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視覚系のパタン処理機能の発達とその生理学的基礎 : X・Y細胞によるモデルの可能性

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(1)

The丿妙σ 輝5 ρ丿b鐸朗 σJ Of Psγchonemic  Seience 19B2

 Vol

1

 No

2

101

113

視 覚 系

機 能

発 達

生 理

学 的基

X

Y

細 胞

に よ るモ デル の

能性

一 一

東 京  大  学

The

 

Underlying

 

Neuronal

 

Maturation

 

for

 

the

 

Develop1nellt

 of 

Visual

 

Pattern

      

Processing

AModel

 

based

 on  

Differential

 

Contributions

      

of 

X

 

and

 

Y

 

Cells

Takao

 

SATO

翫 勿召rsity oTokyo

  

The

 

development

 of contrast  sensitivity  function CSF in human  infants is discussed in

terms  of the maturation  of X

and  Y

cells  

in

 the pri皿ary  visual system

 

A

 qualitative change

in

 

CSF

 takes place around  the second  postnatal month

 anCl results 

from

 recent  

developmental

studies  

in

 

human

 

infants

 and  kittens suggest  that this discontinuity reflects  development

within  the primary  v 三sual  system

 especially  a rapid エnaturation  of X

cells

 instead of the

shift  o 工dominant  processing role  fro皿 superior  colliculus  to  the primary   visual system

has

 

been

 suggested  

by

 several  authors

 

The

 other  prQble 皿

discussed

 

is

 the 

discrepancy

between  the deve!opmental  ptocess of human  acuity  reported  by behavioral studies  and  that

reported  by visually

evoked

potential studies

  To resolve  the issue

 human  and  cat data at both of the 

behavioral

 and   cellular  

Ievels

 were  considered

 

This

 suggested  that 

human

acuity  development  

is

 more  

likely

 to take place 

during

 the 

3−−5

 years period after  

birth

 as 三ndicated  by the behavioral studies  rather  than the 6 month  period suggested  by the 

VEP

studies

Key

 words :spatial  vision

 development

, visual pathway

 acuity

 コ ソ ト ラス ト感度曲線 (contrast  sensitivity   func

t三〇n 以 下 CSF と略 す )視 力 と な らび 視 覚 系のパ タ ン 処 理

と りわ け その生 理 学 的 基 礎 を考 えて行 く上で最 も基 本と なるデ

タ である

最 近の 乳児 を 用いた視 覚 機 能の発 達研究を見て み る と視力のみ な らず

CSF

発 達 に対する関心 が高まっ て い る こと が うか がわれる

これ は視覚系の達を生 理 学 的レ ベ ル で解 明し よ うとい う方 向のあ らわれ と見る こともで きるの であるが

残 念 なが ら大半は記 述 的 な 事実集め

カ タロ 作 り的 水 準に とど まり

理 論 的 枠 組み

生 理 学 的レペ ル で の発達のモ デル を 提 唱 するには至っ てい ない

研 究の数が増 えて来 た と は いえ ま だ欠けて いる デ

タ も多い現 状を考え る と

こ うした 企て は時期 尚早と 言 え るか もしれない

しか し, 現 在 入 手 可 能 な 限りの乳 児 発 達 研 究の結 果と細 胞 レベル で の発達 研 究の結 果 を 比較 検 討し

乳 児の視 覚 系のパ タ ン処 理 機能の発達に関 する生 理 学 的モデルの可能性を探 っ て み る こ と もあ なが ち無 意 味 とは言 えまい

 こ うし た観 点か ら

こ の小 論で は網 膜 神 経 節お よび外 側 膝 状 体 レベル で の

X ・Y

細 胞の機能と精神物理学 的

CSF

との 関 係を軸と して

視 覚 系の パ タ ン 処 理機 能の 発達に関 する生理学的モ デル の 可能性を考察し て み た い

こ こ で は まず大人の

CSF

に見ら れ る諸特徴を見た 上で

そ れ をX

Y 細 胞 系の働 ぎに よっ て説明するモデ ル を検討する

次 に乳 児に おける

CSF

の研 究お よ び ネ コ に おげる

X ・Y

細 胞の発 達 的 研 究の現 状を概観し

そ の上 で 人 間の視覚系の発達に見ら れ るい くつ かの特 徴 的 現 象を細 胞レ ベ ル の 発 達から説 明 する可 能 性 を 検 討して い くこ と に し たい

(2)

102

基 礎 心 理 学 研 究 第

1

巻 第

2

1・

コ ン トラス ト感 度曲線とは 何か   視 覚パ 処 理現 在2 れ てい る

ひ とつ は “ 特 徴 抽 出モ デル IJ と呼 ば れるもの で, これは視覚パ タ ン の処理 がパ タ ン の構成要 素と して の “特徴” (特 定の方 向の線分, コ

ー,

エ ッ ジ等)に 対応して反 応 する “ 特 徴 抽 出 器’ の活 動に よっ て媒 介 さ れる とするもの である

こ の モ デルを支持する実験 的 事 実は主に生 理 学 的 な もの, そ れ も皮 質レ ベ ル の細 胞の活 勦パ タ ンに関 するもの である (e

9

Hubel &

Wiesel,

1966; 1968)1)

  も うひ とつ は “ 空 間 周 波 数 分 析モデルtt と呼ばれるも ので

視 覚 系が まず空 間 周 波 数 分 析器(フ

リエ 分析器) としてき, 空間パ タン の持つ 様々の空間 周波数成分が い っ たんぽらばらに分解さ れ, そ れぞれ独 立に機 能 する “ 空 間 周 波 数チ ャネル/t に よっ て 処理 さ れ る と 考 え る

そして パ 知 覚は こ し た “ 空間 周 波数チ ャ ネル” の活 動に よっ て媒 介されると考 える

こ の “ 空間周波数 分析モ デル ” を 支 持 する実 験 的 事 実は “ 特 微 抽 出モデル

と は反対に精神物理 学 的なものが大 半 を 占め る

また, これ と関 連づ けて考え ら れる生 理 学 的デ

タ は今の とこ 〉 ト

≧ ヒ の z 田 り「 ト の く に ト zOo ]eo too 30 10 コ ・ ●

e

] ! 3 lo SPATIAL  FREQUENCY  

O

/D

Fig.1.

