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写真 11 写真 12 写真 13 写真 14 幼穂 第二次枝梗始原体分化後期 穎花始原体分化始期 穎花始原体分化初期 穎花始原体分化中期 発育 株全体の幼穂形成期 日数 ~+8 +8 写真 11~14 幼穂形成期前後の幼穂 ウ穂首分化期と幼穂形成期の葉齢による推定主茎の葉齢から穂首

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(1)

生育診断と予測

(1)

生育ステージの診断

穂首分化期の診断

穂首分化期の判定は、茎の根元を切って顕微鏡で直接確認するのが最も確実である。生育 中庸な数株から主茎を10~15本抜き取り、1本の茎から4~5枚の切片を作り、100倍程度 の倍率で検鏡する。 主茎と分げつ茎では幼穂の分化・発育に差があるので、主茎が穂首分化期に達した写真4 では株全体の穂首分化期とは判定せず、主茎の幼穂発育が写真6のようにコブが3つ、長さ が約0.2㎜程度になった時点で株全体を穂首分化期と判定する。なお、圃場全体の穂首分化 期の判定は、調査した茎の80%以上が写真6に達した時点となる。 写真4 写真5 写真6 写真7 幼穂 穂首分化期 苞始原体増加期 第一次枝梗始原体分化初期 第一次枝梗始原体分化中期 発育 主茎の穂首分化期 株全体の穂首分化期 日数 -2 -1 ±0 +1 写真4~7 穂首分化期前後の幼穂 (松島省三『稲作の理論と技術』より複写、以下写真8~14についても同様) 注)表中の日数は、第一次枝梗始原体分化初期(株全体の穂首分化期)を起点としたときの経過 日数の目安、以下写真8~14についても同様) 写真8 写真9 写真10 幼穂 第一次枝梗始原体分化後期 第二次枝梗始原体分化初期 第二次枝梗始原体分化初期 日数 +2 +3 +4 写真8~10 穂首分化期後~幼穂形成期前の幼穂

幼穂形成期の診断

幼穂形成期の判定は、生育中庸な数株から主茎を10本程度抜き取り、その茎の根元を切り、

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写真11 写真12 写真13 写真14 幼穂 第二次枝梗始原体分化後期 穎花始原体分化始期 穎花始原体分化初期 穎花始原体分化中期 発育 株全体の幼穂形成期 日数 +5 +6 +7~+8 +8 写真11~14 幼穂形成期前後の幼穂

穂首分化期と幼穂形成期の葉齢による推定

主茎の葉齢から穂首分化期、幼穂形成期を推定することができる。青森県産業技術センタ ー農林総合研究所作況田の「つがるロマン」(平成8年~21年、黒石)における穂首分化期 の葉齢は、平均9.9枚(葉齢指数76~77)、「まっしぐら」(平成17~21年、藤坂)では 9.2枚(葉齢指数76~77)、幼穂形成期の葉齢は「つがるロマン」では平均10.8枚(葉齢指 数83~84)、「まっしぐら」では10.0枚(葉齢指数83)である。 しかし、葉齢は品種、年次、栽培条件などによって異なるので、あくまで目安として用い、 顕微鏡で幼穂発育を確認して判断することが必要である。

(2)

幼穂長、葉耳間長と出穂前日数

幼穂長と出穂前日数

(ア) 幼穂長と出穂前日数との間には図20のような関係がみられ、幼穂長を測定することに よって、おおよその出穂期や冷害危険期を推定できる。 (イ) 図から幼穂の発育経過を大まかに3区分することができる。 第1期:幼穂形成期から幼穂長2㎝まで(出穂前25~16日) 第2期:幼穂長3㎝~15㎝まで(出穂前15~10日) 第3期:幼穂長16㎝~出穂期まで(出穂前9~0日) (ウ) 第1期は、1日当たりの幼穂伸長量が0.1~0.2㎝で伸長は緩慢である。幼穂長の僅か な差でも出穂予測に大きく影響するので、測定には注意を要する。 (エ) 第2期は、1日当たり幼穂伸長量が2~3㎝で伸長最盛期にあたる。出穂前日数から みると障害不稔発生の最危険期に相当する。 (オ) 第3期は、1日当たりの伸長量が少なく、幼穂発育の終止期に相当する。この時期に おける出穂予測は、幼穂長よりも次項で述べる葉耳間長を用いた方が正確である。 (カ) 以上の結果は、幼穂発育期間の平均気温が22.4~24.5℃(平年値23℃前後)で得られ たもので、この温度より低い場合は予測誤差が大きくなる。 (キ) 調査株数は生育中庸な5~6株とし、1株の主茎3~4本について調査を行う。

(3)

図20 主稈幼穂長と出穂前日数との関係 (昭和56~57年 青森農試)

葉耳間長と出穂前日数

(ア) 図21に示すように、葉耳間長とは止葉(n)の葉耳(葉身と葉鞘の境目にある鈎状の 小片で、表面に長い毛が生えている)と次葉(n-1)の葉耳との間隔を言う。 (イ) 止葉の葉耳が次葉の葉鞘内にある期間を「-」、止葉の葉耳と次葉の葉耳とが合致し ている時を「葉耳間長0期」、止葉の葉耳が次葉の葉鞘から抽出している場合を「+」 で表す。 (ウ) 葉耳間長は、水田に稲が生育したままで測定(生育ステージの推定)でき、障害不稔 発生の危険期を推定するには最も確実な方法であると同時に、出穂期の推定にも役立つ。 (エ) 表50~51は、葉耳間長と出穂前日数との関係を示したものである。調査時の葉耳間長 が±0cmで以降の日平均気温が平年並み(22~23℃)とすると、「つがるロマン」が出 穂9日前頃、「まっしぐら」が出穂11~12日前頃と推定される。 (オ) 止葉の葉耳が次葉の葉鞘内にある時は、肉眼で止葉の葉耳を確認できないので、葉鞘 を手でこすって感触で確認する。 図21 葉耳間長の見方 (松島省三による) 幼穂長(cm) 出穂前日数(日) 1 18 2 16 3 15 4 15 5 14 7 13 9 13 11 12 13 11 15 10 17 5

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表50 「つがるロマン」における葉耳間長と出穂前日数との関係 (平成15、18~19、20年青森農林総研) 表51 「まっしぐら」における葉耳間長と出穂前日数との関係 (平成18~20年 青森農林総研)

(3)

葉耳間長を用いた障害不稔発生危険期の診断

水稲の障害型冷害の軽減・防止には、障害不稔発生危険期の的確な診断に基づく深水管理 が基本となる。図22は「むつほまれ」の主茎の葉耳間長(1株数本の平均値)と危険期穎花 率との関係を表している。 図22から推定される障害不稔発生危険期は、主茎の葉耳間長(1株数本の平均値)が- 12㎝~+4cmの範囲となり、概ね出穂前15~7日前(8日間)となる。この期間が低温に経 過する場合は、水深15~20㎝の深水管理を実施し、幼穂を保温する。 図22 「むつほまれ」主茎の葉耳間長(株平均値)と危険期頴花率 (平成10年 青森農試) 0 5 10 15 20 25 30 35 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 1株主茎の平均葉耳間長 cm 1 株 全 茎 の 危 険 期 穎 花 率 %

( )

21℃ 22℃ 23℃ 24℃ -10cm 14 13 13 12 -5cm 12 12 11 11 0cm 9 9 9 8 5cm 5 5 5 5 調査日以降の平均気温 調査時の 葉耳間長 出穂前日数(日) 21℃ 22℃ 23℃ 24℃ -10cm 17 16 15 15 -5cm 15 14 13 13 0cm 12 12 11 11 5cm 9 8 8 8 調査時の 葉耳間長 出穂前日数(日) 調査日以降の平均気温

(5)

雑草の効率的な防除

(1)

除草剤の種類と効果

ア 水田除草剤は、平成22年度農作物病害虫防除指針には98種類が記載されており、それぞれ 特性が異なる。このため、除草剤の選択に当たっては、雑草の種類や発生量、土壌条件、苗 質及び気象条件、作業条件(面積、労働時間)等を考慮する必要がある。 イ 3㎏粒剤から1㎏粒剤へと薬剤の軽量化が進み、散布労力が軽減され、大区画圃場におい ても省力的な除草剤散布が可能となった。 ウ フロアブル剤の開発により散布器具を必要としない雑草防除が可能となった。また、水口 一括施用、無人ヘリコプターによる散布及び田植機に農薬散布機を取り付けて散布を行う田 植同時処理など省力的な散布等で、大幅な作業時間の短縮が可能である。 エ 軽量で拡散性の高いジャンボ剤や粒剤が開発され、散布労力の更なる軽減が可能となった。 ジャンボ剤は、タブレット型に加え拡散性の高い粒剤を水溶性フィルムで包装したものが 実用化され、軽量で面積当たりの投下量も少なく、散布の均一性や散布器具が不要なため、 畦畔からの投げ込み散布が可能である。また、粒剤の中にも、特に拡散性を高めた除草剤 (浮遊粒剤)が実用化されており、圃場に入ることなく畦畔から散布することが可能である。

