インプラント試験による高張力鋼の溶接低温割れに関する研究
山 ロ 常 昭* 藤 原 敏*
(昭和53年4月27日受理)
Study on Cold Cracking at Welds in High Strength Steel by lmplant Test Method
Tsuneaki YAMAGucHI* Satoshi FuJlwARA*
(Received April 27, 1978)
Cold cracking at welds in high tensile strength steel (HT 80) is investigated by lmplant weld cracking test method. And in this paper is discussed on the factors affecting cold cracking, i.e. hardening, hydrogen and stresses.
Results can be summarized as follow ;
(1) Criti¢a} stress for cold crack initiation has good correlation with diffusible hydrogen contents in welds and the critical stress value decreases with increasing of diffusible hydrogen content.
(2) Pre−heat may be a desirable method for the prevent of cold cracking. Because it has direct effects upon hardening in HAZ and evoluation of hydrogen.
1.緒 言
鋼構造物の大型化にともない軽量化の必要性から,従来 の軟鋼四馬にかわり重量強度比の高い高張力鋼が非常に多 く使用されており,現在,一部では100mm.を越える極厚 板の高張力鋼が実際に使用されるようになってきている。
しかし,高張力鋼の溶接施工に際しては,初層溶接時に発 生するルート割れが大きな問題となっており,溶接低温割 れ防止のための研究の重要性が非常に高くなっている。
溶接低温割れに影響する因子として以下のものが現在一 般的に考えられてお・り,
1)溶接部の拡散性水素の存在
2)溶接熱影響による割れに敏感な組織の存在 3)引張応力の存在
これらの因子の影響について各種溶接割れ試験法にて調 査研究が進められている。しかし,溶接割れ試験法として は,試験法自身が簡単でしかも少量の供試材で多くのデー タが得られることが望ましい。
最近,上述の条件を満足した試験法としてH. Granjonl)
の提案した「インプラント溶接割れ試験法」が国際溶接学
会(ilW)でも話題を呼び,現在,各国で研究が進められて
いる。2〜6)
そこで,本研究では簡単なインプラント溶接割れ試験機 を試作し,80kgf/mm2級高張力鋼の溶接割れ試験を実施 し,割れに関与する諸因子の影響について検討を加えるこ とを試みた。
2.実 験 方 法
2ユインプラント試験法および試験装置
Fig.1に本研究で用いたインプラント溶接割れ試験法の 概略図を示す。円周切欠付き丸棒試験片(これをインプラ
*金属工学科
㈱之 「㎝…璽彗
Ba⊂k!ng 一一一一一一 一一一 1 1 PLate{ I I
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I l L一_冑一_____一_噂__一一一一日 Fig.1 Schematic diagram of implant testing.method
津山高専紀要第16号(1978)
ントと呼ぶ)を三板(これをBacking Plateと呼ぶ)にあ らかじめあけてある貫通穴に挿入し,試験片頭部が捨板上 面と同一になるようにセットした後に,溶接ビードがその 頭部上を通過するように溶接する。この溶接による溶接ボ ンド部がほぼ円周切欠部になるように切欠位置はまえもっ て調整する。次に,溶接ボンド部が150℃〜100。Cに冷却さ れた時にウォーム,ウォームホイールを介して試験片に引 張力を加え,一定応力下で割れが発生するまでの時間を測 定する。そして負荷応力と破断時間との線図から,割れ発 生限界応力(以下crcrと略す)を求める。
また,本研究においては予熱を行なうため水冷式ロード セルを採用した。なお,予熱方法としては電気抵抗式ヒー ターを用い,所定の調定温度に到達後は自動温度調整器に より制御した。
