Fig. 8 Influence of combustion timing on pressure rise rate -15 -10 -5 TDC 5 10 15 20 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 = 16 N = 1000 rpm Gasoline (91 RON) = 0.8 = 0.7 = 0.6 M ax im um P re ss ur e R is e R at e, dP /d m ax [M Pa /d eg .]
Maximum dP/d Timing, dP/dmax [deg.]
0 1 2 3 4 5 6 7 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 = 16 N = 1000 rpm Gasoline (91 RON) = 0.8 = 0.7 = 0.6 K no ck in g Int en si ty , P K I [M Pa ]
Maximum Pressure Rise Rate, dP/dtmax [MPa/msec] = 16
N = 1000 rpm Gasoline (91 RON)
Maximum Pressure Rise Rate, dP/dmax [MPa/deg.] Fig. 9 Influence of pressure rise rate on knocking intensity
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 K no ck in g I nt en si ty , P K I [M Pa ] = 16 N = 1000 rpm Gasoline (91 RON) = 0.8 = 0.7 = 0.6
Temperature Rise Rate by Piston Motion, dT/dpiston [K/deg.]
Fig. 10 Influence of temperature rise rate by piston compression on knocking intensity のピストン動作のみによる筒内の平均温度変化率dT/dpistonと ノッキング強度PKIとの関係を示す.一部,全体的傾向から外 れるデータが存在するものの,基本的にはdT/dpistonの増加と 共にノッキング強度が増大する傾向にあるのが分かる.つま り,ピストンの圧縮速度が大きい条件では,未燃部分がより 急速に圧縮されことで一斉に自着火し,結果として,筒内圧 力振動を伴う異常燃焼を起こし易くなるものと考えられる. なお,筒内の温度や燃料濃度分布,EGR の有無,機関回転 数の変化などの影響により,末端ガスの位置,急激な自着火 を起こす末端ガスの割合,残留ガスの組成,時間的要因(末 端ガスが圧縮や膨張を受ける速度)などが大きく変化すると 考えられる.今後は,上記の因子が HCCI の圧力振動に及ぼ す影響を調査する必要があると考える. 4.ま と め ガソリン HCCI エンジンにおける急激な燃焼と,筒内圧力 振動の発生特性を明らかにするために,ボア全面を可視化し たエンジンを用いた燃焼実験を行い,以下の知見を得た. (1) 局所的に生じた自着火が多点で発生し,やがて筒内全体に 及ぶことで,HCCI 燃焼が進行する.しかし,燃焼の後半に 向かって未燃部分が急速に自着火する条件では,最大圧力上 昇率が高くなり,筒内圧力振動が生じる. (2) 着火時期が早く,ピストンの圧縮速度が速い条件のほうが, 末端ガスが自着火する際の最大圧力上昇率及びノッキング強 度が大きくなる傾向にある. (3) HCCI 燃焼では,筒内全域が自着火で燃焼するが,筒内で の分散した自着火の発生に伴って,後から燃焼する部分は末 端ガスとなる.つまり,火花点火機関の末端ガスと同様な未 燃部分が生じることで,筒内圧力振動を伴う異常燃焼をもた らすものと考えられる.よって,圧力振動を伴う異常燃焼を 抑制するには,常に膨張行程で自着火させる,吸入空気の過 給やEGR 等で末端ガスを希釈するなどして,後から自着火す る部分の急激な熱発生を回避することが重要と考えられる. 謝 辞 本研究は,JSPS 科研費 24760175 及び,日本大学理工学部シ ンボリックプロジェクトの一環として実施された. 参 考 文 献
(1) Zhao, H. (Editor) : HCCI and CAI engines for the automotive industry, Woodhead Publishing (2007)
(2) Eng, J. : Characterization of Pressure Waves in HCCI Combustion, SAE Paper 2002-01-2859 (2002)
