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雑誌名 情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要

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メディア教育の歩みと展望 : 関西大学・総合情報 学部最終講義を基にして

その他のタイトル The Course and Perspectives of Media Education in Japan : Based on My Final Lecture at Kansai University, Faculty of Informatics

著者 水越 敏行

雑誌名 情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要

巻 20

ページ 51‑58

発行年 2004‑03‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/12247

(2)

メディア教育の歩みと展望

関西大学・総合情報学部 最終講義を基にして

水 越 敏 行

The C o u r s e  and P e r s p e c t i v e s  o f  Media E d u c a t i o n  i n  Japan 

‑ B a s e d  o n  My F i n a l  L e c t u r e  a t  K a n s a i  U n i v e r s i t y ,  F a c u l t y  o f  I n f o r m a t i c s ― 

T o s h i y u k i  MIZUKOSHI 

1 .   During t h e  p a s t  h a l f  c e n t u r y ,  a u d i o ‑ v i s u a l  e d u c a t i o n  and e d u c a t i o n a l  b r o a d c a s t i n g  i n   J a p a n e s e  s c h o o l s  have r e p e a t e d l y  undergone r a d i c a l  changes , . . ̲ ̲ ̲ ,   c i n e m a ,  r a d i o ,   t e l e v i s i o n ,   l i v e  programs t o  r e c o r d e d  o n e s ,   and s o  o n .   The u t i l i z a t i o n  r a t e  o f  e d u c a t i o n a l  t e l e v i s i o n   (ETV) i n c r e a s e d  from 1 9 5 9  (10%) t o  1 9 7 0  (90%) .  According t o  t h e s e  c h a n g e s ,  t h e o r i e s  and  s t r a t e g i e s  o f  ETV  u t i l i z a t i o n  i n  s c h o o l  e d u c a t i o n  have been r a p i d l y  s h i f t e d ,  and r e m o d e l e d .  

2  .  New t e c h n o l o g y  h a s  been i n t r o d u c e d  t o  J a p a n e s e  s c h o o l s  from 1 9 7 5 ' " ' ‑ " 8 5 ;  e s p e c i a l l y ,  t h e   c o m p u t e r .  We  had no p r e v i o u s  e x p e r i e n c e  w i t h  s u c h  k i n d  o f  r a p i d ,   q u a l i t a t i v e l y  d i f f e r e n t   c h a n g e s  from t h e  c a l c u l a t o r ,   w o r d ‑ p r o c e s s o r ,   s p r e a d  s h e e t ,   i n f o r m a t i o n  r e t r i e v a l ,   m u l t i  

‑ m e d i a ,  network u t i l i z a t i o n  and s o  o n .  They have q u i t e  d i f f e r e n t  k i n d s  o f  f u n c t i o n s ,  b u t  t h e y   have been p i l e d  up c o n t i n u o u s l y .  

3 .   What can we l e a r n  from t h e  h i s t o r y  o f  media e d u c a t i o n ,   and how can we c r e a t e  new 

d i g i t a l  media u t i l i z a t i o n  and m e d i a ‑ l i t e r a c y  e d u c a t i o n ?  These a r e  o u r  new t a s k s .  

(3)

52  関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第20 20043月

1  • Audio‑Visual Education

とは?

この

Audio‑VisualEducation

と い う 言 葉 は 第 二 次 世 界 大 戦 中 に , 米 軍 の 対 日 上 陸 作 戦 な ど で

P

も,開発され,活用されてきた.敗戦後の日本に もいち早く導入された. 「視聴覚教育」の訳語が ついた.そのまま和訳すれば, 「聴視覚教育」に な る は ずだが,なぜ逆転させて『視聴覚』とした のであろうか?この疑問を私は学生時代からずっ と持ち続けてきた.この訳語を当てた有光成徳と 懇意に成り,教えていただけたのは,

1 9 8 0

年 代 中 頃になってからであった.

A u d i o V i s u a l  E d u c a t i o n  

0なぜ「聴視覚」でなくて「視聴覚」教育か?

o  Audio=Radio  o V i s u a l ?  

‑ T e l e v i s i o n  o r  Cinema‑

Audio=

ラ ジ オ で あ る こ と は , 容 易 に 分 か る が , 問 題 は

Visual

が , 映 画 な の か , テ レ ビ な の か , そ れ と も 写 真 な ど の 静 止 画 も 含 む の か と い う 点 で あ る . 有 光 に よ れ ば , 映 画 を 意 識 し て い た . テ レ ビ ジ ョ ン は ま だ 日 本 の 学 校 教 育 に は , 登 場 し て い な か っ た . す で に 戦 前 か ら , 映 画 を 使 っ た 映 像教育は始まっており,進駐軍なども盛んに持ち込んで紹介した.真空管ラジオによる 教育よりも,より具体的な経験を提供できる, というような思いを込めて,意図的に逆転して翻 訳したのだという.

