一 46 一
プ ラ
ズ
マ
を
応
用
し
た
高 速
・無 残 留 酸 化
エ
チ
レ ン
ガ
ス
滅
菌
法
松
本
和 憲
・
蟹
谷
正
史
*(
工学 部 電
子情 報
工学 科 )
多 相 交 流 放 電
プ ラ ズマを応
用 し,
医療
や食
品分 野 な
どの殺 菌
・
滅 菌 処
理 に利
用で きる高 速
で有 害 残 留 物
の無
い 酸 化エ チレ ンガス滅菌 法
を研 究 開
発 し た。
滅
菌
過程
は連 続 す
る3
つ の処理
よ り成
る。
第
1
番 目の過程
にお
い て,
減 圧
下のプ
ラ ズマ に よ り被
滅菌 物 表 面
を清 浄 化
し,
被 滅 菌 物 表
面 に お ける化 学 的
反応性
を著
し く高
め る。
引 き続
く第
2
番
目の過 程
において,
低濃
度の酸 化エ チレンガス を 短時 間 充填
し滅 菌
処 理 を行
う
。
最 後
の第
3
番
目の過 程
に おいて,
減
圧下
のプ ラ ズマ に より残 留 す
る酸
化エ チレンを解 離
し,
無 害 な 水
や
二酸
化炭 素
に分 解 す
る。
従 来
の酸
化エ チレンガス滅 菌 法 に 比べ,
ガス 使 用 量 が1
/50
以 下で,
且つ ,無
残留
処 理時 間 を含
め た全 滅 菌 時 間
が1120
以 下
である
。
生物 学 的
インジ ケー
タ と し て枯 草菌 芽
胞 が用
い られ 殺
菌
・
滅 菌 実
験 が 行 わ れ,
四重 極 質 量
ガス分 析 器
に よ り残 留
ガス成 分
計測
が行
わ れ た。
キー
ワー
ド:プ ラズマ,
高 速 滅 菌
,
酸 化
エチ
レ ンガ
ス,
有 害
物高 速 分 解
1 .
は じ め に
医 療 や
食
品分
野に お い て滅 菌 法
として,
高 圧蒸
気 滅 菌 法や 過 酸
化水 素
ガ ス プ ラズ マ 滅菌
法 あ るいは酸 化
エ チレン ガス滅菌 法
な ど が 広く利 用 され
てき た
。
高
圧蒸 気 滅 菌
法 1>は 短 時間
で滅 菌
でき 環 境
にも無 害
で あ る が,
耐熱 性 や 耐 湿 性
に乏
しいも
のを 処
理で き ない とい う 欠 点があ る。
過 酸 化 水 素 ガス プ ラズマ 滅菌 法
且,
2)は低
温・
低 湿度
で高 速 滅 菌 処 理
が でき 有 害 な ガ
スの残 留 も無
い が,
過 酸 化 水 素 を 吸 収 あ るいは 吸着 す
る繊 維 製
品,
ス ポン ジ お よ びセ ル ロー
ス類 な ど を処
理 で きな
い。
ま た, 過 酸化
水 素 ガ
ス は 浸透
性 が 低い の で長
い狭
腔構 造
の滅 菌
に は不適
であ
る。
酸 化
エチ
レ ンガ
ス滅 菌 法
1・
3・
4)は低
い温度
・
湿 度 に おいて滅 菌
処 理 がで き ま た透
過 性 が良
い の で,
耐 熱 性
の 低い プラスチッ クや
ゴ ム製
品,
カ テー
テル な どの細
長い チ ュー
ブ
,
リネ
ンな どの繊
維製
品の滅菌
に 広 く利 用
され
てき
た が,
発癌 性
な どの毒 性
があ
る。
医
療 機
器の 酸 化エ チ レ ンガスに よ る従 来
の滅菌
処 理 は,
濃 度
450
〜
IOOemg
!9
,
湿度
50
〜
60
%及び温度
40
〜
60
℃の条 件
下 で,
滅 菌 処
理 に4〜6
時
間 お よ び有害
な 吸着
・
残留 酸
化エ チ レンの エ ア レー
シ ョ ン による除
去 処理 に8
〜
12
時
間
を費 や
し て行
われて き た。
こ のた め,
滅菌
処 理 に長 期 間
を 要す
る とい う 問 題 が あっ た。
ま た,
爆 発 性 及 び 毒 性の強 い 酸 化エ チレ ンガスを 大 量に使 用 しな け れ ば な らず
,
そ の 取 り扱
い に格
別の配 慮
が 必要
で,
且つ,
使 用 後
の酸 化
エ チ レンガスの回 収 に 特 別の装 置
が 必要
で あっ た。
本 研 究の 目的は
,
従 来
の酸
化エ チ レンガスなどの 滅菌
ガ スを用
い るガス滅 菌 法
に多 相 交 流 放 電
プ ラ ズマ 5)を 応 用 し,
低 濃 度
の滅 菌
ガス に よる高 速
・
無 残 留 滅 菌
を実
現 す る こ と で あ る。
本 論 文におい て, 滅 菌 ガス と して酸化
エ チレ ンガ
スを 用いた 場 合の滅菌
処 理法
のや り方
およ び
その実 験
.
