日本人と外国人の民族関係
一日系ブラジル人ケースを中心にした集住・集団間競争・
剥脱の理論的考察一
浅田秀子
1.
はじめに日本社会は近年日系ブラジル人に代表される外国人労働者の日本への長期滞在化に伴う 新たな局面を迎えている。これはいわゆる外国人労働者問題という枠付けの中議論される ことが多いが、これは外国人の方に何か問題があるといったニュアンスがある。しかし本 当にそうだろうか。日本社会、または私たち日本人の彼らを受け入れるそのやり方に問題 は無かったのだろうか。ここで、外国人に関する研究に際して彼らを最初から「問題」と
して扱う事から脱した研究を目指す事を本研究では前提とする。
しかし、実際にこういった点に留意した研究もないことはないが、一般の人ではどうに もできないようなレベル、例えば経済、政治での日本側の問題点は指摘されてはいるもの の外国人と日頃接している日本人自身がどのように外国人との関係を持っているのか、持 っていないのか、または持とうとしているのかなどといった、日本人がこの現実を日常レ ベルでどのように受け止め接しているかが探求されていないという問題点がある。そして 本研究の日系人と日本人の関係を共生の視点から見た時、日系人側に関する研究だけでは 両者の関係を把握することは到底出来ない。よって、本研究はまず異集団間関係を考察す るにあたり外国人集団を問題視することから離れ、また、彼らと日本人との関係を日本人 側に焦点を当てることによって探索してみたいと思う。
2. 研究の目的
まず本研究の目的は主に2っあり、第一に、未だしっかりとした定義の与えられていな い「共生」について定義をしてみたいと思う。第2に、共生を規定する要因、つまり日本 人と外国人の関係において何が影響を及ぼしているのかを理論的に分析することを目的と する。そうするにあたり、先行事例としてのアメリカにおける白人・黒人研究、また日本 の在日韓国・朝鮮人研究との対比を行いながら、近年急増する日系ブラジル人に焦点をあ て「事実を追う」ことよりも、日本人と外国人の集団間の関係を分析すること、または分 析するための新しい視点を提案することを目的とする。
では、まず日系ブラジル人がどのくらい日本に滞在しているのかを見てみたいと思う。
琴1から4からSわかるように愛知県豊田市における日系ブラジル人の数は全国的に見て もかなり多く、なかでも保見団地においてはかなりの人数が暮らしていることが明らかで ある。愛知県は全国でも一番多くのブラジル人登録者数をもち、1999年の時点で全国総数 から見ると約18%のブラジル人が愛知県に居住している。愛知県内に住む外国人登録者の 出身国別の割合をみると、在日韓国・朝鮮人が38.1%、ブラジル人が32.3%を占めている。
また、愛知県の豊田市におけるブラジル人の数も多く、県内の約11%が豊田市に集中して
いる。さらに1998年を見ると、そのうち約60%が保見団地の県営保見、公団保見ヶ丘、
保見ヶ丘六区の自治区内に集中しているのがわかる。よって、ブラジル人が愛知県、豊田 市、しかも保見団地という限られたスペースに集中して住んでいることは明らかである。
では次に、ブラジル人が多く居住する事と日本人との関係を考察したい。そうする.にあた ってまず共生を定義したいと思う。
3. 共生の定義
本研究における異集団が同じ地域にて共生するということは一つの地域で異なる集団が 異質性を顕在させつつも(民族性顕在)その異質性を排除するかわりにお互いに理解し(相 互理解)、そしてその集団が上下関係でなく平等的に結合する事(平等性)、すなわちどち らの異集団も同じ住民であり、そこには文化的違いは存在してもそれによって優劣はっけ られず、平等な立場から結合する事とする。そして異集団がこれらを共に確立するという 事(共同作業)が前提にある1)。
ここで、在日韓国・朝鮮人研究において指摘されていることに留意したい。それは多文 化志向の存在である。つまり、いくら他者との結合、言いかえると協力関係を築いたとし てもそれがすぐ共生関係の実現とは言い難いと思われる。なぜならその結合・協力志向ま.