そ の 後 は , ご 案 内 のようにテレビジョンが開発され,放送教育でも花形に躍り出たので,ラジ オと併用はしても,この「視聴覚」教育という訳語は,抵抗なく定着していったのである.

2 .   NHK

学 校 放 送 の 発 足

ラ ジ オ か ら テ レ ビ ヘ の 切 り 替 え は , 急 速 に 各 地

で 進 め ら れ た . テ レ ビ の 本 放 送 開 始 と 同 じ 昭 和 卜

1 2 .   NHK学校放送の発足

2 8   ( 1 9 5 3 )

年に,

1 5

分 間 の 教 育 番 組 を 毎 週 流 し て いたことは,注目したい.

さ ら に 昭 和

3 4 ( 1 9 5 9 )

年 , 東 京 と 大 阪 で ,

NHK

教 育 テ レ ビ が 開 局 し た . そ の 当 時 , ラ ジ オ

と テ レ ビの両方を利用できる環境にあった学校で は , ラ ジ オ か ら テ レビ利用の放送教育に,急速に 切り替わっていった事実は,注目されてよい.

以上の経過から,私は次の点に,注目してみたい.

o

ラジオからテレビションヘの切り替え

(しかもラジオも生き残る。強い分野に特定して)

o

一般番組と教育番組との二本立ての英断。

o白黒からカラーテレビヘの切り替え。

(幼児・低学年から)

(理科番絹から)

一 つ は,テレビジョンの発足当初から,教育放送が組み込まれていたこと,さらに一般番組と

(4)

教育番組との 2 局体制が,早い時期からとられた

こと.世界各国の放送教育を見渡しても,このよ P 

うな構想を持って,スタートさせた国は,稀有の 例である.

一方ラジオでの学校放送は,その後も継続され ていくが,ラジオという聴覚だけのメディアが持 つ強み,例えば音楽教室,音楽の旅,ラジオ図書 館,英語教室,青年期の探求などの分野で,新し い道を切り開いていった.これはメディアの交代 期に見られる特徴とも言える.

2‑1.  小学校の放送利用率

【 小 学 校 】

(100%=全学校)

50 

年 度125 27  29  32  33  35  37  39  41  43  45  47  49  51  53  55  57  59  61  63 

さらにテレビジョンそれ自体が,白黒からカ ラーに順次切り替えられていく.高度経済成長,

2 2 .   中学校の放送利用率

皇太子のご成婚,東京オリンピックと重なるこの 1 9 6 0 年代は,テレビの台数も倍増を続けると共 に,カラー放送が始まり,それが幼児向け,小学 校低学年向けから,次第に上の学年へ,教科では 理科番組から,カラー放送に切り替わっていくの である.その爆発的な普及と利用率の向上は,他

 

!OOr 

50 

[ 中 学 校 】 (100%=全学校)

NHKテレビ

一 学 校 放 送 利 用 率 VTR普 及 牢

••••• NHKラジオ 学校放送利用率

のメディアには近代学校の 1 2 0 年でも,比類がない.(図 2‑ 1,  図 2‑ 2 を参照)

3 .   VTR の出現が放送教育を変えた

オープンリール方式ではあったが,簡易 VTR が学校現場に普及しだしたことは,放送教育に質 P

変化をもたらした.「生(番組),丸ごと,継続 利用」と言うのが,放送教育の原則とされ,教師 もまた生徒と同じに,生番組を視聴し,そこから の発展的な学習を展開していくことを強調する立 場が主流とみなされてきた.

ところがビデオを利用するとなれば,この三原 則は,崩れていく.教師の主体性がより強く発揮

1 3 .   VTR の出現が放送教育を変えた

o 中学校・高校•特殊教育学校で利用が急増。

o

「生〜丸ごと〜継続」の放送教育3原則が崩 れだす。

o

録画・分断・リピート・反復利用の出現。

0番組制作もフィルムからビデオテープに。

生放送から録画(編集)放送へ。

されるようになる.それはまた,中学校,高校,あるいは特殊教育学校などでの放送利用を急伸

させることにもなった(図 2‑ 1 ,   図 2‑2 を参照).教科担任制であるがために,放送番組に

合わせて,教科の時間割や活動を柔軟に変更していけるような小学校,幼稚園・保育所とは,同

列に語ることは出来なかった.録画ー再生利用だけでなく,一部分だけの利用,繰り返し視聴,

(5)

5 4  

関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第20号 20043月

消音利用など,新しい利用法が開発され,普及していったのも,これらの校種であった.

