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手 術 室 に お け る 体 温 管 理
〜ベアハガー導入による保温の試み〜
市立室蘭総合病院 中央手術室
須 田 由紀子 平 石 瑠美子 深 田 敏 一 長谷川 真奈美
Ⅰ、 は じ め に
全身麻酔で手術を受ける患者は、室内を清潔に保ち、安 全かつ速やかな麻酔導入を行うため全裸での入室を余儀 なくされている。手術室内は通常25℃程度に設定してい るが、意識のある患者は寒さを訴え、全身麻酔中では体 温の低下をきたすことがしばしば認められる。当院手術 室では術中患者に使用できる温風式加温装置(以下ベア ハガー)を導入しているが、術野との干渉もあり保温方 法が適切であったかの検討の必要性を感じていた。そこ で、全身麻酔下手術症例を対象として、ベアハガーの術 中保温効果を検討するとともに、看護介入として手術棟 搬入時より積極的な保温管理を開始することの効果を合 わせて検討した。
Ⅱ、 研究対象および方法
当院の手術室における患者の動きをみると、まず手術 棟搬入後ラウンジにて引き渡され、移動式の手術台に 乗って各手術室に入室する。手術終了後は手術台のまま 各手術室を退室してラウンジまで移動し、ベットに移し 変えて各病棟へ搬出される。今回の研究では搬入から入 室まで、手術中、さらに退室から搬出までの3つの局面 のうち前2者における保温の効果を検討した。研究対象 は平成13年11月5日〜12月28日までの心臓血管外科、脳 神経外科、眼科、耳鼻科を除いた18歳以上の全身麻酔下 手術患者80名で、5時間を越える手術、全身状態の悪い 患者は除外した。これらを以下の3群に分けた。すなわ ち、A群30名では、手術棟搬入直後から搬出までの間、手 術中を含めて従来通りバスタオルのみで保温した。B群 30名ではA群同様バスタオルでの保温を基本としたが、手 術中のみベアハガーによる保温を追加した。なお使用し たベアハガーは、上半身用10名、上肢用10名、下半身用 10名とした。またC群20名では手術棟搬入直後よりバスタ オルに加えタオルケットによる保温を開始し、さらに術 中はベアハガーとバスタオルによる保温を行った。なお市 販のタオルケットでは、頚部、肩部の保温が不十分なた め、襟をU字にくり抜き全身を覆うように工夫したもの
市立室蘭医誌(第28巻 第1号 平成15年4月)
を用いた。
ベアハガーは直接体に装着し、その上にバスタオルを 掛けた。設定温度は32℃、38℃、42℃の三段階あるが、
その中で最も核心温に近い38℃とした。
AおよびB群においては、術中保温の評価を十分に行 うために術中の体温測定および術後の聞き取り調査を 行ったが、C群では術後の聞き取り調査のみを行った。
1. 患者体温の測定の方法
体温の測定方法は同側の鼓膜温測定とし、体温計はテ ルモミミッピA(M20)を使用した。測定は3回行い、そ の平均値を算出した。体温測定は各手術室入室時、執刀 開始15分後、30分後、さらに60分後以降は60分毎に手術 室退室時まで測定を行った。なお各手術室の室温は25℃
±1℃と設定した。
2.術後聞き取り調査の方法
各群ともに術後1日目に患者訪問を行い、図1を用い て以下の内容の聞き取り調査を行った。体感温度につい ては寒い、少し寒い、寒くないの3段階に分け、聞き取 り調査は看護者からの質問形式とした。
1)入棟から手術室まで(入室時)および退室時におけ る体感温度に関して。
2)手術室の室温に関するイメージについて。もし寒い という場合はその理由。
なお、イメージについては、自由に発言してもらった。
図1 体感温度聞き取り調査資料
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Ⅲ、 結 果
術中の体温変化に関して、手術室入室後から執刀15分 後まではA、B両群共に0.5℃の下降を認めた。
バスタオルのみで保温したA群では開始後も徐々に体 温の下降があり、手術室退室時の平均体温は35.1℃で あった。手術中にベアハガーを併用したB群では執刀15 分後まではA群と同様に体温の低下を認めたが、時間経 過と共に徐々に体温は上昇し、退室時の平均体温は36.4
