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秋田大学医短紀要6 :123‑128,1998.

室内移動用いす と食事用 自助具の適応 一 骨軟骨形成不全のケースに対 して ‑

金 城 正 治*

AdaptationfortheMobirityAidsandSelfHelpDevice ofFeedinginthePatientAchondroplasia

MasajiKINJYO*

は じめに

身体機 能に四肢短縮,筋力低下,関節可動域 制限があ る と,移動障害やADL障害が起 こ り やすい。今回, これ らの症状 を呈 した骨軟骨形 成不全でギラン ・バ レー症候群 を併発 したケー スを担当 した。

ケースの室内での移動方法 は,木箱 に座 った ままで,両足 の駆動 により移動 していた。 この 移動 は,木箱 と床の摩擦や引 っかか りにより転 倒の危険性があ り,移動運動のエネルギー負担 も大 きい と推察 された。そ こで,キャス ター付 き低 シー ト椅子 を製作 した。

また,食事行為では,和式テーブルに菓子箱 と花瓶台 を積み重ねて簡易食事台のテーブルを 組み立てていたが,構造が不安定であった。そ して,食べ物 を口に運ぶ動作 で は,Ⅹ型 リー チ ヤーに割 り箸 を一本はさみ,か きこむように 行 っていた。箸が届かない所 は,菓子箱 をまわ していた。 この方法は,従来 にないパ ター ンで

あった。 しか し,口に運びこむ量が少 な く,効 率が悪かった。そこで, 1本著 をフォーク付 き 箸 に改良 し,新 たに長柄付 き曲が りスプー ン, 回転が可能な食事台 を製作 した。

これ らの椅子や 自助具 によ り,行為 として 自 立は していたが,動作が省力化 され, 目的操作 の効率が向上 したので報告する。

Ⅰ.症例紹介

60歳の男性で,診断名 は骨軟骨形成不全 とギ ラン ・バ レー症候群であった。

現病歴は,幼児期 に骨軟骨形成不全 と診断 さ れ,修学 を猶予 され,在宅で過 ご した。幼年期 か ら成人期 までは両親や兄弟の介助 を受 け,両 親の死亡以降の成年後期か らはホームヘルパー の協力で生活 していた。19942月ギラン ・バ レー症候群 に雁思 し,施設へ入所 した。現在 ギ ラン ・バ レー症候群 は回復 していた。

家族構成は,一人暮 らしで,兄 は仙台 に住 ん

秋田大学医療技術短期大学部

*作業療法学科

KeyWords:骨軟骨形成不全 室内移動用いす 食事用 自助具

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(124) 室内移動用いす と食事用 自助具の適応‑ 骨軟骨形成不全のケースに対 して ‑

でいた。家屋構造は,平屋で, リフォーム等 は Ⅰ.作業療法アセスメン ト

行 ってお らず,畳 間で生活 していた。 ① 身体計測 :体幹長47cm,上肢長40cm,大腿長 入所施設の部屋構造は,図1に示す ように‑ 24cm,下腿長24cmであった。

人部屋 (4畳) に, ござを敷いていた。 ② 自動関節可動域 :表1に示す ように肩 ・肘関 節や股 ・膝関節の可動域 は狭かった。

図 1.施設の部屋構造 と生活場面

表 1. 自動関節可動域検査表

運 動 範 囲

肩 関 節

屈 曲

35 45

伸 展

0 30

外 転

35 25

肘 関 節

屈 曲

65 25

前 腕 回 外

0

0

回 内

0 90

手 関 節

背 屈

40 40

掌 屈

30 55

MP

関 節

屈 曲

25 50 股 関 節

屈 曲

100 115

伸 展

‑90 ‑90 膝 関 節

屈 曲

140 125

伸 展

‑100 ‑115

足 関 節

背 屈

20 15

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金 城 正 治

③筋力:MMTにて,両上肢 ・下肢 とも3‑ 4 レベルで,近位部が遠位部 よ り強かった。握力 は左右 とも2k9であった。

④上肢機能 :上肢 に肩や肘 のROM制限によ り, リーチ距離 は体幹腹部の前方約25cmであった。

つかみ,はな し動作 は可能であったが,手指が 太 く短 く, MPIP関節 に動揺性 があ り,指 先 ピンチは十分 にで きなかった。

⑤心理,知的精神機能 :義務教育 は免除 された が,文字の読み とり,言語や文字 による意思表 示は可能であった。生活の自立 に対す る意欲 は 十分 にあ り,意志表示 も明確であった。