(3) Vressner, A., Lundin, A., Christensen, M., Tunestål, P. et al. : Pressure Oscillations During Rapid HCCI Combustion, SAE Paper 2003-01-3217 (2003)
(4) Andreae, M., Cheng, W., Kenney, T. and Yang, J. : On HCCI Engine Knock, SAE Paper 2007-01-1858 (2007)
(5) 飯島晃良,寺島昂,東條智也,須山謙太,庄司秀夫,石田礼, 勝俣雅人:筒内可視化と紫外吸収分光法による予混合圧縮着火 燃焼の研究(筒内火炎挙動観察による急峻なHCCI 燃焼の特性把握), 日本機械学会論文集B 編,Vol. 79, No. 806, p. 2170-2180 (2013) (6) Iijima, A., Shoji, H. et al. : A Study of HCCI Combustion Using a Two-Stroke Gasoline Engine with a High Compression Ratio, SAE Transactions, Vol. 3, No. 115, p. 1031-1042 (2006)
(7) Gaydon, A. G. : The Spectroscopy of Flame -2nd Edition, London, Chapman and Hall Ltd. (1974)
(8) 山崎由大,高橋晋也,飯田訓正:ラジカル発光計測によるD ME空気予混合圧縮自己着火機関の燃焼解析,自動車技術会 論文集,Vol. 34, No. 4, p. 75-80 (2003) (9) 飯島晃良, 庄司秀夫:発光・吸収計測による予混合圧縮着火 燃焼の研究,自動車技術会論文集,Vol. 38, No. 6, p. 83-88 (2007)
幾何学的高圧縮比用ピストンの燃焼室形状の検討
橋本 宗昌1) 長田 英朗2) 村山 哲也3) 内田 登4)Study of Combustion Chamber Design for High Compression Ratio
Munemasa Hashimoto Hideaki Osada Tetsuya Murayama Noboru Uchida
The piston with high compression ratio and late IVC were combined in order to improve the fuel consumption with maintaining the peak firing pressure lower than the mechanical constraints. In addition, the change in the combustion process was investigated by using numerical calculation to find the emissions deterioration process with higher compression ratio. From this investigation, revised combustion chambers were designed in order to improve the exhaust emissions characteristics. As the results, it is not only numerically but also experimentally confirmed that combination of retarded IVC timing and one of the revised combustion chambers can achieve remarkable improvement in both exhaust emissions and fuel consumption.