2.2供試罪ならびに試験片形状
供試材料としては80kgf/1nm2級高張力鋼(HT80)を,
また,溶接棒としてはφ4mmの80kgf/mm2級高張力鋼用 の低水素系棒(LB 116)を使用した。供試材料の化学組成 ならびに機械的性質をTable 1に示す。
ことがWatkinson2)らによって確められており,切欠加工 に特別な精度を要しないものと考えられる。
2.3溶接にともなう基本的性質 2.3・1溶接熱サイクル
溶接割れ試験法としてインプラント試験法を採用するに あたっては,試験片と捨板が同一の溶接熱サイクルを受け ることが必要条件とされている。Granjonは室温において それらは同一の熱サイクルを受けると報告している1)。
本研究においては,予熱を行ない割れ試験を実施するた め,その際にも両者が同一の熱サイクルを受けるかどうか を測定した。その結、果の一例をFig.3に示す。これは100℃
の予熱を行なった場合のものであるが図より試験片と捨板 とはほぼ同一の熱サイクルを受けることがわかる。
Fig・4は予熱温度と冷却時間の関係を示したものであ る。図より当然のことながら予熱温度の上昇にともない冷 却時間は長くなる。これらの実験から,室温,50℃,100℃
および150。C予熱を行なった場合の負荷開始時期として,
ピーク温度からそれぞれ2,4,13および27分経過した時を 採用した。
Table 1 Chemical compositions and mechanical properties of material used
HT80 LBI16
Chemical composition (wt%)
・1・・圓・ ・1・・IN・i・・圓・1・
e.17 O.07
O.29 O.63
O.96[ O.016
1.491 O.009 O.OIO O.006
O.301 一10,8710.50 一il.8410.4310.24
O.038 O.002
beg
(%)
O.644
Pcm
(%)
O.333
Yield point
(kgf/mm2)
73.1 74.0
Tensile strength
(kgf/mm2)
81.0
Elongation (%)
14.3
85.0 24.0
Fig.2に試験片ならびに野板の形状・方法を示す。試験 片は板厚(20mm)の中心でL方向より採取した。切欠は,
切欠角度40。,切欠深さ0.5mm,切欠先端半径0.1mmのも のを採用した。切欠位置は,予備実験より決定した。すな わち,通常の17KJ/cmの手溶接で切欠部がほぼ溶接ボンド 部となるよう試験片頭部から切欠までの距離を求め,頭部 からの距離を2.5mmとした。溶接長は100mmとした。な お,切欠加工精度としては,先端半径が0.1mm付近であ れば先端半径が多少変化してもσcrにはそれ程影響しない
Imptant specimen
司トφ8
1・1
亀
..5i℃ 1
⊥ 塁 1﹁1
1rnplant speeirnen
蹴dbacki㎎pla船
Shape ot backing plat e
︷
Fig.2 Dimension and shape of implant test specimen
2.3.2溶接部の組織および硬さ分布
溶接部の組織および硬さ分布は,溶接熱サイクルの影響 を受けると考えられる。溶接部の組織を調べるには,その 鋼材のCCT線図を作成する必要があるが,ここでは溶接部 の硬さ分布を測定し冷却速度と組織との関係を推定した。
Fig.5にそれぞれの予熱条件下での硬さ分布を示す。これ らの図より,冷却速度の最も速い室温(a)において熱影響 部の硬さは最も高く,順次予熱温度の上昇にともないその 値は低下していく傾向が認められる。このことより,予熱 温度の上昇にともない溶接ボンド部近傍の熱影響下中に占 めるマルチンサイト組織の割合いが低下しているものと考 えられる。
2.2.3溶接部の拡散野水素量
溶接低温割れに影響する水素の効果を調べる目的で,同 一溶接棒であるが,棒の吸湿度を以下の三種類に変化させ た。1)溶接直前に30秒間棒を水に浸したもの,2)受け 入れのままで無乾燥のもの,ならびに 3)350。Cで1時間 炉中で乾燥したもの。
これらの溶接棒に溶接した場合の溶接部の拡散性水素量 を,置換型水素測定装置を用いJISならびに∬W法とによ
1400
︵り︒﹀
1㎝
oo
Φ﹂⊃創而﹂ΦαβにΦ卜
am
300
工mp[ant Beckir)g ptate
11 11.2
O 5 10 15 20 25.30
Time (sEx .)