(2)

的確な除草体系の選定

基本事項

(ア) 各除草剤とも雑草の種類により効果の発現程度が異なるため、薬剤の選定は圃場に発 生する草種に合わせて行う。また、雑草の生育段階(葉齢)で除草効果は大きく異なる ので、雑草の生育に合わせた適期散布を行う。 (イ) 除草剤の含有成分には、それぞれ使用回数に制限が定められている。また、体系処理 により複数種の除草剤を使用する際は、各成分の総使用回数を越えないように注意する。 (ウ) 田面の高低差が大きいと、深水による薬害が発生したり、田面の露出部での防除効果 の低下がみられる場合があるので、代かきを丁寧に行い均平化を図る。 (エ) 湛水処理する除草剤は、減水深の大きな圃場や掛け流し条件では、防除効果が低下し たり薬害が発生しやすくなるので注意する。散布は、止め水、湛水状態で均一に行い、 3~4日間は通常の湛水状態(水深3~5㎝)を保ち、散布後7日間は落水や掛け流し を行わない。また、落水後に処理をする除草剤においても、水尻を止め、散布後7日間 は降雨があっても落水しない。 (オ) 初期除草剤を移植前に処理した場合は、散布後4日以上経過してから田植えを行うが、 代かき時の湛水深を最低限とし、田植時に圃場外への落水量を出来るだけ少なくなるよ うにし、除草剤の流出がないよう心がける。 (カ) 一発処理剤の散布後25日以内の中耕及び中干しは行わない。 (キ) フロアブル剤、ジャンボ剤及び浮遊粒剤は、散布後に有効成分が水中を拡散し、その 後、土壌に吸着され処理層を形成するという過程を経て効果を発揮するため、散布時に は十分な湛水深(5~6㎝)を必要とし、水管理には万全を期する必要がある。 (ク) 「アメリカアゼナ」を始めとするアゼナ類、「ホタルイ」及び「コナギ」等の中のス ルフォニルウレア系(SU)除草剤抵抗性雑草に対しては、初期剤+中後期剤(ベンタ ゾン剤及びMCPB剤)の体系処理が効果の安定性及び持続性のいずれの点でも優れて いるが、一発剤の中でも効果の確認されている成分を含む薬剤での防除も可能である。

(6)

除草体系の選定

(ア) 一発処理剤による除草体系 田植後を基本とし、各薬剤について田植後日数を処理早限とし、処理晩限はノビエの葉 齢で決定されている。そのため、ノビエの葉齢を確認することは重要である。ノビエの葉 齢を確認できない場合は処理早限で使用するように心がける。 (イ) 体系処理による除草体系 a 初期除草剤で一発処理剤を補完する体系 代かきから田植までの期間が10日以上と長く、ノビエの発生が多い水田では、田植前 に初期除草剤の補正散布を行い、一発処理剤の除草効果を高める。 b 初期除草剤と中・後期除草剤による体系 圃場に発生する雑草の種類を考慮しながら、初期除草剤を選択し、処理後の雑草の発 生を見ながら中期剤を選択する。ただし、中期剤にも殺草葉齢限界(その除草剤が防除 できる特定草種における最高葉齢のこと)があるので、処理適期に散布すること。 c 難防除雑草(オモダカ、クログワイ、シズイ)多発田向きの体系 オモダカ及びクログワイは、SU剤やベンフレセートを含む一発剤処理剤に対して一 定の防除効果が得られるが、多発圃場では有効な中後期剤との体系処理とする。 シズイは、ベンスルフロンメチル剤及びハロスルフロンメチル剤を含む一発処理剤で は、シズイの草丈2~3㎝、葉齢1~2枚頃の処理で一定の防除効果が得られるが、多 発圃場では有効な中後期剤との体系処理とする。なお、シズイ防除にベンタゾン剤を使 用する場合は、草丈、葉齢を確認して適期に散布する。 また、ベンタゾン剤による徹底防除を連年行うことによって、圃場の発生密度を著し く低下させることができる。 (ウ) 近年問題となっている雑草の防除法 a タウコギの防除法 (a) 一発処理剤を使用する場合は、有効成分にピラゾスルフロンエチル及びピリブチカ ルブを含む薬剤を選定する。 (b) 初期剤+中期剤の体系処理では、中期剤にはMCPBまたはベンタゾンを含有する 除草剤を使用する。 (c) 上記の除草体系で残草が目立つ場合は、ベンタゾンを含有する粒剤または液剤を使 用する。 (d) 類似の草種にアメリカセンダングサが挙げられるが、タウコギと同様にベンタゾン 剤の効果が高い。 b SU系除草剤抵抗性雑草(アゼナ類)の防除法 (a) 初期剤とMCPB又はベンタゾンを含有する中期剤の体系処理が、効果の安定性と 抑草期間からみて非常に有効である。さらに初期剤に(b)に示す効果の高い成分のい ずれかを含む剤を使用することで効果は高まる。 (b) 一発処理剤のうち、プレチラクロール、ペントキサゾン、ベンゾフェナップ及びク ロメプロップを含有している剤は効果に期待ができ、カフェンストロール、テニルク ロール、ピリブチカルブ及びフェントラザミドを含有している剤は効果が期待できる が、効果が不十分になることもある。処理時期は、アゼナ類の発生前とし、かつ各薬 剤の処理晩限頃とすることにより効果が高まる。 (c) 体系処理や一発除草剤の単用処理後も残草が目立つ場合は、ベンタゾンを含む粒剤 または液剤を使用する。 c SU系除草剤抵抗性雑草(ホタルイ)の防除法 (a) 初期剤とMCPB又はベンタゾンを含有する中期剤の体系処理が、効果の安定性と 抑草期間からみて非常に有効である。さらに初期剤に(b)に示す成分のいずれかを含

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(b) 一発処理剤のうち、ブロモブチド、ベンゾビシクロン及びクロメプロップを成分に 含有するものは同等の効果が期待できる。処理時期は、ホタルイの発生前とする。 (c) 体系処理や一発処理剤の単用後も残草が目立つ場合は、ベンタゾンを含む粒剤また は液剤を使用する。 (エ) 除草剤処理後、残草がみられた場合の除草体系 a 主にノビエの残草が多い圃場ではクリンチャー1キロ粒剤、ヒエクリーン1キロ粒剤、 ワンステージ1キロ粒剤及びクリンチャーEWのいずれかを使用する。 b ノビエの他に多年生雑草の残草が多い場合には、クリンチャーバスME液剤及びワイ ドアタックSCを散布する。 c 主に多年生雑草の残草が多い場合には、バサグラン粒剤及びバサグラン液剤を散布す る。

(3)

薬害防止と使用上の注意点

薬害防止

(ア) 初期除草剤を田植前に散布した場合は、散布後4日以上の間隔を置いて田植を行う。 (イ) 初期除草剤による移植前処理を除き、除草剤を散布した後は補植を行わないこと。補 植苗だけでなく補植した株や補植時の足跡により薬害部分が広がる可能性が高い。 (ウ) MCPBを含む中期除草剤は、稲の葉齢が5葉以上に達してから使用する。 (エ) 一発処理剤は、極端な浅植えや浮苗の多い水田では薬害が発生しやすいので使用は避 ける。 (オ) フロアブル剤やジャンボ剤、浮遊粒剤は、大区画水田などで水深が深い場合に強風に よる吹き寄せで、薬害が助長される場合があるので注意する。 (カ) ベンタゾン剤及びベンタゾン混合剤は、幼穂形成期以降は使用しない。 (キ) 中期剤及び後期剤で薬害の発生しやすい条件と、除草剤は次のとおりである a 低温(平均気温16℃以下)で薬害の発生しやすい除草剤:マメットSM、クミリ-ド SM等の各SM粒剤、モゲブロン、グラスジンMの各粒剤。 b 高温(最高気温30℃以上)で薬害の発生しやすい除草剤:各SM粒剤。 イ 使用上の注意点 (ア) 散布方法等 a 雑草の発生状態を観察し、殺草が可能な葉齢以内に散布する。 b 処理後に大雨が予想される場合は、田面水のオーバーフローによる有効成分の河川等 への流出が懸念されるため、除草剤の使用は避ける。 c 粒剤の散布 (a) 散布に当たっては、剤型(250g剤、500g剤、1㎏剤、3㎏剤)に合わせて散布器具 の調整を十分に行う。 (b) 基本的に均一散布を心掛けるが、1㎏粒剤は3㎏粒剤に比べ拡散性に優れているた め、多少の散布ムラがあっても除草効果に大きな影響を与えないので、追加散布の必 要はない。 (c) 極端な不均一散布にならないように、風速5m/秒以上の強風下での散布は避ける。 d フロアブル剤、顆粒水和剤の散布 (a) 湛水深3~5㎝を厳守する。 (b) 顆粒水和剤の調製は散布当日に行う。希釈する水は用水を使わず、水道水などの土

