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診断困難だつた急性骨髄性白血病の1例

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札幌医料 5(1),70〜73(1954)

診断困難だつた急性骨髄性白血病の1例

     吉田茂一 明珍好英      藤野常志 岡本和子

   札幌医科大学内科学教室(主任 滝本教授)

        目 黒 春 枝

札幌医科大学病理学心室(指螂 新保教授・小野江教授)

A Case of Acute Myeloic Leucemia with Difficult

      Clinical Diagnosis

       By

SHiGEicm YosmDA, KoEi MyoeHiN, TsuNEsiii FuJiNo

         and KAzuKo OKAmoTo

D・puα吻・弼げ鋸・Tnql M・eli・吻8卿…σ渤・rsity of Medicin・

         (Chief二Prof・T. TArrrM,oTo♪

       HABuE MEGumo

  Depαrtmeopt of Pathology, S⑳POγ0σnivers吻of Mθdicine

     CDirected by Prof. K. Sffintpo & Prof. T・ ONois)

 急性淋巴性白血病の存在については疑義を抱く 学者が多いが,なお一部にはその存在を認めてい

る学者もある。1)一一3)

 われわれは臨床所見,』血液像等急性淋巴性白血

病を思わしめ,診断に甚だ困難を感じた急性骨髄 性白血病の1剖槍例を経験したので報告する。

症 例

 臨床所見 研○ 達 6 21歳 官吏

 主訴1頚部淋巴腺腫脹。家族歴,既往歴には特記する

ほどのことはない。

 現病歴:昭和26年6月末,顔面1孚腫,左頸部淋巴腺腫

脹,続いて右頚都淋巴腺種脹に氣ずいている。当院には27 年1月入院した。

 入院噂所見:体格中等栄養やや蓑え,体温38.5℃.脈.

癬115整。意識は明瞭,顔貌生氣なく,褐色の舌苔を衣し ている。右扁桃腺には小指頭大に腫大しているが,炎症徴 候は認められない。頸部淋巴腺は両側とも碗豆大から鳩卵 大に累々と腫脹している。硬度は比較的硬く癒合は見られ ない。腋窩,鼠践淋巴腺も数個宛,腕豆大から栂指頭大に

腫脹してい.る。心界は左に拡大し,心尖音不純。右下肺野 は濁音を呈し,呼吸音は消失している。腹部は膨隆し,肝

は右乳線上季肋下にL5横指,脾は同檬2横指触知し,硬

度をやや増している。叩打痛は胸骨にのみ認められる。

 槍査事項: 「ツ」反懸,「ワ」氏反慮.喀疾中結核菌 画仙陰性。X線写鼠で心騰陰影は左に拡大し,右肺野には 乳線上第4肋骨の高さまで滲出液貯溜による濃厚陰影を認 める。犀尿には著変ない。Bence−Jones氏蛋白体陰性。

眼底出血を見る。血圧は最高126,最低78。血清蛋白7.55

%(屈折法♪,粘調度ユ8.5(Hess)。 A=Gは28:72。血滴黄 疸指数8.5(Meulengracht)。末柚血像は,赤血球数220万,

血球素60%,色素係数1.1,白血球数11,200,内訳は幹細

月割18%,  胃,骨邉≡刻i球53.5%, 前 腎P髄a刻Q2.0, 斥愛骨骨遭球2.0,女子

中性{・糊犬核3.5,同分葉核9.5,淋巴球10,軍球1.5。有核 赤血球は白血球100に対して11。栓球数12万。血消高田氏反 雁i(十),ヘバトサルファレン法では30分で9.5%,45分で3.0

%。血清コバルト反鷹はR3を示す。 lti血時間は12分ユ5

秒,Rumpel−Leede氏碗像陰性。血液凝固時間は開始U分

完結23分(Sahli置onio)。赤血球抵抗は最大0.49,最小0.56 赤血球抵抗は平均7.5μ,Price−JoneS氏曲線はほぼ正常。

綱状赤血球20%,。なお末棺血,骨髄像の詳細は第工,2表

1)浜口・永野:白血病 61(昭21).

2)天野=血液学の基礎(上),509(昭23).

3)岩男:血液病診断及び治療学272(昭2分

70

(2)

5巻.1号 吉田・他一一診断困難だつた急性骨髄性白血病 71

第1表 末精血液像 第2表   胃1  骨邉  理

論朋1%胴1

6/1 i12/1

赤血球数(万〉

血球素(%)

色素係数 白血球数

 220  ・   工58

 60  ・    50

 1.工1 ・    L2     1]2001130099800

エ33

 42

1.6

]200

21/肛29/[ 日  附 i23/ 11 i/ E 日  附 23/1 1/皿

1171 . 30i ・

1.2 ・

1600脚 ユ500

白血球百分比

白 血 球 系

幹  細  胞

骨髄芽球 前骨髄球

骨 髄 球

後骨髄球

好中球桿状核 好中球分葉闘 殺  巴 球

軍  1 附

議 酸 …球

好塩生恥

形質系皿胞 有核赤血球

(白血球10r〕、に劃し }

栓  球(万)

