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226 音声言語医学 Aya Hijikata 1), Akira Uno 1,6), Noriko Haruhara 2,6), Masato Kaneko 3,6), Noriko Awaya 4,6), Junko Kozuka 5,6) and Takashi Goto 2,6) Abstr

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音声言語医学 52:225 ─ 232,2011 

原  著

小学 4 年生の漢字単語読解力と音読力,単語の聴覚的理解力に

対する単語属性の影響

─児童による評定値を用いて─

土方  彩1)  宇野  彰1,6)  春原 則子2,6)  金子 真人3,6) 粟屋 徳子4,6)  狐塚 順子5,6)  後藤多可志2,6) 要 約:研究 1 では,小学 5 年生から中学 2 年生の典型発達児によって評価された児童の親 密度値と心像性値を成人の場合と比較検討すること,研究 2 では,通常学級に在籍する小学 4 年生 97 名の漢字単語読解力と音読力および単語の聴覚的理解力に対する親密度と心像性,配 当学年の影響を検討することを目的とした.研究 1 の結果,児童の親密度値は成人の場合とや や異なる傾向を有していた.そのため,研究 2 では児童の単語属性値を用いて分析を行った. 研究 2 の結果,小学 4 年生の漢字単語読解力と単語の聴覚的理解力に対して心像性が最も大き く影響しており,音読力に対しては配当学年,次いで心像性が有意な影響を示した.心像性値 と親密度値において成人の値ではなく児童の値を用いた今回の分析から,児童の漢字単語読解 力と音読力および単語の聴覚的理解力の学習において,感覚イメージ(心的イメージ)が想起 されやすい単語から行うことが有効なのではないかと思われた. 索引用語:児童,読解力,音読力,聴覚的理解力,単語属性

The Effects of Lexical Properties on Printed Kanji Word Comprehension,

Reading Aloud and Word Auditory Comprehension in Fourth Grade

Children

─Using Values Rated by the Children─

筑波大学大学院人間総合科学研究科1):〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 目白大学保健医療学部2):〒339-8501 埼玉県さいたま市岩槻区浮谷 320 帝京平成大学健康メディカル学部3):〒170-8445 東京都豊島区東池袋 2-51-4 東京都済生会中央病院リハビリテーション科4):〒108-0073 東京都港区三田 1-4-17 埼玉県立小児医療センター保健発達部5):〒339-8551 埼玉県さいたま市岩槻区馬込 2100 NPO 法人 LD・Dyslexia センター6):〒272-0033 千葉県市川市市川南 3-1-1-315

1) Graduate School of Comprehensive Human Science, University of Tsukuba: 1-1-1, Tennohdai, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8577,

Japan

2)Faculty of Health Sciences, Mejiro University: 320, Ukiya, Iwatsuki-ku, Saitama-shi, Saitama 339-8501, Japan

3) Faculty of Medical Science for Health, Department of Speech-Language Pathology & Audiology, Teikyo Heisei University:

2-51-4, Higashi-Ikebukuro, Toshima-ku, Tokyo 170-8445, Japan

4)Department of Rehabilitation, Saiseikai Central Hospital: 1-4-17, Mita, Minato-ku, Tokyo 108-0073, Japan

5) Department of Children’s Development and Human Health, Saitama Children’s Medical Center: 2100 Magome, Iwatsuki-ku,

Saitama-shi, Saitama 339-8551, Japan

6)NPO Corporation LD/Dyslexia Centre: 3-1-1-315, Ichikawa-Minami, Ichikawa, Chiba 272-0033, Japan

