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3)― 信頼と性の効果 ―

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

自己開放性(Self‑Disclosure)に関する一研究(

3)― 信頼と性の効果 ―

著者 上田 敏見, 末松 靖子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 15

ページ 39‑47

発行年 1979‑03‑23

その他のタイトル A Study of Self‑Disclosure ― Effect of Trust and Sex upon Self‑disclosing Behavior ―

URL http://hdl.handle.net/10105/6406

(2)

自己開放性(Self−Disc1osure)に関する一研究(3〕*

一信頼と性の効果一

        * *

上 田 敏 見

 (心理学教室)

         * ヰ *

 末 松 靖 子

(奈良市立柳生小学校)

 自己開放性に関する実験室研究においても、実験者一被験者間に相互性が成立することが一貫 して報告されている(Jourard&Friedman,1970;Der1ega,Harris&Chikin,1973;Davis&

Skinner,1974)。しかし、相互性を成立させるメカニズムについては必ずしも明らかにされてい

ない。

 Rubin(1974)は、相互性の効果は、「モデリング」と「信頼」と呼ばれる2つの異なるプロセ スの一方あるいは双方によって生ずると考えた。「モデリング」とは、実験場面の要求(situational demands)に対して適切な反応をしようとして、被験者が自らの自己開放性を他者の反応に対応 させ、つり合わせようと反応することである。つまり、Aの自己開放性は、ある特定の場面に要 求されるintimacy(以下ITMと略す,親密さの度合)の程度に関して、Bの側の手がかりとして 役立ち、Bはそれを彼自身の自己開放性の指針(馴ide)として利用することにより・相互性が成 立するわけである。

 さらに、「信頼」については、ある人物の自分によせてくれる信頼を反映するものとして、相互 性に影響すると述べられている。つまり、Aが自らについて親密な内容をBにdiscloseすると、

BはAが自分に対して好感をもち信頼をよせているとうけとめ、それへの返報として、自分自身 に関する親密な内容をdiscloseすることによってAへの信頼を表明し、彼を安心させるという過 程である。

 Derlega&Chakin(1974)もほぼ同様な見解を示し、AのBへの親密な自己開放性は、Aの Bによせる信頼の手がかりとしてはたらき、Bはその返報としてAを信頼できると考え、Aに親 密な自己開放性を返すようになり、ここに相互性の成立を見るのであるという。彼らは実験室に

おいて、被験者に自分自身のことについて記述を求めナこが、この際、その内容は秘密にすると約 東された。なお、被験者が記述し易くするため実験者が退室する間に、サクラ(confederate)が 被験者に、記述された自己開放性を誰にも見せないという秘密が守られるという情報を与えるか、

守られないという情報を与えるかによって、信頼の有・無を操作した。

 Rubin(1975)は空港という自然場面を用いて被験者の自己記述を求めた。実験Iでは、被験

} AStudyofSelf−Disclosure

    −Eff㏄t of Tmst a出Sex upon艶正一disclosing Behavior

榊  Toshimi Ueda(影partment of Psychology,Nara University of Education,Nara)

*榊Yasuko Suematsu(狛g㎞Ebmentary School,Nara)

(3)

者の自己言己述を実験者だけが読む群(高信頼群)と、実験仲間の誰が読むかは分らないが、完全 な匿名性が守られるので筆者は全然不明であると教示する群(低信頼群)を用いた。実験皿にお いては、自己記述のサンプルとして実験者の自己開放性を記述して見せる際、メッセージをおぼ えておき、その被験者のために個人的に創作したものとの印象を与えつつ記述する群(高信頼群)、

いずれの被験者にも同一のメッセージを示すという印象を与えるため、メッセージの書かれたカー ドをただ書き写すだけの群(低信頼群)の2群を設け、信頼の操作がなされた。しかし、明確な 結論を導き出すことができなかった。

