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社会起業家 による公共財の私的供給 ――

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(1)

社会起業家 による公共財の私的供給

――IT分野へ の応用 とゲームモデル分析――

 

 

は じめに

社会起業家の機能

3 1T分野における社会起業家の特徴

(1)事

:Linux

(2)IT分

野における公共財供給の特徴

モデル分析

(1)仮定お よび設定

(2)ヒエ ラルキー型提携ゲームの定式化

(3)提携 の形成過程の定式化

(4)提携規模の決定要因

おわ りに

1,1ま じめ に

近年、社会的な共通利益 を実現す る公共財供給 の担い手 として社会起業家 (Social Entre―

preneur)が注 目され てい る。 政 府 の失敗 、 国や地方 自治体 の財 政逼迫 な どの 問題 を解決 す るべ く、社 会起業家 は多様 化す る社 会 的 ニーズ に対応 した良質 な公共財 を供給 してい る。

無 論 、 この よ うな社 会起 業家 が多 数 出現 す る こ とは社会全 体 の利益 とな る。

社 会起業家 が活動 す る分 野 は多 岐 にわた ってお り、代表的 な分野 として は社 会福祉 や環 境 、地域振興 な どが挙 げ られ る。情 報技術 お よび情報通信技術 (以下、IT)分野 も例 外で は ない。社会起業家 が 中心 となって、良質 なソフ トウェアやサー ビス を無料 も しくは安価 で提供 しようとい う事例 がい くつ かみ られ る。 た とえば、第2節で取 り上 げ るLinuxや イ ンター ネ ッ ト百科事典 のWikipediaな どで ある。 これ らの事例 では、優 れた ソフ トウェ

アやサービスを無料 もしくは安価 で利用で きるという共通利益 を生み出すために、社会起 業家が重要 な役割 を果た している。成功事例では、社会起業家が まず核 となる部分 を開発 し、それをもとに他の参加者 を組織化お よび調整 しなが ら参加者全員の貢献 を結集 して優 れたソフ トウェアやサー ビス とい う「公共財」を創 り上げてゆ くという点で共通 している。

この ような開発形態 は近年、 クラウ ドソーシング

(Crowdsourcing)と

呼ばれ、注 目を集 めている 1)。

IT分

野は、 イ ンターネッ ト技術それ 自身を含む とい う点か らも公共財の私的 供給 においてクラウ ドソーシングが最 も適す る分野の 1つ であるといえる。

そこで本稿では、

IT分

野における社会起業家 による公共財供給 を研究す る。

IT分

野に おける公共財供給の成功事例 を取 り上げ、

IT分

野固有の性質を抽出する。次に、得 られた 性質 をもとにモデル分析 を行い、

IT分

野で公共財供給が成功す るための条件 を導出する。

‑107‑

(2)

島根県立大学『総合政策論叢』第18号 (2010年 2月

)

ここで、本稿 に関係 す る先行研 究 と本稿 との関係 に触 れてお く。公共財 の 自発 的供給理 論 は、BergstrOm tt  α′.(1986)を端緒 と し、その後Andreo

(1998)が

寄付 モデルを発展

させた。 しか しこれ らのモデルは、公共財供給 を担 うリーダーすなわち社会起業家の存在 を前提 としてお らず、

IT分

野 を分析対象 としていない。

Ueda(2005)お

よび

Ueda(2006)

は、公共財供給 を担 う社会起業家の存在 を前提 とし、その性質に着 日した。

Ueda(2005)

は、社会起業家の リーダー シップにより実行 される「 自発的寄付 による資金調達モデル」

を提示 した。 さらに、本 田

(2006)は

森林保全活動の事例 を取 り上げ、

Ueda(2006)の

モ デルを消耗戦ゲーム枠組みに取 り込むことで一般化 した。 しか しこれ らの文献 も

IT分

野 を分析対象 としていない。

本稿 は、社会起業家 による公共財供給 を

IT分

野に応用 した とい う点で、 これ らの文献 とは異 なる。本稿では

Linuxを

代表事例 として取 り上げ、

IT分

野特有の性質 を抽出する。

次に

,事

例か ら得 られた結果 をもとにモデル分析 を行 う。公共財供給 における組織化段階 お よび管理段 階を分析す るために、

Demange(2004)の

ヒエ ラルキー型提携 ゲームを援用 する。 さらに、提携 を形成す るための交渉過程 を明示す るために、提携 ゲームに

Sliにker and van den Nouweland(2001)の Link and Claimゲ

ームを組み込む。

本節以降の本稿の構成 は以下の通 りである。第

2節

では、社会起業家の定義 と機能を示 す。第

3節

では、

IT分

野 における事例 として

Linuxを

挙げるとともに

IT分

野の特徴 を 示す。第

4節

では、前節で得 られた結果 をもとに、ゲームモデル分析 を行 う。そ して第

5

節は結語である。

2.社

会起業 家 の機 能

社会起業家 とは、「金銭 的報酬のみな らず、共通利益 もしくは社会的使命の実現か ら効 用 を得 る者」である D。 社会起業家 は、社会全体 もしくは多 くの人にとって利益 となる、社 会問題の解決や優 れた公共サー ビスの提供 などの公共財の供給 自体 に私的利益 を感 じる者 でなければな らない °

。 これ らを実現するために、社会起業家は未組織の潜在的受益者を組 織 し、そのプロジェク トを継続的に維持 しなければな らない。

そのため社会起業家 は次の

2つ

の機能 を持つ。

1つ

は組織化機能であ り、 もう

1つ

は管 理機能である。前者 はプロジェク トが確立 されるまでに必要な機能であ り、た とえば公共 財を供給す るためのアイデアの創案、潜在参加者への説得や交渉、合意形成活動 などであ る。後者はプロジェク トを実行する際に必要な機能であ り、た とえば広告宣伝や広報活動、