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は じ め に これまで多くの研究において,単語や文字の認知過 程に対する単語属性の影響が検討されてきた1-7).単 語属性とは単語のもつ特性のことであり,文字数や漢 字の画数といった物理的な特性だけでなく,読み手の 主観的評定値から得られる親密度8),心像性9)なども 含まれる.親密度は単語に対するなじみの程度を主観 的に評価した評定値であり8),心像性とは単語から喚 起される種々の感覚イメージ(心的イメージ)の思い 浮かべやすさを表す主観的評定値である9).日本語に おいては,成人の親密度値や心像性値は 7 段階で評定 され,データベース化されている.成人の単語認知過 程に対する単語属性の影響に関しては,文の黙読時に 高親密度語での眼球停留時間が短くなること4),低頻 度かつ例外的な読みをする漢字単語の音読では,特に 低心像語にて音読潜時が長くなり,誤りやすくなるこ と7)などが報告されている. 児童の音読力に対する単語属性の影響を検討した研 究も報告されている10-12).しかしこれらの研究はいず れも,成人の評定値を使用しており,児童の主観的評 定値を用いた検討は行われていない.児童によって評 定された親密度値と心像性値は,成人の場合と異なる 傾向をもつ可能性が考えられる.そこで本研究では, 研究 1 において,児童(小学 5 年生から中学 2 年生) によって評定された漢字単語の親密度と心像性を児童 の単語属性値とし,成人の単語属性値と比較検討する こと,研究 2 では,児童の単語属性値を用いて,小学 4 年生の漢字単語読解力と音読力,単語の聴覚的理解 力(以後,聴理解力と記す)に対する単語属性の影響 を検討することを目的とした. 研究 1:児童と成人の単語属性値における 比較検討 方   法 1 .対象 小学 5 年生 4 名(男:女= 0:4),小学 6 年生 12 名(男:女= 2:10),中学 1 年生 93 名(男:女= 44:49),中学 2 年生 16 名(男:女= 7:9)の計 125 名を対象とした.いずれもレーヴン色彩マトリックス 検査,標準抽象語理解力検査において基準値−1.5 SD 以上の典型発達児である. 2 .課題と手続き 親密度と心像性の評定は,文字単語と音声単語で共 通の刺激である漢字二字熟語 40 語を用いた.標準抽 象語理解力検査の中の漢字二字熟語 32 語に加え,具 象語 8 語であり(表 1),抽象語 3 語または 4 語の間 に具象語を 1 語ずつ埋め込み,単語の抽象性と具象性 のバランスをとった.なお,分析に用いた評定値は抽 Aya Hijikata1), Akira Uno1,6), Noriko Haruhara2,6), Masato Kaneko3,6), Noriko Awaya4,6),

Junko Kozuka5,6) and Takashi Goto2,6)

Abstract: The aim of study #1 was to weigh the familiarity and imageability of children in

the fifth to eighth grade age bracket against the corresponding values of adults. The aim of study #2 was to examine the effects of lexical properties on printed kanji word comprehension, reading aloud, and word auditory comprehension in fourth grade children. The lexical properties used in study #2 were familiarity, imageability, and grade of acquisition. Study #1 revealed that familiarity values rated by children had slightly different trends from those of adults. Some high-familiarity words in adults were considered low-familiarity words in children. Because of this result, the lexical properties of children were used in study #2. Study #2 demonstrated that imageability had the strongest influence on printed Kanji word comprehension and word auditory comprehension. Grade of acquisition had the most effect on reading aloud, followed by imageability. The results of this study using lexical properties rated not by adults but by children suggest that learning starts with words in which the ease of recalling a sensuous image is effective for improving printed kanji word comprehension, reading aloud, and word auditory comprehension in children.

Key words: children, reading comprehension capability, reading aloud capability, auditory

