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関節リウマチに伴う筋弱化のメカニズム

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 819 ∼ 820 頁(2015 関節リウマチに伴う筋弱化のメカニズム 年). 819. 分科学会シンポジウム 12(日本基礎理学療法学会). 関節リウマチに伴う筋弱化のメカニズム* 山 田 崇 史**. により構成される,クロスブリッジにおける張力産生機能の低. はじめに. 下のいずれかが生じることで,固有張力が低下すると考えられ.  関節リウマチ(rheumatoid arthritis:以下,RA)患者では,. る 9)。そこで我々は,障害部位を絞りこむために,CIA マウス. 筋力の著しい低下が高い頻度で認められ,関節の変形や疼痛と. の骨格筋から採取した,無傷の単一筋線維において,発揮張力. 。正. と細胞内遊離 Ca2+ 濃度を同時に測定した。すると,CIA マウ. 常な骨格筋において,発揮される張力は,その横断面積に比例. スの筋線維では,対照群と比べ,筋小胞体からの収縮時 Ca2+. する。したがって,これまで,RA に伴う筋力低下は,筋量の. 放出量が増加するにもかかわらず,発揮張力が低下することが. 減少に起因すると考えられてきた。しかしながら,Helliwell &. 明らかとなった 3)4)。したがって,これらの知見から,クロス. Jackson2) は,RA 患者の握力と前腕の筋横断面積を健常者と. ブリッジにおける張力産生機能の低下が,RA に伴う筋弱化の. 比較し,RA 患者では,筋量の低下が 10%程度であるのに対し,. 要因であることが示された。. ともに日常生活活動を制限する重大な因子となっている. 1). 単位断面積あたりの筋力は 60%程度低下することを報告した。 この報告は,RA で観察される筋力低下が,筋の量的な減少よ. 2.酸化 / 窒素化ストレスの関与とその標的. りもむしろ固有張力(単位断面積あたりの張力)の低下に起因.  クロスブリッジの張力産生機能が低下する場合,その要因は,. することを示唆している。この考えを支持するように,我々は,. クロスブリッジ数の減少,あるいは個々のクロスブリッジあたり. RA の実験動物モデルとして広く用いられているコラーゲン誘. の発揮張力の低下のふたつに分けられる。前者の要因としては,. 発性関節炎(collagen-induced arthritis:以下,CIA)マウス. 3)4). お よ び ア ジ ュ バ ン ト 関 節 炎(adjuvant-induced arthritis: 以 下,AIA)ラット. 5). クロスブリッジを構成するタンパク質であるミオシン分子の選択 7) 的な減少が挙げられ,癌患者の骨格筋において認められている 。. から採取した骨格筋において,固有張力. 一方,後者のメカニズムには,酸化 / 窒素化ストレスによるミオ. が低下することを報告した。また,特筆すべきことに,国際的. シン分子 10)やアクチン分子 11)の酸化的修飾によるアクトミオ. に muscle weakness(筋弱化)と称される固有張力の低下は,. シン ATPase 活性の低下が関与することが示されている。興味深. などの種々の. いことに,AIA ラット 5)の骨格筋では,ミオシン分子の選択的. の骨格筋においても広く観察される。しかし. な減少は強く認められず,一方で,システイン残基のジスルフィ. ながら,この現象がどのような要因で生じるかについては,十. ド結合により,アクチン分子が凝集化すること,また,それら. 分明らかにされていない。本稿では,RA に伴う筋弱化のメカ. の凝集化アクチンでは,活性窒素種の一種であるパーオキシナ. ニズムについて,おもに著者らのこれまでの研究成果を基に,. イトライトによるチロシン残基のニトロ化が生じることが明ら. 最新の知見を紹介する。また,それらの基礎的な知見を背景と. かとなった。さらに近年,我々は,AIA ラットにおいて,抗酸. した理学療法効果の分子メカニズムについても考察する。. 化物質である EUK-134 の投与により,固有張力の低下が防止さ. RA だけでなく,慢性心不全患者 疾患や高齢者. 8). 6). や癌患者. 7). RA に伴う筋弱化のメカニズム 1.筋原線維機能の低下. れるとともに,アクチンの凝集化が軽減することを報告した 5)。 したがって,RA に伴う筋弱化のメカニズムに,酸化 / 窒素化ス トレスによるアクチン分子の機能障害が関与すると考えられる。.  我々は,メカニズム解明の最初のステップとして,生理学的 な解析による,障害部位の特定に取り組んだ。骨格筋は,興奮. 3.酸化 / 窒素化ストレス増大のメカニズム. 収縮連関と呼ばれる精緻な刺激応答系を介して収縮・弛緩す.  酸化 / 窒素化ストレスとは,細胞において,活性酸素 / 窒素種. る。理論上,これらの過程の中で,①筋小胞体からの収縮時. の生成量が,それらを還元する能力を上回った状態を指す。AIA. 2+. Ca. 放出量の低下,または,②アクチン分子とミオシン分子. ラットにおいて,アクチンの凝集化に関与することが示された パーオキシナイトライトは,活性酸素 / 窒素種であるスーパー. *. Mechanisms Underlying Skeletal Muscle Weakness in Rheumatoid Arthritis ** 札幌医科大学保健医療学部理学療法学科 (〒 060‒8556 札幌市中央区南 1 条西 17) Takashi Yamada, PT, PhD: Department of Physical Therapy, School of Health Sciences, Sapporo Medical University キーワード:固有張力,炎症性サイトカイン,酸化ストレス. オキシドおよび一酸化窒素が反応することで生成される。そこ で,我々は,RA に伴い,骨格筋においてパーオキシナイトライ トが増大する機序を明らかにするためにさらなる検討を行った ところ,CIA マウスの筋だけではなく,RA 患者から得られた筋 生検サンプルにおいても,神経型一酸化窒素合成酵素(neuronal.