結果
につ い て記 述 す
る。
以 下 に,滅 菌
処 理 法の基本 的 な考
え方
,
実 験 装
置 お よ び 殺菌
・
滅菌 効 果
の評 価 法 を記
した 後
,
殺
菌
・
滅菌
処 理お よび残 留
ガス分 析の実
験結
果 を 示 す。
2 .滅
菌 処 理
への
プ
ラ
ズ
マ応 用
の
考
え
方
従 来
の酸 化
エ チ レン ガス滅 菌
法 に プ ラズマ を 応 用 する に』
当
た り,ガスに 発癌
性 が有
る との理由
でそ
の使 用
の自粛
が指
.
摘
さ れて いる現 状 を踏 ま
え,
滅 菌 処
理時
の使
用 量の低 減
お よ び滅 菌
処 理 後の 残留 成 分
の除
去 を第
一
に念 頭
に おいた
。
そこ で,
低 濃 度
の酸 化
エ チレンガス に よ る滅 菌 処
理 お よ び 残留
成
分の容
易 で 完 全 な 除 去 が 可 能 と なる よう
に次
の 三段階
の処 理 プロ セス を考
え た。
処 理 に
先
立 ち,
被 滅 菌 物 を 滅 菌パ ッ クで包み滅 菌
処 理装 置
内ヘ
セ ッ トす
る。
こ こ で,
滅 菌
パ ッ ク で包 装 す
る 理 由 は ,滅
菌 処 理 後
に被 滅 菌 物 を装
置 外へ 取 り 出 す時
,
空 気 中に浮遊 す
る雑 菌
な ど が その表 面
に付
かな
いよう
にす
る為
であ
る。
こ のや
り方
で医 療 用
ガス滅 菌
は 通常 行
わ れ る。
前 処 理 プロ セス と して
,
プ ラズマ を減
圧下(
1
〆7600
気 圧
〜
11760
気 圧 )
の酸 素
元素 を含 む
ガス雰 囲 気
に おいて生成
し,
化学 的
に 活 性 な 酸 素 を 発 生 さ せ,
被 滅 菌 物 表 面 を化 学 的
に活
性
な酸 素
に よ り清 浄 化
し,
被 滅 菌 物 表
面の化学 的
反応 性
を著
し く高
める。
プラズマ
中
で発 生し た化学 的
に活 性 な 酸 素 は 滅 菌パ ック の細
孔(
〜
10
μ m)
を 通 過 し被
滅菌
物の 表 面 に 到 達 す る。被
滅 菌物 表
面 を覆
う水や
油 脂 層 な ど が ガス化 し て取 り除 か れ,
被 滅菌
物 表 面の酸化
エ チ レ ンガス との化 学 的 反 応 性
が著
し く 高 め ら れ る。 こ こ で,
滅菌
パ ックの細 孔
の大 き さ
は通 常
の 弱 電離
低 温 プラ ズマ に おけるプラ ズマ の最
小 の大
き さ(
デ
バ イ長
6り
より小 さ
い。
した がっ て,
プ ラ ズマ は滅 菌
パ ックの * マ イクロ ジ ニ クス(
株 )松 本
・
蟹 谷:プ ラズマ を応用 し た高 速・
無 残 留酸 化エ チレ ンガス滅 菌 法一47 一
孔 を透 過
でき ず
,
被
滅
菌
物
に接
し て作 用
を直接
及 ぼ すこ と は で きな
い。
こ の こと は,
プ ラズマ を滅 菌
に応 用 す
る上
で 予 め 留 意 し て お くべ き重 要
な 点である。
主
処 理 プロ セス と し て,滅 菌 装 置 内
から空 気 を排 気
し,
従 来の酸
化エ チレ ンガス滅菌
濃
度
の 百分
の一
程 度
の濃 度
(
分
圧でITorr
〜
0
.
