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性能仕様書による発注業務の劇的改善【公共工事発注編】

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(1)

平成

30年9月

澤田雅之技術士事務所(電気電子部門)所長

澤 田 雅 之

性能仕様書による

発注業務の劇的改善

【公共工事発注編】

*** 談合の温床を払拭 ・ 費用対効

果を向上 ・ イノベーションを促進 ***

(2)

目 次

1 公共工事の発注は歴史的な転換点 〜 「設計仕様書」から 「性 能仕様書」へ 2 品確法とは? 〜 入契法・PFI法と密接な関係 3 「性能仕様書」で談合の温床を払拭 〜 消防無線談合を例として 4 工事請負契約 or 製造請負契約 〜 競うべきは、設置工事の技 術力か? それとも、機器製造の技術力か? 5 「性能仕様書」による製造請負 〜 過去最大の成功事例は零戦 6 戦後、「性能仕様書」は影を潜めた 〜 土木分野の「設計・施工 分離の原則」が波及 7 「性能仕様書」の復活 〜 白紙撤回後の新国立競技場建設計画 8 「性能仕様書」で、発注業務は劇的に改善

(3)

1

公共工事の発注は歴史的な転換点

(4)

性能仕様書のモデル事例

** 防災行政無線デジタル化整備事業仕様書

(平成27年12月 兵庫県丹波市)からの抜粋 **

(5)

設計仕様書 vs. 性能仕様書

** 同じ仕様書でも中身は全く別次元 **

設計仕様書とは?

性能仕様書とは?

実現を求める目標そのものを、「性能要件」及び「機能要件」と して、分かりやすい文言で規定する仕様書 目標を実現するための手段や方法を、設計・施工図面等により 具体的かつ詳細に規定する仕様書 3

(6)

性能仕様書とは?

* 発注者が実現を求める「性能要件」と「機能要件」を、

受注者が設計・製造・施工する条件として示す仕様書 *

設計・施工図面の作成は受注者が行い、発注者の承認を得た 上で製造・施工する。 発注者が求める機能と性能を実現 する責任は、受注者が負う。

設計・製造・施工の一括発注に最適

PFI(民設民営)やPPP(公設民営)による発注に必須!

4

(7)

性能仕様書とは?

** 自宅を新築する場合を例として **

つまり、 性能仕様書とは、発注者側の「希望」を箇条書きにしたもの 受注者側にわかり易く必要十分に伝える工夫が重要 スタートは、設計・施工を依頼したい建設業者に「希望」を伝えること 例えば、 このような立地条件でこのような広さの土地に住宅を建てたい。坪数はこれ位 にしたい。二階建ての洋風でクラシックな感じにしたい。二階にはバルコニーを 設けたい。明るくて開放的なリビングにしたい。玄関は南向けにしたい。大きな 地震に耐えられるようにしたい。2台分の車庫を設けたい。・・・などの「希望」 受注者(建設業者)は、設計を行い施工図面を作成する。

発注者の「希望」

に基づいて

5

(8)

公共工事の発注は

歴史的な転換点

平成26年の改正で追加された「競争 参加者の技術提案を求める方式」で は、「性能仕様書」が必須! 平成27年に白紙撤回された「新国立 競技場建設計画」は、「性能仕様書」 による設計・施工一括発注で蘇った。

** 公共工事の品質確保の促進

に関する法律(平成17年制定) **

出典: http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei= UTF-8&p=新国立競技場建設計画 6

(9)

官民連携による公共事業にも必須

事業の成否は、「性能仕様書」次第 「要求水準」を、適切かつ必要 十分に記載することが肝要! PPP/PFIによる公共事業では、設 計・製造・施工を一括して実施

「性能仕様書」が必須!

PPP : Public Private Partnership PFI : Private Finance Initiative

**民間資金等の活用による公共施設等の整

備等の促進に関する法律(平成11年制定)**

7

出典: 御殿場市・小山町広域行政組合のHP

(10)

8

品確法とは?

