「物流の最適化」でものづくりニッポンを⽀支える。
物流の価値を決める「スピード」「品質」「コスト」を、従来は「⾜足し算」で評価してきた。このうちのどれ かがゼロでも他の要素がカバーしていれば良かったのだ。しかし、これからは「掛け算」で評価すべきだ。3 つのうち、1つがゼロなら全体がゼロに。マイナスなら全体がマイナスになる。スピードと品質を向上させな がら、コストもリーズナブルであり、さらに総在庫量の圧縮をも可能にする。それこそが国際競争⼒力力の向上に 資する物流といえる。 物流を「バリュー(付加価値)を⽣生み出す⼿手段」に進化させ、顧客の業種・事業規模を問わない「物流の改 ⾰革」を実現する。それがヤマトグループの「バリュー・ネットワーキング」構想だ。2013年7⽉月3⽇日、ヤマトグループは新たな物流拠点の稼働を契機とした
「バリュー・ネットワーキング」構想を発表した。
⽇日本経済の成⻑⾧長戦略に資する「物流の改⾰革」とは。
「これは1929年、⽇日本初の『路線事業』、
1976年の『宅急便』に次ぐ、当社にとって第3のイノベーションだ」
記者発表においてヤマトホールディングス社⻑⾧長・⽊木川眞はそう切り出した。 さらに、「われわれは宅急便の会社として、『to C(個⼈人宛て)』の配送に圧倒的な強みを持つグループと思 われてきた。今後もこの強みは少しも揺がない。しかし今回は『B to(企業から出荷される荷物)』において も、圧倒的な強みを持ったグローバルな総合物流企業になる。⽇日本再⽣生のために政府が描いている⻘青写真は 『ものづくりの再⽣生』だ。⽇日本のものづくりを担う1次産業、2次産業の国際競争⼒力力を、今後どこから⽣生み出 すのか。 われわれは『その原資こそ、物流にあり』と考えている。これまでも製造業は製造コストや⼈人件費の削減に注 ⼒力力してきた。急速にグローバル化、ボーダレス化が進展し、取引先や⽣生産拠点が分散化、複雑化したのも、も ともとの課題はコスト削減だった。しかし今後も同様の⽅方法で国際競争⼒力力を維持できるかというと、⼤大変難し い状況だ。⼀一⽅方で、製品が出荷された後のコスト・コントロールはどうか。多くの企業が第三者に任せきり で、在庫量のマネジメントを含めた『物流の最適化』には⼤大きな課題が残っている。この物流の最適化こそ が、われわれが『バリュー・ネットワーキング』構想で⽬目指す物流の改⾰革なのだ」と⼒力力説した。 ヤマトグループはこの第3のイノベーションのために、6年前から4つのプロジェクトを推進してきた。アジア における宅急便ネットワークの構築、アジアと⽇日本を結節する総合物流ターミナル「⽻羽⽥田クロノゲート」の建 設、国内主要都市間の当⽇日配達を実現する「ゲートウェイ」ターミナルの新設、アジアへの翌⽇日配達を実現す る沖縄国際物流ハブの本格稼働がそれにあたる。これらと国内最強の宅急便ネットワークを融合させ、かつて ないスピードと付加価値を持った物流をローコストで、かつクラウドのように提供するという。 では「バリュー・ネットワーキング」構想の内容と、具体的な事例をご紹介しよう。「バリュー・ネットワーキング」構想5つのエンジン
ENGINE① 「スピードと付加価値機能を⼀一体化」した多機能スーパーハブ
「⽻羽⽥田・厚⽊木・沖縄」の本格稼働
価値を付加しながら素早くネットワークを結節する「止めない物流」
ENGINE② 「まとめて預かり、最適化しながら複数カ所に届ける」を
ネットワーク上で素早く、確実に遂⾏行行する「FRAPS」
出荷場所・出荷形態・出荷量を問わない「クラウド型のネットワーク」
ENGINE③ 「国際クール宅急便」のスタート