たは関係の中に他者に対して同化を暗に求め、その結果としての結合・協力が可能な場合 があるからである。つまり、結合には多文化の意義を認めそれを目指したものと、他者に 同化を望み達成できるものとに分けられるからである(稲月2000al607)。よって、民族 関係の根底に多文化志向がない場合、ただ単に異なる集団が結合のみを目指し、物理的に は共生しているかもしれないが両者の関係が「親しくなる」ことはないのかもしれない。
よって、第5番目の共生のキーワードとして多文化志向を付け加えておきたいと思う。こ こで、共生の定義がなされたので本来ならば共生が存在するかどうかを測定すべきだが、
それは今後の課題としておき、本研究では共生を規定すると考える要因を理論的枠組から 考察してみたい。
4. 共生関係を規定すると考えられる要因 一理論的枠組みから一 1) 外国人の集住の影響
日本人と外国人の共生に影響があると思われる要因の一つは外国人の集住である。これ はさらに2つの要素が考えられ、それらはお互いに関連しているがあえて一っずつ見てい
きたい。
①単純な数の増加・集中
一っ目は外国人の単純な数の増加・集中で、この影響はプラスとマイナスのそれぞれに 働くケースが見られるのでそこに注意してみたい。最初に、数の増加・集中のマイナスの 影響だが、簡単に言うと、異質な民族構成員の数が多いと問題が多いといわれている。例 えば、アメリカにおいてある地域に黒人が増えると白人と黒人の集団間の闘争が増加する ことが明らかにされている。それは、黒人の人口が増加すると、白人の反黒人偏見が高ま
り白人・黒人関係が悪化するというものである(Taylor 1998、木村1993)。この視点から 日系人のケースを見てみると、豊田市の保見団地と豊橋市の岩田団地では、両地域とも全 国的に見ると日系人がかなり集住しているが、両地域の日系人人口の相対比を比較してみ ると差があることが判明した。保見の県営保見では1998年12月の時点で全体の入居戸数 1125戸中498戸にブラジル人が住んでおり、その割合は44%である(表4参照)。
一方、県営岩田では1997年に全体664戸中168戸にブラジル人がすんでおり、割合は 25%である(都築1998b)。つまり、日系人人口の割合から保見団地の方が岩田団地より はるかに日系人が多く集中して住んでいることがわかった。ここで日系人と日本人の関係 を見てみると、一般に保見の方が関係は悪く、岩田の方が良いと報告されている(駒井 1999:36、都築1999、1998b)。これには日系人人口の割合以外にもさまざまな要因が考 えられるが、人口が集中しているというのも見逃せない要因だと思われる2,。
他方、在日韓国・朝鮮人の研究においては、彼らが集中して住む方が日本人との関係に おいて良い効果を持っているという研究報告がされており、それは「集住地効果」と読ば れている(谷・西田・二階堂・西村・稲月2000)。具体的な数字を見ると、大阪生野区に おいて猪飼野と木野の両地域においてなされた調査によると猪飼野の在日人口比率は 44%で木野のそれは21%である(稲月2000b:631)。両地域において日本人住民が持つ民 族関係の意識を見たところ、猪飼野の方が木野より在日または他のアジア系の外国人が隣 近所に住むことに抵抗が少なく、日本人と在日との関係はよくなるという意識傾向が強い という結果が出た。つまり、現実に在日韓国・朝鮮人の人口が多い方が異質性に対する抵 抗が低くなっており共生を阻害するどころか、反対に促進している事が観察されている。
これは次に論じる民族性の顕在のプラスの効果と関連があると思われる。
②民族性顕在
外国人が集住する事のもう一つの影響に先の人口増加・集中と非常に関連している民族 性顕在がある。まず民族性顕在とは簡単に言うとグループの民族性が表れることである。
たとえば、母語のみで生活できたり、エスニック・ビジネスを活用することによって、母 国にいる時のような生活が日本でも出来る事と捉えている(都築1998b)。また、民族性 の顕在にもプラスとマイナスの相反する効果が異なる地域、民族間で見られているのでそ れらを見てみたいと思う。
まずマイナスの影響として、母国の生活習慣を日本でも続ける事が日本人にとって害の あるケースがあり、それゆえ日本人との間に問題がうまれ、関係が悪化すると言われてい る(都築1998a)。例えば、生活上のトラブルとしてゴミ問題、違法駐車問題、騒音問題な どが挙げられる(都築1996)。こういった種類の、特に生活習慣の違いに限定される民族 性顕在を共生阻害要因と解釈するにはいくつかの注意点があるが、簡単に言うと日系人の 民族性は日本人のそれとは違い、つまり異質性が存在する事から問題が生じ共生が困難に なるというのである。いわゆるよく日常会話にも出てくる「文化摩擦」と言われるものと 解釈しても異論はないかと思わる。
