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家族政策,社会教育,家族問題 ―父親講座に関する一考察

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長崎大学教育学部教育科学研究報告 第35号 89〜99(1988) 89

家族政策,社会教育,家族問題

―父親講座に関する一考察

三 島(植木)とみ子

Family Politics, Social Education and Family Problems

― A brief report on Education for Fatherhood ― Tomiko UEKI MISHIMA はじめに

 社会教育が,生涯教育政策とあいまって,市民生活における重要な位置を占めるように なった現在,社会教育行政の公的性格と,そもそも社会教育の目指している学習者の自己 形成という問題は,ますます真剣に検討されなければならない緊要課題となっている1)。政 府の諸政策は,文部行政に具現化され,社会教育行政に下ろされてくるという構造の中で,

真の人間解放を求めて社会教育に携わる者たちは,深刻なジレンマに陥っているというの が,実情であろう。      ,

 家族問題に焦点を絞ってみよう。我々は昭和59年から61年にかけて九州大学教授,有地 亨を中心として,文部省科学研究費の補助を受け,現代の家族機能の障害に関する総合的 な調査研究を実施した。ここでは家族機能の低下は家族間のコミュニケーションの欠如に 由来するものであること,良好な親子関係の基礎は良好な夫婦関係であること,良好な夫 婦関係は夫婦の会話を通して相互理解を深めることから創りだされるものであること,現 在の夫婦間の円滑なコミュニケーションを困難にしているのは,「夫は仕事,妻は家庭」と いった高度経済成長期にとくに強化された固定的な男女の役割分担の考え方であること,

などの諸点が明らかにされている2)。

 さて,これら家族機能の低下,とくに青少年の健全育成が疎外されているという事実に 関しては,教育界のみならず財界においてもっとに憂えるところになっている。それは,

これまで男性に企業戦士としての役割をのみ期待し,ある意味では家庭を置き去りにして きた企業自身が,家庭の諸問題の影響を直接に被るような昨今の事態に立ち至って,これ までの方針を転換しなければならなくなったからである。経済同友会は昭和58年7月に,

「生涯教育の観点からみた企業内教育の新方向」という報告書を発表したが,ここではこ れまでのマン・パワー政策を反省し,「家父長となるための教育」を企業内教育の中に取り 入れることを提案している。これに呼応して,社会教育所轄官庁では,「おやじ講座」なる

ものを出前方式で実施する所が,徐々に現れてきている。

 しかし,注意するべきなのは,企業自身はこのことによりこれまでの男女の役割分担の 考え方を排除しようとするものではなく,その基本的な方向はすでに「ライフ・サイクル 計画」「日本型福祉社会構想」「田園都市国家構想」などといった,一連の政府の家族政策

長崎大学教育学部家庭科教室

(2)

90 三 島(植木)とみ子

に実現されている「安上がり福祉政策」3),つまり,子どもの保育と老人の介護iは基本的に 家庭=女性の責任であるとの考え方を改めているわけでは決してないということである。

あくまでも,この「夫は仕事,妻は家庭」の枠組みの中で,父親の権威を保たせるために

「家父長」などという,家制度的,時代錯誤的な言葉を持ち出し,現代の諸問題に何とか 対処しようとしたに過ぎないと考えられる。

 そこで,本稿では,以上のような流れに位置する社会教育「おやじ講座」が,現代の家 族の諸問題に対処するのに,はたして有効な影響力を持ち得ているのかどうかを検討する ことにより,冒頭に述べた社会教育の公的性格と学習者の自己形成という矛盾関係を考え ていく手掛かりとしたい。

「父親と子ども」に関するアンケート調査から  1)調査の内容,調査対象者

調査内容は対象者に負担を感じなくて回答してもらえるよう,10項目だけの簡単なもの にした。性別,年齢,子どもの年齢,家庭が共働きか否か,子育ては協力しているか,子 どものことに関して夫婦でよく話し合うか,子どもとよく話をしているか,一週間のうち 子どもと共にする夕食は何回位あるか,男女の性別役割分担の考え方についてはどう思う かに関して,選択回答式にし,最後に子どもが父親に対してどんな不満を持っていると思 われるかだけを,記述式とした。調査実施時期は,昭和62年6〜7月である。