lTorr)
の酸化
エ チレ ンガス を 短 時 間 封 入し,
ガス滅 菌
処 理 を行 う
。
そ して,
内 部
のガ
スを排 気 す
る。封 入
ガス圧 力
が低
い ので,
酸 化
エ チレ ンガ
スは装 置 内部
の 隅々 に 容 易 に拡 散
し被 滅 菌 物
の表 面
に到 達・
吸着 す
る。
前
の 工程
で化 学 反 応 性
が著
し く高
め ら れ た被 滅 菌 物 と酸
化
エ チレ ンガス は 効 果的
に 反応
し,
短時 間
で滅 菌
処 理 が 行わ れ
る。
こ こ で,
内部
の ガス を排 気
後 に装置
内
に吸 着
・
残
留 す
る酸 化
エチ
レ ンの量 は
,
低 濃 度
の酸 化
エ チレンガスを短 時 間 封 入
した だ け なの で,従 来
に 比べ大 変 少
ない。
こ こで
,
滅 菌 処 理 後
の酸 化
エ チレ ンガスを 外 部へ排 気 す
る 時,
水の中 を 通 し て 水溶
性の エ チレ ン グ リコー
ル に し て 回収
し,
大気 中 (
環境 )
へ
放 散
し ない。酸 化
エ チ レ ン と水
との反
応 式 を 以 下 に 示 す。
(
CH2
)
20 +H20
→HOCH2CH20H
(
ヱ チレ ング
リコー
ル)
後 処 理
プ
ロセ スと
し て,
吸 着
・
残 留
した酸 化
エ チレンの存 在 す
る装 置 内
へ酸 素
を含
む ガス を 低 ガス圧力
で封
入しプ
ラ ズマを 生成 す
る。
プラ
ズマ中
で発
生す
る化 学
的 に 活 性 な る 酸 素 に よ り,
被
滅菌
物 表 面 や装 置 内
に吸 着
・
残 留 す
る酸 化
エチ
レ ン成 分 を 高 速
に二酸 化 炭 素
や 水蒸 気
に分
解
し ガス化
して 脱 離 させ る。
そし て,
内部
のガス を排 気 す
る。
酸 化
エ チ レンと酸 素
との反 応
式 を以
下 に 示 す。2
(CH2
)20 +502
’一
) 4CO2 +4H20
(
励 起 酸 素 分 子
に よ る)
(
CH2
)
20 +50
今
2CO2
+2H20
〔酸 素原
子 ラ ジカ ル によ る )但
し,
二 酸 化 炭 素 や 水蒸
気 はプラ ズマ中
に おい て,一
酸 化
炭 素
,
酸 素
および 水 素
に容 易
に解 離
され得
る。全 処 理 工 程 時 間 は 1
時
間 程度
とす る。
酸 素
元素 を含
む ガ ス雰 囲 気
にお け
る プラ
ズマ前
処 理工程
時間
を20
分
,酸 化
エ チ レンガ
スに よ る滅 菌 処
理工程 を
20
分 お
よ び酸 素 元 素
を含 む ガ
ス雰 囲気
にお け る
プラ
ズマ後
処 理工程
を5
分
程度
とす る。
低 濃 度
の酸化
エ チレ ンガス の使 用 に よ り,
酸 化エ チレ ンガ
ス が装 置 外
へ漏 洩
した 場 合
にお け
る爆 発
の危 険 性 や
漏 洩 ガス の毒 性 を 低 減 す る。
3
.実験装
置
,
滅 菌
工程 お よ び 滅 菌 評 価 法
3.1
実 験 装 置
図
1
に実 験 装 置
の概 略
を,
図2
に多 相 交 流 電 源の給 電の仕 方
を 示す
。
横 断 面 図
が図 中央
に示 されてい る。
円筒 状
の真 空 容 器
の内壁
に沿
っ て,
絶 縁
シー
トを介
し12
枚
の 円 弧状
の分 割 電 極
が密着
・
固 定 さ
れ る。
真 空 容 器 は
二重
壁構 造
を持
ち,
壁間
に冷
・
温水
が流
され
内 壁(
内 径100mm
,
長さ
〜
500mm
)
に密
着
す る12
片
の分 割 電 極
が冷 却 或
いは 加 温 さ れ る。真 空 容 器
の内部
に同 心 円状
に 取 り付 け られ た 円筒 状
の メ ッシュ籠
(
内径
〜50mm
, ステンレ ス20
メッ シュ)
が挿
入さ
れ,
その中
に被 滅 菌 物
が セ ッ トさ
れ る。
真 空 容器
の一
方
の端部
に受 電
端 子 とガ
ス注
入 口 が設 け られ
,
他
方 に は ガス 圧 力計
が取 り付 け られ
る。
受
電 端 子 に 対称
12
相 交 流 電 源
が接 続
され
,
各 相 成 分
が12 枚
の分 割 電 極
へ給
電 さ れ る。
電 源 中 性点
は同 心 円状
の メ ッシュ籠
へ接 続 さ
れ,
浮 遊 電 位
に保 た れ る
。
放 電
は各 分 割
電極
と メッシ ュ籠 間
で生 じ.
