第 30 章 地域編⑥:スマトラ
地域編⑥:スマトラ
第30章
地域概要
1.
概要 (1) ①インドネシア国内における経済的地位 スマトラは、インドネシアの西端に位置する 4 大島の 1 つで、島としては世界第 6 位の面積を 有している(約 48 万 k ㎡、日本の約 1.3 倍)。形状は北西から南東に細長く、南西はインド洋に、 北東はマラッカ海峡と南シナ海に面し、ほぼ中央を赤道が走る(図表 30-1)。 スマトラは 10 州(アチェ州、バンカ・ブリトゥン州、ブンクル州、ジャンビ州、ランプン州、 リアウ州、リアウ諸島州、西スマトラ州、南スマトラ州、北スマトラ州)からなり、2015 年の名 目 GDP は 2,588 兆ルピアで、インドネシア全体の 22.4%を占め、同国最大のジャワ(58.3%)に 次ぐ経済規模となっている。10 州のうちリアウ州の名目 GDP が最大(スマトラ全体の GDP の 25.2%)であり、以下、北スマトラ州(同 22.1%)、南スマトラ(同 12.9%)が続く。スマトラ最 大の都市は北スマトラ州の州都メダン市で、同国の 5 大都市の一つである。 スマトラは、オランダ植民地時代の 19 世紀後半からタバコ、コーヒー、ゴム、茶、胡椒、カカ オ、パームオイル等のプランテーション栽培が活発に行われている。森林資源にも恵まれ、木材 関連産業も発達している。このため、第一次産業の地域 GDP に占める構成比は 21.8%で、全国平 均(13.3%)よりも高い。また、天然資源が豊富で、石油、天然ガス、錫、ボーキサイト、石炭 等が産出されるtめ、鉱業は地域 GDP の 18.7%を占め、全国平均(9.8%)よりも高いことが特 徴である。また、近年は、経済成長に伴って消費市場も拡大傾向にある。 これらの点から、スマトラ進出に関しては、天然資源開発や農作物の大規模栽培を目的とした 進出であれば、一定のメリットがあるといえる。一方、輸出型製造業にとっては、裾野産業の発 達が遅れていること、一大消費地ジャカルタと離れていること等により、進出の魅力度はジャワ と比較すると、やや低いといえよう。 図表 30-1 スマトラの位置 (出所)白地図専門店(三角形)より作成 スマトラ メダン パダンインドネシアの投資環境 ②工業団地・日系企業進出動向 インドネシア投資調整庁(BKPM)によると、2016 年のスマトラの海外直接投資(FDI)の受 入れ総額(認可ベース)は 56.7 億ドルで、全国の 20.0%を占め、中部ジャワと並ぶ、外国直接投 資の集積地となっている。州別にみると、南スマトラ州(28 億ドル)が最も多く直接投資を受け 入れ、スマトラ全体の約半分を占める。次に、北スマトラ州(10 億ドル)、リアウ州(8 億 7,000 万ドル)が続く。 インドネシアの豊富な資源はスマトラ島に集中していることもあり、日系企業の進出動向をみ ても商社やプラント企業によるインフラ開発、資源関連プロジェクトが多く実施されていること がスマトラ島の特徴的である。一方、シンガポールにほど近いバタム島は、製造業の加工拠点と しての魅力もあり、製造業への進出が多く、中でも電気機器メーカーが目立っている。 また最近では、インドネシア政府は国内の自動車産業集積を、現在の集積地である西ジャワか らスマトラに移す可能性を検討しており、その理由を、インドネシア政府はスマトラには高速道 路や港湾インフラが整備されているためと説明している。当該計画は、あくまで長期的な計画で あり、実現までには同地域における自動車生産規模が採算レベルに達すること、産業インフラ等 のさらなる整備・集積を待つ必要があるとされている。 国際機関日本アセアンセンターによると、現在、スマトラには 14 ヵ所の工業団地がある。中で も、北スマトラ州に位置するメダン工業団地は、インドネシア財務省、北スマトラ州政府、メダ ン市の共同出資による開発公社(PT. Kawasan Industri Medan)が運営する工業団地であり、総面積、 進出企業数でスマトラ最大級の工業団地となっている(バタム島を除く)。但し、バタム島を除け ば、現状、スマトラに進出している日系企業は少ない。 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト (2) 図表 30-2 は、スマトラに進出した場合のメリットと留意点を整理したものである。 図表 30-2 スマトラ進出のメリットと留意点 (出所)各種文献より作成 スマトラにおいては、アチェ州サバン島が自由貿易区(FTZ)に、リアウ州のナツナ島とアチ ェ州サバンの 2 地域が経済統合開発地域(KAPET)に指定されている。このため、これらの地域 メリット 留意点 石油・ガスをはじめとする天然資源が豊富 国内最大の消費地ジャカルタからは遠い(特に中北 部) ゴム、カカオ、パームオイル等のプランテーション 農業が活発 ジャカルタ周辺と比べるとインフラの整備が遅れて いる 森林資源が豊富で、木材関連産業が発達 製造業の基盤となる裾野産業の発達が遅れている (産業構造に偏りがある) クアラルンプールやシンガポール等の大消費地に近 い 最低賃金水準が西ジャワ、中部ジャワよりも高い (但しジャカルタよりは安い) ジャワに次ぐ人口集積地であり、消費市場も拡大基 調にある 一部地域で治安が不安定(アチェ州など)