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流入水とともに原液を一括施用する。施用量は水口の数で均等に配分し、湛水深が通 常の状態になれば水口を閉じる。なお、田面水の横漏れがないよう十分に注意する。 e ジャンボ剤の散布(パック入り) (a) 処理時の湛水深5~6㎝を厳守する。 (b) 散布器具は不要で、畦畔から投げ込むだけであるが、藻類、表層剥離の発生等によ り拡散が不十分になると予想される場合は使用を避ける。 (c) 投入するパックは定められた数量を守り、水田に均等に投げ入れる。 (d) パックに使用しているフィルムは水溶性なので、濡れた手で作業したり、降雨で破 袋しないよう注意する。 f 浮遊粒剤(クラッシュ1キロ粒剤)の散布 (a) 処理時の湛水深5~6㎝を厳守する。 (b) 通常の散布方法の他、畦畔から水田周縁部に沿って帯状に散布することができるが、 藻類、表層剥離の発生等により拡散が不十分になると予想される場合は避ける。 (c) 1ha以下の圃場であれば、動力散粒機を用いて畦畔から散布することが可能である。 g ベンタゾン剤、ベンタゾン混合剤の散布 (a) 散布直前に落水し、粒剤は1~2㎝の浅水、液剤は落水状態で散布し、散布後7日 間はそのままの状態を保つ。このとき入水したり、水尻を開けておくと系外へ流出す るおそれがあるので注意する。 (b) 落水状態から散布までの期間が長かった場合、土壌が強い乾燥条件のもとでは効果 が減退することが考えられるので、土壌が乾燥しすぎないように注意する。 (c) 十分な防除効果を発揮させるため、散布後晴天が3日間程度続くような日を選んで 散布する。 (d) 落水することの出来ない圃場では、漏水の少ない水田に限りできるだけ浅水(雑草 が水面上に出る程度)状態にして散布し、7日間は入水、落水、かけ流しを行わない。 なお、降雨があっても落水しない。 (イ) 他作物等への危害防止 a シメトリン含有剤 シメトリン含有剤は、気象条件等により散布後に田面水から有効成分が気化し滞留し た場合や、散布時の飛散により、きゅうり、トマト、大豆畑などに薬害が生ずる恐れが あるので、これらの隣接水田で使用する場合は十分に注意する。 b シハロホップブチル含有剤 シハロホップブチル含有剤は、とうもろこし、食用ヒエ、ソルガム等のイネ科作物及 びキャベツに飛散しないようにする。また、散布後の水田水をこれら作物にかん水しな い。 c モリネート含有剤 モリネート含有剤及びモゲトンジャンボは、水産動物に比較的強い影響を及ぼすので、 養殖鯉等を目的とした湖、沼、池、河川地帯での使用は避ける。また、そのほかの地帯 でも処理後10日間は止水とし、魚毒事故防止に努める。

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病害虫の効率的な防除

(1)

主要病害虫・障害診断のポイント

稲の障害には、病害虫の被害、除草剤等の薬害、生理的な障害等が含まれている。障害を 診断するためには、症状だけでは不十分な場合が多い。また、症状は発生時期、発生経過日 数等により大きく異なる。したがって、症状ばかりでなく、耕種概要等を把握し、総合的に 診断する必要がある。

稲の障害検索表

(ア) 苗の障害 № 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 1 発芽不良である №2へ 2 a.床土面が白いカビで覆われている リゾープス属菌による苗立枯病 b.種籾のまわりや床土面に青緑色のカビがある トリコデルマ属菌による苗立枯病 c.根や芽が水浸状になっている №3へ d.床土面に肥料分が析出している 肥料ヤケ e.上記のような症状が見られない 異常高温、水分過多、土壌水分 の不均一 3 a.白いカビがあり、根の先端が肥大している リゾープス属菌による苗立枯病 b.カビが見えない №4へ 4 a.芽が湾曲して発芽している もみ枯細菌病菌による苗腐敗症 b.芽が湾曲していない ピシウム属菌による苗立枯病 5 生育不良で枯死苗がある №6へ 6 a.地際が褐変し、籾や根のまわりに白色~淡紅色のカ フザリウム属菌による苗立枯病 ビが蔓延している b.籾や根のまわりに青緑色のカビが蔓延している トリコデルマ属菌による苗立枯病 c.地際や根が水浸状に褐変している ピシウム属菌による苗立枯病 d.地際葉鞘から褐変し、葉身にも褐変部分が見られる ごま葉枯病(苗焼け) e.葉身基部が白色に退色している №7へ 7 a.新(芯)葉が枯死腐敗し、引き抜くと容易に抜ける もみ枯細菌病菌による苗腐敗症 b.枯死した新葉を引っ張っても抜けない 苗立枯細菌病 8 生育不良であるが上記のような症状が見られない 肥料ヤケ、肥料不足、土壌酸度 が高い 9 2葉期頃に葉が急激に萎ちょう枯死する ピシウム菌による苗立枯病(ム レ苗) 10 移植近くになってから下葉や葉鞘が灰緑色となり、苗の リゾクトニア菌による苗立枯病 間にくもの巣状の菌糸が見える 11 茎が細く、葉色が淡くて徒長している ばか苗病

(10)

(イ) 葉の障害 № 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 12 葉の縁が波状に白く枯れている 白葉枯病 13 葉の先が枯れる №14へ 14 a.葉の先端または先端に近い部分が黄白色に脱色し、 イネカラバエ 脱色した部分には細長い傷がある。葉の先端はねじれ ることが多い b.葉肉が食害され、袋状となっている №15へ 15 a.食害痕は上位葉に多く葉の先端から付け根に向かっ イネハモグリバエ て広がり、中には「ウジ」がいる。被害が進むと葉の 先端は袋状となり、はじめは白いが後に褐変する。葉 上には緑~黒色の蛹が見られる b.食害痕は下位葉に多く、不規則な線状で、中には イネヒメハモグリバエ 「ウジ」か褐色・紡錘形の蛹がいる 16 葉に白い食害痕が認められる №17へ 17 a.食害痕の幅が比較的広く、不規則で「カスリ」状で イネドロオイムシ ある。泥のようなものを背負った幼虫がいる b.食害痕は細長い №18へ 18 a.食害痕は細長く直線的で、後に裂けることが多い イネドロオイムシ(成虫) b.食害痕は小さく、点線状で葉の先端に多い イネハモグリバエ (産卵痕、舐食痕) c.食害痕は「カスリ」状で浅く、輪郭が不鮮明であ フタオビコヤガ(若齢幼虫) る。葉の付け根などをよく調べると、黄緑色で細長い 幼虫がいる d.食害痕の幅は約1.0mm、短冊状で、薄く表皮が残っ イネミズゾウムシ(成虫) ている 19 葉に斑点がある №20へ 20 a.斑点は褐色である №21へ b.斑点は白色である №22へ c.斑点は黒色で短い線状である 黒しゅ病 21 a.斑点は短い線状である すじ葉枯病 b.斑点は楕円形で輪紋がある。壊死線(病斑の両端の ごま葉枯病 葉脈に沿った褐変部)がない c.斑点は紡錘形で壊死線がある。斑点の外側に黄色の 葉いもち(慢性型) 中毒部がある d.赤褐色長楕円形の斑点で中央部分は黒褐色である 褐色葉枯病 e.中心褐条、褐点、周囲には黄色のハロー(かさ)が かさ枯病 ある f.楕円または不規則な斑点 にせいもち病 g.斑点は極めて小さく、数が多い 赤枯病(生理病)