(11)

公共工事の品質確保の促進

に関する法律(平成17年制定)

9

目的

公共工事の品質確保に関する基本理念、国等の責務、基本方針 の策定等その担い手の中長期的な育成及び確保の促進その他の 基本的事項を定めることにより、 現在及び将来の公共工事の品質確保の促進を図る。

地方公共団体の責務

地方公共団体は、基本理念にのっとり、その地域の実情を踏まえ、 公共工事の品質確保の促進に関する施策を策定し、及び実施す る責務を有する。

(12)

公共工事の品質確保の促進

に関する法律(平成26年改正)

基本理念の追加

・地域における災害対応を含め、施工技術を有する者の中長期的な育成と確保 ・公共工事の性格、地域の実情に応じて、多様な入札及び契約の方法の中から 適切な方法を選択 ・工事完成後の適切な点検、診断、維持、修繕による将来にわたる品質の確保

発注者の責務の明確化

発注関係事務(仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の 方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査等)について明確化

多様な入札契約方式の導入

技術提案の審査及び価格等の交渉による方式、段階的選抜方式、地域におけ る社会資本の維持管理に資する方式の導入

10

(13)

多様な入札契約方式の導入

* 技術提案の審査及び価格等の交渉による方式 *

技術提案 を公募の上、その審査の結果を踏まえて選定した者と工 法、価格等の交渉を行うことにより仕様を確定した上で契約 発注者は、技術提案の審査及び交渉の結果を踏まえ、 予定価格 を策定 品確法第十八条の抜粋

発注者による適切な

性能仕様書の作成

が必須

技術提案者から徴収した見積書の査定が必須

技術提案の公募には

予定価格の策定には

11

(14)

改正品確法における発注者の責務

第七条 発注者は、基本理念にのっとり、現在及び将来の公共工事の品質が確保されるよう、公共工事の品質確 保の担い手の中長期的な育成及び確保に配慮しつつ、仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び 契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査並びに工事中及び完成時の施工状況の確認 及び評価その他の事務を、次に定めるところによる等適切に実施しなければならない。 一 公共工事を施工する者が、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成され及び確保されるための適 正な利潤を確保することができるよう、適切に作成された仕様書及び設計書に基づき、経済社会情勢の変化を 勘案し、市場における労務及び資材等の取引価格、施工の実態等を的確に反映した積算を行うことにより、予 定価格を適正に定めること。 二 入札に付しても定められた予定価格に起因して入札者又は落札者がなかったと認める場合において更に入 札に付するときその他必要があると認めるときは、当該入札に参加する者から当該入札に係る工事の全部又 は一部の見積書を徴することその他の方法により積算を行うことにより、適正な予定価格を定め、できる限り速 やかに契約を締結するよう努めること。 三 その請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結を防止するため、その 入札金額によっては当該公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約となるおそれがあると認められる場 合の基準又は最低制限価格の設定その他の必要な措置を講ずること。 四 計画的に発注を行うとともに、適切な工期を設定するよう努めること。 五 設計図書に適切に施工条件を明示するとともに、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が 一致しない場合、設計図書に示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じた場 合その他の場合において必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請 負代金の額又は工期の変更を行うこと。 六 必要に応じて完成後の一定期間を経過した後において施工状況の確認及び評価を実施するよう努めること。 2 発注者は、公共工事の施工状況の評価に関する資料その他の資料が将来における自らの発注に、及び発注 者間においてその発注に相互に、有効に活用されるよう、その評価の標準化のための措置並びにこれらの資料 の保存のためのデータベースの整備及び更新その他の必要な措置を講じなければならない。 3 発注者は、発注関係事務を適切に実施するため、必要な職員の配置その他の体制の整備に努めるとともに、 他の発注者と情報交換を行うこと等により連携を図るように努めなければならない。

** 下欄の赤字が平成26年の改正による追加 **

12

(15)

改正品確法における発注者の責務

入札に付しても定められた予定価格に起因して入札者又は落札者 がなかったと認める場合において更に入札に付するときその他必 要があると認めるときは、当該入札に参加する者から当該入札に 係る工事の全部又は一部の見積書を徴することその他の方法に より積算を行うことにより、適正な予定価格を定める。