財の供給や保守管理、不正行為 に封する監視お よび懲罰、その他の運営 に必要 な実務など である。

以上

2つ

の機能 を果たすために、社会起業家 は相応の費用 を被 る。 また社会起業家は、

投下 した費用の回収以外 に も機能を果たす ことの対価 として金銭的報酬 を請求することが で きる。 これ らは、公共財供給 に必要な原資である。原資は、一般的に金銭的なものと、

非金銭的なものの

2つ

に分類 で きる。前者は補助金や融資 とい う形で調達 される場合 もあ るが、本稿では

2種

類の原資はともに参加者か ら貢献 (Contribution)と い う形で調達 さ れる場合 を検討す る。すなわち前者の貢献 は参加者か らの寄付であ り、 また後者 は参加者 のボランテイア労働である。

公共財 を私的供給す る過程 において、社会起業家 は次の

2つ

の問題 に直面す る。 1つ は

‑108‑

(3)

組織化段 階におけるホール ドアップ

(Hold‐up)問

題であ り、 もう

1つ

は供給段階におけ るプリンシパ ル・エージェン ト

(Principal‐Agent)問

題 である。前者 を克服するために、

社会起業家 は組織化労働 に要 した費用の一部 を回収す ることを他の参加者に容認 させ るベ く、彼 らと交渉 し説得 しなければならない。後者 を克服す るために、社会起業家 は非分配 制約 を受 け容れて、非営利組織形態 を選択す る °

c

3.IT分

野 にお け る社 会起業家 の特 徴

本節では、代表的事例 として

Open SOurceの Operating System(OS)で

ある

Linux

の事例 を挙 げ、それをもとに

IT分

野における社会起業家 の特徴 を提示する。

(1)事 :Linux

Linuxは

、1991年 当時、 フインラン ドのヘル シ ンキ大学 の大学 院生であった

Linus Torvaldsが

開発 をは じめた

Open Sourceの

OSで ある。

Open Sourceの

ソフ トウェアと

は、「ソース コー ドが公開されたソフ トウェア」である ° 。 ソース コー ドが公開されている ので、「 自由に改変 して新 しいプログラムに作 り替 えた り、 さらに改変 したものを配布す ることカミ ミヒ」 となる ° 。

Torvaldsは

開発 当初か ら「 OS全 体 を新 たに開発す るのではな く、

Kernel以

外のプロ グラムの多 くは

GNUプ

ロジェク トが開発 して きたツールを不

U用

し、 UNⅨ 環境 をパ ソコ ンで実現する ことを目指 していた」 の

。実際、

Linuxに

おいて

Towaldsが

開発 したのはそ の中核部分である

Linux Kernelで

あ り、その他の部分は他の

Open Sourceの

プログラム である

GNUソ

フ トウェアで構成 されている 勧 。 それゆえ

Linuxは

クラウ ドソーシング、

す なわち社会起業家 としての

Towaldsを

は じめ とする多 くのプロジェク トメ ンバーの群 衆の叡智

(The wisdom of Crowds)を

結集 して開発 された といえる。

Linuxは

、開発当初か らインターネッ ト上に形成 された、いわゆる「Linux Community」

で開発が進め られて きた。最初は、

Minixと

いう教育用

OSの

メー リングリス ト

(ML)上

で公 開され、 そ こで支持 を得た後、

Linux Kernel専

用 の

MLが

開設 され、

Community

が形成 された。現在、

Linuxの

普及 を支援す る非営利 コンソー シアムである

The Linux Foundationに

よって

Communiけ

は管理・運営 されてお り、Torvaldsも ヨンソーシアム に所属 しなが ら「優 しい独裁者

(Benevolent Dictator)」

として

Linuxの

開発 にあたって いる。

Linux開

発過程 において

Ibrvaldsが

果た して きた社会起業家の役割は次の ように表現 されている の 。

リーダー としての リーナスは、伽藍方式での リーダーの ように卓越 したデザ イン能力 を発揮す るだけではな く、コミュニテ イのメ ンバーか らの新 しいアイデイアを柔軟に 取 り入れ なが ら、 リナ ックスのデザイ ンを進化 させ ていった。人数が増えるメリット

と、優 れたデザイ ンとい う目標 を、柔軟 なリーダーシップと絶妙 なバ ランス感覚で両 立 させていったのである。

この記述か ら、

Torvaldsの

開発者 としての能力ばか りでな く、組織化労働お よび管理労 働 にも卓越 した能力 を持 っていることがわかる。

‑ 109‑

(4)

島根県立大学『総合政策論叢』第

18号 (2010年 2月)

Linuxは

現在 も開発が続け られてお り、 日々進化 を遂げている。管理 を担 う

The Linux Poundationは

お もに寄付 によって運営 されてお り、個人による寄付 ばか りでな く、米国 の IBM社 や

Linux製

品の販売によって発展 し、新規株式公開

(IPO)を

果た した米国の

Red H誠

社 な ど、数多 くの営利企業か らも資金提供 を受けている。

(2)IT分

野 における公共財供給の特徴

Linuxの

事例 をもとに、本項では

IT分

野における公共財供給の特徴 として

6つ

挙げる。

すなわち、共通利益、参加者の私的利益、貢献の形態、社会起業家の組織化機能、社会起 業家の管理機能、プロジェク トの構造である。

共通利益  IT分 野における公共財 とは、良質なソフ トウェアやサービスであ り、共通利益 とはそれ らの財サービスを安価 もしくは無料で利用で きることを指す場合がほ とんどであ る。