 調査対象者は,福岡市の社会教育課が実施している「おやじ講座」の受講者である。福 岡市ではこの講座は,大企業よりむしろさまざまな研修の機会が少ないと思われる中小企 業を中心に考えられており,調査期間中には4回開催された。この中では,経営者的色彩 の強い「青年会議所」グループと,従業員を中心とした3つの企業から成る「その他の企 業」のグループに分けて考察した。

 この「おやじ講座」受講者と比較するために,福岡県県庁職員,大手企業として九州の 都市銀行のなかでも中堅クラスに位置し,銀行独自の企業内教育の体系を有している九州 相互銀行,さらに地元のいわゆる中小企業として,全国でも有名な「つるのこ」というお 菓子の製造元である石村万盛堂を中心に,建設会社や印刷会社にもアンケート調査を依頼 した。中小企業は「その他の企業の勤労者」としてまとめて考察の対象としている。これ らは,いずれも「おやじ講座」の未受講者であり,親子関係や家族関係に関してかつて特 別に学習したという経験がないグループと考えてよいだろう。

 さらに,これまで社会教育の分野でこのような家族の問題を学習してきたのは圧倒的に 女性の側であった。そこで,学習された成果は妻から夫にどのように伝わっているかとい うことを見るために,公民館での女性の学習グループに依頼して,その夫たちにもアンケー

トの回答を依頼した。このようにして合計487の回答を得ることができたが,ここでは男性 の回答で子どものあるケースの427に関して分析を試みることにする。なお,調査票および 単純集計の結果は,次郎に掲載している。

 2)子どもの不満の認知度について

子どもを教育するためには,まず子どもを知らなければならない。そこで,調査対象者 に自分の子どもが自分に対して,今回を求めているのか知っているかどうかを考えても

(3)

家族政策,社会教育,家族問題 91

1.

2.

3.

4.

  ・共働きである 109     ・共働きでない 312 5.家庭における子育てはどうですか

  ・夫婦で協力している 276    ・自分がきちんとしている   ・母親(父親)まかせである 139

6.子どものことを夫婦でよく話し合いますか   ・よくしている 259  ・時々しかしない 148

7.家庭で子どもと話をしていますか

  ・よくしている 213  ・時々しかしない 193 8.子どもと夕食を食べるのは

  ・毎日 35  ・週に4〜5回 96  ・週に1〜2回 251 9.「男は仕事,女は家庭」という考え方をどう思われますか   ・同感する 121  ・まあ同感する 198

10.

 の立場に立って書いてください。いくつでも構いません。

  ・何らかの記述があったもの 258

  ・その中で,内容に関する記述 85,  3個以上記述 33 所属 おやじ講座受講者(青年会議所) 69,

   福岡県庁職員 93, 九州相互銀行行員 64,

   公民館で婦人問題を学習している妻を持つ夫たち 32

         「父と子ども」に関するアンケート

      (該当するものを○で囲んでください。)

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男 463 女 24    *以下男で子ども有りの427件を対象として分析 あなたの年齢

・〜Q9歳 32  ・30〜39歳 229  ・40〜49歳 121  ・50歳以上 45 あなたの子どもは

・未就学 101       ・保育園,幼稚園 113 ・小学生(1〜3年生) 141

・小学生(4〜6年生) 129 ・中学生 97      ・高校以上 94 あなたの家庭は

10

・ほとんどしない 16

・ほとんどしない 13

・ほとんどない 42       ・あまり同感しない 85  ・同感しない 21 あなたの子どもがあなたに対して不満に感じているだろうと思われることを,あなたが子ども

おやじ講座受講者(その他の企業)47,

   その他の企業の勤労者 122,

らった。この問いかけに対して何らかの記述があったのは,427名中,258名である。

 記述中で圧倒的に多いのは,「父親の帰宅時間が遅い」「一緒に食事をすることが少ない」

「会話がない」「遊んでくれない」といった父子の接触がないことに関する,外見的な事柄 であった。しかし,このように外見的な事柄にしか思いが及ばないというのは,子どもに 関心は持たなければならないと思ってはいるけれども,子どもをまだ本当には知らない父 親ではないかと考えられる。一人で3つ以上の記述をしたものも33あったが,これは,と