** 見積りの徴収・査定による予定価格の策定 **

品確法第七条第一項二の抜粋

適正な予定価格の策定には

受注希望者が設計・施工に要する金額を見積る上で、必要十分な 設計条件・施工条件を網羅した性能仕様書を作成・制定し、複数 の受注希望者に提示する。 受注希望者が提出する見積書には、提出責任者の捺印、提出日、 見積書の有効期限、見積書の宛先、見積書の件名を漏らさない。 13

(16)

品確法は、入契法・PFI法と密接な関係

入契法(平成12年制定)

【公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律】 第二条第二項 この法律において「公共工事」とは、国、特殊法人等又は地方公 共団体が発注する建設工事をいう。

品確法(平成17年制定)

第二条 この法律において「公共工事」とは、公共工事の入札及び契約の適正 化の促進に関する法律 第二条第二項に規定する公共工事をいう。

PFI法(平成11年制定)

【民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律】 第十条第三項 技術提案については、公共工事の品質確保の促進に関する法 律 第十五条第五項本文、第十六条、第十七条第一項前段、第十八条第一項及 び第二項並びに第十九条の規定を準用する。 14

(17)

品確法は、入契法・PFI法と密接な関係

主眼は、談合その他の不正行為の排除

* 品確法も含めた公共工事における発注者の2大責務 *

1 談合の防止

2 費用対効果の最大化

主眼は、VFM(Value For Money)の最大化、つまり、費用

対効果の最大化

入契法

【公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律】

PFI法

【民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律】

(18)

公共工事における発注者の2大責務

1 談合の防止

2 費用対効果の最大化

改正品確法で導入された「技術提案の審査及び価格等の交渉に よる方式」に代表される、設計・施工の一括発注が、2大責務を 果たす切り札になり得る。 適切な「性能仕様書」の作成と、これに基づく見積書の適切な徴 収・査定が鍵! 16

(19)

第六条 技術仕様

機関は、

技術仕様については、

適当な場合には、

(a)デザイン又は記述的に示された特性よりも

性能に

着目して、

・・(中略)・・

定める。

WTO政府調達に関する協定

(平成8年1月1日発効)

性能仕様書(受注者に実現を求める性能要件及び機

能要件を規定した仕様書)の作成を求めている。

17

(20)

第十条 技術仕様及び入札説明書 技術仕様 2 調達機関は、調達される物品またはサービスの技術仕様 を定めるに当たり、適当な場合には、次の要件に従う。 (a) 当該技術仕様をデザイン又は記述的に示された特性 よりも性能及び機能的な要件に着目して定めること。

WTO政府調達協定を改正する議定書

(平成26年4月6日発効)

性能仕様書(受注者に実現を求める性能要件及び機

能要件を規定した仕様書)の特質を明確にして、その

作成を求めている。

18

(21)

「性能仕様書」で談合の温床を払拭

消防無線談合を例として

(22)

官公庁が発注する工事や製造請負

における談合の弊害

談合は、

価格面

及び

技術面

競争原理を完全に阻害する。

談合が発覚した場合、

「官製談合」

を疑われかねない。

費用対効果に優れた調達が実現できず、

イノベーションも阻害する!

20

(23)

談合は法律で厳禁・厳罰

☆ 独占禁止法 ☆

(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律) 5 この法律において「入札談合等関与行為」とは、国若しくは地方公共 団体の職員又は特定法人の役員若しくは職員(以下「職員」という。)が入 札談合等に関与する行為であって、次の各号のいずれかに該当するもの をいう。 四 特定の入札談合等に関し、事業者、事業者団体その他の者の明示 若しくは黙示の依頼を受け、又はこれらの者に自ら働きかけ、かつ、当該 入札談合等を容易にする目的で、職務に反し、入札に参加する者として特 定の者を指名し、又はその他の方法により、入札談合等を幇助すること。 第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

☆ 官製談合防止法 ☆

(入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を 害すべき行為の処罰に関する法律) 21

(24)

消防無線談合の発覚

平成26年11月18日、

公正取引委員会は、

消防救急デジタル無線機器の製造業者

5社に対して、談合の疑いで立入検査

全国の自治体が発注した消防救急無

線デジタル化工事

の入札で、事前に話

し合い落札業者を決めた疑い

22

(25)

消防無線談合の認定(1/2)

平成29年2月2日、

公正取引委員会は、

消防救急デジタル無線機器の製造業者

5社に対して、排除措置命令及び課徴金

納付命令を行った。

独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)

の規定に違反

する行為を行っていたと認定

23

(26)

消防無線談合の認定(2/2)

平成29年2月2日、

公正取引委員会は、

発注者側の自治体が

「特定の業者しか対応で

きないような仕様書」

で発注していた疑いのあ

る事実を認めた

として、発注者である自治体に

対して今後留意するよう連絡

「特定の業者しか対応できないような仕様書」

は、談合の温床そのもの!

