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新学習指導要領における数学科 「資料の活用」および「データの分析」 で育む統計的問題解決授業

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Academic year: 2021

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(1)

授業案Ⅰ「中学1年

資料の整理」

貧困率”を例にした分布と代表値の理解」

(2)

本事例では、子どもたちの身の

周りの事象を事象を

実データ

を基

にして、統計的な観点から考察さ

せることをねらいとする。

(3)

学習指導要領では、中学校1年生の「資料の整理」 の目的として、 小学校における学習の上にたって、資料を収集、 整理する場合には、①目的に応じた適切で能率的 な資料の集め方や、合理的な処理の仕方が重要で あることを理解できるようにする。 さらに、ヒストグラムや代表値などについて理 解し、②それらを用いて資料の傾向をとらえ、説 明することを通して資料の傾向をよみとることが できるようにする。

(4)

問題解決場面に直面した時に、どのようなデ ータが必要であるか、そして、データをもとに、 どのような視点で考察・判断をするのかという 力を育成する授業を構成することが必要 この目標を達成するためには そのためにも生徒自身が解決の必要を感じる 問題場面を設定し、現実のデータを用いて解決 する授業が求められている

(5)

子どもはニュース等で今の日本経済の混迷の 状況を、「失業率○○%」という数値などを 新聞やニュースを通して知っている。しかし、 その現状が具体的にどのようになっているの かを知らない。

(6)

平成21年10月20日に、 政府が初めて、低所得者 の割合を示す「貧困率」 を公表し、話題となった。 公表されたのは、 厚生労働省が 「国民生活基礎調査」 をもとに算出した 「相対的貧困率」 である。 本実践で話題とする事柄 ~「収入の分布傾向」、「貧困率」~

(7)

厚生労働省の指標によると、 「所得を世帯人数に振り分けて高い順に並べたと きの中央値を基準に、その半分にも満たない人が 占める割合を示す。」 という指標に従って算出されている。 この報道を受け、「今まで代表値として主に平 均値が指標として使われる傾向にあったが、この たび、初めて中央値がクローズアップされた。」 と専門家は話している。

「貧困率」とは、

(8)
(9)

今回は、1998年以降の3年ごとの数値も公

表されたが、2007年は最悪な数値となってい

る。経済協力開発機構(OECD)の2008年報

告書では,2004年の日本の貧困率はアメリカ

に次いで世界のワースト4にあげられている。

「日本はアメリカに次いで貧困率が高い」と

聞くと、「なぜ世界で1番2番の経済大国で

貧困率が高いのか?」という、率直な疑問が

わき上がる。

(10)

厚生労働省発表の資料

(11)

 政府が「貧困率の改善」をかかげられている が、それがどのような分布になれば貧困率が改 善されたといえるのかという分布の形状につい ても考察する。 「国民生活基礎調査」のデータ(国民の収入 データ) (http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02010101.do) をもとに収入の分布の年次推移(平成8年、16年、 20年)について考察する。  収入の分布の年次推移と、現在話題になって いる「貧困率」との関わりについて考察する。

そこで、

(12)

1時間目

データの種類(質的データと

量的タータの違い)

データの整理の仕方Ⅰ

(幹葉図、度数分布表)

2時間目

データの整理の仕方Ⅱ

(ヒストグラム、度数分布多角形)

3時間目

データの整理の仕方Ⅲ

(相対度数、相対度数分布表、

相対度数の度数分布多角形を用い

た2集団の分布の傾向の比較)

2.指導計画

(13)

4時間目

代表値(平均値,中央値.

最頻値),範囲,データの

ちらばり,中心傾向の見方

5時間目

資料の活用の仕方(1)

「液晶テレビの消費電力量の

比較について」

(統計的手法を用いて2つの

データの比較を行い,レポ

ートにまとめる。)

(14)

6時間目

資料の活用の仕方Ⅱ①

7時間目

資料の活用の仕方Ⅱ②

(授業の感想等のレポート

は課題とする。)

(15)

収入の分布のグラフの形状を予測させる。

度数分布表から中央値・最頻値を算出

させる。

次に,データ(度数分布表)を提示し,

それをヒストグラムに表す。

(16)

①「最頻値」、「中央値」、「平均値」の位置関係はどの ようになっているか。また,それぞれどのように推移し ているか。 ②ヒストグラムの形や度数分布表の相対度数からデータが 集中している範囲(中心傾向)はどのように推移してい るか。 ③ヒストグラムの形状はどのように推移しているか。 ④ 年次推移(平成8年,16年,20年)を 比較し,収入分布の傾向をグループでまと める。(各班6~7人で模造紙にまとめる) 《考察の観点》

(17)

第2時(7時間目)

⑤ 「貧困率」を改善していくためには,どの ような収入分布が望ましいか,分布の傾向 を考える。 ① 新聞記事をもとに「貧困率」について紹介し、 深刻な状況であるという問題意識をもたせる。 ② 前時の「可処分所得」の年次推移(平成8年, 16年,20年)を分布の傾向から考察した ものを班ごとに発表する。 ③ 分布の傾向から,代表値について考察する。 ④ 自分たちの考察をもとに,「貧困率」とはど のような比率なのかを考える。