また、その反対に異質な民族性が表出する事が相手の理解を促進させ、または、それ自 体に慣れさせるという効果も見られている。先に述べた在日韓国・朝鮮人がより多く住む 地域での日本人との関係に見られるように、民族性の表出はそのプラスの効果も持ち合わ
せているということである。これはあまり外国人研究において認識されておらず、どちら かというと、民族性の表出は共生形成においてマイナスの効果を持っているという説の方 が力を持っているが、実際に、異質性に触れた人の中にはそれへの理解が生まれたり、多 文化の志向が芽生えることも事実だとここで強調しておきたいと思う。
例えば、少し前の日本でもてはやされた「外への国際化」はまさに異文化に触れること、
っまり異民族性に触れ体験することから「国際感覚」を身につけようと莫大な資金3)を使 って、姉妹都市との交換留学制度やホームステイプログラムを実行してきたのはまさに異 民族性に触れようと努力をしていたものである。例えば、豊田市の例を見るとアメリカ合 衆国デトロイト市との姉妹都市派遣学生事業においては1965年から始まり1999年の第 17回には10名をデトロイト市に派遣し、彼らはホームステイを通し異文化を経験してい る(豊田市秘書室国際課1999)。つまり私たち日本人は異民族性が表出するところへ自ら 出向いて異文化体験・理解に努めているのである。すなわち民族性の表出に触れるプラス の効果について私たちはすでに認識があり、実行していたにも関わらずそのマイナス面だ けを日系ブラジル人との議論で強調してきた傾向があるように思われる。実際に豊田市の 実行した意識調査の一部の結果をみると、表5からもわかるように、近年豊田市内に増加 する外国人居住者のもたらす影響を尋ねたところ、「異なる文化・思想に接し、考え方が柔 軟になる」と答えたものは5割以上もいた。また、「国際感覚が身につく」とした者は37.5%
で「多文化混在は地域を魅力的にする」とした者が27.1%を占めた。この結果から、異民 族の存在は豊田市民にある程度肯定的に捉えらえられていると解釈できる。しかし、その 他を除く選択肢5つが全て肯定的なワーディングであることに留意したい。つまり、実際 は住民からもっと別の声があ6たのではないかと推測される。よって、制限された選択肢 ではあるものの、異民族に触れることを肯定的に捉える人が存在し、ある項目になると5 割以上の者がいることは現実であり注目に値すると思われる。
っまり、プラスとマイナスの両効果を見ると民族性が顕在する事が直接共生を規定して いるのではなく、それがおきる状況、背景、またはそれに接する人の多文化志向の有無な どが実際の影響力を持っているのではないかと予測される。そして、いわゆる文化摩擦と いうものを生活上の違いだけに言及しないこと、また、違いを知り、理解することの姿勢 や能力が重要なのではないかと思われる。例えば、私たち日本人が欧米諸国の文化に触れ る時にそれらが日本文化とは違うことを認識し、どちらかというとそれらを優れているも のとして接して、学ぶ傾向があるように、欧米諸国以外の国からの人の持つ文化に接する 際にそれらを優性とみなさなくとも、せめて優劣はないというスタンスを採用すれば民族 性の顕在がすぐに民族間の摩擦の要因になるとは言えないのではないだろうか。
2) 集団間の競争
次に、共生を規定していると思われる別の要因である集団間の競争を理論的枠組から見 てみたいと思う。
①競争から生まれる恐怖心からの分離 一「グループ・ポジションと恐怖心仮説」
まず、アメリカの黒人・白人研究においてマジョリティである白人が黒人などのマイノ リティ・グループを支援するような施策に反対するのは何故かという研究において指摘さ
れたグループ・コンフリクト説またはグループ・ポジションと恐怖心仮説と最近では呼ば れるものを参考にしている(Bobo 2000)。具体的にみると、白人が今まで利用していた資 源、たとえば、教育、住宅、仕事を黒人に奪われているという認識から黒人に対して恐怖 心が生まれ、これらの資源を守る為に黒人に対抗し、それゆえ黒人の利益になるよラな施 策等に反対するという仮説である。これを保見の日系人と日本人に当てはめてみると、日 本人が今まできっと意識せずに利用していた学校、団地、公園、職場などを日系人が多く 住むようになってこれらを日系人も利用するようになっ.てから様相が変わり(都築1999)、
