EUにおける雇用平等立法の展開 : 二〇〇〇/四三指 令、二〇〇〇/七八指令、および、一九七六/二〇七 指令改正案の紹介を中心として
著者 川口 美貴
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 6
号 3‑4
ページ 689‑714
発行年 2002‑03‑15
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00008712
研究ノート
は じ め に 欧 州 連 合 口︵C
●¨o 日国 Bo 8
︶ を 構 成 す る 欧 州 共 同 体 o︵o 日︱ 日 口 諄 0 c日 8
■ 8
●e の法 であ る 共 同 体 法
︵E C 法
︶ 8貧 8日 日●
● 言 中﹃e で は︑ 雇 用 に お け る差 別 禁 止 と平 等 取 扱 原 則 に関 す る法 規 制 は︑ 大 別 二 つの カ テゴ リ ー に分 類 され る︒ つ一 め の カ テゴ リ ー は︑ 労働 者 の人 的 理 由 に よ る差 別 的 取扱 禁 止 に関 す る法 規 制 あで る︒ 第 一に
︑ 共 同 体 法 に お け る労 働 者 の人 的 理由 よに る差 別 的 取 扱 い の禁 止 は︑ 従 来
︑ 専 ら
︑ 性 差 別 の禁 止 と 男 女 労 働 者 平の 等取 扱 E U おに け る雇 用 平 等 立 法 の展 開
E U に お け る 雇 用 平 等 立 法 の展 開
︱ 二
〇
〇
〇
/ 四 三 指 令
︑ 二
〇
〇
〇
/ 七 八 指 令
︑ お よ び︑ 一九 七 六
/ 二〇 七 指 令 改 正 案 の紹 介 を 中 心 と し て
口 美 貴
原 則 に関 す るも の であ たっ
︒ す な わ ち︑ 一九 五七 年 二 月 二 五 日 の 欧 州共 同体 設 立 条 約
︵ロ ー マ条 約
︶ 一 一九 条
︵現 一四 一条
§ 1︶ は
︑ 男 女 労 働 者 の同 一労 働
●︵c 日o 日Φ 一圏
︐く じ ま た 同は 一価 値 労 働
●︵c ミ寸 臥︼
日0 日o S 8一 じ に対 す る報 酬 の平 等 原 則 を 規 定 し
︑ これ を 具体 化 す るも のと し て︑ 一九 七 五 年 二月 一〇 日 の男 女 労 働 者 の報 酬 の平 等 原 則 に関 す る指 令 七 五
/ 一 一七 事︵ ド 制 定 さ れ た︒ ま た︑ 差 別 的 取 扱 禁 止 の対 象 は︑ 報 酬 のみ なら ず
︑ 一九 七 六 年 月二 九 日 の採 用
︑ 教 育
︑ 昇 進
・昇 格
︑ 労 働 条 件 に関 す る指 令 七六
/ 二〇 七新︵
ざ よ り雇 用
・労 働 条 件 全 般 に拡 大 さ れ︑ ま た︑ 一九 七 八年 一二 月 一九 日 の社 会 保 障 度制 にお け る平 等 取 扱 原 六 八 九
法 政 研究 六 巻 三
・四 号 公 一〇
〇 二年
︶ 則 の漸 進 的適 用 に関 す る指 令 七 九/ 七顎︵
ぎ よび 一九 八 六 年 七 月 二 四 日 の社 会 保 障 の職 業 制 度 にお け る 男 女 の平 等 取 扱 原 則 に関 す る 指 令 八 六
/ 三七 た罰 ざ よ り社 会 保 障 制 度 に も拡 大 さ れ て いる
︒ そ し て︑ 一九 九 七 年 一二 月 五 日 の性 に基 づ く 証拠 提 出 責 任 に関 す る 指 令 九 七
/ 八
〇事︵ ぼ よ りヽ 間 接 差 別 を 含 め た性 に基 づ く い さっ い の差 別 の禁 止
︑ 間 接 差 別 の定 義