人 間 (成 人 )の CSF 30 静 止 (○)お よ び

10Hz

の時間変調を加え た場 合 (○の ロ ン ト ラス ト感 度 を 空 間 周波 数の関 数と して表 示してあ る

      (

Robson,

1966 よ り改 変 )

1

) 特徴抽 出モ デルの立 場を最も急 進 的に述べた もの と   し て Barlow (

1972

)がある

ま た皮 質 細 胞の特 性   に関して は深田 (

1970

)な ど を参照 さ れ たい

ろ皮質レ ベ ル に は少く

視覚系の宋梢部分つ ま り網 膜 神 経 節

外 側 膝 状 体の細 胞に関する ものが多い

と り わ け

最 近 盛ん に研 究 されてい る

X ・Y

細 胞の機能との 関連が 頻繁に論 じ られて いる2)

 こ の “ 空間周波数 分析モデル” に た っ て視 覚 系の機 能 を 考え て行 く上で最も基 本となる デ

タが “ コ ン ト ラス ト感度曲線

で あ る

.CSF

と は

言で言っ てし ま え ば 視 覚 系の空 間 正 弦 波パ タ ンに対 するコ γ トラス ト感 度を 空聞周波数に対し て プPt ッ ト し た もの である (

Fig・1

CSF を求め るにあ たっ て は, まず コ ン ト ラス ト の 検 出 閾が各 空 間 周 波 数ご と に求められる

方法と しては被 験 者 調 整 法が用い ら れる こ とが多い

こ うし てめ ら れ た コ ン 5ラス ト検 出 閾の逆 数がコ ン ト ラ ス ト感 度 (con

trast sensitivity )と して定 義 され

そ れ を 空 間 周波数 に対して プ卩 トし たものが CSF である

 

CSF

は 単に 静止 し た空 間正弦 波パ タン に対して求め る の み でなく, パ タ ソに時 間 変 調を加え た場 合に関しても求め る こと が 出 来び )

 空 間 正 弦 波パ う 日場 面で は の無い よ うな特 殊な刺 激を 用い て

CSF

を測 定 する意 義 と し て, 次の二点をあ げること が できる

に, CSF が多 くの

1

青報を非 常に要 約さ れた形で提供 する とい う点 で あ る

CSF

は 視 覚 系の扱い うる 空 間 周 波 数 全 域に関 する情報を簡潔に示し て くれ る

.一

視 覚 系のパ タン 処 理能力の 指 標と して最 も頻繁に 用い られる“ 視 力” (分 解 能 視力)は,後 述の よ うに視覚 系の扱い 得る 空間周波 数 範 囲の高 周 波 数 側の限 界に関 する情 報にす ぎない

し た がっ て

視覚系の発達過程

ま た弱視な どの視 覚 異常の 問 題な ど を 考えてい く上で

CSF は 視 力より もよ り豊 富な情報を与え て くれ る

第二 の意 義と して

シ ス テ ム の形 性を 仮 定し た な ら ば

正弦 波 パ ン の 検 出に関 する空 間 周 波 数 特 性 を 求め て おけば 他のあ らゆる 空 間 的波 形の 検 出 特 性 が 予 測 可能 となる ことがあ げ られる (

Campbe1

& Robson

1968 )

  Fig

1

に示し た

CSF

を少し細かく見て み よう

静 止 正弦 波パ タン に対 する特 徴 とし て以 下の ような ものが指 摘できる

視 覚 系の コ ン ト ラ ス ト感 度は

3

サ イ 2) 空 間 周 波 数 分 析モ デルを 支 持 する精 神物理学 的研究   の細 は

Braddick

 et aL 1978

市 原

1978

)な   を参照されたい

3)Fig

1

はコ ン ト ラス ト感 度を空 間 周 波 数の関 数と   し て表わし た もの で空 間

CSF

と 呼ぼれ る

 

CSF

を   時 間 周波数の関数とし て表わすこ とも行な われるが   (時 間

CSF

本 論では空 間

CSF

し ての み検   討 する

従っ て 以下, 空 間

CSF

を 省 略 し て

CSF

  と呼ぶ ことにする

(3)

佐 藤 視 覚 系のパ タ ン処 理 機 能の発達と その生 理 学 的 基 礎

103

クル /度 (cycles  per degree

以 下 cd と略 す )前後に おいて最 大と な る

こ の ピ

ク に対 応 する空 間 周 波数 を 最 適 周 波 数 (optimal   frequency> と呼

こ のような ピ

クが存在するこ とか ら CSF 全体の形は逆U 字形と な り

視覚系が空 間 周 波数に対して 帯 域 濾 波 器 (band

pass 

filter

>的性を持つ こ と を示し てい る

コ ン トラ ス ト度は, 最 適周波数より高周波数 側では は じめゆっ く り, その後急激に 理論 的最低値である

1.

0

に向っ て低 下し て

(コ ン ト ラス トを

1

以 上に あげること は出 来 ない こ とか らコ ン bラス ト感 度の理 論 的 最 低 値は

1

とい うこ とになる

)こ の コ ト ラス ト感 度

1

の点が視覚系の 空 間 的分解 能の限 界で あり

こ の点の空 間 周 波数が分解 能 視力の推 定 値と な る

.一

最 適 周 波 数 よりも低い 側 におい て もコ ン トラ ス ト感 度は低 下 する

こ の低 周 波 数 域に お け る感 度 低 下は視 覚 系 内 部の細 胞 レベ ル で の側抑 制過程の働 きに よ るもの と考えられて い るの

 空 間正 弦波パ ン に時問変調を加え る と

CSF

の 形は か な り変 化 する

こ の 変 化は次の 4点に要 約で き る

ま ず 最 適 周 波 数に おける絶 対感度が低下する

そ し て最適 周 波数 自体 も低 下 する

ま た高空間周波数域に おけ る感 度低 下に顕 著 な ものがあり

その結果視力推 定値 も 低 下 する

, 時 間 変 調周波数を高くし てい くと視覚系 の 空 間 的 分 解 能は悪 化する と 言 うこ と がで ぎる

.一

低 空 間 周 波 数 域に おける感 度は逆に上 昇 する

その ため に

CSF

全体の形 としては空 間 周 波 数に対して右 下がり の 低 域 濾波器 (low

pass 丘lter) 的 特 性 を示し

静 止 時 の 域 濾波器特性ときわ だっ た対 照を 示すようになる

 こ の よ う に時 間 周 波 数の効 果は空 間 周 波 数に依 存 す る

こ の 空 間 周 波数と時 間周波 数 との 間 の 交 互

f

乍用 (spatio

temporahnteraCtiQn

空 時 交互作 用 )は, 視 覚 系のパ タ ン検 出 機 構を考え てい く上 で, と りわ け その生 理 学 的 基 礎を考 えてい く上で, 重要な 手 が りを与えて く れる

4) 網 膜 神 経 節

外 側 膝 状 体の同心円状の受 容 野を持つ   細 胞に空 間 矩 形 波 (白黒 縞パ タ ソ)を on

off 提示   し た場 合を例と して考え よう

もしこ の細 胞が興 奮   性の中心野の み を持ち

抑 制 性の周 辺 野を持た ない   とする と

矩 形 波パ タ ン の 白色 部の巾 が 中 心 野の直   径と等しく

位 置も ぴっ た り重なっ た場 合に その細   胞の活 動は最大と な る

ま た矩 形波パ タ ンの空 間 周   波数を低 くし て白色部の巾が中心野直径よ りも広 く   な り, 白色 部が中 心 野か らはみ出した と し て も, 中   心 野 が 白色 部に お おわ れて い ることに は変 わ り無   く

その 細 胞の活 動は最 大レベ ルに保たれる

し か   し

周 辺に抑 制 野がある場 合には

白 色 部 が 中 心 野   からは み出すと, その分だけ抑 制性の周辺 野 を 刺 激   し, 結 果と し て その 細胞の活 動 総量 は 低下 する