工8.0

53.5

2.O

o

2.0

3.5

9.5

]o.0 1.5

0

0 0 0

11

0召

1 15.0 59.0

3.5 0.5 2.0 2.5 6.0

10.O

O.5

0

0

0

21;5 50.0

21.dr 5.5

L

1044︷9

RU︵∪︵UO

4.0 2.O

o

O.5

0

14.O O.96

みののρゆ5のああの

8421013800108 7      

1

0 0 00000   05 70102403100011

6      2

0    00000 

0 45

O00ユー634210100

.一

回 血 球 系

幹  細  胞  仲  性)

骨髄芽球 前骨髄球

骨 髄 球

後骨髄球

好中球桿状鯛

取球.球球球胞   核基紬葉巴 酸葉   分塩質分 淋 軍 好一好 形

9.25 6S.50 O.50 0.50 0.50 1.25 4.25

6.50 0.50 0.25

0

5.25

 8.0 75.80

ρ06 00 80 0﹂

1.6

2.2!

o o o

O.2

巨大赤芽球

1{1雛

難雛

骨髄巨態細胞

核分二二

帆綱内皮細胞

所属不明

00

O.25

0.5

0.25 5.0

1.5

 十

〇.50

0

o

o

 6 

68 000FO−

10

2

の如く.である。

 経過:病歴より推測するに当院を訪れるまで約2簡刀.,

を経ている。入院当初から高熱稽留し,肝脾の腫脹,胸厄夏 水の貯溜が認められた。入院10日頃肝脾及び淋巴腺の腫脹 最高度となり,Urethan療法を行い計45 g使用した。入 院25日目に著明な白血球減少を記し,その後も減少の一途

をたどり,30日目には激しい咽頭痛とともに左扁桃腺の化 膿・壌死を慰し,この頃から全身淋巴腺・肝・脾の腫脹が

著明に絋小した。爾後病勢は頓に悪化し入院45日目鬼籍

に入った。

 病理解副学的診断

 ユ〕高度の貧血。2)壌疸性アンギ・・一ナ。3)右無氣肺。4)

大腿骨々髄の赤色二化。5)軽度の脾肥大。6)そ麦腹膜・両側 腋窩・鼠践淋巴腺腫大。7)心筋・肝・腎の実質性変性。

 造血臓器について略記すると,骨髄は組織学的には胸

骨・大腿ともにところどころ赤血球の集合が結節状に詠

られるのみで,白血球系細胞は著明に減少し,赤芽球の分 剖像も殆どみられない。肝は大いさ,重量ほぼ正常。グリ ソン鞘,小葉毛細管には少量の白血病細胞の浸潤を認める。

クッペル氏星細胞は軽度肥大し赤血球貧1喰像もみらる。脾 は硬度・大いさ・重量とも軽度増加す。組織学的には全体

的に線維性で濾胞は萎縮ないし消失し,脾髄は欝i肛の他,

洞内皮細胞及び細綱細胞の増殖が著明で,その閥に大・小 の軍核細胞の禰漫性浸潤を認める。淋巴腺は後腹膜・両腋 窩・商工黙淋巴腺が小指頭大に腫脹しているが,腸間膜・肺 門淋巴腺は腫脹していない。しかし組絹i学的には腫脹iの有 無にかかわらず特有な所見を呈し,特に腸間膜淋巴腺に著 明である。即ち洞内皮系lll胞は著しく増殖し,淋巴実質とは 明瞭に区別されている。洞内皮細胞は淡明核を有し,原形i 質に富み,互いに運関しているので上皮腫様に見える。淋 巴組織は圧沮され索状ないし勤向状を呈しこの中に介在し ている。嗜銀線維の増殖は認められない。

総括並びに考按

 病初われわれは臨床症欺,血液所見等から急性

淋巴性白血病,或は湿球白血球品等をも疑った。4)

即ち本四の淋巴腺腫脹は相当高度で,幼若細胞の ペルオキシダーゼ反恋は陰性であった。中性赤及 びヤヌス線による超生体染色では前者が禰蔓性に 胞体に浸潤するものが多く,中には定型的な花冠 形成を呈するものも認められたが,全般的に超生 体染色所見は軍芽球或は軍球よりは,骨髄芽・球

前骨髄球とみる方が適当と思われる。5)他方,本細

4)森田:診断と治療39,11 1951). 5)芽賀=白血病論丈集伯血会誌14補冊)54(昭26,,

(3)