 これは、モデリング、性、I TMなど多数の変数が用いられたために信頼のみに焦点を合わせ た解釈ができなかったこと、信頼の操作が必ずしも十分でなかったこと、などによるものと解さ れる。信頼の過程から考えるならば、実験者が最初被験者に会った時、彼を信頼しているという 強い印象を与えることが信頼交換開始の手がかりとしてきわめて大切なものといえよ㌔そこで 本研究においてはこの点に着目し、若干の改良を工夫した。先ず、実験の開始に当って実験者が

自己紹介をし、ラポート形成のためにしぱらく被験者と談話するという操作を高信頼群に与えた のである。

 次に、自己開放性に及ぼす性の効果であるが、従来なされて来た多数の研究は必ずしも一貫し た結果を示していない。同性間組み合わせと異性間組み合わせの比較検討に限ってみても、その 報告はまちまちであり、しかも、実験室研究の大多数は女性一女性という同性間組み合わせであ る(Cozby,1973;Goodstein&Reinecker,1974)。そこで本研究では、女性の実験者と男女の 被験者を用いた同性組み合わせ群・異性組み合わせ群を設け、被験者の自己開放性の差異を検討

する。

 最後に、自己開放性の測定の1側面であるI TM評定において、従来なされて来たほとんどの 実験室研究では、実験者あるいは他の評定者が一定の評定基準に従ってなす客観評定が用いられ ている。しかしながら、自己開放性のI TMの評定においては、その自己開放した当人の感じて いるI TMレベルの高低が、ひとつの大きな意義をもつと思われる。Rubin(1975)は客観的評 定のみを用いたが、その不十分さを示唆している。そこで本研究においては、I TMの主観評定 基準を考案し、客観評定に加えて、被験者自身によるI TMの主観評定をも用いることとした。

 このようにして、本研究の目的は、次の仮説を検証することである。

 11〕高信頼群の自己開放性は低信頼群のそれより多大であろう。

 12〕同性組み合わせ群の自己開放性は、異性組み合わせ群のそれより多大であろう。

方       法

 実験計画  2×2の要因計画が用いられた。第1の要因は、実験場面の信頼操作の高・低で ある。第2の要因は、女性の実験者と男女被験者の組み合わせで、同性の場合と異性の場合であ

る。

 被験者  奈良教育大学1回生、男子30名、女子30名、計60名。いずれも実験者とは初対面

一40一

(4)

のもの。

 材 科 11〕自己開放性記述用紙:縦20㎝×横14㎝の枠が印刷され、上端から8㎝のところで 上下に区切られている。上部に実験者の自己開放の記述があり、下部に被験者の自己開放記述が なされる。

     12〕評定用紙:実験終了後、実験場面に対しての被験者の評定を求めた。項目は次の 通りで、それぞれ5段階評定尺度が用いられた。 1イ〕実験者に対する好意度(全く好意をもナこ なかった一非常に好意をもった)、1口〕実験者から被験者への信頼の推測(全く信頼していない一 非常に信頼している)、い 被験者から実験者への信頼(全く信頼しなかった一非常に信頼した)、

H 被験者の自己開放性のI TM(いつでも誰にでも公開し話せる、自己のごく表面的で皮相的 なこと一最も親しい人にしか話せないプライベートなこと、自己の本質にかかわること)、㈱ 実 験者の自己開放性のI TM〔Hと同じ〕。

 なお、実験者が上部に書いた文章が影響したか、自己記述に抵抗があったか、実験に対する感 想なども報告してもらった。

     13〕録音テープ:実験の教示を一定に保つため、高信頼群・低信頼群別の教示(実験 者の声)の録音テープを使用した。

 手慣き  奈良教育大学心理学第王実験室で個別実験が実施された。被験者をできる限りリラ・ソ クスさせるため、1人掛けのソファやテーブル、花などが配置された。信頼の操作は次のように してなされた。但し、《 》内は高信頼群のみで、それ以外はすべて両群共通である。

 被験者入室後、実験者と被験者は、テーブルをはさんで向い合って座った。11〕ラポート形成

(但し、高信頼群のみ):《実験者は自己紹介をし、ラポート形成のため被験者としぱらくの間談 話をする。話題は、大学生活に関することと、心理学の講義などを受講した感想などに限定した。

