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入眠潜時評価の歪みと睡眠関連変数との関連ー谷沢 (2017) の再解析結果ー

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-81 458

-入眠潜時評価の歪みと睡眠関連変数との関連─谷沢

(2017)

の再解析結果─

○谷沢 典子1)、荒木 美乃里1)、富田 望2)、木甲斐 智紀1)、井上 和哉1)、熊野 宏昭2) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )早稲田大学人間科学学術院 【問題と目的】 不眠症状において訴えの多い主訴は, 入眠困難であ る (三宅他, 2015;山本・野村, 2009)。入眠困難は, 過去 1 ヶ月30分以上眠れずに主観的睡眠の質が悪く困 難感のある状態と定義されている (山本, 2010)。入 眠 困 難 に は 認 知 的 要 因 が 関 与 し て お り ( 垣 内 他, 2007), その一つとして, 入眠潜時評価の歪みがあ る。入眠潜時評価の歪みとは, 実際よりも入眠潜時を 長く見積もるという認知的特徴のことであり (山本, 2010), この認識のずれ自体が不眠の本質的な病態で あると指摘されている (山本, 2014)。言い換えれ ば, 入眠困難症状の中心的な問題は, 実際の入眠潜時 ではなく, 主観的な寝付きの悪さを感じることと, そ れに付随して生じる苦痛や困難感であると考えられ る。 また, 入眠困難者の認知的な特徴として入眠時認知 活動がある (Borkovec, 1982; 宗澤他, 2007)。これ は眠れないこと自体に対する心配や反芻であり, 入眠 困難感を増幅させる (垣内他, 2007)。入眠時認知活 動は, 上述の入眠潜時評価の歪みと相互に影響し合 い, 入眠時認知活動が高まると入眠潜時評価の歪みも 増大すると考えられている (Harvey, 2002 ; Harvey, 2005)。 現在, 入眠困難を含めた不眠症に対する心理学的介 入 の 一 つ に ,「 不 眠 症 に 対 す る 認 知 行 動 療 法 (Cognitive Behavior Therapy for Insomnia; CBT- I )」がある (岡島・井上, 2010)。CBT- I の治療 パッケージは行動的技法を中心としており, 入眠時に おける認知活動の影響の重要性が認められているにも 関わらず, それらを直接的な介入対象としていないと いう現状がある (山田, 2012)。こうした問題点を解 決する一助となる考え方が, メタ認知理論からの入眠 困難の理解である (山田, 2012)。山田は, メタ認知 療法 (MCT) の S -REFモデルに沿って, 入眠困難の中 核的問題である入眠時の認知活動を直接介入の対象と し, CBT- I に対してメタ認知的な介入技法を加えるこ とで有効性を高めるという理論的な可能性を示した。 具体的には, 入眠時に生起する反復的思考である入眠 時認知活動を, MCTにおいて精神障害と関連があると される認知注意症候群 (CAS) に相当する概念として 捉え直している。また, CASに影響を及ぼすメタ認知 的知識は, 眠れないことに対する信念であると考えら れる。 入眠困難感と入眠潜時評価の歪み, 入眠時認知活 動, メタ認知的知識の関連を示す研究はあるものの (山田, 2012; 山本, 2010), それらすべての変数を同 時に検討していたわけではなかった。そこで, 谷沢 (2017) はそれらの変数を同時に検討したが, 山本 (2010) と異なり, 入眠潜時評価の歪みと入眠時認知 活動間の関連が有意傾向に留まるなど解析対象者の少 なさが懸念された。したがって本研究では, 入眠困難 の生起・維持に関するメタ認知理論からの理解のた め, 谷沢 (2017) からさらに解析対象者を追加し, 入 眠困難感, 入眠潜時評価の歪み, 入眠時認知活動, メ タ認知的知識の関連を再検討することを目的とする。 【方法】 参加者:寝付きの悪さを感じている大学生18名 (男性 8 名, 女性10名, 平均年齢20.78歳, SD = 1.86) 調査材料: a ) ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI; 土井 他, 1998):入眠困難感の測定。過去 1 ヶ月間におけ る睡眠習慣や睡眠の質を問う。 7つのコンポーネント のうち「主観的睡眠の質」,「入眠時間」,「日常生活 における障害」の 3 つの合計得点を入眠困難得点とし て算出し, 解析に使用した。 b ) 入眠時認知活動尺度 (PCAS; 宗澤他, 2007):入眠時認知活動を量的に測定。 c ) 入眠時メタ認知尺度 (PSMS;山田, 2007):入眠 時におけるメタ認知を測定。下位尺度の「メタ認知的 知識」を解析に使用した。 d ) 睡眠日誌:主観的入眠 潜 時 を 記 録。 e ) Mini-Motionlogger-Actigragh (Ambulatory Monitoring社製 RC型:以下アクチグラ フと記載):客観的入眠潜時を測定。 手続き:実験は 2 回の来室と 4 日間のホームワークか ら構成された。初回来室では, a)から c )の質問紙 への回答を求めた。次回来室までのホームワークとし て睡眠日誌への記入とアクチグラフの装着を求めた。 実験における倫理的配慮:本研究は早稲田大学におけ る「人を対象とする研究に関する倫理委員会」の承認 を得て行われた。 分析:先行研究 (山本, 2010) を元に, 睡眠日誌から 得られた主観的入眠潜時の平均とアクチグラフから得 られた客観的入眠潜時の平均の差から入眠潜時評価の 歪みを算出した。入眠潜時評価の歪み, 入眠困難感 (PSQI), 入眠時認知活動 (PCAS), メタ認知的知識 (PSMS) , 主観的入眠潜時, 客観的入眠潜時間の関連 をスピアマンの順位相関分析によって検討した。 仮説:入眠潜時評価の歪みは, 入眠困難得点, PCAS,