2

CSF X

Y 細 胞  人 間の コ ン ト ラス ト検 出の機 構 を 生 理 学 的レ ベ ル で理 解し よ う とする場合まず 必 要になるのは

人 間の

CSF

に 関 するデ

と くに空時交互作用 とい っ た特 徴 的 な 現 象と, 主 と し て ネコ か ら得ら れ てくる細 胞レ ベ ルのデ

タ と を関連づるこ と が可能か どうかを 検 討 する作 業で ある

現 在こ の方 向で最 も有力と 思 わ れ る考え方

e

: CSF に関 する精 神 物 理 学 的デ

タ を

X

細胞

・Y

細 胞とい うネ コ の視 覚 系の比 較 的 末 梢レ ベ ル

つ ま り網 膜 神 経 節お よ び外 側 膝 状 体に お い て見 出さ れ る2種のに異 な っ た 細 胞の活 動 と結びつ けて考 えよ う とするもの である

 ま ず

,X ・Y

細 胞につ い て 簡 単な説 明 を加えよう

Enroth

−Cougell

& Robson 1966)はネコ の網 膜 神 経 節 細 胞の受容野内に お け る空 間 加 重の形 性を検 討し た

そし て, 神 経 節 細 胞 が 空 間 加重が線形の もの (X 細 胞 )

と非 線 形の もの (

Y

細胞)に 分類で ぎるこ と を報 告し た5)

その

こ の

X ・Y

細 胞は数年間わす れ られた存 在で あ

っ た が

 

Fukada

 

(Fukada

1971

 Levick 

Cleland

et al

,1971

研究を契機と して脚 光を浴び はじめ, 現在で は視覚系の生 理学 的研 究に おける中 心 的 な話 題の

となっ て いるfi)

その後, X

・Y

細胞は神 経 節 レ ベ ル の み で はな く外 側 膝 状 体に も存在し, ま た 両レベ ル 間の 結 合が X

X

Y

Y の排 他 的 な関係に なっ てい るこ と が見 出さ れ

視 覚 系 内 部に X系

Y 系と も呼べ るサ ブ シ ステムが 存在 する とい う考え方が支配的になっ て来 た

しか し

こ の並 列 関 係が皮質レ ベ ル でも保た れ てい 5) 空 間 加 重の線 形 性の検 討には ヌ ル = ス ト (null

  test い う方 法が用い られる

こ の方 法で は

ま   ず 位 相 反 転 を繰 り返 す 空 閲 正 弦波パ   胞の 発 火を 記 録 する

次い で パ ン の 間 的 位 相

 

(位 置)を ゆ っ く り と変 化させ る

もし受 容 野 内の空   間加 重が線形であれば 中心

周 辺の 興 奮

抑 制 過 程   が平 衡し, 位相反転に 対し て発火の 無くな る位 置   (null

positionがある

こ の よう な平 衡 状 態のある   細 胞 をX 細胞

そ れ以 外が Y細 胞と名づ け られた わ   け である

その後 他に も多 くの分 類 基 準が発 表 さ れ

  てい る が, Hochstein &

Shapley

(1976a;1976b >   は線形 性に よる 分 類 が最も信 頼できる こ と を示し

  た

し か し実際の生理 学 的 研 究におい ては他の数 種

  の基 準を 並 用 し総 合的に判 断 すること が多く, 線形

  性 基 準を 用い る研究はむしろ ま れで あ る

6)こ の 2 種の細 胞に関し て は

X −

Y の 他に も 

Type

  I

−ell

(Fukada ,1971), sustained

transient (Cleland  et aL

,1971

) 等の称が

しか し, 現在で は  

X ・

Y が最も広 く用い ら れ てい ること か ら, ここ で

  は

X ・

Y を用い る ことにする

これ らの名 称

分 類

 法に関 する技 術 的 な詳 細は Rowe & Stone (1977)

(4)

104 基 礎 心 理 学 研 究 第 1 巻 第 2号 るの か X

Y 系のがい かに し て統 合されてい の か と いっ た 問 題は

未だ 解明さ れ て い な い (

Lennie,

1980

を参照)

 

X ・Y

細 胞1こは線 形 性 以 外に も多くの 特徴的な属性が あ り, 簡潔かつ 明 確 な 定義づけは きわめ て難し い

しか し, CSF との関 連で考 え る場 合には

両 細 胞の空 間

時 間 周 波数特 性の的 な 差に着 目する ことが多い

つ ま り 細 胞レベ ル で の

CSF

に注 目する わ けである

 

X ・

y

細 胞 の間の こ うし た側 面での質的な差は次の三点に要 約 する こ とが できる

に,

X

細 胞は空 間的な分解能がす ぐ れてい る, つ ま り高い空 間 周 波 数 まで応 答 す るこ とがで きる が

時 間 周 波 数に対 する応 答 特 性はあ ま りよくない

第二 に

Y 細 胞は X細 胞に比べ て空 間 的な分解 能で は るが

より高い時 間 周 波 数 まで応 答 することがで きる

最 後に

X 細 胞の空 間 周 波 数 特 性

つ ま り細 胞 レベ ルでの

CSF

はピ

クを持っ た逆 U 字形の帯 域濾波器的特 性を 示 す が

,Y

細 胞で はこれが 右 下 が りに

様に感度の低 下 す る(従っ て特に ピ

クは ない)低 域 濾 波器的特性を 示す

  こ の ことか ら明 らかなように

X 細 胞は時 間 周 波 数の 低い場合の人 間の

CSF ,

ま た Y 細 胞の特 性は時 間 周 波 数のい場合の人間

CSF

と類似してい る

こ の 事実 に基づい て時 間 周波数の低い時の

CSF

 

X

細 胞 系

また時 間 周 波 数の高い時の CSF はY 細 胞に よっ て媒介 されて い る とい う考え方が提 出さ れて来た (例えぽ Tol

hurst,1973

 こ の考え方をこ こ で は “X

Y モ デル” と呼ぶことに しよう

こ の

X ・

Y モ デル は前に述べ た 空 時 交 互 作 用

ま り時 間 変 調 周 波 数 を 高 くすと 高 空 間 周波数域で の感 度が低 下し

低 空 間 周 波数域で は逆に感 度が上 昇 す る とい う現 象 をかな り良 く説 明で きる

 まず

X

細 胞のほ う が

Y

細 胞よ り も空間 的 分解 能に優れ てい る, つ ま り高空間周波数域で は

X

細胞のほ うが コ ン ト ラス ト感度が高い

このこと か ら, 時間周波 数を高く して い っ て コ ン ト ラス ト検 出の媒 介の主体が

X

細胞系か ら

Y

細胞系へ る と , 視覚系 全 体と しての高空間周波 数 域で の コ ン ト ラス ト感 度 が 低 下し

空 間 的 分 解 能 も悪 化する

.一

低 空 間 周 波 数 域ではY 細 胞のほ うが感 度 が高い こと から, 時間周波数を高め る こ とに よっ て

X

系 か ら

Y

系へ 媒介の 主 体 が 移る と

高 域の 場 合と は逆に 視 覚系全体と しての コ ン トラ ス ト感度も上昇する とい う わ けで ある

 こ の

X ・Y

モデルは なかなか説 得 力のある議論で はあ る が

二つ の弱点を持つ

人 間と ネコ との間の種 間 差の問 題であ り

第二 は生 理 学 的 レ ベ ル と精 神 物 理 学 的レ ベ ル を 単にデ

タのかけ上の行関のみ か ら結 びつ けて考 えて よ い の か とい うレ ベ ル の問 題である

 まず 種 間 差の問 題で ある が, 今の ところはあ ま り問題 で はない よ うに思われる

精神物理 学 的レ ベル で は

行 動 的に測 定さ れた ネコ のCSF は人 間のもの と定 性 的に は非 常に類 似 な もの である (例 えば Blake et al

1974

また空 時 交互作用 も行 動 的に検 討 されて おり

結 果はや は り人 間 と 非 常に よ く 似て い る

(Blake & Camissa

1977)