24

(27)

市町村などが発注した消防救急無線デジタル化工事

消防隊員や救急隊員の活動を支える消防無線を、旧式のアナ ログ方式から、最新のデジタル方式に切り替える工事 全国の自治体で合計516件の消防救急無線デジタル化工事が 総額約2700億円で発注され、平成28年5月31日までに全て完了

この516件の過半数において無線機器の製造を

受注したのは、談合により予め決められた業者

消防無線は、消防隊員等が全国のどこに応援派遣されても応 援先と通話できるよう、無線スペックを全国的に統一して共通化 『

無線スペックの統一規格を定めた共通仕様書』

一般財団法人 日本消防設備安全センターが作成 25

(28)

特定の業者しか対応できないような仕様書

発注者が外部に委託して作成した工事仕様書の中に、無線機 器の寸法、重量、消費電流等が具体的な数値で記載 工事仕様書の作成を通じて、公正な選定プロセスを経ずに 無線機器の製造業者を一社に特定してしまったのも同然 無線機器の寸法、重量、消費電流等は、全国的に統一する必 要が無いので共通仕様書に定めは無い。

製造業者の裁量によるバラバラの数値

消防救急デジタル無線機器の製造業者は、 『無線スペックの統 一規格を定めた共通仕様書』 を逸脱できない。 26

(29)

ア 外形寸法 :約2000mm(H)×約600mm(W)×約600mm (D)以下 イ 電源電圧 :DC-48V±10%以内 ウ 消費電流 :15A以下 エ 指令系向けインタフェース :音声系 OD、もしくはLAN : データ系 LAN B市消防本部の無線回線制御装置スペックの一部 ア 外形寸法 : 約高 1,900mm×幅 700mm×奥行 700mm 相当 イ 質量 : 約 215Kg 以下 ウ 電源電圧 : DC-48V エ 消費電力 : 480VA オ 温度条件 : +5~+35℃ A市消防本部の無線回線制御装置スペックの一部

特定の業者しか対応できないような仕様書の具体例

**製造業者の裁量に任されている寸法・重量・消費電流等を 仕様書に規定すれば、特定の業者しか対応できなくなる。 ** 27

(30)

製造業者の裁量に任されている

寸法・重量・消費電流等を、

仕様書に規定した原因・理由

詳細な設計図書(施工図面)に基づく「工事」を発注

詳細な設計図書(施工図面)の作成には、

無線機器の寸法・重量・消費電流等の規定が必要!

**実現を求める機能と性能を必要十分に網羅した

「性能仕様書」であれば、規定しなくても済んだ筈**

28

(31)

談合は、なぜ繰り返されるのか?

平成29年2月2日、 公正取引委員会は、 発注者側の自治体が、 「特定の業者しか対応できないような仕様書」で発注していた疑 いのある事実を認めたとして、発注者である自治体に対して今 後留意するよう連絡 「価格と技術の両面で競争原理が確実に働く性能仕様書」を作 成しない限り、全国の自治体には談合の餌食となる発注体質が 温存されたまま! 全国の自治体が発注した合計516件の消防救急無線デジタル 化工事は、平成28年5月31日までに全て完了

しかし、

このため、

29

(32)

工事請負契約 or 製造請負契約

競うべきは、設置工事の技術力か?

それとも、機器製造の技術力か?