一方また送り手側も,生放送から録画・録音に,フィルムからビデオテープに切り替えてい

<.番組の編成,収録,編集の仕方などが,決定的に変化・向上してきた.

4  • 放送番組の質変化

既に述べてきたが,カラー化とビデオ録画の普 及は,番組編成にも大きく影響してきた.学年 l

別,教科別の番組編成,例えば理科教室とか,小

学校 5 年生というような「たて•横の特定」が,

一般化してきた.月曜日から土曜日まで,朝から 夕方までというような大きな升目の番組構成表 が,各校種別に作成されていった.

しかし教科中心の番組に加えて,総合的学習に 類する番組(後述する環境教育番組など),特別

1 4 放送番組の質変化

o

学年(縦)と教科(横)を特定した番組編成。

(小学校 5年生=理科教室)

o中学や高校には「特別シリーズ番組」も。

o

英語や他の外国語は教育番組と別枠で。

o

総合的学習の番組も登場。

*環境教育(みどりの地球〜)

*国際理解教育(地球たべもの大百科)

*教科横断(こめ、川)

シリーズ番組(中学校),高等学校講座など,通年の番組でないシリーズ番組が,登場してくる.

この頃 ( 1 9 8 0 年代)がわが国の放送教育が,最も普及発展した時期であろう.しかし既に中等教 育には陰りが見えてきており,その後の急激な衰退の兆しは,見え始めてもいる.特別シリーズ の番組を組み,それを初級と上級に分けて,中学と高校向けに,昼休み時間に放送したことは,

この急衰退の直接原因ともなった.

他方では「みどりの地球」 ( 1 9 7 5 年 , NHK 名古屋)が,わが国では最初の環境教育番組で,例 えば公園に咲くツッジの花や葉に,白い点々がつく.これは酸性の雨が降った証である, という ような身近な環境問題を投げかけてきた.ただこの番組の利用率は,最低の数字が続き,ついに 1 0 年後の 1 9 8 5 年で,打ち切りとなった.わが国の環境教育番組の先駆けが,惨めな数字しか残せ なかった理由は,ただ一つ.番組の質ではなくて,小学校高学年から中学生に対象を絞ったこの 番組を「利用できる時間帯」,これが確保できなかったということである.環境教育の重要性を教 師も自覚しており, NHK もそのために小学校高学年から,中学生にかけての環境教育番組を作 成したわけであるが,理科,社会科,あるいは道徳の時間を犠牲にして,この番組の視聴に向か

う教師の数は,多くは望めなかった.視聴率の史上最低が1 0 年も続いた理由は,ここにある.

その後に「学校自由裁量の時間」,そして今では総合的学習の時間が,年間に 1 0 0 時間を越えて

利用できる時代になってきた. 1 9 8 5 年に番組を中断せずに,もう数年継続しておれば,日本の学

校放送では,昭和5 0 ( 1 9 7 5 ) 年以来,環境教育番組の制作と実践活用をしてきている,と世界に

向けて宣言できたのであるが.

(6)

5  • 放送の生き残りをかけて

放送 ( b r o a d ‑ c a s t ) は,広く播くメディアと言 える.中央の放送局から津々浦々にかけて,一方

向の情報を伝播するという本来の機能だけで,生 I 

き残れる時代ではなくなってきた.ネットワーク 社会が地球規模で広がり,情報の受け手と送り手

とが,いつでも入れ替わり,「平行実存 ( p a r a l ‑ l e l ‑ r e a l i t y ) 」できるような社会が現実に到来し ている.(石井威望,産経新聞, 2003 年 7 月 1 8 日 )

地上波デジタルと BS (放送衛星),それに c s

1 5 放送は一方向・広播性だけでは 生き残れない時代に

o 「テレビの消える日」 ( G e o r g eG i l d e r ,  

1993)

o デジタル放送とコンピュータの連携(広播性と双

方向性の組み合わせは、可能か?)

o ケーブルテレビでインターネットサービスを。

(CATV) 

o 衛星放送・多チャンネル化で地上波

TV

はどうな るのか?特にアジアの途上国は?

(通信衛星)という組み合わせができたり,デジタル放送と無線ネットに第三世代携帯電話とい う 1 台 3 役の融合端末が, NTT, NHK,  大手の民放などで開発されても,双方向性の映像情報 の送受が,いつでも,どこでも,誰にでも出来るわけには行かない.まだ現行の CATV の方が,

利用の利便性,多様性,それに費用面で,優れているとも言えよう. Broad‑casting と Narrow

‑ c a s t i n g ;  一方向性と双方向性は,それほど単純に両極概念では,整理がつかないであろう.

