はじめに
本邦においては 2000 年 3 月, 日本呼吸器学会よ り「呼吸器感染症に関するガイドライン」が市中 肺炎に限って作成され, 発表された
1).当院におけ る市中肺炎の治療成績をまとめるに当たって,こ のガイドラインに沿って検討を行ったので,その 成績について報告する.
ガイドラインの概要
ガイドラインの作成では,簡単で明快なものに するため,すべてにフローチャートを示し,それ を解説する形で記述が行われている.その中で今 回とくに用いた重症度分類,起炎菌の把握,抗菌 薬の効果などについて記述した.
1.重症度分類
肺炎の重症度は胸部レントゲン写真上の陰影の 拡がりと,体温,脈拍,呼吸数,脱水の有無など の身体的所見をもとに,軽症,中等症,重症の三 段階に分類されている.具体的には陰影の拡がり が 1 側肺の 1! 3 までが軽症,1! 3〜2! 3 までが中等 症,2
!3 以上が重症となり,身体所見としては体温 37.5℃ 以下,脈拍 100
!分以下で,検査では白血球 数 10,000 以下,CRP 10mg
!dl 以下,PaO
270Torr 以上の 3 項目中の 2 項目以上を満足するものを軽 症,身体所見の体温 38.6℃ 以上,脈拍 130
!分以上 で,検査では白血球数 20,000 以上または 4,000 以 下,CRP 20mg
!dl 以上,PaO
260Torr 以下の 3 項 目中の 2 項目以上を満足するものを重症とし,軽 症と重症のいずれにも該当しないものは中等症と
市中肺炎のガイドラインに沿った各系抗菌薬の効果判定の成績
栄和会泉川病院
佐々木英祐 貝田 英之 泉川 公一 早川友一郎 泉川 欣一 原 耕平
(平成 14 年 3 月 1 日受付)
(平成 14 年 5 月 10 日受理)
当院において,1998 年 1 月より 2000 年 12 月までの 3 年間に入院した市中肺炎のうち,細菌性肺炎と 推測された 99 例について,日本呼吸器学会が定めたガイドラインに沿って,抗菌薬の効果を検討し,次 の結果を得た.
1)ガイドラインにそって判定した各系抗菌薬の効果は,ペニシリン系で 83.3%(6 例中 5 例),セフエ ム系で 98.7%(75 例中 74 例),カルバペネム系で 85.7%(14 例中 12 例),テトラサイクリン系で 100
%(4 例中 4 例)であった.2)ガイドラインの設定は,起炎菌の決定,重症度の判定,抗菌薬の効果の 判定に有用であった.3)軽症ではグラム陽性菌の検出が多く,重症になるにつれてグラム陰性菌の分離 が増加した.4)高齢者の場合には,効果の判定に際し,発熱と白血球数は参考になり難いこもあると思 われた.5)治療に反応しない因子としては,基礎疾患,年齢(とくに 80 歳以上),関与菌などであった.
6)抗菌薬での治療方針は,その病院での背景を考慮に入れて立てるのがよいと思われた.
〔感染症誌 76:550〜557,2002〕
要 旨
別刷請求先:(〒859―1504)長崎県南高来郡深江町丁2405
栄和会泉川病院 原 耕平
Key words: antibiotics, pneumonia, guideline
Table 1 Underlying diseases and complication in 122 cases with bacteral pneumonia
Hospital-acquired pneumonia(23)
Community-acquired pneumonia(99)
Chronic obstructive 25.3 pulmonary diseases
26.1 5.1
Respiratory failure
17.4 9.1
Heart failure
26.1 9.1
Cerebral infarction
30.4 7.0
Dementia
9.1 Liver dysfunction
9.0 2.0
Kidney dysfunction
8.7 2.0
Diabetes mellitus
8.7 1.0
Cancer
8.7 1.0
Prostatism
1.0 Parkinson s disease
4.3 1.0
Postoperative
4.3 Trauma
1.0 Ulcerative colitis
1.0 Muscular distrophy
1.0 Psychopathy
91.3 57.6
Percentage in total
Note : Patients with more than one underlying disease were included in all the applicable groups.
