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幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能力の効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能力の効果

著者 杉村 健, 岩本 純子, 守屋 環

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

36

1

ページ 149‑161

発行年 1987‑11‑25

その他のタイトル Effects of Verbal Abstraction Ability on Young Children's Categorization

URL http://hdl.handle.net/10105/2071

(2)

奈良教育大学紀要 第36巷 第1号(人文・社会)昭和62年 Bull.Nara Univ.Bduc.,Vol.36,No.1(cult. soc.).1987

幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能力の効果

杉 村   健・岩 本 純 子*・守 屋   環**

(奈良教育大学心理学教室) (昭和62年4月3円受理)

カテゴT) ‑化(categorization)とは、 2つ以上の異なる対象ないし事例を等価であると認識 し、その等価性に基づいて対象のまとまりを形成する過程であり、カテゴリー化は認知過程、と りわけ概念形成過程において中心的な役割を演じている。これまでに、自由分類課題、強制分類 課題、マッチソグ課題、記銘一再認課題、慣れ一選好課題、弁別学習課題、分類学習課題など、

さまざまな課題を用いてカテゴリー化の研究が行われてきた0 本研究では、図式的な顔の事例で 構成されたカテゴリ一般化課題を用いて、幼児の言語的抽象能力がカテゴリー化様式(全体と分 析) 、および形成されるプロトタイプの種類(平均と最頻)に及ぼす影響を検討する。

本研究で用いるカテゴリ一般化課題は、 Smith (1979)がカテゴリー化様式を査定するため に考案したものである。この課題では、グループAに属する3つの事例とグループBに属する3 つの事例を標本事例としてブロック皇示し、別に用意したいくつかの事例を1つずつ皇示して、

それがグループAに属するか、あるいはグループBに属するかを判断させる。実験の結果は、色 や大きさの次元によっても事例の全体的類似性によっても分樽できる課題では、幼児は全体的類 似性によってカテゴリー化する者が多く、小学5年生では次元によってカテゴリー化する者が多 かったo このことからSmith (1979)は、カテゴリー化様式が全体的様式(holistic mode)か ら分析的様式(analytic mode) ‑と発達的に変化すると結論している。全体的様式では、事例 は未分化な全体として扱われ、全体的な疑似性によってカテゴリー化される。これに対して分析 的様式では、事例は次元的な成分に分析されたセットとして扱われ、共有する次元価によってカ テゴリー化される Kemler (1983)は分析的様式は全体的様式よりも抽象的であり、知覚およ び認知発達の過程において、全体的から分析的に移行することを示唆している。本研究の実験I では、幼児のカテゴリー化様式が言語的抽象能力によってどのように異なるかを検討する。

大工刺激を用いたプロトタイプ形成については、 Posner & Keele (1968)以来、多くの研究 が行われてきた。プロトタイプ形成のメカニズムについては種々の立場があるが(例えば、 Homa, 1984; Medin& Smith, 1984) 、本研究では、カテゴリー化において形成されるプロトタイプ の種棟を問題にし、平均プロトタイプ(average prototype)と最頻プロトタイプ(modal prototype) を取り上げることにした。平均プロトタイプとは、そのカテゴリーに属するすべての事例の次元 価を平均した価によって構成されたものであり、巌頻プロトタイプとは、そのカテゴリー一に属す る事例の次元価の中で出現頻度が巌も高い価によって構成されたものである(Goldman & Homa, 1977; Neumann, 1977; Strauss, 1979)。プロトタイプの形成は、分類学習課題、記銘一再認 課題、慣れ一選好課題を用いて研究されてきたが、木研究の実験IIでは、先に述べたカテゴリー

* 現在京都府警察本部(実験1担当) 紳 現在神戸市立稗凹幼稚園(実験rI担当)

149

(3)

150 杉 村   健・岩 本 純 子・守 屋   環

般化課題において、幼児によって形成されるプロトタイプの種類が言語抽象能力によってどのよ うに異なるかを検討する。

筆者の知る限りでは、カテゴリー化様式とプロトタイプ形成に及ぼす言語的抽象能力の効果を 調べた研究は見当たらないが、移行学習や分類学習の分野ではいくつかの研究である。杉村(1969) は、 2つの事物に共通する上位概念名を抽象する能力を調べ、その能力が高い幼児と低い幼児に 対して、大きさと明暗からなる2次元2価の弁別課題を学習させ、逆転移行の成績を比較した。