︑ 証拠 提 出 責 任 の転 換 等 に関 す る 規定 が お か れ︑ そ の後
︑ 二〇
〇
〇 年 六 月 七 日 に は︑ 一九 七 六 年 二 月 九 日 の採 用︑ 教 育
︑ 昇 進
・昇 格
︑ 労 働 条 件 に関 す る指 令七 六
/
︵6
︶
二
〇七 号 を 改 正 す る指 令 案 が 提 示 さ れ て いる
︒ し か し な が ら︑ 第 二 に︑ 一九 九 七 年 一〇 月 二 日 の ア ム ス テ ルダ ム条 約 に よ り欧 州 共 同 体 設 立 条 約
︵ロ ー マ条 約
︶ が改 正 さ れ︑ 新 一二
が雑
︑ 従 来 か ら 欧 州 共 同 体 の立 法 権 限 が認 め ら れ て い た︑ 国 籍 差 別 の禁 止
︵旧 六 条
・現 一二 条
︶︑ お よ び
︑ 性 差 別 の禁 止
︵旧 一 一九 条
・現 一四 一条
︶ に加 え て︑ 宗 教 も しく 信は 条
︑ 障 害
︑ 年 齢 ま た 性は 的 指 向 を 理 由 と す る差 別 の禁 止 に関 す る立 法 権 限 を 欧 州 共 同 体 に付 与 し た こと を 契 機 と し て︑ 近 年︑ 性 別 以 外 の これ ら の事 由 に基 づ く 差 別 的 取 扱 いを 禁 止 す る法 規制 が 展 開 さ れ てい る︒ す な わ ち
︑ 二〇
〇
〇 年 六 月 二 九 日 の人 種
・民 族 と 平 等 取 扱 原 則 に
︵8
︶
関 す る指 令 二
〇
〇
〇
/ 四 三 号 は︑ 人 種 ま た は 民 族 に基 づ く直 接 差
六 九
〇 別 お よ び 間 接 差 別 の禁 止
︑ 直 接 差 別 お よ び 間接 差 別 の定 義
︑ 証 拠 提 出 責 任 の転 換 等 を 規 定 し て いる
︒ ま た︑ 二〇
〇〇 年 一 一月 二七 日 の雇 用 と労 働 にお け る平 等 取 扱 い のた め の 一般 枠組 み の創 設 に 関 す る 指 令 二
〇
〇
〇
/ 七 た顎 ぼ
︑ 宗 教 も し く は 信条
︑ 障 害
︑ 年 齢 ま た は性 的 指 向 に基 づ く直 接 お よび 間 接 差 別 の禁 止
︑ 直
︵ 接 嵯﹁
お よび 間 接 差 別 の定 義
︑ 証 拠 提 出 責 任 の転 換 等 を 規定 し て い る︒ 他 方
︑ 二 つめ の カ テゴ リ ー は︑ 一雇用 形 態 に基 づ く差 別 的 取 扱 禁 上 に関 す る法 規 制 であ る︒ 共 同 体 法 に お い ては 第︑ 一に
︑ パ ー ト
︶ 日 い け 回
︼ れ 一い 庫 r 申
﹁
﹁
一 ィ
一 剌け ぃ制 協 神 嘲 二. み
乳 離
︶ パ ー ト タ イ ム労 働 であ る こと の みを 理 由 とす る労 働 条 件 にお け る 差 別 的 取 扱 い の禁 止 を 規 定 し て いる
︒ ま た︑ 第 二 に︑ 期 間 の定 め のあ る労 働 契 約 によ り雇 用 さ れ て い る労 働 者 に つい ても
︑ 期 間 の 定 め のあ る労 働 に関 す る 枠 組 み協 定 を共 同体 法 化 す る 一九 九 九 年 の六 月 二 八 日 の指 令 九 九
/ 七
〇詢︵ ド
︑ 期 間 の定 め のあ る労 働 であ る こと の みを 理由 と す る労 働 条 件 にお け る差 別 的 取扱 い の禁 止 を 規 定 し て るい
︒ 以上 のよ う に︑ 共 同 体 法 は︑ 雇 用 に おけ る平 等取 扱 原 則 の適 用 と し て︑ 0 労 働 者 の人 的 理 由 に つい ては ハ① 性 別︑