その後、実験の見せかけ上の目的を次のように説明した。「心理学には多くの領域があります。たと えば、教育心理学や児童心理学などです。その中でも私は、人の筆跡と性格との関係に興味をも ち、今その研究をしているところです。」》12〕教示:「では早速ですが始めたいと思います。こ れから、あなたにやって頂きたいことに関して、テープで説明しますので、よく聞いて下さい。

分らない所があれば、テープを聞き終えてから質問して下さい。」以下はテープに録音された教示 である。「私達は、研究室の共同研究の一環として、他の人々の筆跡と私達自身の筆跡を比較対照 する研究を行っていますので、御協力をお願いします。この用紙は、上下2段に分れていますが、

この上の欄には、今から私が、筆跡のサンプルとして、私自身のことについて書きます。そして 私は席をはずしますので、あなたはその間に、あなた自身のことについて数行の文章で書いて下 さい。あなた自身についてのことなら、何を書かれても結構です。内容は自由です。《また、あな たが書かれた文章は、分析のために私が目を通すだけで、他の誰にも見せませんし、決して口外 もしませんから、安心して何でも書いて下さい》なお、この研究は、私達の書いたものと他の人々 のものとを比較対照するための研究ですから、あなたの字が美しいとか下手とかいうことは全く 問題になりませんので、気楽にふだんのままの字で書いて下さい」。テープ終ア後、被験者からの 質問を受け孔なお、書く内容についての質問には、「あなた自身のことについて書いて下さい。」

(5)

とだけ答えた。制 自己開放性の記述:「では、今から私が筆跡のサンプルとして、私自身のこと について上の欄に書きますので、少しお待ち下さい。」低信頼群では、机上の端の方に置いてあった 下書己のメッセージの書かれたカードを取り、それをただ書き写す。書いている間は被験者の方を 見ない。どの被験者にも同一のメッセージを書き写しているのだという印象を与え乱《高信頼群 の場合、メッセージの内容を記憶しておき、書いている間に時々顔をあげて、その被験者に対し 個人的にメッセージを創作しているという印象を与えながら記述する。》

 〔実験者の自己開放の内容〕

  私の名前は末松靖子です。私の性格はあまりに外向的すぎて、いつも、友人から八方美人だ と言われます。たびたび出しゃぱりすぎて、人からいやがられていることを自分自身肌に感じる ことがあり、後悔するのですが、その時ではもう手おくれなので、いつも困ってしまいます。

「これが私の筆跡のサンプルです。では、今からあなたは、この下の欄に、あなた自身のことに ついて何でも結構ですから、数行の文章で書いて下さい。私はあちらの方へ席をはずしますので、

書き終ったら知らせて下さい。では、はじめて下さい。」

 実験者は、同室内のはなれた場所(被験者から実験者を見ることができるが、実験者は被験者 の方を向いていない)に席を移す。被験者は自己開放を記述する。時間制限は設けなかった。

14〕被験者による評定:被験者から記述終了の合図があると、実験者はもとの席にもどる。書か れた内容にさっと目を通してから評定用紙を被験者に渡す。「次に、今あなたにやって頂いたこと に関して、あなたがどう感じられたかを、この用紙に答えて下さい。」といい、この記入がすむと、

実験の協力に対して謝辞を述べる。被験者が退室する。

 被験者の自己開放性のI TMに関する客観評定:評定者は大学生男女各2名。それぞれが1〜

5点のI TM評定を行い、男子2名の平均点が男子の客観評定点、女子2名の平均点が女子の客 観評定点として用いられ、4名の平均得点が客観秤雫得点として用㌣・られた。評定は次に示すよ

