一50一 食 物 学 会 誌 ・第9号
食 品 の調 理 方 法 の研 究(第1報)
調 理 に よ る硬 さの 変 化 に つ い て
白
嵜
多
恵
子
江
崎
君
子
緒 言 調 理 中 に 起 る種 々の 問 題 点 の うち,食 品 が 調 理 操 作 に よ っ て受 け る変 化 を主 とし て 家 庭 で 行 うも の を 対 象 と し て,こ れ を 適 確 に と らえ るた め に 実 験 を 試 み た 。 先 ず 調 理 方 法 に よ っ て,主 に 食 品 の 形 態 とか 咀 囎 し易 さに 直 接 影 響 す る 原 因 の 一 つ と 考 え られ る所 謂 硬 さ の 化学 的 性 質 の変 化 は 勿 論 重 要 な 課 題 で あ る。 而 し 又 ・ 物 理 的 性 質 の 変化 を 知 る事 も調 理 に 際 し て 欠 く こ とが 出 来 な い 。 物 理 的 性 質 に 関 す る研 究 は1968年 K「uiseer, L・・Her・er・Kret…tmutars等 は , 官 能 的 に 判 断 され た 硬 さ と,客 観 的 な 試 験 法 に よっ て 得 ら れ た デ ー タ ー と の 相 関 は 高 い も の で あ り,又 官 能 的 判 断 法 の不 備 の 結 果 を 生 ず る結 果 の 偏 差 は,機 械 的 装 置 の 不 完 全 さに よ っ て生 ず る偏 差 と同 様 な も の で あ る と報 告 し て い る 。 調 理 技 術 は 従 来,所 謂 腰 や 手 触 り 感 覚 な どの 経 験 に 頼 る こ とが 多 か っ た が,こ れ を 数 字 的 に 知 る事 は,調 理 技 術 を 身 に つ け る上 に 最 も適 確 な 方 法 と云 え よ う。 既 に 硬 さ に 関 し て はLihouitz式 改 良 測 定 器 等を 用 い た 種 々 の報 告 が あ るが,私 達 は カ ー ドメ ー タ D'よ っ て 調 理 す る立 場 か ら これ を 取 上 げ 本 実 験 を 行 った 。 実 験 の 部 1寒 天 の硬 さにつ いて 1.試 料 長 野県 角 寒 天 2.実 験 方 法 下 記 の実 験 条 件 の 中1条 件 を 変 化 させ て 次 の 実 験 を 行 った 。 i 浸 水 時 間 30分 ii 加 熱 時 間 960C土1C。 で200CCま で 濃 縮 iii凝 固 させ る 温度 23。C lV放 置 時 間 v 寒 天 濃 度 vi凝 固 させ るに 用 い た 容 器 1時 間 1.25°0 ア ル ミ製 プ リ ン 型 vii測 定 時 試 料 温 度 viii感 圧 軸 及 び 錘 ix 測 定 値 23°C 直 径5mm,200g 各 々10回 宛 測 定 した 値 の算 術 平 均 値 3.実 験 結 果 及 び 考 察 1)寒 天濃 度 と放 置 時 間 に よ る ゼ リー 強 度 (第1図) 25,,50,,' 寒 天 を 溶 解 す る場 合 は,先 づ 水 に 浸 漬 し て吸 水 膨 潤 させ て か ら 加 熱 す る の が 常 識 と され て い るが,こ の 浸 潰 時 は ゼ リー強 度 に は 殆 ん ど影 響 が な い との報 告 が あ る の で,浸 漬 時 間 は30分 と定 め 濃 度 に よ る ゼ リー 強 度 と放 置 時 間 に よ るゼ リー強 度 とを 比 較 測 定 した 。放 置 は 冷 蔵 庫 内 の 温 度 を100Cに 調 節 した 中 で,凝 固 さ せ る に 用 い た 容 器 の ま ま行 った 結 果,第1図 に 示 す 様 に 寒 天 濃 度1°oよ り1.25°o,1,5%と 次 第 に 濃度 順 に ゼ リー 強 度 は 高 く放 置 時 間 に よ るゼ リー強 度 は,時 間 の 経 過 と共 に 漸 次増 加 の 傾 向 を 示 す 。 