ま り

理 学 的 レ ベ ル 上で ネコ のデ

人間の デ

タ の 相似 関係が成 立し て いる わ けである

次に, 生 理 学 的 レ ベ ル に おいても,

X ・

Y

細 胞に関しては並 行 関 係が成 立 する ようである

現 在の とこ ろ, サ ル の視 覚 系に もネコ と類 似の X

Y 細胞が 存 在 する とい うの が ほ ぼ 定 説 となっ て いる  (例 えば

Dreher

 et aL

,1976

し たがっ て現状で は

種間差は ネコ に おける生 理 学 的 知 見を人 間の精 神 物 理 学 的デ

タ と結びつけ て考え るこ と を積極的に さ ま たげる根拠に は な ら ない と結 論で き る だ ろ う

しか し ネコ サ ル (人 間 も含め て)の問の 系 統 発 生上のへ だ た り ま た者の視 覚系の構造上のへ だた り等を考え た場 合以上の程度の根 拠で は依 然 危 険な賭である わ け で

ネコ の 視 覚 系 が 人 間 の視 覚 系の動 物モ デル て妥 当 な もの であるか否かと い う問 題は常に注 意 深 く検 討しなお し て いな くて は いけ ない問 題で あろう7)

  次に生 理 学 的

精 神 物 理 学 的 両レ ベ ル の レ ベ ルの 聞 題 を 考 えて み よ う

CSF に関 する X

Y モ デル は

Barlow 1972の 言 う とこ ろ の “ 最 高 感 度 細 胞 原 理” (the mQst  sensitive  neuron  principle)の パ タ ン検 出 事 態へ の 適用 と 言 うこと が で き よ う

最 高 感 度 細 胞 原 理「t とは, ある刺 激に対 する精神物理学 的な閾はそのシ ス テ ム で その刺激に対し て最 も感 度の高い細 胞の感 度 に配さ れ る, 従っ て 刺 激パ ラメ タ

閾 値 間の 関 数はそ のシ ス テ ム内の個々の細 胞の感 度 曲線の包 絡 線と して考 え ら れ る とい う ものである

.CSF

に即 してる な らば, 時間 周波数の場合には全体的に見て

X

細 胞のほ うが

Y

細胞よ りも空間パ タン に対する感度が高い , 従っ て CSF は個々の X細 胞の感度 曲 線の包 絡線と なる

.一

時間周波数の高い場合に は,

Y

細胞のほ うが高感度と な り

,CSF

Y

胞群の感度に よっ て規定さ れる ように な る とい うわ け で あ る

 こ の生理

心理 結 合仮説を最も直接 的に検討す る た め には

,X

細 胞のみ

ま た は

Y

細 胞のみ か ら成る視 覚 系を 作 り出し

その場 合の

CSF

が どの よ うな もの に な る か を調べ る こ と で あろ う

Blake & Di 

Gianfilippo

1980

)は

X

細胞, ま たは Y 細 胞を選 択 的に取 り除いた 7)Blake (1979)は人 間とネ コ の視 覚 系を比較し

両者   の並 行 関 係 を 認め る立 場か ら詳しく論 じてい る

(5)

佐藤 :視 覚 系の パタ ン処 理機能の発達と その生 理 学 的 基 礎

105

      50     10     5     1 > ヒ ≧ ト

の Z ] の ト の く 匡 ト ZOO

O

Z5    0

5     1

0     2

0     4

0       SPA 丁

IAL

 

FREQUENCY

 

O

D

    Fig

2a

  X 細 胞のみ を持つ ネコ の CSF 極 端 な視力の低 下が認め られる

自矢 印は正 常 なネコ の 視力

ま た空 時 交彑作 用が

全 く見 られ ない

      (Blake & Di Gianfilippo

1980

i

8

        AM       1   亠

_

_

__

__■

_

__繭_

幽脚

      e

a5    0

5     LO    zo      Fig

2b

  Y 細 胞の み を持つ ネ コ の CSF 高 空 間 周 波 数の み で

時 間 周 波 数が低い場 合に コ ン トラ ス ト感度が著し く低 下する

      (Blake &

Di

 

Gian

正iiippo

,1980

ネコ を 用い て動的 CSF を 測 定し

 CSF に関して

高感度細 胞 原理” り 立 つ こと を 示 してい る

.X

細 胞のみ を持つ ネコ (暗 中飼 育に よっ て

Y

細胞 系の機能を 選 択 的に低 下させ る)の場合に は, 空時 交互作用 が完全 に失 する

つ ま り時問周波数を高め てい く と

CSF

の 形態に は変 化が な く

様な感 度 低 下 が 生じ る (

Fig.2a

ま た

,Y

細 胞のみを持つ ネコ 網 膜 中破 壊 する こ とに よっ て

X

細 胞を選択的に破 壊 する)の場 合

最も劇 的 な変化は時間周波数の低いに空間的 分 解 能 が 大巾に

低 下 する こ とで ある (Fi9

 2b

Barkley

SPrague

1979

)も皮質

17

野を破壊し

X

系か らの入力を除いた ネコ に関し て ほぼ 同様の結 果を報 告し てい るS )

 こ の よ うに Blake & Di GianfilipPo(

1980

のデ

タは

完 全 な もの とは言 え ない もの の

入 間の

CSF

に 関 する

X ・Y

モデルがお おす じに お い て妥 当 な もの であ るこ と を 示唆してい る と言え よ う

  次に

この

X ・Y

モ デル が 人 間の CSF の発 達 を 説 明 するもの として適 用 可 能であるか

ま た逆に人 間の

CSF

発 達の デ

タ とネ コ の細 胞レ ベ ル で の発 達に関 する デ

タ をつ きあわ せ て いこ と に よっ て人 間に おけるX

Y 細 胞系の発達過程 を推察してい くことが 可 能で あるか と い っ た 問 題を検 討して行きたい

まず次節では, これま で発 表 されてい る人 間の

CSF

発 達に関するデ

タ を概 観して みたい

3

乳 児に おける

CSF

の発 達  乳 児における

CSF

の発達 研究は用い ら れ る手 法に よ っ て大 ぎ く2つ に分 ける こ と がで きる

の 手法は行 動 的なもので選 好 注 視 (preferential looking

以 下 PL と略 す )と呼ばれるもの であ り

第二 の手 法は電気生 理学 的なもの で頭 皮上か ら記 録し た 視 覚 誘 発 電 位 (visua11y evoked  potentials

以 下 VEP と略 す)を用い る もので あ る9 )