判断している.
2.病原微生物の推定
グラム染色にて,好中球と共に存在したり,好 中球に貧食されている像があって,形態や染色性 から推定される菌が把握された場合は,原因菌で ある可能性が高いとしている.また喀痰の培養で 一般に 10
6CFU
!ml の菌量で原因菌と推定される 菌が検出された場合は意義が高いと判断してい る.
3.効果判定の考え方
効果の判定は,臨床効果と微生物学的効果の 2 つで行い, 「有効」と「無効」の 2 段階で判定して いる.この場合両者の判定が矛盾する場合は,臨 床効果を優先して判定が行われる.臨床効果は,
!
体温の 37℃ 以下への低下,
"胸部レントゲンの 70% 以下への点数の改善,
#白血球数の正常値へ の復帰,
$CRP 値の 30% 以下への低下, の 4 項目 中 3 項目以上を満たし,残った項目も増悪を認め ない場合に「有効」とし,この条件を満たさない 場合を「無効」としている.
対象および方法
対象患者:当院において 1998 年 1 月より 2000 年 12 月までの 3 年間に入院した市中肺炎のうち,
非定型肺炎と確診された 7 例を除いた 99 例を対 象とした.従って,この期間に入院した院内肺炎 の 23 例と,非定型肺炎の 7 例 (インフルエンザ肺 炎 5, マイコプラズマ 肺 炎 1, ク ラ ミ ジ ア 肺 炎 1)
は,これに含めなかった.
参考までに基礎疾患ならびに合併症の有無を,
院内肺炎の 23 例と比較して Table 1 に示した.こ こに集計した市中肺炎の基礎疾患の保有率は 57.6
%であった.
方法:これらの症例をガイドラインに沿って,
1)重症度,2)病因菌の把握,3)抗菌薬での治 療効果を判定し,さらに 4)抗菌薬の副作用,など について集計を行った.なお無効例については,
その効果が得られなかった原因が把えられないか についても検討を加えた.
成 績
1.対象患者の重症度別にみた性別・年齢別分 布
先ず患者の胸部レントゲンおよび身体所見に検 査所見も参考にして,ガイドラインに沿って重症 度を分類した (Fig. 1) . 99 例のうち重症が 36 例,
中等症が 35 例で,軽症は 28 例であった.
重症度別にその年齢分布をみると,軽症例は 60
Fig. 1 Age and sex distribution of patients with com-munity acquired pneumonia.
A total of eighty-nine percents of mild case-patients are below sixty-years old, on the other hand, a total of 100% of severe case-and 85%of moderate case- patients are over sixty years old.
Table 2 Agents isolated from the sputum and blood of patients with community- acquired pneumonia ― 99 cases ―
total mild
moderate severe
8 5
1 S. pneumoniae 2
Gram
positives S. aureus 2 1 3
7 4
H. influenzae 3 Gram
negatives
1 E. coli 1
1 K. pneumoniae 1
2 P. aeruginosa 2
1 S. aureus+P. aeruginosa 1
1 P. mirabilis+P. aeruginosa 1
24/99
= 24.2%
6/28
= 21.4%
6/35
= 17.1%
12/36
= 33.3%
Isolated rate
歳代以下に留まっており, 重症例は全例 60 歳代以 上で,中等症も 60 歳代以上が殆んどで,50 歳代や 40 歳以下も少数みられた.この分布の偏りは,い ずれも入院患者であったので,65 歳以上の症例は ガイドラインに則って重症度を一段階重くしたこ とも反映していると考えられた.
性別では男性の患者がやや多かったが(男性:
女性=56:43) , 年齢的には男女ほぼ均等に分布し ていると思われた.
2.病因菌の把握
当院の微生物検査に関しては,ガイドラインの
"
,すなわち グラム染色は行っているが,その
他の検査は外部依頼に依存している 施設である.
しかし集計の初期 1998 年〜1999 年の段階ではグ ラム染色で適切な成績が得られていなかったの で,この期間の成績に関してはむしろ
!検体採 取はできるが,検査は全くできず外部依頼に依存 している施設 に属すると考えられた.
