平成 23 年 10 月 31 日
欧州の LNG 燃料フェリー事情
~LNG 燃料フェリーの導入が進むノルウェー及びバルト海沿岸国~ 現在、欧州ではノルウェー及びバルト海沿岸 国で LNG 燃料フェリーの導入が進んでいる。特 にノルウェーでは 2007 年以降、公共フェリーへ の LNG 燃料船の導入が急速に進んでおり、本年 9 月現在で 14 隻が就航しているが、この背景に はノルウェー政府による国際公約(ヨーテボリ 議定書)遵守のための政策的バックアップがあ る。 一方、バルト海沿岸国では一部の船会社が LNG 燃料フェリーの導入を決め、既に建造が 始まっている。この背景には国際海事機関(IMO)の「海洋汚染防止条約(MARPOL73/78 条約)の改正附属書(VI)」の排出規制海域における規制の遵守がある。 本レポートは、欧州でも特にノルウェー及びバルト海沿岸国における LNG 燃料フェリー 導入の背景と現状について報告する。 1. ノルウェーにおける LNG 燃料フェリー導入の背景 ノルウェーは氷河による浸食作用によって形成されたフィヨルドによって海岸線が複雑 に入組み、湾奥を除いて断崖絶壁が続くなど、橋やトンネルの建設が難しい部分が少なく ない。そのため沿岸部の道路は分断され、その間をハイウェーフェリーと呼ばれる自動車 と旅客を運ぶ公共フェリーが接続している。同国の 2010-2019 国家運輸計画によれば同国 の道路の 100 ヵ所近くでハイウェーフェリーが運航されている。 ハイウェーフェリーは運輸・通信省(ノルウェー公共道路管理局)または地方自治体が 所管している。運輸・通信省は重要道路を接続するハイウェーフェリーなど国が所管する 公共フェリーに LNG 燃料船を導入する方針である。地方自治体のなかにも国に追随して、 所管する公共フェリーに LNG 燃料船を導入するケースも出ている。 ノルウェーの公共フェリーの運行は民間のフェリー会社に委託されている。ノルウェー 公共道路管理局は 2004 年以降、公共フェリー運行の入札に際して LNG 燃料船の導入提案を 目次 1. ノルウェーにおけるLNG燃料 フェリー導入の背景 --- p.1 2. ノルウェーにおけるLNG燃料 フェリー導入の現状 --- p.5 3. バルト海沿岸国におけるLNG燃料 フェリー導入の背景及び現状 --- p.9 4. おわりに --- p.13ェー国内で運行する「より多くの」フェリーが燃料として天然ガスを使用することを望ん でいる」と述べている。 ノルウェー政府の LNG 燃料フェリーの導入政策は窒素酸化物(NOx)対策の一環である。 同国は、国連の長距離越境大気汚染条約に関連したヨーテボリ議定書に定められた NOx 排 出量の上限を遵守するために強力な NOx 対策が必要になっている。 船舶から排出される NOx 量を大幅削減する方法には、ディーゼルエンジンの排気ガスを 処理する選択式触媒還元脱硝装置(SCR)を設置する方法と、ガスエンジンあるいは混焼エ ンジン(石油でも天然ガスでも運転可能)を搭載した LNG 燃料船を導入する方法があるが、 ノルウェー政府は従来のディーゼルエンジンに比べて NOx 排出量を最大 90%削減できる LNG 燃料船の導入を推進している。 <参考> http://www.regjeringen.no/nb/dep/sd/dok/regpubl/stmeld/2008-2009/stmeld-nr-1 6-2008-2009-.html?id=548837 (ノルウェー語:2010-2019 国家運輸計画) http://www.holga.no/upload/Dokmntr/Pressemelding%20Statens%20Vegvesen.doc (ノルウェー語:ノルウェー公共道路管理局プレス発表) (1) 「ヨーテボリ議定書」の採択 欧州では1970 年代に国境を越えて拡散する他国のSO2等の大気汚染物質による農林水産 業の被害および健康被害が問題になった。これに各国が協調して対処するため 1979 年にノ ルウェーを含む欧州諸国、米国およびカナダなど 49 カ国が国連の「長距離越境大気汚染条 約」に署名した(日本は同条約に参加していない)。同条約は 1983 年に発効し、1984~1999 年の間に同条約に関連した 8 件の議定書が採択された。 このなかで 1999 年に採択され 2005 年に発効した「酸性化・富栄養化・地上レベルオゾ ン低減」を定めた「ヨーテボリ議定書」はノルウェーを含む 26 カ国が批准した。この議定 書は硫黄化合物、NOx、揮発性有機化合物およびアンモニアの 2010 年の各国の排出上限値 を定めている。(注:ヨーテボリはスウェーデン南西部の港湾都市である) 同議定書の NOx 排出上限値の例を表1に示す。ノルウェーは、1990 年(基準年)と比較 して 28%減の 15.6 万トンを 2010 年の排出上限とすることを約束している。