(33)

工事請負契約と製造請負契約(1/2)

① 工事請負契約とした場合

*** 無線機器の製造請負と、その設

置工事を一本の契約で行うには ***

② 製造請負契約とした場合

・ 建設業者(電気通信工事業者)間での競争

・ 機器の製造請負は、工事に必要な業者準備品

として実施

・ 製造業者間での競争

・ 機器の設置工事は、製造した機器の附帯役務

として実施

31

(34)

工事請負契約と製造請負契約(2/2)

機器の製造に要する費用 と、

機器の設置工事に要する費用 を勘案して、

多額な方で競争原理を働かせる!

**費用対効果に優れた調達の実現には**

消防救急無線デジタル化整備では、機器の「製造請負」に要 する経費が「設置工事」に要する経費を大きく上回る。 競 争原理を働かせて費用対効果の最大化を図るには、「製造請 負契約」を選択して、「設置工事」はその附帯役務とすべき

全国の自治体が発注した合計516件の殆どが、

「工事請負契約」

ところが、実際には、

32

(35)

「工事請負契約」では、一般競争入札に参加するのは建 設業者(電気通信工事業者)

消防救急無線デジタル化整備における

「工事請負契約」の弊害(1/2)

無線機器の製造については、「業者準備品」としてのス ペックを満たせばよいため、製造業者を問わない。 無線機器の価格面と技術面について、製造業者間で競わ せることが困難 33

(36)

詳細な施工図面の作成には、無線機器の寸法、重量、消 費電流等の具体的な数値が必要 詳細な施工図面の作成に欠かせない寸法、重量、消費電 流等の数値を手掛かりとして、無線機器の製造予定業者 を特定できる仕掛けに悪用された。 発注者が工事仕 様書を通じて、特定の製造業者を恣意的に指名していたと 疑われかねない。 「性能仕様書」に拠らない「工事請負契約」では、無線機器 等の設置工事を詳細な施工図面により受注業者に指示

消防救急無線デジタル化整備における

「工事請負契約」の弊害(2/2)

34

(37)

「性能仕様書」による製造請負

過去最大の成功事例は「零戦」

(38)

研究開発・設計を含めた製造請負

を成功させるには

適切な「性能仕様書」

が欠かせません!

過去最大の成功事例は、

『零戦』

吉田一氏撮影 36

(39)

『零戦』

は、20世紀の世界地図を

塗り替えた、純国産の工業製品

発注者【旧日本海軍】 が、

ベンダー【航空機メーカー】 に求めたのは、

実現が容易ではないが不可能ではない高性能

理想的な「性能仕様書」で海軍は注文!

大石一空曹撮影 37

(40)

旧日本海軍の航空機発注方法は2種類

海軍航空技術廠の技術将校(大学の航空工学科等出身)が 作成した詳細設計図に基づき、航空機メーカーに製造を発注 実現を求める機能要件と性能要件を網羅した性能仕様書を 海軍が作成し、航空機メーカーに詳細設計と製造を発注

1 海軍で設計仕様書を作成して製造を発注

2 海軍で性能仕様書を作成して設計と製造を発注

海軍ではマイナーな発注方法

海軍ではメジャーな発注方法

38

(41)

出典 : Wikipedia

詳細設計図

1 海軍で設計仕様書を作成して製造を発注

(42)

海軍航空技術廠の技術将校(大学の航空工学科等出身)が 作成した詳細設計図に基づき、航空機メーカーに製造を発注

海軍が求める性能を実現する責任は、詳細設

計を行った海軍自らが負う。

価格面だけの競争になりがち

航空機メーカーは、海軍の設計仕様書のとお

りに製造すれば良い。

1 海軍で設計仕様書を作成して製造を発注

40

(43)

1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史

零戦の性能仕様書

2 海軍で性能仕様書を作成して設計と製造を発注

41

(44)

実現を求める機能要件と性能要件を網羅した性能仕様書を 海軍が作成し、航空機メーカーに詳細設計と製造を発注

海軍が求める性能を実現する責任は、詳細設

計を行った航空機メーカーが負う。

技術面の競争も実現

海軍は、最先端の技術動向と現場が抱える課

題を踏まえ、性能要件間のトレードオフ関係も

考慮して、実現が容易ではないが不可能では

ない性能仕様書を作成した。

2 海軍で性能仕様書を作成して設計と製造を発注

42

(45)