Table 2 に示したように,喀痰および血液の培 養によって病因菌が把握されたものは 99 例中 24 例 (24.2%) ,株数では 26 株で,その検出率は低率 であったが, 重症においてやや高率に分離された.
軽症例では肺炎球菌が 5 株,ブドウ球菌が 1 株と 6 株いずれもグラム陽性球菌であったが,中等症 や重症になるにつれ,ヘモフィリスを主とするグ ラム陰性桿菌が増え,とくに緑膿菌の 4 株はいず れも重症例で分離された.
3.各系別にみた治療効果 a)治療成績
先ずテトラサイクリン系は 4 例に投与されてい た(中等症に 1 例,軽症に 3 例) .マイコプラズマ 肺炎およびクラミジア肺炎を疑って投与されたも のであったが,いずれも血清反応は陰性のもので あった.他に有意な菌は分離されておらず,結果 的には 4 例ともに著効ないしは有効であった.
他の
β-ラクタム薬ではペニシリン系,セフエム 系,カルバペネム系が主として使用されていた.
この場合他剤との併用が 11 例あったが (重症例で はクリダマイシンとの 4〜5 日の併用が 5 例, アミ
Fig. 2 Clinical efficacy of beta-lactam antibiotics topatients with community-acquired pneumonia.
Footnote:Minocycline was effective to all four cases.
Any beta-lactam antibiotics were effective to all mild and moderate cases, but not in four cases out of 36 severe cases.
Table 3 Incidence and type of antimicrobial agents side effect in hospitalized patients with community-acquired pneumonia
Abnormal laboratory findings Adverse reaction
)GPT, ALP elevated (penicillin)
)Fever + Rash (penicillin)
Severe *Rash(penicillin) ,GOT, GPT, ALP elevated(carbapenem)
-GOT elevated(cephem)
+Fever(cephem)
.BUN elevated(penicillin)
(6/36 = 16.7%)
/GOT, GPT elevated(cephem)
(2/35 = 5.7%)
Moderate
0GOT, GPT elevated(cephem)
(0/28 = 0%)
Mild
ノ配糖体との 2 日併用が 1 例,ミノマイシンとの 4 日併用が 1 例,中等症ではクリンダマイシンと の 4〜6 日併用が 2 例,ミノマイシンとの 2 日併用 が 1 例,軽症ではミノマイシンとの 4 日併用が 1 例) ,
β-ラクタム薬はいずれも 7 日以上投与されて いたので,これを主にしてその効果を判定した.
軽症例の 25 例と中等症例の 34 例では全例有効で あった (Fig. 2) .重症例では,その殆んどがセフエ ム系(第 2 世代以上)の使用で 24 例に投与されて いたが,そのうちの 1 例のみが無効であった.ペ ニシリン系では 5 例中 1 例が無効,カルバペネム 系では 7 例中 2 例が無効であった.すなわち重症 例では全例
β-ラクタム薬が投与され 36 例中の 32 例(88.9%)では有効の成績が得られた.ペニシリ ン系およびカルバペネム系抗菌薬の投与例が少な かったこととその無効例が少なかったことも加味 して,各系抗菌薬別の有効率の比較はできなかっ た.しかし,市中肺炎であれば,セフエム系抗菌 薬の投与で,その殆んどが治癒に向かう成績が得 られた.
b)副作用
副作用は 99 例中 8 例(8.0%)にみられた(Ta- ble 3) .軽症例では発現がなく,中等症例では 5.7
%,重症例では 16.7% と,重症例になるほど副作 用が高率にみられた.中等症では 2 例ともセフエ ム系の投与で軽度の肝障害 (GOT および GPT 100 以下での上昇)がみられたが,治療中止まで問題 とならなかった.重症例の 6 例中 1 例ではペニシ リン系によって発熱と共に中毒疹があらわれ,
GPT および ALP の上昇もみられたため,他剤に
切換えて軽快をみた.他の 5 例中 2 例はペニシリ ン系およびセフエム系により発熱をみたが,その 発現時には肺炎はすでに軽快しており,他剤に切 換えて消失した.その他の 3 例は,ペニシリン系,
セフエム系,カルバペネム系それぞれ 1 例づつに 軽度の肝機能障害 (GOT, GPT いずれも 100 以下)
および腎障害(BUN 61.9, クレアチニン 1.27 まで)
をみたもので,治癒に至るまで抗菌薬はそのまま 投与された.投与症例からの比率でみると,ペニ シリン系で発現率がやや高かった.
c)無効例の検討
重症例においても
β-ラクタム薬でかなりの効果が得られたのに,4 例の無効例があった(うち 1 例は死亡)ので,その理由について検討を行っ た.