または利用できなくなり、これらを奪われたくない、または単純に今迄どおりに利用でき ないことから以前のように利用したい、日系人に邪魔されたくない、奪われたくないとい う気持ちから日本人は日系人に対して恐怖心の様なものが生まれ、それゆえ共生が難しく なると考えられる。実際に、保見団地の住環境の悪化は度々論じられており、同住宅団地 推薦の市会議員が市議会一般質問に立ち、同団地の「住環境悪化」の問題点を提起したこ とからみても、今までの環境が日系人流入後悪化していることは住民の目に明らかなので
ある。
では、恐怖心は実際に存在しているのかと言うと、実際の住民の声を拾ったわけではな いが、度々新聞に載る同団地の状況を報告する文面からも.「恐怖心」のニュアンスが読み とれる。最も良い例は、1998年8月19日の中日新聞の「日系人と生きる一保見団地の今」
という記事に保見の県営住宅の約4割が日系人世帯であることを記した後に、「日系人に 団地を占拠されてしまう」という文章がかぎかっこ付きで書かれていた(財団法人豊田市 国際交流協会1998:139)。これは、この記事を担当した者の個人的な感想・解釈か、ま たは直接住民の声を記したのかは定かではないが、日系人を脅威とみなしている状況が存 在することを読み取れはしないだろうか。こういったニュアンスの発言は豊田市が主催す る国際交流・理解セミナーの場などでもしばしば聞かれるものである。留意したいのは、
これらの発言は保見のように日系人が集中して住むところの住民だけから聞こえてくるの ではなく、ほんのわずかの日系人、または別の外国人世帯が住む地域からも聞こえてくる のである。そしてそれは「まだ何も問題はない」と言っているにも関わらずの発言である。
ここに、実害は被ってはいないが巳系人または他の外国人に対してすでに恐怖心が芽生え
.ているのである。よって、競争の結果おきる恐怖心または競争を予想しておきる恐怖心は 共生に何らかの影響を及ぼしているのは間違いないだろうと思われる。
②利害一致の際の結合 一「共倒れの可能性のある剥奪」
次に利害一致の際の結合として、「共倒れの可能性のある剥奪」の共生への影響を検証し てみたいと思う。これは、谷富夫を中心とする在日韓国・朝鮮人の研究から得た知見で、
集団間の競争において剥奪、簡単に言うと「損をする事」が異集団の両者に及ぶ場合、そ れをきっかけとして、両者が協力関係を持ち結合へと向かうというのである。具体的に剥 奪が両者へ及ぶというのは、両者がともに損をし利害が一致するということである。すな わち、両集団が協力しないことには「損をし続ける」または「共倒れ」になるという状況 が互いを呼び合い、協力関係が成立したということが報告されてい6『(谷1995、1992)。
例えば、地元商店街の衰退を阻止するには日本人店主だけでなく在日韓国・朝鮮人店主と も協力しないと商店街の活性化を図ることはできず、よって両集団が協力し商店街を盛り
上げたということが明らかになっている。
では日系人のケースにおいて、両者の利害一致は群馬県大泉町において見る事が出来な いか。大泉町では町長が労働力不足から町工場は日系人の力無しでは生きていけない、日 本人と日系人がうまくやっていくためには行政の支援を惜しまないと発言したことから、
また、町が中心となって日系人を直接雇用するなどの積極的な取り組みによって町が生き のび、具体的には日本人経営の中小企業が生きのび、日系人側の雇用も満たされたという 事実がある(五十嵐1999、石川1995、喜多川1994、駒井1999、渡辺・光山1992)。
そして、日本人と日系人との関係が全国でも良好とされる関係を形成していると報告され ている点から、両者への剥奪というマイナスな状況が契機となって共生が実現されるケー スもみられる。
では、保見はどうだろうか。利害一致は日系人と日本人の間にあるのだろうか。今のと ころ保見に関する報告、新聞記事、セミナーの議論内容から考察すると、それは日本人側 に「損をしている」感情が強く働いているように見受けられる。今までの生活とは違う、
もっと厳しく言うと今までの生活が剥奪されたという印象を受ける方が強いのではないだ ろうか。実際に入居・退去状況を見ると、日系人の入居個数は増え、逆に日本人世帯の退 去が数字によって明らかにされている。1997年の1月から8月の間だけで日本人世帯は 46戸が退去、11戸が入居し、反対に日系人世帯は121戸の入居が見られた(山本2000:
698)。また、保見には大泉町や生野区のように地元商店街というほどの規模の商店街はな く、商店街をきっかけとした協力関係は難しいかもしれないだろう。
5. おわりに