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№ 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 22 a.斑点は「カスリ」状になっている。葉は黄色で幅が 黄化萎縮病 広い b.円形のはっきりした白斑点 葉いもち(白斑型) 23 葉が葉縁から食害されている №24へ 24 a.緑色で細長いシャクトリムシがいる。食害が著しい フタオビコヤガ 場合でも葉の中肋が残っている b.頭が橙黄色、体には縦に縞模様のある灰緑色~黒褐 アワヨトウ 色の幼虫がいる。食害が著しい場合には葉の中肋も残 さず食害され、茎だけとなる c.淡褐色の頭に1対の「ツノ」のような突起を持った ヒメジャノメ 淡黄緑色の幼虫がいる d.フタオビコヤガの食害痕によく似ているが、よく見 コバネイナゴ るとやや粗く「ササクレ」状である 25 葉が縦に巻かれ、内側から「カスリ」状に食害されてい コブノメイガ る 26 数枚の葉が縦に綴り合わされ、葉縁から食害されている イチモンジセセリ 27 葉に、横に並んだ丸目の孔が開けられたり、その部分か イネゾウムシ(成虫) らちぎれた葉が浮いている 28 葉がすすけたように汚くなり、よく見るとセミを小さく セジロウンカ、ヒメトビウンカ したような虫が多数認められる 29 葉が筒状を呈し、食害や幼虫は見られない。平均気温16 フェノキシ系除草剤の薬害 ℃以下の低温が続いた後に抽出してくる葉に見られる 30 葉の一部あるいは全体がアコーディオン状に縮んでい フェノキシ系除草剤の薬害 る。平均気温16℃以下の低温が続いた後に抽出してくる 葉に見られる 31 葉が褐色に枯れ上がる。特に下葉に多く見られる。最高 トリアジン系除草剤の薬害 気温が32℃以上に上昇した後に見られる 32 生育初期の流れ葉、葉鞘の水際付近に褐変が見られ、そ ジフェニルエーテル系除草剤の の部分から折れて水面に垂れている 薬害 (ウ) 茎の障害 № 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 33 生育初期に水際付近の葉鞘背部が褐変するが、上部葉鞘 ジフェニルエーテル系除草剤の は健全である 薬害 34 葉鞘に褐色の斑紋がある №35へ 35 a.周縁のはっきりした雲形の斑紋 №36へ b.止葉葉鞘に暗褐色不整形、周縁不明瞭な斑点 №37へ

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№ 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 35 c.止葉葉鞘に虎斑状、周縁鮮明、楕円形の病斑 葉鞘腐敗病 d.病斑の中心部に褐色の条線 褐色菌核病 36 a.褐色の菌核を病斑部や周辺の外面に形成 紋枯病 b.鮭肉色の菌核を組織内に形成 赤色菌核病 37 a.低温時に発生、籾全体が一様に黒褐色~灰褐色にな 葉鞘褐変病 っている b.高温時に発生、灰白色~灰褐色の籾がある 籾枯細菌病 38 茎の下部が軟弱になり、茎中に黒色の小さな菌核がある 小粒菌核病 39 葉鞘が水浸状に黄色くなっている。葉鞘の内部には淡褐 ニカメイガ 色で5本の縞のある小さな幼虫が多数食入している。幼 虫が茎内にまで食入している場合は芯枯茎となっている こともある 40 葉鞘が褐色~黄色く枯れ、いわゆる芯枯茎となっている №41へ 41 a.葉鞘の隙間や葉鞘を食い破った穴から糞が出てい イネヨトウ る。茎の中には淡紅色で縞のない幼虫がいる。被害は 畦畔際に多い b.葉鞘が水浸状に黄色くなっているが、外観上食入痕 ニカメイガ や虫糞は見られない c.地際部に「ササラ」状の食害痕が認められる。被害 ケラ は畦畔部に多い d.地際部が軟化腐敗し、悪臭を放つ。症状が軽い場合 株腐細菌病 は地際が黒褐変している 42 株が枯死し、枯死茎上に白い粉状物が見られる ばか苗病 (エ) 穂の症状 № 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 43 熟色が汚い №44へ 44 a.穂首部が黒褐色~褐色となる 穂いもち b.熟色が汚く、出すくみ穂や白穂が認められる。被害 ニカメイガ 穂は坪状にかたまって見られ、茎を裂いてみると内側 から食害され、中に淡褐色で5本の縦縞のある幼虫が 認められる。このような茎は容易に引き抜ける。 c.籾が褐変している №45へ d.穂だけでなく、葉も煤けたように黒くなり、セミを セジロウンカ、ヒメトビウンカ 小さくしたような小さな虫が多数認められる 45 a.籾全体あるいは片面が一様に黒褐色~灰褐色とな 葉鞘褐変病 る。低温時に発生する

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№ 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 45 b.灰白色~灰褐色の籾がある。高温時に発生する もみ枯細菌病 c.周縁不鮮明な小さな病斑多数 №46へ d.主に内頴部分だけが褐変~黒褐変する 内頴褐変病 46 a.葉に中央部黒褐色で周縁不鮮明な褐色の長楕円形の 褐色葉枯病菌による穂枯れ 病斑がある b.葉に輪紋のある楕円形の斑点がある ごま葉枯病菌による穂枯れ 47 白く退化した籾や褐変した籾が認められる №48へ 48 a.被害症状の見られる籾には必ず傷がついている イネカラバエ b.籾に傷が認められない 障害不稔 49 純白できれいな白穂が見られ、葉鞘をみると「ササラ」 ヒメクサキリ・ササキリ類 状に食害されている 50 奇形穂となる 黄化萎縮病 51 穂の所々に直径1cm前後の黒色粉状の構造物を生じる 稲こうじ病 52 籾から長さ数mmの角状の突起物を生じる 墨黒穂病 (オ) 全体的な被害 № 障害の症状等 障害の原因(病害虫名等) 53 坪状に枯れ上がり、倒伏することもある №54へ 54 a.よく見るとおびただしい数のセミに似た小さな虫が セジロウンカ、ヒメトビウンカ いる b.茎の下部が軟らかくなり、茎の中に黒色の小さな菌 小粒菌核病 核がある 55 草丈の伸長、分げつが抑制され、生育が劣る №56へ 56 a.葉に幅0.5~1.0mmの細長い短冊状の食害が見られ イネミズゾウムシ る。下部を土ごと抜き取り水洗すると細長い2~8mm の幼虫や長径5mm前後の土繭が認められる b.葉には食害痕が認められず、株を引き抜くと根にア イネネクイハムシ ズキ粒大の幼虫や土繭が多数見られる c.葉色が淡く、葉に「カスリ」状の白い斑点がある 黄化萎縮病 d.上記のような目立った特徴が見られない カーバメイト系除草剤の薬害 57 草丈が伸長し、分げつが少ない ばか苗病 58 全体的に葉色が淡いが、生育は普通である 酸アミド系除草剤の薬害

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主要病害の効率的防除法

いもち病

(ア) これまでの発生状況 青森県では平成7年(1995年)の大発生以降、多発傾向となっている。さらに平成12年 から「ゆめあかり」が県南地域を中心に作付され、いもち病抵抗性が「中」であること、 気象条件などが重なり多発が続いた。この間、県南地域では茎葉散布剤による防除体系か ら、箱施用剤などの予防体系に移行した。平成19年からはいもち病に強い「まっしぐら」 に替わったため、それ以降は県南地域でのいもち病の発生は少ない。一方、主に津軽地域 で作付されている「つがるロマン」(いもち病抵抗性「やや強」)は気象条件などにより 一部地域で多発がみられ、ここ数年は西北地域での発生が目立っている。 0% 20% 40% 60% 80% 100% H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 つがるロマン まっしぐら ゆめあかり むつほまれ つがるおとめ むつかおり その他 図23 葉・穂いもちの年次別発生面積率 (平年は平12~21の平均値) 図24 近年の品種構成の推移 表52 主な品種のいもち病抵抗性 葉いもち 穂いもち まっしぐら 強 強 Pia,i つがるロマン やや強 やや強 Pia,i むつほまれ やや強 やや強 Pia つがるおとめ 強 中~やや強 Pia,i,k むつかおり 中 中 Pia,k ゆめあかり 中 中 Pia,i ユメコガネ 中 中 Pia,k,ta かけはし 中 中 Pii あかりもち 強 強 Pia,i アネコモチ やや強 中 Pia,i 華吹雪 中 中 Pia 華想い 弱 弱 Pia 品種名 いもち病抵抗性 真性抵抗性 遺伝子型 つがるロマン まっしぐら むつほまれ ゆめあかり 0 10 20 30 40 50 60 S 5 0 S 5 1 S 5 2 S 5 3 S 5 4 S 5 5 S 5 6 S 5 7 S 5 8 S 5 9 S 6 0 S 6 1 S 6 2 S 6 3 H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H 1 0 H 1 1 H 1 2 H 1 3 H 1 4 H 1 5 H 1 6 H 1 7 H 1 8 H 1 9 H 2 0 H 2 1 H 2 2 平 年 発 生 面 積 率 % 穂いもち発生面積率(%) 葉いもち発生面積率(%)