ADL :Barthellndexscore40点であった。

坐位 は高 さ22cmの木箱へ端坐位 で座 ってお り (図1), 1日約6時間座 っていた。立位 や車 椅子駆動 は出来 なかった。木箱への移乗 は介助 であった。室内移動 は,木箱 に座 ったまま,下 肢の動 きと体幹の前後への反動 を利用 しなが ら 木箱 ごと移動 していた。

更衣,入浴 は仝介助であった。 トイレは尿器, 差 し込み便器で半介助であった。整容 は自助具

を利用 して半介助であった。

これ らのADLの中で,長 さ62cmの竹の先 に ピンセ ッ トがついた リーチヤー と,50cmものさ しと平角棒 を35cmの位置で輪 ゴムにより縛 った

Ⅹ型 リーチ ヤー (図2) を使用 していた。 ピン セ ッ ト付 リーチ ヤーは,物の移動 ・ひきよせ ・ 押す,髭剃器の固定 な どに利用 していた。 Ⅹ型

リーチ ヤーは食事での箸の固定, タオルをつか む,歯 ブラシの固定,物のつかみ ・ひ きよせ ・

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押す ・移動で利用 していた。

⑦食事行為 の動作分析 :食事 は木箱 に座 って 行 っていた。そ して,ロへ運ぶ距離 を短 くす る ため,和式 テーブルに菓子箱 と花瓶台 をのせて, 図1に示す ような簡易食事台 を組立て行 ってい た。花瓶台上部 までの高 さは68cmであった。 こ の簡易食事台は構造やバランス上不安定で,動 かす ことにより倒れる可能性 もあった。

食物つかみや口までの運び動作 は,Ⅹ型 リー チ ヤーの先 に1本の箸 をはさみ,体幹 を軽度前 屈 して食器 に口を近づ けて,食物 をさした り, か きこむように して行 っていた。 この 1本著で は運ぶ量が少な く, こぼす ことも多かった。食 物で箸の届かない所 は,菓子箱 をゆっ くりと手 で回 した り,食器 を移動 させていた。汁物 は直 接お椀の縁 を歯でつかみ,斜 めに して飲 みこん でいた。

Ⅱ.アプローチ点 とプラン 1.アプローチ点

# 1.木箱椅子 による移動時の転倒のおそれ と 動作エネルギーの負担。

四肢の短縮 ・上肢下肢筋力低下 ・関節可動域 制限によ り,動作範囲や姿勢が限 られてお り, また,移動時 に木箱 とござの摩擦や引っかか り があ り,転倒 の危険性があった。移動動作 もェ ネルギー的に負担 となっている等の問題があっ た。

ケース 自身 は,室 内で は車椅子 で な く,低 シー トのいすで座 り ・移動す る生活パ ター ンで

2.X型 リーチヤー

‑125

(4)

(126) 室内移動用いす と食事用 自助具の適応一 骨軟骨形成不全のケースに対 して

過 ご したい との希望があった。

#2.食事での運 び動作効率低下 と食事台の不 安定 さ

上肢ROM制限,筋力低下, リーチ範囲低下, 手指巧微性低下があ り,食事での1本著での口 への運び動作効率低下 していた。 また,配膳工 程で,花瓶台 と菓子箱の簡易食事台組立が余分 な介助工程であ り,簡易食事台その もの も不安 定であった。

2.計画

# 1.移動動作の省力化 と転倒予防のためキャ スター付 き低 シー ト椅子の製作導入

#2.配膳の省力化, 口までの運び動作効率の 向上 させ るため に,回転す る食事台,ス プー ン付 き箸,長柄付 き曲が りスプーン の製作導入

Ⅳ.製 作

1.キャスター付 き低 シー ト椅子 (図3) 木箱 の大 きさや下肢 長 か ら,大 きさが高 さ 22cm,幅35cm,奥行 き20cmのキャス ター付 き低 シー トいす製作 した。移動時 に,床 との摩擦 な どによ り体が前方へつんのめるの を防止するた め, シー トを後ろへず らし,前方面キャス ター 線上 に下肢が くるように した。骨組みはイレク