PL 法とは

言で述べ れば

パタ ン野と

平 均 輝 度をパ タン野と等しくし た

様 な 非パ タ ン野と を 並べ て 同時に提 示し

パ タン野

非パ 野 間弁 別成 立 て い る か どうか を乳 児の注視反 応を利用して調べ の である

こ のPL 法は さ らに 2つ の タ イプ に分け ら れ る

Banks & Salapatek

1976

1978

は刺 激の対 提 示後 最初の注 視 方 向を乎がか り として 用い る方法を使っ てい る

他の PL 法に よ る CSF 研 究はすべ てケ ン ブ リッ ジ 大 学の

Atkins

。n らの グル

プ (

Atkinson

 et al

1974

Atkinson

 et aL

1977a;1977b)に よ るものだ が

彼女 らは Teller (1973; 1979)に よっ て開 発さ れ た強制 選 択

PL

法と呼 ばれ る方 法を

貫し て用いてい る

 

方 VEP 法 に よ る 研 究 は すべ て定 常 (steady  state )

VEP を 用い たもの で ある

ま た後 述する

Pirchio

らの 研 究を除く他の研 究 (

Atkinson

 et aL ,

1979

Harris

et al

,1976

はすべ て

Campbell

Maffei

(1970)に よっ て開発さ れ た方法に従っ て い る

こ の方 法で は

ま ず各 空 間周波数ごとに い くつか の コ ソ ト ラス ト値 を 用い て コ ン ト ラス ト対VEP 振 幅の関 係を求め , 次にその関 係 を 外挿し て振 幅ゼ 卩 に 対 応 する コ ン ラス ト を計 算 し

それを コ ン トラス ト閾とする方法である

し か し 8)サ ルの場合ほ とん どすべ ての外側膝状 体 細 胞は皮質   17野に投 射 する。 ネコ の場 合

X

細 胞はすべ て

17

野に   投射する が

Y

細 胞は

17・

18・

19

野に投 射 する(Lennie

  1980 参 照 )

9

)これ らの方 法は視 力発 達の 研 究に用い ら れ るもの と   同様の もの で あ る

技術 的な詳 細は Dobson &

 

Teller

1978

 

Atkinson

Braddick

1981

(6)

106

基 礎 心 理 学 研 究 第 1巻 第 2号

Pirchio

 et al. (

1978

)は上記の本格的方 法で は な く

若 干 簡 略 化し た手法 を 用い て お り, デ

タの細 部に関し ては信 頼 性に欠 ける可 能 性がある

彼 らの用いた方法は まず1つ の空 間 周 波 数に お い て Atkinsen ら と同じ方 法で コ ン ト ラス ト閾を求め た後に

定の コ ト ラス トで 各 空 間 周 波 数に おける

VEP

波を記 録し, その

定の コ ン ト ラス ト値に対 する

VEP

波の振 幅の相対値を も とに 各空間周 波数におけるコ ン ト ラス Fを推 定 する とい う ものである

 

PL

法に よ る結果と

VEP

法に よ る結果は, 生後の早 い 時 期に 関し て は か な り良 く

致 する

こ の時 期の

CSF

達に関し て最 も重 要 とお もわれる事は

生後 1ケ 月から

2

B

の期 間に発 達 上の不 連 続 が 認め られる とい う点で ある

Atkinson et al

1979ヵ:そ れ まで の彼 女 ら自身に よ る研究結果を要約し た 図 (Fig

3)に もその不 連 続は

はっ き り と表われてい る

こ の図に含ま れ てい る

CSF

は すべ て生 後

2

ケ月以 前のもの であり

方 法 的 に は PL 法 (b

 f

9) とVEP 法 (a c d eに よ るの が混 在してい る

まず 生後約

1

ケ月までの デ

タ (a

d)に共 通に見 られる特 徴 を 調ぺ て み よ う

こ の グル

出生 直 後 (数 日以 内 )の新 生 児の

VEP

法に よ るデ

タ か ら生 後 5に お

PL

よ る

タまでが含 〉 ト

の Z 凵 の   ← の { 匡 ト ZOO

10

5 2

o

1

O。

51

2

SPA

丁IAL  FREOUENCY   

C

D5

  

Fig.

3

乳 児 (生後 2 ケ月 まで

CSF

発達 実 線はすべ て VEP 法

破 線はすべ て PL 法に よ るデ

タ であるこ と を示 す

a

 

VEP

法に よ る新生 児の平均値 (

N

97

b,PL

法に ょ る 5週の平値(N

9);c

被 験 者 NB の生 後3週に おける VEP デ

タ ;d

被 験 者 DP の生後 3週に おける

VEP

タ ; e

被 験 者 NB の 生後

7

週に おける

VEP

タ ;f

 PL 法に よ る

8

週 児 の平均値 (

N

9,3Hz

9,

被験者

NB

生 後

9

ける

PL

法デ

10

 

Hz

間 変 調 周 波 数は特 記 ある 場 合を除き

PL

法は

311z

VEP

法は 10 Hz で ある

        (

Atkinson

 et aL

,1979

よ り) ま れる

に 目につ

低 空 間 周 波 数 域 (o

5c

d

以 下)で の コ ン ト ラス ト感 度多少発達見 られ の の

空 間 的 分 解 能 (視 力)は生後約

1

ケ月 間ほ と んど発 達を 示 さない

こ の デ

タ に見る限 り新 生 児か ら5週 児まで の視 力 推 定 値はすべ て LOc /d 付 近に集 中して い る

第ご に特 徴 的 なこ とは生後約

1

ケ月まで の乳 児の CSF 空間波数に おける コ ン ト ラス ト感 度 の低 下が ほ と ん ど ない こと である

わずかに生 後 第5週 におい てその徴候を示し はじめ る

 生後約

2

ケ月に な る と,

1

ケ月まで の値と比べ て コ ン トラス ト感度に関し ても

ま た視 力 推 定 値に関し ても2 倍以 上の 激 な 発 達を 示 し て い る

ま た Fig

3f に端 的 に見 られる ように生 後

2

ケ月で はかな りは っ き りとし た 低 域での感度低 下が認め られ

CSF

が成 人の もの の よう な逆U 字 形になっ てい る

そ れ と 同時に

Fig

3f (

3

 