表1. NOx の排出上限値の例 国名 1990年排出レベル (万トン) 2010年排出上限 (万トン) 削減率(%) ドイツ 269.3 108.1 60 英国 267.3 118.1 56 イタリア 193.8 100 48 ウクライナ 188.8 122.2 35 フランス 188.2 86 54 ノルウェー 21.8 15.6 28 <参考> http://www.un.org/ar/events/biodiversity2010/pdf/AirPollution_convEN.pdf http://www.unece.org/env/lrtap/multi_h1.html (2) NOx 税の導入および NOx 基金の設立 2005 年に政権の座についた現政府は、当時、その他の大気汚染物質は議定書を遵守でき る見通しのなかで、NOx 対策だけが置き去りにされ、同国の NOx 排出量が 20 万トンを超え ている状況に直面した。そこで政府はこのままではヨーテボリ議定書を遵守できないと判 断し、NOx 税の導入に踏み切った。 NOx 税の新設を含む租税特別法の改正案が 2006 年 11 月に議会を通過し、2007 年 1 月か ら課税が始まった。税額は当初(2007 年)は NOx 排出量 1 kg あたり 15 クローネであった が、年毎に増額されて 2011 年は 16.43 クローネ(1 クローネ:約 14 円)になっている。 船舶については、搭載しているエンジンの合計能力が 750 kW を越えるものが課税の対象 とされ、船籍を問わずノルウェー領海(250 マイル)内で排出する NOx 量に対して課税さ れる。ただし国外の港を出港してノルウェーの港に入港し、再び国外の港に直行する船舶 は課税対象外とされている。 <参考> http://www.lovdata.no/cgi-wift/ldles?doc=/sf/sf/sf-20011211-1451.html (ノルウェー語:NOx 税導入を含む租税特別法の改正) http://www.sjofartsdir.no/upload/Fart%c3%b8y%20og%20sj%c3%b8folk/Nox-avgifte n/Guideline%20on%20NOx%20rev%2011.pdf
ノルウェーでは特に船舶の NOx 対策が重視されており、NOx 税の開始に先立ち、政府は 2007 年課税に関わる提案書で、「2004 年のノルウェーのNOx の総排出量のうち約40%は海 運と漁業によるものであり、船舶の対策が最もコスト効果が大きい」と述べている。 図1. NOx 税導入当時の NOx 排出源の内訳 (出所:2007 年課税に関する政府提案書の数値をもとに作成) <参考> http://www.regjeringen.no/Rpub/STP/20062007/001SKA/PDFS/STP200620070001SKADD DPDFS.pdf (ノルウェー語:2007 年課税に関する政府提案書) NOx 税が実施に移されると漁業関係者などから負担が過大との不満が噴出したことから、 負担の軽減を目的として 2008 年 2 月に民間 14 団体(海運、造船、機械、水産、石油など の業界団体およびノルウェー経営者連盟)によって NOx 基金が設立された。企業は NOx 税 より安い金額を基金に供出し、基金は NOx 排出量削減の自主目標を設定して政府と環境協 定を締結し、集めた資金を、参加企業のなかで効果的な NOx 対策を実行する企業に分配す る。基金が目標を達成すれば参加企業は NOx 税が免除されるという仕組みである。 基金への供出額は、ノルウェー領海で石油・天然ガスの開発・生産を行なっている企業 は NOx 排出量 1 kg あたり 11 クローネ、その他の企業は NOx 排出量 1 kg あたり 4 クローネ とされ、NOx を排出する多くの企業が基金に参加している。
NOx 基金と政府は 2008 年 5 月に、2008~2010 年の実施期間の NOx の排出量を 19,000 ト ン削減するとした環境協定を締結し、NOx 基金は目標を達成した。そして 2010 年 12 月に、 2011~2017 年を実施期間にさらに NOx の排出量を 16,000 トン削減する新たな環境協定を 締結している。 <参考> http://www.nho.no/naeringslivets-nox-fond/ny-miljoeavtale-om-nox-til-2017-ar ticle22705-457.html (ノルウェー語:環境協定締結の記事) 2. ノルウェーにおける LNG 燃料フェリー導入の現状 (1) LNG 燃料船を運航するフェリー会社 ノルウェーでは公共フェリーの運行は民間のフェリー会社に委託されている。LNG 燃料 フェリーの運航を受託しているのは Fjord1、Tide Sjø、および Torghatten の子会社 (Torghatten Nord および FosenNamsos Sjø)である。以下に会社別に状況を記す。
① Fjord1 社