発注者に欠かせない技術力

シーズの把握力

発注対象に関連する分野の技術動向を把握する力

ニーズの把握力

把握したシーズで解決できる現場の課題を見極める力

シーズとニーズのマッチング力

現場の課題解決に適する技術を選択して、 その活用で期待される効果を的確に予見する力

*** 受注者側の設計・製造の技術力

とは、全く次元が異なる「技術力 」 ***

43

(46)

1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史

理想的な性能仕様書(シーズとニーズのベストマッチング)

44

(47)

発注者である旧日本海軍は、 ① 最先端の技術動向と現場が抱える課題の双方を研究し、 ② 性能要件間のトレードオフ関係を勘案し、 ③ 実現が容易ではないが不可能ではない性能要件を見究めて、 零戦の性能仕様書を作成した。

零戦が成功した最大の秘訣

零戦は、海軍による理想的な性能仕様書があったからこそ、航空 機メーカーが詳細設計で創意工夫を凝らすことができた賜物!

理想的な性能仕様書は、イノベーションを促進

** 理想的な性能仕様書を作成したこと **

45

(48)

理想的な性能仕様書を作成する3ポイント

性能要件間のトレードオフ関係上も、実現が不可能ではない こと

詳細設計に必要な性能要件を漏れなくリストアップ

踏み込めば受注者側の設計自由度を狭め、 性能要件の達 成責任の所在が不明確になる恐れ

詳細設計には踏み込まない

概要設計書には、 ①現状の問題点、 ②発注対象の概要、 ③期待される効果、 の三点を、一読してわかる文章で記載

事前に概要設計書を作成して発注者側の意志を統一

46

(49)

戦後、「性能仕様書」は影を潜めた

土木分野の「設計・施工分離の原則」が波及

(50)

戦後、「性能仕様書」が影を潜めた理由(1/3)

その

経緯

*** 公共工事の実施形態が

変化する中での出来事 ***

戦前

公共工事は、内務省、鉄道省及び農林省が、民間企業に発注す るのではなく、調査・設計・施工を直営で実施 官庁内部 の技官が道路や橋、公共建築物等を設計して、役務調達した人 夫を使って施工

戦後へ

48

(51)

戦後、「性能仕様書」が影を潜めた理由(2/3)

戦前から

公共工事の施工を外部委託化、次いで、設計も外部委託化

戦後

建設事務次官通達「土木事業に係わる設計業務等を委託する 場合の契約方式等について」の発出 「原則として、設計 業務を行う者に施工を行わせてはならない。」という、「設計・施 工分離の原則」が打ち出された。

昭和34年1月

この

結果

49

(52)

戦後、「性能仕様書」が影を潜めた理由(3/3)

「設計・施工分離の原則」は、土木のみならず

建築や製造請

負にも波及

必然的に設計仕様書一色となり、性

能仕様書は影を潜めた。

昭和34年1月の建設事務次官通達

我が国の常識である「設計・施工分離の原則」は、法律・政令・省 令に根拠を見い出せず、また、世界に通用するものではない。

しかしながら、

50

(53)

「性能仕様書」の復活

白紙撤回後の新国立競技場建設計画

(54)

公共工事に求められる「性能仕様書」

「競争参加者の技術提案を求める方式」 競争参加者から公平で必要十分な技術提案を求め る上で、

「性能仕様書」が必須となった。

**公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)**

平成26年の改正

により「多様な入札及び契約の方法」が追加

「設計・施工の一括発注」が法律で打ち出された。

* 白紙撤回後の新国立競技場建設計画に反映 *

52

(55)

当初の新国立競技場建設計画は

なぜ白紙撤回されたのか?