② 人 種
・民 族︑
③ 宗 教 も し く は信 条
︑ 障 害
︑ 年 齢
︑ ま た は︑ 性 的 指 向 に基 づ く 差 別 的 取 扱 い に つき
︑ 直 接 差 別 のみ な ら ず 間 接 差 別 に つい ても これ を 規 制 し 他︑ 方
︑
② 雇 用 形態 に つい ても
︑
① パ ー ト タ イ ム労 働
︑ お よ び
︑
② 期 間 の定 め のあ る 労 働 に つき 差︑ 別的 取扱 いを 規 制 し て い るが
︑ 特 に近 年 動の き と し て注 目 さ れ る のは ︑ 一九 九 九 年 の 一〇 月 二 日 の欧 州 共 同 体 設 立 条 約 の改 正 と新 三一 条 の創 設 後
︑ 労 働 者 の人 的 理由 に基 づ く差 別 的 取 扱 い禁 止 の領 域 にお い て︑ 第 一 に︑
① 二
〇
〇
〇 年 六 月 二九 日 の人 種
・民 族 と 平 等 取 扱 原 則 に関 す る 指 令 二
〇
〇
〇
/ 四三 号︑ お よび
︑
② 二〇
〇
〇年 一 月一 二 七 日 の 用一雇 と 労 働 にお け る平 等取 扱 い の ため の 一般 枠 組 み の創 設 に関 す る指 令 二〇
〇〇
/ 七 八 号 よに り
︑ 性 別 以 外 の事 由 に つい ても
︑ 一雇 用 にお け る差 別 的 取扱 いが 禁止 さ れ た こと
︑ 第 二 に︑ それ に伴 い︑ 性 に基 づ く 差 別 的 取 扱 い の禁 上 を 強 化
・拡 充 し 性︑ 以外 の人 的 理 由 基に づ く 差 別 的 取扱 禁 止 法 制 と の整 合 性 を図 る た め︑ 二
〇
〇
〇 年 六 月 七 日 に︑ 一九 七 六 年 月二 九 日 の採 用︑ 教 育
︑ 昇 進
・昇 格
︑ 労 働 条 件 に関 す る指 令 七 六
/ 二
〇七 号 を 改 正 す る指 令 案 が 提 案 さ れ て い る こと あで る︒ そ こ で︑ 以下 にお い ては
︑ 共 同 体 法 の雇 用平 等 法 制 にお け る︑ 労 働 者 の人 的 理 由 よに る 差別 的 取 扱 禁 止 立 法 の近 年 の展 開 に つい E U にお け る雇 用平 等 立 法 の展 開
て︑ 二 つの 新 指 令 と 指 令 改 正 案 を 中 心 に︑
① 性 以 外 の人 的 理由 に 基 づ く 差 別 的 取 扱 い の禁 止 と 平 等 取 扱 原 則 に関 す る法 制規
︵一
︶︑
お よ び︑ 性 を 理 由 と す る差 別的 取 扱 い禁 止 と平 等 取 扱 原則 に関 す る法 規 制
︵二
︶︑
の順 に検 討 す る こと にし た咄︵
″ 一
性 以 外 の人 的 理由 に基 づ く差 別 的 取扱 禁 止 と 平 等 取 扱 原 則 性 以 外 の人 的 理由 に つい て は︑ 前 述 のよ う に︑ 第 一に
︑ 人 種
・ 民 族を 理 由 と す る差 別的 取 扱 い の禁 止 と平 等 取扱 原 則 に つい ては
︑ 二〇
〇
〇 年 六 月 二九 日 の人 種
・民 族 と 平 等取 扱 原 則 に関 す る指 令 二〇
〇
〇/ 四 三 号
︵以 下
︑
﹁指 令 二〇
〇
〇
/ 四三 し号 が 第︑ 二 に︑ 宗 教 も し く は信 条
︑ 年 齢
︑ 障 害
︑ 性 的 指 向 を 理 由 と す る差 別 的 取 扱 い の禁 止 と 平 等 取 扱 原 則 に つい ては
︑ 二〇
〇