うな、Rubin(1975)と同様な評定基準にもとづいて行われ、各記述文の中で最もI TMの高い 部分について得点化するよう教示された。評定基準の混同をさけるため、文章の長さや記名の有 無は評定対象から除外された。また記入された被験青の名前はすべて抹消された。上述の4名の 評定者は、被験者の条件を全く知らされず、各記述文をランダム順に評定した。評定の一致度は 男子では.60(P<・001)、女子では.57(P<.001)、男女間では.58(P<・OO1)であった。

 〔評定基準〕

 1点:自己のことから離れた所に焦点をおいている。2点:自己の公的側面で、国勢調査の資 料となるようなもの。情緒や態度は含まれない。3点:より詳細な自己の公的側面で、家庭につ いての詳細など。情緒や態度については、比較的ステレオタイプに表現されている。4点:個人 的性質の属性。健康、知覚、態度など。5点1明らかに親密な自己の側面。

 Rub㎞(1975)はこのような評定基準を用いて客観評定のみを行ったが、本研究では被験者自 身によるI TM主観評定に、次に示すような5段階尺度を用いるので、評定者にはこの両者を考 慮に入れて評定するよう求めた。

一42一

(6)

1点

いつでも誰にでも公開し 話せる、自己のごく表面 的で皮相的なこと。

2点      3点

中等度

4点     5点

景も親しい人にしか話せない プライベートなこと。自己の 本質にかかわること。

 自己開放量の測定:従来の実験室研究においては、被験者が自己開放に要した時間や記述され た文の語教を測定し、それを自己開放量の測度とすることが多かった。しかし、日本語の字数は 英語の語数に対応するものとは考え難いので、本研究では、文節数を測定することとした。ここで いう文節とは、「自然な発音をして、文をできるだけ数多く句切った最少の単位。意味上の単位で あり、また文の構造上の単位概念」(広辞林)である。

 以上の手続きで実験が行われ、被験者の示した自己開放性の測度として、質の面からは、被験 者によるI TMの主観評定と、評定者による客観評定(いずれも5段階尺度)、量の面からは、文 節数が用いられた。なお、実験操作の有効性をたしかめるため、被験者評定にもとづき、実験者 から被験者への信頼と、それに対応する被験者から実験者への信頼が5段階尺度で評定された、、

結       果

 信藤評定 実験者から被験者への信頼得点平均は、同性間の低条件300、高条件は387、異 性閲の低条件2.67、高条件は4.07となり、被験者から実験者への信頼得点平均は、同性間の低条 件3.40、高条件は4.40、異性間の低条件3.53、高条件は4.27であった。これらの平均値にも とづく分散分析の結果は表1に示されるが、ここに明らかなように、信頼の主効果はいずれの場 合にも有意となった。すなわち、本実験における信頼操作は有効であったといえる。また、被験       表1 信頼樽点平均にもとづく分散分析

Source F   値

実験者からの信頼  被験者からの信頼

A(同性・一異性)

1

0.18        0

B(信頼の高・低)

1 49.40**      22.53**

A × B

1 2,72      0.53

errOr 56

榊一P<.O1

榊一P<O1

者が感じた実験者からの信頼と、被験者から実験者への信頼評定間には中等度の相関がみられた

(r=、52、 戸<二.001)o

 自己開放性の測定  実験者が呈示した自己開放性記述の文節数は30、被験者評定によるI T M平均は2.6であった。表2に示されるように、この評定平均値にもとづく分散分析を試みた結 果、組み合わせの主効果および信頼の主効果はともに有意とならなかった。すなわち、実験者が 呈示した自己開放性言己述文は、実験者一被験者の組み合わせの同性・異性にかかわらず、また、

信頼の高低にかかわらず、被験者には一様に、I TM中等度のもgとうけとめられており、条件 の斉一性が保たれていたと考えられる。

(7)

 被験者の自己開放性のI TM得点平均は、

主観評定の場合、同性間の低条件2.20、高 条件はZ40、異性閲の低条件1.53、高条件 は2.27となった。評定者による客観評定の 場合、同性間の低条件2.92、高条件は2.95 異性間の低条件2.07、高条件は3,27であっ た(図1)。これらの平均値にもとづく分散 分析の結果の要約は表2に示されるが、こ こに明らかなように、客観評定程点の分散 分析においては、信頼の主効果と信頼×組 み合わせの交互作用が有意となった。そこ でさらに単純効果の検定を試みたところ、