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象語 32 語に対する評定値のみであった.「単語を見て (単語を聞いて),その単語があなたにとってどのくら い身近か,また,単語のもつ意味からイメージがどの くらい浮かびやすいかを評価してもらいます」と教示 した後,検査者が誘導しながら例題 4 語を行い,親密 度と心像性の評価基準を理解してもらえるよう工夫し た.評価は 5 段階評価であり,親密度の評価では,提 示された単語が “ 身近ではない ” なら 1,“身近な言葉 ” であったら 5,身近さが 1 と 5 の “ 真ん中 ” であれば 3 のように,1 から 5 のいずれかの数字に丸を付けて もらった.心像性の評価も親密度の場合と同様に 5 段 階評価とし,提示された単語のイメージが “ 思い浮か びにくい ” なら 1,“ 思い浮かびやすい ” なら 5,思い 浮かびやすさが1と5の“真ん中”であれば3のように, 1 から 5 のいずれかの数字に丸を付けてもらった.音 声単語の評価では,単語を復唱した後で丸を付けても らった.文字提示では評価終了後に全単語を音読して もらい,音読に誤りのあった単語の評価値は分析対象 から除外した.音声提示の場合,評価終了後に同音異 義語の存在する単語については,どの単語を評価した のか児童に答えてもらった.同音異義語を評価してい た場合にはその単語の評価値を分析対象から除外し た.また,知らないと答えた単語も分析対象から外し た.各単語の評価値の平均を,児童の文字単語親密度 値,文字単語心像性値,音声単語親密度値,音声単語 心像性値とした. 結 果 児童の親密度値,心像性値の特徴 1 )児童の文字単語親密度値,文字単語心像性値, 音声単語親密度値,音声単語心像性値,配当学年の相 関分析 文字単語の親密度値と心像性値(r=.445,p<.05), 音声単語の親密度値と心像性値(r=.535,p<.01)と いう同じ入力経路の提示条件による親密度値と心像性 値は中程度の相関を示した.また,文字単語の親密度 値と音声単語の親密度値(r=.936,p<.001),文字単 語 の 心 像 性 値 と 音 声 単 語 の 心 像 性 値(r=.863, p<.001)という異なる入力経路の提示条件による同種 類の単語属性値は強い相関を示した(表 2). 2 )成人と児童の単語属性値間における相関分析 成人8)と 児 童 の 親 密 度 値( 文 字 単 語:r=.483, p<.05,音声単語:r=.420,p<.05),成人9)と児童の心 像性値はいずれも中程度の相関(文字単語:r=.638, p<.001,音声単語:r=.577,p<.001)であった(表 2). 成人の単語属性値を算出する場合,各評定者の 7 段 階の評定値は各自の心理尺度を 7 段階でほぼ等間隔に ランク化した値とし,間隔尺度として成り立つと仮定 して各単語の評定値の平均を親密度値,心像性値とし ている.本研究における児童の評定値も成人の場合と 同様に心理尺度上の間隔尺度値であると仮定し,成人 の場合と同様の手続きにより親密度値と心像性値を算 出した.成人と児童双方の評定値は間隔尺度として成 り立つと仮定していることから,7 段階評価である成 人の評定値から 1 を引いて 4/6 を掛け,さらに 1 を加 えることで 5 段階評価の値に変換し,5 段階評価であ る児童の評定値と比較した.児童と成人の親密度値を 比較した結果,児童と成人の親密度値間における差の 絶対値が大きい順に単語を 4 つ並べると,文字単語で は「救助,事故,賛否,訪問」,音声単語では「悲鳴, 救助,無事,事故,労働」であった.音声単語の「事 故」と「労働」における差の数値が等しかった.これ らの単語は,児童の親密度値のほうが成人の親密度値 よりも低く,成人の値との間に 1.8 から 2.0 の差があっ た.また,成人と児童の心像性値を比較し,児童と成 人の心像性値間における差の絶対値が大きい順に単語 を 4 つ並べると,文字単語では「好物,協力,飼育, 混雑」,音声単語では「好物,協力,主張,混雑」であっ た.文字単語における 4 つの単語と音声単語の「好物, 協力,混雑」では,児童の心像性値のほうが成人の心 像性値よりも高く,成人の心像性値との間に 0.8 から 1.2 の差があった.また音声単語の「主張」は児童の 心像性値のほうが成人の心像性値よりも低く,児童と 成人の心像性値間に 0.9 の差があった(図 1). 考 察 成人の親密度値と心像性値について佐久間ら9)は, 同じ提示条件によるそれぞれの属性値の相関係数が, 文字提示でr=.796,音声提示でr=.782といずれも高く, 表 1 本研究で使用した漢字二字熟語 標準抽象語理解力検査の刺激から 選定した 32 語 具象語 8 語 親切 疲労 悲鳴 協力 教室 主食 無事 比較 限界 地図 家事 対立 労働 興奮 金魚 事故 幸福 失敗 技術 食器 混雑 固定 安全 休息 風船 主張 賛否 好物 飼育 太陽 競争 救助 訪問 秘密 写真 保存 知識 発育 栄養 鉛筆