(2) 820. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. nitric oxide synthase:以下,nNOS)の発現量が増加すること. 弱化が関与すること,また,それらが酸化/窒素化ストレスに. が明らかとなった 4)。さらに我々は,正常な状態では細胞膜直. よる筋原線維機能の低下により引き起こされることを報告し. 下において,ジストロフィン複合体の一部として機能している. た。筋原線維タンパク質の翻訳後修飾を伴う筋弱化は,RA に. nNOS が,CIA マウスの筋では,筋小胞体の Ca2+ 放出チャネル. 限定されず,敗血症や慢性心不全など,種々の炎症性疾患にお. (ryanodine receptor:以下,RyR)と共局在化することを示した。. いても報告されていることから 19),炎症を伴う病態で認めら. nNOS は,一酸化窒素だけでなくスーパーオキシドを生成する. れる筋力低下の共通の要因である可能性が高い。今後,筋弱化. こと. 12). 2+. ,また,Ca. 濃度依存的に活性化することが示されてい. る 13)。前述の通り,CIA マウスの筋では,正常なものと比べ, 2+. 収縮時の細胞内 Ca. 濃度が増大することから,RyR と共局在化. した nNOS により,パーオキシナイトライトの生成が促進され, これらがクロスブリッジ機能を低下させる可能性が示唆された。  近年,Stasko ら 14)は,炎症性サイトカインの 1 種である腫 瘍壊死因子(tumor necrosis factor-α :以下,TNF-α )が,骨格 筋において nNOS の発現量を増加させ,筋弱化を招くことを報 告した。我々も,AIA ラットの骨格筋において,TNF-α の発現 量の増加が,nNOS 発現量の増大を伴うことを観察している 5)。 したがって,TNF-α が,RA の骨格筋において,酸化/窒素化 ストレスを引き起こす上流因子である可能性が指摘される。こ の考えを支持するように,先行研究において,抗 TNF-α 抗体の 投与が,RA 患者の握力を改善することが報告されている. 15). 。. RA に対する理学療法  1970 年代に,Ekblom ら 16)により,運動が,RA に伴う関節 症状を悪化させることなく,運動機能を改善させることが示さ れて以来,その有効性が数多く報告され,現在では,RA に対す る治療ガイドラインにおいて,運動処方が標準的な治療法とし て推奨されている 17)。ただし,関節症状が重度である場合や, 関節の炎症症状が強い時期においては,一般的に,筋力増強に 有効であるとされる高強度トレーニングを負荷することが困難 である。そこで,我々は,関節に負担をかけず,筋力強化を実 現する方法として,神経―筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下,NMES)に着目し,AIA ラットにおいてそ の効果を検討した(未出版資料) 。なお,本実験における NMES 負荷条件は,Gondin ら 18)の方法を参考に,周波数は 50 Hz,刺 激負荷 / 休息時間は 2 s/4 s とし,負荷強度は,事前に最大上刺 激(30 V)で測定した最大強縮トルクの 60%とした。NMES 負 荷中,リアルタイムでモニターに表示される発揮トルクを参照 しながら,目的の負荷強度に一致するよう電気刺激強度を漸増 し,電気刺激強度が 30 V に達しても標的負荷強度を下回った時 点,すなわち課題遂行不可となった時点でトレーニング終了と した。負荷は,3 分間の休憩を挟んだ 3 セットとし,2 日に 1 回 の頻度で 3 週間実施した。その結果,NMES トレーニングにより, 長趾伸筋における固有張力の低下が防止されるとともに,アク チンの凝集化が減少することが明らかとなった。これらの知見 は,RA において,NMES が酸化/窒素化ストレス誘因性の筋 弱化を防止することを示唆している。現在,我々は,その効果 の分子メカニズムを明らかにするために,炎症性サイトカイン や酸化還元酵素の発現量などに着目して検討を進めている。. 結   語  本稿では,RA に伴う筋力低下に,筋萎縮だけではなく,筋. の分子メカニズムがより詳細に明らかにされることで,これら の疾患に対する効果的な理学療法プログラムの具現化あるいは 開発に寄与することが期待される。. 文  献 1) Sokka T, Häkkinen A, et al.: Physical inactivity in patients with rheumatoid arthritis: data from twenty-one countries in a crosssectional, international study. Arthritis Rheum. 2008; 59: 42‒50. 2) Helliwell PS, Jackson S: Relationship between weakness and muscle wasting in rheumatoid arthritis. Ann Rheum Dis. 1994; 53: 726‒728. 3) Yamada T, Place N, et al.: Impaired myofibrillar function in the soleus muscle of mice with collagen-induced arthritis. Arthritis Rheum. 2009; 60: 3280‒3289. 4) Yamada T, Fedotovskaya O, et al.: Nitrosative modifications of 2+ the Ca release complex and actin underlie arthritis-induced muscle weakness. Ann Rheum Dis. 2015; 74: 1907‒1914. 