異性組み合わせ群の高信頼条件と低信頼条 件の間( =3,67、 =56,P<.01)、低 信頼条件の同性組み合わせ群と異性組み合 わせ群の間(オユ2.60,a/=56、ρ<.05)

に、それぞれ、有意差が認められた。また、

主観評定得点の分散分析においては、すべ ての主効果、交互作用が有意水準に達しな かったが、低信頼条件における同性組み合 わせ群の得点が異性のそれより高く、高信

50

40

1

T

M3.

得 点

2,0

1.0

       13.27〕

       同性

(2.92) 一一一一一一一一一一一一一..一 (2.95〕

(2,07〕

異性

   低       高        信頼操作

図1 被験者の自己開放性のITM得点平均    (客観評定)

頼条件では、両群の得点が接近するパターンを示し(図2)、客観評定得点の示すパターンときわ めて類似していた。そこで、主観評定得点と客観評定得点との間の相関をとったところ、r=.42、

戸<.001という中等度の相関値を得た。

 さらに、自己開放量の測度とした文節数の平均は、同性間の低条件40.47、高条件は50.20、異 性間の低条件34.67、高条件は46.40となり、これを分散分析にかけた結果、信頼の主効果が有意

となった。組み合わせ(同性・異性)の主効果は有意水準に達しなかったが、信頼の高・低両条 件を通じて、同性組み合わせ群の文節数は、異性組み合わせ群のそれより多い傾向がみられた

(図3)。

     表2 自己開放性の各測度の平均値にもとづく分散分析(要約)

So㎜・ce 実験者の自己開放性のITM

開放性のITM

被験者の自己

開放性のITM

被験者の自己 文節数

(主観評定) (客観評定)

A(同性・異性) 1 0,48 1.85

1.33 1.70

B(信頼の高・低)

1

0.06 2,52 7,13榊 &49わ

A× B

1

O.84 0.82

6.83‡

0−07

errOr 56

舳…Pく、01.

〕く∩5

849榊

P<:.O1、      〕<=.05

一44一

(8)

5.O

50

^〔50120)

4.0 (46.40)

同性。

I

T

M 3.0

得 点

      ..壁一一一一刈2・40)

(2.20)ケー一 .

@    (2・27〕

   40.州1 節40

異性

2.0

異性

(1.53〕 (34.67)

1.0

30

0       一    低      局        信頼操作

図2 被験者の自己開放性のITM得点平均    (主観評定〕

   低       高        信頼操作 図3 文節数の平均

 最後に、自己開放性の質と量の側面がいかなる関連性をもつかを検討するため、I TM評定と 文節数との相関を算出した。短文でI TMの高い内容を述べることもあり、逆に、長文でありな がらI TMの低い内容を述べることもあり得るが、一般的にいえば、自己開放量が多いほど、I TMも高くなるであろうと考えられる。そこで客観評定によるI TM得点と文節数の間の相関を 求めたところ、中等度の相関(γ=.43,P<.001)が得られた。

 なお、被験者の実験者に対する好意度(5段階尺度による評定点)を分散分析にかけたところ、

信頼の主効果が有意となった(F=13.1,d∫士垢 P<.01)。すなわち、同性組み合わせ・異 性組み合わせのいかんにかかわらず、高信頼条件における被験者の実験者に対する好意度(支=

4.43)は低信頼条件における好意度(マ=3.76)より高いといえる。

考      察

 本研究で得られた主な結果は次の通りである。11〕評定者による客観評定において、高信頼条 件での自己開放性のI TM得点は、低信頼条件でのそれより有意に高かった。12)高信頼条件に

おける自己開放記述文の文節数は、低信頼条件におけるそれより有意に多かった。13〕有意では

(9)