参加者 の私的利益

 

共通利益 を実現す るためのプロジェク トに参加 した者 は、それ 自体か ら私的利益 を得 る。た とえば、プログラム能力の顕示欲が満た されること、プロジェク ト ヘの参加 によって所属欲求が満たされること、 自分が書いたプログラムが採用 されたこと によ り名誉欲が満たされること、名声 を得 ること、な どが挙 げ られる。 この ような私的利 益 を獲得す るために、寄付やボランテ ィア労働の提供 を通 じてプロジェク トに参加する。

IT分

野 は、他の分野に比べて自発的な貢献が多い といえる。その理由として挙げ られる点 はい くつかあるが、た とえば高価 なソフ トウェアやサービスを提供する私的企業 に対 して 反感 を持つ者が多いこと、以前か ら自作 したプログラムをフリーウェアや シェアウェアと して提供す る風土があったこと、

ITの

活用により貢献にかかる取引費用 を削減で きること、

などがあ る。

貢献の形態

 

前節で触れたように、 プロジェク ト参加者 による貢献は寄付 とボランティア 労働 の

2つ

に大別で きる。前者は開発 コス トの補填や社会起業家の報酬 に充て られるが、

IT分

野ではとりわけ後者の貢献が重要である。なぜ なら、ボランティア労働 は公共財の大 部分 を形作 るために不可欠な要素だか らである。

Linuxの

事例では、社会起業家である

To―

valdsが

核 となる

Kemelを

開発 したが、その他の部分は既存の

GNUプ

ログラムを利用 し、

それに参加者が改良を重ねてゆくという開発形態をとっている。つまりLinuxの開発には ボランテ ィア労働を担 う参加者が不可欠であ り、彼 らなしには優れた性能を持つLinuxは 存在 しなかったであろう。プログラムを記述するという知的なボランティア労働を、以降 では知的貢献 と呼ぶことにする。

社会起業家の組織化機能

 

社会起業家の組織化機能はさらに2つに分けられる。

1つ

は、

公共財の核 となる部分を創作する前段階の機能であ り、 もう1つ は実際に組織化を行 う機 能である。前者が必要な理由は、公共財の全体像やその優位性が明確にわかるものがなけ ればく潜在的参加者を説得することができないか らである。潜在的参加者が全体像を把握 し共通利益 と私的利益を認識できなければ、プロジェク トに参加 しないであろう。また後 者は、ITを活用することで労働 を効率化することができる。 もちろん、他の分野でも

IT

‑ 110‑

(5)

を活用することが可能であ り、近年その傾向が強 くなっているものの、

IT分

野はとりわけ

ITを

活用 で きる範囲が広 く、 ほぼすべて といって も過言ではない。電子メールや MLな

どを活用す ることで組織化労働 を効率化す ることがで きる。 ただ し単 に

ITを

導入すれば よいわけではなく、活用方法のアイデアが重要になる。社会起業家が優れたアイデアを持 っ ているか否か、いいかえれば優れたビジネスモデルを生み出す能力 を持 っているか否かが、

組織化労働の効率性 に大 きな影響 を与 える。

社会起業家の管理機能

 

組織化労働 と同様、

ITを

活用することで効率化が可能である。

ML

Wiki、 SNSな

どのコミュニケーシ ョンツールを活用することによって、参加者 間の調

整、改良プログラムや改善提案 を募 ることがで きる ° 。 また寄付 を集める際にクレジ ッ ト カー ド決済 システムや

Paypalな

どを活用す ることによって、取引費用 を大幅に低下 させ ることが可能である 1ゆ 。 これ らの

ITは

実際に活用 されてお り、

Linuxや Wikipediaの

例 で も事務労働の効率化や寄付 の 目標達成、知的貢献量の増加 に役立 っている。組織化労働

と同様、活用方法に関す るアイデアの有無が効率性 に対 して多大 な影響 をもた らす。

プロジェク トの構造  IT分 野における社会起業家 は、 しばしば自分 自身を頂点 とす る比較 的フラッ トな階層的なチームを形成す る。実際、

Linuxや Wikipediaの

開発 プロジェク ト は ともに社会起業家 を トップとした

2階

層の ヒエ ラルキー構造である の

。 中間管理者 を多 数含む多階層のヒエラルキー構造ではな く、社会起業家が第

1階

層 に位置 し、他の参加者 が第

2階

層 に位置する構造 となっている。組織論の知見 によると、 このような構造 は情報 流通の観点か ら協調 して知的作業 を行 うのに適 しているとされている一方、参加者の増加 に伴 って コミュニケーシ ョンコス トが増大す るとい う欠点を持つ。

以上

6つ

の特徴は、

IT分

野において社会起業家 として成功するための条件 を含んでいる。

つ まりそれ らの条件 を満たさなければ、 プロジェク トを成功 させ ることが困難であると考 え られる

D。

そこで次節以降では、上で挙げた特徴 の うち組織形態に焦点を絞って議論 を展 開す る。

IT分

野では比較的フラッ トな階層構造のプロジェク トが多いという点か ら、次のような仮 説 を提起する。すなわち、

IT分

野における公共財の私的供給ではフラッ トなヒエ ラルキー 構造が形成 されやすい、 とい う仮説である。 この仮説を検証す るために、次節ではヒエラ

ルキー型提携ゲームモデルを構築 し分析 を試みる。

4.モ

デル分 析

(1)仮

定お よび設定

いま、プレイヤー集合 を

N=(0,

"れ)と

定義する。プレイヤー

0が

社会起業家にな り、れ

人の潜在的開発者 ,∈ Nヽ

(0)を

対象 に、フリーソフ トウェア開発の企画、すなわち「 フリー ソフ トウェア開発 プロジェク ト」

(以

下、開発 プロジェク ト

)を

立案 しているとす る

n。

社 会起業家 と開発者か らなる提携 を

S⊆

Nと し、 この提携 を「フリーソフ ト開発提携」 と 呼ぶ ことにす る。

Sの

メ ンバー数 を s=S≦ (れ

+1)と

す る。 開発 プロジェク トは以下の手 順 を経て実施 される。

‑ 111‑

(6)