以上に日本人と外国人、特に日系ブラジル人との関係を理論的に考察し、共生に対して の影響を主に二つ取り上げた。一つは外国人の数が増加・集中、それに伴う民族性の表出、
もう一つは集団間関係を集団レベルで扱い、両者の関係を規定するものは集団間の競争で あるという視点を議論した。ここで留意したいのは、民族関係を規定する要因として二つ のうちのどちらか一方がより優勢であるかそうでないかを論じることは有意義ではないと いうことである。なぜなら民族関係を考察するにあたって、多元的な視野を持たないと説 明できないほど複雑な要因がお互いに絡み合っているのではないかと思われるからである。
一つの要因だけに焦点を当てることによって他の重要な要因を見逃しているというととが ありえるだろう。しかし、本研究で主に二つめ要因を取り上げたのは、従来の民族関係の 研究は心理的な要因の探求や心理的なアプローチをとることに傾いていたり、または外国 人の数や集住、それに伴う民族性の表出といった側面だけに視点を置いていたのではない かという反省点から、そこに新たな視点、つまり集団レベルの視点を加えることの必要性 を感じたからである。これを今後の課題として挙げておきたい。
同様に、今後の課題として具体的に7点を挙げる。本研究では共生を定義しただけなの でそれを1)測定する指標を確立すること、2)議論された理論的枠組を使った調査を住 民に行うこと、さらに、集住の効果を見る為に3)保見団地内での棟による日系人割合と
日本人との関係の違いを検証すること、または、4)県内の日系人居住者のばらつきによ る住民との関係の違いを考察すること、5)「共倒れの剥奪」の視点から学校関連、PTA
活動の運営状況とそこにおける日系人の関わりを把握する事を挙げておく。そして、住民 と地域との関わりが集団関係において重要な役割を果たしていることが最近の在日韓国・
朝鮮人の研究で明らかにされていること、また関係を向上させる為には地域を含んでいな いと意味がないように思われることから住民と地域との関係も考察したい。なぜなら、外 国人と日本人の関係に問題があると言われ、その多くは地域環境の悪化に帰するものが多 いので、関係を改善させると同時に地域にも変化をおこさなければならないと考えられる からである。それゆえ6点目として6)地域との関連から地域への愛着、定住志向性、地 域向上志向性、またその地域への貢献度などを検証することが必要ではないかと思われる。
また、本研究で議論されていない、例えば平等性や相互理解を可能にさせている別の要 因の追求として、7)多文化志向の影響、または、単純にマイノリティとマジョリティの 力関係を見据えていないと、異集団間を考察する上で重要なものを見落としてしまう危険 性がある事を述べておく。つまり日本人と外国人というカテゴリーにとらわれない考察も 必要なのではないだろうか。例えば、20年前の豊田市では、日本人同士の間で旧住民と新 しく入ってきた住民との間に対立があった(財団法人豊田国際交流協会1998:40)。それ は近年の日本人と日系ブラジル人の関係と国籍、民族が違うだけで、地域における問題と
しては同様なものではないだろうか。この問題が20年を経った今、どのように解決され ていったかを検証する価値が有り、そこから何らかの示唆が得られるのではないだろうか。
よって、民族関係を考察する際に、従来の「文化摩擦」に帰した視点だけではなく、新た な側面から日本人と外国人の民族関係を分析する必要性があることに留意したい。
表
表1 全国におけるブラジル人登録人口の愛知県の順位 1987年
1990年 1996年 1998年
位位位位ワ・111⊥
(豊田市市民課作成 r地域の国際交流・理解セミナー 99多文化共生のまちづくり体制形成への始動』 p43)
表2 1999年のブラジル人登録者数(総数224,299人中)上位5県 愛知県
静岡県 長野県 群馬県 神奈川県
41,241人 31,974人 16,357人 13,317人 12,814人
(入国管理局2000『平成11年末現在における外国人登録者統計にっいて』
http:lwww.moj.go.jp/press/)
表3 豊田市のブラジル人登録者数
1988.9.30 1989.9.30 1990.9.30 1991.9.30 1992.9.30 1993.9.30 1994.9.30 1995.9.30 1996.9.30 1997.9.30 1998.9.30 1999.9.30
9 96
1179 2646 3448 3358 2933 3129 3806 4976 5004★
4613★★