(56)

当初の新国立競技場建設計画

8万人を収容できる巨大で斬新なデザインの全天候型競技場 音楽コンサートなどにも活用 2019年のラグビーW杯 にも活用 非常にハイスペックであるが、限られた工期(42ヶ 月)と工事費(1300億円程度)を予定 出典: http://image.search.y ahoo.co.jp/search?rkf =2&ei=UTF-8&p=新国 立競技場建設計画

*** 「設計・施工分離の原則」に従い、

設計と施工を分離発注する計画 ***

54

(57)

提言・要望(

2012.08.28

新国立競技場等の整備に関する 設計、施工の発注方式の検討について(要望) 新国立競技場等の整備につきましては、新しい日本のシンボルとなるような、全く新しい国立競 技場が構想され、また、その整備の方法については、デザイン案の選定から完成までのプロセス をオープンにすることによってみんなで作り上げていくことが目指されています。こうした意義深い 今回の事業に対しまして、当会と会員各社は建設業に携わるものとして、可能な限りの貢献を行 いたいと考えています。 平成 24 7 20 日付をもちまして貴センターより公示のありました、「新国立競技場基本構想 国際デザイン競技」の募集要項では、基本設計以降の発注の方法については明らかにされてお りませんので、下記の通り要望いたします。 記 【要望】 新国立競技場等の整備に当たっては、基本設計以降は、設計と施工を一体のチームが担当する いわゆる「デザインビルド方式」など、施工上の技術・ノウハウを設計に早期に反映できる発注方 式を検討していただきたい。 【理由等】 新国立競技場のプロジェクトは、きわめて大規模な施設であること、開閉式の屋根など特殊な機 械装置が予定されていること、音響性能の確保、省エネ・緑化などの環境配慮に高度な技術を要 すること、敷地が神宮外苑という配慮を要する地区にあること、スケジュールがタイトであることな どから、あらゆる知見を動員して対応する必要のある案件です。こうしたプロジェクトにおいては、 設計段階の当初から施工・維持管理までを見通して、多岐にわたる条件に配慮しながら造り込む ことが不可欠であり、そのためにはそれを可能とする、いわゆる「デザインビルド方式」など、施工 上の技術・ノウハウを設計に早期に反映できる発注方式を検討することが必要であると考えます。 出典: http://www.nikkenren.com/news/youbou_page.html?ci=6 55

(58)

白紙撤回時の新国立競技場建設計画

当初の計画と比べて、デザインをコンパクト化し、規模も縮小 スペックの基本は当初の計画と同じ 工事費(約 3100億円)及び工期(66ヶ月)の縮減のため、開閉式屋根等の 設置は、オリンピック・パラリンピック終了後に先送り 工 事費(約2500億円)及び工期(44ヶ月) 出典: http://image.search.y ahoo.co.jp/search?rkf =2&ei=UTF-8&p=新国 立競技場建設計画

設計の度重なる見直しでは工事費を縮減できなかった

56

(59)

2012年11月、約1300億円(ザハ・ハディド事務所見積約900億円)

設計段階における工事費試算額の推移

2013年12月、約1600億円(自民党行革本部無駄撲滅PTの指示) 2013年 8月、約1300億円(文部科学省からJSCへの指示) 2014年 5月、約2500億円(基本設計受託者の試算) 2014年 8月、約2000億円(JSCから文部科学省への報告) 2013年 7月、約3500億円(フレームワーク設計受託者の試算) 2014年11月、約2100億円(実施設計受託者の試算) 2015年 1月、約3100億円(施工予定者のフルスペック試算) 2015年 6月、約2500億円(施工予定者の一部工事先送り試算)

2015

7

月、白紙撤回

2013年11月、約1800億円(フレームワーク設計受託者の試算) 57

(60)

設計と施工の

分離

発注

目的は、設計を発注する段階で競争原理を働かせ、施工を 発注する段階でも競争原理を働かせること

設計段階と施工段階ごとの部分最適化

標準化された工法が利用できる場合(誰がやっても同じ結果 が出せる場合)には、設計発注段階と施工発注段階ごとに、

価格面の競争原理

を働かせることは可能

そこで、

58

(61)

設計と施工の

一括

発注

標準化されていない最先端技術や、施工者に

よる施工上の創意工夫が必要な場合に有用

施工者が有するノウハウを設計に反映させるには、

設計と施工の一括発注による全体最適化が効果的

適切な「性能仕様書」が欠かせない。

技術面の競争原理も働く!