ノルウェー西部の Sogn og Fjordane 県および隣接する Møre og Romsdal 県が出資して 2001 年に設立した大手旅客輸送会社 Fjord1 Nordvestlandske のフェリー子会社である。 同社はノルウェー西部で LNG 燃料のハイウェーフェリーの運航を受託し、現在 10 隻の LNG 燃料フェリーを運行している。年内にさらに 2 隻が追加される予定である。 同社は国の LNG 燃料船の実証試験に協力して世界初の LNG 燃料フェリーGlutra を 2000 年に就航させている。同船は従来のディーゼルエンジンを搭載したフェリーと比較して NOx 排出量を約 90%削減できることを実証し、現在も定期航路に就航している。 <参考> http://www.fjord1.no/en/default.asp?menu=1406&page=1606 http://www.epmtech.jotne.com/fremtiden-er-gassdreven.256824-39795.html (ノルウェー語:Glutra に関する説明文)
表 2. Fjord1 保有の LNG 燃料フェリー No. 船名 就航年 旅客定員 乗用車積載台数 備考 1 Glutra 2000 350 120 新造 2 Bergensfjord 2007 589 212 新造 3 Fanafjord 2007 589 212 新造 4 Stavangerfjord 2007 589 212 新造 5 Raunefjord 2007 589 212 新造 6 Mastrafjord 2007 589 212 新造 7 Moldefjord 2010 390 125 新造 8 Fannefjord 2010 390 125 新造 9 Romsdalsfjord 2010 390 125 新造 10 Korsfjord 2010 390 125 新造 11 Boknafjord 2011(予定) 600 240 新造 12 Tresfjord 2011(予定) 500 124 改造 <参考> 1 Glutra http://www.ship-info.com/prog/redskip.asp?id=LJZB 2 Bergensfjord http://exchange.dnv.com/exchange/main.aspx?extool=vessel&vesselid=26392 http://www.fjordfaehren.de/no_f2/bergensfjord2006.htm http://www.faergelejet.dk/vis.php?id=4878 3 Fanafjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=26393 http://www.faergelejet.dk/faerge.php?id=1312 4 Stavangerfjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=26395 5 Raunefjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=26394 6 Mastrafjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=26396 7 Moldefjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=28424 http://www.tk.no/nyheter/article5533938.ece
http://www.fjordfaehren.de/no_f2/moldefjord_2009.htm 8 Fannefjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=28425 9 Romsdalsfjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=28426 10 Korsfjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=29459 11 Boknafjord http://www.ferryvolution.com/newbuilding-database/fjord-1/ 12 Tresfjord http://www.fjord1.no/default.asp?page=235&article=467 http://www.fjordfaehren.de/no_f/tresfjord1991.htm ② Tide Sjø 社 ノルウェーの大手旅客輸送会社 Tide のフェリー子会社で 2000 年に設立された。オスロ 市および隣接する Akershus 県の公共交通を統括する公共交通機関 Ruter から 3 隻の LNG 燃料フェリーの運航を受託している。 <参考> http://eng.tide.no/Default.aspx?pageid=821 http://www.tide.no/Default.aspx?pageid=1256 (ノルウェー語:Tide Sjø が受託するフェリー航路の説明) 表 3. Tide Sjø 保有の LNG 燃料フェリー No. 船名 就航年 旅客定員 乗用車積載数 備考 13 Tidedronningen 2009 600 0 新造 14 Tidekongen 2009 600 0 新造 15 Tideprinsen 2009 600 0 新造 <参考> 13 Tidedronningen http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=28715 http://www.stxeurope.com/?page=117&techinfo=486 14 Tidekongen http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=28714