くにまじめで自己反省が強いか,実際に子どもとの接触時間が極端に少なく問題を感じて いる父親たちではないだろうか。

 さらに,たとえぼ「子どもの気持ちを十分聞きとらず,一方的に親の考え,期待を押し 付ける」とか「クラブ活動がなくて早く帰ってきても,誰もいないので寂しい」「わがまま をゆるさない」「服装や髪型をうるさく注意する」といった具体的な内容に触れたものが85 あったが,ここでは,これを子どもを本当に知っている父親であると捉えた。「家がせまい」

とか「酒を飲んで帰ること」などというのは,外見的なものであるから,このなかには含 んでいない。

 子どもの不満を認知しているかということと,他の調査項目との関連を見たのが,図1であ る。この中で,一週間のうち子どもと一緒に食べる夕食の回数との相関をとった⑤の図を見る

(4)

92 三 島(植木)とみ子

とづ具体的,内容に関する記述は「毎日一緒にたべる」「週に4〜5回」「週に1〜2回」

の順に少なくなっていき,「ほとんどない」ではこの記述はゼロである。反対に,外見的な 記述は食事の回数が少なくなる程,多くなっている。また3つ以上記述した者にも,これ と同じような傾向が見られる。このことにより,夕食の回数と子どもの不満の認知度には 非常に強い相関関係があることが判る。同様に見ると,共働き家庭の方が専業主婦のいる 家庭よりも①,また子育てにおいては母親まかせではなく夫がきちんと協力している方が

②,夫婦の会話は多くある方が③,それぞれ父親は子どもの不満をよく認知しているとい うことが指摘できる。これと比較すると,親子の会話がよくあるとか④,役割分担意識が どうである⑥とかいうことは,子どもの不満の認知度とは,直接の関連はなさそうである。

 3)要因間相互の関連

 つぎに,これら要因問の関連はどうかということを見たのが2〜7までの図である。共 働きという項目は,子育て①,役割分担意識⑤の項目と強い相関関係があり,夫婦の会話

②,親子の会話③とも多少関連がある(図2)。子育てという項目は,共働き①,夫婦の会 話②,親子の会話③,夕食の回数④のいずれとも強い相関関係がある(図3)。夫婦の会話 は,子育て②,親子の会話③と強い関連があり,また,共働き①,夕食の回数④,役割分 担意識⑤とも関連がある(図4)。親子の会話は,子育て②,夫婦の会話③,夕食の回数④

と強い関連を持ち,共働き①ともやや関連がある(図5)。夕食の回数は,子育て②,親子 の会話④と強い関連があり,夫婦の会話③とも関連がある(図6)。役割分担意識は,共働 き①と強い関連を持ち,夫婦の会話③とも関連を持っているが,他の項目との直接の関連 はない(図7)。

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図1 不満認知と他の項目との関連

(5)

家族政策,社会教育,家族問題 93

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図2 共働きか否かと他の項目との関連 図3 子育てと他の項目との関連

(6)

94 三 島(植木) とみ子

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図4 夫婦の会話と他の項目との関連 図5 親子の会話と他の項目との関連

(7)

家族政策,社会教育,家族問題. 95

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図6 夕食の回数と他の項目との関連 図7 役割分担意識と他の項目との関連

(8)

96 三 島(植木)とみ子

 これらを総合すると,図8に示すような相互連関図ができあがる。

 つまり,父親が子どもをよく知るためには,子育てにおいては母親まかせではなく,自 分自身も積極的に関わろうという姿勢がなくてはならないが,これは一方では,毎日の夕 食を家族と共にするといった,実際の行動に裏打ちされてはじめて可能になることであり,

さらにそうすることで,親子の会話,夫婦の会話など一連の家族間のコミュニケーション はより活発になっている。また,他方では,子育てにおける夫婦の協力体制は,専業主婦 のいる役割分担家族におけるよりも,共働き家族においての方がより容易に採られる形態 であるということも判る。そして,こちらのサイクルは,夫婦間の平等な構造とより関係 が深いと考えられる。