時間
と と も に 位 相 の遅 れ
る方 向
に移 動
し,
1
秒 間
に 電源
周波 数 (
60Hz
)
だ け回 転
す
る。
放 電 に よっ て 生成 さ
れ た プ ラ ズマ は,
メ ッ シ ュ舘
の メ ッシュを 通
し同
心円 状
に中
心 に 向 かっ て拡 散 す
る。
艦
生 物 学 的 イ ンジケー
タ」
髄全 曇550図
1
実験 装置 概 略 図
図
2
12
相
交流 電
源 の給 電 図
一
的 イ ン ジ ケー
タ 綱 観/
多 相 交 流 放
電に よるプ ラズマ生 成 法
は,
次
の ような 特 徴
を 持つ。
(
a)
低
周 波に も 拘 わ ら ず 放 電 休止 の無
い,
時 間 変 動
の 小さ
い直 流 的 な
プ ラ ズマ の生 成 が 可 能。
(
b
)
位 相 が 異 な
る複
数の電極
に電 力
が時 間 分 割
的に分
散 給 電 さ れ,
時
間平 均 的
に 広範
囲の空 間領 域
へ均
一
な プラ ズマ の 生 成 が 可 能。
(c)周波
数 が 低い の で電源
の低
コ ス トで の大 容
量化
が 容易
。大 体積
の一 48 一
富 山 県立大 学 紀 要 第13巻 (2003
> プ ラズマを低
コ ス トで生 成
可能
。
従
っ て,
大
型の滅菌
装置
内
へ均
一
なプ
ラズマ を 発 生でき,
広い領 域
に お い て ム ラ の無
い プラ
ズマ(
を 応 用
した )滅 菌 を 実 現 す
るのに適
してい る。
装
置内
は 油 回転
ポンプ で排
気 さ れ,
排
気系
の バ ルブ が閉
じられ
た後
,
ガス がガス注
入口か ら注 入さ
れ る。 所望
の ガ ス圧 力 に 到 達 し た らバ ルブ を閉
じ る。
封
入 圧力
は絶 対 圧 力
計 (
バ ラ トロ ン)
に よ り計 測 さ
れ る。
ガス 注 入口か ら 空 気 が
装 置
内へ導
入 さ れ る場 合
は,
ヘ パフ ィ ル タ
(
HEPA
:High
E
伍 ciencyParticle
Air
nlter
,
0
.
3
μmの粒 子の捕
集
率が99
.
970/。
以.
L
の フ ィル タ)
とエ ア乾 燥 管
を通
し,
雑 菌
・
水 分
が除
去 され
た空 気
が外 気
から取 り込 ま
れ る。
酸
化エ チ レンガス の 場 合 は, 液 化 酸化
エ チレ ンが一
旦 気化 器
で ガス化
さ れ た後
,
容 器
内へ
導 入 され
る。
装
置内 部
のガス 分 析 は,
装 置 中 央 に 取 り付 け ら れ た ポー
トか ら ガスが サンプ リングされ
,
四重 極 質 量 分 析 計 (
日電
アネ
ル バ,
AQA−
IOOMPX ) に よ り行 わ れ る。
放 電 プ ラズ マ発
生 時の時
々刻
々 の ス ペ ク トルは,
質
量分 析 器
のモニ ター
画
面 がビデ
オカメ ラ で撮影 され 収 集 され
る。
ガ
ス種
の 同 定 は,
ガス質
量分 析
ス ペ ク トル デー
タベー
ス 7)が参 照
され
行 われ
る。
3.