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また,文字提示と音声提示の心像性値の相関係数が r=.913 と高かったと報告している.さらに近藤,天野8) は,親密度において文字提示と音声提示による相関係 数が r=.726 と高かったと報告している.本研究で得 られた児童の親密度値と心像性値においても, 同じ提 示条件によるそれぞれの値は中程度の相関を示し,提 示条件の異なる同種類の単語属性値は強い相関を示し ていた.これらの傾向は,成人と同様であると考えら れた. 親密度値における,児童の評価値と成人の評価値間 の相関係数は中程度ではあるが,やや低い値であった. 本研究で使用した標準抽象語理解力検査の漢字単語 は,図 1 にも示されるように,成人の親密度値では高 親密度語であるといえる.しかし,「救助」「事故」と いった漢字単語における児童の親密度値は成人の値に 比べて低く,児童にとって本研究で使用した漢字単語 は親密度の高い語ばかりではないと考えられる.一方, 児童の心像性値は成人の評定値と相関が比較的高く, 成人の値と類似した傾向をもつと考えられた.しかし, 「好物」「協力」「飼育」等,学校生活や家庭生活のな かで児童が実体験する頻度が高いと思われる漢字単語 の心像性値は,成人の値に比べてやや高く,両者にお いてわずかな違いはあるのではないかと思われた. 本研究の結果から,対象が児童である場合,成人の 評定値をそのまま適用するのではなく,児童の評定し た値を適用すべきであると考えられた. 研究 2:小学 4 年生の漢字単語読解力と音読力, 聴覚的理解力に対する単語属性の影響 方   法 1 .対象 通常学級に在籍する小学 4 年生 97 名(男:女= 47:50)である. 2 .課題と手続き 読解,音読,聴理解課題はいずれも共通の課題とし, 標準抽象語理解力検査のなかの漢字二字熟語 32 語を 使用した(表 1).読解課題(漢字-絵の 1/6 択指さし 課題),音読課題,聴理解課題(聴覚的単語-絵の 1/6 択指さし課題)は個別式にて行った.実施は必ず音読 課題,読解課題の順で行い,聴理解課題は読解課題と 音読課題の 2 ヵ月後に実施した.反応時間に制限は設 けなかった.各課題において項目の順序を変え,読解 課題と聴理解課題では絵の配置も変えた. 表 2 単語属性値間における相関分析 1)児童の単語属性値間における相関分析 文字単語親密度 (児童) 文字単語心像性 (児童) 音声単語親密度 (児童) 音声単語心像性 (児童) 文字単語親密度 (児童) ― ― ― ― 文字単語心像性 (児童) .445* ― ― ― 音声単語親密度 (児童) .936*** .453** ― ― 音声単語心像性 (児童) .453** .863*** .535** ― 配当学年 −.173 −.244 −.114 −.093 2)成人と児童の単語属性値間における相関分析 文字単語親密度 (成人) 文字単語心像性 (成人) 音声単語親密度 (成人) 音声単語心像性 (成人) 文字単語親密度 (児童) .483* .277 .534** .118 文字単語心像性 (児童) .075 .638*** .228 .572** 音声単語親密度 (児童) .442* .287 .420* .159 音声単語心像性 (児童) .189 .593** .204 .577** ***p<.001,**p<.01,p<.05(スピアマンの順位相関係数),単語数 =32

