最近の石油市場の動きに関する
一考察
まず、2016 年 9 月 28 年以降 OPEC産油国の原油生産 制限方策はどうなったか、背景を含め述べる。 (1)OPEC産油国が 11 月 30 日開催の通常総会で日 量116万バレル強の減産を決定 OPEC産油国は 2016 年 11 月 30 日、オーストリアの ウィーンで通常総会を開催し、原油生産量を加盟国全体 で日量 116 万 4,000 バレル引き下げることで合意した。 政情不安等から通常時に比べ事実上の減産状態になって いるリビア、ナイジェリア、加盟国資格を失ったインド ネシアを除き、加盟各国の生産上限が設定された(表1)。 この決定により、生産水準が設定されなかったインドネ シア、リビア、ナイジェリアが足元の原油生産水準を維 持したとすれば、OPEC産油国合計では日量 3,268 万バ レルの生産量となり、2017 年には需要と供給がほぼ均 衡する(10月時点でのOPEC事務局予想による同年の対 OPEC原油需要は同 3,269 万バレル)と、この時点では 見込まれた。 この生産枠は、2017 年 1 月 1 日より 6 カ月間実施する こととし、市場の状況や展望によってはさらに6カ月間 延長することもあり得るとしている。また、生産制限の 遵 じゅんしゅ 守状況を監視するためにアルジェリア、クウェート、 ベネズエラ、非OPEC産油2カ国から成る監視委員会を 設置することが決定された(議長国はクウェート)。これ らの決定の際、OPEC産油国側はロシアを含む非OPEC 産油国から日量 55 万 8,000 バレルの減産に協力する旨 の申し出があったことを明らかにしている(ロシアは 2017年前半に同30万バレルの減産を実施する用意があ る旨ノバク エネルギー相が11月30日に発言している)。 また、インドネシアのOPEC加盟国としての資格が停止 することになった。さらに、サウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が2017年1月1日から1年間 OPEC議長を務めること、次回総会(通常総会)は2017 年5月25日にウィーンで開催されることが決定した。 この総会に先立ち9月28日にアルジェリアのアルジェ で開催されたOPEC臨時総会では、原油生産量を加盟国 前回、本誌に世界石油市場の状況について執筆したのは、今からちょうど1年ほど前であった(「最近 の石油市場の動きに関する一考察」2016. 11 Vol.50 No.6)。それは、OPECと一部非OPEC産油国との 間で減産の大枠が2016年9月28日に開催されたOPEC産油国による非公式協議(後に臨時総会へと格 上げ)で決まり、原油生産を制限する旨合意した時期にほぼ重なる。また、それは原油価格が約13年ぶ りの安値(2016年2月21日のWTI終値で1バレルあたり26.21ドル)から回復しつつある時期でもあっ た(9月30日のWTI終値は同48.24ドル)。 では、その後OPEC産油国は原油生産制限で合意したのかどうか、原油価格は上昇を続けたのかどう か。世界の石油需給はどうなっているのか。本稿では、2018年の世界石油需給状況を展望しつつ注目 すべき点についても説明したい。また、2017年8月下旬にはハリケーン「ハービー(Harvey)」が米国 メキシコ湾に来襲した。これは、12年前のほぼ同時期に同湾を襲った「カトリーナ(Katrina)」を連想さ せるが、二つのハリケーンの来襲による石油市場の反応は相当程度異なっていた。それはなぜかについ ても、触れることとしたい。は
じめに
1.
OPEC産油国の動向:一部非OPEC産油国と減産合意、そして延長へ
全体として日量 3,250 万~ 3,300 万バレルに制限するこ とで合意。11 月 30 日に開催される OPEC総会で加盟各 国の生産上限を決定すべく調整するため、加盟国による 高級事務レベル委員会を設置し加盟国の生産制限実施に 関する方策につき検討していく旨決定した。ただし、そ の後行われた協議での加盟国間の調整の道程は決して平 坦なものではなかった。 10 月 12 日にはトルコのイスタンブールで OPEC産油 国等による非公式協議が開催された(この協議には、ア ルジェリア、ガボン、カタール、UAE、ベネズエラの 石油関連相、バルキンドOPEC事務局長の他、ロシア〈ノ バク エネルギー相〉とメキシコのキロガ炭化水素省次官 が出席したが、サウジアラビア、イラン、イラクの石油 関係相は欠席)。この協議では、それ以降の会合の日程 以外に原油生産調整方策について具体的な決定事項は明 ら か に さ れ な か っ た。 ま た、10 月 28 ~ 29 日 に は OPECと主要非OPEC産油国(ロシア、アゼルバイジャ ン、ブラジル、カザフスタン、メキシコ、オマーンといっ た産油国名が挙げられている)による高級事務レベル協 議が開催(10 月 28 日は OPEC産油国のみによる開催。 10月29日は非OPEC産油国も交えての開催)されたが、 ここでも原油生産調整方策については合意されなかっ た。 10 月 28 日の協議においては、サウジアラビアがイラ ンに対し生産量を日量360万~ 370万バレル程度(ちな みに同国の10月の原油生産量は同371万バレル)で凍結 すれば、サウジアラビアとしては同 1,020 万バレルへと 削減する(同国の10月の原油生産量は同1,057万バレル) 旨提案したが、イランがそれを拒否したことから、サウ ジアラビアは自国の生産量を同 1,100 万~ 1,200 万バレ ルへと増加する方針であることをちらつかせたり、中途 退席をほのめかしたり、さらには、10 月 29 日開催予定 の非OPEC産油国との会議を開催しないことを提案した りするなどしたと伝えられた。また、11 月 18 日には、 カタールのドーハでOPEC産油国とロシアによる非公式 協議が開催されたが、サウジアラビアはファリハ氏が出 席したものの、イランはアルデビリ(Ardebili)OPEC理 事が出席したにとどまった(つまり、同国のザンギャネ 石油相は出席しなかった)。この場では、ファリハ氏と アルジェリアのブテルファ エネルギー鉱業相は、OPEC 産油国全体で日量 3,250 万バレルの水準で生産量を制限 する旨主張したとされる。そしてOPEC産油国はイラン に対して同392万バレル(これは同国がOPEC事務局に 通知した10月の生産量に等しい)の上限を提示したが、 イランはその場で受け入れることはなく、11 月 19 日、 ザンギャネ石油相はこの調整について「いまだ合意に達 していない」旨明らかにした。 OPEC産油国は 11 月 21 ~ 22 日にも高級事務レベル 協議を開催。ここでは、リビアとナイジェリアについて は生産調整から除外する方向となったが、その他はイラ (注)2016 年 11 月 30 日 OPEC 総会時の推定値。 出所:OPEC 他より推定 2016年10月 原油生産量 基準原油生産量 (OPEC発表) ① 基準原油生産量 (推定) ② 原油生産水準 (2017年 1月1日以降) ③ 減産幅 ③-① 減産幅③-② 減産率③/① アルジェリア 1,088 1,089 1,089 1,039 △ 50 △ 50 △ 4.6 アンゴラ 1,586 1,751 1,751 1,673 △ 78 △ 78 △ 4.5 エクアドル 549 548 548 522 △ 26 △ 26 △ 4.7 ガボン 202 202 202 193 △ 9 △ 9 △ 4.5 インドネシア 722 - - - -イラン 3,690 3,975 3,707 3,797 △ 178 90 △ 4.5 イラク 4,561 4,561 4,561 4,351 △ 210 △ 210 △ 4.6 クウェート 2,838 2,838 2,838 2,707 △ 131 △ 131 △ 4.6 リビア 528 - - - -ナイジェリア 1,628 - - - -カタール 646 648 648 618 △ 30 △ 30 △ 4.6 サウジアラビア 10,532 10,544 10,544 10,058 △ 486 △ 486 △ 4.6 UAE 3,007 3,013 3,013 2,874 △ 139 △ 139 △ 4.6 ベネズエラ 2,067 2,067 2,067 1,972 △ 95 △ 95 △ 4.6 合計 33,644 31,236 30,968 29,804 △ 1,432 △ 1,344 △ 4.6 OPEC 産油国原油生産調整状況 表1 日量千バレル