さらに赤道上の通信衛星の下にあるアジア諸国では,世界中の番組が直接降り注いでくるため に,自国の放送番組の視聴率が激減し,やむなく公共放送でもローカル番組を主にせざるを得な い実態が,出てきている. (シンガポール,マレーシア,スリランカ,ィンドなど,英語が普及 した南アジアでは,殊更に).

6 .   CD‑ROM と動画クリップ

コンピュータの普及と質変化,これについては

後 述 す る が , デ ジ タ ル 化 の 進 展 で , こ れ ま で の

1 6 .   CD‑ROM 、動画クリップの登場 別々のメディアが,統合されていく中で,放送や

視聴覚教育にも,革命的な変化の波が押し寄せて きた.ここではいくつかの事例に限定して紹介し てみる.

*「文京文学館」 1 9 8 9 年,中野照海ら国際基督教

大学の現役•

OB の研究者を中心にして,開発さ れた CD‑ROM 教材である.文京区ゆかりの文人

o 「文京文学館」

1989

年、中野照海らが開発。

o 「人と森林」

1990

年 、

NHK

で開発。

o 「おこめ」

2001

年 、

NHK

で動画クリップ付。

o  V a n n e v a r  B u s h ;  As we may t h i n k . ‑ m e m e x  

(1945)

の夢がかなう。

o 一斉視聴から個別化・個性化視聴への道が。

たちが,あたかも一堂に同居しているような仮想の文学館をデジタル画面上に構成し,文人の書 斎,執筆中の原稿,渡り廊下などを個人の好みで,訪問できるように構成してある.

*「人と森林」 1 9 9 0 年 , NHK が 開 発 森 林 の も た ら す 光 合 成 や , 森 林 浴 効 果 な ど の 動 画 , 足 尾

(7)

5 6   関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第

20 2004年 3月

銅山の公害とその回復への手立て,焼畑農業がもたらす森林破壊,などのクリップを収めて,好 みの静止画をクリックして,学びを深めていく仕組み.これは大阪大学人間科学部の教育技術学 研究室が,金沢市内の小学校などで,実証研究を続けてきた.

*「たったひとつの地球」 1 9 9 8 年 , NHK が高学年向けに放送開始.これはインターネット対応 を当初から予定しており,「インターネット・コーナー」を特設し,番組ホームページの紹介,番 組に関連するイベントやアンケートの紹介,さまざまな学校での番組とインターネット利用の様 子をモデルとして紹介した.利用した学校は,専用の Web ページを立ち上げ,掲示板への書き 込み,テレビ会議システム利用の交流学習などにつなげていく.当時,金沢大学の黒上晴夫助教 授(現在は関西大学教授)らのグループが, この「インターネットスクール」の立ち上げ,交流を支 援した.

*「おこめ」など,その後の NHK 学校放送で,総合的学習を支援する番組が,開発され,現在 も継続して展開されている.いずれも上記した一連の交流学習,動画の一斉視聴と静止画の選択

利用,実体験学習などの可能性を結び付けようとするものである.関西大学大学院•総合情報学

研究科の大学院生が,交流学習の仲介と支援をしてきた.

7  • コンピュータの教育利用の激変

学校に登場した教材・教具の中で,コンピュー 夕ほど,劇的な変化と発展を見せたメディアは,

他 に 類 を 見 な い . 先 に 見 て き た テ レ ビ ジ ョ ン で も , 白 黒 か ら カ ラ ー に , ア ナ ロ グ か ら デ ジ タ ル に , CATV や 放 送 衛 星 利 用 ( C S ) に,録画機も オープンリールからカセットに,さらに DVD に , というような激しい変化と発展は遂げてきた.し かしコンピュータの場合は,利用の目的そのもの が,全く異質なものに変化していくこと.しかも

1 7 コンピュータの教育利用の激変

0

電子計算機(弾道計算〜データ処理計算)。

oCAI

CMI

で個別教育と評価、成績管理。

o ツール学習(表計算、集計、検索、ワープロ)。

o コンピュータネットワーク(電子メール、

HP.

等 ) 。 o 新メディア(マルチメディア・双方向性のメディア)。

o これらの変化が半世紀たらずで。しかも前のもの を下積みにして、その上に。

以前の機能を棄てるのではなくて,その中に組み込んだり,下敷きにしながら,異質なものへと

変化•

発展していく.その意味では,他に比較できるものが,見当たらないといえる.