〇 年 一 一月 二七 日 の雇 用 と労 働 にお け る平 等 取 扱 い のた め の 一般 枠 組 み の創 設 に関 す 指る 令 二〇
〇
〇
/ 七 八 号
︵以 下
︑ 指﹁ 令 二〇
〇
〇
/ 七 八 号し が これ を 規 定 し て いる
︒ そ こ で以 下 にお い ては
︑ 順 に︑ 人 種 民o 族
︵こ 宗︑ 教 も し く は信 条
︑ 年 齢
︑ 障 害
︑ 性的 指 向
︵二
︶ を 理 由 と す る差 別 的 取 扱 の禁 止 と 平 等 取 扱 原 則 に関 す る︑ 指 令 二〇
〇
〇/ 六九 一
法 政 研 究 六 巻 三
・四 号 公 一〇
〇 二年
︶ 四 三 号
︑ お よび
︑ 指令 二
〇
〇
〇
/ 七 八 号 の規 定 を 概観 す る︒ 1
人 種
・民 族
︵指 令 二〇
〇 0
/ 四 三 号
︶
︵1︶ 平 等 取 扱 原 則 と 差 別 の概 念 指 令 二
〇
〇
〇
/ 四 三号 は︑ 構 成 国 にお け る平 等 取 扱 原 則 の適 用 のた め に︑ 人 種
︵8 oし ま た は 民 族
︵9
¨咀 Φ手 目¨ρ 鷹
︶ を 理 由 と す る雇 用
・労 働 にお け る差 別 に対 し て闘 う ため の枠 組 みを 設 定 す る こと を 目 的 と す るも の であ る
︵第 一条
︶ ︒ こ こ に いう
︑
﹁平等 取扱 原 則
﹃︵●
o中¨●
罵 O一 F L¨8 o一
■L け?
日8 けと と は︑ 人 種 ま た は民 族 に基 づ く い さっ い の直 接 差 別 ま た は 間 接 差 別 が な い こと を 意 味 す る と規 定 さ れ て いる
︵第 二 条第 一 パ ラグ ラ フ︶ ︒ こ の規 定 に関 わ り︑ 指令 二
〇
〇
〇
/ 四 三 号 は︑
①
﹁直 接 差 別
﹂ の概 念
︑ お よ び
︑
②
﹁間 接 差 別
﹂ の概 念 を 定 義 し︑ また 差︑ 別 の 形 態 と し て︑
①
﹁ハ ラ スメ ント
︵い や が ら せと
︑ お よび
︑
②
﹁差 別 を 行 う よ う 他 人 に命 じ る行 為
﹂ も差 別 の 一形 態 であ る こと を 明 記 し て いる
︒
六 九 二
︵a
︶ 差 別 の概 念 ま ず︑
﹁直 接 差 別
︵ 目Φ
︼︒O oo■
日 B o¨
●
﹃2 oo一 oと と は︑ あ る 人 が︑ 人 種 ま た は 民族 を 理 由 と し て︑ 比 較 し う る状 況 分¨ ご ユ中 o● 8日
●ミ pσ一し にあ る他 の人 が 取 り扱 われ て い る︑ 取 り扱 わ れ た︑ ま た は取 り扱 わ れ る であ ろ う よ り も 不利 益 に取 り扱 わ れ る こと を いう ︵ 筆一 条鎮 一一パ ラグ
′ラ フ a︶︒
こ れ に対 し て
﹁間 接 差 別
︵ B ヽ¨り oL日 詳中o す0 oo中﹃
↑Φご と は︑ 規定 基︑ 準
︑ ま た は︑ 慣行 が︑ 外 形 的 に は中 立 的 であ るが
︑ あ る人 種 ま た は 民 族 に属 す る人 に他 の人 に比 較 し て特 に不 利 益 を 与 え る こと を いう
︒ た だ し︑ そ の規 定
︑ 基 準
︑ また は︑ 慣 行 が︑ 正 当 な目 的 によ り客 観 的 に正 当 化 さ れ︑ そ の目 的 を 実 現 す る手 段 が適 切 か つ必 要 であ る場 合 は こ の限 り で はな い
︵第 二 条第 ニ パ ラ グ ラ フb
︶︒
︵b︶ 差 別 の形 態 ハラ ス メ ント
︵い や が ら せ︶ キ→ ooF 日Φ詳
︶ は︑ ハ 種 ま た は