その結果、適切次元が大きさの場合には能力差はなかったが、適切次元が明暗の場合には上位群 の方が逆転移行を速く学習することができた。このことから、言語的抽象能ノJが高い者は低い者 と比べて、刺激次元に対する内的言語反応を媒介として利用しやすいことが示唆される。泰(1973) は、動物(鳥と魚)と植物(花と木)の事例からなる概念弁別課題を考案し、逆転移行と非逆転 移行に及ぼす言語的概念能力と#言語的概念能力の効果を調べたo この課題では動物と植物は刺 激次元に担当し、鳥、魚、花、木は刺激価にあたる。言語能力の高低と移行型の間に有意な交互 ft用がみられ、言語的概念能力が高い小学1年生は低い者と比べて逆転移行の成績がよく、非逆 転移行の成績がわるかった。このことから、言語的概念(抽象)能力が高い者は概念名(動物と 植物)を連想しやすく、それを媒介として利用していることが示唆される。さらにSugimura (1976) は、抽象検査と識別検査で査定された言語的概念能力が高い幼児は半概念分類課題よりも概念分 類課題を速(学習し、能力が低い幼児は2つの課題をほぼ同じ速さで学習することを見illした。

この結果もまた、能力が高い者は分矩学習において概念を利用できるが、能力が低い者は概念を ほとんど利用できないことを示している。

実   験 I

実験IのEJ的は、事例の全体的類似性(Similarity)によっても全ての事例に共通する1つの 基準次元(Dimension)によってもカテゴリー化できるSD課題と、全体的頬似性だけでカテゴ リー化できるS課題におけるカテゴリー化様式が、言語的抽象能力によってどのように異なるか を検討することである。先に述べたように、抽象能力が高い者は低いものよりも次元や概念を利 用しやすいならば、 SD課題においては分析的様式が抽象能力の高い者によってより多く用いら れるであろう。これに対してS課題においては、カテゴリー化様式の能力差はみられないであろ

う。

方  法

実験計画と被験者  2×2の要因計画であり、第1の要因は課題(SDとS) 、第2の要因 は抽象能力(高と低)てあった。被験者は幼稚園と保育園の年長児157名(男児79年、女児78名) であり、次に述べる抽象語倹杏の結果に基づいて、得点が高い方から48名を高能力群、低い方か ら48名を低能力群とした。高能力群の平均年齢は5 : 8 (5 : 3‑6 : 3) 、抽象語検査の平均 得点は13.8(ll‑19)であり、低能力群では同じ順に5:8 (5 :4‑6: 1)と2.9(0‑6) であった。

抽象語検査  杉村(1969)が作成した抽象語検査および国立国語研究所(1981)の連想語嚢 表を参考にして、表1に示す20項目を取り上げた。左側にある2つの事例に共通する上位概念名 を求める検査であり、右側の正答欄には、止しい上・.位概念名と正答とみなした答(括弧内)が示

(4)

幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能力の効果 151

してある。本実験ではこの表に示している回答のみを正答として1点を与えた。〕したがって、本 検査の得点は、 0点から20点まで分布する。

表1抽 象 語 検 査

事 例      正答とみなされる応答 ぞう

すずめ

・J^」園

たい

ライオン

チューリップ   ひまわり いちょう     松 りんこ''     バナナ キャベツ      にんじん

ジュース     牛乳

チョコレート    アイスクリーム 鉛筆      クレヨン

くつ       つっかけ ズボン       セーター mu bas

金づち     のこぎり 積み木      人形 たいこ       ピアノ

100円玉    1000円札 赤        青

丸        三角

動物 m 果物 Mi

飲み物(飲むもの) お菓子(おやつ) 文房具(書くもの) 履物(履くもの) 着物(服、洋服) 乗り物

道具(大工さんが使うもの) おもちゃ

楽器(鳴るもの、音のでるもの) お金(銭)

刺激  図1に示したように、耳の大きさ(大、小) 、前髪の分けH (左、右) 、両眼の間隔 (広、狭) 、鼻の形(△、∪)および口の大きさ(大、小)の5次元2価で変化する図式な顔を 刺激として用いたO これらの顔はそれぞれ黒色の線画で6.0cmx 8.0cmの白紙に描かれ、 6.5cm x 8.5cmの厚紙に貼りつけられている。記"i lllllで表されている左側の顔は、大きな年、右の 分けH、両眼の広い間隔、三角形の鼻、大きな口を持っており、記号00000で表されている右側 の顔は、小さな耳、左の分け目、両眼の狭い間隔、 ∪形の鼻、小さな口を持っている。

課題  カテゴリ‑1のプロトタイプ事例はinnで示され、すべての次元で価1を持ってお り、カテゴリ一一0のプロトタイプ事例は00000で示され、すべての次元で価0をもっている。次 元の目立ちやすさをカウソタバラソスするために、プロトタイプ事例が異なる4つのセットが作