Hz

の時 間 変 調 ) とF孟9

39 (10Hz の時間 変調)を比べ み ると 明 らかなよ うに

生後 2ケ 月においては成 人の場 合と同 様の空 時 交互作用が存 在 する

 生後

1

と3ケ月の乳 児 を 用い て PL 法}こよる

CSF

測 定 を 行っ た

Banks

Salapatek

1978

) も

Atkin・

son ら の

タ にら れ る 同 様 な 質 的 差 異 を

1

月 児と3ケ月 児の 間に出し て い る

ま た Atkinson et al

(1977a)は低域での感度低下の発達を生後

1

ケ月

2

ケ月

・3

ケ月の乳児を対象に詳し く検討し て い るが

こ の 研 究に おい ても

1

月 児に お い て は低 域で の感 度 低 下を示 す証拠は全 く無いが, 2ケ月

3ケ月に お い て は そ れがは っ きり と存在する こと が認め ら れ た

 以 上 見て来た よ う なこと か ら, 生後

1

ケ月 目か ら2ケ 月 目ま での 間に視覚系の発達の上で大 きな 質 的 な 変 化が あるとい うことはほぼ まちがい の無い ところ であろ う

と りわけ,

2

ケ月 以 降に おける低 空 間 周 波 数 域で の感度 低 下の 出 現は注目 に値 する

な ぜ な らこれは視 覚 系内 部 での側抑制プロ セ ス の発達を 示唆する からで ある (脚 注 4参 照 )

ネコ にお け る細 胞レベ

節 参 照 )を参 考にするり, こ の 側抑制の発達はまず網 膜 神 経 節レベ ルで

次いで外 側 膝 状 体レ ベ ル で起こる も の と推定さ れる

 

2

ケ月目以降も,

6

ケ月 目位 ま でのあいだ視 覚 系は か な り急速な発達を続ける

.Fig.4

に示 し た Pirchio et al

1978)の

VEP

に よっ て測 定され た CSF の発 達 デ

タはこ の間の達を はっ ぎり と見せ てくれる

た だ し

前に も述ぺ ように こ の

Pirchio

らの実 験は略 化 さ れ た方 法でコ ン トラス ト閾を求め てい るの で少々 注 意 が必 要であろう

特に低 域で の感 度 低 下の深さ, 視力推 定 値な ど が過 大に示さ れてい る可能 性が あ る

(7)

佐藤 :視 覚 系のパ タ ン 処 理機 能の発達 と その坐 理 学 的 基 礎 107 〉 卜

の Z 国 の ト の 《 匡 ト ZOO 50 2010 5 2 102     05    1    25    10   20 30

    

SPATIAL

 FREQUENCY   O/

D

Fig

4

2ケ月 以 降の CSF の発 達 (

pirchio

 et al

1978

よ り改 変 )  2ケ月 以 降の時 期に関して は PL 法に よっ て求めた視 力 発 達の デ

タ と

VEP

法に よ るもの との間に大 き な不

致 が ある と 重 大問題

こ の問 題 再 終 節で論 じること と して次節で は ネコ の視 覚 系に おけ る

X

細 胞 系と

Y

細 胞 系の 発 達 を 検 討してみ たい

4

X

Y 細 胞の発 達  

X ・Y

細 胞の発 達に関 する研 究はい ま だあま り豊 富と は 言えないが, ここで は現 在入手叮能な もの に つ い て X

Y細 胞 系の発 達の順 序お よびそ れ ぞ れの空 間パ 処 理 能 力の発 達の 二 点 を重 点に検 討してみ たい

 まず 網 膜 神 経 節 細 胞に 関 する デ

タ を見て み よう

Rusoff

Dubin

1977

は生後

3

週から

7

週のネコ の 神 経 節 細 胞を X

Y に分 類 すること を試みた

彼らの 告に よ る と, 生後 第 3週で は X

Y へ の分 類は ほ とん ど 不 可能である が

4

週に入 る と

部の細 胞に 関し て そ れが可 能と なっ て くる

第 5週に なる と大 半が分 類 可 能 となる が, こ の 時 期に

Y

細 胞よりも

X

細 胞の ほ うがよ り 多 く観 察されて い る

これは

彼 らの研 究 が 網 膜 中心部 (area  centralis 外 側な わ れてい る事と考え合わ せ る な らぽX細 胞の発 達がY 細 胞の発 達に先 行 するこ と を 示 唆して い る と考 えて よ いだ ろう

成 体に おけるX細 胞の 分 布は 網 膜 中心部 内に 集 中し て お り(Fukuda &

Stone,1974

)ま た網膜 細 胞の解 剖学 的 発 達は まず 中 心 部 の発達か ら始ま る と 言 わ れ る (

Donovan ,1966

  Rusoff らは受 容 野 中心 部

周 辺 部の 発達過 程 も 検 討 して いる

生 後3週に お い て は受 容 野 中 心は非 常に大 き い のだ が

その後 第4週に かけて急 速に発 達 (縮 小 )し

X ・Y

細胞と も に第

4

週のり に は成体の に匹敵 する大 ぎさに な るもの も観 察さ れ るに至 る

その後

発 達 速 度は鈍 化を示 すが第

7

週で受 容 野 面 積の分布は成 体 の もの に かな り近い もの と な る

また受容 野 中 心の 大 き さに関し ては, 第

4

週 以 降, 分布に重 な りはあるもの の

般 的に はX細 胞Y細 胞 りも小 さな 受 容 野 中 心 部 を 持つ い う成 体 同 様の関 係が察さ れる

 

受 容 野 周 辺 部の発 達は 中心部に比べ かな り ゆっ く りし たもの である

生 後3週か ら4週に か けては受 容 野周 辺部が機能し て いない細 胞が大 部 分で あ り

た とえ 機 能し てい る場 合に も面積は極端に大 ぎい

その周 辺 部の機 能し てい る細 胞の比 率は向上 し, 周 辺部の大きさ も縮 少 傾向を示 す が, 7週に お い て も その面 積は成体 の もの に比べ は る か に 大 き

は中心部の面 積が

7

週で成体の もの に ほぼ匹敵することと対照 的である

Hamasaki &

Flynn

1977

)お よ び

Hamasaki

Sutija

(1979)も受 容 野 構 造の発 達 過 程に関しては

以上のべ Rusoff の 結 果と ほぼ 同 様の 報 告を し てい る

  次に外 側 膝 状 体 細 胞 を 考 えてみ よ う

Daniels et al

(1978)は生 後 6日か ら40日まで のネコ を 用い て外 側 膝 状 体の X

Y細 胞の発 達 過程 を検 剖し て い る

彼らに よれ ば 生後

3

週 以前では

X ・Y

細 胞へ の 分 類はきわめ て困 難 である が

こ の時 期に お い て分類可能な もの の半はX 細 胞だっ た

その後も

受 容 野中心 部 面 積の縮 少 周 辺 離の機 能 発 現 などの生 理 学 的 発 達はすべ てX 細 胞に現わ れ

次い でY細 胞に 出 現 する

つ ま

,Danie

]s らの外 側 膝 状 体に おける研 究 もX細 胞の発 達が先 行 する ことを 示唆してい る

 