2
滅 菌工程図
3
に本 実 験 を 実 施
した酸 化
エチ
レ ンガス滅 菌 法
の 工 程 曲 線 図 を示 す。
横 軸 は 時 間,
縦 軸 は 装 置 内の圧 力 を 示 す。
前 章
で記
した
よう
に,
低 圧
下の滅 菌 室
に酸 素
元素 を含
む気
体
を 供 給 してプ
ラ ズマ を 発生 さ
せ る前
処 理工程と
,
低
圧 下の滅 菌 室
に滅 菌
ガスを供 給す
る滅 菌
工程 と
,
再
び低圧
下の滅 菌 室
に酸 素
元素
を含
む気 体
を供 給
してプ
ラ ズマ を 発 生 させ る後
処 理工程
で構成 す
る。
の を防
ぐ た め,
装 置
内 壁温 度 を
45
℃程 度
に 予 め加
温 し て お く。
装
置内 部
をO
.
02Torr
程 度 ま で 減 圧 し,
空 気 を 導 入 し0.25Torr
ま で 充填 す
る。
こ の圧力 値 近 傍
で,
空気
の放 電 開
始 電圧
は最
小にな
る。
分 割
電極
と メッシュ籠
の間 で 12相 交流 放
電 を 生 成 し メッ シ ュ籠
の中
ヘ
プ ラズマ を拡散
さ せ る。
放
電
プラ
ズマ発
生中
のガス の発 生
によ
る放 電 条 件
の変
化を 防
ぎ
,
ま た,
装 置
内部
の 加熱
を抑 制 す
る た め に,
放 電 を 間歇 的
に行 う
。
放 電 を
5
分 間 程度 行
い,一
・
旦,
装 置 内部
のガ
スを排
気 し0.
02Torr 程 度 まで減 圧 し た 後,
空 気 を0
.
02Torr
まで導
入 す
る。
これ を
1
サ イ
ク ルと
し て4
回程 度 繰
り返す
。
滅
菌
工程は 次の と お りであ る
。
前 処 理工程で装
置 内 部 に溜
まっ た ガスを排 気
し,
0
.
02Torr
まで減 圧 す
る。
酸 化
エチ
レンガス(
純 度
〜
100
% ) を真 空 容 器 内
へ導
入 し,
7.
6Torr の ガス圧 力 まで充 填 す
る。
装 置
壁の温度
を45
℃程 度
に保 持
し酸化
エチ
レン ガスを熱
で活 性 化
しな
がら
,
被 滅 菌 物 内部 深
く まで拡 散・
浸 透 させ,
前 処 理工程
で清 浄 化
さ れ た被
滅菌
物表 面近 傍
に酸化
エチ
レ ンガ
スを吸 着 さ
せ る。
封
入・
拡 散 時 間
を20 分 程 度 と し,
その後,
排 気 しO.
02Torr 程 度 まで減 圧 す る。
後
処 理工程
は次
の と お りであ
る。
滅 菌
工程で装
置内部
に吸 着
・
残 留
した酸 化
エ チレンガス が存 在 す
る状 態
で,
空 気
を装 置 内
に導
入 し0.
25Torr
ま
で充 填 す
る。
分 割 電 極 と
メッ シ ュ 籠の 間で12
相 交 流 放 電 を 生 成 しメ ッ シュ 籠の 中ヘ プ ラズ マを拡 散 さ
せ る。
放 電 を
5
分 間程 度 行
い,一
旦,
装 置 内部
の ガスを 排 気 し た 後,
空 気 を 大 気 圧 まで導 入 す る。
装 置 を 開 け被 滅 菌 物 を 取
り出 す
。
3.
3
殺 菌
・
滅 菌
の評
価 の仕 方
酸 化
エ チレンガス の滅 菌 作 用
L4)は,
微
生物 を構 成 す
る蛋 白
質
(protein
)が酸
化エ チ レ ンガ
スに よ り アル キル化 され
ること
によるもの で,
その滅菌
反 応の化
学 式 を 図4
に 示 す。
冖
辷 oト
]
R ト 60 3…
皆 6 2
.
25 :し
… 02.
.
一
.
.
: 2 「.
.
.