島根県立大学 『総合政策論叢』第18号 (2010年 2月

)

まず、社会起業家がプロジェク トの核 となる部分 を創作する。それをもとに潜在 的開発 者 に対 して組織化交渉 を開始 し、所得の保証水準 を約束 した上で (s‑1)人 か ら個別 に提案 へ の賛同を得 る。この時点で開発者が決定する。 このとき提案内容は以下の

3点

である。

(i)開

発者がプロジェク トに対 して知的貢献 を行 うことへの合意、

(ii)開

発費用負担すなわ ち寄付行為へ の合意、

(iil)各

付で集 まった資金の一部 を社会起業家の給料 とす ることの合 意、である。

次に、

(s‑1)人

か ら集めた寄付の総額か ら社会起業家の給料を差 し引いた額が ソフ トウェ ア開発の経費に支出され、開発者 の知的貢献 を結集 してソフ トウェアが開発 される。ソフ トウェア開発 に携わる人数 に応 じて寄付総額お よび知的貢献が決定 し、その結果、無償か つ優 れたソフ トウェアが 働

+1)人

に供給 される。ただ しこの段 階において、開発者 はプロ ジェク トを円滑に運営 し、良質なソフ トウェアを開発するために、寄付 の管理や開発者間 の調整、追加・修正 プログラムの監視、動作確認作業などの管理労働 を行 う必要がある。

最後に、総寄付額の一部が社会起業家の報酬 として支払われる。社会起業家 は開発プロ ジェク トを実行する見返 りに金銭的報酬 を得 るばか りでな く、公共財供給 自体か ら私的利 益 を得 る。た とえば、優 れたソフ トウェアを社会に無償で提供 した という社会的使命の達 成感である。

以上

3つ

の手順がほぼ同時に実施 されるものとする。すなわち本稿で構築するモデルは、

図 1の ような

1段

階ゲームモデルである う

(第0段

)

1段

│     (本 稿 のモデル)     │

・組織化活動

・管理活動

・利得の分配 ゲ ームモデルの流 れ

(。

社会起業家の出現

)

開発プロジェク トが生み出すソフ トウェアは公共財であるため、プロジェク トに参加 しな いプレイヤー プ

cN`

Sも ソフ トウェアを利用可能である。すなわち、ただ乗 り

(Pree‐ride)

が可能である。

(2)ヒ

エラルキー型提携ゲームの定式化

本節では、開発プロジェク トを提携ゲーム

(N,υ)の

枠組みで定式化する。 ここで、υは ゲームの特性 関数である。単純化 のため、ゲーム

(N,υ)は o―

正規化 されているものとす る。

プレイヤー 'cSヽ

(0)イ

こ対するプレイヤー

0の

提案内容 α

(S)お

よびプレイヤー 'cSヽ

(0)

に対す るプ レイヤー

0の

提案の集合

A(3)を

それぞれ以下の ように定義す る。 この とき、

A(S)は

コンパ ク ト集合であると仮定する。

α

(S)=(θ

,9°

,9〃,S) for 

S

A(t9)=(α(3)}

ここで、 θ∈

[0,珂

はプ レイヤー

0の

給料が寄付総額に占める割合、

oは

プ レイヤー

0が

行 う組織化労働の水準、

cM≧0は

プレイヤー

0が

行 う管理労働の水準であるとする。

1

‑112‑

(7)

以後 において、利得関数 を構成するすべての便益や費用 は金額で換算 し、移転可能である とす る。

次 に、 プ レイヤー

0が

負担す る組織化労働の費用

お よび管理労働の費用

CMを

それ

ぞれ以下のように定義する。

=C°

(9°

,s,I°

),Cν

Cltr(gyVr,G;/ン

)

この とき、

>oはプ レイヤー0の組織化労働 に関す る能力 、 >oはプ レイヤ ー0の 管理労働 に関す る能力 で あ る とす る。

開発プロジェクトによって生み出される公共財Zを以下のように定義する。

Z≡

(1‑θ 二十乃

ν α,

│∈

Sヽ

10)         lCSヽ

(01

この とき、 甍≧

0は

プ レイヤー テ

Sヽ (0}の

寄付額、 αι≧

0は

プ レイヤー テの知的貢献水 準、乃

()は

管理労働が知的貢献の総量に舟 して与 える影響 を表す関数である。すなわちん

()

は開発 プロジェク トにおけるプ レイヤー

0に

よる公共財供給の効率性 を表す。 ん

()は

一般 的な増加関数であ り、 乃

(0)=0,乃

(9〃

)>0,ん

(9ン

)く0で

あるとする。

プ レイヤー J∈

Sヽ(0)が

公共財か ら得 られる便益 を

g,(Z)と

定義 し、 gど

(0)=0,g子

(Z)>0,

a(Z)<oを

仮定す る。

ここで提携 の構築 によ り生 じる提携値 を以下の ような特性 関数 υ

(3)で

ある と定義 し、

υ(3)は 優加法的であると仮定す る。

tttEよ

環 な 名

}!ξ

み ど

F紫)と

i3,S唯:Iド

二 十

Pの

 