X

細胞 は第

4

週の後 半ま での 時

mete

か な り急 速な発 達 を 示 し,成 体におけるもの に近い機能を 示すようになる

受 容野中心部の面 積の縮少

周辺部の制機能の 出現

光 刺 激

電 気 刺 激へ の反 応 潜 時の短 縮 など がこ の時 期に認 め られる

ま たこ の時 期は視 神 経の ミエ リン 化の完 了 す る時 期と ほぼ

致 する

Y細 胞で は5

6週におい て上 記の X 細と同 様の発 達め ら れ るが

6

週のりに おい ても 細 胞の成 熟 度は X 細 胞に 比べ て は る か に低い

また,

Danlels

らは外側膝状 体 細 胞と そ れに 入力を送る 視 神 経 末 端 (神 経節細胞)の両者か らの同時記 録を行な い

網 膜 神 経 節 細 胞の発 達は外 側 膝 状 体 細 胞の発 達より も相 当程度 先 行 する と結 論し た

 以上見て来た研 究 結 果を総 合 する と

ネコ に おい ては X細 胞系は生後

4

週前 後に急 激な発 達を とげ主要な 生 理 学 的機能が 出 そ ろ う が,

Y

細 胞 系で は そ れが 少 くと も

1

週 間は遅れ る

ま たそのもか な りの期 間にわ たっ て Y 細 胞系の成 熟はX細 胞 系よ りも 遅れる と考える こと がで きそ うで ある

しか し

これ らの細 胞レ ベ ル で の発達研 究は精神物理学 的レ ベ ル で の発達デ

タ との 関 係, また

X ・Y

細胞系の 視 覚 系 内に お け る役 割な ど に関して直 接

(8)

108

基 礎 心 理 学 研 究 第

t

巻 第

2

号 役に立つ 情 報もた らして くれるとは言い難い

受 容 野 構造を詳細に調べ る とい うの で は な く

精神 物 理 学 的 研 究に用い られるもの と同様の刺激パ タンを 用いた細 胞レ ベ ル で の研 究は こ うし た点に関し て有益iな情 報を提 供し て くれる

その代 表 的 な ものとし て Ikeda & Tremain (

1978

)を あ げることがで き る

彼 女 らは中 心 視 野 部に対 応する部位に ある外 側 膝 状 体X細 胞の空 間正弦波パ タ ン に対 する応 答 特 性 (細 胞レベ ル で の CSF ) を

生後 3

16コ を 用い て研 究し

X細 胞の空 間パ タン分 解 能の発 達と行 動 的に 測定さ れ た視力の 発達との間に密 接 な関 係のある こと を示し た

彼 女らのデ

タを見る と, 細 胞レベルでの

CSF

最適周波数

空間周波数処理能 力の上 隈 (細 胞視力)がこ の期 間内に急 速に発 達し

16週 で成 体水 準に 達 するこが わ か る (Fig

5)

こ の

16

〉 ト

の Z 田 切   山 》

← 《 」 凵 匿

ao

5

A

×

・ b 丶

1.

0

    ’     ’

O.

5

’ 〆

丶 ’   \     、       s       L       、         s         N         、       、       s       、       1

2

 

3

 

4

1

  2 

3

  4

   

SPATIAL

 

FREQUENGY

  O

D

Fig.5・

外 側 膝 状 体

X

細胞の

CSF

発 達

A

(○

,3

; ●

,5

週);

B

,7

週 ; 騨

IO

週)破 線

16

週 で ほぼ 成体の水 準し てい る

      (lkeda & Tremain

1978 より) 辷 三 〇 く 辺 ≧ ト く 」

1

4020

         .

 

 

 

 

 

A

. ’:/

  

4

246810121416

              AGE  (WEEKS )          

Fig.6.

ネコ の力発達 ネコ の 外 側 膝 状 体 X 細 胞の 細 胞 視力  (■

Ikeda & Tremain

 1978行 動 的

…,

 Mitchell et al

1976

VEP

視 力 (

一・

一,

Freeman & Marg

1975)を 正 規化て 示 してある

発達期 間

速 度がほぼ同

と なる

      (

Ikeda

 & Tremain

,1978

よ り) 週 とい う期 間は重 要である

とい うの はネコ 行 動 的 視 力 (Mitchell  et  al

, 1976

  VEP に よ る 力 (Freeman & Margl 

1975

の発達 も生

16

で完了 するこ とが知 ら れてい る か らで ある (Fig

6)

こ の結 果に基づいて

Ikeda

ら は ネコ の 視力発達は

X

細胞系の 空 間 的 分 解 能の発 達に よっ て規 定される と結 論し た

こ の結 論は ま た 視 覚系の空 間 的 分解能の上限近 辺における パタ ン の 検 出が X 細 胞 系に よっ て 媒 介されて い る こ と を 主張する ものであり, 第二節で 論じ た 人 間の

CSF

に 関す る

X ・Y

モ デル の 述べ る とこ ろ とも

致 する

 

Ikeda

らの細 胞レベ での

CSF

に関 する発 達デ

タ は も う

興 味 深い事 実を 示し て くれ る

P

ig.

6を見る と低空 間 周波数域で の度 低下は 3週ではまっ たく認め ら れず

5週でわずか ながらその微候を 示し は じめ

7 週で 明確な もの と な る

こ の時 期 は 網 膜 神 経 節 細 胞 (

Rusoff

Dubin

1977

)お よ び外 側膝 状 体 細 胞 (Daniels

et aL

1978における受 容 野 周 辺 部の抑 制 機構の発達 時 期と良い

致を 示す

従っ て ネ コ の行 動 的 CSF で も 同 じ傾向が示し得る な らば (残 念な が ら ネ コ の 行 動 的 CSF の発 達デ

タ は皆 無で ある が), 行 動 的

CSF

に お ける低 域の感度細胞レ ベ ル での 側抑制との 関係を 説得力を持っ て示し得ること に な る

さ ら に はネコ での 生後 4週前 後が人間で の生後 1

2 ケ月の時 期に相 当 す ると考え る良い根 拠に もなる と考え られる

ネコ の行 動 的

CSF

に関する研 究の進 展 が待た れ る

ま た, ネコ に お い て は

この生 後

4

週前 後とい う時期 が 視覚 系の可塑 性に関 する臨 界期 (critical  periQdの始期に

し, 行動的

生理的視力 が 成体の 水準に達する

16

週とい う 時 期が臨 界 期の終 期と

致 すること が

Ikeda

ま た Freeman & Marg

1975

に よっ て指 摘されてい る が, はなはだ興 味 深い事実である

5・

人間の視 覚 系の 発達と そ の生 理 学 的基礎  最後に

人 間の 視 覚 系の発 達に お け るい くつか の 間題 を生理学 的レベ ル で説 明する可能性を特に X

Y 細胞の 発 達と関連づ け て検討し て み たい

 はじめ に生後

1 −

2ケ月の時 期に存 在 する CSF 発 達 に おける不 連 続の問 題 を 検 討し てみ よう

こ の問 題に は 2つ の 考え方が能で ある

は この 不連続を中脳 (上丘) 視覚系から主視覚系 (外側膝状体

皮質視覚領 系 )へ 視 覚 機 能の媒 介主体が移行すること に よっ て説明 し よ うとする もの である

こ の期に観察さ れ る 不連 続 性は第三節で論じ た

CSF

に関 するもの以外に も数多く 存在し, こ う し た 不連続を乳児の皮質視覚領が 生後約

2

ケ月 間は機能し ない とい う仮 説で説 明し ようとい うこ と

(9)

佐藤 :視 覚系の パ タン 処機能の発 達と その生理学的基礎

109

がこれ までに も試み ら れて来た(例 え ば Bronso11, 1974;