世界初「一貫保冷・国際小口輸送」ネットワーク
ENGINE④ 出荷から到着までを、シームレスに「デジタル情報化」
送り手、受け手が共有できる「物流の見える化」
ENGINE⑤ 「受け⼿手(調達)」、「送り⼿手(供給)」双⽅方のニーズを満たす
スピードアップ ⾼高品質 ローコストを実現し、さらに総在庫量を削減。
ENGINE① 価値を付加しながら素早くネットワークを結節する「止めない物流」
⽻羽⽥田クロノゲートは、⽻羽⽥田という⽴立立地を活かした陸海空のスピード輸送と24時間365⽇日稼働の付加 価値機能を⼀一体化した、⽇日本最⼤大級の物流ターミナルである。 そして、荷物に「バリュー」を付加する機能として、クロスマージ、機器メンテナンス/アッセン ブル/キッティング、保税/ローカライズ、スピード通関、お届け先ごとの広告印刷と選択封⼊入と いった機能を備えている。⽻羽⽥田クロノゲートと同じく発着同時スピード仕分けを24時間365⽇日体制で⾏行行うことにより、主要都 市間の多頻度幹線輸送を実現するのがゲートウェイである。まずは、⾸首都圏の⽞玄関⼝口として、厚⽊木 ゲートウェイが稼働。続いて、中部・関⻄西エリアにもゲートウェイの建設が予定されており、当⽇日 配達エリアが順次拡⼤大されていく予定だ。 施設内には、「バリュー」を付加する機能を備えており、現在のところ、クロスマージ、カスタマ イズ/アッセンブル、品質確認などが可能となっている。 航空貨物輸送の発着拠点として、アジア各都市と国内 物流網を結ぶのが沖縄国際物流ハブだ。ここも24時間 365⽇日体制で稼働するが、特筆すべき点は、施設内で 迅速に通関できるという点だ。この沖縄国際物流ハブ のある那覇空港に隣接する「国際ロジスティクスセン ター」の敷地の⼀一部は保税蔵置場としても利⽤用できる ため、輸⼊入ビジネスにおいては商機が来るまで関税を 保留することができる。この利点を⽣生かして、緊急 パーツセンターの設置も可能だ。 その他の「バリュー」を付加する機能としては、品質確認、クロスマージ、機器修理/メンテナン ス/アッセンブルなどが挙げられる。
ENGINE② 出荷場所・出荷形態・出荷量を問わない「クラウド型のネットワーク」
⽻羽⽥田クロノゲートは、⽻羽⽥田という⽴立立地を活かした陸海空のスピード輸送と24時間365⽇日稼働の付加 価値機能を⼀一体化した、⽇日本最⼤大級の物流ターミナルである。 そして、荷物に「バリュー」を付加する機能として、クロスマージ、機器メンテナンス/アッセン ブル/キッティング、保税/ローカライズ、スピード通関、お届け先ごとの広告印刷と選択封⼊入と いった機能を備えている。 在庫を圧縮しながら通販の顧客など複数の相⼿手に届けるのが、ヤマトグループ独⾃自規格の流動型 ラックを⽤用いたソリューション「FRAPS(Free Rack Auto Pick System)」だ。全国各地の顧客 へ商品を素早く配達できるうえ、倉庫や⼈人⼿手など⾃自社の資源を極⼒力力使わずに済むため、固定費を減 らしてトータルコストを削減することができる。国内外を問わず、在庫・出荷の場所も選ばない。⼩小⼝口でも最寄りの宅急便拠点に商品を預ければ、 そこがシームレスな物流ネットワークの⼊入り⼝口となる。まさに「クラウド型のネットワーク」であ る。
ENGINE③ 世界初「一貫保冷・国際小口輸送」ネットワーク