Fig. 3 Effeet of fit ort cooling time
(.O︐Φ.の
)
Φε;.Oξ08
2000 1000 500
200 100
50
20
,10 5
2 e/
e
Cooiing time Q,or.n 8000C to loooc
Cooting time from 800eC tQ 5000C
1L一.一/
50 GOO 150 Preheat temperature(Oc)
Fig. 4 Relationship between preheat temperature and cooling time
蜘
㈱姻
︵80ゆ主﹀
3 3 250@0C 50
凶いΦ﹇刀﹂頃工
欄ぐ一hW
Ac e orgy 17Kkm Rtheet torTI)R丁
o Mt 1 23456Distance froni bond {rm)
5鳥8oo@50
oo@5 00
つロ ヨ︾工︶ψ﹄りω︹U﹂郎工
0 5 2
W.M・申HAZ
3
(a)
o
Ar〔町17K比m 腰回 ヒ㎝P5びC
3 210123456Distance frorn bond (mm)
(b)
0 0
0 55 ムー 58ゆ
0
>エ︶ 40
3 350@00
uOフ0︹℃﹂O工
0 5 2
WM・申HAZ
o rt Distance trom bond 1 23456( mm)
50
5 54 −毎 3 3︵08の﹀エVの霧もあエ
0 25
3
o
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剛t師P双κ
W・M・eHAZ
(c)
32 s 0123456
Distance trorn bond (rrtn)
(d)
Fig。5Hardlless distr.i加tion
津山高専紀要第16号(1978)
り測定した。その結果をTable 2に示す。その値は,4個 の試料の平均値で,標準状態(0。C,760mmHg)に換算し た溶着金属100g当りの拡散非水素量である。なお,割れ 試験結果の考察には,補集液に水銀を使用した場合の∬W 法による値を採用した。
Table 2 Diffusible hydrogen content Electrode condition
E11061G, ipsmm 3sooc×lhr.
As received
(No baking)
Hydrogen content cc/100g JIS皿ethod IIW method
f45
)E
D40
.一〇Y
D
835霧
葱30
り
25 o
Wet in water
Arc energy 17KJkrn Pcm O.33 t.
o
o
L3
3.5
8.5
5.0 5 一一 10 15 20 Diffusible hydr⊂gen (H)(cc/1009)
9.4
Fig. 7 Relationship between critical stress and diffusible hydrogen content
19
3.割れ試験結果ならびに考察
3.1割れ発生限界応力値と溶接部の拡散三水素量との関 係
溶接低温割れば,溶接熱影響により硬化組織になった部 分に溶接により侵入した拡散性水素が拡散し,その部分の 水素量がある限界量に達した時に発生すると考えられてい
る。
そこで,吸湿度の異なる溶接棒を用い室温にて割れ試験 を実施した。その結果をFig・6に示す。図は,割れ試験結 果を,負荷応カー破断時間線図に示したものであるが,負 荷応力としては切欠底断面における平均応力を用いた。
釜8。
s呈 60密壱
40璽耳
Steee HTee
Ap=∈爬rgy 17KJtcm
弊ヂヒ篠、,錫 2?6
︐Il﹂−ーゴーi
20 2 5 tO 20 50 100 200 500 1{XX)
Time after start of we[ding ( min ) Fig. 6 Effect of diffusible hydrogen content on implant test results at room temterature
図示のごとく,いずれの水素条件でも遅い破壊現象を示 す。また,図より明らかなように,割れが発生するまでの 時間,すなわち,潜伏時間は水素量の増加にともない短時 間側に移行し,24時間一定応力にて放置しても割れの発生 しない応署すなわち,割れ発生限界応力(σer)は水素量 の増加にともない低下する傾向が認められる。図より求ま るσcrと対数の拡散性水素量Io9〔H〕との関係をFig.7に示 す。両者の間にはきわめて良好な対応関係があり,拡散三 水素量の増加にともないσerは低下する。
捨板を室温のままとし,同一溶接入熱に割れ試験を実施
したので冷却過程に差違はない。したがって溶接時に侵入 した拡散三水素量の多いものは,割れに実際に関与する水 素量も多いものと考えられる。
次に,棒の吸湿度は前述したものと同一にし,予熱温度 を100℃にした場合の割れ試験結果をFig・8に示す。図よ
りFig.6と同様の傾向がうかがえるものの,吸湿度の違い が,σcrにはFig・6に示すものほど大きく影響しないこと がわかる。図中に示した〔H〕は,室温にて溶接を行ない測 定したものであり,予熱を行なった場合には,冷却時間は 長くなり冷却過程中に拡散性水素が室温の場合のものより より多く大気中に放出されるものと考えられる。
0 8
0 6
Q 4
︵宅Eこ2︶瞬Φ缶でΦ言αく
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..S Steel HTBO
kc enengy 17Kltrn Pmb teftp loooC
(H) t fi・PcctlOOg
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20
2 5 10 20 50 100 200 500 ICX)O Time after start of welding ( mtn.)