SalaPatek

,1975

確か に 2ケ月 以前の乳 児の視 覚 行 動 は皮 質 を 破壊 さ れた動 物の行 動に よく似て い る し

2

ケ 月 以 前の乳 児の視 覚 行 動は こ の仮 説ICよっ て か な り よ く 説 明さ れ る よ うに見え る

しか し な が ら, 2ケ月以前に お い て も 主視覚系が機能し て い ること を 示す証拠が その 後い つ か見出さ れ てい る

 

IIarter

 et al

1977

)は 生後

1

ケ月 以内の時期に チェ ッ カ

ド= パ タ ン に対 する過渡性 (transient VEP 波の初 期 成 分の振 幅がパ ン の細か さに依 存 する ことを 報 告 してい る が, こ の

VEP

初 期 成 分は皮 質 視 覚 領 (17

18野)起 源の もの と考え られてい る (

Rose

Lindsley,

1968

Jeferreys

Axford,1972

ま た, 出生直後か な り早い 期におい て も 色 (波長)の別 (Werner & Siqueland

1978)や図 形の弁 別 (Milewski

1976)が成 立し てい るこ とを 示す 結 果 も報 告されて いる

図形 の弁 別 とい っ た機 能は 中脳 (上丘)系よ りも主 視 覚 系に よっ て媒 介 されて いると考 えるほ うが妥 当であろ う

ま た

Rakic (1976

1977)の サル の 視 覚 系に関 する解 剖 学的研 究の結果は外側膝状 体か ら皮質へ のが出 生 時 まで に相 当 程 度 発 達 をして い るこ とを示し てい る

以上 の よ う な事 実を総 合 する と生後

1

ケ月の点で主視覚系 は かな りの程 度 機能し てい ると考 えるのが妥 当 なように 思わ れ る

  第二 の 考 え 方は CSF の 発 達に おける不 連 続 性 を 主 視 覚 系 内 部の問 題 として捉 える考 え方であ り

生 後1ケ月 以 前か ら 主視覚系が機能してい る と考え ら れ る 以 上こち らのほうが より妥 当 な もの の ように思われる

こ の場 合

こ こ で の文 脈に お い て は

,CSF

発 達に おける 不 連 続は

X

細 胞

・Y

細 胞いず れ発 達 (しくは両 方 )に よるもの であろ うか とい う疑問 が発せられて来る

現 在入手 可 能 のデ

タ か ら判 断する限 り

答えは X 細胞である可能性 が高い

以 下 その根 拠 を三つ 論 じてみ たい

 第

ネコ 学 的 研 究

X

細 胞

Y

細 胞 の成熟よ りも先行するこ と を 示 してい る(第四節 参照)

ま た人 間の

1 − 2

ケ月に お け る急激な視 覚機能の発 達の 特 長の

つ と して低 空 間周波 数に お け る感 度低 下の 出現 を あ げること がで きる が (Fig

3)

これ は ネコ に おいて 生 後4週 前 後に見 出さ れ る細 胞レベ ル で の発 達とか な り 良い応を 示す

そし て こ の時 期は X細 胞系が急 激な発 達 を示す 時 期であり

Y 細 胞 系は未だきわめ て未 成 熟な 段 階に あると考 え られる (例 えば Daniels et a 工

1978

  第二 に, 生後

1

ケ月の 乳児に おい て オブ リヅ ク効果 (oblique  effect 存在る こ と が つかの実験に よ っ て示 さ れて い るが

こ の ことは こ の時 期に X細 胞が機 能し てい ること を 示唆し てい る

オプ リッ ク効 果とは垂 直ま た は水 平のパ タンを用い て測定し た視 力が斜め方 向の パ 対 する よ りも 良 う視 力 関す異 方 性であるが

こ の 現 象は

X

細 胞 起 源である と考え る恨 拠が多 数 存 在して い る (Essock

1980

参 照 )

これ まで 電

2

ケ月 以 前の乳 児にこ の オ ブ リヅ ク効果が存在する こ と を示 唆 する結 果は告さ れてい る が (例 えぽ

Leehey

et al

1975

タ の解釈は必 ずしも

義 的 とは 言えな かっ た

し か し

Siqueland

お よ び筆 者は乳 児の吸 暖 反 応 を用いた方 法 (Werner & Siqueland

1978 参 照 )

を は じ め て 力測定に 応用 し, 生後 1ケ月 (4

5週) に おい ても垂 直

水平方向に対 する視力と斛め方向に対 す る視力の間には 約

2

倍の差 が あ る

つ ま り 明 らかに オ ブ リッ ク効果が存在するこ と を 示 し た

上丘の 細胞はそ れのみ と し て は方向 選 択 性を持たない (上 丘細胞に み ら れ る方 向 選 択 性は皮 質 細 胞の 方 向 選 択 性が皮 質

上 丘経 路か ら持ちこされる と考えられる)ことか ら

上 記の結 果は生 後

1

ケ月に おける視 覚パ タ ン の 検 出 が 主 視 覚 系に よっ て媒介されてい ることを 示 す と同 時に, 主視 覚系内 部におい て

X

細 胞 系 が 重 要な役捌 を 果してい ることを 示 す もの で あ る

  第三 に

視 運 動 性 眼 震 (optokineticnystugmus

 OKN の非 対称性が生後 2

3 ケ月 以 前に は Y細 胞 系が機能し て いない こ とを 示し て いる

.OKN

とは

定 方 向に運 動 するパ タン刺 激を凝 視 するとその方 向へ のゆっ くり と し た眼 球 運 動

次いで反 対 方 向へ の急 速 な 眼 球 運 動 が 誘 導 される とい う現 象で ある が

,Atkinson

1979

)は単 眼 視

       サ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下での OKN が 生 後

2 − 3

月に おい ては こめ か み側か ら 鼻 側へ の刺 激の運 動に よっ て の み誘 発され

反 対 方 向へ は生じない こと を報 告し た

こ の非 対 称は 3ケ月 以 降 消 失し,

OKN

は両方向の運 動 刺 激に よっ て等し く誘発さ れる ようになる

こ の三ケ月 以 前に見 られる

OKN

の非 対 称 性 が

Y 細 胞 系の未 発 達 を 示 す 証 拠である と考え る 根 拠が存 在 する

暗 中 飼 育を受 けた結 果,

Y

細 胞の機 能 が選 択 的に低 下して い る ネコ に おい て も上 記

3

ケ月 以 前

の乳 児 同 様の

OKN

の非 対 称 が 認め られる (

Van

 

Hof ・

Van

 

Duin,1978

ま たY 細末成熟と考え られ

る生後

4

週ま での 正常飼育の ネコ も 同 様の

OKN

の非対称が認め ら れ, 正常な 両方向性の

OKN

生後 第 5 週 以降, つ まり

Y

細 胞系が機 能しは じめ ると考

え ら れ る時期に なっ て は じ め て出現する (

Van

 

Hof ・

Van

Duin,1978

ち な みに皮質か ら上丘に投射する唯

の 経 路 と考 え ら れる 皮質第6層の特 殊 複 雑 細 胞 (speciaI complex  cell

Y

細胞系か らのみ 入力を受けと ると考

参照

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