ン、イラクを含め 4.0 ~ 4.5 %程度減産することが提案 された。この案では、中東湾岸OPEC産油国が全体の減 産の85%相当の日量100万バレル近くの減産(これに従 えばサウジは同50万バレル程度の減産とされる)を実施 する一方で、イランは同 400 万バレルから 4.5 %の減産 となっている(つまり同382万バレル程度の生産上限)と のことであったが、イランは同 410 万~ 420 万バレル からの減産を主張した。また、イラクにも同 20 万バレ ルの減産が提示されたとされるが、イラク側は自国で申 告している生産量(10月時点で同478万バレル。これに 対してOPEC事務局の推計は同457万バレル)を基にし た減産であるべき旨主張したとされる。 11 月 24 日には、ロシアは足元の生産量で凍結する方 針であり、それは当初の2017年の増産予定(日量20万 ~ 30万バレルの増産)からの減産を意味する旨明らかに した。その後 28 日には、OPEC産油国間で専門家会合 を実施。ここでは、同120万バレルの減産が提案された ようであるが、協議時間 10 時間余りの会合で協議はま とまらなかった。ここでもイランとイラクが異議を唱え たと伝えられる。関係筋によると、イランは同397万5,000 バレルの生産量を凍結する意向を示す一方で、サウジア ラビアは同 370 万 7,000 バレルの生産枠を設定する旨主 張。これに対しアルジェリアは同 379 万 5,000 バレルの 折衷案を提示したとされた。他方イランはサウジアラビ アに対し同950万バレルへの減産(つまり同100万バレ ルの減産)を要求した。また、11 月 27 日にはファリハ 氏が、産油国が市場に介入しなくても 2017 年には石油 市場は均衡する旨の認識を示すなど、この時点でも OPEC産油国の足並みが揃わないままであった。 そうした状況下で 30 日の OPEC総会当日になったわ けだが、この日は当初予定(現地時間午前11時より総会 開始)を変更し、午前8時よりウィーンのパークハイアッ トホテルで非公式協議を実施。その後午前 10 時より総 会を開催する運びとなり、OPEC加盟国は最終的な合意 にこぎ着けた。 そもそも原油生産調整方策に関する議論は 2016 年 2 月 16 日にサウジアラビア、ベネズエラ、カタール、そ してロシアによる合意以降、他の産油国の合意を得るべ く努力してきたものである。仮に今回、個別の生産上限 で合意できない場合、OPECの石油市場安定化のための 問題解決に向けた結束力に対する市場の失望感から原油 相場が下落、特に1月以降は石油市場が不需要期に突入 することから、価格下落がさらに加速し、再びWTIで1 バレルあたり 40 ドルを割り込むといった展開になる可 能性もあった。このため、最終的には、原油価格を維持 する代わりに生産を抑制するか、生産を維持もしくは増 加させる代わりに価格が下落するのを容認するか、と いった各選択肢を考慮した結果、前者を選択するに至っ たと推量される。 この決定によって、サウジアラビアは自国の減産幅を 当初の日量 50 万バレルから拡大することを回避でき、 またイラクに対し自国の主張する生産量ではなく、 OPEC事務局による推定生産量を用いて減産することに 成功している。また、イランについても、日量379万7,000 バレルと、当初サウジアラビアが主張していた同370万 7,000 バレルからは増枠したものの、イランが凍結を主 張していた水準(同397万5,000バレル)からは4.5%減 産させることに成功している。したがって、この部分に ついてはサウジアラビア・イラン間で妥協が成立した、 とも言える。 (2)12 月 10 日開催の OPEC・主要非 OPEC産油 国の協議で非 OPEC産油国が日量 56 万バレル弱 の減産を表明 OPEC産油国・主要非 OPEC産油国は 12 月 10 日に ウィーンで閣僚級会合を実施。この場においてアゼルバ イジャン、バーレーン、ブルネイ、赤道ギニア、カザフ スタン、マレーシア、メキシコ、オマーン、ロシア、スー ダン、南スーダンの 11 カ国は、合計で日量 55 万 8,000 バレルの減産を実施する旨表明。非OPEC産油国の個別 の減産量は公式には発表されていないが、ロシアが 10 月の生産量である同 1,124 万 7,000 バレルから同 30 万バ レル減産し、6カ月後には同1,094万7,000バレルになる 旨ノバク エネルギー相が同日明らかにした。同じくメ キシコが同10万 バレル、オマー ンが同4万5,000 バレル、アゼル バイジャンが同 3万5,000バレル、 カザフスタンが 同 2 万バレル減 産する旨伝えら れた(表2)。減 産 は 2017 年 1 月 1 日 よ り 6 カ 月間実施するこ ととし、市場の 状 況 や 展 望 に よってはさらに 出所:IEA 他データを基に推定 減産目標 (2017年1月1日以降) ロシア 300 メキシコ 100 オマーン 45 アゼルバイジャン 35 カザフスタン 20 マレーシア 20 赤道ギニア 12 バーレーン 10 南スーダン 8 スーダン 4 ブルネイ 4 合計 558 非 OPEC 産油国減産目標 表2 日量千バレル
6 カ月間延長することもあり得るとした。また 11 月 30 日のOPEC総会時に設置を決定した監視委員会にロシア とオマーンが参加することになったと伝えられる(うち ロシアは議長代行国)。 前述のように、11月30日に開催されたOPEC総会で、 OPEC加盟国は全体で原油生産量を日量116万バレル強 引き下げることで合意。しかし、この程度の引き下げでは、 最も遵守が徹底し、かつ生産上限の対象外となったナイ ジェリアとリビアが現状の生産量を維持した場合でも、 2017年全体での石油需給を均衡させる程度の効果しか見 込めないとの印象を市場に与えかねない。しかも、ナイ ジェリアやリビアが今後増産すれば、生産制限の効果が 低減する他、特に年後半と比べ季節的に石油需要が抑制 される年前半においては石油供給過剰感が市場で感じら れやすくなる(図1)。このため、特に2017年前半の世界 石油需給をより均衡点に接近させるとの印象を市場に与 えるべく、非OPEC産油国に原油生産調整を要請したも のと考えられる。非OPEC産油国としても、OPEC産油 国と合意すれば、市場関係者による石油需給引き締まり 観測により少なくとも原油相場が当面は支持される可能 性があることから、OPEC産油国の要請に応じたと思量 される。 (3)OPEC産油国等が減産の9カ月間延長について合意 ①協議内容等 OPEC産油国は 2017 年 5 月 25 日、ウィーンで通常総 会を開催。2016 年 11 月 30 日の前通常総会時に決定し た減産について、事実上規模を同水準とした上で実施期 限を当初の6月30日から9カ月間延長することで合意し た。政情不安等から通常時 に比べ事実上の減産状態と なっているリビアとナイ ジェリアは前回同様、減産 目標設定から除外されたと 伝えられる。また、OPEC 総会に引き続き、OPEC産 油国および一部非OPEC産 油国との間で閣僚級会合も 同日開催され、前年 12 月 10 日の会合で決定された 一部非OPEC産油国による 減産に関し、規模を事実上 同水準とした上で実施期限 をOPEC産油国の減産と同 様に延長することでも合意 した。減産実施の新たな期限は2018年3月31日となる。 ただ、赤道ギニアが OPECに加盟することになった (OPEC加盟申請を行った旨 2017 年 1 月 23 日に同国エ ネルギー省が明らかにしていた)ため、OPEC産油国の 減産目標は日量 117 万 6,000 バレル、一部非 OPEC産油 国の減産目標は同54万6,000バレルとなる。 また、共同閣僚監視委員会(JMMC:Joint Ministerial Monitering Committee。2016 年 11 月 30 日で設置が決 定された監視委員会)と、それを補佐する役割の共同技 術委員会(JTC:Joint Technical Committee。OPEC事 務局が支援)が石油市場状況等を監視するとともに、必 要に応じて適切な助言を与えることになった。次回 OPEC総会(通常総会)は2017年11月30日に開催され る予定である。 ②会合の背景等 2017年1月1日より実施されていたOPEC産油国によ る減産については、今次総会実施時点まで遵守率は 100%近くかそれを超過するなど遵守状況は良好であっ た。また、減産に合意した非 OPEC産油国の遵守率は OPEC産油国のそれには及ばないものの、上昇傾向に あった。しかし、特に 2017 年第 1 四半期には、OPEC 諸国等の減産措置開始前の高水準の原油供給が、輸送等 に伴う時間差により消費国に到着した一方で、米国での シェールオイルを含む原油生産が増加傾向にある上、製 油所が春季のメンテナンス作業を実施していたことで原 油精製処理量が低下していたことなどから、市場関係者 が特に注目している指標である米国の原油在庫は増加傾 向となり、2017 年 3 月 31 日には 5 億 3,600 万バレルと 30 31 32 33 34 35 1Q17 2Q17 3Q17 4Q17 日量百万バレル 対OPEC原油需要 対OPEC原油需要(非OPEC減産〈日量56万バレル〉後) OPEC原油生産削減(日量116万バレル)後の想定OPEC原油生産量 出所:OPEC データ他を基に推定 OPEC 産油国想定原油生産と対 OPEC 原油需要 図1