この とき、

 P≧ 0は

知識貢献

1単

位あた りの労働単価、 いいかえれば知的貢献の機会費 用である。

(1)式

は、次のことを表現 している。

 1人

提携時の提携値 はゼ ロである。 開発 プロジェ ク トは社会起業家が提携 に含 まれ、かつ開発者が

1人

以上提携 に含 まれるときのみ実行可 能である。社会起業家 と

1人

以上の開発者 によって提携が形成 されるとき、提携値 は公共 財か ら得 られる便益か ら費用の総和 を差 し引いた値 となる。

プ レイヤー 0と プ レイヤー テ

cSヽ(0}と

の間で契約が締結 し、 その内容が実現 した とき のプレイヤー

0お

よびプ レイヤー

'cSヽ

(0)の

利得 を、 それぞれ

(2)式

お よび

(3)式

の よう に定義する。 この とき、両式 ともに連続関数であるとする。

π

(S))=θ Σ

'テ

+gO(Z)θ°CM

IFSヽ tO)

π ,(α

(S))≡gi(Z)一

二―

 fOr ,cSヽ

(0)       (3)

ここで、θの水準が π

Oに

与 える影響 を確認 してみる。 θの増加 は右辺第

1項

の値、すな わち給料 を増加 させ るが、他方

Zの

値 を減少 させ ることを通 じて右辺第

2項

の値、すなわ ち公共薄の便益 を減少 させ る。

プ レイヤー

0が (s‑1)人

のプ レイヤー テ ∈

Sヽ (0)と

提携

s⊂

Nを 形成す る とき、

N

の分害

Jは [S,(例

}た s〕 となる。すなわち、プレイヤー集合 Ⅳ は

1つ

の部分集合

Sと

(れ

‑3)

つ 々

‑ 113‑

(8)

島根県立大学『総合政策論叢』第18号 (2010年 2月

)

個 の

(テ

}と に分割 され る。 υ(S)が定 ま り、 利得 ベ ク トル

O(α

(S)),(π

t(α

(S))}たa団]は(4)

式 の個 人合 理性 の条件 お よび (5)式 の全体合理性 の条件 を満 たす とき、提携 ゲー ム ば

)の

部分 ゲー ム (S,フ)の配分 であ る。 ただ し、(S,υ)は Sに限定 された特性 関数であ る。

7rO(α

(3))≧

0=υ

((0}), π

.(α

(A9))≧

0=υ ({ι

}) V才Sヽ(0)      (4)

π

(S))十 Σ π

,(α

(3))≧

0=υ (S)       (5)

た Sヽ (OI

またプ レイヤー

0が

れ人のプ レイヤー 】

cSヽ(0)と

全体提携 Ⅳ を形成す るとき、υ

tⅣ

)

が定 ま り、利得ベ ク トル [π 。

(S)),(π

.(α

(S))}た

昴団 =Nヽ 団

]は(6)式

の個人合理性の条件お よび

(7)式

の全体合理性 を満たす とき、提携ゲーム 叫 υ)の 配分である。

π O(α

(S))≧

0=υ

((0}), 

πど

(S))≧

0=υ ((】 })∀ テ∈

Sヽ(0}       (6)

π

O(α

(3))+ Σ π

(S))≧

0=υ (N)

tc a、 to)=Ⅳ 、

10〕

さらに、提携合理性の条件:すべてのS⊆ Ⅳ に対して、Σ.∈ぃ。

)π .(α

(S))+π

O(α

(3))≧υ(3)

を満たす配分はCoreに 属し、部分ゲーム(S,υに)に おいて、提携合理性の条件:すべての T⊆Sに汁して、Σι

T⊆ alol 

π

j(α

(T))十π

(T))≧υT)を満たす配分はCoreに 属す。ゲーム

(N,υ

)に

おいて Coreに 属す配分の集合をC(υ)と定義し、部分ゲーム(s,υ ls)において Coreに 属する配分の集合をC(υ)と定義する。

(3)提携 の形 成過程 の定式化

以上 の設定お よび仮定 に基づ き、社会起業家が 開発者 を組織化 し提携 を形成す るための 交渉過程 を、Slikker and van den Nouweland(2001)の Link and Claimゲ ーム を用 い て定式化 す る。

ゲームを

)=[{ズ,(X).報

)},(πO,(π

,)と駅団用と定義する。プレイヤー テ

Nの

戦略集合 ズたNを 次のように定義する。

Xと

∈ANlσ子=P}

プレイヤー,が プレイヤー ブ∈Ⅳ`

'と

のリンク形成を望んでおり、 リンクが形成され

た場合、 σ

,の

値 を要求す る。 プ レイヤー

,が

ブとの リンク形成 を望 んでいない場合 を

σ

!=Pと

す る 。 ま た 、 σ

;=P,σ

=Pと

す る 。

A=筑

十∪

(P)'9t十

[0'∞)で

あ る 。

戦略の組を σ=(σ

)た

N∈ ズ≡Πた

NXと

定義する。プレイヤー間のリンクは、相互合意に 基づいて形成される。ある戦略の組 σのもとでプレイヤー テとプレイヤー ブ∈

N`

'と 間で形成されるリンク

,(σ

)を 次のように定義する。

'(σ

)≡

(t',ブ

}lσ

;∈

9t十 }

ある戦略の組 σのもとでのリンクの集合L(σ)を次のように定義する。

L(σ)≡ {',vil∈

J(σ )I  

Σ

 (σ l+σ

f)≦υ(q(′

(σ ))鴻          (8)