Fig.8 Effect of diffusible hydrogen content on implant test results at preheat temperature 1000C いずれにしても,溶接棒の吸湿度の違い,すなわち,溶 接部に侵入する拡散二水素量の違いがσcrに大きく影響
し,〔H〕の多いものほどσcrが低下することが明らかとな
った。
3.2割れ発生限界応力と溶接部の冷却時間との関係 溶接部の冷却時間は前述した水素の放出と溶接部の組織 変化とに関係し,溶接低温割れに影響する因子の一つであ る。そこで,捨板を予熱して溶接部の冷却速度を変化さ せ,σcrと冷却時間との関係について検討した。
溶接棒の吸湿度を一定(350℃で1時間の乾燥)にし,予 熱温度を変化させた場合の割れ試験結果をFig.9に示す。
図より,σcrは予熱温度の上昇にともない上昇すること
80信
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Steet HT80
kc ereqy 17Kkn
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H} 50dr
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Fig.9 Effect of preheat temperature on implant test results
書
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O違U﹂哨︐XσΣ ︻∠ −oo@ oD
一一一一一一一一一一一一一一一s一.一.一.
.
Steet HT80
Arc erergy 17
q.T. 50 100
Reheat ter側町e (OC)
150
Fig.11 Relationship between max. hardness in HAZ and preheat temperature
は明らかである。しかし,.この場合棒の吸湿度は同一であ るが,溶接部の冷却速度が異なるために水素の大気中への 放出の度合が異なることが考えられる。さらには,割れが 発生する部分の組織の違いも考えられる。
この冷却時間の指標として溶接部の拡散性水素の放出に 影響すると言われている100℃までの冷却時間ならびに組 織変化に影響する800。C〜500。C問の冷却時間の両者を,前 出したFig・4をもとに検討する。
予熱温度の上昇にともない100℃までの冷却時代は大き く変化するが,800℃〜500℃間の冷却時間の差は比較的小 さい。しかし,Fig.5の硬さ分布からもわかるように,組 織変化,すなわち,硬化組織の影響をも考慮する必要があ
るものと思われる。
まず,Fig.9より求めたσcrと予熱温度との関係を整理 したものがFig.10である。図より両者の間には良好な対
ら,硬さは予熱温度の上昇にともない低下する。そこで,
この硬さとσcrとの関係を整理するとFig.12になり,硬 さの上昇にともないσcrは低下する。
馴 鎚︵㌃Eも三 0
0
4 2
い8﹂剃の一困リヨ﹂り
Stre置 HT80 1tc enetgy Vva
o O 350 mo 4W
Max. hardness fri HAZ (Hv 500g)
Fig.12 Relationship between critical stress and max.
hardness in HAZ
{70
S6翌
se羅言撃
U
.
.
.
.
O RT・ 50 100 150
Preheat terTperakre (OC )
Fig.10 Relationship between critical stress and preheat temperature
応関係がみられ,予熱温度の上昇にともないσcrも上昇す ることがわかる。次に,古くから割れ感受性を表わすもの としてHAZ部の硬さが用いられている。そこで,割れが 発生する溶接ボンド部近傍のHAZ部にて10点のビッカー ス硬さ(5009)を測定し,その平均値をHAZ部の最高硬 さとした。この最高硬さと予熱温度との関係をFig■1に 示す。800℃〜500℃聞の冷却時間の差は比較的小さく,組 織変化の影響は少ないものと考えられたが,図より,硬さ と予熱温度との間には直線性が認められ,当然のことなが
以上のことより,冷却時間が長くなる程,すなわち,予 熱温度の上昇にともないσcrが上昇することが明らかとな
った。
しかし,Fig.loおよびFig.12には,予熱による水素の 放出効果と組織変化の効果とが重畳して影響しており,現 状の溶接低温割れ試験では両者の効果を単独に扱う実験は 困難と考えられる。
今後は,溶接熱サイクルによるHAZ部のマルチンサイ ト変態は約200℃までにほぼ終了しており,HAZ部の温 度200℃以下の冷却速度を変化させることは組織状態を変 化させずHAZ部へ拡散していく水素の挙動を変化させる ことが出来るものと考えられることより;新しい溶接低温 割れ試験法を考案し,水素の影響についてさらに研究を進 める必要があるであろう。さらには,硬化組織に影響する 化学組成の異なる数種の鋼材について割れ試験を実施し,