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結 果 1 .漢字単語の読解と音読,単語の聴理解正誤を従 属変数とし,単語属性値を独立変数とした二項ロジス ティック回帰分析 漢字単語の読解正誤を 0 または 1 で表して従属変数 とし,文字単語親密度,文字単語心像性,配当学年を 独立変数としたロジスティック回帰分析の結果,標準 化偏回帰変数の大きい順に文字単語心像性(β=.543, p<.001),配当学年(β=−.353,p<.001),文字単語 親密度(β=.135,p<.01)であった.同様に,漢字単 語の音読正誤を従属変数とした結果,標準化偏回帰係 数の大きい順に配当学年(β=−.530,p<.001),文字 単語心像性(β=.344,p<.001),文字単語親密度(β =.126,p<.01)であった.単語の聴理解正誤を従属変 数 と し た 場 合 は, 音 声 単 語 心 像 性(β=.518, p<.001),配当学年(β=−.419,p<.001)の順に標準 化偏回帰係数が大きかったが,音声単語親密度は有意 な予測変数として抽出されなかった(表 3). また,成人の単語属性値を用いた同様の分析も行っ た.児童の単語属性値を用いた分析結果と異なってい た 点 は, 読 解 正 誤 に 対 し て 配 当 学 年(β=−.539, p<.001)のほうが文字単語心像性(β=.342,p<.001) よりも強く影響していた点,聴理解正誤に対して音声 単語親密度(β=.490,p<.001)が最も強く影響して いた点であった(表 3). 2 .漢字単語の読解正誤を最終従属変数とし,二項 ロジスティック回帰分析を繰り返し行ったパス解析 土方ら12)は,小学 5,6 年生の漢字単語読解力に対 して,漢字単語の音読力と単語の聴理解力の双方が影 響していることを報告している.そこで,漢字単語の 読解正誤を最終従属変数とし,漢字単語の音読正誤と 単語の聴理解正誤,文字単語親密度,文字単語心像性, 配当学年を独立変数とした二項ロジスティック回帰分 析を繰り返したパス解析を行った.その結果,漢字単 語の読解正誤に対する標準化偏回帰係数は,大きい順 に音読正誤(β=.813,p<.001),聴理解正誤(β=.517, p<.001),文字単語心像性(β=.349,p<.001),文字 図 1 成人と児童の親密度値,心像性値における散布図 児童と成人の親密度値間における差の絶対値が大きかった(差の絶対値 1.8-2.0)単語を実践の丸で囲んだ. 児童と成人の心像性値間における差の絶対値が大きかった(差の絶対値 0.8-1.2)単語は点線の丸で囲んだ. 単語数=32(成人の音声単語心像性値が 1 つ欠損していたため,音声単語心像性のみ単語数 =31) 文字単語親密度︵児童︶ 文字単語親密度(成人) 音声単語親密度︵児童︶ 音声単語親密度(成人) 文字単語心像性︵児童︶ 文字単語心像性(成人) 音声単語心像性︵児童︶ 音声単語心像性(成人) 2.00 2.00 2.50 2.50 3.00 3.00 3.50 3.50 4.00 4.00 4.50 4.50 5.00 5.00 2.00 2.00 2.50 2.50 3.00 3.00 3.50 3.50 4.00 4.00 4.50 4.50 5.00 5.00 2.00 2.00 2.50 2.50 3.00 3.00 3.50 3.50 4.00 4.00 4.50 4.50 5.00 5.00 2.00 2.00 2.50 2.50 3.00 3.00 3.50 3.50 4.00 4.00 4.50 4.50 5.00 5.00