第 30 章 地域編⑥:スマトラ へ進出した場合は優遇措置を受けることができる。 また、経済特区(KEK)がアチェ州ロクスマウェのアルン、リアウ諸島州ビンタン島のガラン・ バタンに設置される予定である。経済特区内で事業を行う企業は、所得税や付加価値税、奢侈税 の優遇や、許認可の便宜措置が付与される。 スマトラにおけるインフラ・物流、労働事情、生活環境、その他については以下のとおりであ る。 ①インフラ・物流 【空港】 スマトラには国際空港が 2 つあり、1 つは北スマトラ州メダン市のクアラナム国際空港で、も う 1 つは西スマトラ州パダンのミナンカバウ国際空港である。クアラナム国際空港は航空需要の 増加に伴い、2013 年 7 月にそれまでのポロニア国際空港に代わって開港した。ポロニア国際空港 に就航していた民間航空会社の定期便は全て移転しており、現在、シンガポール、マレーシア(ペ ナン、クアラルンプール)、タイ(バンコク)等、3 ヵ国への直行便が計 1 日 7 便運航している。 ミナンカバウ空港からはクアラルンプールへの直行便が 1 日 2 便運航している。 【市内交通】 メダン市内では、近年、車が増えており、時間帯によっては渋滞がみられる。 【電力】 メダン市は慢性的な電力不足で、停電することもある。 ②労働事情 【人材】 スマトラの人口は約 5,500 万人(同国全体の 22%)であり、このうち労働力は 2,391 万人であ る。失業率は、北スマトラ州で 6.71%、西スマトラ州で 6.89%、リアウ州で 7.83%(2015 年時点) と全国平均より高いため、ワーカーの採用に際し、人材不足の問題はない。 【賃金】 スマトラ島の各州の賃金水準は全国平均を上回っている。2017 年の月額最低賃金では、バンカ・ ブリトゥン州の 254 万ルピア(約 20,800 円)がスマトラ島内で最高であり、2007 年からの 10 年 間で 3.5 倍に高騰している。この他、アチェ州(250 万ルピア、2.9 倍)、南スマトラ州(239 万ル ピア、3.6 倍)、リアウ諸島州(236 万ルピア、2.9 倍)、リアウ州(227 万ルピア、3.2 倍)におい ても最低賃金が高騰しており、いずれの州においても全国平均(208 万ルピア:約 17,000 円)を
インドネシアの投資環境 上回る水準となっている。 ③生活環境 【一般】 北スマトラ州の州都メダン市はインドネシア第 4 の大都市(人口:250 万人、2017 年)であり、 基本的な生活環境は整っている。 【食事】 多くはないが日本食レストランはあり、回転寿司も楽しめる。その他中華料理店、韓国料理店、 タイ料理店等がある。また、ファーストフード店として、ハンバーガーやフライドチキン、ドー ナツ等のチェーン店もある。 【教育】 かつて開校していた日本人学校は 2002 年に廃校となっており、現在、開校している日本人学校 はない。インターナショナル・スクールでは、国際バカロレア認定を受けた小・中学校課程を提 供する“Medan Independent School”が 1969 年から開校している。
【住居】 住環境面では、メダン市のポロニア地区が外国人の多く居住する高級住宅街として知られる。 【治安】 同地域最大都市であるメダン市はインドネシア内でも特に治安の悪い都市と言われている。ま た、反政府組織の活発であったアチェ州では、独立派組織「自由アチェ運動」(GAM)による大 規模な独立運動が行われた。2005 年 8 月に政府との間で正式に和平合意がなされたものの、一部 の県では武器弾薬が残っているとみられ、過去の選挙では銃器を使用した犯罪が度々発生してい る。また同州は大麻の産地であり、覚せい剤等の薬物も多く出回っているため、治安情勢には十 分な注意が必要となる。 尚、同州は国内の他州と異なり、厳格なイスラム法が適用されているため、許可された場所以 外での飲酒は避けることが求められる。 【その他】 日本人会(メダン・ジャパンクラブ)があり、現在、会員数は 62 名(正会員:29 名、家族会 員:16 名、子供:17 名)となっている。年に数回の親睦会や、企業見学会等のイベントが開催さ れている。
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主要工業団地
2.
スマトラ島に立地する主要工業団地を以下の表にまとめた。
No. 工業団地名 Address(県/市) 総開発面積
1 Kawasan Industri Asia Blang Aceh Besar 350 ha
2 Kawasan Industri Asia Pasai Aceh Utara 120 ha
3 Fultek International Development Deli Serdang 70ha
4 Gunung Harapan Sentosa Medan 514ha
5 Harmoni Nusantara Development Deli Serdang 300ha
6 Kawasan Industri Belawan Medan 150ha
7 Medan Industrial Estate (Kawasan Industri Medan)
Wisma KI M, Jl. Pulau Batam No.1 Komplek
KIM Tahap II, Medan 20 242, Sumatera Utara 780 ha
8 MedanStar Industrial Estate Jl. Medan - Lubuk Pakam km 19, Tanjung
Morawa 103 ha
9 Meil Nusantara Development Medan 14ha
10 Natsteel Wilmar Gemilang Medan 250ha
11 Pondok Tirta Satria Medan 100ha
12 Pulahan Seruai Industrial Estate Jl. Tangkul Seruwei - Kawasan Industri
Lamhotma, Belawan - Medan 650 ha
13 Sarana Tamoratama Permai Deli Serdang 150ha
14 Padang Industrial Park
Komplek Kawasan Industri Padang Jl. By-Pass Kec. Batang Anai, Kab. Padang Pariaman, West Sumatera