1982 年後半以降の週間統計史上最高水準に達した (後述)。また、OECD諸国の石油在庫の減少傾向も 曖昧で、4月末時点でも平年(過去5年平均)を3億 バレル程度超過する状況となっていた(図2)。さら に、非 OECD諸国にもある程度の石油在庫が存在 することから、OECDと非 OECD諸国を合わせた 石油在庫の平年比での超過量は3億バレルを相当程 度上回っていたものと推測される。 こうした事情から、市場関係者間で、石油供給過 剰感が根強くあったこともあり、3月以降はWTIで しばしば 1 バレルあたり 50 ドルを割り込んだ。5 月 4日の夜間の時間外取引では、一時同43.76ドルと、 2016年11月14日(つまり前回のOPEC総会前)以 来の低水準まで下落する場面が見られた。5 月中旬 に入っても 50 ドルを回復できないでいるなど、市場心 理は弱含みの状態にあった。 他方、OPEC総会開催時点での石油需給バランスシナ リオによれば、2017 年第 2 四半期から年末まで OPEC 産油国が現状の減産を継続すれば(非OPEC産油国につ いては実効性のある減産が実施できるかどうか不透明な 部分があるので、ここでは考慮しない)、この期間中、 世界石油需要が供給を日量130万バレル程度上回ると予 想されるため、これに基づけば、年末までに3億バレル 程度石油在庫が減少することになる。したがってOECD 諸国が保有する過剰とされる石油在庫は、相当程度解消 されると予想されるが、非 OECD諸国を含めた世界の 過剰在庫を一掃できるかどうかについては、年末までの 減産延長では心もとない状態となり、市場での需給緩和 感を払ふっしょく拭する(つまり、原油価格を押し上げる)には力不 足になると観測された。一方、減産を 2018 年第 1 四半 期まで延長すれば、4 億バレル超の石油在庫を削減でき ると見られたため、世界の過剰在庫を一掃し、サウジア ラビアやロシアが目標として表明したところの、平年並 み(過去5年平均水準)の世界石油在庫水準に接近する可 能性が高まる。また、例年第1四半期は米国での製油所 のメンテナンス作業実施に伴う原油精製処理量低下もあ り、季節的に原油需給緩和感が市場で意識され、原油価 格が下落しやすいが、2018 年第 1 四半期まで減産を継 続することで需給緩和感の醸成に伴う価格下落を抑制す る一助になることも期待できる。今回の決定には以上の ような要因が作用したと考えられる。なお、石油需給引 き締めのための減産幅の拡大についての選択肢について は、各産油国にどの程度の追加減産を割り当てるかに関 しては、困難な作業が発生する可能性があった。このた め、今次総会においては議論されなかったと推測する。 2016 年 2 月 以 降 の 時 期 は、OPEC( そ し て 一 部 非 OPEC)産油国による原油生産制限に対する調整(交渉)、 そして原油生産制限(減産)の実施という、特に2014年 11 月 27 日に開催された OPEC総会(この時原油生産制 限の事実上の放棄を決定)以後の石油市場の潮目が変化 した時期でもあった。そしてこの時期、原油価格はどの ように推移したのか、以下に2016年9月~ 2017年9月 の1年間の原油価格の動向について概観した(図3)。 2016 年 9 月 28 日の OPEC臨時総会直前までは、原油 価格は WTIでおおむね 1 バレルあたり 40 ドル台前半で 推移していた。しかし、28日のOPEC臨時総会(当初の 非公式協議から変更)でOPEC産油国が原油生産量を日 量 3,250 万~ 3,300 万バレルで制限することで合意し、 11 月 30 日に開催予定の通常総会で各加盟国の個別生産 枠の設定に向け調整していく旨報じられた。10 月 10 日 にはサウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資 源相が、11 月 30 日の OPEC総会で原油生産調整方策に つき合意されることに対し楽観視している旨発言。また、
2.
原油価格の動き
25 26 27 28 29 30 31 32 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9月 億バレル 過去5年幅 過去5年平均 2016~2017年 出所:IEA データ等を基に推定 OECD 諸国石油在庫(2016 ~ 2017 年) 図2ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 が、 同 国 は OPECの原油生産調整策に合流する用意 がある旨発言したことで、OPECと主要 非OPEC産油国による原油生産調整に対 する期待感が市場で高まった。以上の諸 点に加え、米国で原油、ガソリンと留出 油の在庫が市場の事前予想に反し、ある いは市場の事前予想を上回って減少して いたこと等が、原油相場に上方圧力を加 えた結果、原油価格は上昇傾向となり、 10月10日のWTI(以下特に断りのない 場合には同様)の終値は 1 バレルあたり 51.35ドルと2015年7月15日(この時は 同51.41ドル)以来の高水準になった。 また、10 月中旬には、OPEC産油国 等関係者が、11 月 30 日開催の OPEC通 常総会で原油生産調整方策につき加盟国 間で合意することに対して楽観的な姿勢 を示唆する発言があった。これにより、 OPEC産油国等による原油生産調整方策決定に対する期 待感が市場で増大したことが、原油価格に上方圧力を加 え、価格は上昇基調となり、10 月 19 日の終値は 1 バレ ルあたり51.60ドルと2015年7月14日(この時の終値は 同53.04ドル)以来の高水準となった。 しかし 10 月下旬には、イラクやロシアが OPEC・主 要非OPEC産油国による原油生産調整方策に関して後ろ 向きの姿勢を示したことから、次回OPEC総会での合意 に対する市場の期待が後退、原油相場に下方圧力を加え た。さらに、価格の下落基調は続くのだが、その要因と なったのは次のような事情が引き続き表面化したことに よる。まず、10 月 28 ~ 29 日に開催された OPEC・主 要非 OPEC産油国による高級事務レベル協議において、 原油生産調整方策に関して具体的な合意がなされなかっ た上、後日、当該高級事務レベル協議でイランが原油供 給制限を拒否すれば、サウジアラビアは急増産する可能 性があると同国側が発言していた旨OPEC産油国関係筋 が明らかにしたと報じられたことが挙げられる。また、 10 月の OPEC産油国原油生産量が前月比で増加してい た旨判明したこと、OPECが原油生産調整方策で合意で きなければ 2017 年も石油供給過剰となる旨国際エネル ギー機関(IEA)が指摘したこと等から、原油価格は11 月上~中旬頃に再び 1 バレルあたり 40 ドル台前半へと 下落基調になった。 ただ、OPEC通常総会(11月30日)での原油生産調整 方策の合意に向け、OPEC産油国関係者の前向きな発言 等の情報が原油相場に上方圧力を加えた結果、11 月下 旬前後以降は原油相場は 1 バレルあたり 40 ドル台後半 に戻ってきた。そして、OPEC総会で加盟国が原油生産 調 整 方 策 で 合 意 し た こ と、 さ ら に は、12 月 10 日 の OPEC・非OPEC産油国による協議で、ロシアを含む非 OPEC産油国が減産を実施する旨表明したこと等によ り、相場は50ドル台前半へと上昇し、12月11日夜間の 時間外取引では一時は1バレルあたり54.51ドルと2015 年7月6日(この時は同55.34ドル)以来の高水準に達す る場面も見られた。 また、その後もサウジアラビアやクウェート等がさき の総会で合意した減産策を遵守する意向である旨明らか になったこと、2017 年 1 月に OPEC・非 OPEC産油国 による原油生産削減遵守状況につき協議するための監視 委員会を開催する旨示唆する情報が流れたことにより、 この先の世界石油需給の引き締まりに対する市場の期待 感が強まったことに加え、2016 年 7 ~ 9 月期の米国国 内総生産(GDP)が上方修正されたこと等、米国経済が 回復しつつあることを示す経済指標類が発表されたこと などもあり、2017年1月3日早朝の時間外取引時には原 油価格は WTIで 1 バレルあたり 55.24 ドルと 2015 年 7 月 6 日以来の 55 ドル超の場面も見られるなど総じて底 堅い動きを示した。 それ以降も、2016 年 11 月 30 日の OPEC総会、12 月 10 日の OPEC・一部非 OPEC産油国による閣僚級会合 で合意された減産について、関係産油国が減産を遵守す ドル/バレル 35 40 45 50 55 60 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 WTI ブレント 月 出所:NYMEX、ICE 原油価格の推移(2016 ~ 2017 年) 図3