(ね ,々 }∈r(σ,た

q(1(σ

),

リンク形成 によってプ レイヤー集合

Nは

い くつかの コ ミュニケー シ ョン・ コンポーネ ン

トに分割される。プレイヤー テ∈Ⅳ を含むコンポーネントをq(L)と 定義する。(8)式は、

(7)

― ■4‑

(9)

コ ンポーネ ン ト内に貧欲 なプ レイヤーが存在 し、過大 な取 り分 を要求 した場合 に コンポー ネ ン ト内の リンクが破綻す ることを意味 してい る。提携S内の プ レイヤー間で形成 され る リ ンクの集合L(S)を次 の よ うに定義す る。

L(3)≡

((ラ ,ブ }∈

LIテ

,ブ

S}

提携S内のコンポーネントの集合 を

S/Lと

定義する。

各 プレイヤーの利得 πた

sを

戦略の組 σO,(σ

,)た

駅側の関数を以下のように定義する。

π

)≡

itO,ケ

Σ σi∈

〕 ∈ L(σ

)

π

)=Σ σ

,C凱

J:10,お ∈と

)

こ こで、本稿 で用 いる解概念 を整理 してお く。

Nash均

 

あ る戦略 の組 σ

={σi,(σ

:)た

駅硼)が Nash均衡 で あ る とは、 次 の式が成 り立 つ こ とであ る。ただ し σ

.を

提携 Sに含 まれ る、 あ るプ レイヤ ー テ∈S以外 のすべ てのプ

レイヤ ーの戦略 の組 とす る。

tFk4云 チ ケ 拝 母 ヒ

;と

ここで

Nash均

衡の集合 を

π。

)≧ π。

,σ :0)

s、oに

対 して、

 

πど

)≧

π ,(σ .,σ :.)

NE(「 (υ ))と す る。

∀σO∈ χ

O

ι∈ズι

Strong Nash均

 

ある戦略の組 σ 器

=(σ

i■

(,(σ

f**)′

csh側

}が

StrOng Nash均

衡であると

は、すべてのプ レイヤー テ∈

Sが(9)式

を満た し、かつ少な くとも

1人

のプレイヤー ラ∈ S

が厳密 に不等式 を満たすような提携

T⊆Nお

よび戦略 δ j∈

Lが

存在 しない場合である。

π

.((δ .)た

T,(σ

;器 )た N、

T)≧π

.(σ

)

こ こでStrong Nash均 衡 の集合 を

SNE(「 (υ ))と

定義 す る。

(9)

以上の設定 をもとに、プレイヤー

0と

プレイヤー テ

N間

の交渉時における戦略の組 σ=(σO,(σ

)た

}を次のように定義する⑤提携は、提案 α

(S)に

対する相互合意に基づい て形成される。

プレイヤー 0の 戦略を次のように定義する。

島 =欄

中 ネ動

+善

プ レイヤー0の戦略は、すべてのプレイヤー テ2Vヽ(0)と のリンク形成 を望み、提案 α(S)に 基づ き組織化費用 θ°および管理費用 ♂

を負担する見返 りに公共財からの便益を 得て、寄付総額の一部を給料 として提供 させるような要求である。

次に、プレイヤー

'cNヽ(0)の戦略を次のように定義する。

― ■5‑

(10)

島根県立大学 『総合政策論叢』第18号 (2010年 2月

)

σ lclvЧ Ol

(Z)一ニーρ α

t if 

πι

(S))≧0

if π

,(α

(S))<0

VJic Nヽ(0}

プレイヤー

'cNヽ

(0)の 戦略は、各々がプ レイヤー

0の

み と交渉 を行い、参加制約が満 た される場合、寄付 と知的貢献 をす る見返 りに公共財か らの便益 を得て、寄付総額か らプ レイヤー

0の

給料 を差 し引いた残額 を公共財供給 に充てるような要求である。一方、参加 制約が満たされない場合、交渉は決裂す る。

上記の戦略の組 σ に基づいて交渉が実行 されるとき、以下の

2つ

の命題が得 られる。

命題

1(N,υ

)を 彿+1)人の提携形ゲームとし、その部分ゲームを(S,υ)とする。

(テ

)[π

(3),π

.(α

(3)))たぃ団

]∈

C(υ)の とき、すなわち全体提携

s=Nの

配分が Corcに 属

し て い る と き 、 プ レ イ ヤ ー 0の均 衡 利 得 が πO(σ

)=π

O(α

(3))=θΣ た

叫ヴ +g。(Z半 )一 θ° 一θ/

で あ り、す べ て の プ レ イ ヤ ー テ

cSヽ(0)に

対 して、均 衡 利 得 が π .(σ

)=π

,(α (S))=

g,(zネ)̲ィ̲pα,で

あるような ∬明ん均衡 σ 凛

NE(「

))が

存在 し、全体提携

S=Nは

プ レイヤー 0を 働 所 ι

 PJり

9rと す るス ター型 ネッ トワーク構造 となる。

(′

J)[π

O(α

(S),π

.(α

(S)))に 酎硼

]∈

虫 つに)のと き 、 す な わ ち 提 携 S⊂ Nの 配 分 が θο胞 に 属 し て い る と き 、 プ レ イ ヤ ー 0の均 衡 利 得 が πO(σ