(18)

①中流階級の人が多いから。(多数)

②低所得者層の人と高所得者層の人に分か れるから。

③億万長者はごくわずかで、あまり所得が 多い人はいないから。

(19)

本時では階級の幅が2倍になれば,ヒストグラ ムの高さが2分の1,階級幅が3倍になればヒスト グラムの高さ3分の1となる理由を考えさせ,グラ フに表現させた。 総務省統計局・厚生労働省の公表データでは1000 万円以上の階級と1000万円未満では階級幅が異なる 度数分布表を提示している。 そこで,階級幅が異なる度数分布表からどのよう にヒストグラムをかけば分布の傾向が捉えられるか を考察させる。(統計学では,階級幅を度数で割っ た割合をその階級の“密度”という。 )

(20)

「中央値」は、累積比率が0.5の階級を 比例配分することにより求める。(既習事項)  ヒストグラムを作成した後、配布した「度数分布表」 をもとに「中央値」「最頻値」を計算させる。

「平均値」は、桁数が多くなり電卓では計算が煩雑にな るため、求め方のみ確認し、数値は与えることとする。 累積比率が0.5の階級は350万~400万で,階級幅は50万 比例配分を用いて,350+50× ≒357 よって,中央値は357 0 . 0 1 0 . 0 6

(21)
(22)
(23)
(24)

長妻厚生労働相は20日,低所得者の割合を示す 「貧困率」を公表し,2007年は15.7%であったこ とを明らかにした。政府として貧困率を公表する のは初めてであるという。今回は,1998年以降の 3年ごとの数値も公表されたが,2007年は最悪な 数値となっている。 また,経済協力開発機構(OECD)の2008年報告 書では,2004年の日本の貧困率はアメリカに次い で世界のワースト4にあげられている。世界でも 1位,2位の経済大国といわれる日本が高い貧困 率であるのはなぜだろう。 ①問題提起

(25)
(26)

新聞記事からの生徒の反応

アメリカも、日本も所得格差が大きいから。 貧富の差が大きいからだと思う。 「政府として貧困率を公表するのは初めて」 かつてなく、日本が深刻な状況にあるため、 政府も危機感を感じて警告を発したのだろう。 「2007年は最悪な数値となっている。」 世界不況の影響を日本も大いに受けているこ との表れといえる。(リーマンショック、サ ブプライムローン問題の影響など) 「世界でも1位,2位の経済大国といわれる日 本が高い貧困率であるのはなぜだろう。」

(27)
(28)
(29)
(30)
(31)
(32)
(33)
(34)
(35)

H8

H16

H20

平均値

538

455

448

中央値

467

379

357

最頻値

275

325

175

代表値を比較すると,

「最頻値」<「中央値」<「平均値」となりそれぞれ

の数値が年ごとに低くなってきているので,収入

が減少傾向にあるといえる。

(36)

②データの中心傾向(データの過半数が集中

している範囲)を調べると,

集中している範囲の収入の階級が

平成8年は150万~600万(54%)

平成16年は150万~550万(53%)

平成20年は50万~450万(53%)

平成8年,16年,20年と,年を追うごとに階 級が下がっているので,収入が低い層に集中してい ることがわかる。

(37)

3つの年度を比較して、いずれも、左に山が傾い たグラフで、年を追うごとに、山は左に移動して いる。これは、低所得者層が多くなっていること を表しているといえる。 山の左部分が特に増えている。これが低所得者層 の増加を意味しているのだろう。

(38)

分布から見て、収入が極端に高い人 がいるので、このような場合、平均 値はその影響を受けてしまうので、 平均値は適切ではない。

「平均値」

「中央値」

収入順にならべたときのちょうど中 央の金額だから、収入が極端に高い 人、低い人のちょうど中間を表して いるので、代表値として適している。

(39)

収入の分布は全体的に低い傾向に ある。そして、年次推移を見てい ると、山の位置が左に動いている。 これは低所得者の増加と見てよい から、これを代表値としてもよい のではないか。 「平均値」と「最頻値」は収入の変動の影響を受 けやすいが、「中央値」は収入順にならべたとき のちょうど中央の金額なので、収入の変動の影響 を受けないので「中央値」が適切

「最頻値」

(40)

貧困率には様々な決め方があり、

ある金額以下の世帯の割合を指標にす

るのを「絶対的貧困率」という。

「貧困率」とはどのような比率か。

ある金額以下の収入の人の割合ではな

いか。(例えば、50万円以下など。)

この指標をどのように決めるのか。

(41)

一方、中央値を基準として,その半分満た

ない世帯の割合を指標とするのを「相対的

貧困率」という。今回の貧困率は 「相対

的貧困率」をもとに算出されている。

「相対的貧困率」の定義は中央値が収入の

代表値として用いられることを利用して定

められた指標

といえる。

(42)