られた。

図2に示すように、各課題の標本事例はカテゴr)‑1とカテゴリー0のプロトタイプ事例から 派生した4つの事例からなっている。 SD課題は1つの基準次元(次元a)によって分類できる。

(5)

152 杉 村   健・岩 本 純 子・守 屋   環

0 0 0 0 0

図1実験Iで用いた図式的な顔

それは、カテゴリ一一lにおける4つの事例は次元aで価1で持っており、カテゴリー0における 4つの事例は次元aで価0を持っているからである。この課題はまた、事例の全体的類似性(プ ロトタイプ価の量)によっても分類できる。それは、カテゴリ‑1における4つの事例は価1を 全部で15個持っており、カテゴリー0における4つの事例は価0を全部で15個持っているからで ある。 S課題は事例の全体的類似性だけで分類できる。それは各カテゴリーの事例は価1または 価0をそれぞれ15個ずつ持っているが、全事例に共通する1つの基準次元を持っていないからで

ある。

図2の卜部には、カテゴリ‑化様式を査定するためのテスト事例が示されている。テスト事例 01111をカテゴリ‑1に、テスト事例10000をカテゴリー0に分顕した場合は、事例の全体的類 似性によって分顕しており、全体的様式を用いていると判定される。これとは逆に、テスト事例

カテゴリ‑1  カテゴリー0 次;u      次元

a b c d e a b c d e

1 1 1 1 0    00001

標本事例  1 1101   00010

1 1 0 1 1   00 1 00 1 0 1 0 1   0 1 0 1 0

1 1 1 1 0    0000 1

標本事例  1 1101  00010

(S)   1 101 1   00100 001 1 1   1 1 000

テスト事例   01 1 1 1  10000

図2 実験Eで用いた課題

(6)

幼児のカテゴ1)一一化に及ぼすr‑‑詔書的抽象能))の効果 153

01111をカテゴリー0に、テスト事例1α)㈱をカテゴリ‑1に分熱した場合は、農準次元(次元a) によって分顕しており、分析的様式を川いていると判定される。 2つのテスト事例をどちらか 一 方のカテゴリーに分放した場合は、カテゴリー化様式は不定と判定される(,

手練き (1)抽象語検査‑机をはさんで実験者と被験者が向かい合ってすわり、氏名や年令 をたずねたあとで、次の教示を与えて抽象語倹杏を行ったO "これから、お姉さんとことば遊び をしましょう。 ○○ちゃんの思った通りお姉さんにII'ってみてくださいね。 00ちゃんは、みか ん知っているね。いちごも知っているね,それでは、みかんといちごはIMJjともMの仲間ですか?"

被験者が"果物"と答えた場合は"そうですね"と言い、無回答であったり、間違った答をした 場合は"みかんもりんごも果物ですね"と.i‑って正答を教えたO

続いて、 "ぞうとライオソは両方とも何の仲間ですか?" "いちょうと松は両方とも何の仲間 ですか?''というようにして、 20項目について質PLt仕ノた。無回答の場合はもう 一度その質間を繰 り返したが、誤答の場合には"はい"とIlってうなずくだけで、 ii‑:答は教えなか‑,たo被験者の 恒】答のうち、表の正答欄に示したものだけをIl一答としてMを与えた(,

(2)カテゴリ一般化.課題‑27.5cmx39.5cmの白い厚紙に黒のフェルトペソて図式的な家の絵を 描き、それらを被験者の前に左右に置いたO それぞれの家の屋根のトには7.5cmx 9.5cmの矩形 の窓が5つ描かれている。申し・にある窓は赤色の枠で、テスト事例と訓練事例を置かせるのに用 いられるo その周辺にある4つの窓は黒色の枠で、標本事例を置くのに用いられるU

以トの仕方で、 8枚の標本事例が4枚ずつカテゴリ‑1とカテゴリ一一0の家の窓にブロックi‑:

示されるO "今からお姉さんと仲間集めというお遊びをしましょうれ/よく見てね。 (カードを 見せながら)この子はけんちゃんの仲間よo (黒枠の窓の中に置く)このf・もけんちゃんの仲間 よ(残りの3つの黒枠の窓に置いていく) o " このようにして、 ・方の家の黒枠の4つの窓に カテゴL)‑1の4つの事例を置くO 次に、たけしちゃんの仲間という教示のトに、他方の家の黒 枠の4つの窓にカテゴリー0の4つの事例を置いていく。