伊藤らの提案している鋼材の溶接割れ感受性組成7)につい ても検討を加える必要があるであろう。
3.3破面観察
構造物の破壊あるいは破損の原因を調べる手段として破 面観察があり,破壊機構を知る目的でフラクトグラフィー が現在広く用いられている。
津山高専紀要第16号(1978)
そこで,インプラント試験片と同一切欠を有する試験片 を静的引張試験により破壊した破面と溶接低温割れ破面と を走査型電子顕微鏡にて観察し両者の違いについて比較検 討した。
Photo 1は静的引張試験により得られた破獄の写真であ る。破面の大部分にDimpleが観察され,そのDimpleも 延性破壊時におこるMicroveid Coalescenceによる直応力 独特のEquiaxed Dimpleになっている。
Photo 2はFi9・9における予熱温度100℃,負荷応力 54kgf/mm2,破断時間119分の溶接低温割れ破面である。
(a)に示す巨視的盤面写真から,割れば囚部の切欠底から発 生していた。その破面は〔b},〔c}に示すごとくマルチンサイ
トおよびベーナイトと関係した水素擬へき開懇懇であり,
それらのラス境界には(c}のごとく二次割れが認められる。
これは.水素添加による水素脆性破面と非常によく似てい る。(d)は〔B)部の急速破断部の破面写真を示す。この部分で
(b)
Photo 1 Fractographs of normal tnetion test specimen
︶
a
︹
5pl=1
︶b
︵
/一Notch root
[kt,b l
(C) IL.1 (d)
Photo 2 Fractographs of cold cracking in weld for implant test
li 1
はPhot①1と同様なDimple破面となっていた。
以上のことより,静的引張試験による破面と溶接低温割 れ発生部の破面とは非常に異なっており,溶接低温割れは 水素に支配されるものと考えられる。
4.結. 言
80kgf/mm2級高張力鋼を用い,初層溶接時に発生する溶 接低温割れに影響する諸因子について検討することを目的 として,溶接部に侵入する拡散性水素量および冷却速度に 影響する予熱温度を変化させ,インプラント溶接割れ試験 を実施した。
得られた結果を要約すると以下のようになる。
1)溶接部に侵入する水素量を溶接棒の吸湿度を変える ことにより変化させ実施した溶接割れ試験より,割れ 発生限界応力(cアcr)と拡散性水素量(log〔H〕)との間 には直線関係があり,〔H〕の増加にともないσcrは低 下し割れ発生までの時間も短時間側に移行する。
2)σcrは予熱温度の上昇にともない上昇する,また,
割れ発生までの時間も長時間側に移行する。しかし,
これには予熱による水素の大気中への放出量ならびに 硬化組織の変化の両者が影響しており,現状の溶接割 れ試験法ではそれぞれの因子の影響を単独に扱い検討 することは困難であり,新しい試験法の考案が望まれ る。
3)溶接低温割れ破面は静的引張試験による破面とは非 常に異なり,水素添加による水素脆性破面とよく似て
いることから,溶接低温割れは水素支配による割れと 考えられる。
謝 辞
本研究を遂行するにあたり,卒業研究として積極的に協 力いただいた52年度卒業生,日下和久ならびに延永浩一の 両君と試験機の作業に協力いただいた上田達男技官に対し て感謝の意を衷します。
参 考 文 献
1) H. Granjon, The implants method for studying the weldability of high strength steels Metal Construct−
ion, Nov. 1969
2) P. Hart & F. Watkinson, Development and Use of the Implant Cracking Test , Welding Journal, July, 1972 3 ) G M. Evans & N. Christensen, lmplant testing−effect of steel composition and hydrogen level , Metal Con−
struction, July, 1972.
4) J. M. Sawhill, A. W. Dix & W. F. Savage, ctModified Implant Test for Studying Delayed Cracking, Weld−
ing. Journal, December 1974.
s) V. Neumann, Erfahrungen mit dem lrnplantversuch zum Bewerten der Kaltrissne igung von Bausttihlen , Schweissen und Schneiden, 28 Heft 12 (1976) 467−469
6)伊藤,池田,中西,材ンプラント試験による溶接低 温割れ評価に関する研究 ,溶接学会誌,45巻,12号
(1976), 1029・s・1036
7)伊藤,別所,ttem材の溶接割れ感受性の推定法につい て ,日本造船学会誌,502号(1971),213〜219