KEY WORDS: heat engine, compression ignition engine, supercharging, mixture formation, gas flow (A1) 1.ま え が き 大型ディーゼルエンジンの実用燃費改善と排出ガスの低減 を狙い,機械損失の少ない低速域での高BMEP 運転を可能に するためには,単段過給システムから2 段過給システムへの 変更による高過給化と,熱効率改善領域を拡大するため幾何 圧縮比の増大が有効である(1)(4).本研究では,幾何圧縮比の増 大と吸気弁閉弁時期;IVC を遅延することによる,有効圧縮 比の低減効果を実験により明らかにし,更に,中・高負荷で の,熱効率と排出ガスが改善可能な燃焼室形状について,数 値シミュレーションと実験を用いて明らかにした. 2. エンジンの構成 図1 にエンジンに装着する主な装置を示す.エンジンは最 高噴射圧 220MPa 仕様のコモンレール式燃料噴射装置を搭載 した排気量10.52L の直列 6 気筒エンジンである.EGR は高圧 ループと低圧ループを組み合わせたデュアルループ方式を採 用している.過給システムは2 つの過給機を直列に搭載した 2 段過給システムである.排気上流側に設置された小型の過給 機を高圧段過給機と呼び,下流側に設置された大型の過給機 を低圧段過給機と呼ぶ.2 つの過給機は無段階式可変容量ター ビン(VGT)を採用した.また過給されたガスが高温になること が予想されるため,各コンプレッサの下流側にインタクーラ を設置している.高圧段過給機のコンプレッサ,タービンに はバイパス経路とそれを開閉するバルブを設置し,過給圧コ ントロールが可能である.エンジン破損防止のため最高筒内 圧は20MPa としている.表 1 にエンジン諸元を示す. 3. 幾何圧縮比増大と有効圧縮比低減の効果 3.1 幾何圧縮比増大の効果 幾何圧縮比の増大の効果についてシミュレーションを用い て検討を行った.解析コードはRicardo 社一次元エンジン性能 シミュレーションソフトWAVE を用いた.図 2 は使用したモ
*
*2013 年 5 月 29 日受理.2013 年 5 月 22 日自動車技術会春季学 術講演会において発表. 1)・2)・3)・4) (株)新エィシーイー(305-0822 茨城県つくば市苅 間2530 日本自動車研究所内)Table 1 Engine specifications
Engine type DI Inline 6
Bore & Stroke mm φ122×150
Displacement cm3 10,520 Compression ratio 18.0 Injection Nozzle mm φ0.173×8-155° Target Max. Output Engine Speed rpm 1600 Output kW {PS} 298 {405} BMEP MPa 2.1 Max. Torque Engine Speed rpm 1000 - 1400 Torque Nm {kgm} 1842 {188} BMEP MPa 2.2 Air LNT+DOC HP-T/C DOC+DPF LP-EGR cooler LP-EGR valve Back pressure control valve Reed valve HP-EGR valve LP-T/C HP-turbine bypass valve HP-EGR cooler HP-compressor bypass valve DPF Inter cooler Air LNT+DOC HP-T/C DOC+DPF LP-EGR cooler LP-EGR valve Back pressure control valve Reed valve HP-EGR valve LP-T/C HP-turbine bypass valve HP-EGR cooler HP-compressor bypass valve DPF Inter cooler
Fig. 1 Schematic of engine system
デルと実験結果の比較である.燃料流量の高い領域では,熱 損失の評価が過少となり,過給圧が高めとなっているが,最 高筒内圧については,おおむね良い一致が得られた.図3 に 最大トルクを発生するもっとも低い機関速度;Ne=1000rpm で の最高筒内圧を20MPa として,圧縮比を変更した際の部分負 荷性能のシミュレーション結果を示す. 圧縮比18.0 では筒内圧の制約がなければ,高圧縮比化する ことで,BMEP>0.8MPa の中高負荷域において燃料消費率の改 善が得られる.しかし,最高筒内圧を20MPa に制限すると高 負荷域(BMEP≧2.0MPa)で燃焼開始時期;SOC を遅延する必要 があるため燃料消費率が悪化する.ここでは実車両で使用頻 度の高いBMEP=0.8MPa~1.8MPa の中高負荷での燃料消費率 の改善を目的とし,図3 のシミュレーション結果から高負荷 においても燃料消費率の悪化の比較的少なかった幾何学的圧 縮比;C/R=18.0 を選択し試験を実施した. 図4 に C/R=17.0 と C/R=18.0 のエンジン試験結果を示す. 低負荷においては,機械損失の増加にもかかわらず,わず かに燃料消費率の改善効果が確認できたが,一方高負荷域に おいては,最高筒内圧の制約からSOC を遅延した結果,図 3 の結果より更に燃料消費率は悪化した.従って,次に主に中 高負荷域での燃料消費率改善を狙ったIVC 遅延による有効圧 縮比の低減を試みた.なお,LP-EGR と HP-EGR の比率につ いては,従来から用いられている全体の EGR 流量に対する HP-EGR の流量の割合を示す HP-EGR 比率を参考文献に倣い 次式を用いて示している(2)(3)(4). HP-EGR 比率;