べく努力している旨示唆する発言や減産が比較的遵守さ れていることを示す統計等が、原油相場を支持した。ま た、米国とイランの対立が激化する兆候や IEAによる 世界石油需要見通しの上方修正などでも原油相場が上昇 した。さらに、OPEC・一部非 OPEC産油国による閣僚 級会合で合意された減産につき、今後遵守率がさらに上 昇すると予想している旨OPEC産油国関係者が明らかに したことで、この先の世界石油需給の引き締まりに対す る期待感が市場で根強く維持されたことが、原油相場を 下支えした。この結果、原油相場は引き続き 50 ドル台 を中心とする範囲で変動した。 しかし、3月に入り、2017年2月のロシアの原油生産 量が前月比で変わらない水準にあったことが判明したこ とに加え、米国での石油坑井掘削装置稼働数が増加し続 けている旨明らかになったこと、また同国の原油在庫が 増加した結果、週間統計史上最高記録を更新したこと等 を通じ、石油需給の引き締まりに関し懐疑的な見方が市 場で発生したこと、米国金融当局による金利引き上げ観 測が市場で増大したことによる米ドル上昇などの要因が 原油相場に下方圧力を加えた。結果、原油価格は3月中 旬前後には50ドルを割り込むなど下落、再度40ドル台 後半で推移するようになった。 ただ、2017 年 3 月下旬には、リビアの油田が武装勢 力により生産を妨害され、同国の原油生産量が減少した ことで、石油需給引き締まりの懸念が市場で発生した。 この他、米国の原油在庫が市場の一部事前予想ほど増加 していなかったことが同国石油統計で明らかになった り、石油製品在庫が市場の事前予想を上回って減少した りしたこと、英領北海の油田の生産が停止したとの情報 が流れたこと、米国がシリアに向け巡航ミサイルを発射 したことで中東地域情勢の不安定化に伴う当該地域から の石油供給途絶懸念が市場で増大したことなどにより、 総じて上昇傾向となり、WTIは 3 月末前には 50 ドル台 を回復し、その後しばらくは50ドル台前半で推移した。 しかし、米国の石油坑井掘削装置の稼働数および原油 生産量の増加もしくは増加見通しに加え、同国でのガソ リン在庫等の増加、リビアでの油田の生産再開と原油生 産量の増加の情報、中国経済が減速する兆候を示す指標 類等が原油相場に下方圧力を加えた結果、WTIは4月下 旬には再び50ドルを割り込み、5月中旬に至るまで終値 ベースで 40 ドル台後半で推移した。こうして、5 月 14 日夜間の時間外取引では一時 43.76 ドルと 2016 年 11 月 14日以来の安値となる局面もあった。 そ れ で も、5 月 25 日 に 開 催 予 定 の OPEC総 会、 OPEC・一部非 OPEC産油国による閣僚級会合を控え、 OPEC・一部非OPEC産油国による減産延長決定への期 待が市場で膨らんだことで、相場が反発する場面も見ら れ、5 月 20 日前後には、原油価格は再度 50 ドル台前半 へと上昇した。しかし、OPEC総会で当初予想どおりに 減産延長が決定されると、WTIは50ドルを割り込んだ。 以降は、米国での石油坑井掘削装置の稼働数の増加に加 え、同国での原油やガソリン在庫の増加、リビアやナイ ジェリアでの原油生産増加あるいは増加観測、2018 年 の非OPEC産油国の石油生産量の伸びが世界石油需要の それを超過するとの見通しの発表、そして、中国経済減 速の兆候を示す指標類等が原油相場に下方圧力を加えた 結果、原油価格は 6 月中旬に 45 ドルを割り込むなど、 下落基調となった。さらに、米国石油坑井掘削装置稼働 数が増加したことや、リビアでの原油生産が増加した旨 明らかになったことに加え、米国での原油生産が増加を 続けたこと等により、原油価格の下落傾向は引き続き、 6月21日に1バレルあたり42.53ドルの終値と、2016年 8月10日(この日は41.71ドル)以来の安値となった。 それ以降は、これまでの原油価格下落に対して値頃感 から原油を買い戻す動きが市場で発生したことや、EIA (米国エネルギー省エネルギー情報局)が2018年の米国 原油生産見通しを下方修正したこと、米国の原油とガソ リン在庫が減少したこと、IEAが 2017 年の世界石油需 要を上方修正したこと等により、原油相場は持ち直し、 6月末頃以降は1バレルあたり40ドル台後半へと変動範 囲を切り上げた。 また、サウジアラビアが8月の原油輸出量を抑制する 旨表明したことや、米国の石油坑井掘削装置の稼働数が 伸び悩むとともに石油会社による開発・生産活動減速の 兆候が見られる旨石油産業関係者が示唆したこと、米国 での原油在庫が市場の事前予想を上回って減少している ことが判明したこと、トランプ政権が、ベネズエラに対 し、同国石油産業への制裁の実施を検討している旨、関 係筋が明らかにしたと報じられたこと、米国のガソリン 需要が週間統計史上最高水準に達したこと、米国非農業 部門雇用者数が市場の事前予想を上回って増加していた こと等も、原油相場に上方圧力を加え、結果として原油 価格は7月下旬に1バレルあたり50ドル前後へと回復し た。 その後、8 月中旬以降の原油価格はどうであろうか。 米国原油生産とその見通し、ハリケーン「ハービー」の米 国メキシコ湾岸地域来襲に伴う当該地域の製油所の操業 停止と原油購入低下懸念等が原油相場に下方圧力を加え た結果、一時は40ドル台前半の領域へと下落したものの、 米国原油在庫等の減少、米国石油坑井掘削装置稼働数の
このように、原油価格は 2016 年 9 月から 2017 年 9 月 にかけ、おおむね 40 ドル台後半を中心としながらも、 時折50ドル台前半、もしくは40ドル台前半に突入して 推移した。それでは、実際の石油需給はどのようであっ たのか。OPEC(と一部非OPEC)産油国の思惑(そして 石油市場関係者の期待)どおりに、世界の石油需給は引 き締まってきているのであろうか。ここでは、減産が開 始された 2017 年 1 月以降 4 月頃までと、それ以降の期 間におおよそ区切って議論したい。 (1)2017年1 ~ 4月頃までの石油需給 前述のように、OPEC産油国は 2016 年 11 月 30 日に 11カ国で合計日量116万4,000バレルの減産で合意。続 いて 12 月 10 日には非 OPEC産油国 11 カ国が合計で同 55万8,000バレルの減産を表明した。その後OPEC・一 部非OPEC産油国は減産を実施したが、OPEC産油国に ついては、サウジアラビア等一部加盟国が目標以上の減 産を実施した結果、2017 年 5 月末では、減産遵守率は おおよそ高水準を保ちながら推移した(表3)。 他方、非OPEC産油国に関しては減産遵守の進捗は緩 やかであった(2017年8月はカザフスタンが油田メンテ ナンスを実施したことに伴い原油生産量を削減したこと 等から、遵守率は100%を超過している)(表4)。 ただ、OPEC産油国・一部非 OPEC産油国は確かに 11 月 30 日、12 月 10 日に減産合意したが、減産実施の 開始は 2017 年 1 月 1 日であった。このため、減産合意 に至る前の時期のみならず、減産合意後も、2016年 12 月31日までは減産を実施する必要はなかった。このため、 むしろ、減産実施前にできる限りの増産を実施した結果、 特に 2016 年 11 ~ 12 月は各国が高水準の原油生産量を
3.