時 間 図3
プ ラ ズマ
滅 菌
処 理 過 程 前 処 理工程 の詳 細 は 以 下の と お りで あ る。
メ ッ シュ 籠 の中
へ
被
滅菌
物 をセ ッ トした後
,
装 置
内部
のガスを排
気す
る。
減 圧 時 に,
装 置
の内 壁 や挿
入 物 表面
に 付着
して いる水
が蒸 発 す る 過 程で気 化 熱に よ り そ れ らの表 面で結 露 す
る 一ぐ
・
夢
一く
i
響
図
4
酸 化
エチ レ ンガス のアルキ
ル化
によ る滅 菌
滅菌
とはウ
イル ス を含
め 全て の微
生 物 を 殺 滅 す る プロ セ スを
いう
。
実 際
に は,
滅 菌
は確 率 的
な概 念
と して運
用 さ れ,
滅菌 操 作
後に単位
面積
あた り の被 滅 菌 物
に1
個
の微
生物
が 生存
す る 確 率が100
万 回に1
回で あ る場合
に,
国際 滅 菌 保 障
レ ベ ル の滅 菌
状態
に あ る とい う8 )。
本 実 験 に お け る 滅 菌 効 果の確 認 は,
滅 菌 装 置 内 に 生 物 学 的 インジ ケー
タ(
3M
アテス トTM126
) が挿
入 され 行 わ れ た。
滅 菌
フ ィ ル タの蓋付 き イ
ンジケ
ー
タ容 器 内
に は,
酸 化
エチ
レ ン ガ ス に 対 し て最
も 抵 抗 性 の 強い 菌 株で あ る枯 草 菌
9}松 本
・
蟹 谷:プ ラ ズマ を応 用した高 速・
無残
留酸 化エ チレンガス滅 菌法
一 49 一
II(
Bacillus
subtilis)が芽 胞 状 態
で3
.
2
×106
個 格 納 され
てい る。 滅菌
処 理後
,
こ のインジ ケー
タを装 置 外
へ 取 り出 し,
培 養
器
に おいて37
℃の状 態
で48
時
間培養
し,
培養 液
が変 色
しな け
れ ば国
際 無菌
保 証レベ ル の滅菌
が達 成 され
たこ と に な る。 こ こで,
芽 胞
9)状 態
と は菌
の休 眠 状
態の こ と で,
活
動 状 態
にあ る菌
よ り物 理 的
,
化 学 的
刺激
に対
し て強
い抵 抗
性 を持
っ。
N
樋
nD
,noz
圧
と なっ てい ること が分
か る。
図7
(b
)
よ り各 相
の放
電 電 流
は,
対応 す
る相
の放 電 電
圧 が 正の最 大値 を も
っ位 相
附
近
で の み 正 と な り,
そ れ 以外
の位 相
におい て負 と な
ること が分
か る。
この こと
は主 放 電
が隣
り合 う相
か ら相へ 時 間 と と もに移
動す
ること を 示す
。
図
7
(
c)
よ り各 相
に おけ る 瞬 時 電
力 は 対応
す
る相
の電 流
が最
大の時
ピー
クを も ち,
時 間 と と もに脈 動 す
る こと が分
か る。
しか し,
各 相
電力
を総 和
した電 力
は, 小さ
な
リップル を もつ が 直流 的
にな
る こと に 注 目す
べき
であ る。
こ こに多 相 交流 放 電
は安
定 で あ る所
以 があ る
。
tlt2
時 間
図
5
培 養
時
の細
菌 数
の増 加
410 伽 獅 鋤 脚 踟 細冖
≧ 出 鯉 艱 壓 鯉漬
◆
◆
◆
も
◆
◆
◆
◆
◆
◆
◆
未 滅 菌
の場 合
,
培 養
の結
果
,完 全 増 殖 状
態で黄
色 に変 色
す
る。
培養 時
におけ
る 細菌
の増
殖
は,
細 菌
の数
と増
殖 時 間 に 比例 す
る の で,
増 殖 割 合 を
α とす
る と,
dn
・
・
adt
と表 され
る。
積 分
し初 期 菌
数 をn。 と お く と,
n(
t)
=ngexp(
αt)
とな
る。
こ こ で,
初 期 菌 数 値
がそ
れ ぞ れnOl及 びno2 の場 合
に,
培 養
時に完
全 増 殖 状態
に 到 るま
で の時間
を そ れ ぞ れti
お よ びt2
とす
ると
,
t2
−
tl
=
(
11
α)ln(
nOl !noalと 求 め ら れ る
。
細 菌 数
の初 期 値
の比の対
数 が培
養 時
に完 全 増 殖 状 態
に到
る までの時 間差
に 比例 す
る こと が分
る。
従っ て,
生 物
学 的 イ
ン ジケ
ー
タ培 養 時
の完全 増 殖 状 態
に 至 る までの 時間
差 か ら,
初 期菌数 (
処
理前
の値 )
に対 す る残 存 菌 数 (
処
.