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-81 459 -PSMSのメタ認知的知識との間に中程度から強い正の相 関を示す。 【結果】 分析の結果をTable1に示した。入眠潜時評価の歪み は, 入眠困難得点, PCAS合計得点との間にそれぞれ有 意または有意傾向で中程度の正の相関を示した (入眠 困難得点ρ = .49, p = .04, PCAS合計得点ρ = .44, p = .08)。一方で, 入眠潜時評価の歪みと入眠時にお けるメタ認知的知識との間には, 有意な相関は示され なかった (ρ = .39, p = .13)。 【考察】 相関分析の結果から, 入眠潜時評価の歪みは入眠困 難得点および入眠時認知活動との間に中程度の正の相 関を示した。これは, 谷沢 (2017) と同様の結果であ り, 夜, 床についてから眠りに付くまでの時間をより 長く見積もることと, 主観的な眠りの付きにくさには 関連があることが再度明らかとなった。入眠潜時評価 の歪みと入眠時認知活動の関連性については, 山本 (2010) と同様の結果を示し, 入眠時認知活動の高ま りと, 入眠潜時を長く見積もることには関連がある可 能性が示唆された。 一方, 入眠潜時評価の歪みは, 入眠時に生起するメ タ認知的知識との間に関連を示さなかった。入眠時に 生起するメタ認知的知識は, 「寝床で考えごとをする ことはストレスの原因になる」「寝床に入っても眠る ことができないというのは全くの時間の無駄だ」と いった, 眠りにつこうとする際に生起するメタ認知的 信念であり, 入眠困難の維持要因の一つであると考え られている (山田, 2012)。谷沢 (2017) において は, 入眠潜時評価の歪みとの間に有意な正の関連が確 認されていたが, 今回は関連が示されなかった。入眠 潜時評価の歪みは, CASの維持要因であるメタ認知的 信念よりも, CASの状態そのものと関連がある可能性 が考えられる。したがって,入眠潜時評価の歪みを修 正することを目的とした介入を行う際には, 入眠時認 知活動に注目することに意義がある可能性が示され た。 以上の結果から, 入眠潜時評価の歪みが入眠困難感 や入眠時認知活動と関連があることが再度明らかと なった。今後は, データ収集を継続し, 入眠潜時評価 の歪みの修正に焦点を当て, 入眠困難感の改善を目的 とした認知的な介入法を模索する必要がある。

参照

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