その一覧を Table 4 に示した.No 5 は基礎に脳 梗塞と心不全の合併があって肺炎を発症したもの で,陰影の拡がりはスコア 4
2),高齢に拘わらず白 血球数 10,400, 好中球は 81.9% を占め,最初から カルバペネム系(チエナム)が用いられた.投与 開始後 5 日目に緑膿菌が有意に検出され,投与開 始後 14 日目には陰影はやや改善傾向にあったが,
白血球数,CRP 共に変化なく,緑膿菌はやや減少,
胸水の貯留があらわれ,投与 17 日目に死亡した.
心不全をはじめとする基礎疾患の存在と緑膿菌の
関与が死因に連がったのであろう.No 78 および
No 108 は共に基礎にパーキンソン病や陳旧性肺
結核(No 78)ないしは脳梗塞と痴呆,心不全(No
108)が存在していたもので,No 78 では陰影の拡
がりはスコア 7,白血球数 15,000 (好中球 87.3%) ,
Table 4 Background and prognosis of ineffectively treated cases
Prognosis Side effect
Treatment Isolated
organisms Risk factors
Severity Age, Sex
Pt. No.
died nothing
thienam P. aeruginosa
cerebral infarct heart failure severe
87,♂
No. 5
survived liver damage
thienam P. aeruginosa
MRSA Parkinson s
disease severe
69,♂
No. 78
survived fever
Pansporin not identified
hypertension severe
82,♂
No. 95
survived renal damage
Pentocillin not identified
cerebral infarct dementia heart failure severe
98,♀
No. 108
CRP 18.6 と高値であったため,カルバペネム(チ エナム)の投与と共にステロイドを一時使用した が,陰影や検査値の改善はなく,投与 2 週間後よ り 緑 膿 菌 と MRSA が 検 出 さ れ,ま た GOT や GPT,ALP の上昇もみとめられたので,ST 合剤に 変更したところ,約 2 カ月後に徐々に陰影や諸検 査値の改善をみた.No 108 は肺炎発症時陰影のス コアは 8, 白血球数は 8,900(好中球 69.4%),CRP 5.9 で,発熱も 37.3℃ であった.ペニシリンの投与 を行ったが,陰影は改善せず,投与 1 カ月後不変 のまま家族の希望もあって退院させた.低蛋白血 症(6.0g
!dl)もあり,98 歳と高齢であったことな どの全身的な要因が治療経過に影響を及ぼしたも のと考えられた.これに対し No 95 は,基礎に高 血圧があったがコントロールは良好,病因菌は不 明で,陰影の拡がりはスコア 5,白血球数 7,800 (好 中 球 74.4%)と ほ ぼ 正 常,CRP 14.3, 体 温 37.6℃
で,セフエム系の投与を行ったが,陰影の著明な 改善はみられず,8 日目から薬剤によると思われ る発熱がみられたので,カルバペネム系に変更し たところ,発病後 3 週間目には陰影は消失し, CRP も正常化した.
これらのことから,1 例は無効の理由がはっき りしなかったが,セフエム系よりカルバペネム系 の変更により改善をみた.他の 3 例は,いずれも 基礎疾患や合併症,年齢などが治療効果に影響を 与え, 緑膿菌や MRSA などへの菌交代がこれに拍 車をかけたものと考えられた.