これまでにも楽天やヤフー⾹香港との協業や、またヤマ トグループ独⾃自でも⽇日本の農⽔水産物を⾹香港の消費者や 店舗へと配達する取り組みを試験的に⾏行行ってきたが、 この2013年中にいよいよ本格稼働する。⽇日本で収穫さ れた新鮮な果物や⽔水産物を⼀一貫保冷輸送し、発送した 翌⽇日には⾷食卓に並ぶというサービス体制により、⽣生産 者は⾮非常に⼤大きな価値を提供することができる。つま り⾼高級⽣生鮮品として輸出することができるのだ。 ゆくゆくは台湾などアジア各都市に広がる宅急便ネットワークとも連結していく予定だ。ENGINE④ 送り手、受け手が共有できる「物流の見える化」
物資を調達したり、商品を購⼊入した際、これまでは搬送中の情報が必ずしも共有されていない現実 があった。そのため「現物が今どこにあるのか」といった受け⼿手からの問い合わせに対して、送り ⼿手が即答できず、確認作業が発⽣生したりクレームに発展したりという現場の悩みがあった。しかし ITを駆使することで、販売、運送、購⼊入すべての関係者が情報を共有できる仕組みを構築。これに より流通在庫の削除など、物流のあらゆるムダを削除する。ENGINE⑤ 「デマンド・チェーン視点」の物流最適化
物資の供給体制を最適化する際は、送り⼿手(供給側)の効率化ばかりを追求するのでは必ずしも⼗十 分とはいえない。受け⼿手(調達側)の困りごとや⼿手間が解消されるとは限らないからだ。そこで、 宅急便で培ったユーザー⽬目線を企業間物流に応⽤用。受け⼿手(調達側)のニーズから物流をデザイン する。 後に「ジャスト・イン・タイム⼀一括店舗納品」「複数サプライヤーからの部品調達」といった事例 をもって詳述するが、肝要なのは、調達側にとって在庫が滞留せず、⼿手間がかからない仕組みづく りである。スピード通販
© 弘兼憲史/講談社 通販事業者の拠点からヤマトグループに受注した商品を⼀一括発送(トータルピッキング)。この時 点で通販事業者が受注分を仕分けする必要はなく、ゲートウェイや宅急便ターミナルで購⼊入者別に 仕分けられ(シングルピッキング)、販促チラシやサンプル品などと共に梱包される。そして全国 の購⼊入者に配達される。⼀一連のスピードと品質は⼤大⼿手通販事業者と同等ながら、コストを上げずに 利⽤用できるところが⼤大きな魅⼒力力だ。分散在庫型スピード通販
© 弘兼憲史/講談社 通販事業者の商品を、主要マーケットに近い物流拠点に少しずつ分散させておき、注⽂文が⼊入れば最 短4時間のスピード配達で購買者の⼿手元に届ける。そして通販事業者は売れた分だけを補充。⾃自前の 倉庫を持たず、在庫もコストも増やすことなく、最⼤大⼿手通販事業者にも匹敵するサービスレベルで 通販事業を展開できるのがポイントだ。© 弘兼憲史/講談社 例えば、昼間に⽣生産者が発送した⽣生鮮品を、クール宅急便で⽻羽⽥田クロノゲートに輸送。深夜0時に⽻羽 ⽥田空港を⾶飛び⽴立立ち、深夜2時35分に沖縄着。那覇空港の国際物流ハブで通関、そして納品先ごとに マージされ、早朝5時15分には沖縄をたつと、6時50分には⾹香港空港に到着。検疫・通関を経て、⾹香 港ヤマト運輸のネットワークによって、その⽇日の午後には購買者や飲⾷食店、販売店へと配達され る。⾶飛躍的なリードタイム短縮を果たすとともに、その全⼯工程において⼀一貫保冷輸送がなされ、⽇日 本の⾼高品質な農⽔水産物のアジアへの販路拡⼤大が可能になる。
国際クール宅急便 ∼生鮮品のアジア向け翌日配送モデル∼
ジャスト・イン・タイム一括店舗納品