**)=π

(S))=θΣ た駅硼 ヴ*十gO(zキ)一 C° ―CM

で あ り、す べ て の プ レ イ ヤ ー

,csヽ

(o)に 対 して、均 衡 利 得 が π ,(σ

*羊)=π

!(α (S))=

ど ,(Zイ

)一

*pα

.で

あ り、すべ て の プ レイヤ ー プ∈Ⅳ `

tS,0)に

汁 して、均 衡 利 得 が πす

**)=g,(Z春 )で

ぁるような

N餌

ん均衡 σ キ

ic NE(「

))が

存在 し、提携

S⊂

Nは プ レ イヤー

0を

θθ 所砲

JP′

り9rと す るス ター型 コンポーネ ン トとなる。すべてのプ レイヤー ブ∈N`

(S,0)は

一人 コンポーネ ン トを形成 し、公共財か ら便益 を得 る。

(証

)補

論 1を 参照。

命題

ゲ ーム

(N,υ)に

お いて、提 案 交 渉 が戦 略 の組 σ

O,(σ

)た 駅側)に 基 づ い て 行 わ れ、 [σ

O,(σ

j)た 麒制蠅∈

C(υ

)の と き、か つ π。

)=島(Z)の

と き、戦 略 の 組

σ

O,●

,)た sЧ 倒

)は

働Ю

,g^lαsん

均衡 となる。

(証

)Slikker and van den Nouweland(2001)の

定理

4.2の

条件 を満 たすので、命題

2

がいえる。■

命題

1か

ら得 られる含意は以下の通 りである。すべての開発者が提携 に参加す る場合、

もしくは一部の開発者が参加 した場合 ともに、社会起業家 を中心 とす るス ター型の提携が 形成 されるとき、誰 も単独では離脱するインセ ンテイブを持たない、安定 した提携 となる。

命題

2か

ら得 られる含意は以下の通 りである。命題

1の

ようにス ター型提携が形成 され ているとき、中心に位置す る社会起業家の金銭的報酬が投下 した組織化お よび管理労働 コ ス トの合計 と等 しい とき、提携 はさらに安定す る。すなわち実質的な金銭的報酬がゼロの

とき、誰 も単独お よび他者 と連携 して離脱す るインセ ンティブを持 たない。

脇 P IP t P 一 一      

Ⅳ           Ⅳ σ       σ

‑ 116‑

(11)

社会起業家 を中心 とす るス ター型提携 であ るだけでは、提携 内の数人が結託 して離脱 し、

新 しい提携 を形成す る可能性 が あ る。 しか し社 会起業家 の実質 的金銭 報酬 が ゼ ロに設 定 さ

れた とき、その ようなインセ ンティブを持つ者 はお らず、提携 はより強固な もの となる。

実質的金銭報酬がゼロの場合、 θ ・Σた駅硼二

=CИ

 tt  θ ° が成 り立つ。先述 した ように、

IT分

野の場合 には θ ν

お よび

ITの

利用 によって低 く抑 えられるので、左辺が比較的小 さ く、それゆえ左辺の金銭報酬 も小 さい。労働対価 としての報酬 を低 く抑 え られるので、 よ り多 くの資金 を再投資に振 り向けることが可能 となる。

(4)提

携規模の決定要因

社会起業家の公共財 に対す る選好水準 と管理労働能力及び組織化能力 を所与 とするとき、

提案 α(S)に 基づ き、形成 されるフリーソフ ト開発提携 について命題

3が

得 られる。

命題

提携

S⊆

Nの 最適規模 は、特性 関数の優加法性が成立する範囲によって定 まる。

すなわちソフ トウェア開発 に貢献す る開発者の人数は、社会起業家の利得最大化行動のも とで各開発者

,cSヽ (0)の

'テ

と α

lに

よって定 まる。

(証

)補

2を

参照。

命題

3か

ら得 られる含意は以下の通 りである。江

,と

αどの水準は、開発者ごとに異なる。開 発者 は、

(i)寄

付 のみ、

(il)知

的貢献のみ、

(ili)そ

の両方、のいずれか と、その貢献水準 を 選択する。貢献水準 は、プログラミング言語の技術水準や知的貢献 に割ける時間、公共財 供給に対す る私的利益 の量 などに依存する。

IT分

野の場合、す き間時間の利用や仕事で習得 したスキルの活用などにより、

Pの

値が 比較的小 さい といえる。加 えてクレジッ トカー ドやインターネ ッ ト、

Paypalな

どをイ 舌用す ることによって貢献 を行 う際の取引費用 も比較的低 く抑 えることがで きる。それゆえ、他 の分野 と比較 して

,iと

α

jを

集めやすい といえる。

5。 おわ りに

本稿では公共財供給 における社会起業家の役割について研究 した。

IT分

野の事例 をもと に同分野の特徴 を挙 げるとともに、公共財供給が成功す る条件 を導出 した。

IT分

野の場合、社会起業家の組織化労働お よび管理労働 は

ITの

活用 により削減可能で ある。 また公共財供給 において非金銭的な知的貢献が とりわけ重要な意味 を持つ。必要な 貢献 を集め、安定的にプロジェク トを実行す るためにも、社会起業家 は運営組織の形態と して非営利組織 を選択す る場合が多い

n。

さらに、社会起業家 は初期段 階において完成 さ れた公共財 を提供す るのではな く、全体像 を想像で きる核 となる部分 を提示 して参加者を 募 り、参加者か ら寄付 と知的貢献 を集約 しなが ら公共財 を創 り上げてゆ く場合が多い。そ れゆえ、

IT分

野における公共財供給では、組織化労働お よび管理労働 に関す る能力 と参加 者 による知的貢献が重要である。

本稿のモデル分析 の結果か ら、社会起業家が持つべ き資質が示唆 された。第 1に 、安定 的に公共財 を供給す るには、社会起業家の実質的な金銭的報酬 をゼロにす る必要がある。