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また県内に分布しているいもち病菌のレース(菌型)は、「つがるロマン」や「ゆめあ かり」、「まっしぐら」などの真性抵抗性遺伝子Piiを持つ品種が続けて作付されているこ とから、レース007が優占していると考えられる。 表53 過去の青森県におけるいもち病菌レース(菌型)の割合 (東北農研セ) 採集年次 調査 分離レース数(菌株数) 備 考 菌株数 003 033.1 037.1 007 007.2 平成6年 12 2 2 8 1 津軽12地点 平成8年 59 15 43 1 南部59地点 平成13年 50 3 47 津軽29、南部21地点 注) レース(菌型)007はPia,Pii を冒すことができるが、Pik を持つ品種を冒すことはできない。 (イ) 葉いもちの防除方法 a いもち病抵抗性が「中」以下の品種や常発地 箱施用剤や側条施用剤、水面施用剤などの予防剤により葉いもち防除体系を組む。 葉いもち予防剤としての水面施用剤は、6月20日前後から6月末までに施用する。な お、オリブライト剤(オリブライト1キロ粒剤、同パック剤、同250G)は初発時施用 でも防除が可能だが、初発前施用の方が安定して高い防除効果が期待できる。 予防散布を行った圃場でも、葉いもちの発生が見られた場合は、4~5日毎に成分の 異なる茎葉散布剤により追加防除を行い、穂いもちの伝染源となる上位葉での葉いもち を抑えるように努める。 b いもち病抵抗性が「やや強」以上の品種 感染に好適な日が出現した7~10日後頃から早期発見に努め、発生を認めたら直ちに 茎葉散布剤により防除を行う。 図25 県内における葉いもち初発確認日(県内最早日) 6/16 6/21 6/26 7/1 7/6 7/11 7/16 7/21 7/26 S 4 0 S 4 1 S 4 2 S 4 3 S 4 4 S 4 5 S 4 6 S 4 7 S 4 8 S 4 9 S 5 0 S 5 1 S 5 2 S 5 3 S 5 4 S 5 5 S 5 6 S 5 7 S 5 8 S 5 9 S 6 0 S 6 1 S 6 2 S 6 3 H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H 1 0 H 1 1 H 1 2 H 1 3 H 1 4 H 1 5 H 1 6 H 1 7 H 1 8 H 1 9 H 2 0 H 2 1 H 2 2 H 2 3 H 2 4 H 2 5 平 年

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かつ穂いもちの発病を間接的に抑制できるので、予防剤の活用を検討してもよい。 (ウ) 穂いもちの防除方法 a 茎葉散布剤による防除体系 穂いもちは防除適期を失しないように注意する。 穂いもちは出穂直前、穂揃期の2回散布を基本防除とする。出穂直前とは走り穂が見 えたとき、穂揃期は圃場の穂の8割が出穂した時期をいう。 上位葉に葉いもちが多数みられる場合や、出穂期に降雨が続くなど、穂いもちの多発 が予想される場合には、穂揃期5~7日後にも追加散布する。また、低温などにより出 穂期間が長引いた場合は、穂揃期に達していなくても出穂直前散布7日後頃に薬剤を散 布し、散布間隔を空けないようにする。その後、穂揃期に達した時点で再散布する。な お、近接散布の場合は成分の異なる薬剤を散布する。 b 水面施用剤による防除体系 葉いもちを多発させないように葉いもち予防体系と組み合わせて用いるのがよい。施 用時期が剤により異なるので注意する。葉いもちの発生が多い場合は、穂いもち予防粒 剤だけでは防除効果が不足するため、穂揃期などに茎葉散布剤で追加散布を行う。 (エ) その他:薬剤耐性菌が出現しないようにする 薬剤耐性菌の出現による効力低下は大きな問題である。膨大な年月と労力・コストを かけて開発された薬剤が耐性菌の出現により使用が制限されることは、農薬メーカー、 生産者、そして消費者にとっても大きな損失である。それらを防ぐためには、正確な情 報を把握し、的確かつ最少の薬剤の使用により、必要十分な効果が得られるよう注意を する必要がある。 平成11年にキタジンP剤を対象に県内で採集したいもち病菌について検定した結果で は、著しく問題になるほどの耐性菌は検出されなかったが、キタジンP剤・ヒノザン剤 ・フジワン剤は相互に交差耐性が認められているので、これら3剤は同一系統薬剤とみ なし、連用を避ける。また効力の低下が懸念される場合は、これらと異なる化合物系統 の薬剤を選択する。 また、平成13年に西日本でカルプロパミド剤(ウィン剤)に耐性菌(または低感受性 菌)が確認され、その後東北各県でも確認されており、防除効果の低下が見られている。 青森県では現時点(平22)では確認されていないが、耐性菌の発達を未然に防ぐ必要が ある。 よって、以下の系統の剤(成分を含む剤)は年1回の使用にとどめ、異なる系統の薬 剤を1~3年ごとに計画的にローテーション使用すること。 ・MBI-D系薬剤(シタロン脱水酵素阻害型メラニン合成阻害剤): カルプロパミド剤(ウィン剤)、ジクロシメット剤(デラウス剤)、フェノ キサニル剤(アチーブ剤)は同一とみなす。 ・ストロビルリン系薬剤: オリサストロビン剤(嵐剤)、メトミノストロビン剤(オリブライト剤、イ モチミン剤)、アゾキシストビン剤(アミスター剤)は同一とみなす。 さらに殺菌剤耐性菌研究会(日本植物病理学会)のガイドラインでは、採種圃場で耐 性菌リスクの高いMBI-D剤やストロビルリン系薬剤を使わないのはもちろんであるが、そ の周辺の一般圃場も含めて広域一斉防除をするのが理想としている。

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紋枯病

主に葉鞘を株元から枯死させ、稲株が倒伏しやすくなることが被害として最も大きい。高 温年には止葉葉鞘や止葉も枯死させるので、減収にもつながる病害である。 伝染源は前年に罹病株から脱落した「菌核」(球状、楕円状)である。代かき後に水面を 漂い、移植後の株に付着、侵入する。病斑は灰白色の雲形病斑を形成する。隣接の葉鞘や株 へ気中菌糸を伸ばし発病株が増加し(水平進展)、また上位の葉鞘へと病斑を広げる(垂直 進展)。高温・多湿を好む菌なので、青森県では出穂期以降の高温・多雨により発病が増加 する。また、株が込み入って繁茂していると株間の湿度が高まり発病が多くなる。窒素質肥 料の多施用は発病を助長する。 防除は、茎葉散布剤では出穂直前に散布すると最も効果が高い。ただし、前年に発生が見 られなかった圃場では防除は不要である。一方、減農薬栽培などにより防除圧が減少し、発 生が増加している圃場もみられる。発生状況に応じて防除し、多発が予想される場合には追 加防除も実施する。

稲こうじ病

本病は籾にのみ発病する。籾が濃緑色の粉(厚膜胞子)に覆われ、圃場でも非常に目立つ 病害である。罹病粒が玄米に混入すると異物混入として「規格外」となる。また、罹病粒は 脱穀作業などで砕け、玄米に付着、着色し、品質を大きく低下させる。また、発病穂では登 熟歩合や玄米千粒重が低下し、乳白米、青米および死米などが増加するなど、収量・品質に 影響する。 発生生態、伝染環など詳細は不明であるが、発生は気象条件に大きく左右され、穂ばらみ 期の低温、日照不足、多雨で発生が多くなる。発生がみられた圃場では翌年も発生すること が多いことから、罹病粒上に形成される菌核(大きさ1~8ミリ程度、ネズミの糞状)ある いは厚膜胞子(罹病粒の暗緑色粉状の部分)が圃場に落ちて翌年の伝染源になると考えられ ている。また、転換畑から復田した圃場では発生が少ないとの報告がある。窒素質肥料の多 施用は発病を助長する。 感受性には品種間差があり、「つがるロマン」、「ゆめあかり」、「むつほまれ」、「ま っしぐら」で比較した場合、「むつほまれ」は弱く、次いで「まっしぐら」でやや弱く、 「つがるロマン」、「ゆめあかり」は比較してやや強い~強いであった。(図26) 防除は、多発しやすい気象条件であり、かつ前年発生が見られた圃場では必ず実施する。 薬剤は銅剤の効果が高い。銅剤の防除適期は出穂20日前から10日前なので(図27)、適期に 散布する。また、銅剤は薬害(葉が紫褐変し汚れたようになる)を生じやすいので、散布量、 散布時期に注意する。 場所:農林総研藤坂 施肥:N7+3 調査方法:平成15年10月24~27日に各区24~ 50株を調査 ※平成15年は冷害により不稔が生じたので、 以下の式により補正した。 株当罹病籾数 株当たり罹病籾数= ×株当総籾数 むつかおり つがるロマン まっしぐら ゆめあかり むつほまれ むつかおり つがるロマン まっしぐら ゆめあかり むつほまれ

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図27 散布時期と防除効果(平成8年 青森農試)