これ は放 水 の度 合 及 び 加 熱 の 程 度 に も関 連 あ る もの と推 定 され る。 2)加 熱 程 度 に よ る ゼ り一 強 度 寒 天 は 加 熱 す る事 に よつ て よ く溶 解 し,遊 離 水 が 結 n特 別 研 究 生昭 和36年2月(1961) 合 水 の 形 とな っ て ゾル状 と な る。 加 熱 時 間 の ゼ リー強 度 に 及 ぽ す 影 響 は,実 験 に 用 い る寒 天 液 の 量 や 使 用 器 具 等 に よつ て 多 少 の ずれ が 生 ず る と予 想 され るが,山 崎 氏 の 報 告 に よれ ば,あ る一 定 時 間 ま で は ゼ リー強 度 は 次 第 に 強 ま り,そ の 後 低 下 の 傾 向 を 示 す と報 告 され て い る。 第1表 の 結 果 に 於 て も加 熱 時 間 凡 そ40分 迄 は ゼ リー強 度 は 高 くな り,そ の 後 低 下 の 傾 向 を 辿 っ た 。 (第1表) (第2表) 一51-一 水 (cc) 塩 (9) ゼ リ ー 強 度 200 0 60.2 2QO 2 67.3 250 2 55.6 300 2 53.2 400 2 .・ く塩 添 加 に よつ て 一 旦 ゼ リー強 度 は 高 くな るが,濃 縮 程 度 が 高 い程,次 第 に 強 度 は 減 少 す る。 水 (cc) 所要時 間(分) ゼ リ ー 強 度 200 16 .・ 250 40 50.3 300 84 44.8 350 122 43.2 XOO 5)酸 添 加 時 期 に よ る ゼ り一 強 度 165 45.2 これ に よ り一 定 濃 度 の 寒 天 ゼ リーで は,寒 天 が 単 に 溶 け る とい う よ りは 更 に 加 熱 時 間 が 或 程 度 長 い 方 が 有 効 で あ る。 しか し限 度 を 超 えれ ば却 つ て ゼ リー強 度 の 上 か ら不 利 とな る こ とが わ か つ た 。 3)糖 添 加 量 に よ る ゼ リ0強 度 添 加 す る糖 の 種 類 に よつ て,ゼ リー強 度 は 異 るが, 一・般 に 調 理 に 多 く用 い られ る三 盆 白を 用 い て 寒 天 が 完 全 に 溶 解 し た 時 に 添 加 した 。 砂 糖 濃 度 は 寒 天 液 に 対 す る重 量jOで10°oよ り100%の 間 で 調 整 し た 。 そ の 結 果 第2図 の 如 く砂 糖 濃 度 に 比 例 して ゼ リー 強 度 は 高 くな る。 これ は 寒 天 分 子 と砂 糖 分 子 との 分 子 相 互 の 摩擦 に よ る も の で,両 老 の 加 熱 時 間 が 長 い 程,分 子 相 互 の 摩 擦 も大 とな る為,更 に 砂 糖 の 粘 度 に 作 用 を 受 け る もの と考 え られ る。 しか し100%に 於 て の 強 度 の 低 下 は ゼ リーが 飴 状 と な り,そ の 為 に 寒 天 の 完 全 ゲ ル化 が 妨 げ (第2図) 寒 天 液 に 酸 を 加 え て 加 熱 した 場 合 は,凝 固 力 が 減 少 す る こ と は既 に 柳 川 氏 に よ り報 告 され て い る。 果 汁 の 様 に 有 機 酸 を 含 む 液 を 加 え て ゼ リ ーを 作 る場 合 は,寒 天 に 水,砂 糖 を 加 え て 加 熱 溶 解 した 液 を 火 か ら お ろ し た 後,果 汁 を 加 え るの が 普 通 で あ る。この 場 合 寒 天液 の 温度 が,ゼ リー 強 度 に 影 響 を 及 ぼ す もの と考 え られ る の で2%ク エ ン 酸 を 添 加 す る時 期 を 変 え,ゼ リー強 度 を 測 定 し た 結 果,第3表 の 如 く酸 を 加 えた 後 も加 熱 を 続 け れ ば凝 固能 力 を 失 つ て 数 値 を 得 る こ とは 出 来 な か つ た 。 