続いてテストのための教示を与える。 "今度は○○ちゃんにカードを渡すから、それがけんちゃ んの仲間か(けんちゃんの家を指さす) 、たけしちゃんの仲間か(たけしちゃんの家を指さす) 教えてほしいの。けんちゃんの仲間とたけしちゃんの仲間をよく見て、けんちゃんの仲間だと思っ たら、この赤い線の中に(けんちゃんの家の真申の赤枠の窓を指さす) 、たけしちゃんの仲間だ と思ったら、この赤い線のL再こ(たけしちゃんの家の貞中の赤枠の窓を指さす)カードを置いて ね。じゃあ、この子はどっちの仲間かな?"以1二の教示に続いて、カテゴリー化様式を査定する ためのテスト事例が1枚ずつ望示される。

次に、皇示してある標本事例と同じ8事例を用いて分校訓練を行った。 "今度はね、 1上しい仲 間にできたら̀あたり' 、ちがっていたら̀はずれ'と言うから、いつも̀あたり'と言われる ように、仲間の顔をよく見て教えてね。 "という教示をあたえ、カードを1枚ずつ̀古Jミしたo 正 分類に対しては"あたり"と言い、次のカードを手渡したが、誤分類に対しては"はずれ。 (被 験者が置いたカードを持ち上げて)このカードはけんちゃん(たけしちゃん)の仲間ですよ。だっ て、この子とこの子が同じだから、このカードはこっちの家の仲間だよ"と言って修止した0 8 事例を1ブロックとして2ブロック行った。

最後にカテゴリー化様式を査定するための2恒IHのテストが、先に述べたのと同じf上方で行わ ism

(7)

154 杉 村   健・岩 本 純 子・守 岸   環 結果と考察

表2は、テスト1とテスト2において用いられたカテゴリ一一化様式の割合を示したものである。

様式の判定は課題のところで述べた基準によって行われた。テスト1とテスト2のそれぞれにつ いてx z検定を行った。

(1)テスト1‑能力×様式の検定では、 SD課題ではx2(2)‑4.ll, .10< P< .20, S課題で はx z(2)‑0.57であったo SD課題について分析的様式とそれ以外に分けて2 × 2の検定を行っ たところ、 x2(D‑2.77, P< .10で有意な傾向があったO これは、低能))群よりも高能力群の 方が分析的様式を用いる再が多いことを示す。課題×様式の検定では、高能力群ではz z(2)‑5.90, P< .10、低能力群ではx "(2)‑1.18であった(,高能力群について分析的様式とそれ以外に分け て2×2の検定を行ったところ、 x z(l)‑4.25, P< .05で有意になり、 SD課題の方が分析的 様式を示す者が多かったo

表2 カテゴリー化様式ごとの割合(%)

1 2

分 析 的 全 体 的 分 析 的 全 体 的

高 能 力 群 S D 課 題

低 能 力 群

3 7 .5 3 3 . 3 2 9 . 2 5 0 . 0 1 6 . 7 3 3 . 3

】 2 . 5 I . 7 4 5 . 8 2 0 . 8 4 5 . 8 3 3 . 3 高 能 力 群

S 課 題

低 能 力 群

8 .3 5 4 . 6 3 7 . 5 2 . 5 6 6 . 7 2 0 . : 4 . 2 5 0 . 0 4 5 . 8 1 2 . 5 4 5 . 8 4 1 . 7

(2)テスト2‑能力×様式の検定では、 SD課題ではx H2)‑6.15, P< .05で有意差があり、

表からl明らかなように、 TT'諦巨力群の方が分析的様式を用いる者が多く、低能力群の方が全体的様 式を用いる者が多かった(, S課題ではx z(2)‑2.59, P> .10で有意差がなかったo 課題×様式 の検定では、高能力群ではx z(2)‑ 13.29, P< .01で有意差があり、 SD課題では分析的様式 を川いる者が、 S課題では全体的様式を用いる者が多かった(〕しかし、低能力的群ではx2(2)‑

0.72であって、 2つの課題で用いられている様式の分布の間には有意差がなかった。

従来の弁別学習や分析学習の実験結果に基づいて、本実験では、 S D課題においては抽象能力 が低い者よりも高い者によって分析的様式が用いられやすいと予想した。テスト1では能力×様 式の検定は有意にならなかったが、標本値では高能力の方が分析的様式を用いる者が多かった。

テスト2では能力×様式の検定が有意になり、表2からもわかるように、分析的様式を用いた者 は低能力群の20.8%に対して高能力は50.0%であり、後者の方が明らかに多かったo 以Lの結果 は木実験の予想と‑・致するものであり、幼児の言語抽象能力がカテゴリー化様式を規定する要関 であることを示しているり