ないが、同性組み合わせ群のI TM得点(主観評定)は異性組み合わせ群のそれより高い傾向を 示した。文節数においても、前者が多い傾向が示唆された。

 ω、12〕の結果は、明らかに仮説11〕を支持するものである。高信頼条件の被験者は、実験者か らの信頼を感じることにより、ともすれば不安を感じがちな実験場面において、相当な安定感を いだき、その返報として実験者に信頼をよせ、より親密な自己開放を返すという「信頼過程」が 成立したものと考えられる。その結果、高信頼群の自己開放性は、低信頼群に比べ、I TMにお いても、文節数においても増大した、と解することができよう。Derlega&Chaik㎞(1974)は、

実験者の自己開放を呈示する群において、信頼の有無によるI TMの差異を確かめることができ なかった。また、Rubin(1975)の実験においても、信頼操作の高低と、予測されたI TMや語 数との関係が明らかにならなかった。これらはいずれも信頼操作の不十分さに起因するものでは ないかと考えられるので、本研究では初めに丹念なラポート形成に努力し、その上で、秘密保持 や自己開放性記述文の呈示方法の工夫をてらし、強力な信頼操作を試みた。この累積された操作 が今回の成果を生んだものといえるであろう。

 131の結果は、いずれも有意水準に達していないので、仮説12〕を明確に支持するものとはいえ ないが、ほぽその傾向を示唆しているものと解される。客観評定によるI TM得点において、少 なくとも低信頼条件においては、同性組み合わせ群の方が異性組み合わせ郡より有意に高い得点 を示した事実も、この解釈を強力に裏付けるものである。Rubin(1975)の実験Iでは、高I T M群において、女性の実験者と女性の被験者の組み合わせにおいて被験者の自己開放性のI TM 得点が最高であった。Pedersen&Breg五〇(1968)もI TMにおいて女性が男性より高いことを 示唆し、Jourard&Lasakow(1958)も同性揖み合わせ、女性の被験者において、自己開放性は 量・質ともに増大すると報じている。これらの結果は、本研究の得た結果と文腺においてほぽ一 致するものといえるであろう。しかしながら、本研究では、女性の実験者と男・女の被験者の組 み合わせのみに限定されたため、これだけの結果から、実験者と被験者の性の組み合わせの自己 開放性に及ぼす効果全般を云々することは、差し控えねばならない。

 なお、被験者の自己開放性のI TM評定に関して若干ふれておきたい。自己開放性に関する多 くの先行研究では、I TMの客観評定のみがとり上げられていたが、本研究で用いた客観評定と 主観評定間の相関は必ずしも高いものではなかった。このことは、自己開放性のI TM評定に際 し、従来の客観評定と並んで、各個人の感じているI TMの主観評定が、かけがえのない意義を もつものであることを示しているように思われる。今後、この両評定問の相互関連性を領域別・

性別に検討することが興味ある課題となろう。

要       約

 本研究の目的は、次の2仮説を検証することである。ω高信頼を与えられた被験者の自己開 放性は、低信頼を与えられた被験者のそれより多大であろう、12〕同性組み合わせ群の自己開放

性は、異性組み合わせ群のそれより多大であろう。

一46一

(10)

 結果の分析には、2×2の要因計画が用いられた。第1の要因は、実験場面の信頼操作の高低、

第2の要因は、女性の実験者と男女被験者の組み合わせ(同性・異性)であった。被験者は奈良 数育大学1回生男子30名、女子30名で、個別実験が行われた。

 得られた主な結果は次の通りであ糺

 ω 客観評定において、高信頼条件での自己開放性のI TM得点は、低信頼条件でのそれより 有意に高かった。

 121高信頼条件における自己開放記述文の文節数は、低信頼条件におけるそれより有意に多かっ

た。

 13〕同性組み合わせ群のI TM得点(主観評定)は、異性組み合わせ群のそれより高い傾向を 示し、記述文の文節数においても、前者が多い傾向が示唆された。

これら諸結果は、先行の諸研究と関連させて考察が加えられた。

引  用 文 耐

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