流量 流量 流量 EGR -LP EGR -HP EGR HP LP HP HP 3.2 有効圧縮比の低減効果 図5,図 6 は IVC を変化させた時の有効圧縮比;C/Reffの変 化と,1 次元シミュレーションを用いて求めた中負荷(40%相 当)の体積効率;ηvの変化である.ベースのIVC=563deg か らIVC を遅延させると徐々に有効圧縮比を低減することがで き,さらに Ne=1200rpm 以上の中高速域では,体積効率の向 上が見込まれるが,低速域ではかえって体積効率の低下を招 く.ここでは,摩擦損失が少なく,燃料消費率の良好な低速 域においても体積効率が90%程度確保できる IVC=590deg を 選択した.排気弁開時期(EVO)については,従来同様に EVO=121degCA とし,C/R=18.0 のピストンを用いて,吸気条 件をそろえて試験を行った.Fig. 4 Effect of high compression piston on fuel consumption (Ne=1200rpm)
Fig. 2 Verification and validation of simulation model (Ne=1000rpm)
Fig. 3 Effect of compression ratio on fuel consumption (Ne=1000rpm) 図7 は IVC 遅延前後の試験結果を示す.IVC 遅延を行うこ とで,C/R=18.0 の IVC 遅延前の状態に対して,高負荷域では 圧縮端圧力の低減により,IVC=563deg よりも SOC を進角す ることが可能である.更に低負荷においても燃料消費率の改 善効果が認められ,低負荷から高負荷にかけて一様な燃料消 費率の改善効果が得られた.一方燃料消費率の改善効果は得 られたものの,図8 に示すように,排出ガス特性については, IVC 遅延前と同じように CO 排出レベルと Smoke レベルが C/R=17.0 に対して高い結果となった.IVC 遅延では有効圧縮 比の低減を行っているため,着火遅れの相違だけでは説明が つかず,噴霧の発達や混合気形成に対して燃焼室形状との相 互作用が影響したと考えられる. 4. 熱効率と排出ガスを改善する燃焼室形状の検討 4.1 現状の問題点抽出 次に,高圧縮比化に伴うCO 排出率,Smoke の悪化原因の 推定を行うため,3 次元流体解析を用いて圧縮比違いの燃焼室 について,シミュレーションを実施した. 表2 に C/R=18.0 のシミュレーション条件;初期圧,初期温 度,初期ガス組成などを示す.C/R=17.0 については,C/R=18.0 と筒内ガス質量が同一となるように初期圧を調整し,噴射時 期 , 噴 射 期 間 , 噴 射 率 は 同 一 と し た .Ne=1200rpm, BMEP=1.65MPa(75%負荷)条件としている.3 次元流体解析に は,CD-adapco 社の STAR-CD を用いた.反応モデルは 1 段不 可逆総括反応モデルを用いた.1 段不可逆総括反応モデルでは, CO が生成されないため,ここでは,当量比分布の変化を,噴 霧の中心をとおる燃焼室断面にて観察した. 図9 に燃焼室の断面形状を示す.図 10 に噴霧の中心をとお る断面での当量比分布を示す.ここで当量比は,計算格子中 の燃料質量と,酸素質量から算出したものである.クランク 角度6deg ATDC で高い当量比の領域は燃焼室壁面へ到達し, 燃焼室底部へと流れ込む.クランク角度12deg ATDC では, 燃焼室壁面から燃焼室底部へ向かって高い当量比の体積が分
Fig. 7 Effect of IVC timing on fuel consumption (Ne=1200rpm)
Fig. 8 Effect of IVC timing on emissions (Ne=1200rpm) Fig. 5 Relationship between C/Reff and IVC timing