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単語親密度(β=.130,p<.01),配当学年(β=−.123, p<.01)であった(図 2). 考 察 二項ロジスティック回帰分析の結果から,漢字単語 の読解の正確性に対して最も大きく影響していた属性 は心像性であり,次いで配当学年,親密度の順に影響 していた.感覚イメージ(心的イメージ)が思い浮か びやすく,児童にとって身近な単語,さらに学習期間 の長い単語ほど読解が正確に行われることが示され た.また,漢字単語音読の正確性に対して最も強く影 響していた属性は配当学年で,次いで心像性,親密度 であった.学習期間の長い単語ほど,語彙として記憶 されやすく,正確な音読が可能になると考えられた. 聴理解の正確性に対しては心像性が最も強く影響して いたことから,単語の感覚イメージ(心的イメージ) の浮かびやすい単語ほど正確な聴理解が行われやすい ことが示唆された.配当学年も有意に影響していたか ら,児童は漢字単語を学習する際,意味も同時に習得 している可能性が考えられる. 読解と聴理解の正確性に対し,親密度よりも心像性 のほうが強く影響していた.読解課題と聴理解課題は 意味の “ 理解 ” を問う課題であるため,意味情報の鮮 明さを表す心像性のほうが,文字形態や意味形態など の語彙表象に対するなじみの程度を表す親密度よりも 大きく影響したと考えられる.児童が身近に感じてい 表 3  漢字単語の読解と音読,単語の聴理解正誤を従属変数とし,単語属性値を独立変数 とした二項ロジスティック回帰分析 1)児童の単語属性値 従属変数 独立変数 標準化偏回帰係数β Wald オッズ比 95%信頼区間 読解正誤 文字単語心像性 (児童) .543*** 134.15 3.97 3.15–5.02 配当学年 −.353*** 80.62 0.76 0.71–0.81 文字単語親密度 (児童) .135** 9.08 1.24 1.08–1.43 音読正誤 配当学年 −.530*** 172.73 0.66 .619–.701 文字単語心像性 (児童) .344*** 57.46 2.40 1.91–3.01 文字単語親密度 (児童) .126** 8.15 1.22 1.07–1.41 聴理解正誤 音声単語心像性 (児童) .518*** 106.55 2.52 2.12–3.01 配当学年 −.419*** 109.21 0.72 0.68–0.76 音声単語親密度 (児童) .060 1.41 1.09 0.95–1.26 2)成人の単語属性値 従属変数 独立変数 標準化偏回帰係数β Wald オッズ比 95%信頼区間 読解正誤 配当学年 −.539*** 176.09 0.65 0.61–0.70 文字単語心像性 (成人) .342*** 76.96 3.43 2.60–4.52 文字単語親密度 (成人) .290*** 56.11 0.65 2.00–3.27 音読正誤 配当学年 −.664*** 253.45 0.59 .556–.633 文字単語心像性 (成人) .305*** 61.25 3.01 2.28–3.97 文字単語親密度 (成人) .200*** 26.37 1.91 1.49–2.45 聴理解正誤 音声単語親密度 (成人) .490*** 127.44 4.74 3.62–6.21 配当学年 −.383*** 85.58 0.74 0.69–0.79 音声単語心像性 (成人) .300*** 41.01 2.90 2.09–4.02 ***p<.001,**p<.01,p<.05(強制投入法)