tブラジル人が多い他の地域、たとえば浜松市と比較するとブラジル人登録者数は1998年3月で10,086人。(浜 松国際交流協会のホームページより http:〃www.city.hamamatsu.shizuoka.jp〆HICE qata.htm)
ttこの年の豊田市の総人口は340,641人。 (1999『都市人口の概況一住民基本台帳人口による一』 全国市長会 ホームページより www.mayors.or.jp/research jinkou/y2kcitypoptcitiespopuiation2html)
(豊田市市民課作成 財団法人豊田市国際交流協会1998 r地域の国際交流・理解セミナー 99多文化共『生ま ちづくり体制形成への始動』 p43)
表4 保見団地3自治区内における日系人戸数と日系人割合1998.12
自治区名 日系入居戸数 日系入居人数 全体入居戸数 日系戸数割合 日系人口割合 増減 県営保見 498戸 約2000人 1125戸 44% 約57% 増加 公団保見ケ丘 223戸 約700人 745戸 30% 約35% 増加 保見ケ丘六区 120戸 約400人 755戸『 16% 約18% 増加 合計 841戸 約3100人 2625戸 平均30% 平均3696 増加
(「事例報告保見団地が地域として取り組んできたこと資料」より 『コミュニティ第2号外国人との「共生」
を考える』 1999 p70)
表5 1999年5月の豊田市におけるアンケート調査結果(一部)
外国人居住者の増加が地域にもたらす影響の問いに対して
異なる文化・思想に接し、考え方が柔軟になる
52.6%
国際感覚が身につく
37.5%
いろいろな文化が混在し、魅力的な地域になる
27.1%
将来心配される労働力不足に備えられる
14.5%
高い技術・能力を持つ人が増え、産業の活性化につながる
12.7%
(『第13回市民意識調査報告書』よりhttp:〃www.city.toyota.aichi.jp/topics./chousa/index.htm)
注
1)共生の定義はいくつかの文献にてされている。以下を参考に。
庄司興吉1999 「共生社会の文化戦略一支柱としての家族・教育・意識・地域一」 r共 生社会の文化戦略』 庄司興吉編 pp3−12. 梓出版社
黒川紀章 1996 「新・共生の思想へのまえがき一より深く紡ぎ行くために一」 r新・
共生の思想一世界の新秩序一』 pp1−8. 徳間書店
都築くるみ 1998a rエスニック・コミュニティの形成と「共生」一豊田市H団地の近 年の展開から一」 r日本都市社会学会年報∫ 第16号pp89−102.
広田康生・藤原法子・鈴木久美子・段躍中・新原道信・奥田道大 1996 r国際文化都市 ヨコハマの再生に関する調査報告一横浜市における多文化ネットワークの形成一』
財団法人横浜市海外交流協会
手塚和彰 1996 「日本における外国人労働者の共生と統合」 r岩波講座代社会学15差 別と共生の社会学』 井上俊・上野千鶴子・大澤真幸・見田完助・吉見俊哉編 ppl33 −154 岩波書店
2)人口集中の少ない地域、例えば、石川県小松市においては問題が少ないとされている
(俵希實2000「地方都市におけるニューカマーズの生活実態一小松市のブラジル人の人 間関係を中心に」 第73回日本社会学会大会)。
3)豊田市の予算をみると1998、1999年の姉妹都市関係に使われた費用は約1600万 円ずつである。また、全国的に見て国と地方をあわせると年間約4から5千億円が外への 国際化に使われている。
引用文献
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五十嵐泰正1999 「職場の同僚1部下としての外国人一外国人従業員を含む仲間意識構築 の可能性を中心に一」 r大原社会問題研究所雑誌』 No 491 pp1−15
稲月正2000a r桃谷地区住民の民族関係意識」 r民族関係における結合と分離の社会的 メカニズム』 平成8年度〜10年度 科学研究費補助金研究成果報告書 谷富夫 研究者代表 pp595−608
−一一Q000b r地域における民族的共生社会形成の条件」 『民族関係における結合と分 離の社会的メカニズム』 平成8年度〜10年度 科学研究費補助金研究成果報告
書 谷富夫 研究者代表 pp627−637
石川雅典1995「日系ブラジル人増大に伴う行政の対応一東海地方・群馬県東毛地域一『共 同研究出稼ぎ日系ブラジル人上論文篇 「就労と生活」』 pp161−186明石書店 木村英憲1993 「潜在化した差別意識の規定要因:接触のコストと大義名文による反対の 正当性」 r愛知学院大学文学部紀要』 第23号pp51−81