OPEC産油国等による減産遵守状況と消費国への影響
伸び悩み、「ハービー」通過後の製油所の操業再開と原油 購 入 増 加 観 測、OPEC事 務 局 や IEAに よ る 2017 ~ 2018 年の世界石油需要の上方修正等が上方圧力を加え た結果、原油相場は上昇傾向となり、9月20日には終値 ベースで1バレルあたり50ドルを超過している。 (注)赤道ギニアは 2017 年 5 月 25 日までは非 OPEC 産油国として減産に参加。 出所:OPEC 他より推定 2016年 10月 2016年11月 2016年12月 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月 2017年7月 2017年8月 2017年9月 アルジェリア 1,091 1,089 1,087 1,053 1,057 1,051 1,056 1,061 1,060 1,054 1,055 1,046 アンゴラ 1,498 1,701 1,674 1,658 1,639 1,599 1,667 1,609 1,666 1,641 1,644 1,641 エクアドル 543 544 544 530 529 525 526 529 529 537 536 536 赤道ギニア - - - 140 144 133 141 ガボン 203 219 209 203 198 202 205 205 198 207 186 201 イラン 3,709 3,719 3,725 3,780 3,819 3,792 3,792 3,774 3,817 3,830 3,826 3,827 イラク 4,571 4,590 4,642 4,475 4,414 4,425 4,381 4,446 4,498 4,471 4,462 4,494 クウェート 2,848 2,868 2,859 2,722 2,712 2,702 2,705 2,709 2,709 2,702 2,702 2,700 カタール 645 651 641 620 592 612 613 610 615 614 612 616 サウジアラビア 10,566 10,625 10,443 9,809 9,952 9,905 9,934 9,898 10,035 10,025 9,975 9,975 UAE 3,068 3,084 3,090 2,958 2,933 2,909 2,906 2,907 2,917 2,921 2,913 2,905 ベネズエラ 2,072 2,063 2,034 2,007 1,998 1,982 1,967 1,951 1,955 1,949 1,942 1,890 小計 30,814 31,153 30,948 29,815 29,843 29,704 29,752 29,699 30,139 30,095 29,986 29,972 リビア 528 577 610 678 681 612 552 727 848 1,003 869 923 ナイジェリア 1,615 1,645 1,474 1,533 1,564 1,456 1,496 1,642 1,710 1,711 1,804 1,855 合計 32,957 33,375 33,032 32,026 32,088 31,772 31,800 32,068 32,697 32,809 32,659 32,750 遵守率(%) - - - 99 97 109 104 109 82 86 95 97 OPEC 産油国等の原油生産状況 表3 日量千バレル維持したり、ないしは、生産水準が上昇したりした。 また、減産が始まったからといって、2017 年 1 月の 米国等の消費国における原油輸入量がすぐに急減するわ けではない。中東諸国から米国へは通常大型タンカーに 原油を積載しアフリカ南部の喜望峰沖を経由して輸送さ れる。このため、中東産油国から米国への原油輸送は 40 日超の期間を要する。さらに米国では大型タンカー を 接 岸 で き る 港 湾 は LOOP(Louisiana Offshore Oil Port)等少数に限られる。他の港湾はより小規模のタン カーしか受け入れられないため、大型タンカーを接岸で きる港湾で大型タンカーから中小 型タンカーへと原油を積み替えた 後、米国各地の港湾に向かうが、 それにはさらに 10 日程度を要す るとされる。したがって、中東産 油国での減産の影響が米国で現れ るのには、減産開始から 2 カ月程 度後となる(タンカー運賃が高騰 した場合にはコスト削減で燃費効 率を最適化させることから、タン カーが減速するため、さらに期間 を要する場合もある)。また、中 東産油国から欧州諸国に向かう場 合でも同じ航路で大型タンカーの 場合には、米国の場合とほぼ同様 の期間を要することになる。 米国では 2017 年 1 月時点では まだ中東産油国からの減産の影響 はほとんど皆無であった(むしろ2016年11月頃の高水 準の原油供給〈つまり輸入〉の影響を時間差で受けていた ことに加え、米国の原油生産量が継続的に増加傾向を示 していた)(図4)。一方で、同国の製油所は春季のメン テナンス作業を実施し始めたことから原油精製処理量が 減少傾向となった。このように、原油供給は堅調であっ た半面、原油の処分が進まなかったことから、原油在庫 は増加傾向となった。2 月においても原油精製処理量は 一層減少した一方で、原油生産量は増加し続けた上、な お、中東産油国からの原油輸入は高水準であった。この 出所:IEA 他データを基に推定 2016年 10月 2016年11月 2016年12月 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月 2017年7月 2017年8月 2017年9月 ロシア 11,229 11,208 11,208 11,111 11,108 11,049 10,995 10,952 10,946 10,950 10,912 10,907 メキシコ 2,103 2,072 2,035 2,020 2,016 2,018 2,012 2,020 2,008 1,986 1,930 1,874 オマーン 1,012 1,015 995 966 973 967 967 971 969 967 968 969 アゼルバイジャン 814 738 789 802 784 741 784 784 794 795 738 733 カザフスタン 1,765 1,768 1,793 1,753 1,797 1,837 1,808 1,781 1,810 1,815 1,736 1,771 マレーシア 638 658 675 673 665 659 621 620 681 657 682 685 赤道ギニア 140 130 127 126 130 135 122 130 - - - -バーレーン 213 184 143 207 204 206 208 208 207 208 191 191 南スーダン 104 154 93 83 173 83 102 138 112 121 105 121 スーダン 76 75 74 73 72 71 70 74 74 73 72 71 ブルネイ 125 116 100 106 123 113 89 106 88 110 110 110 合計 18,219 18,118 18,032 17,920 18,045 17,879 17,778 17,784 17,689 17,682 17,444 17,432 遵守率(%) - - - 54 31 61 79 78 71 73 116 118 非 OPEC 産油国原油減産状況 表4 日量千バレル -5,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 10 11 12 1 2 3 4 5 6 月 日量千バレル 原油生産 原油輸入 原油輸出(負数) 生産+輸入-輸出 精製処理量 原油在庫増減 出所:米国エネルギー省(DOE)データを基に作成 米国原油需給バランス(2016 ~ 2017 年) 図4
ため、米国の原油在庫は一層増加、その結果、2017 年 2月10日以降断続的にではあるが、原油在庫は週間統計 史上最高水準を更新するようになった。 一方、石油市場関係者サイドには、従来、米国の週間 原油在庫を、その発表頻度の多さからして、世界原油需 給バランスの代理指標として重視してきた経緯がある。 彼らは、同国の原油在庫が史上最高記録をしばしば更新 したことを、世界石油需給の緩和と受け止めたわけだが、 これによって、原油価格は下落したと考えられる。もち ろん原油需給と石油需給は同じわけではない。米国では 製油所の稼働が低下し石油製品の生産活動が鈍化した結 果、製品在庫は減少傾向をたどっている。したがって、 原油と石油製品を合計した在庫は必ずしも堅調に増加し ているわけではなく、むしろ 2 月 10 日以降は減少して いる(図5)。 (2)2017年4 ~ 9月頃の石油需給 2017 年 2 月以降、米国の原油在庫は減少し始めた。 ガソリンや留出油在庫も減少している(図6、図7、図8)。 このため、石油全体の在庫も減少傾向となった。また、 OECD諸国の石油在庫は、9 月 22 日開催の JMMCで、 彼らが目標とする需給均衡に接近しつつある旨明らかに している。では、本当に石油在庫は急速に減少しつつあ るのだろうか。 まず、米国の原油在庫である。確かに 2017 年 3 ~ 8 月にかけ減少しており、しかも8月以降は平年幅上限付 近の量となっている。一方、原油輸入量は 2017 年 2 ~ 3 月は 1 月に比べれば減少しているが、それ以降は前月 比で増減を繰り返しており(図9)、明らかな減少は9月 になってからだ(ただ、9 月の輸入量についてはメキシ コ湾岸へのハリケーン来襲に伴う製油所や港湾等の停止 の影響があるということを考慮す る必要があるだろう)。米国は 2017 年 3 ~ 6 月にサウジアラビ アから日量 100 万~ 120 万バレ ル輸入しており、この量は同年 2 月に比べれば減少しているが、7 月までは明確に減少傾向にあると は言い切れなかった(図10)。ま た、8 ~ 9 月は減少傾向が読み取 れるが、この数値は、ハリケーン のメキシコ湾岸来襲による港湾施 設の操業停止や、製油所メンテナ ンス作業実施に伴う原油の受け入 れ低下の影響等を受けている可能 性がある。 