℃であった。A、B両群の比較では、執刀120分、180分 後および退室時に統計学的有意差を認めた(図2)。また ベアハガーは使用部位に関係なく、同様の効果が得られ た。
術後の聞き取り調査の結果をみると、退室時に「寒い」
および[少し寒い]と感じた患者は、A群では14%およ び12%、B群では7%および7%であり、統計的な有意 差は認められなかったものの、B群で低率であった。ま た聞き取り調査において手術経験のある患者から、「他の 病院で寒い思いをした」「前回は掛け物がなかった」とい う意見が聞かれた。A、B両群においても「掛け物がな い」と答えた患者が多数存在した。タオルケットを入室 前に(手術棟搬入直後から)導入したC群に対する聞き 取り調査では、手術室入室時に「寒い」と感じた患者は 5%にまで減少した(図3)。同様にC群に対して聞き取 り調査を行ったところ、「寒いと聞いていたのに、暖かく て安心した」「前回は寒くて嫌だったけど、今回は気を 使ってもらえたことがうれしかった」という意見から、術 前からタオルケットを用いたことで患者の反応は著しく 変化した。このことより 声がけを頻回に行い、訴えを 露出しやすいよう環境を整えることは手術室における良 好な患者体温の保持だけではなく、不安の軽減にもつな がった。
Ⅳ、 考 察
効果的に体温を維持するには、ベアハガーをルーチン で使用し、体位や患者の状態にあわせた工夫を加えるこ とが重要である。今回の検討の結果、ベアハガー使用群 では開始直後に体温の下降があったが、30分以降では 徐々に回復し、120分以降は有意な保温効果を認めた。
38度という体温程度の温度設定で術中充分な保温効果が 得られることがわかった。しかし、ベアハガー使用の有 無にかかわらず入室直後から執刀15分後まで体温低下が 起こり、手術開始60分後では保温効果に有意差はなく、
ベアハガー使用で核心温に影響を与えるには時間を要す ることがわかった。東大阪市立病院手術室の土居1)らも 20〜30分では加温の効果が充分ではなく、長い時間が必 要である可能性が高いといっている。したがって、ベア ハガーを使用する場合でも早期からの保温管理が重要で あることを示唆している。今回、手術棟搬入直後より入 室までバスタオルとタオルケットを用いて積極的に保温 に努めた群では入室時に冷感を訴える患者も減少した。
術中の保温は医師の指示に基づいて行っており、以前 は看護者が積極的に介入する場面は見られなかったが、
工夫を取り入れたことで、それぞれの患者に最適な方法 を選択し実行することができた。また、術中の活用の有 無に関わらず、ベアハガーを装着し、体温変化時に即時 図2 手術中の体温変化
図3 入室時および退室時における体感温度の比較 入室時の体温感覚
退室時の体温感覚
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対応出来るよう備えるなど、保温に対する意識改革が行 われた。また、今回の研究では、年齢別の調査は行って いないが、今後、復温と年齢の関係についても研究して いきたい。また、体温の低下が認められないにも関わら ず、寒いと訴える患者が少数存在した。これは「手術室 は寒い」という固定観念によるものではないかと考え、掛 け物の工夫だけでなく、より細やかな配慮を心がけるこ とが重要である。また、術中の体温低下が予想される患 者に対して、最近有効性が報告されている麻酔導入前か らのベアハガーの使用を今後検討したい。Ⅴ、 ま と め
今回の検討まで、ベアハガーの加温性能について軽視 していたが、体温測定の結果、充分な効果が得られるこ とがわかり、積極的に活用しようとする意識付けにつな がった。多くの患者は不安と緊張を抱いて入室しており、
その不安をすべて拭い去ることはできないが、少しでも 安心して手術が受けられるように配慮し、継続した看護 の中でこそ患者に快適な環境を提供することができた。
積極的な看護介入によって患者体温を良好に保持し、術 者が快適に手術を行えるよう、そして患者に不快感を与 えないような環境を今後も目指していきたい。
文 献
1)土居康子,岡田由紀子,藤田 恵,勝 久江,植木 正明:年齢層に比較した温風加温器による加温効果 の検討.オペナーシング 14:602-604,1999.