考 察
肺炎の治療に当たって,どのような施設でも一 定の指針に基づいて標準的な方策をとることがで
きれば理想的である.すでに欧米各国では,1993 年イギリス,カナダ,アメリカなどで市中肺炎に 関するガイドラインが発表され,とくにアメリカ 胸部学会(ATS)のガイドラインは本邦でもよく 知 ら れ て い た.1998 年 ア メ リ カ 感 染 症 学 会
(IDSA)ではこれに改定を加えて,胸部レントゲ ン写真を必要とし,喀痰グラム染色を要望し,群 別を点数制で振り分けるなどの新しい方式をとり 入れたガイドラインが発表された
3)4).日本におい ては,呼吸器学会で肺炎治療についてのガイドラ イン作成についての要望が強く,その委員会が設 立されて 2000 年にこのガイドラインが発表され た
1).なおこのガイドラインは 3 年後に改訂する ことが計画されている.
今回当院における過去 3 年間に経過した入院の 市中肺炎患者の治療成績をまとめるに当たって,
このガイドラインに則とって集計を行った.
1)重症度分類:従来に比べ, 重症度の分類方法 が明らかとなったため,この基準に合わせて重症 度の判定が極めて容易となった.身体所見は殆ん ど確認されているし,検査も行われているので問 題 な い が(軽 症 例 で は PaO
2が 測 定 さ れ て い な かったものもかなりあったが) , 入院患者であった ので一率に 65 歳以上は重症度を一段階重く判定 した.この背景には総合的にできる限り高い重症 度を採用しようとの意が含まれている
5).
また今回の成績では,無効例がいずれも重症例 にみられたことも,その重症度分類の重要性を裏 付けるものと考えられた.
2)原因微生物の把握:ガイドラインでの細菌
性肺炎と非定型肺炎との鑑別は極めて参考になる
もので,臨床上では通常これらのことを考慮にい れて治療が行われている.今回の集計でも,その ような非定型肺炎を疑ってテトラサイクリン系抗 菌薬の投与が行われていたものがあったが,その うち血清学的に確認できなかったものはこの集計 に含めた(確認されたものは除外) .
ガイドラインの中には,市中肺炎と院内肺炎と に分けて,その原因微生物が示されている.外国 においてはその検査法が精密なこともあってかな りの頻度に病因菌が把握され,またレジオネラを はじめとする非定型肺炎の割合が多くを占めてい る
6)〜8).抗菌薬の使用頻度や耐性の傾向も考えて,
わが国における市中肺炎の病因菌把握の成績を参 考にすると
9)〜11),非定型肺炎の病因菌を除くと,
やはりグラム陽性菌の占める割合が多かったが,
しかしグラム陰性菌もヘモフィリスを含めると 17.8〜43.4% の割合を示した.私達の今回の集計 では数少ない症例であったが,軽症であればグラ ム陽性菌の割合が多く,重症になるにつれてグラ ム陰性菌が増えていく傾向がみられた.今回,分 離率がわが国における他の報告の 45.8〜61% に 比し,24.2% と低かったのは,検体を直接外部に依 頼していることにも一因があると考えられた.今 後 は Infectious Diseases Society of America
(IDSA) が推賞するように
3),喀痰のグラム染色に よって,迅速かつ簡便に,病因菌の把握に努力す べきと考えられた.
なおガイドラインによって,病原によって非定 型肺炎の項目を別に定めたことは,治療方針の決 定を含めて有用と考えられる点であった.
3)抗 菌 薬 の 効 果:ガ イ ド ラ イ ン に お け る フ ローチャートに沿った抗菌薬の選択は,その地域 における薬剤感受性の動向や患者の状態によって 主治医に委ねられている
12).
従って当病院の状況を先ず考えてみる必要があ る.当院は人口約 8,500 人の小さな町に設立され ている周囲 5 町での中心的な総合病院で,ベツド 数 120 床 (他に老健施設 100 床) , 内科のほか外科,
整形外科,皮膚科などを標傍している.周囲の実 地医家や病院とも親密に連携していることから,
とくに肺炎を発症した患者は比較的初期に紹介ま
たは転院してくる症例が多い.このような事情か ら,その empiric therapy としては,とくに重症で ない限り,入院患者には多くはペニシリン系やセ フエム系を用い(軽症では経口薬で外来治療を行 うことも多い) , 高齢者や病態や検査値で予後が心 配されるとこれにクリンダマイシンを併用した り,カルバペネム系で治療を行う方針をとつてい る.その retrospective な治療成績を最近 3 年間に まとめたものが,すでに示した Fig. 2 である.