イラクからの輸入については、2017年2月と9月に日 量40万バレル程度にまで落ち込んだとはいえ、4月には 同 80 万バレルを上回った他、総じて同 50 万~ 80 万バ レル程度の水準にあるので、こちらの減少傾向はいまひ とつ不明確である。このように、OPEC主要産油国から の原油輸入量が少なくとも最近に至るまで明確な供給減 少を示さなかったことが、米国の原油輸入の全体の基調 として現れていると思われる。したがって、米国の原油 やガソリン在庫の減少は、OPEC産油国等による減産の 影響が全くないとは言い切れないが、むしろ主要因は別 のところにある。 米国の原油とガソリン在庫の傾向を見ると、実は 2017 年は 2016 年同様、春から夏にかけ減少傾向を示 している。米国では、例年、5 月第 4 月曜日の戦没将兵 追悼記念日(メモリアル・デー)に伴う連休から9月の第 1月曜日の労働祭(レイバー・デー)に伴う連休まで夏季 のドライブシーズンに当たり、ガソリン需要期となる。 このため、この時期に備え製油所では春季のメンテナン ス作業を完了し、稼働を引き上げるとともに、原油精製 処理量を増加させることが慣例となっている(図11)。 これによって、原油処理が進み、原油在庫も減少してい くことになる。また、夏季のドライブシーズンが接近す るとともに、ガソリンは製油所から油槽所、そしてガソ リンスタンド(もしくは消費者の自動車の燃料タンク)へ と流れていく。このため製油所を中心とする1次在庫(こ れが米国で統計数値として使われる在庫の数値である) から 2 次もしくは 3 次在庫へとガソリンが移動していく とともに、1 次在庫は減少していく。これが原油とガソ リン在庫減少の背景にある主要因であると考えられる。 また、留出油在庫については、例年概ね冬季に在庫水 出所:DOE データを基に作成 米国石油在庫(2016 ~ 2017 年) 図5 1.28 1.29 1.30 1.31 1.32 1.33 1.34 1.35 1.36 1.37 1.38 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10月 十億バレル
準が増加する傾向があるが、これは、暖房シーズ ン(11月1日~翌年3月31日)に伴う需要期到来 に備え在庫を積み増すことが影響していると考え られる。他方、春季には在庫が減少する傾向があ る。これはメンテナンス作業実施により製油所の 稼働が低下し、結果として、留出油生産が減少し ていることが影響していると見られる。また、夏 季は製油所の稼働率が上昇する結果、留出油生産 も活発化するが、欧州(ドライブシーズン突入に 伴うディーゼル車向け軽油需要が発生)向けの輸 出が旺盛に行われることから、この面では在庫の 増加を抑制する方向で作用している。 そして確かに、2017 年の原油、ガソリンおよ び留出油在庫は減少するとともに平年幅の水準に 突入してきている。ただ、グラフをよく見ると、 2016 年と 2017 年の在庫量の実績自体はそれほ ど乖かい離りしていない(それでも 2017 年は前年同期 比では若干在庫水準は低いが)。ガソリンと留出 油在庫については、2017 年は 9 月に入り在庫が 急減するとともに平年並みの水準となっている が、これは8月下旬にハリケーン「ハービー」が米 国メキシコ湾岸地域に来襲した結果、当該地域の 製油所が操業を停止したことに伴いガソリンや留 出油等の石油製品の生産が低下したことが影響し ているだろう。その意味ではこの時期、特殊要因 により在庫変動がもたらされていると言うことが できよう。 また、2016 年は原油、ガソリン、留出油の足 元の在庫水準が平年幅を超過する状態が多かった 一方で、2017 年のそれは早々に平年幅の範囲内 に入っているのは、平年幅が「過去5年実績幅」で あるからである。つまり在庫に関しては、2016 年の「過去5年実績幅」は2011 ~ 2015年の在庫 実績であるのに対し、2017 年のそれは 2012 ~ 2016年の実績となるからだ。したがって、2017 年時点では平年幅は在庫が高水準であった 2016 年が「平年幅」に織り込まれており、その結果、平 年幅の特に上限部分が上振れしている。このため、 量としては 2017 年の在庫量が 2016 年の高水準 の時と比べてそう変化はないほど高水準であって も、平年幅の範囲内に収まってきているという意 味では、「在庫は大幅に過剰である」とは言い切れ なくなっている、と市場で解釈されることもあり 得るわけである。そして、市場では「過去 5 年実 績幅」を用いて判断することが慣習となっている 3.0 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8 5.0 5.2 5.4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10月 過去5年幅(月間値) 過去5年平均(月間値) 2016~2017年 (週間値) 億バレル 出所:DOE データを基に作成 米国原油在庫 図6 過去5年幅(月間値) 過去5年平均(月間値) 2016~2017年 (週間値) 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 月 億バレル 出所:DOE データを基に作成 米国ガソリン在庫 図7 過去5年幅(月間値) 過去5年平均(月間値) 2016~2017年 (週間値) 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 月 億バレル 出所:DOE データを基に作成 米国留出油在庫 図8
ので、そこから市場関係者の心理が 動いてしまうこともあり、ひいては、 原油相場(そしてガソリン相場等)が 変動する、といったことも起こり得 る。 では、OECD諸国の石油在庫はど うであろうか。実は OECD諸国の 石油在庫(月間推計)をたどってみる と、2017 年 8 月 の 在 庫 量 自 体 は 2016年12月に比べ若干減少してい るに過ぎないことが分かる。その背 景には、いくつかの要因が重なって いよう。まず、米国では、年末の課 税対策から精製業者等が原油在庫等 を相当程度減少させることが多い (テキサス州やルイジアナ州では年 末の石油在庫評価額に対し固定資産 税等が課税されることから、課税額 を低減させるために精製業者等は必 要以上の陸上在庫の保有を敬遠する とされる)ことから、12月末は他の 月末に比べ在庫が低下しやすい(実 際には沖合のタンカーに石油を貯蔵 していると言われている)。他方、 米 国 で は 2016 年 1 月 時 点 で は、 2017 年にかけ米国の原油生産量は 減少傾向となると見られていたが、 実際には、2016 年後半頃から原油 生 産 は 増 加 傾 向 と な っ て い る (図12)。 このように当初見込みに反し同国 の原油供給が増加したことが、原油等の在庫減少 の度合いを緩やかなものにしたと捉えることがで きる。さらに、米国で生産された原油や石油製品 の輸出が活発化したことが、米国の石油在庫を減 少させる方向で作用した一方で、輸出された原油 や石油製品の一部が他の OECD諸国に流入した 結果、それら地域での在庫水準を支持する格好で 作用したとも考えられる。 また、OPEC産油国のなかには減産合意の枠外 にある加盟国が存在した。リビアとナイジェリア である。リビアは 2012 年時点では日量 150 万バ レル近くの原油生産があったが、2013年後半以降、 石油ターミナルや油田、そして両者をつなぐパイ プラインが、しばしば警備隊や武装勢力に占拠さ 6,000 6,500 7,000 7,500 8,000 8,500 9,000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9月 日量千バレル (注)2017 年 8 ~ 9 月は速報値。 出所:DOE データを基に作成 米国原油輸入(2016 ~ 2017 年) 図9 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 月 日量千バレル (注)2017 年 8 ~ 9 月は速報値。 出所:DOE データを基に作成 米国のサウジアラビアからの原油輸入(2016 ~ 2017 年) 図10 1,400 1,500 1,600 1,700 1,800 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 日量万バレル 月 出所:DOE データを基に作成 米国原油精製処理量(2016 ~ 2017 年) 図11