http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=28716
③ Torghatten 社
ノルウェーの大手輸送会社 Torghatten の子会社 FosenNamsos Sjø および Torghatten Nord が LNG 燃料フェリーの運航を受託している。FosenNamsos Sjø は、ノルウェー西部で LNG 燃料フェリーの運航を受託している。Torghatten Nord は Torghatten の旅客輸送子会 社 Torghatten Trafikkselskap が 2008 年に設立したフェリー会社で、ノルウェー西部沿岸 を航行するフェリーの運航を受託し、2013 年の運行開始に向けで 4 隻の LNG 燃料フェリー を建造中である。 <参考> http://wpsites.wiseonlineservices.com/site/fosen_sjo/article.php?id=208 (ノルウェー語:FosenNamsos Sjø のフェリー運航受託に関わる情報) http://www.torghattennord.no/english/showarticle.aspx?ID=30f953c3-f2fe-4c4e-bb9c-8075a9ddf013 http://www.ht.no/incoming/article380529.ece?service=mobile (ノルウェー語:Torghatten Nord が建造中のフェリーの情報) 表 4. FosenNamsos Sjø 保有の LNG 燃料フェリー No. 船名 就航年 旅客定員 乗用車積載数 備考 16 Selbjørnsfjord 2011 249 120 新造 表 5. Torghatten Nord が建造中の LNG 燃料フェリー No. 船名 就航年 旅客定員 乗用車積載数 備考 17 不明 2013 390 120 新造 18 不明 2013 390 120 新造 19 不明 2013 390 120 新造 20 不明 2013 390 120 新造 <参考> No.16 Selbjørnsfjord http://exchange.dnv.com/Exchange/Main.aspx?EXTool=Vessel&VesselID=30160
http://www.fosennamsos.no/article.php?id=332 No.17~20 http://www.interferry.com/node/2026 http://www.ngvglobal.com/torghatten-nord-names-lng-supplier-for-ferry-flee t-1231 http://www.shipbuilding-industry.eu/shipbuilding_v2/?p=3631#more-3631 (2) LNG の供給会社 現在運行中のLNG 燃料フェリーが使用しているLNG はノルウェーのガス販売会社Gasnor が納入している。Gasnor は Statoil が 41.0%、ノルウェーの発電会社 BKK が 20.0%、ノ ルウェーの電力会社 Haugaland Kraft が 13.4%、ドイツの電力・ガス会社E.On の子会社 E.On Ruhrgas が 14%、Total が 7.4%、Shell が 4.1%を出資して 1989 年に設立された。
Gasnor は、ノルウェー国内の 3 ヵ所(チェルバルグオッデン、カルモイおよびコルスネ ス)に所有する小規模の LNG 製造プラントで LNG を製造している。同社は北海沿岸等に小 規模の LNG 貯蔵設備を展開して小型 LNG タンカーおよび LNG ローリーで LNG を配送してい る。 <参考> http://www.gasnor.no/ (ノルウェー語:Gasnor のホームページ) http://www.regjeringen.no/nb/dep/oed/dok/regpubl/stmeld/20022003/Stmeld-nr-9 -2002-2003-/4.html?id=196519 (ノルウェー語:石油・エネルギー省の白書 (2002-2003)の中に Gasnor の LNG 製造プラントに関する記述がある) 3. バルト海沿岸国の LNG 燃料フェリー導入の背景および現状 バルト海沿岸国ではフェリー会社が LNG 燃料フェリーの導入を決め、既に建造を始めて いる。これはノルウェーでの LNG 燃料船の導入の実績を踏まえて、IMO の海洋汚染防止条 約(MARPOL73/78 条約)の改正附属書 VI にある排出規制海域(ECA)の規制を先取りした ものである。ここでは LNG 燃料フェリーの導入の動機となった IMO の排出規制海域におけ る船舶排出規制を説明し、次いでフィンランドおよびデンマークの状況を説明する。 (1) IMO の排出規制海域の規制 MARPOL 条約の改正附属書 VI の第 14 規則は、排出規制海域で運行する船舶で使用する燃 料の硫黄分を以下のように規制している。