添 加 時 期 の 温 度 が 低 い 程,ゼ リー強 度 は 増 加 の 傾 向を 示 した 。 又98。C即 ち 消 火 直 後 に 添 加 し た 場 合 は 著 し く強 度 は 弱 くな る。 この 結 果 よ り400C∼600C で は 比 較 的 安 定 な ゼ リー 強 度 を 示 す が,80QC以 上 に な れ ば 寒 天 の 分 解 を 促 進 す る も の と考 え られ,添 加 時 の至 適 温 度 は40。C∼600Cと み られ る。 (第3表) 1添 加 時 期 凝 固 状 態 1 2 3 4 5 6 7 浸水 前 加熱 直前
溶階 襲 鵠 鍵c
消 火 直 後(97。C) sa°c sa°c 4a°ci}
一
34.6 44.7 5a.1 51.0 6)酸 添 加 量 に よ る ゼ リー 強 度 の 変 化 られ る もの と推 察 され る。 4)塩 分添 加 の 加 熱 程 度 に よ るゼ リー 強 度 通 常 調 理 に 広 く用 い られ る塩 分 割 合1,0を 寒 天 が 完 全 に 溶 解 し た 時 に 添 加 した 。 そ の結 果 は,第2表 の 如 第3表 の実 験 で 寒 天 液 に 酸 を 加 え て 加 熱 した 場 合 は 凝 固 力 が 減 少 す る事 を 明 か に し た 。 次 に 予 備 実 験 とし て,寒 天 液 が εooC以 下 の 時 に 酸 を 添 加 し て も,酸 の 濃 度 に よつ て ゼ リー強度 に 及 ぽ す 影 響 は 比 較 的 そ の 差 が 少 い の で 酸 添 加 時 期 は 消 火直 後 97。Cと 定 め た 。常 温 の クエ ン 酸 の 添 加 量 を 変 え て実 験 し た 結 果 第4表 の如 く濃 度28,°0では ゼ リー強 度 零 を 示 し,2.5%で 漸 く ゼ リー強 度 測 定 可 能 の 状 態 とな つ た 。 濃度 の 差 が 比 較 的 少 い0.25%よ り0.1joま で の間 で は 強 度 の 差 が 大 き く,そ れ に 比 し て0.5%以 下 で は漸 次一52一 強 度 が 高 くな る傾 向 で あ る 。 従 つ て 酸 の ゼ リー強 度 に 及 ぽ す 影 響 は,酸 の 濃 度 の 差 と常 に 一 定 の 比 率 が な く (第4表) 食 物 学 会 誌 ・第9号 濃 度 が 高 い 時 ほ ど僅 か の 差 で もゼ リー 強 度 に 及 ぼ す 影 響 は 著 しい 。 濃度(%)128 a51α2510.20.・5 0.1 o.・JO.・250.・ ・250.・ ・S3f…3・1α …!α ・・… P H2.3・la35}a851a9・3.・ ・}a・53.5・139り143・(5.25(6.・ ・6.7・6.8・6.4・ ゼ リー強 劇 ・ 7.1 27.2 34.240.7146.753.・53.8'54.8(55.6 5α215乳2 5&616α3 な お 今 回 は 一 般 に 用 い られ て い る角 寒 天 を 試 料 とし て 行 つ た が グ ラ ニ ユ ー ル 状 の 寒 天 及 び ゼ ラチ ン等 の 硬 さ は 今 後 の 課 題 と した い 。 皿 豆腐 の硬 さにつ いて 1.試 料;同 一 製 造 元 の 市 販 豆 腐 2.実 験 方 法;試 料 は な るべ く無 傷 の もの を 選 び3cm角 と し た 。 測 走 時 の 温 度 は27。C,感 圧 軸 は 直 径8mm,錘 は200gを 用 い 数 値 は 測 定 値 の10回 の 算 術 平 均 で あ る。 3 実 験 結 果 及 び 考 察 1)塩 分1°o液 中 の 加 熱 に よ る 硬 さ の 変 化 液 中 の 温度 が100。Cに な っ た 時 試 料 を 入 れ,98。C± 1QCの 温度 で 加 熱 した 場 合,加 熱 時 間 と硬 度 との関 係 は 第5表 の 如 くで あ る。 (第5表) な もの で 調 理 の 際 単 に 如 で る とい う 目的 の 場 合 は1% 迄 で 行 うのが 普 通 で あ る。 而 し1°oで も相 当 の 効 果が み ら れ る点 か ら,澱 粉 汁 使 用 の 利 点 を 再 認 識 した 。 ID 卵豆腐 のか た さについ て 卵 豆 腐 の 卵 と煮 出 汁 の 割 合 は,そ の 用 途 に よつ て 異 るが,一 ・般 に か た さ の 程 度 を 卵1個 につ い て 煮 出 汁 を 定 め る。 実 験 に 用 い る 卵 は1個50ccの もの を 選 び 煮 出 汁 の 割 合 を 各 々1:1か ら1:4ま で の 間 で,か た さの 変 化 を 調 べ た 。 卵 は 出 来 るだ け 均 一・に す る為,一 様 に 同 時 に と き各 試 料 とし た 。 蒸 し 器 中 の 温 度 は86。C±10C で20分,測 定 時 の 温 度 は270C,感 圧 軸 は 直 径8mm, 錘2009を 用 い 測 定 し た 結 果 第7表 の 如 くで あ る。 (第7表) 卵:煮 出 汁 加熱時間(分) か た さ 2.30 64.7 5 77.8 10 15 か た さ 1:1 33.6 1:2 14.5 1:3 7.9 1:4 102.3 .・ 132.2 以 上 の 様 に 加 熱 時 間 が 凝 固 に 及 ぼ す 影 響 は 顕 著 で あ り,特 に10分,15分 間 の 加 熱 で は急 激 に 硬 さを 増 す と 同 時 に"す だ ち"の 多 い 状 態 となつ た 。 2)澱 粉 液で茄で る豆腐 の硬 さ 通 常 豆 腐 を 茄 で る場 合,澱 粉 液 に よっ て行 う事 が 多 いが,こ の 効 果P'つ い て 第6表 の 如 く生 水 で 妬 で る場 合 と,片 栗 粉 の 濃 度 を0.5°o,1%,2%,3%と して 賄 で 時 間 は980C3分 に つ い て 各 々の 硬 さを 調 べ た 。 (第6表) 茄 で る前 絹漉豆 腐 14.2 木綿豆 腐 42.3 上 記 の 割 合 に よ る卵 豆 腐 の 状 態 は,卵 と煮 出 汁 が 同 量 の 場 合 に は,切 つ て 形 を 完 全 に 保 つ 状 態 で,割 合 が 1:2の 場 合 に は,切 つ て 形 は 保 つ が 動 揺 す る状 態,1:3 の 場 合 は 強 く動 か せ ば 崩 れ る心 配 の あ る状 態,1:4で は殆 ん ど半 流 動 状 に 近 い 状 態 で 切 つ て 漸 く形 を 保 つ 程 度 で あ っ た 。 尚 参 考 の 為 に プ デ ィ ン グ及 び ブ ラマ ン ジ エ の か た さを 調 べ た 。 調 合 割 合 は 一一般 に よ く用 い られ る分 量 で 行 つ た 。 そ の 結 果 は 第8表 の如 くで あ る。 こ の 場 合 卵 豆 腐 に 比 べ て プ デ ィ ン グ は,牛 乳 中 の 蛋 白 質 凝 固 に よつ て か た さ の 程 度 が 高 い 。 また ブ ラマ ン ジ エ は コン ス タ ー チ を 牛 乳 と水 の 液x,約1%を 混 入 した の で,澱 粉 ゲ ル 化 の 影 響 で 更 に か た さの 程 度 は 高 くな る と推 測 され る。 (第8表) 茄 でた後
材
澱 粉 濃 度(%) か た さ 0 64.8 0.5 59.2 1 53.S 料 2 50.4 3 44.2 結 果 よ り3%澱 粉 液 に よ る硬 さ は,殆 ん ど生 豆 腐 に 近 い 値 を 示 し た が,一 般 に3° °の 濃 度 とは 相 当 に 濃 厚 e7 ア イ ン グ A B 卵 牛乳 砂糖 50cc 180cc 209 卵牛 乳 砂糖 100cc 180cc 20g か た さ 16.6 ・昭 和36年2月)1961)