タ‑ (矢崎化工製)で使用 し, シー ト部 は合板 (t‑ 9mm)にウ レタンを重 ね,合成皮革 で 覆 った。キャス ターはタイヤ直径が3cmの自在 輪 を使 った。全部の材料費は約2000円 となった

2.食事台 (3)

いすの大 きさ,座高や上肢長 を考慮 して,上 部のテーブル面が単独 に回転 し, また,中間部 で も上部が回転で きるようにするため,上部 ・ 中間部 ・下部の3部分 に分けて製作 した。回転 部 はイレクタ一に接続 ジ ョイン トをかぶせてま わるように した。上部テーブル面 までの高 さを 68cmで,テーブルの直径 は31cmとした。中間部 までの高 さは41cmで,直径 を25cmとした。骨組 み はイ レクタ‑ を使 用 し, テー ブル面 は厚 さ 9mmの合板 と化粧合板で製作 した。材料費は約 4500円 となった。

3.フォーク付 き箸 (4参照)

す くい と運び動作 を能率 よくす るため,長 さ 12cmの フォーク (商品名 :ヒメフォーク) を箸 に垂直 よ り後 ろへ45度傾 けて取 り付 けた。材料 費は約150円であった。

4.長柄付 き曲が りスプー ン

スプー ンの柄 を18cmに延長 して,矢部 を手前 に90度下方向に軽度出げた。そ して, カーボ ン 製の釣竿 を45cmに切 り,先端 にネジで取 り付 け

図 3.キャスター付低 シー ト椅子 (右)と食事台 (左)の完成写真図

(5)

金 城 正 治

4.食事台,X型 リーチヤー, フォーク付箸 での食事場面

られるように した。材料費は約1000円であった。

Ⅴ.結 果

室 内移動 につい て, 木箱 の椅子 の変 わ りに キ ャス ター付 き椅子 を製作導入 した。 これによ り, ケース 自身か ら,「前 よ り力 を入れ な くて 移動が可能であ り, ござの引 っかか りな どもな くなった。 また,座 り心地 も良好である」 との 反応が聞かれた。 これにより室内での移動 は楽 にな り,転倒 の危険性 も少 くな くなると推察 さ れた

食事行為の改善 については,キャスター付 き でテーブル面が回転する食事台 を導入 したこと によ り,配膳時の簡易食事台の準備がな くなっ た。そ して,構造的にも安定 してお り,倒れる 可能性 も少 な くなった。 口へ連ぶ動作 で も, フォーク付箸 とリーチ ヤー付 き曲が り柄スプー ンの 自助具の利用 によ り,一本著 よりこぼす こ

127

(127)

とが少 な くな り,動作効率が向上 した。おかゆ や汁 ものは, リーチ ヤー付 き曲が り柄スプーン を利用 した。 これ らの実際の使用場面 は図4に 示 した。

Ⅵ.考 察

骨軟骨形成不全 は遺伝的な要素 もあるが,明 確 な原因は不明で,治療 も有効的な方法がな く, 変形予防が行 われる1)。本ケース も先天性 に発 症 し,四肢短縮,筋力低下や関節可動域制限の 症状がみ られた。そ して,59歳の ときにギラン バ レー症候群 に雁思 し,回復 したが,四肢筋力 が以前 より低下 した。

このケースに対 して,筋力低下の回復 や関節 可動域の回復 は,予後的にみて も困難なので, 現状の身体機能維持 とゆるやかな低下 をめざし なが ら, 日常生活行為の質的向上,動作エネル ギー省力化や二次的障害の予防 を方針 としたア ブ‑ローチを実施 した。特 に今回は室内移動, 食事行為 に対 して実施 した。

ケースは,木箱 を坐位 と移動 に利用 していた。

この木箱での移動時の下肢の動 きと体幹の前後 させ る動作 は,筋力が低下 してお り,椅子 とご ざの摩擦 ・引っかか りな どを考慮するとエネル ギー的に負担があ り,転倒 の危険性 もあった。