ごま葉枯病の防除

ごま葉枯病は「耕種的防除法」が有効にはたらく病害である。深耕・堆肥の増施・客土な どにより地力の増進を図るとともに、ケイ酸質肥料を施用し、硫酸根肥料(硫安等)の施用 を避け、生育後期に肥料切れしないような合理的施肥を行うことによって、かなりの程度発 病を軽減できる。 例年多発する地域や圃場では、出穂直前及び穂揃期の穂いもち防除の際に、本病にも適用 のある剤を施用し、穂いもちとの同時防除を行う。なお、オリブライト剤の効果は高く、施 用した場合は、出穂直前、穂揃期のごま葉枯病に対する防除は不要となる。 試験場所:北津軽郡鶴田町 品種:むつほまれ 供試薬剤:Zボルドー粉剤DL(4㎏/10a) 出穂 27日 前 出穂 20日 前 出穂 14日 前 出穂 10日 前 出穂 5日 前 出穂 期 出穂 5日 後 無処 理 発病穂数 病粒数 0 10 20 30 40 50 12 ㎡ 中 の 発 病 粒 数 、発 病 穂 数 発病穂数 病粒数

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主要害虫の効率的防除法

本田初期害虫

(ア) イネミズゾウムシの防除法 イネミズゾウムシの発生が例年見られる圃場では、予防的に育苗箱施用剤を処理するか、 ペースト肥料に混和をし、移植時に処理を行う。薬剤については「県防除指針」を参照の こと。 予防を行わないで、発生程度に応じて防除するには、移植後の5月第6半旬または6月 第1~2半旬に、1筆圃場2か所の50株以上について、下記の基準により食害程度を調査 し、食害度を算出する。判断基準値が下表の値を超えた場合には水面施用剤を散布する。 食害程度基準(成虫による食害) A:ほぼ全葉に激しい食害痕が認められる B:ほぼ全葉に中程度の食害痕が認められる C:1/2~ほぼ全葉に軽い食害痕が認められる D:1/2以下の葉に軽い食害痕が認められる 食害度=(4A+3B+2C+D)÷(調査株数×4)×100 表54 イネミズゾウムシの要防除水準 注)調査時期については、黒石での研究結果に よっているため、より気温の低い地域では 判定時期を1半旬程度遅くする。 (イ) イネドロオイムシの防除法 イネドロオイムシについては、イネミズゾウムシと同様に例年発生がみられる圃場では、 予防的に育苗箱施用剤を処理するか、ペースト肥料に混和をし、移植時に処理を行うか、 孵化最盛期である6月第4半旬~第5半旬に水面施用剤または茎葉散布剤を処理する。薬 剤については「県防除指針」を参照のこと。また、5月第6半旬~6月上旬にイネミズゾ ウムシを対象とした防除を実施した場合は省略できる。しかし、低温等で幼虫の発生が遅 れた場合には6月下旬以降に発生状況をみて追加防除を行う必要がある。特に要防除水準 は策定されていないが、本田発生初期に葉身の30%以上が幼虫に食害されている株が目立 つ時には、水面施用剤や茎葉散布剤を散布する。 近年、カーバメイト剤、有機りん剤に対して抵抗性の発現が認められる地域もあるので、 前年まで使用して防除効果が低下していると思われる場合には使用薬剤を替える。その際 は、同一系統の薬剤間、並びにカーバメイト剤と有機りん剤の間では、それぞれ交差抵抗 性を示すおそれがあるので、使用薬剤の系統に注意する。また、感受性の低下を防ぐため に同一薬剤の連用を避けて数年ごとに異なった系統の殺虫剤をローテーション使用する。 (ウ) ハモグリバエ類の防除法 調査時期 食害株率 食害度 5月第6半旬 62%以上 18以上 6月上旬 82%以上 25以上

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防除は、播種前から移植時にかけてイネミズゾウムシやイネドロオイムシを対象とした 育苗箱施用剤で同時防除が可能である。しかし、育苗箱施用剤でもハモグリバエ類に効果 が低い薬剤もあるので、処理を行っても発生がみられる場合もある。このような時や予防 を行っていない場合には本田内の防除を行う。防除は、幼虫発生初期に水面施用剤による 湛水散布や液剤・粉剤の茎葉散布を行う。薬剤については「県防除指針」を参照のこと。

ウンカ類の防除法

本県ではセジロウンカとヒメトビウンカが発生している。セジロウンカは飛来性で、ヒメ トビウンカは本田周辺のイネ科雑草が優占している雑草地やコムギ畑等で越冬している。 防除は、孵化最盛期(例年は7月下旬~8月上旬または8月中旬~下旬頃)に茎葉散布を 行う。薬剤については「県防除指針」を参照のこと。ヒメトビウンカが混発している場合は、 スミチオン剤及びマラソン剤では効果が劣るので他の薬剤を使用する。 また、移植当日のイネミズゾウムシやイネドロオイムシを対象としたアドマイヤー剤、プ リンス剤及びデジタルメガフレア箱粒剤で同時防除が可能である。しかし、育苗箱施用剤の 残効が切れる8月以降にセジロウンカが大量に飛来した場合には、茎葉散布による追加防除 が必要となる。

コバネイナゴの防除法

薬剤防除は、毎年発生の多い水田では、予防的にプリンス剤を含んでいる育苗箱施用剤を 処理する。予防を行わないで、発生量が多い場合は、孵化終期(例年7月第3半旬~第5半 旬)の防除効果が高いので、畦畔(農道・水路の雑草地含む)及び水田の畦畔際2~3mに 散布するだけで十分である。発生量が少ない場合は、他の害虫防除と兼ねて、出穂期の前後 に圃場全体に散布する。本虫は移動・分散が激しく、狭い範囲の防除では移入が起こり、防 除効果が上がらないので、広域一斉防除が望ましい。 近年、本虫に対してバッサ剤、トレボン剤、MR.ジョーカー剤の効果が減退している地 域が認められ、これらの剤に対するイナゴの感受性を検定した結果では、感受性が低下して いる傾向が認められた。したがって、前年までの使用で防除効果に疑問があった場合には、 異なる剤の使用が望ましい。

カメムシ類の防除

カメムシ類は斑点米の原因となる害虫で、平成11年には県内全域で大発生し、部分着色粒 の混入により品質低下の大きな問題を引き起こした。その後も特に高温年を中心に発生の多 い状況が続いている。 (ア) カメムシの種類 県内で部分着色粒の原因となる可能性のあるカメムシは5科20種以上であり、このなか で主要な種は県内全域に発生しているアカヒゲホソミドリカスミカメと、県南地域や津軽 地域の海岸沿いの地域で発生しているアカスジカスミカメである。カスミカメムシ類以外 ではカメムシ科のオオトゲシラホシカメムシやナガカメムシ科のコバネヒョウタンナガカ メムシ等が発生している。また、日本海沿岸は温暖であるため、ホソハリカメムシやクロ アシホソナガカメムシなど、県内の他の地域では発生していない種類もみられる。 (イ) カメムシの発生生態 部分着色粒の主要な原因種である、アカヒゲホソミドリカスミカメとアカスジカスミカ メは、ともに畦畔雑草などに産み付けられた卵で越冬する。前種の発生回数は年4回、後

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アカヒゲホソミドリカスミカメの越冬卵は、前年に休耕田や本田周辺のイネ科植物の葉 鞘内に産み付けられ、翌年の5月中旬頃から孵化し始める。越冬世代幼虫はイネ科植物の 茎葉及び穂を吸汁し、5齢を経て成虫となる。第1回目成虫は5月第6半旬頃からみられ、 6月第2半旬頃最盛期となる。この頃は本田内にほとんど侵入せず、コムギ畑やイネ科植 物が優占している雑草地等に生息している。産卵はイネ科植物で行い、雑草管理が行き届 いていない所は本虫の発生源となる。第2回目成虫は6月第6半旬頃からみられ、休耕田 や畦畔等の雑草地で は7月第4半旬頃に 最盛期となり、それ から1半旬遅れて本 田内で最盛期とな る。この時期は稲の 出穂前で侵入数は少 ない。この世代から は雑草地ほどではな いが、本田内でも増 殖がみられ、幼虫に よる加害も生じる。 7月下旬頃には第2 回目成虫が産下した 図28 アカヒゲホソミドリカスミカメの発生消長の模式図 卵から第3回目幼虫 が孵化し始め、8月第1半旬には最盛期となり、8月第3半旬には第3回目成虫が最盛期 となる。第3回目成虫は、本田内で稲が出穂を始めると畦畔等から継続して侵入し、稲へ の加害が始まる。また、本田内でも増殖し、幼虫による加害も認められる。第4回目成虫 は9月中旬頃に最盛期となる。第2回目成虫と第3回目成虫の一部と第4回目成虫が産む 卵が越冬卵となる。 アカスジカスミカメは、休耕田や本田周辺のイネ科植物の頴花内に産み付けられた卵で 越冬して、翌年の6月中旬頃から孵化し始め、5齢を経て成虫となる。第1回目成虫は、 6月第4半旬からみられ、6月第6半旬頃に最盛期となる。この頃は本田内には侵入せず、 雑草地等に生息している。第2回目成虫は7月第6半旬頃よりみられ、8月第2半旬に最 盛期となる。この頃 は稲の出穂期である ために、本田内でも 発生の最盛期とな り、稲への加害が始 まる。第3回目成虫 は9月第1半旬から みられ、9月第3半 旬に最盛期となる。 第2回目成虫の一部 と第3回目成虫の産 雑 草地 本 田 侵入 ( 一 部 ) 出 穂 収穫 越 冬 卵 移 植 イネ 科雑 草穎花 内 休眠卵 イネ 科雑 草穎 花 内 第 1 回 目世 代 第 2回 目 世代 第 3 回目 世 代 6 月 7月 8月 9月 雑 草 地 本 田 侵 入 ( 一 部 ) 10月 5月 出 穂 収 穫 越 冬 卵 移植 イネ 科雑 草葉鞘 内 休眠卵 葉鞘内 第 2 回 目 世 代 第 1 回目 世 代 第 3 回 目世 代 第 4 回 目 世 代