「船舶が排出規制海域内で運行する場合は、船舶において使用される燃料油中の硫 黄の含有率は以下の制限を越えてはならない。」 1.50 質量%(2010 年 7 月 1 日より前まで) 1.00 質量%(2010 年 7 月 1 日以降) 0.10 質量%(2015 年 1 月 1 日以降) 排出規制海域は、「NOx、SOx 及び粒子状物質による大気汚染もしくは全 3 種類の放出及 び付随的な人の健康及び環境への悪影響を防止、軽減及び規制するため、船舶からの放出 に関し、強制的に特別の措置を取ることが要求される海域」(改正附属書 VI の第 2 規則) と定義されている。 排出規制海域については現在、バルト海海域および北海海域が SOx の排出規制海域に、 北米沿岸 200 海里内が NOx および SOx の排出規制海域に指定されており、米国カリブ海海 域も NOx および SOx の排出規制海域に指定されることが 2011 年 7 月に決定している。 さらに改正附属書 VI は第 13 規則で、船舶に搭載される出力 130kWを超えるディーゼ ルエンジンから排出される NOx 量を段階的に規制している。既に 2011 年 1 月から実施され ている二次規制は以下のように定めている。 「2011 年1 月1 日以降に建造された船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンの運 転は禁止する。ただし、エンジンからの窒素酸化物の排出量(NO2総重量として計算 した値)が次の制限値内にある場合はこの限りでない。ここで n は定格出力の回転 数で毎分のクランク軸回転数をいう。」 14.4 g/kWh (n が 130 未満の場合) 44*n(-0.23)g/kWh (n が 130 以上かつ 2,000 未満の場合) 7.7 g/kWh (n が 2,000 以上の場合) 第 13 規則は、三次規制における舶用ディーゼルエンジンから排出される NOx 量の制限値 を以下のように定めている。 3.4 g/kWh (n が 130 未満の場合) 9*n(-0.2) g/kWh (n が 130 以上かつ 2,000 未満の場合) 2.0 g/kWh (n が 2,000 以上の場合) これは現行の二次規制に比べて約 75%削減という大変厳しい規制である。この三次規制
は、2012 年末までに実施される技術開発のレビューをクリアすれば 2016 年に実施に移さ れる。船会社は SOx 規制の対策として LNG 燃料船を導入しておけば将来の NOx 排出規制も 追加対策なしでクリアできるという観点で、LNG 燃料船の導入を真剣に検討している。 参考: http://www5.imo.org/SharePoint/blastDataHelper.asp/data_id%3D23760/176%2858% 29.pdf http://www.epa.gov/oms/oceanvessels.htm (2)フィンランドにおける LNG 燃料フェリー導入の状況 フィンランドのフェリー会社 Viking Line が旅客定員 2,800 人の LNG 燃料クルーズフェ リーを建造中である。世界で初めて LNG を燃料とするこのクルーズフェリーは 2013 年にフ ィンランドのトゥルクとスウェーデンのストックホルムを結ぶ定期航路に就航する予定で ある。 Viking Line は、使用する LNG の購入について数社と交渉中であると報じられている。 Viking Line は価格競争させるため複数の会社から LNG を購入する考えである。交渉相手 として社名が公表されているのはフィンランドのガス会社 Gasum とスウェーデンのガス会 社 AGA である。 参考: http://www.marinelog.com/DOCS/NEWSMMIX/2010oct00251.html http://www.iltalehti.fi/talous/2010122212905073_ta.shtml ( フ ィ ン ラ ン ド 語:Viking Line の LNG 燃料フェリーの情報) http://www.sjofart.ax/sv/nyheter/tallinksilja_sager_nej_till_gasdrift/268 (スウェーデン語:Viking Line の LNG 燃料フェリーの情報) ① Gasum 社の概要 Gasum は 1994 年に設立されたガス会社で、フィンランドの国営エネルギー企業 Fortum