デルと実験結果の比較である.燃料流量の高い領域では,熱 損失の評価が過少となり,過給圧が高めとなっているが,最 高筒内圧については,おおむね良い一致が得られた.図3 に 最大トルクを発生するもっとも低い機関速度;Ne=1000rpm で の最高筒内圧を20MPa として,圧縮比を変更した際の部分負 荷性能のシミュレーション結果を示す. 圧縮比18.0 では筒内圧の制約がなければ,高圧縮比化する ことで,BMEP>0.8MPa の中高負荷域において燃料消費率の改 善が得られる.しかし,最高筒内圧を20MPa に制限すると高 負荷域(BMEP≧2.0MPa)で燃焼開始時期;SOC を遅延する必要 があるため燃料消費率が悪化する.ここでは実車両で使用頻 度の高いBMEP=0.8MPa~1.8MPa の中高負荷での燃料消費率 の改善を目的とし,図3 のシミュレーション結果から高負荷 においても燃料消費率の悪化の比較的少なかった幾何学的圧 縮比;C/R=18.0 を選択し試験を実施した. 図4 に C/R=17.0 と C/R=18.0 のエンジン試験結果を示す. 低負荷においては,機械損失の増加にもかかわらず,わず かに燃料消費率の改善効果が確認できたが,一方高負荷域に おいては,最高筒内圧の制約からSOC を遅延した結果,図 3 の結果より更に燃料消費率は悪化した.従って,次に主に中 高負荷域での燃料消費率改善を狙ったIVC 遅延による有効圧 縮比の低減を試みた.なお,LP-EGR と HP-EGR の比率につ いては,従来から用いられている全体の EGR 流量に対する HP-EGR の流量の割合を示す HP-EGR 比率を参考文献に倣い 次式を用いて示している(2)(3)(4). HP-EGR 比率;
流量 流量 流量 EGR -LP EGR -HP EGR HP LP HP HP 3.2 有効圧縮比の低減効果 図5,図 6 は IVC を変化させた時の有効圧縮比;C/Reffの変 化と,1 次元シミュレーションを用いて求めた中負荷(40%相 当)の体積効率;ηvの変化である.ベースのIVC=563deg か らIVC を遅延させると徐々に有効圧縮比を低減することがで き,さらに Ne=1200rpm 以上の中高速域では,体積効率の向 上が見込まれるが,低速域ではかえって体積効率の低下を招 く.ここでは,摩擦損失が少なく,燃料消費率の良好な低速 域においても体積効率が90%程度確保できる IVC=590deg を 選択した.排気弁開時期(EVO)については,従来同様に EVO=121degCA とし,C/R=18.0 のピストンを用いて,吸気条 件をそろえて試験を行った.Fig. 4 Effect of high compression piston on fuel consumption (Ne=1200rpm)
Fig. 2 Verification and validation of simulation model (Ne=1000rpm)
Fig. 3 Effect of compression ratio on fuel consumption (Ne=1000rpm) 図7 は IVC 遅延前後の試験結果を示す.IVC 遅延を行うこ とで,C/R=18.0 の IVC 遅延前の状態に対して,高負荷域では 圧縮端圧力の低減により,IVC=563deg よりも SOC を進角す ることが可能である.更に低負荷においても燃料消費率の改 善効果が認められ,低負荷から高負荷にかけて一様な燃料消 費率の改善効果が得られた.一方燃料消費率の改善効果は得 られたものの,図8 に示すように,排出ガス特性については, IVC 遅延前と同じように CO 排出レベルと Smoke レベルが C/R=17.0 に対して高い結果となった.IVC 遅延では有効圧縮 比の低減を行っているため,着火遅れの相違だけでは説明が つかず,噴霧の発達や混合気形成に対して燃焼室形状との相 互作用が影響したと考えられる. 4. 熱効率と排出ガスを改善する燃焼室形状の検討 4.1 現状の問題点抽出 次に,高圧縮比化に伴うCO 排出率,Smoke の悪化原因の 推定を行うため,3 次元流体解析を用いて圧縮比違いの燃焼室 について,シミュレーションを実施した. 表2 に C/R=18.0 のシミュレーション条件;初期圧,初期温 度,初期ガス組成などを示す.C/R=17.0 については,C/R=18.0 と筒内ガス質量が同一となるように初期圧を調整し,噴射時 期 , 噴 射 期 間 , 噴 射 率 は 同 一 と し た .Ne=1200rpm, BMEP=1.65MPa(75%負荷)条件としている.3 次元流体解析に は,CD-adapco 社の STAR-CD を用いた.反応モデルは 1 段不 可逆総括反応モデルを用いた.1 段不可逆総括反応モデルでは, CO が生成されないため,ここでは,当量比分布の変化を,噴 霧の中心をとおる燃焼室断面にて観察した. 図9 に燃焼室の断面形状を示す.図 10 に噴霧の中心をとお る断面での当量比分布を示す.ここで当量比は,計算格子中 の燃料質量と,酸素質量から算出したものである.クランク 角度6deg ATDC で高い当量比の領域は燃焼室壁面へ到達し, 燃焼室底部へと流れ込む.クランク角度12deg ATDC では, 燃焼室壁面から燃焼室底部へ向かって高い当量比の体積が分