SD課題の高能力群についてテスト1とテスト2の結果を比べてみると、 2ブロック(16試行) の分頬訓練によって分析的様式が増加し、全体的様式が減少することがわかる。同様な減少は分 較学習課題を用いた井上(1987)によっても見出されている。すなわち、分類学習の其準が連続 4回iJ一反応、連続8回正反応、連続8回+8回正反応と進むにつれて、分析的様式を用いる者が 増加し、全体的様式を用いる者が増加した。本実験で行った分叛訓練は、皇示してある標本事例 を被験者に1枚ずつ手渡し、訓練(すなわち標本)事例との同一性を確認させるマッチソグ課題

(8)

幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能ノ)の効果 155

であった。このような同 ‑の刺激のマッチソグによって、事例の持つ属性を次元的成分に分析す る構えが形成されたと考えることができる。従来の研究で示されてきた全体的から分析的へとい う発達的な変化は、部分的にはそのようなマッチソグの経験の累積によってもたらされたのかも しれない。 SD課題の低能ノJ群では、テスト1からテスト2‑と目立つ変化がみられなかった。

したがって、同じように分類訓練をしても、それを取り入れ、利用する過程が言語的抽象能ノ)の 高低によって異なるといえる。

次に、 S課題ではカテゴリー化様式の能力差は見られないであろうと‑(,想した。能力×様式の 検定は有意でなく、結果は予想と ‑一致するものであった。低能力群ではテストlからテスト2へ の変化ははとんとないが、高能ノ)群では不定が減少して全体的様式が増加する帆"J#あり、 66.7%

にも達している。これは、分灼訓練によって高能))者は課題の構造に気がつくようになることを 示唆しているoいずれにしても、 SD課題と同様にS課題においても、分板訓練の効果がri 語的 抽象能ノJによって異なると考えられる。

課題×様式の分析では、高能力群ではSD課題において分析的様式を月仕、る者が多く、 S課題 において全体的様式を用いる者が多かった。これに対して低能力群では、テスト1もテスト2も ともに有意差がなく、 SD課題もS課題もともに分析的様式が少なく全体的様式と4く定が多かっ た。以Lの結果から、低能力の者は課題に応じて分化した反応ができないが、高能力の者は課題 に応じてカテゴリー化様式を分化的に用いることができるといえようo

表2からわかるように、不定の名が予想外に多く、特に低能力群の方が多い帆句がみられる (テストlでは45.8%)。この種の研究においては、すべての被験者が全体的か分析的かに ‑.分さ れると考えられがちであるが、それは大人的発想であって、 L夫態は衣2のように不定がかなりみ られるのである。 ‑一般に、能力が低い者あるいは年齢が低い者は課題の構造を把握する力が乏L く、そのことが不定をもたらす原Hとなっているのであろう。したがって、能力あるいは年齢が 高くなって課題の構造が的確に把握できるようになれば、不定が減少し、課題の構造に応じて分 析的様式(SD課題)あるいは全体的様式(S課題)が増加することが示唆される。

実   験 II

実験IIの目的は、カテゴリ一般化課題における最耕プロトタイプと平均プロトタイプの形成が、

言語的抽象能力と次元数によってどのように異なるかを検討することである。人′?‑'f!を被験者と して記銘一再認課題を用いたNeumann (1977)は、図式的な顔の次元(臼や鼻など)に注目さ せる教示を与えることにより、最頻プロトタイプが形成されやすくなることを姐111した。,この結 果と、先に述べた抽象能力と次元利用との関係を合わせて考えると、抽象能ノ)の高い宵は最頻プ ロトタイプを形成しやすく、抽象能力の低い者は平均プロトタイプを形成しやすいと予想されるo 従来の研究(Goldman & Homa,1977; Strauss, 1979)では、価の変化が大きい事例からなる Wideカテゴリーでは巌頻プロトタイプが形成され、価の変化が小さいNarrow カテゴリ‑‑では 平均プロトタイプが形成されやすいことが示されているo Lかし、筆者の知る限りでは、次元数 の影撃については検討されていない。そこで本実験では、 3次元課題と5次ノ亡課題を用いて、形 成されるプロトタイプがどのように異なるかを調べることにした。, 3次元課題では次元およびfitfi に気づきやすいので最頻プロトタイプが形成されやすく、 5次ノ亡課題では次元および価にJj(もづき にくいので平均プロトタイプが形成されやすいであろうO

(9)

156 杉 村   健・ギ‡木 純 蝣‑jr‑.守 良   環

方  法

実験計画と被験者  2×2の要桝計画であり、第1の要関はfdl象能ノ) (高と低) 、第2の要 関は次元数(3と5)であった。被験者は幼稚園と保育園の年長児(男児73名、女一児80名)であ り、先に述べた抽象語検杏の得点が高い万から48名を高能力群、低い方から48名を低能ノJ群とし た。高能ノ)群の平均年齢は6 : 0 (5 : 6‑6 : 5) 、抽象語検査の平均得点は13.9 (ll‑20) てあり、低能力群は同じ順に5 :ll (5 : 6‑6 : 5)と3.7 (0‑8)であったo