れ、操業が停止し、2016 年半ば頃には原油生産が日量 30 万バレルを割り込む場面も見られた。しかし、その 後警備隊や武装勢力と政府の間で交渉が進んだ結果、現 在でもまだ完全とはいえないまでも、石油関連施設封鎖 と原油生産停止の頻度が大幅に減少した。このため原油 生産量も増加、2017 年 8 月には日量 100 万バレル超と 2013年半ば以来の水準に達した(図13)。ナイジェリ アに関しても、2016 年までは Niger Delta Avengers (NDA)等の武装勢力が産油地域のニジェール・デルタ でパイプライン等の石油関連インフラを破壊して、原油 生産が減少する場面も見られたが、2016 年 8 月 29 日に NDAが暫定的な停戦に合意して以降、同国の 原油生産に対する妨害が減少、生産は回復傾向 にある(図14)。そして、リビアやナイジェリ ア産の原油は主に欧州に向かっていると考えら れるので、この分だけ、欧州を中心とする地域 の原油在庫が上振れしやすくなっていると考え られる。 また、減産に合意したOPEC産油国の減産状 況だが、2017 年 3 ~ 5 月は 100 %を超過する 遵守率となっていた。しかし、6 月になると遵 守率が82 %に急低下、7月も85 %となった。8 ~ 9月は95 ~ 97 %へと回復したが、それでも 100 %は割り込んでいる状態にある。個別に見 ていくとイラク、エクアドル等での遵守率が低 く、また、サウジアラビアやアンゴラは目標以 上に遵守はしているものの、遵守率はどちらか というと低下傾向である。こうしたことから、 減産している OPEC産油国を見ても、9 月の原 油生産量は 1 月からは日量 16 万バレル、直近 の低水準にあった 5 月からは同 27 万バレル程 度増加している。このように減産を実施してい るOPEC産油国の遵守率が相対的に低下したこ とにより、原油供給が下げ止まっていることも、 OECD諸国の石油在庫増加に寄与している部分 があると推量される。 さらに、8 月になって、IEAは 2017 年の世 界石油需要を通年で日量 33 万バレル程度下方 修正した。これは、これまで「オイル・マーケッ ト・レポート(“Oil Market Report”)」で月間推 定として算出していた需要と、特に非 OECD 諸国における年間統計の需要(例年 8月頃に確 定)とを比較した際に、アジア非OECD諸国を 中心に年間統計数値が月間数値による年間推計 値を下回っていたことにより調整を施したこと が一因である。この影響で 2017 年は第 1 ~第 3 四半期 は 7 月時点から日量 10 万バレル超下方修正されている。 つまり、この分だけ当初見込みほど世界の石油需要は存 在しなかったことになり、実は世界石油需給は相対的に 緩和状態にあったと考えられる。 このような事情もあり、例えば 2017 年 5 月時点の同 年の世界石油需給展望では、第 1 四半期~第 3 四半期で 需要が供給を日量73万バレル超過しており、9月末まで に2億バレル程度(8月末までには1億5,800万バレル程度) 世界の石油在庫が減少する他、このペースでいけば、 2017年は3億7,000万バレル強の在庫が取り崩される計 0 20 40 60 80 100 120 140 160 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 年 日量万バレル 出所:IEA データを基に作成 リビア原油生産量 図13 7 8 9 10 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 日量百万バレル 2016年1月12日発表 2017年10月11日発表 月 出所:DOE データを基に作成 米国原油生産実績と見通し(2016 ~ 2018 年) 図12
算になっていた(表5)。 しかし 10 月現在の展望では、2017 年は第 1 ~第 3 四 半期で需要が供給を超過する度合いは日量 32 万バレル 程度と 5 月時点の展望の 2 分の 1 程度になっていること から、この場合年間で 1 億 2,000 万バレル程度の在庫取 り崩しとなる他、9 月末までの在庫減少幅は 9,000 万バ レル程度(8月末までは8,200万バレル程度)と 推 定 さ れ る こ と に な る( 表 6)。 と こ ろ が、 2017 年 9 月 22 日 に 開 催 さ れ た OPEC・ 非 OPEC閣僚監視委員会(JMMC)では、「8月末時 点で OECD諸国の在庫は年初から 1 億 6,800 万 バレル縮小した」旨明らかにされた。IEAの推 定する需給データとOPECのそれとの間ではそ れなりの差は発生するとはいえ、なぜこのよう な差が生じたのであろうか。 実は、OPECはより厳密には、「8月末時点で OECD諸国の在庫は過去 5 年平均比で年初から 1億6,800万バレル縮小した」と発言していたの である。市場では前述の「過去5年幅」に加え「過 去5年平均」が「平年」の在庫水準として通常認 識される。ただ、過去5年の実績によって、「過 去5年平均値」は変動し得る。2017年に使用さ れている「過去5年平均」は2012 ~ 2016年で あるが、2016 年は在庫量がそれまでの水準を 大幅に超過してしまっていた。この結果、2016 年に使 用されていた過去 5 年平均(この場合 2011 ~ 2015 年) に比べると 2017 年のそれは相当程度上振れしている。 例えば2016年12月末時点でのOECD諸国の過去5年平 均石油在庫は27億バレルであったのに対し同年8月と9 月末時点でのそれは 28 億 3,000 万バレルと 1 億 3,000 万 100 120 140 160 180 200 220 240 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 日量万バレル 年 出所:IEA データを基に作成 ナイジェリア原油生産量 図14 (注)OPEC 産油国については 2017 年 4 月の原油生産量がその後も維持されると仮定。 出所:IEA データを基に作成 2016 1Q17 2Q17 3Q17 4Q17 2017 総需要① 96.58 96.51 97.29 98.57 99.06 97.86 非 OPEC 生産 57.66 57.96 57.87 58.49 58.71 58.26 OPEC 原油生産 32.64 31.89 31.78 31.78 31.78 31.81 OPEC NGL 生産 6.69 6.74 6.79 6.89 6.90 6.83 総供給② 96.99 96.59 96.44 97.16 97.39 96.90 在庫変動その他(② - ①) 0.41 0.08 -0.85 -1.41 -1.67 -0.96 世界石油需給バランスシナリオ(2017 年)(2017 年 5 月時点シナリオ) 表5 日量百万バレル (注)OPEC 産油国については 2017 年 9 月の原油生産量がその後も維持されると仮定。 出所:IEA データを基に作成 2016 1Q17 2Q17 3Q17 4Q17 2017 総需要① 96.13 96.63 97.81 97.85 98.51 97.71 非 OPEC 生産 57.38 57.74 57.76 58.10 58.60 58.05 OPEC 原油生産 32.80 32.07 32.31 32.65 32.65 32.42 OPEC NGL 生産 6.81 6.86 6.90 6.94 6.92 6.91 総供給② 96.99 96.67 96.98 97.69 98.18 97.38 在庫変動その他(② - ①) 0.86 0.04 -0.83 -0.16 -0.33 -0.33 世界石油需給バランスシナリオ(2017 年)(2017 年 10 月時点シナリオ) 表6 日量百万バレル
バレル上積みされている。このため、石油在庫の絶対的 水準に変動がなくても過去 5 年平均比では 1 億 3,000 万 バレル在庫余剰が縮小すると市場では解釈されることに なる。 実際には2016年12月末のOECD石油在庫は29億8,000 万バレル、2017 年 8 月は 30 億 2,000 万バレル、同年 9 月は 29 億 7,000 万バレルであるので、在庫量自体はそ れほど減少しているようには見受けられない。ただ、5 年平均との差は12月が2億8,000万バレルであるのに対 し8月は1億9,000万バレルと9,000万バレル縮小してい ることになる。市場では、在庫余剰(もしくは供給過剰) というのは、通常過去5年平均在庫量との差を指してい るが、この差が縮小したからといって、その分だけ在庫 が実際に減少している(つまり実質的な需給引き締まり が発生している)わけではない。それでも市場ではこの 差が縮小したことが需給の引き締まりを示していると解 され、その結果、原油相場が変動する場合があり得るこ とに注意する必要がある。 IEAは 6 月 14 日に、OPECは 7 月 12 日に、それぞれ 初めて 2018 年の石油需給見通しの詳細を発表した。こ こでは、既に 2017 年 1 月 10 日に 2018 年見通しの詳細 を発表している EIAを含め 2018年の世界石油需要およ び供給見通し等の特徴などについて述べる(なお、デー タは原則、EIAと OPECが 10 月 11 日、IEAが 10 月 12 日にそれぞれ発表した最新のものに基づく)。 まず、需要面について。2018 年の世界石油需要は、 前年比で日量 139 万~ 158 万バレル程度の増加を見込 む(IEAが同141万バレル〈前年比1.4%〉、EIAが同158 万バレル〈同1.6%〉、OPECが同138万バレル〈同1.4%〉の、 それぞれ増加)(図 15)。2017 年と比べると、増加量 が拡大すると見ている機関と縮小すると見ている機関に 分かれる(2017 年は、IEAが同 158 万バレル〈前年比 1.6 %〉、EIAが同 135 万バレル〈同 1.4 %〉、OPECが同 145万バレル〈同1.5%〉の、それぞれ増加)。 地域的には、中国、インド、米国等で需要が増加する と予想されているが、とりわけ中国とインドの需要の伸 びが世界の需要の伸びの相当程度の割合を占めると考え られている。また、製品別にはLPG、ガソリン、ジェッ ト燃料等が需要の伸びの中心になると見られている。特 に LPGの伸びが顕著になるのが、2018 年の予想の特徴 であると思われる。これは、米国で 2017 年前半に 2 基 のエタン分解装置(エチレン製造装置)が操業を開始する 他、2018 年末までにさらに 5 基のエタン分解装置が操 業を開始する予定であることから、エタン(LPGの主要 成分の一つ)に対する需要が増加することが一因である。 また、中国でも、新規のプロパン脱水素化装置(PDH) の稼働により、プロパン(これもLPGの主要成分の一つ) の需要が伸びると考えている。 さらに、EIAやOPECは、中国でガソリン需要が伸び ると予想している他、EIAや IEAは中国でジェット燃 料の需要が伸びる旨指摘している。 一方、インドでは、2016年11月8日にモディ 首相により突然発表された通貨呼称の変更 (デノミネーション)政策により同国経済が混 乱した結果、2017 年前半にかけ、同国のガ ソリンや軽油といった石油需要が鈍化するな どの影響が生じたが、その反動で 2018 年の 同国の石油需要が伸びると IEAが予想して いる他、EIAや IEAはインドでの低所得者 層向けの LPG転換により、当該製品の需要 が増加するとしている。また同国では、石油 化学産業向けのナフサやエタンの需要も伸び ると EIAは見ている。他方、サウジアラビ アでは、2016 年は発電部門で天然ガスが利
4.