5) Yamada T, Abe M, et al.: Muscle dysfunction associated with adjuvant induced-arthritis is prevented by antioxidant treatment. Skeletal Muscle. 2015; 5: 20. 6) Szentesi P, Bekedam MA, et al.: Depression of force production and ATPase activity in different types of human skeletal muscle fibers from patients with chronic heart failure. J Appl Physiol. 2005; 99: 2189‒2195. 7) Banduseela V, Ochala J, et al.: Muscle paralysis and myosin loss in a patient with cancer cachexia. Acta Myol. 2007; 26: 136‒144. 8) Ochala J, Frontera WR, et al.: Single skeletal muscle fiber elastic and contractile characteristics in young and older men. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2007; 62: 375‒381. 9) Allen DG, Lännergren J, et al.: Muscle cell function during prolonged activity: cellular mechanisms of fatigue. Exp Physiol. 1995; 80: 497‒527. 10) Tiago T, Palma PS, et al.: Peroxynitrite-mediated oxidative modifications of myosin and implications on structure and function. Free Radic Res. 2010; 44: 1317‒1327. 11) Tiago T, Ramos S, et al.: Peroxynitrite induces F-actin depolymerization and blockade of myosin ATPase stimulation. Biochem Biophys Res Commun. 2006; 342: 44‒49. 12) Stuehr D, Pou S, et al.: Oxygen reduction by nitric-oxide synthases. J Biol Chem. 2001; 276: 14533‒14536. 13) Förstermann U, Closs EI, et al.: Nitric oxide synthase isozymes. Characterization, purification, molecular cloning, and functions. Hypertension. 1994; 23: 1121‒1131. 14) Stasko SA, Hardin BJ, et al.: TNF signals via neuronal-type nitric oxide synthase and reactive oxygen species to depress specific force of skeletal muscle. J Appl Physiol. 2013; 114: 1629‒1636. 15) Eberhardt K, Sandqvist G, et al.: Hand function tests are important and sensitive tools for assessment of treatment response in patients with rheumatoid arthritis. Scand J Rheumatol. 2008; 37: 109‒112. 16) Ekblom B, Lövgren O, et al.: Effect of short-term physical training on patients with rheumatoid arthritis I. Scand J Rheumatol. 1975; 4: 80‒86. 17) Ottawa: Ottawa Panel Evidence-Based Clinical Practice Guidelines for Electrotherapy and Thermotherapy Interventions in the Management of Rheumatoid Arthritis in Adults. Phys Ther. 2004; 84: 1016‒1043. 18) Gondin J, Giannesini B, et al.: Effects of stimulation frequency and pulse duration on fatigue and metabolic cost during a single bout of neuromuscular electrical stimulation. Muscle Nerve. 2010; 41: 667‒678. 19) Supinski GS, Callahan LA: Free radical-mediated skeletal muscle dysfunction in inflammatory conditions. J Appl Physiol. 2007; 102: 2056‒2063..

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