© 弘兼憲史/講談社 多くのサプライヤーから多品種多頻度で調達を⾏行行っているチェーンストアや店舗は、アジア各地の メーカーから商品を調達するケースが多い。その際、物流の管理が煩雑になるため、ヤマトグルー プがこれを代⾏行行。まず、⽣生産地から沖縄国際物流ハブ、⽻羽⽥田クロノゲートを経由して国内へ。そし て、各宅急便ベースにて「FRAPS」を活⽤用。各メーカーの商品を集約しつつ、店舗ごとに正確に仕 分けて配送するため、効率的なアウトソーシング体制が実現可能となる。各店舗では各メーカーの 商品を個別に受け取る必要がなくなり、⽣生産性が向上。複数サプライヤーからの部品調達
© 弘兼憲史/講談社 国内やアジアの複数のサプライヤーから個別に届く部品を、調達側の⽣生産ラインに届く前に 「FRAPS」を⽤用いて⼀一本化。届くべき場所に、届くべき部品を、届くべき時に⼀一括して配達する。 これにより調達側での荷受け回数がまとまり、全品そろうまで滞留する在庫が存在しなくなる。こ れによって、⼿手間が省けるとともに、在庫スペースの最⼩小化が可能となる。また、ジャスト・イ ン・タイムのライン供給体制が確⽴立立することで、サプライヤー側にもメリットが⽣生じる。例えば、 必要な部品を必要なタイミングで納品できることになるため、⽣生産リードタイムを稼ぐことができ るようになるのだ。スピード・メンテナンス
© 弘兼憲史/講談社 メーカーのアフターサービス拠点を⽻羽⽥田クロノゲートに設け、全国のユーザーから寄せられる修理 依頼に対して迅速に宅急便で品物を集荷。⽻羽⽥田に持ち込んで修理・メンテナンスを施して即座に返 送することで、修理依頼から最短24時間で対応完了する体制が構築できる。また、海外調達部品を 沖縄国際物流ハブで保税ストックしておけば、コスト⾯面でもムダのない、より効率的なメンテナン スが可能となる。© 弘兼憲史/講談社 整形インプラントなどの医療機器を使った⼿手術の際に使⽤用される⼿手術⽤用医療器械は⾮非常に⾼高額であ り、医療機関で使⽤用後メーカーに返却されるが、メーカー側の洗浄拠点と在庫拠点がわかれている ため、在庫回転率に課題があった。その流通サイクルを早めるとともに、医療機関側の安定的な機 器調達を⽀支援するため、ヤマトグループは、⽻羽⽥田クロノゲート内に洗浄設備を常設。全国の医療機 関から宅急便で⼿手術⽤用医療器械を回収し、そこから医療機器メーカーの洗浄拠点に移動させること なく、⽻羽⽥田クロノゲート内に設置された設備で洗浄を完了。航空便を利⽤用して直ちに医療機関へと 発送可能な体制を構築した。回収から発送までのリードタイムを短縮し、医療器械の在庫回転率を ⾶飛躍的に向上させることで、在庫削減を実現する。
高額医療機器のローナー事業 ∼手術用医療器械の洗浄・メンテナンスモデル∼
ヤマトグループがバリュー・ネットワーキングを通じて実現するソリューションは、いわば企業物 流を請け負う3PL(3rd Party Logistics)の進化形「バリュー・3PL」である。 専⾨門家のノウハウによって物流を効率化すると同時に、荷主企業の負担を軽減する。これが従来の 3PLだが、事業継続のためにはある程度の在庫を持たねばならず、そのためには倉庫も必要という 常識が前提となっていた。 しかし、「バリュー・ネットワーキング」構想では、どこから出荷しても、最適・最⼩小の在庫でサ プライチェーンマネジメントが可能となる。また、物の流れを⽌止めることなく、組み⽴立立てやマー ジ、メンテナンスなどを通じて商品に「バリュー」を持たせることもできる。なおかつそれらのソ リューションは、事業規模も業種も問わず、幅広い企業が活⽤用できるのもポイントだ。 ⽇日本の企業や商店、農⽔水産物の⽣生産者が、⽇日本国内はもちろんアジアの⽣生活者とよりダイレクトに つながり、持てる価値を最⼤大化させることができたなら、それは⽇日本経済と社会に新たな需要や価 値をもたらす源泉となるだろう。