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的に斑点米を発生させる。アカヒゲホソミドリカスミカメの自発的な飛翔は、夏季には主 に夜間に行われるが、気温が低いと抑制される。春や秋には昼間の活動性が高まる。 アカヒゲホソミドリカスミカメでは、気温が高いと成育期間が短くなるだけではなく、 産卵数が増加し、短期間で集中的に産卵する(表55)ので発生量が多くなる。 表55 アカヒゲホソミドリカスミカメの発育期間及び産卵数と温度の関係 (平成13~15青森農試) カスミカメムシ類による被害は籾からの直接の吸汁害が大きい。吸汁は開花直後から行 われるが、初期の被害粒はしいなや不完全粒となるか、玄米の頂部が黒褐色となる。この 時期に加害された玄米は屑米になるものが多い。その後、米粒の大きさが決まり、硬化す る前の、乳熟期が被害の中心となる。吸汁された部分に雑菌が繁殖し、変色することから 部分着色粒となる。 カスミカメムシ類は籾を貫通して吸汁する力は弱いので、登熟初期にできる玄米頂部の 隙間や、登熟後期に発生する割籾の隙間(鉤合部)から加害することが多い。このため被 害もその部分に限られる。側部が褐変して斑紋ができたり、また、米粒全体が斑紋となっ ている斑点米は、このカスミカメムシ類以外の大型のカメムシによるものと考えられる。 (ウ) カメムシの防除法 a 休耕田及び畦畔での防除法 斑点米カメムシ類の生息地である畦畔や休耕田等の雑草地、特にイネ科植物が優占し ている雑草地では密度が高くなっているので、雑草の刈取りや耕起等で生息密度を低下 させることが重要となる。草刈りの時期としては、6月下旬から7月中旬にかけてイネ 科雑草が開花・結実しないうちに行い、遅くとも稲の出穂2週間前までには終え、出穂 3週間後までは草刈しないようにする。稲の出穂間近の草刈りは、逆にカメムシを本田 内に追い立てることになるので注意する。稲の出穂期以降に雑草を刈り取る必要がある 場合は、薬剤を散布した後に刈取りを行う。カメムシ類の越冬卵密度を低下させるため に、秋の収穫後及び春の移植前に除草・耕起を行う。 また、斑点米カメムシ類の生息地である畦畔や休耕田等の雑草地での密度を低下させ るために、雑草地への薬剤散布も有効である。散布時期は、第2回幼虫・成虫の発生が 多くなる7月第3半旬から第3回幼虫・成虫が多くなる8月中旬にかけて行う。薬剤は 1年生雑草等が優占する休耕田及び畦畔では、本田でカメムシ類に登録されている薬剤 を使用し、ヨシ、オギ、ススキ、セイタカアワダチソウ等の多年生雑草が優占している 休耕田では、この使用目的に登録されている薬剤を散布する。なお、薬剤については 「県防除指針」を参照のこと。また、畦畔での散布は、本田での防除回数として算入さ れるので注意する。 特に、本田に隣接している休耕田で防除を行っていないと、散布後、本田内の密度は 減少するが、隣接している休耕田から侵入するため、薬剤散布後も本田内で継続的にす くいとられ、斑点米の被害が多かった(図31)。一方、休耕田にも同時に散布を行った 温度 (℃) 卵期間 (日) 幼虫期間 (日) 産卵前期間 (日) 1雌当たりの 産卵数 (個) 20 12 26 7 108 25 7 14 4 191 30 5 9 3 211

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しく少なく、斑点米の被害も少なかった(図30)。従って、本田に防除を行う際は、休 耕田も含めた散布を行うことにより防除効果が高まる。 図30 本田と休耕田を防除した地域におけるカスミカメムシ類のすくいとり推移 図31 本田のみ防除した地域におけるカスミカメムシ類のすくいとり推移 b 本田での防除法 (a) 雑草の防除 ノビエの発生水田では、ノビエの出穂が稲よりも早く、稲の出穂前からカスミカメ 0 20 40 60 5 10 15 20 25 30 0 20 40 60 80 5 10 15 20 25 30 50 回 振 り す く い と り 数 〔 穂 揃 期( 本 田・ 休 耕 田)+ 乳 熟 期( 本 田) 散 布 〕 出 穂 期:8/3 斑 点 米 率:0.061 % 多 発 生 地 域 : 適 期 に 本 田 , 休 耕 田 散 布 本 ・ 休 休耕 田 本田 薬 剤 散 布 休:休 耕 田 本:本 田 多 発 生 地 域 : 適 期 を 逸 し て 本 田 , 休 耕 田 散 布 〔 乳 熟 期( 本 田・ 休 耕 田) 散 布 〕 出 穂 期:8/3 斑 点 米 率:0.370 % 本 休 8 月 ( 月 日 ) 0 20 40 60 80 5 10 15 20 25 30 多 発生 地 域 : 適 期 に 本 田 散 布 〔穂 揃 期( 本 田) 散 布 〕 出 穂 期:8/2 ~4 斑 点 米 率:0.363 % 本 129 0 20 5 10 15 20 25 30 〔 穂 揃 期( 本 田) 散 布 〕 出 穂 期:7/30 ~31 斑 点 米 率:0.082 % 少 発 生 地 域 : 適 期 に 本 田 散 布 本 8 月 ( 月 日 ) 50 回 振 り す く い と り 数

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(b) 薬剤防除 本田での薬剤防除は、残効性の高い1回散布剤を基本とし、穂揃期~穂揃2週間後 までに散布す る。フェニルピ ラゾール系のキ ラップ剤、ネオ ニコチノイド系 のジノテフラン 剤(商品名スタ ークル・アルバ リン)、ダント ツ剤は1回散布 で防除効果が高 く、広域一斉散 布で実施すると 効果が安定す る。キラップ剤 の防除最適期は 図32 ダントツ水溶剤の散布時期別斑点米防止効果 穂揃期であり、 (平成16~18年試験の平均) 穂揃1週間後ま で実用的な防除効果があるが、それ以降では効果が低くなる。ネオニコチノイド剤で は穂揃1~2週間後散布での防除効果が高い(図 32)。 合成ピレスロイド剤や有機りん剤は、カメムシに対する残効性が低いことから、も し使用する場合には穂揃期とその7~10日後の2回の散布を徹底する。 粒剤の水面施用は効果が安定しないことが多く、製品価格が割高でもあるが、ドリ フトの恐れが極めて低いというメリットがある。 省力・同時防除が可能な薬剤として、移植当日の箱施用で、いもち病、初期害虫か ら斑点米カメムシまで防除できるデジタルメガフレア箱粒剤が登録されている。これ までの試験で、本田での追加防除なしで、斑点米の発生を抑制できることが確認され ている(図33)。高温年であった平成22年には、有効成分の溶出が早かったのか、防 除効果がやや劣ったものの、殺菌剤1成分、殺虫剤1成分で主要な病害虫を箱施用の みで予防できるので、減農薬栽培等への利用は可能である。 0 20 40 60 80 100 穂揃期 5日後 7日後 10日後 15日後 20日後 斑 点 米 発 生 量( 対 無 処 理 比) 散布時期(穂揃後日数) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 18年 19年 20年 21年 22年 斑 点 米 率 試験年次 無処理 メガフレア