喜多川豊宇1994 「大泉町における日系ブラジル人の生活構i造と意識一定住社会の形成 一」 『東洋大学社会学研究所年報』 第27号pp55−128
駒井洋1999「愛知学泉大学コミュニティ政策研究所第4回シンポジウム外国人との『共 生』を考える一異文化コミュニティー 基調講演 外国人との『共生』の条件」 『コ ミ.ユニティ』 第2号pp42−49
谷富夫 1995 「定住外国人との民族関係一大阪市生野区の事例一」 r都市問題』第86
巻第3号pp31−43
−一一 1992 「エスニック・コミュニティの生態研究」 r現代都市を解読する』
pp260−283 鈴木広著 ミネルヴァ書房
谷富夫・西田芳正・二階堂祐子・西村雄郎・稲月正 2000 「在日韓国・朝鮮人社会と日 本人社会の民族関係」 第73回日本社会学会大会
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都築くるみ 1999 「外国人受け入れの責任主体に関する都市間比較一豊田市の事例を中 心に、大泉町、浜松市との比較から一」 rコミュニティ政策学部紀要』第2号pp127 −146
渡辺雅子・光山静枝1992
『明治学院論集社会学・社会福祉学研究』
財団法人豊田市国際交流協会1998 −』
山本かほり2000 「企業城下町の苦悩一豊田市一」 r民族関係における結合と分離の社 会的メカニズム』 平成8年度〜10年度 科学研究費補助金研究成果報告書 谷富 夫 研究者代表 pp696−698
一一一P998a rエスニック・コミュニティの形成と「共生」一豊田市H団地の近年 の展開から一」 r日本都市社会学会年報』 第16号pp89 一 102
−一一P998b r日系ブラジル人の地域生活と自治会の受け入れ一愛知県豊橋市を事 例として一」 r名古屋大学社会学論集』 第19号pp65−82
−一一P996 「日系ブラジル人受け入れと地域の変容一愛知県豊田市H団地を事例 として一」 駒井洋編pp310−330 明石書店
「ブラジルからの日系出稼ぎ労働者の実態と日本社会の対応」
第89号pp1−66
『まちづくりへの提言 一多文化共生の地域を創る
参考文献
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文化的・社会適応一』 pp45−84 平成9、10、11年度 文部省科学研究補助金基 礎研究(B) (1) 研究成果報告書代表米村昭二
広田康生 1996 「多文化化する学校・地域社会一外国人児童生徒問題を出発点にして一」
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広田康生 1995 「エスニック・ネットワークの展開と回路としての都市一越境する人々 と日常的実践一」 r21世紀の都市社会学2 コミュニティとエスニシティ』 松本 康・奥田道大・佐藤健二・吉見俊哉・吉原直樹編 ppl91−239 勤草書房
稲月正 1997 「地域社会と民族関係一日本人と在日韓国・朝鮮人との「結合一分離」志 向一」 r都市エスにシティの社会学一民族/文化!共生の意味を問う』 奥田道大編 pp177−204 ミネルヴァ書房
梶田孝道 1994 r外国人労働者と日本』 日本放送出版協会 駒井洋 1994 r移民社会日本の構想』 国際書院
Quillian, Lincoln. 1996. Group Threat and Regional Change in Attitudes toward African・
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佐藤郡衛 1996 「日本における二言語教育の課題一学校における多文化主義の実現へ 一」 r講座外国人定住問題多文化主義と多文化教育』 駒井洋監修広田康生編 pp67−92 明石書店
Schumgn, Howard, Charlotte Steeth, Lawrence Bobo and Maria Krysan. 1997. Racial Attitudes in America:Trends and lnterpretations. Cambridge, Massachusetts:Howard University Press.
曽和信一1996 r人権問題と多文化社会一自立と共生の視点から一』 (増補改訂) 明石 書店
山ロアナエリーザ 2000 「在日日系ブラジル人移動形態「リピーター型」のミクロ的検 討一滋賀県長浜市の事例を中心に」 第73回日本社会学会大会
財団法人豊田市国際交流協会 1ggg r多文化共生のまちづくり 体制形成への始動』