理 後
の値 )
の割 合
,
即
ち ,各
工程
に おけ
る殺 菌 効 果
を 定 量1
的 に 知 ることが で き る。
図
5
に,
培 養 時
の細菌 数
の増加
の様
子を概 念 的
な グ ラフ で 示す
。
4 .実験結果 お
よ び
検
討
4.1
多相
交流 放 電 特 性
図
6
に,
空 気
ガス圧 力 に 対 す る12
相 交 流 放 電 開 始 電 圧
の変 化 をし め
す
。
こ こ で,
縦 軸
の電 圧 は相 電
圧のpeak
topeak
の値
で あ る。 図6
よ り放 電 開 始 電 圧
の最
小値
が0.
35Torr
附 近
にあ
る こと が分
か る。
以 下の空 気
プラ
ズマ 生成 時
に お け る初 期
ガス 圧力 値
と し て,
生成
時の不 純 物 ガス発
生 を 考 慮 しO
.
25Torr
と し た。
図
7
に典
型 的 な12
相 交 流 放 電波 形
を示す
。
こ こ で,
図(
a)
,
(
b
)
お よ び(
c)
は,
そ れ ぞ れ 各 相にお ける放 電
電 圧,
電流
お よ び電 力 (
総
電 力 を含
む ) で あ る。
図
7
(
a)
よ り各 相
の
放 電 電 圧
の位 相
は1
/12
周 期 ずつ ズ レ,
対 称 12相 交 流 電
340 0.
1 0.
2 0.
3 0.
4 0.
5 0.
6 0.
7 0.
8 0.
9 圧 力 [rerr]図
6
空
気ガ
ス圧力
によ る
12
相
交流 放
電開始 電 圧
の変 化
[
己 出 鯉【
く]
冖
邑 4020一
20一
40一
〇、
一
〇図
7
12
相
交 流 放 電特 性
[ms]4.
2
殺 菌・
滅 菌 効 果 試 験
4.
2.1
前 処 理空 気 プ
ラ ズマ エ程
図
8
に前 処 理工程
の空 気
プラ
ズマ に お け る 殺菌
効 果 を 示一 50 一
富 山 県立大学 紀 要 第13
巻(
2003
)
す
。
横 軸
は処
理 後の 生 物学 的
インジケ
ー
タ
が培 養 時
に 完 全増
殖に至るまで の時
間N
,縦 軸
は プラ
ズマを
発生 さ
せ た 延 べ時 間
であ
る。
ここ で ,第
1
相
の放 電 電 流 お
よ び電
圧の実
効 値
が そ れ ぞ れ50mA
お よ び270V
で あ る。
全 相にわ たる電 力
の総 和
は120W
で あ る。 無 処 理 5分 10分 15分 20分 25分 30分 35分]
8 12 16 20 24 28 32 36 釦 44 48 N到 運 時 間 [h酬
コ
r]図
8
前
処 理時 間
に よる培 養 時 間 (
滅 菌効 果
) の変
化上図 よ り
,
空 気 プ ラズマ延
べ 処 理時 間
が15
分
ま での場合
,
完 全 繁 殖
到達 時
間N
は無
処 理の場 合
よ り僅
か に長 く
な る だ けであ る が,
延
べ 処理時
間が20
分 を越す
と,2V
は階段 状
に長 くな
ること が 分 か る。N
の増
大 は殺 菌 効 果
が有
ることを 表 す
の で,
滅 菌
パ ック さ れ た被 滅 菌 物
を空 気
プ ラ ズマ雰囲
気中
に あ る時 間 放 置 す
るだ
け で,
あ
る 程度
の殺菌
が行
われ
ること を
示す
。
し か し,
この 空 気 プラ ズマ 処理時
間 を 長 く して も 滅 菌効 果
は増
大 しない こ と が分
る。こ の
時
,
』
第
1
相
の放 電 電 流
を60mA
に 大 き く し,
全相 総
和 電 力 を 図4
の場 合 よ り25
% 大き
い150W
に した 場合
の実 験
を行
っ た。
その結 果
,
図8
の場合
に 比べ,
処 理 時間
が10
分 を越
す と完
全繁 殖 到 達 時 間
N
が階