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c フェロモントラップによるアカヒゲホソミドリカスミカメのモニタリング法 アカヒゲホソミドリカスミカメの発生推移やある程度の発生量はフェロモントラップ でモニターできる。発生予察用の粘着板2枚を、粘着面が外側になるよう背中合わせに 2枚重ねてダブルクリップで留める。水田内にカラー管などの支柱を2本立て、これに 粘着板を垂直に立てて設置する。支柱への固定は、支柱にダブルクリップで留めた枠を 使ってもよいし(写真15)、あるいはダブルクリップのハンドル部分を一旦外して2個 組み合わせたものを作り、その一方で粘着板を挟み、残る一方で支柱を留めてもよい。 いずれの場合も粘着板の四隅か、少なくとも3点を固定する。フェロモンはゴムキャッ プに吸着させたものが市販されているので、ダブルクリップのハンドルに絡めた針金な どで固定し、粘着板の上辺中央に取り付ける(写真15)。粘着板、フェロモンとも (社)日本植物防疫協会から購入できる。 トラップは出穂直前位から穂揃3週間程度まで設置する。開封後のフェロモンの有効 期間が1か月なので、設置開始時期を 決める目安とする。トラップの設置場 所は畦畔際でかまわないが、農道や広 い雑草地に面しているところは避け、 また畦畔の草刈り等の邪魔にならない ようにする。誘殺されたアカヒゲホソ ミドリカスミカメ数の調査は1週間間 隔程度で行う。時間がたつと誘殺虫が 変色することがあるので、注意して計 数する。また、調査対象外の虫が大量 に付着することがあるので、粘着板は 調査のたびに交換する。 写真15 フェロモントラップの設置状況 最も誘殺が多くなる穂揃期の誘殺数 で防除要否の判定をすることはできないが、薬剤散布後の誘殺数と比較することによっ て、防除が適正に行われたかのおよその判定が可能である。

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収穫乾燥調製

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刈取適期の判定

刈取時期の早晩と品質

刈取時期が早すぎると、玄米の充実が不十分なために青未熟粒や死米の混入が多く、収 量・品質ともに劣る。また、籾水分も高いことから乾燥に時間がかかる。一方、刈取時期 が遅くなると青未熟粒が減少する反面、逆に胴割粒、茶米粒、奇形粒等の被害粒が増加す る。 検査等級からみた刈取始期の目安は、青未熟粒の混入割合が10%程度まで減少した時期 となる。青未熟粒は出穂後積算気温500~600℃頃から急速に減少し、1,200℃に達すると 極めて少なくなるが(図34)、青未熟粒の減少傾向は登熟期間の気象条件や㎡当たり籾数、 倒伏程度、不稔粒の発生など圃場条件によって異なる。 また、収穫後の乾燥法の違いでも青未熟粒の混入割合は異なり、バインダーで刈取りし 自然乾燥したものとコンバインで収穫し乾燥機により人工乾燥したものを比較すると、収 穫適期の1,000℃頃の同一日に刈取りした場合でも、コンバイン+人工乾燥の青未熟粒混 入割合はバインダー+自然乾燥よりも4~5%多くなる。 刈取晩限は被害粒や乳白粒、腹白粒などの白未熟粒の発生程度によって左右される。白 未熟粒は登熟初・中期間の高温の影響等により発生し、㎡当たり籾数の増加や刈り遅れに よって精玄米への混入割合は増加する。図35は出穂後積算気温と茶米粒歩合の関係を示し たものであるが、茶米粒歩合も白未熟粒と同様、出穂後積算気温とともに増加する傾向が ある。 これらのことから、刈り遅れることで白未熟粒や被害粒の混入割合は明らかに増加する 傾向があるため、高品質米を確保するためには各圃場に応じた刈取時期を見極め、適期内 に収穫作業を終える必要がある。 図34 出穂後積算気温と青未熟粒歩合の関係 図35 出穂後積算気温と茶米粒割合の関係 (平成14年 青森農試) (平成15年 青森農試) (注) 1 品種 つがるロマン 2 ㎡当たり籾数 30,400~38,500粒 3 不稔歩合 4.9~16.4% 0 5 10 15 20 25 30 700 800 900 1000 1100 1200 ㎡当たり籾数 4.2~4.4万粒  〃  〃  2.9~3.0万粒 出穂後積算気温(℃) 青 未 熟 粒 歩 合 重 量 % 0 5 10 15 700 800 900 1000 1100 1200 茶 米 粒 歩 合 重 量 % 出穂後積算気温(℃)

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図36 出穂後積算気温と乳白粒歩合 (平成11年 青森農試)

刈取時期の早晩と食味

刈取時期は食味とも密接な関係がある。刈り遅れた米は食味要素として重要である炊飯 米の「粘り」や「粘着性」が低下することが認められている。 また、食味と関係が深い玄米のタンパク質含有率を比較すると、出穂後の積算気温とと もに高くなる傾向が見られ、刈り遅れは食味を低下させる原因になる。 「むつほまれ」では出穂後積算気温が1,100℃まではタンパク質含有率も微増する程度 であるが、1,200℃を超えると品質の劣化が始まり、タンパク質含有率の増加傾向がはっ きりみられる。一方、「つがるロマン」では、出穂後積算気温とともに被害粒(主として 茶米)の発生が増加傾向となるが、白未熟粒(乳白粒、腹白粒)の増加は「むつほまれ」 に比べて明らかに少なく、また、タンパク質含有率の増加傾向も明確にはみられない。 表56 刈取時期別の品質と理化学性特性(むつほまれ 平成6年 青森農試) 表57 刈取時期別の品質と理化学特性 (つがるロマン 平成6年 青森農試) 出穂後積算 整粒歩合 白未熟粒 被害粒歩合 玄米タンパク 気温 ℃  %  歩合 %  % 含有率 %   984 86.4 0.2 1.7 7.6 1下 1,078 86.7 1.0 3.0 7.5 1中 1,145 91.2 1.0 2.8 7.6 1下 検査等級 出穂後積算 整粒歩合 白未熟粒 白米タンパク アミロース 気温 ℃  %  歩合 %  含有率 %  含有率 % 931 75.3 5.2 6.3 16.5 996 77.8 7.2 6.3 16.6 1,094 77.2 10.3 6.4 16.3 1,209 75.3 12.5 6.7 16.5 1,392 73.3 19.6 6.9 16.4 0 2 4 6 8 10 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 ゆめあかり つがるロマン 出穂後積算気温(℃) 乳 白 粒 歩 合 重 量 %

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刈取時期の早晩と籾水分

籾水分は刈取り開始判断の重要な要素となる。図37は出穂後積算気温と籾水分との関係 を示したものである。出穂期が早く、登熟気温が高めに経過した高温年では、出穂後積算 気温が950~1,000℃になると籾水分は25~26%程度に減少する。刈取り時の籾水分がこの 程度まで減少すると、乾燥作業はほぼ12時間程度で終了する。 しかし、出穂が遅れ、登熟期が低温で経過した年では、籾水分が25~26%まで低下する ためには出穂後積算気温で1,100℃程度が必要となる。 図37 出穂後積算気温と籾水分の推移(昭和58、59、60年 青森農試)

刈取時期の目安

水稲の開花・受精は出穂後に順次行われ、次第に登熟は進むが、登熟は1穂・1粒ごと に遅速があって一様ではない。そのため、圃場全体の刈取適期を的確に判定するには籾の 黄化程度を目安とし、部分刈りをして青未熟粒の混入割合を調査することが最も良い方法 である。 また、補助的な目安として出穂後日数、出穂後積算気温、枝梗の黄化程度、籾水分等を 考慮し、総合的に判断することが大切である。 (ア) 籾の黄化程度 籾の黄化程度で判断する場合は、圃場全体の籾が90%程度黄化した時期を刈取適期 の目安とするが、出穂後が低温少照で登熟が遅れている圃場では、70~80%程度の黄 化程度とする。 (イ) 青未熟粒の混入割合 精玄米中(1.9mm選別)に占める青未熟粒歩合(死米を含む重量比)が10%程度まで 減少した時期を刈取適期の目安とする。 (ウ) 出穂後日数 極早生品種の「ユメコガネ」は出穂後40~45日頃、早生品種の「かけはし」は出穂 後43~49日頃である。 中生品種は出穂後45~50日で刈取適期に達するが、出穂後が低温少照で登熟が遅れ ている場合は、幾分遅らせて刈取る。 (エ) 出穂後積算気温 出穂後積算気温は、早生品種の「かけはし」では900℃、中生品種の「つがるロマン」、 「まっしぐら」では960℃を刈取適期の目安とする。 (オ) 枝梗別黄化程度 10 15 20 25 30 35 40 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 昭和58年 アキヒカリ 昭和59年 むつかおり 昭和60年 むつかおり 籾 水 分 出穂後積算気温(℃)

参照

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