n ' t s o l v e s o r n e o f p r o b l e r n s . b . 1 c o u l d n ' t s o l v e any o f t h e p r o b l e r n s .
加賀(1 997: 9 9 )
( 3 ) は共に適格な文であるが、非確定的構成素である some が NPI である any と 同じ位置に生起している。そして、 ( 3 a ) と ( 3 b ) の意味は異なる。形態レベノレにおけ る反証は以下の文を参照。
2 Klima の用語に従えば ; r 構成を成す J ( i n c o n s t r u c t i o n w i t h ) であるが、この概念
は C 統御とは鏡像関係にあたる。即ち、「 α が 3 を C 統御する j と は 、 げ が α の構成
を成す j ということである。
( 4 ) a . That Jack e v e r s l e p t i s i m p o s s i b l e . b .
がfhatJack e v e r s l e p t i s p o s s i b l e .
Ross ( 1 9 6 7 : 3 4 3 f f )
( 4 a ) の e v e r は否定の作用域内に来なければならないが、否定要素 i m p o s s i b l e は e v e r を c 統御していない。更に、二重否定における反証も存在する。
( 5 ) Not a l l s e n t e n c e s with d o u b l e n e g a t i v e s a r e n o t grammatica l .
McCawley ( 1 9 7 3 : 2 8 2 )
二重否定は深層構造では肯定極性を持ちうるため、 ( 5 ) では否定に c 統御される要 素が特定されない。統語レベノレで、の反証は以下の例文を参照。
( 6 ) a . 1 d i d n ' t s a y t h a t 1 had e v e r been t o I s r a e l . b . * 1 d i d n ' t y e l l t h a t 1 had e v e r been t o I s r a e l .
L i n e b a r g e r ( 1 9 8 0 : 2 4 )
( 6 b ) , 土 、 NPI である e v e r が n o t に c 統御されているにもかかわらず、容認されな
し 10
以上のように、 K l i 血 a の論は欠点こそ散見されるものの、現代の否定研究に繋がる ところが多い。批判的な検証をした J a c k e n d o f f( 1 9 7 2 ) や Lasnik ( 1 9 7 2 ) は、ほぼ
に準じての論議であるが、 NPI に関しては例外的扱いを設けることが多く、画 期的な進歩とは言えない。その後の杏定研究で特筆すべきものは、生成文法からの枠 組みでは太田 ( 1 9 8 0 ) 、論理的含意等の意味論からの枠組みでは Horn( 1 9 7 2 ) が挙げ
られよう。
K l i
朋a の貢献は、否定の作用域を統詩的に決定したことである
Oその後、 Progov 即
位協 8 ) らが、否定の
j極性と作用域に関して同楼に統諾論の立場から様々な代替案を 提示してきたが、 ほどの成果は挙げていない。
や Lasnik 、太田等の中心課題は否定の作用域の決定であり、結果として否定
j 極性を自明のものとして認め、言語の統語構造と意味構造のインターフェイスを構築 する試みとなっている。
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1 . 3 Sanchez Lopez ( 1 9 9 9 ) における EN 否定の扱い
S 五 日 c h e zLopez ( 1 9 9 9 ) は 、 EN 否定を「半ば諾葉化された表現であり、否定辞と 問等の櫨性決定能力を持つ J としている。
( 7 ) a . { m i I l a } v i d a he o i d o s e
盟e j a n t ed i s p a r a t e .
b . En 印 d oMadrid s e puede e n c o n t r a r homb
拘masf e h z 弓 ueP e p e . c . En t o d a l a t a r d e f u e c a p a z d e d e c i r nada c o h e r e n t e .
S 益 nchezLopez ( 1 999 : 2 6 0 3 )
EN 前置詩句それ自体が否定辞として振舞っている根拠として、 ( 7 ) には EN 前置 詞勾以外に否定辞と考えられうる語がなく、全体として否定極性を持つこと、 ( 7 c ) に 見られるように N 日 の 出 現 ( n a d a ) を認、可すること等が挙げられる。更に EN 否定の 特徴として、①時間的側面を意味する述語に限定される 3 、② EN 否定は非生産的で慎‑
用匂である、③前置詞 EN に導かれる要素は普遍的に量化子化された時間表現でなけ ればならない、の三つを挙げている 4 。更に、 EN 菅定は時間的な極限 ( c a r a c t e re x 廿 emo)
と関連しているため、瞬間的な行為を表す文では EN 否定は生じず、 en
血iv i d a や en t o d a v i d a といった全体を指し示す前置詞匂を要求する、と主張する o
Sanchez Lopez の観察は、前置詞 EN の後 l こ続く補語の条件等については洞察に富 むが、時間表現だけに限定している点で不足がある ( ( 7 b ) 参照)。また、 EN 否定が 語繋化された表現としてレキシコンに記載されている情報だとするならば、個々の EN 否定を許す前置詞匂全てがレキシコンに記載されなければならず、言語の経済性の原 理を破っている恐れがある。
1 . 4 L i n e b a r g e r ( 1 9 9 1)における様性の扱い
L i n e b a r g e r ( 1 9 9 1 ) f 士、否定の現象、特に NPI の分布に関して、主に論理形式から の 説 明 を 試 み て い る o L i n e b a r g e r の 主 張 は 、 以 下 の 二 種 類 の 直 接 作 用 域 制 約
( I mmediate S c o p e C o n s t r a i n t ) に要約される。
3 En 初 出 l at a r d e e s t a b a e s t u d i a n d o . は動詞 e s t u d i a r のアスペクト的特性のため、
EN 否定にならない。 I b i d :2604 参照。
4 En v e i n t i t r 飴 酷 i n u t o sf u e c a p a z d e d e c i r nada c o h e r e n t β . は前置詞の補語の特性に
より EN 否定にならない。 I b i d :2604 参照。
( 8 ) 直接作用域制約 ( A ) ( I SC ( A ) ) : NPI は、論理形式において否定演算子 NEG の直接作用域内になければならない。
( 9 ) 直接作用域制約 ( B ) ( I SC ( B ) ) : NPI を含む命題 pが別の命題 q を(論理的 または諾用論的に)合意し、その q の中で NPI が NOT の直接作用域内にあれば、 p はその含意によって「救われ J 、容認可能となる。
L i n e b a r g e r における直接作用域とは、 Reinhart( 1 9 8 3 ) とは異なり、以下のように 純粋に論理形式からの定義となっている。
( 1 0 ) ある要素 x は次の場合に NEG の直接作用域内にある。
a . X が NEG の作用域内にあり、かっ、
b.x と NEG の間に論理要素が介在していない。
まず、 ( 8 ) と ( 1 0 a ) の妥当性を検証する。以下の文を参照。
( 1 1 ) E s t e a s u n t o no e s moral para n a d i e .
Sanchez Lopez (1999: 2 5 6 6 )
( 1 1 ) は以下のような論理形式を持つ。
( 1 2 ) NOT ( E s t e a s u n t o e s moral para n a d i e )
( 1 2 ) は NPI である n a d i e が NOT の直接作用域内にあるので、適格となる。
( 1 0 b ) は、作用域が複数の文にまたがる時に必要な条件である。以下の文を参照。
( 1 3 ) El no s e movi る porque 釦 eempujado.
( 1 3 ) は暖味であり、以下の二通りの読みを持つ
O( 1 4 ) a . NOT CAUSE 品 ( 1 f u e empujado , 品 1 s e m o v i o ) b . CAUSE ( e l f u e empujado , NOT ( e l s e m o v i o ) )
同 同υ