そのためには、社会起業家が公共財供給か ら得 られる私的利益のみで満足す ることが必要 であ り、それゆえ社会起業家 は共通利益の実現 に対 して強い選好 を持 ち、その実現か ら大

‑117‑

(12)

島根県立大学『総合政策論叢』第

18号 (2010年 2月

)

きな便益 を得 られる者が担 うべ きである。第

2に

、社会起業家 は組織化労働お よび管理労 働 を効率化で きる資質を持 っていなければならない。そのためには、

ITの

知識やスキルを 持ち合 わせているばか りでな く、組織化労働および管理労働 を効率化す るためのアイデア を持 っていることが必要である。それゆえ社会起業家には総合的な能力が要求 される。

最後 に本稿 で残 され た課題 を示 してお く。 第

1に

、本稿 で提示 したゲームモデルの精緻 化 で あ る。 第2に、 ヒエ ラルキー構 造 の多 層化 モデ ルや、社 会起 業家 の 出現段 階 を加 えた 多段 階モデルの検討 であ る。第3に、本稿 で展 開 した社会起業家モデルを、IT以外 の分野、

た とえば政治起業家研 究 に応用す るこ とである。

謝 辞

本稿 の準備 ・作 成過程 において多 くの方 々か ら有益 な ご批評や コメ ン トをいただいた。

と くに、広 島大学大学 院の上 田良文先生 な らびに本 田光氏 、公共選択学会 第13回 全 国大会 にお いて 中央大学経済学部 の瀧澤弘和 先生、そ して匿名 の査読者 か ら有益 な コメ ン トを頂 戴 した。 この場 を借 りて厚 く御礼 を申 し上 げたい。 ただ し、本稿 の 内容 に関す る一切 の責 任 は、筆者個 人が負 うこ とはい うまで もない。本研 究 は、平 成21年 度 島根 県立 大学学術 教 育研 究特 別助 成金 の援助 を受 けて行 った ものであ る。

1)クラウ ドソーシングとは「ネットを介 して群衆の叡智を結集させて、 1つの目的を遂行させるこ と」を指す。

2)Ueda(2005)では、社会起業家に関する性質として次の4点 を挙げている。すなわち、(i)社 起業家は共通利益の実現から私的利益を得るため、公共財供給に対する参加制約が満たされやすい、

(ii)参加者は社会起業家への報酬を低 く抑えられるため、 より多 くの便益を享受できる、(iii)組

化労働及び管理労働の効率性が高い者の方が社会起業家になりやすい、( )将来に対する割引率が 低い者ほど社会起業家になりやすい。

3)共通利益や社会的使命の実現にはさまざまな種類や形態が包含されるが、本稿ではそれらを一括 して公共財 と捉えることにする。

4)非分配制約に関する詳 しい説明は、Hansmann(1980)を参照されたい。

5)回領ほか (2000)、 44頁

6)上掲書、45頁

7)上掲書、同頁。

8)GNUソ

フ トウェアとは、UNIXというOSに互換可能なフリーソフ トウェアのOSを開発する ためのGNUプロジェク トで開発 されたソフ トウェアである。

9)国領ほか (2000)、 91頁。 ソフ トウェア開発において、

Linuxの

ように多 くの開発者がインター ネットを利用 して自由にコ ミュニケーシ ヨンを図 りなが ら開発 を進める方法 を「バザール方式」 と 呼び、少人数が中央集権的に開発 を行 う方式を「伽藍方式」 と呼ぶ。 これに関する詳 しい説明は、

Raymond(2001)を 参照 されたい。

10)IT用

語辞典 e Wordsに よると、lVikiと は「Webブラウザから簡単にWebページの発行・編集な どが行なえる、Webコンテンツ管理 システムJであ り、またSNSと Sodal Net■ vorlting Selwice の略で、「人 と人 とのつなが りを促進・サポー トする、 コミュニテイ型のWebサイ ト」である。

11)Pattalと は、インターネッ ト上で容易 に決済がで きるシステム (Online Pttment)の 中で、最 も代表的なものである。

12)Linuxの

事例において、厳密にはプロジェク トの規模が拡大するにつれて多階層構造 を形成 して

‑118‑

(13)

いったが、初期段階ではフラットな構造であったため、ここでは

2階

層構造 と捉 える。

13)事

実、SourceForge netの 調査 によると、ベー タテス ト段階に達 しているオープンソースソフ ト ウェアは全体 の15%に過 ぎず、全体の60%は完成す る確率が極めて低い ものであるという。

14)本

稿のモデルは、社会起業家 となるプレイヤーが決定 した後の状況か ら始める。社会起業家の出 現過程 については、

Ueda(2005)お

よび

Ueda(2006)を

参照 されたい。

15)図

1の 社会起業家の出現段階の考祭は、

Ueda(2005)を

参照 されたい

16)合

理的な社会起業家が非営利組織 を選択する根拠 については、

Ueda(2006)を

参照 されたい。

参照 。参考文献

Al■

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Tl■

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1T用

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(※本稿が参照 しているすべてのWebページの最終確認日は、2010年2月20日である

)

キーヮー ド

:情

報技術 IT 社会起業家

 

公共財供給

 

提携型ゲーム

(KoNNO Kazuhiro)

 

補論 1(命 題

1の

証明 )

(i)オ ープンソース開発の提携

s=Nに

属するメンバー間のネ ッ トワークは

Connected

であ り、

Tree形

である。 よって

Demange(2004)の

命題 1よ り、提携

s=Nの

配分は

Coreに

属す る。この とき、すべての提携メンバーにとって、単独で戦略 を変更するインセ

‑119‑

参照

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