 4)「タ食」と「共働き」

 以上のことから,現代の家族問題の多くは基本的には,家族間のコミュニケーションの 欠如から生じているのであり,これはまた「夫は仕事,妻は家庭」といった男女の生活の 範囲の固定化,分断に由来しているのであるという,本文の冒頭に述べたことが,「父親と 子ども」の関係についても,そのままあてはまっていることが判る。つまり,父親が家庭 教育の場において本来の影響力を発揮しようと思うならば,「夫は仕事,妻は家庭」といっ

た伝統的な役割分担の考え方に縛られるのではなく,夫も妻もそれぞれに職業上も家庭生 活上も平等に一人前の役割を果たす,つまり二重役割の家族であることが必要であり,さ らに職業ばかりを優先し,重要視するのではなく,夕食を毎日家族と一緒にできるような,

時間的,精神的なゆとりを持ち,家庭生活を大切にするといった価値観の転換をはからな ければならないのである。しかしこのことを強調すると,とりもなおさず,現代日本の企 業が考えている「家父長の復権」の枠をはみだすことにもなる。

 我々は,大学や公民館で,自発的に学習したいと思って集まって来る一般市民に対して は,このような本質論を提示して,一緒に考えていくことができる。しかし,当の企業と

[]

夫婦の会話 役割分担意識

図8 要因の相互連関図

(9)

家族政策,社会教育,家族問題 97

連携していくためにはどうすれ ばよいのだろうか。現在,福岡 市のみならず多くの自治体で主 催されている「おやじ講座」で は,このような悩みを反映して か,ほとんどがハウ・ツウもの の講義で終わっているというの が実状であろう4)。しかし,これ で真に父親の家庭教育の場での 復権がかなえられるのであろう

か。

 5)調査対象者別考察  そこで,今度は調査対象四月 に,子どもの不満の認知度と,

それと深く関係している「夕食 の回数」および共働きか否かの

「家庭の形態」を見た(図9)。

表1にはそれぞれその正確な パーセンテージと順位を記して いる。夕食の回数は「毎日」と

「4〜5回」を合計して記入し た。これで見ると「夕食の回数」

と「共働き」率の高い「おやじ 講座(その他)」のグループと「県 庁職員」が,やはり「不満の認 知度」も高いことが判る。

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図9

表1 所属別学習の成果に関する順位

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調査対象者の所属別,不満認知度,夕食の回数,共働 き家庭の比率

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おやじ講座(青年会議所) 17.4⑤ 23.2⑤ 19.4④ 7.4④

おやじ講座(その他) 38.3① 51.1① 41.9② 16.4① 県    庁 21.5② 35.5② 44.1① 2.8 銀    行 20.3③ 18.8⑥ 4.7⑥ 14.8②

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(10)

98 三 島(植木)とみ子

 ここで,学習の効果ということを見るために,このような大きな影響力を持っている「夕 食の回数」と「家庭の形態」の,「不満の認知度」に対する影響力を取り除く作業をした。

まず「その他」のグループ,つまり中小企業従事者でこれまで格別家庭教育に関する学習 をしたことがない父親たちを中心としたグループを基準にして,それぞれのグループがも しこのグループと「夕食の回数」「共働き」の率が同じであったと仮定した場合,「不満認 知度」はどれ位になるかを計算した。これは,何も学習をしていない場合にはそうなるで

あろうという理論的な数値であり,これと実際の数値との差を偏差としてdにあげている。

具体的には

   d=a−13.1×(b十。)÷55.7

という計算式になる。これがいわゆる学習の結果,引き上げられた「不満認知度」であろ うと考えた。この結果,学習で最も効果があがったのは「おやじ講座(その他)」のグルー プで,ついで「銀行」「公民館学習者の夫たち」「おやじ講座(青年会議所)」のグループで あった。

若干の考察

 調査対象者のグループ別では,「銀行」は家族問題などに関しては格別学習をしたことの ないグループとして挙げた。この点については銀行側にも確認をとっている。しかし,ど の銀行にも共通して言えることとして,銀行業務はサービス業的な色彩が強く,ほとんど の行員は初めに顧客獲得のための外勤を経験する。さらに最近は,とくに金融事情の流動 化の現象ともあいまって,銀行は生き残りを賭け必至の戦術を駆使している。その中の一 つで,大きな位置を占めているのが,「窓口業務のための話し方の研修」から「得意先研修」

「相談セールス講習会」など,顧客を掴むためのさまざまな研修である。このような研修 は,役付きになっても形を変えて行われ続ける。一方では銀行業務そのものの性格として,

他方ではさまざまな研修を通して,行員は相手の不満を知り,相手の心を掴む訓練を知ら ず知らず積み重ねているはずだと考えられる。これが家庭生活においても,それが実行さ れるかどうかは別として,少なくとも子どもの不満は判るという点では好影響を及ぼして いるのではないだろうか。       .