無効例は 99 例中 4 例のみで,その 96.0% に有 効であったことは,すでに述べたような病院や患 者の背景および把握された検出菌の種類にみられ るように,高齢の患者が多かったにも拘わらず,
比較的難治化の要因を含んだ患者が少なかったも のと思われた.各病院の実情に応じた抗菌薬の使 用も有用であることを裏付けているものと考えら れた.今後なお分離菌の薬剤感受性を注意深く観 察しながら,治療方針を立てる必要があると思っ ている.
4)効果判定の基準:治療効果の判定は通常 7 日後をめどに行われるが,今回は重症例もかなり 存在したため, このような症例では 10〜14 日後を 限度として,効果を判定した.
効果判定の基準として,ガイドラインでは,前 値に比べて,
!体温の 37℃ 以下への低下,
"胸部 レントゲン陰影の明らかな改善,#白血球数の正
Fig . 3 Evaluation of factors for clinical efficacyamong successfully treated cases.
Evaluation of four factos indicated that white cell count is considered to be a valid factor in only 65%
of total cases.
常値への復帰,
!CRP 値の 30% 以下への低下,
の 4 項目中 3 項目以上を満たして,残りの項目も 増悪を認めない場合に「有効」の判定を行うこと となっている.このような明らかな効果判定の基 準をガイドラインによって定めたことは,夫々条 件が異なる各症例の抗菌薬に対する反応性を画一 的に判定できる点で,大きな利点と考えられた.
しかし,高齢者における肺炎では臨床症状が顕著 に現れることが少なく 熱のない肺炎 と表現さ れることもあり,検査でも炎症所見に乏しいこと が知られている
13)14).そこで今回有効と判定され た 95 例のうちで, 上記 4 項目のうちで判定に有用 であった割合を算出してみた (Fig. 3) .判定に最も 有用であったのは胸部レントゲン像(97.9%)で,
次いで CRP がよく反応を示し(93.7%) ,体温は 種々の因子に影響されるためかこれらにやや劣り
(90.5%) ,白血球数はたとえ細菌性と考えられる ものでも老人では上昇しないこともあって,最も 判定の参考になることが少なく(65.3%),とくに 軽症や中等症でこの傾向がみられた.これらのこ とは,細菌性肺炎の抗菌薬の効果判定に際して,
とくに老人の占める割合が多い場合には,たとえ 市中肺炎であっても十分念頭におくべき事項と思 われた.
5)無 効 例 の 検 討:投 与 し た 抗 菌 薬 が 無 効 で あった 4 例について,一応投与薬剤は適応内菌種 と考えられたので,1)細菌側の要因,2)宿主側 の要因,3)薬剤側の要因,4)効果判定時期の問 題,の 4 つについて,治療の妥当性を検討した.
幸い今回は 99 例中無効例は 4 例しかなかった が,これらについて検討を加えてみた.細菌側の 要因として投与薬剤が菌の抑制に作用していな かったもの(菌種は不明であったが,抗菌薬の変 更によって効果を認めたもの)が 2 例,宿主側に 要因があったものが 2 例,と考えられた.渡らも 30 日以内の予後に対する影響因子として,肝硬変 の存在,拡張期血圧の低下,低酸素血症の 3 つが 重要であったとしている
15).
なお死亡例は 1 例(1.0%)のみで,従来の 報 告
15)〜17)の 5.2%〜8.1% に比べて低かったのは,前 述したように新鮮な肺炎例が多かったことに起因
するものと思われた.
文 献
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口恵三,渡辺 彰,他:成人市中肺炎診療の基本
的考え方,日本呼吸器学会,東京 2000.
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Assessing the Efficacy of Antimicrobial Agents Based on the Japanese Respiratory Society Guidelines for a Community-Acquired Pneumonia
Eisuke SASAKI, Hideyuki KAIDA, Koichi IZUMIKAWA, Tomoichiro HAYAKAWA, Kinichi IZUMIKAWA & Kohei HARA
Izumikawa Hospital