2018年に向けた世界石油市場に対する関係者の見方
80 100 120 140 160 180 200IEA EIA OPEC
日量万バレル
2016 2017 2018
出所:各機関資料を基に作成
各機関の世界石油需要増加見通し(前年比) 図15
用されるようになったことから、その際、 原油需要が減少したが、2018 年は天然ガ スが石油化学部門に利用されるようになる ため、発電部門では再び原油に対する需要 が増加するとEIAは説明している。 非OPEC産油国による石油供給やOPEC 産油国による NGL供給等はどうか。2018 年は、前年比で日量144万バレル程度の増 加を見込む(IEAが同155万バレル〈前年比 2.7%〉、EIAが同149万バレル〈同2.5%〉、 OPECが同94万バレル〈同1.6%〉の、それ ぞれ増加)(図 16)。これは増加量で見て も増加率で見ても、2017 年よりも伸びが 加速することを示している(2017 年は、 IEAが同67万バレル〈前年比1.2%〉、EIA が同64万バレル〈同1.1%〉、OPECが同68 万バレル〈同1.2%〉の、それぞれ増加)。 その伸びの主要な部分を占めるのが米国 である。2018 年の米国の石油生産量は前 年比で日量 85 万~ 123 万バレルの増加と 予想している(IEAが同112万バレル〈前年 比8.6%〉、EIAが同123万バレル〈同8.0%〉、 OPECが同85万バレル〈同6.0%〉の、それ ぞれ増加)(図 17)。これも増加量、増加 率のどちらで見ても、2017 年よりも伸び が加速することを示している(2017年は、 IEAが同 47 万バレル〈前年比 3.8 %〉、EIAが同 57 万バ レル〈同3.8%〉、OPECが同61万バレル〈同4.5%〉の、 それぞれ増加)。EIAは、Permian Basinでの原油生産 の増加が中心になるとの見解を明らかにしている。ただ OPECは、米国のシェールオイル生産のコストが上昇す るというのがアナリスト間での統一した意見であり、加 えて、生産性が良好な坑井からその周辺地域の坑井へと 操業地域が移行していくことから、各坑井の生産性は過 去に比べると劣る旨指摘していることを踏まえ、米国の 原油生産量の増加度合いが控えめにしていると見られ る。 また、米国メキシコ湾沖合では、2017 年には Tahiti 油田の拡張が完成するとともにHorn Mountain Deep油 田 が 生 産 を 開 始。 続 い て 2018 年 に は Big Footと Stampedeプロジェクトが操業を開始する他、他のプロ ジェクトも 2017 ~ 2018 年に操業を開始することが米 国メキシコ湾岸での増産に寄与するとしている。さらに、 EIAは、石油化学産業向けのエタン需要増加により、天 然ガス処理施設でのNGL(その大半の成分はエタン等の LPGである)生産が増加する旨予想している。 米国以外では、カナダ・アルバータ州の Fort Hills、 Meadow Creek、Kirby North等のオイルサンドプロジェ クトやニューファウンドランド州の Hebron重質油プロ ジェクトで生産を開始することが 2018 年の同国での石 油生産増加に寄与すると、IEAやEIAは観測している。 ブラジルでは、Santos Basinのプレソルト層開発が進 展、2017 年中にさらに浮遊式生産・貯蔵・出荷装置 (FPSO)1基(P-67)、加えて2018年に5基(P-69、70、 74 ~ 76)が、それぞれ操業を開始することで、生産が 増加すると見られている。また、カザフスタンでも Kashagan油田での生産拡大が、同国での石油供給増加 に貢献するとしている。さらに、カタールでは NGLの 生産が伸びるとEIAは指摘している。他方、メキシコや、 原油価格下落で経済性の低い坑井での生産を停止し、新 規油田開発投資を抑制した中国等では、石油生産は減少 すると見られている。 そして、世界石油需要から非OPEC産油国石油供給と OPEC産油国のNGL等を差し引いた、いわゆる対OPEC -100 -50 0 50 100 150 200
IEA EIA OPEC
日量万バレル 2016 2017 2018 出所:各機関資料を基に作成 各機関の非 OPEC 諸国石油供給増加見通し(前年比) 図16 日量万バレル 2016 2017 2018 -50 0 50 100 150
IEA EIA OPEC
出所:各機関資料を基に作成
各機関の米国石油供給増加見通し(前年比) 図17
8月下旬にハリケーン「ハービー」が米国メキシコ湾岸 地域に来襲した(暴風雨は勢力の強弱により呼称は変わ るが、ここでは便宜上「ハリケーン」とする。以下同様)。 今回の来襲に際し、米国では原油価格が下落した半面ガ ソリン価格が上昇。また、原油価格が下落したが、欧州 では逆に上昇する場面が見られた。例えば WTIのブレ ントに対する割安感が増大している(図19)。2005年 同時期のハリケーン「カトリーナ」の際には、米国と欧州 の原油価格が双方とも上昇したことから、例えば WTI とブレントの価格差はそれほど拡大しなかった(むしろ、 WTIのブレントに対する割高感が増大した場面が見ら れたほどである)(図 20)。なぜ、2005 年の時と今回 で原油価格に対する市場の反応が異なるのか。ここでは、 その背景について説明したい。 「ハービー」はメキシコ湾沖合南部を西進し、米国テキ サス州南西部のコーパス・クリスティ付近に上陸。その
5.
ハリケーン「ハービー」の石油市場への影響
原油需要等(「Call on OPEC」。ただしこれには在庫変動 も含まれる)は、2018年においてはIEAで日量3,248万 バレル、EIAで同 3,281 万バレル、OPECで同 3,306 万 バレルになると予想。2017 年と比べると機関によって 増加、減少と、見方が分かれている(IEAが前年比で日 量27万バレル減少、EIAが同1万バレル減少、OPECが 同21万バレル増加)(図18)。ただ、いずれの予想に従っ てみても、2018年第1四半期末でOPEC・ 一部非 OPEC産油国による減産が終了し、 以 降、 各 産 油 国 が 増 産 体 制 に 入 る と、 2018 年は再び供給過剰の状態に戻る恐れ がある。IEAの例を見ると、2018 年第 1 四半期まで現状の生産をOPEC産油国とロ シアが継続した場合、2017 年末までに OECD諸国全体では、2017 年 9 月末から 12月末前後までに石油在庫が約3,000万バ レル程度減少することになる。9 月末時点 でOECD諸国石油在庫が対5年平均を超過 する量は 1 億 4,000 万バレル程度と見られ ることから、2017 年末時点では、なお 1 億バレル程度の在庫余剰が存在すると推定される。そし て、2018 年第 1 四半期まで OPEC・一部非 OPEC産油 国が減産を継続した場合の 2018 年の世界石油需給バラ ンスシナリオを考えた場合(表7)、2018年は総じて供 給が需要を上回ることが予想される。このため、次回 OPEC総会等においては減産の再延長を検討する必要性 に迫られる可能性があることが示唆される。 (注) OPEC 産油国については 2017 年 8 月の原油生産量が 2018 年第 1 四半期まで維持されると仮定。 出所:IEA データを基に作成 2017 1Q18 2Q18 3Q18 4Q18 2018 総需要① 97.71 97.90 99.12 99.50 99.93 99.12 非 OPEC 生産 58.05 59.01 59.37 59.84 60.17 59.60 OPEC 原油生産 32.42 32.65 34.14 34.14 34.14 33.77 OPEC NGL 生産 6.91 7.02 7.07 7.03 7.03 7.04 総供給② 97.38 98.68 100.58 101.01 101.35 100.41 在庫変動その他(② - ①) -0.33 0.78 1.46 1.51 1.42 1.29 世界石油需給バランスシナリオ(2018 年) 表7 日量百万バレル 3,000 3,100 3,200 3,300 3,400IEA EIA OPEC
2016 2017 2018
日量万バレル
出所:各機関資料を基に作成
各機関の対 OPEC 原油需要等見通し 図18