の発電子会社 Fortum Heat and Gas が 31 %、ロシアの国営ガス会社 Gazprom が 25 %、フ ィンランド政府が 24 %、ドイツのエネルギー会社 E.ON のガス子会社 E.ON Ruhrgas International GNBh が 20 %出資している。同社はロシアからパイプラインで天然ガスを 輸入して販売している。LNG 事業のため LNG ターミナルの建設等を計画しているが詳細 は不明である。
<参考>
/17 http://www.lnggot.com/2010/gasum-wants-to-build-lng-terminal-in-naantali/ ② AGA 社の概要 AGA はドイツの産業ガス・機械大手 Linde のスウェーデンのガス子会社である。スト ックホルムの南方 60 キロメートルのニュネスハムンに新設の LNG ターミナルを保有し、 ノルウェーから LNG を輸入している。LNG の主要顧客は地元のガス会社 Nynas であるが 船舶への供給も計画している。 <参考> http://www.foodnet.se/iuware.aspx?pageid=792&ssoid=139670 (スウェーデン語:AGA の LNG ターミナルの情報) http://www.intelligentlogistik.se/show_news.php?id=573 (スウェーデン語:AGA の LNG ターミナルの情報) (3)デンマークにおける LNG 燃料フェリー導入の状況
ノルウェーのフェリー会社 Fjord Line(1993 年設立)のデンマーク子会社 Fjord Line Danmark が 2 隻の大型クルーズフェリーを建造中である。旅客数最大 1500 名、2012 年に ノルウェーのクリスティアンサンとデンマークのヒアツハルスを結ぶ定期航路に就航予定 の同フェリーは、後日混焼エンジンに変更可能なディーゼルエンジンを搭載するなど当初 から LNG 燃料船に改造可能な設計になっている。
同船への LNG の納入に Gasnor が名乗りを上げている。同社は Fjord Line の大型クルー ズフェリーの寄港地のひとつヒアツハルス港の港湾当局と協力して、船舶に LNG を供給す る施設の建設を計画している。 <参考> http://www.mandieselturbo.com/1014849/Press/Press-Releases/Trade-Press-Relea ses/Marine-Power/Medium-Speed/MAN-Diesel-and-Turbo-to-Supply-Engines-for-Cru ise-Ferries.html http://www.fiskerbladet.net/Nyheder/nyhed.aspx?NewsID=10318&Titel=Hirtshals% 20Havn%20bliver%20Danmarks%20f%C3%B8rste%20gas-havn (デンマーク語:ヒアツハルス港での LNG 供給施設の建設に関わる情報)
4. おわりに
本レポートは、北海海域およびバルト海海域の LNG 燃料フェリーの導入状況を報告した が、これらの海域ではその他の種類の LNG 燃料船の導入も検討されている。例えば自動車 運搬船の世界的な運行会社であるスウェーデンの Wallenius Marine は、LNG GOT と共同で LNG 燃料自動車運搬船の導入を検討中で、年内に結果がまとまるようである。LNG GOT は、 Gasnor およびヨーテボリ市の公営エネルギー会社 Göteborg Energi が出資する合弁企業で、 2013 年にはヨーテボリ港で船舶への LNG 燃料の供給を開始したいとしている。
このような欧州での LNG 燃料船の導入の動きは北米沿岸海域に波及している。例えば Royal Dutch Shell の米国子会社 Shell Oil とフィンランドの大手エンジンメーカー Wärtsilä は本年 9 月に、米国沿岸等での LNG 燃料船の導入拡大に関する協力協定を結んで いる。 ノルウェーで始まった LNG 燃料船の導入が欧州にとどまらずその他の地域にも広がりを 見せており、今後の動向を注視する必要がある。 <参考> http://www.goteborgenergi.se/Om_oss/Pressrum?DisplayNewsItem=10265702 (スウェーデン語:Wallenius Marine と LNG GOT の共同検討に関する情報)
http://www.lnggot.com/about/ http://www.wartsila.com/en/press-releases/wartsila-and-shell-sign-co-operati ve-agreement-to-promote-use-of-lng-as-a-marine-fuel (YY) 本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析 したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected] までお願いします。