72

吉田・他一診断困難だつた急性骨髄性白血病 札幌医誌1954

胞は変形は見られるが遊走性は認められはV・。貧

喰能も陰性である。6骨髄穿刺,淋巴腺穿刺像も末

棺血と大韮なく,7)摘三木巴腺の病理組織学的検索

によるも,容易に診断を決定し得すに絡つた。ブ リラレトクレシルブラウによる核小体染色所見は

細網細胞に:近V・。

 以上の検査成績からわれわれは診断決定に非常 な困難を感じたが,訣の事項よりほぼ急性骨髄性

白血病と決定した。(1)極く稀ながら幼若細胞に アウエル小体を認める。(2)末梢血に前骨髄球が

小数存する。(3)未楕血に赤芽球がかなり多数認

められる。即ち骨髄性の二二が著明である。(4)ギ

ームザ,超二二染色所見も非定型的ながら骨髄芽

細胞とみるのが安当と思われる。

 メイギムザ標本とでみる骨髄芽細胞級細胞に4

種ある。即ち(イ)大,中骨髄芽球でこれは三二全

白血球の50ないし70%を占めた。いわゆる急性 ミエプラステン白血L病時の骨髄芽球としては非定

型的で,不正円形,原形質狭小,かつ塩基性色調

も比較的淡い細胞である。核は大きく,クロマケ ンに富み,核構造は粗で,核小休はあるものとな いものとある。細胞自体は破壊し易く塗抹標本で

は山影が非常に:多い。ペルオキシダーゼ三二は99

%まで陰性である。(ロ)小型の細胞でミクロミエ

ロブラステンと称すべきもの。(ハ)(ロ)よりさらに 小型で赤位L球大の正円形で,原形質の非常に塩基 性に富んだ小淋巴様細胞で,その色調は淋巴球よ

りさらに濃くかつ鮮明である。核小体はないもの

から4個まで存する。 「ぺ」反鷹は陰性。(二)裸

核に近い青島性赤芽球様細胞,ペン先型細胞,

Bykowaの劒1伏細胞等である。(ハ),(=)はわれわ

れぽ一一・出して幹細胞として取り扱った。(イ),(ロ)

(ハ)は詳細に観察すると移行型がみられる。均入院

経過中のこれ等細胞の消長は,病初には骨髄芽球 が圧倒的に多く,幹細胞は軽度であるが,末期に は後者のみ認められた。しかし絶対数よりみれば

幹細胞もまた減少しており,血球生成ないし成熟 機韓の障碍により,骨髄芽球さえ流血への動員に

間に合わす,最も幼若な幹細胞が急i腺途出された が,これとても所詮正常白血球数を補充し得ない

状態にあると推測される。

 最後に本四を介して臨豚所見と三三所見につい

て一一言したい。,最近種々の抗生剤,化学製剤,ビ

タミン,ホルモン等が使用され9)・10)白血病におい ても剖検後の所見がこれまでと往々異なった像を 呈することがあるといわれている。本証において もウレタンが使用されたが,そのためか使用前後

に血L液像に顯著な変化が認められた。即ち量的に

は白血球数の激減と,質的には骨髄芽球の消失幹 細胞の比較的増加である。また生前,死後の両淋

巴腺組織標本の相違がよく〜二の匪日の事情を物語っ

ている。剖槍所見は前述したように造血臓器に血 液細胞成分少なく,網内系細胞の増殖が著明であ

る。山來,白lf[L病,特に軍球白血病時の網内系細

胞の糟殖については種々論議されている。その際 論議の的となるものは脾洞内皮細胞と,これが遊 離したと思われる高温様細胞とである。三元論者 の脾洞内皮細胞から箪球様細胞への移行説に対し

反対論者は,かかる際にもいわゆる骨髄性反腱ミを

認め3骨髄芽球がそこに:共存し輩球様細胞はこれ

から出,網歌織内皮細胞は一種の二三性増殖で,

その証拠に骨髄性及び淋巴性白血病でも時にこの

ような反慮を呈することがあると主張している。

本論は上記の如く箪球白血病とは考え難く,三っ て反鷹性増殖と解するのが安当と思われる。何れ にせよかかる製剤の使用はただでさえ甲論乙駁の

白th1.病論に一暦の複靴さを加えるものである。

         結   論

 以上われわれは診断の甚だ困難だつた急性骨髄 性白1irL病の一例を報告した。

       (昭和28.11.19受付)

6)杉山1血液及び組織の新研究とその方法471昭29λ

7)小宮:臨床血液学1681昭24),

s) lsraels, M. C. G.:・Laneet 260 (6662), 987 (195D.

9)口比野・木村: 口本医事新報1412,3(昭26}.

10♪ 衛や石: 医学 34, 1 〔峰127).       .

(4)

5巻1号

吉田・他 診断困難だつた急性骨髄性白血病 73

Summary

   The  case reported here was quite dithcult to diagnose clinically, owi.ng to the extensive

swelling of systemic lymph nodes and the negative peroxidas,e reaction among yonug

leucocytes.

    After dissection.it was determined to be a case of acute myeloic leukemia in view of the following observations:

    (1) Auer s bodies are visible, though rare, arnong young leucocytes.

    (2) A few promyelocytes are found in circulating blood.

    (3) A considerable number of erythrobl asts are found also in circulating  blood.

    (4) Generally speaking and according Giemsa and  supra−vital staining, the young cells though nQt typical are undoubtedly myeloblasts.

      CReeeived Nov. 19, 1953)

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