段 状 に 長 く な り,
短い処 理時
間
で殺 菌効 果
が出
るこ とが 分 か る。 し か し,
処 理時
間 を15
分
より長
くし ても
N
の値
は 長 く な ら ない。
飽 和 値 も 図8
の場 合
に 比べ2
時 間 程 度 長
く な るが ,大 き な違
いはな
い。
図
9
に実
験 直 後 に 取 り出
した 生物 学 的
インジケー
タの容
器 表 面 温度
を 示す
。
こ こで,
温度
は熱
電対 感
温子
で測 定
した。
但
し,
第
1
相
の放
電 電 流 お よ び総
電力
は,
50mA
お よ び120W
で あ る。 図 9 よ り延
べ処 理 時 間
と と も に 温度
が 上昇
し35
分
で90
℃程 度
にな
ること
が分
か る。
生物 学 的
インジ ケー
タ 容器
は 空気
プ ラズマ に直 接 接 触
しているので,
プ ラズマ に よ り 加 熱 さ れ る。
加
熱
に よる 生 物 学 的 イン ジ ケー
タへ の影 響 (
殺菌 )
を調
べ る 為 に, 大 気 圧下
で恒 温 槽
に生 物 学 的
インジ ケー
タ を入 れ
,
加 温に よる殺 菌
効 果 を 調べ た。
図10
に恒
温槽
温度
に 対 す る完
全繁 殖 到 達 時 間
N
の変
化 を 示 す。 こ こ で,
挿 入 時 間
は30分
であ る。
恒
温槽
温度
が130
℃ 以 上になると 生物 学 的
イン ジ ケー
タの容 器
が変形
し融 け始
め る。
図
10 よ り,
恒
温槽
温度
が90
℃ 以 下では,
到 達 時 間N
の 値が無
処 理の場 合 と 同じ である こ と が分
る。
従っ て,
図
4
に 示す 前 処 理
工程
の空 気 プ
ラズマ 処 理 に おい て観 測 され た
殺菌
効 果 は,
生 物 学 的 インジ ケー
タ容 器
のプ ラズマ に よ る 加熱
に よ り引 き起
こされ
るので は な く,
空 気 プ ラ ズマそ
のも
の が関係
してい ること が 分る。
驚
蠹
cORC】顯囲 駒D匿 】 cotC】 70『℃亅 80匚℃ ] 90tり」 100圏 110tc】i■ 圏■圃 團 圏 澀 錮 morcl■■ ■ ■ ■圈 匯 醗 囲1
9080
互
7・農
・。ま
・・蠧
・P 3e◆
◆
◆
◆
S 12 16 20◆
◆
◇
2D 〔〕 5 10 15 2e 25 3〔〕 35 40 放電 時間 【勇1
図9
生物
学 的 イン ジ ケー
タ 表 面の温 度変
化「
…_一
」
,42832嘉
rn 44 ua N到遅時間D… r] 図10
大 気 圧下 の加
熱
による 滅 菌 効 果
4.
2.
2
酸
化エチ レンガ
ス滅 菌
工程
a
.
酸 化
エ チレ ンガス の吸 着 特 性
滅 菌 装 置 内
に封
入さ
れ た酸
化エ チ レンガス の吸着
特 性に つ いて,
前 処 理 プロ セスの
有
無によるその違
いを
調べた。
図
Il
に,
装 置 内
へ封
入さ
れ た酸 化
エ チレンガス圧力
の時
間 変 化 (吸 着 特 性 ) を 示 す。
こ こ で,
実 線で結んだ デー
タ は 空 気プラズマ 前 処 理(
延
べ 処 理時 間
20
分 )
を行
っ た後
に酸
化エ チレンガス を 封 入・
拡散
さ せ た場 合
の圧 力 値
であ
り,
破
線で結 ん だ デー
タは前 処理プロ セスが無
い場合
そ れであ るD図
ll
よ り,
空気
プ ラズマ前 処
理有
りの場 合
は無
しの場合
よ り,
酸 化
エ チレン ガス圧 力
の減 少
が大 き
い こ と が分
か る、
ガス 圧力
の減
少 分か ら拡 散
終 了時
(20分
後 )の酸化
エ チレ ンガス の吸着
量 を 評価
す る と,
空 気 プ ラズマ 前 処 理の場 合
が松 本