刺激  図3に例示した図式的な顔で、年の大きさ( 0.8cm、 1.4cm、 2.0cm) 、前髪の分け 目の位置(左、中、右) 、両眼の間隔( 1.4cm、 2.1cm、 2.8cm) 、鼻の大きさ(‑一辺が4.5nun、

6.0mm、 7.5mm) nの大きさ( 1.1cm、 1.7cm、 2.3cm)が、それぞれ括弧内に示した3価で変 化している。例えば、 5次元の刺激ではinnの顔は年が2.0cm、前髪の分け目が左、南限の間 隔が2.8cm、鼻の大きさが7.5mm、 Hの大きさが1.1cmである。 3次元の刺激では耳の大きさは 2.0cm、前髪の分け田ま左に固定してあり、 333の顔は両眼の間隔が1.4cm、鼻は4.5mm、口は2.3cm であるO これらの観は黒色の線画で5.5cmx 5.5cmの白紙に描かれ、 6.5cmx 6.5cmの白い厚紙 に貼りつけられている。

●      ●

iた■ちl

1 1 1 1 1

●       ●

ま■■ちl

1 1 1

2 2 2 2 2

5次元課題

蝣) ') ・)

3次元課題

図3 実験Ⅱで用いた図式的な顔

3 3 3 3 3

(10)

幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能力の効果 157

課題 (1)5次元課題一図4の̲L二部に示されているように、 5次元課題のカテゴリーは4つの 標本事例からなり、すべてが価1と価3の組合せからなっている。次元の目立ちやすさをカウソ タバラソスするために、 6種類のセットを作った。したがって、各次元が年になるか前髪になる かなどはセットによって異なっている。どちらのプロトタイプが形成されるかを調べるために2 対のテスト事例が呈示される。もし最頻プロトタイプが形成されるならばinnか33333が選択 され、平均プロトタイプが形成されるならば22222が選択されるであろう。

(2)3次元課題一図3に示してある耳の大きさ( 2.0cm)と前髪の分け目(左)を固定した場合 と、鼻の大きさ(4.5m)とFlの大きさ( 1.1cm)を固定した場合について、それぞれ6種類の セットを作った。図4の下部に示されているように、戯頻プロトタイプが形成されるならば111 か333が選択され、平均プロトタイプが形成されるならば222が選択されるであろう。

a b c d e

5 次 元 課 題

3 次 元 課 題

本 例標 事

1 1 3 3 1 1 3 1 3 3 3 1 3 1 1 3 3 1 1 3

1 3

3

i 3

<CO

C O

二! 22222

22222

本 例標 事

1 1 3 1 3 1 3 1 3 3 3 1

テスト   1 1 1 と 222

事例    333 と 222

図4 実験汀で用いた課題 手続き(1)抽象語検査‑実験Iと同じ。

(2)カテゴリ一般化課題‑28.0cmx18.0cmの厚紙の下の中央に6.5cmx 6.5cmの正方形の赤枠が 描かれ、その上に同じ大きさの4つの正方形の黒枠が描かれている。黒枠には標本事例が置かれ、

赤枠にはテスト事例対の‑一方を置かせる。 5次元課題も3次元課題も同じ手続きで行われた。

"仲間集め"をするという教示を与えて、標本事例を1枚ずつ"この子はけんちゃんっていいま す" "この子もけんちゃんですよ"と言いながら、ラソダムの順で黒枠の中に置いていく。 4事 例が望示されると"この子たちはみんなけんちゃんの仲間です"と言って、 4つの事例に注目さ せる。

(11)

158 杉 村   健・岩 本 純 子・守 崖   環

続いて、赤枠の左右にテスト事例を望示して"この子とこの子のどちらかが、けんちゃんの仲 間ですよ。 ○○ちゃんがけんちゃんの仲間だと思う方を、この赤い窓に入れてね0 4つの顔(標 本事例を指して)をよく見て答えてねO "という教示を与え、どちらかI一一万のテスト事例を選択 させた。事例の皇示位置を逆にしてもう一度選択させた。被験者の半分はmilと 22222 (また は111と 222)の対を与え、残りの者には33333と 22222 (または333と 222)を与えた。 2回 ともinn (またはIll)か33333 (または333)を選択すれば最頻のプロトタイプが形成され たとみなし、 22222 (または222)を選択すれば平均プロトタイプが形成されたとみなした。そ れ以外の場合は不定とした。

