大阪市平均寿命の検証と対策
Ⅰ 平成22年市区町村別生命表の概況(平成 25 年 7 月 31 日厚生労働省公表) ○ 大阪市の全ての区において、平均寿命が全国平均以下 ○ 大阪市全体の平均寿命の低さ*(都道府県・政令市では男性が最下位から 2 番目、女性につ いては最下位)に各区数値が引っ張られていると考えられる。 ⇒算出方法(ベイズ推定)による誘導 ○ 大阪市の平均寿命と有意に差があるのは西成区男性のみであり、各区の過去の順位(5年ご と)については、入れ替わりもある。 考察:各区特有の課題より、大阪市全体の課題による影響が大きく、大阪市全体の平均寿命を底 上げすることで各区の平均寿命を上げることができる。 *平均寿命の年次推移(大阪市・全国) 資料:大阪市健康推進計画「すこやか大阪 21」最終評価 平均寿命は年々伸びているが、依然として全国と比べて低い状況である。 大阪市と全国との平均寿命の差は、男女とも経年的な変化はみられなかった。 Ⅱ 平均寿命を低くしている要因 要因1 大阪市の特徴として、若年層における死亡率は全国と差は無いが、壮年期死亡の割合が 全国と比べて高く、平均寿命を引き下げている。 《国・大阪市の年齢階級別粗死亡率 H22 年》 人口千対 (抜粋 年齢調整前) 男性 女性 全国 大阪市 全国 大阪市 20∼24 歳 0.6 0.5 0.3 0.4 25∼29 歳 0.7 0.6 0.3 0.5 30∼34 歳 0.8 0.7 0.4 0.4 35∼39 歳 1.0 1.1 0.6 0.7 40∼44 歳 1.5 2.1 0.8 1.1 45∼49 歳 2.4 3.5 1.3 1.6 50∼54 歳 3.9 5.1 2.0 2.2 55∼59 歳 6.4 9.2 2.8 3.6 60∼64 歳 9.5 13.6 3.9 4.6 65∼69 歳 14.8 20.1 6.0 6.9 70∼74 歳 23.0 31.1 9.9 11.7 75∼79 歳 40.1 48.0 18.1 21.4 72.91 73.97 74.69 75.74 76.99 77.40 79.55 79.38 80.60 81. 95 83.38 84.53 85.20 86.30 70 75 80 85 90 昭 和 60 平 成 2 7 12 1 7 2 2 男 性(大 阪市 ) 男 性(全 国) 女 性(大 阪市 ) 女 性(全 国)要因2 全国的に、死亡原因の 6 割が生活習慣病であり、大阪市においては、特に死亡者数の最 も多い悪性新生物(がん)の死亡率が高くなっている。なお、心疾患および脳血管疾患 については、全国との差が年々縮まり、現在はほぼ同じ水準となっている。 《国・大阪府・大阪市の死亡率 H22 年》 人口 10 万対 総死亡 悪性新生物 心疾患 肺炎 脳血管疾患 自殺 肝疾患 国 947.1 279.7 149.8 94.1 97.7 23.4 12.8 府 880.2 282.4 141.6 96.1 71.9 24.1 16.5 市 1010.1 314.6 145.8 115.3 86.0 29.0 22.2 要因3 壮年期における大阪市と全国のがんによる死亡率の差が顕著であることが、大阪市の壮 年期死亡を押し上げることとなり、結果、平均寿命を引き下げている大きな要因となっ ている。 《国・大阪市の悪性新生物(がん)による壮年期死亡率》 人口 10 万対 男 性 女 性 国 大阪市 国 大阪市 40∼49 歳 40.83 48.06 48.37 54.57 50∼59 歳 190.35 228.64 135.08 150.13 60∼69 歳 540.96 667.31 252.72 278.16 要因4 がん検診の受診率が低い。 (市町村が実施している対策型がん検診は死亡率減少に効果的である) 《平成 23 年度大阪市民のがん検診受診率(地域検診の対象者)》国:平成 23 年度地域保健・健康事業増進報告 胃がん 大腸がん 肺がん 子宮頸がん 乳がん 国 9.2% 18.0% 17.0% 23.9% 18.3% 大阪市 5.2% 8.8% 3.8% 24.8% 14.0% **地域受診率目標 (15.6%) (26.5%) (7.3%) (36.5%) (29.2%) **平成26 年度までの地域における検診受診率目標(大阪市民全体の受診率目標は 50%) 考察(1)がんによる壮年期死亡を減らすことが平均寿命延伸に寄与する。 (2)健康局の行う対策は、 ①がん検診の受診をすすめ、早期発見・早期治療につなぎ、がんによる死亡を減らす。 ②がんにならずにすむ生活習慣の実行を啓発・普及する。
Ⅲ 大阪市のこれまでのがん対策 平成23 年 10 月 1 日「大阪市がん予防推進条例」を施行し、がんの予防及び早期発見に関 し、本市、市民、保健医療関係者および事業者の責務を明らかにするとともに、がんの予 防及び早期発見に関する施策の推進に取り組んでいる。 「すべての市民がすこやかで心豊かに生活できる活力あるまち・健康都市大阪の実現」を 基本理念とする大阪市健康増進計画「すこやか大阪21」を平成 13 年に策定し、「栄養・食 生活」「糖尿病」「循環器病」「がん」など 10 の分野を対象に目標項目を設定して、生活習 慣の改善や生活習慣病の早期発見・早期治療等に取り組んできた。 平成24 年度には最終評価を行い、そこから得られた課題等を踏まえ、大阪市健康増進計画 「すこやか大阪21(第 2 次)」(平成 25 年度∼平成 29 年度)を「健康寿命の延伸と健康格 差の縮小」を全体目標に掲げて策定し、生活習慣病の発症予防および重症化予防や健(検) 診による生活習慣病の早期発見・早期治療等に取り組んでいる。 がん対策として実施している「がん検診」については、大腸がん検診・子宮頸がん検診・ 乳がん検診において、特定年齢者に対し無料クーポン券を交付する「がん検診推進事業」 を実施している。 また、受診しやすい環境整備による受診者数の増加策として、区保健福祉センターなどで、 胃がん・大腸がん・肺がん検診を同日に受診できる集団検診や日曜・祝日の集団検診、夜 間の乳がん集団検診を実施するとともに、取扱医療機関の少ない肺がん検診の施設数の拡 充を図ってきた。 これらの他、殆どのがん検診の受診開始年齢となる40 歳を迎える市民へのがん検診個別勧 奨はがきの送付や、乳がん検診(マンモグラフィ)取扱医療機関で市民の検診枠(「大阪市 乳がん検診デー」)を設けるなどの様々な受診率向上策を実施してきた。 これらにより受診者数や受診率において一定の伸びを示している検診はあるが、地域にお ける検診受診率目標を達成するには厳しい状況にある。 考察:がん検診受診率を向上させるための環境整備、検診受診を習慣づけることを目的とした 普及啓発、がんをはじめとする生活習慣病対策の拡充が必要。
Ⅳ 拡充・強化する方策 1 がん検診受診率向上策 受診環境の整備 効率的な啓発事業の拡充 2 がんにならずにすむ生活習慣実行に向けた対策 職域向け健康づくり出前講座の拡充実施 区が実施する生活習慣病対策への支援