リウマチなどのケースでは,両足で駆動する場 合やエ ネルギー負担 を軽減す る場合, キ ャス ター付 きいすが利用 されている2)。そ こで,下 肢長 を考慮 した低 シー トのキャス ター付椅子の 適応があった。

そ して,キャス ター付椅子 の製作導入 によ り, 移動時の動作が楽 にな り,室内での移動空間 も 広がっている。 また,座 り心地 も木箱 よ り良 く なった との反応 もあった。

食事では,上肢 にリーチ制限がある場合は, 長柄付 きフォークやテーブルを直接 回転 させ る 回転式 テーブルな どの 自助 具 を利用 してい る ケース もいる。特 に回転す るテーブルは,風 間 らが筋 ジス トローフィー症 の症例 に対 して3), 安 田が リウマチの症例 に対 して製作 している4'。

これ らは普通の食卓 に回転するテーブルを置い て利用 している。

(6)

(128) 室内移動用いすと食事用自助具の適応一 骨軟骨形成不全のケースに対して‑

今回製作 した食事台は,テーブルと別々でな く一つ として製作 した。食器 を置 く上部は単独 で も回転するが, リーチ障害があるので中間部 を回転 させ ることにより上部 も回転す るように した。 これにより,箸 による食物 までの リーチ 障害が解消で き,配膳の簡易食事台の準備が省 けた。

また , 口 まで の運 び動 作 で は,Ⅹ型 リー チ ヤー とフ ォー ク付 き箸 で代 償 した。 この フォー ク付 き箸は,垂直方向か ら約450後方 に 傾 けてあ り,食べ物 を楽 にさす ことが可能で, 硬い場合 は箸 を口ではさみ,箸 を押 しなが らさ してい た。 また,一本 の箸 よ り歯 の2本 あ る フォー クが,運 び も安定 しているので, こぼす 量 も少 な く目的動作効率が良かった。

このⅩ型 リーチ ヤーの特徴 は,輪 ゴムの作用 で箸 をはさむので,ずれが少 な く,箸 をはさむ 位置や食物 をさす角度 も自由に変 えることがで きていた。 これはてこの原理 を利用 して,操作 や機能の自由度 を大 きくした自助具であった。

しか し,縦方向には固定が弱いので,おかゆや 汁 ものは,長柄付 き曲が りスプー ンを使 う必要 があった。

Ⅶ. 結 論

骨軟骨形成不全 とギラン ・バ レー症候群 によ り四肢 の短縮,筋力低下,関節可動域制限があ るケースに対 して,キャス ター付 き室内いす と

食事用 自助具 を製作 した。

下肢 に駆動 能力が あれば, キ ャス ター付低 シー ト椅子 によ り,移動動作の省力化が可能 と な り,和式生活 における空間拡大が可能 となっ た。 しか し,今後 はよ り生活空間の拡大のため 電動車椅子 との併用 も考慮 してい く必要がある。

食事行為では,肩や肘関節の可動域制限により リーチ障害がある場合 に,テーブル面 を高 くし て,回転す る食事台やⅩ型 リーチ ヤー とフォー ク付箸の利用す ることによ り,食物のつかみや 口まで運ぶ動作効率 を向上 させ ることがで きた。

この ように用具や 自助具 などの使用 により, 動作の省力化 と操作効率の向上や介助負担 を軽 減することが可能 となる。

引用文献

1)天児民和 :整形外科概説,南山堂,1978, pp44‑48.

2)岡崎健 :慢性 関節 リウマチ.土屋弘吉他編, 日常生活活動 (動作) :医歯薬出版,1978, pp253‑254.

3) 風 間忠 道 , 岩 聞 千 恵子 ,谷 中誠 ,他 : Duchene塑 pMD患 者 向 け食事用 自助具

「くる くるテーブル」の開発,理 ・作 ・療 法19:492‑493.1985.

4)安 田智永子 :慢性関節 リウマチ患者 に対す る自助具 一身近 な材料で作 る回転テーブル

‑, OTジャーナル27:573‑574,1993.

参照

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