これには、

59

(62)

「性能仕様書」による

新国立競技場建設計画の再生

(63)

白紙撤回後の新国立競技場建設計画

デザインとスペックを全て白紙に戻す。 陸上競技用に的を絞 り、開閉式の屋根は取りやめ オリンピックに間に合わせる。 品確法の「競争参加者の技術提案を求める方式」に則り、 「性能仕様書」に基づき受注者を選定 工事費は約1500億円、 工期は2019年11月末 出典: http://image.searc h.yahoo.co.jp/sear ch?rkf=2&ei=UTF-8&p=新国立競技 場建設計画

*** 「性能仕様書」により、

設計と施工を一括発注 ***

61

(64)

平成27年8月28日 新国立競技場整備計画再検討 のための関係閣僚会議(第4 回)を開催 整備計画全体のコンセプトを取 りまとめた「新国立競技場の整 備計画」を決定 新国立競技場整備事業 業務要求水準書 平成27年9月1日 平成27年10月6日 (正誤反映) 平成27年10月22日 (正誤反映) 平成27年11月2日 (正誤反映) 独立行政法人日本スポーツ振興センター 平成27年9月1日 業務要求水準書(性能仕様書) に基づく公募手続の開始 62

(65)

A

B

項目 AB案 業務の実施方針 112 104 コスト・工 期 事業費の 縮減 31 28 工期短縮 177 150 維持管理 費抑制 44 50 施設計画 ユニバー サルデザ インの計画 48 53 日本らしさ に配慮した 計画 50 52 環境計画 54 50 構造計画 52 55 建築計画 42 60 合計点 610 602 出典: 日本スポーツ振興センターHP 出典: http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf= 2&ei=UTF-8&p=新国立競技場建設計画 63

(66)

「性能仕様書」で

発注業務は劇的に改善

(67)

「設計・施工分離の原則」に則り推進された当初の建設計画 設計段階での工事費見積額の膨張により、2年半の設計期 間と約60億円の設計委託費を全て捨て去る形で、平成27年7 月に白紙撤回

新国立競技場建設計画の教訓

品確法の「競争参加者の技術提案を求める方式」に則り、性能仕 様書を発注者自らが短期間で作成 平成27年9月に技術提 案の公募を開始 同年11月の受注者選定を経て、性能仕 様書に基づく設計・施工の一括発注により、何の滞りもなく建設工 事は進捗中

性能仕様書による一括発注の効能・効果を実証

65

(68)

豊洲新市場建設計画は、「設計・施工分離の原則」に最初から最 後まで則って遂行された。 結果は、発注の元締めである中 央卸売市場長が知らない内に市場棟地下には空洞が設計・施工 され、また、建設費用が当初予定の倍以上に膨らんだ。

豊洲新市場建設計画を振り返って

豊洲新市場建設計画が、白紙撤回 後の新国立競技場建設計画のよう に、性能仕様書で設計・施工が一 括発注されていれば、ここまで酷い 結果にならなかったのでは・・・ 出典: http://prt.iza.ne.jp

性能仕様書で設計・施工が一括発注されていれば ・・・

66

(69)

我が国では毎年、製造請負等の発注に莫大な金額を投入 「設計・施工分離の原則」の下で「設計仕様書」で発注す る限り、イノベーションの促進は期待できない。

性能仕様書による設計・製造一括発注の普及

「技術立国」を標榜する我が国で、莫大な金額投入がイノベーショ ンの促進につながらなければ勿体ない。 性能仕様書は、 費用対効果に優れた調達を実現できる。性能仕様書は、イノベー ションを促進できる。 「性能仕様書」が、我が国の発注業 務に幅広く普及することが望まれる。

製造請負にも波及した「設計・施工分離の原則」から脱却

67

(70)

過去の実績と成功体験に拘っていれば沈没する!

設計仕様書

性能仕様書

技術革新が加速

国際調達への対応

随意契約の縮減と一般競争入札の徹底

官製談合防止法への対応

PPP/PFIによる公共事業への対応

価格面の競争原理 しか働かない! 価格と技術の両面で 競争原理が働く! 68

官公庁発注におけるイノベーションの促進

(71)

平成

30年9月

澤田雅之技術士事務所(電気電子部門)所長

澤 田 雅 之

性能仕様書による

発注業務の劇的改善

【公共工事発注編】

*** 談合の温床を払拭 ・ 費用対効

果を向上 ・ イノベーションを促進 ***

参照

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