結果と考察

表3は、最頻プロトタイプ反応者、平均プロトタイプ反応者、不定反応者の割合を示したもの である。表から明らかなように、各能力群内では2つの課題の結果が殆ど同じであったので、以

トの分析は2つの課題をこみにした各群48名ずつについて行う。

まず、能力×プロトタイプ反応の検定を行ったところ、 x2(2)‑ 13.94、 P< .01で有意であっ たOそこで、最跡とそれ以外に分けて検定するとx HD‑ 13.52、 P< .01で高能力群の方が最 搬プロトタイプ反応者が多く、 f均とそれ以外に分けて検定するとx2(D‑3.38、 P< .10で、

低能力群の方が平均プロトタイプ反応者が多かった(,イく定とそれ以外に分けて検定するとZ2(D

‑6.32、 P< .05で、低能力群の方が不定反応者が多かった。

表3 プロトタイプ反応者の割合(%)

最 頻 平 均 不 定

3 次 元 課 題 7 0 .8 2 0 .8 8 .3 高 能 力 群 5 次 元 課 題 7 0 .8 1 6 .7 1 2 .5

7 0 .8 1 8 .8 0 .4

3 次 元 課 題 3 3 .3 3 7.5 2 9 .2 低 能 力 群 5 次 元 課 題 3 3 .3 3 3 .3 3 3 .3

3 3 .3 3 5.4 3 1.2

次に、各群について期待値との差を検定した。あるテスト対について2回の選択によってでき る可能な姐合せは4つであるが、そのうち巌頻プロトタイプ反応と平均プロトタイプ反応は1つ ずつ、不定反応は2つである。したがって、偶然によって反応する割合は上の順に1 : 1 : 2で あり、これを割合にすれば、最頻プロトタイプ反応者25% (12名) 、平均プロトタイプ反応者25%

(12名) 、不定反応老50% (24名)になる。高能力群ではx2(2)‑ 56.13、 P< .01で有意であ り、最頻プロトタイプ反応者が期待値よりも有意に多く( P< .01) 、不定反応者が有意に少 なかった( P< .01) 。低能力群では12(2)‑6.79、 P< .05であり、平均プロトタイプ反応者 が有.弓封こ多く( P< .01)、不定反応者は有意に少なかった( P< .01)

以上の分析から明らかなように、抽象能力が高い者は最頻プロトタイプを形成し、抽象能力が 低い者は平均プロトタイプを形成しやすいことが示された。これは本実験の予想と 一致しており、

抽象能力の高い者は次元に注目し、次元を抽象して利用することができるので、最頻プロトタイ

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幼児のカテゴリー化に及ぼす言語的抽象能力の効,梨 159

プ事例をより多く選択しており、一方、抽象能力の低い者は次元に注目し、次元を利用すること ができにくいので、平均プロトタイプ事例をより多く選択したことによると考えられる。

先に述べたように、次元価の変化が大きい事例からなるWideカテゴリーでは最頻プロトタイ プが形成され、変化が小さい事例からなるNarrowカテゴリーでは平均プロトタイプが形成され やすいことが見出されている(Goldman & Homa, 1977 ; Strauss, 1979) この結果につい てStrauss (1979)は、 Wideカテゴリーでは次元に気づきやすいために巌頻プロトタイプが形 成され、 Narrowカテゴリーでは次元に気づきにくいために平均プロトタイプが形成されやすい

と解釈した。抽象能力を変数とした本実験の結果と対応させてみると、抽象能力が高い者およびWide カテゴリ一一では次元に気づきやすいので最頻プロトタイプが、抽象能力の低い者およびNarrow カテゴリーでは次に元気づきにくいので平均プロトタイプが形成されやすいといえる。本実験で は次元価を変えておらず、本実験で用いた次元価の変化が大きいか小さいかはわからないので、

今後の研究においては、被験者の抽象能力と次元価の両方を変数として、プロトタイプ形成に及 ぼす効果を検討する必要がある。

本実験では、形成されるプロトタイプの種難を判定するのに、標本事例に呈示されている価1 または価3からなる巌頻プロトタイプ事例と、標本事例には全く呈示されていない価2からなる 平均プロトタイプ事例を対にして呈示し、どちらの事例が標本事例の仲間であるかを判断させたo Lたがって、その判断には標本事例とプロトタイプ事例の類似性の要田が作用すると考えられるo 図4からわかるように標本事例を構成している20の価のうち半分が最頻プロトタイプ事例の価