 「県庁職員」の場合,研修の機会は「銀行」ほど多くはない。研修課という部門はあり,

実際に研修も行われてはいるが,ここでは業務に関する研修が中心である。また,銀行ほ どサービス業的な色彩が強いわけでもない。これらの結果として,まったく学習の機会の ない「その他」のグループと同じような数値に落ち着いているのである。

 「公民館学習者の夫たち」では,学習者本人であるその妻はほとんどが専業主婦である。

そこで,ここで学習される事柄は理論が現実よりも先行しているということになるが,し かし,その場合でもある程度の学習効果はあがり,夫にもその波及効果が及ぼされている

ことが判る。

 さらに,企業連携の出前講座の場合,その講義内容は原理的,運動論的なことではなく,

心理学的なことに終始せざるをえない状況にある。しかし,そのような状況下の「おやじ 講座」であっても,学習の効果は確実に上がっているという事実は重要である。つまりハ

ウ・ツウ教育でも現段階では一定の効果を持っているといえる。

 ただし,ここにおいても「夕食の回数」および「共働き」の率が非常に高い「その他」

(11)

家族政策,社会教育,家族問題 99

のグループにおいて,学習効果が最も高くなっているという事実は見逃せない。つまり,

このことはこの原則を抜きにしては,現代の父親と子どもの関係を根本的には改善するこ とはできないということを示唆しているようである。さらに,これは本稿への自分自身の 批判でもあるが,たとえ子どもの「不満」を認知したところで,そのことがすぐ親子関係 の改善へと進むものではなく,やはり次の段階としてそれを解消する方向に向かなければ ならない。そのためには,どうしても時間的,精神的ゆとりといったものが,職業人であ る父親にも必要となるであろうし,夫婦の緊密な連携プレーも必要となってくる。そのと きに「夕食の回数」と「共働き」の率に表像される,その人個人の生き方自体が問われる ことにもなるだろう。

 しかし,社会教育で学問の役割が重視されるのは,学問を学ぶことによって今まで未知 であった世界が開かれ,それまで見えなかった自分の学ぶべき課題が見えてくるからであ るとの指摘もある5)。「おやじ講座」で子どもの「不満」に目を向けることができるように なった父親たちは,いつの日か「これを解消するにはどうすればよいか」ということにつ いて思いをはせ,真剣に自己の生き方を問い始めないともかぎらない。その意味では,現 段階での企業との連携も,一定程度の成功を納めていると評価してよさそうである。

 「社会教育は政治的な意味をもっていますが,これを表に出せば企業との連携の道は閉ざ されてしまいます。そこで社会教育も受講性を知的に装備することに自らの要求を引き下 げれば,企業内教育との連携で利益を得ることができます」との指摘は6),今日の社会教育 従事者の深刻なジレンマの中で,まさに当を得ているといえるのではないだろうか。

 なお,最後になりましたが,この調査を実施するにあたって,快く協力して下さった福 岡市社会教育課の皆様をはじめ,調査対象となることを引き受けて下さった諸企業の皆様 に,心からお礼を申し上げます。

      (昭和62年10月31日受理)

       注

1)末本 誠「自己形成と社会教育の論理」長浜功編『社会教育と自己形成』明石書店1987年 68頁以

2)第一回「大学と科学」公開シンポジウム組織委員会編『現代社会における法的問題処理 交通災害 および家族問題』第一部 出版科学総合研究所 1987年

3)利谷信義『家族と国家』筑摩書房 1987年 91頁以下

4)鈴木 勲「家父長としての父親像」社会教育 No 476 1986年 3頁 5)末本 誠「前掲論文」76頁

6)斎:藤i健次郎「地域社会と企業」社会教育 No 494 1987年 10頁

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