( 1 )   電子計算機として.大砲やミサイルなどの弾道計算から始まり,気象予測,そしてデータ 処理に.

( 2 )   CAI とか CMI で,個別学習の支援として.また出席や成績処理,特に相対評価など.

( 3 )   ツール学習(表計算,集計,情報検索,ワードプロセッサー,など)に.

( 4 )   コンピュータネットワークとして.電子メール,ホームページ,掲示板,交流学習などの 双方向学習.

( 5 )   ニューメディアとして.多メディアの統合体としてのマルチメディア,個人が選べる動

(8)

画・静止画(クリップなど).

なお坂村 健は,弾道計算のような軍事目的利用,気象予測などの数値計算,ワープロに代表 される記号処理,マルチメディアとしての活用,情報を加工し再構成しての発信などを半世紀の

開発•

発展の歴史を振り返りつつ,まとめている.

さて問題は,こうした急激な変化がわずかに半世紀で起こり,前のものを内包しながら,絶え ず新しい機能を表面に出してくる.教育界では, CAI やCMI に打ち込んで,コンピュータ利用を してきた教師は,ワープロとして,あるいは電子メールや交流の手段が主になる使い方には,心 を開けられない者も少なくない.算数の個別学習用のドリルソフトを,夏休みかけて開発したよ うな経験のある教師には,コミュニケーションの媒体,増幅器としてのそれには,どうしてもな じめない者が,なお現存する.

その点,放送メディアにはそうした異質性と非連続性は見られない.しかし教育のメディアと しては,単独では衰退の一途をたどるしかないであろう.地上波デジタル放送の普及は,学校で も家庭でも,いつでもどこでも放送が視聴できるだけでなくて,コンピュータでノンリニア編集 をしたり,マルチメディアの一つとして組み込んだ利用も容易に出来るようになる事を意味す る.

e~Learning の教材の中の一つに数えることも出来るようになろう.例えば小学校高学年向

けに現在放送されている「おこめ」 (総合的学習)とか「にんげん日本史」 (社会科)などは,

1 5 分の番組と,いくつかの動画クリップで構成されていることは,前記した.このセットは,異 なる機能というか,目的をもっており,それがワンセットになっている. 1 5 分番組はクラス全員 が一斉視聴し,動画クリップでは,個々の児童の興味関心に応じた発展学習を意図している.そ れとメールや掲示板などでの交流学習で,つながりをつけていく.こういう何重かの映像の利用

と ICT 教育とのリンクが,一つの生きる道と思われる.

しかしながら「一方向性・広播性」という放送本来の機能が,各国の衛星放送が競い合う今日 では,その重要性を更に増してきていることも事実である.年間に 2 0 本の番組を前もって企画 し,制作しておいて,順番に定時番組として放送していく現在の学校放送のシステムそのもの が,見直される時でもあろう. 「週間子どもニュース」のような(オーストラリアでは, Behind t h e   News) ニュースの速報性と,背景の解説とを兼ねたような番組が,候補の一つであろう.

BS ニュースを日本語通訳なしで,生放送する企画も考える時期であろう.生きた外国語を学ぶ のにこれ以上の教材はなかろう.

(注)この論文は,関西大学総合情報学部で,平成 1 5 年 1 月に行った水越の最終講義を基にし て,加筆したものである.

参考文献

〔 1 〕全放連・日本放送教育学会(編) 『放送教育 5 0 年 ーその歩みと展望一』 (日本放送教育

協会, 1 9 8 6 )

(9)

5 8  

関西大学総合情報学部紀要「情報研究

J

2 0

2 0 0 4

3

〔 2 〕中野照海著『教育メディアとともに』 (日本放送教育協会, 2 0 0 2 )

〔 3 〕水越敏行・ ICTE 編著『メディアとコミュニケーションの教育』 (日本文教出版, 2 0 0 2 )

〔 4 〕 NHK 放送文化研究所・監修『放送の 2 0 世紀』 (NHK 出版, 2 0 0 2 )

〔 5 〕水越敏行編著『「おこめ」で広がる総合的学習』 NHK デジタル教材の活用, (明治図 書 , 2 0 0 2 年 )

〔 6 〕坂村健著『コンピュータはどこへ』(岩波書店, 1 9 9 8 )

〔 7 〕 Bikkar S .   Randhawa/ William E .  Coffman ( e d s . )   V i s u a l  L e a r n i n g ,   T h i n k i n g ,  and 

Communication.  (Academic P r e s s ,  1 9 7 8 )  

参照

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