(1または3)で同じであり、巌頻プロトタイプ事例の方が平均プロトタイプ事例よりも標本事 例との類似度が高い。う このことから、抽象能力が高い者は類似性に気づいて最頻プロトタイプ事 例をより多く選択し、抽象能力が低い者は類似性に気づかずに2つのプロトタイプ事例を同程度 に選択したと角細くすることかできるo ここで取り上げた規似性は、プロトタイプ事例と同じ次元 価を標本事例がどの程度持っているかによって規定されたものであり、 Medin & Schaffer (1978) が主張しているような個々の事例が持っている次元価の問の距離によって規定されるものではな いo 先に述べたように、最廉プロトタイプの形成を次元の気づきやすさとか次元の利用によって 説明するよりも、次元価の類似性(というよりも同 骨.)によって説明する方が明確であるよう に思える。今後の研究においては、この変数と抽象能力、さらに次元価の変化を組み入れて、カ テゴリー化に及ぼす効果を検討する必要があるO

最後に、表3から明らかなように、形成されるプロトタイプは事例の次元数によってほとんど 異ならなかった(,これは本実験の予想に反するものであるが、少なくとも3次元と5次元の比較 では、次元および次元価に気づく程度はほとんど同じであったといわざるを得ない。この点につ いては次元数の違いをもっと大きくして実験してみないと結論を卜すことができない。

要   約

図式的な顔で構成されたカテゴリ一般化課題において、幼児のカテゴリ‑化様式とプロトタイ プ形成に及ぼす言語的抽象能力の効果を吟味するために、 2つの実験が行われた。被験者は5,

6歳児であった0 2つの事例に共通する上位概念名を言わせる抽象語検査の成績に基づいて、高 能力群と低能力群が作られた。

実験I :本実験の目的は、各カテゴリ一一4事例からなる課題においてカテゴリー化様式(全体

(13)

160 杉 村   健・岩 本 純 f・・守 巌   環

的と分析的)を査定することであった。顔事例は5次元のそれぞれが2価て変化していた。 SD 課題においては、被験者は類似性と基準次元によって分類することができ、 S課題においては、

類似性だけで分類することができる。結果は次の通りであった   SD課題では抽象能))が高 い者は低い者よりも分析的様式をより多く用いた。 (b) S課題ではカテゴリー化様式における能 力差がみられなかった。

実験II :本実験の目的は、 4事例の1カテゴリーからなる3次元課題と5次元課題において、

形成されるプロトタイプの種類(巌頻と平均)を査定することであった。顔事例は各課題とも3 価で変化していた。標本事例を皇示してから、最頻プロトタイプ事例と平均プロトタイプ事例の 対をLj.示して、どちらが標本事例の仲間であるかを判断させた。結果は次の通りであった。 (a) 抽象能力が高い者は巌頻プロトタイプをより多く形成し、低い者は平均プロトタイプを形成する 傾向があった(b)形成されるプロトタイプの種類に対して次元数の影響は全くみられなかった。

引 用 文 献

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161

Effects of Verbal Abstraction Ability on Young Children s Categorization

Takeshi SuGIMURA, Junko IWAMOTO, and Tamaki MoRIYA

{Depaγtment o/ Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (王Ieceived April 3, 1987)

Two experiments were performed to examine the effects of verbel abstraction ability on young children s categorization mode (Exp. I) and prototype formation (Exp. II) in a category generalization task consisting of schematic faces. The subjects were five‑ and six‑year old children. Verbal abstraction ability were required to verbalize superordinate concept words common to two subordinate instances. On the basis of the test scores, the subjects with higher abstraction ability and those with lower abstraction ability were selected and given the categoly generalization task to assess the categorization modes or the prototype formation,

Experiment I‑' The purpose of this experiment was to assess the categorization modes (holistic vs. analytic) in tasks with two categories of four sample exemplars in each. The faces had five dimension varying with two values in each. In the SD task, the subjects could categorize the sample exemplars based on either similarity

(S) or a criterial dimension (D)蝣In the S task, the subjects could categorize the

sample exemplars based only on similarity (S)蝣 The results showed that (a) in the

SD task, the subjects with higher ability used the analytic mode more frequently than those with lower ability and that (b) in the S task, there was no significant difference in the categorization modes between the two ability groups.

Experiment II: The purpose of this experiment was to assess the types of prototype (modal vs. average) in three‑ and five‑dimensional tasks with one category of four sample exemplars. The faces had three values in each dimension. After the presentation of the sample exemplars, the subjects were given a pair of modal and average prototypical exemplars and were required to judge which exemplar went together with the sample exemplars. The results showed that (a) the subjects with higher ability formed the modal prototype more frequently while those with lower ability tended to form the average prototype, and (b) that there was no significant effect of the number of dimensions on the prototype formation.

参照

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