政府は「貧困率の改善」を目標にかかげ

ているが、現在の収入分布がどのような分

布になれば、貧困率が改善されたといえる

のだろう。理想の分布を考えてみよう。

(43)
(44)
(45)
(46)

現在は左寄りの分布であるが、それと 逆の状況をつくれば、貧困率は改善さ れるのではないか。

(47)

ただ山(「最頻値」)を右に寄せるのは 無理なので、できるだけ多くの人が収入 が多くなるように、2つの山をつくるよ うにしたらよい。

(48)

平成8年、平成16年、平成20年と比べ ると、全体的に左にかたよった(山が左に 寄った)グラフである。景気が良くなって もこの傾向は変わらないと考えられる。 よって、山(最頻値)の左側の部分が少な くなれば、収入が極端に低い人も減り、貧 困率は減少するのではないだろうか。

(49)

今、貧困者が多いが、それをいきなり高所得 者にするのは無理である。よって、できれば、 多くの人が中央値の周辺に集まるような分布 になればよいのではないかと思う。(「最頻 値」=「中央値」)

(50)

低所得者を減らすということは難しいが、 図のように、少しでもヒストグラムが右寄 り(「中央値」が少し右に寄り)、「中央 値」の少し下に集中すればよいのではない かと思う。

(51)

「中央値」の半分以下の人の割合が減少すれ ばよいので、「中央値」よりも左側の部分の 人が減少するような分布になれば貧困率は改 善されるといえると思う。

(52)

「中央値」の少し下に分布することによ って、貧困率を下げることができると思 う。つまり、50万円~100万円位の 低所得者を少なくすることが必要である と考えた。(「最頻値」<「中央値」)

(53)

「相対的貧困率」とは、中央値を基準とし て,その半分満たない世帯の割合を指標とし ているので、貧困率を改善するためには、以 下のように「中央値」の半分以下の人の割合 が減少すればよいので、「中央値」よりも左 側の部分の人が減少するような分布になれば 貧困率は改善されるといえると思う。

(54)

分布傾向と「平均値」「中央値」「最頻値」の関係 「平均値」=「中央値」=「最頻値」 ②、③のようなグラフでは、代表値はデータの変動 の影響を受けにくいので、「中央値」が適切 「平均値」<「中央値」<「最頻値」 ① ② ③ 「平均値」>「中央値」>「最頻値」

(55)

③単に貧困率15.7%といわれてもそれが

どのような意味をもつのかわからないが、分

布からみると、その意味が少しわかった

①日本は経済大国と言われているのに、ヒス

トグラムをかいてみて、予想以上に日本の

収入が低いことに驚いた。

②現実に起こっていることを数学的に見るこ

とにより、社会の様子が見えてくると感じた

(56)

④このような授業では、日頃、自分たちが

直接関わっていない経済のことについて知

るきっかけとなったと思います。「貧困率を

改善するには」という分布を考えることによ

って、これから収入の分布がどのような状況

になれば景気が改善していくのかということ

を考えるきっかけになったと思います。

(57)

⑤難しかったけれど、数学で経済のことが学

べるので役に立つと感じた。この分布のよう

に政府が貧困率改善に真剣に取り組んで欲し

いと思う。

⑥不況の影響がヒストグラムにはっきり表れ

ていることがわかった。

⑦ヒストグラムの形を見ることで、貧困率の

高さを実感した。政府はこの状況を真剣に受

け止めて対策を行って欲しい。

(58)

⑪数学と経済は別のことと考えていました。

しかし、関連があることがわかりました。

⑧自分の家はどの位置にあるか気になった。

⑨日本の所得格差の現状が見えた。

⑩私は経済の方にあまり目を向けないので

すが、この授業を通して、経済のことに

少し興味をもつことができました。

(59)

⑫今まで、日本は豊かな国と思っていました

が、実際にヒストグラムやデータから、日

本の現状がわかり、驚きました。今後、具

体的に、この状況をどのように改善してい

ったらよいのかを真剣に考えていくべきで

あると思いました。

⑬数学の授業で、現在の問題点をデータで考

えていくことにとても興味をもちました。

(60)

普段の数学ではあまり現実味のないデー

タから答えを求めていかなければならず、答

えも1つである。今回の授業は、現在の社会

を数学的に考えていくというもので、とても

興味をもてたと思う。現実のデータから考察

していくと意欲も持てるし、良いと思う。ま

た、社会を見る目も養われるので良いと思っ

た。

(61)

このたび問題にした「相対的貧困率」というの は定められた1つの“指標”であって、“指標”をどの ように定めるかによって、当然、貧困率の数値も 変わってくる。 よって、 1つの “指標”の定め方そのものに振り 回されることなく定めた“指標”の長所、短所を踏ま えて事象を考察させるという点についての扱いが 欠けていたのが反省点である。

「貧困率」という指標についての扱い

(62)

参照

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