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る単語であっても,その単語の詳細なイメージを必ず しも児童がもっているわけではなく,したがって,児 童にとって身近であっても,イメージが思い浮かびに くい単語の場合,正確な聴理解は行われにくい可能性 が示唆された. 成人の単語属性値を用いた二項ロジスティック回帰 分析の結果,児童の単語属性値を用いた分析結果とは 異なる点が認められたことから,児童を対象とした データを分析する場合には,児童の単語属性値を用い た方が適切であるように思われた. 漢字単語の読解正誤を最終従属変数としたパス解析 では,漢字単語の音読正誤,単語の聴理解正誤の順に 強い影響力をもっており,さらに読解正誤,音読正誤, 聴理解正誤それぞれに心像性と配当学年が大きく影響 するモデルが作成された.小学 5,6 年生の典型発達 児を対象とした土方ら12)の研究では,音読得点は天 井効果を示し,読解正誤に対しては聴覚的理解が音読 に比べ大きく貢献していた.しかし,本研究で対象と した小学 4 年生では音読できない漢字単語も多かっ た.音読できない単語の場合,聴理解力を読解力に直 接活用することは難しい.そのため,音読力からの貢 献度が大きかったと考えられる. また,漢字単語の読解,音読,単語の聴理解,それ ぞれの正誤に対して,心像性が強い影響力をもってい たことから,児童の評定値を用いた本研究の分析にお いても,単語の学習は,児童が感覚イメージ(心的イ メージ)を想起しやすい単語から行うことが有効であ ると示唆された. 本研究では,小学 4 年生の漢字単語読解力と音読力, 単語の聴覚的理解力に対する児童の単語属性の影響を 検討するにあたり,小学 4 年生によって評価された単 語属性値を得ることができなかったため,学年の近い 児童の評定値データを用いて分析した.本来は,小学 4 年生によって評定された単語属性値を用いて分析を 行うべきであると考えられる.読解,音読,聴理解課 題を行う児童の学年と,単語属性を評定する児童の学 年をそろえた分析を行うことを今後の課題としたい. 文   献

1)McFalls EL, Schwanenflugel PJ and Stahl SA: Influence of word meaning on the acquisition of a reading vocabulary in second-grade children. Read Writ, 8: 235-250, 1996.

2)Strain E, Patterson K and Seidenberg M: Semantic effects in single-word naming. J Exp Psychol Learn Mem Cogn, 28: 207-214, 2002. 3)伏見貴夫,伊集院睦雄,辰巳 格:漢字・仮名で書かれた 単語・非語の音読に関するトライアングル・モデル(1). 失語症研究,20(2):115-126,2000. 4)近藤公久,馬塚れい子,筧 一彦:日本語文の読解過程に おける語特性および語順の影響.認知科学,9(4):543-563,2002. 図 2 漢字単語の読解正誤を最終従属変数としたパス図 ***p<.001,**p<.01,*p<.05.図中の数字は標準化偏回帰係数を示す.音声単語親 密度と音声単語心像性は,それぞれ文字単語親密度と文字単語心像性と相関が強 かったため,独立変数として投入しなかった. 漢字単語 読解正誤 漢字単語 音読正誤 単語 聴理解正誤 文字単語 親密度 文字単語 心像性 漢字単語 配当学年 .81*** .52*** .35*** .34*** .73*** .13** .13** −.36*** −.53*** −.12**

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5)近藤公久,Wydell TN:漢字 2 文字単語の読みの過程と単 語および漢字の特性との関係.日本認知科学会第 18 回大 会論文集:292-293,2001. 6)加藤和美,天野成昭,近藤公久:音声単語認知における親 密度と頻度の影響.日本音響学会研究発表会講演論文集, 2000(1):353-354,2000.

7)Shibahara N, Zorzi M, Hill MP, et al: Semantic effects in word naming : Evidence from English and Japanese Kanji. Q J Exp Psychol, 56A(2): 263-286, 2003.

8)天野成昭,近藤公久:日本語の語彙特性 第 1 巻 単語親密度, 三省堂,東京,1999. 9)佐久間尚子,伊集院睦雄,伏見貴夫,他 : 日本語の語彙特 性 第 8 巻 心像性,三省堂,東京,2005. 10)伏見貴夫,新貝尚子:小児失語症例における失読パターン: 単語属性効果の検討による失読機序の分析.高次脳機能研 究,23(2):138-148,2002. 11)中村 光,畑中政実:深層失読(deep dyslexia)を呈し た小児後天性失語の 1 例.第 3 回認知神経心理学研究会抄 録集:22-23,2000. 12)土方 彩,宇野 彰,春原則子,他:漢字単語の読解力に かかわる音読力と聴覚的理解力の貢献度について―定型発 達児,発達性 dyslexia 児における検討―.音声言語医学, 51:221-229,2010. 別刷請求先:〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1       筑波大学総合研究棟 D217       宇野 彰

参照

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