Fig. 7 Effect of IVC timing on fuel consumption (Ne=1200rpm)
Fig. 8 Effect of IVC timing on emissions (Ne=1200rpm) Fig. 5 Relationship between C/Reff and IVC timing
布する.燃焼室深さが浅くなったC/R=18.0 では,底部の当量 比の高い領域の広がりが十分でなく,噴霧による燃焼室内の 流動が低下したものと考えられる.その結果C/R=17.0 では, クランク角度30deg ATDC にて,ピストン燃焼室の中から当 量比の高い領域が,燃焼室の外へ流出するが,C/R=18.0 では, 燃焼室内に当量比の高い領域が残ってしまう.膨張行程に入 り燃焼室底部の高当量比の領域が低温化し,Smoke や CO の 再酸化が不十分になると考えられる. このように,問題点としては,大きく分けて2 つ考えられ る.一つは燃焼初期の壁面衝突後に,噴霧による筒内流動が 低下してしまうこと.もう一つは燃焼後期の燃焼室隅部の流 動が低下し,高い当量比の領域が燃焼室内で滞留することで ある.これに対して,ノズル噴孔諸元の変更と燃焼室の変更 を用いた噴霧の高分散化と低流動化等の例(5)もみられるが,こ こでは先ずノズルを変更することなく,燃焼室の形状変更の みにより問題解決を試みた. 4.2 燃焼室形状の予備検討 具体的な解決策としては,2 種の燃焼室が考えられる. 1 つは,衝突噴霧を積極的に利用して燃焼室内外への分散を 促進する(6)(7)方法である.即ち燃焼室の小径深皿化,更にはリ エントラント型燃焼室によって,燃焼室内の流動を高めるこ とが可能と考えられる(8). もう一つは燃焼室側壁面を遠ざけることにより,自由噴霧 的な発達を行わせ,壁面衝突後に再び燃焼室中心に向かう既 燃ガスとの干渉による噴霧流速の低下を抑制し,且つ流動が 滞留する燃焼室隅部へ直接噴霧を導入する方法である(9).即ち 燃焼室の大径浅皿化,センターコーン角度の鈍角化等である. ここでは上記2 つの燃焼室の代表例として,図 11 のように, 燃料噴霧の流れが異なる燃焼室形状でシミュレーションを行 い,ベース形状と比較を行った.計算は前述の表 2 で示した 条件を用いて実施した. 図12 の当量比分布の変化では,小径リエントラント燃焼室 では,クランク角度6deg ATDC で高当量比の領域は燃焼室壁 面へ到達し,燃焼室底部へ向かう.クランク角度12deg ATDC では壁面に沿って燃焼室底部へと当量比の高い領域が広がり, 18deg ATDC で燃焼室中央に到達する.24deg ATDC で逆スキ ッシュ流により燃焼室外へと流出するという大きな縦渦を形 成する. 一方,大径浅皿燃焼室ではクランク角度6deg ATDC では燃 焼室壁面まで高当量比の領域は到達せず,12deg ATDC では燃 焼室底部へ衝突後,高当量比部分は壁面に沿って広がり,一 部はヘッド下面側へ広がり消滅する.18deg ATDC 以降では燃 焼室隅部で当量比の高い領域がわずかに滞留するのが確認で きる. 図12はスワールの影響を考慮しない観察断面のみでの分布 であるため,さらに燃焼室内の高い当量比体積の変化を調査 した. 図13 は燃焼室内全体での当量比>3.0 の体積の時間変化を示 している.ベース形状とリエントラント形状はよく似た傾向 を示しているが,大径浅皿燃焼室は,燃焼室内での高当量比 体積は燃焼早期に減少に転じるものの,その後高当量比の体 積の減少が停滞する.リエントラント型やトロイダル型は壁 面衝突後,燃焼室中央へ向かう流動になり噴霧に既燃ガスを 取り込みながら燃焼が進むが,大径浅皿燃焼室の場合は,壁 面衝突後,燃焼ガスがヘッド下面,スキッシュ領域へ向かう 流動を形成し,噴霧と既燃ガスの干渉が少なく,早期に当量 比の高い領域が減少するものと考えられる.一方,燃焼後期 の高当量比領域の滞留は,燃焼室の側壁面からヘッド下面側 Table 2 Calculation condition
Ne 1200rpm
q
(Load) 211mm
3/st
(75%)
IVC / EVO 563deg / 121deg
Swirl Ratio Rs 1.58 (PWA)
Initial Condition Pcyl 240kPa
Tcyl 391K
O2 20.495wt%
CO2 2.514wt%
H2O 0.806wt%
N2 76.185wt%
SOI -3deg ATDC
Nozzle 8-φ0.173mm-155° 20 .4 3m m 22 .0 4m m Ø75mm C/R=17.0 C/R=18.0 Fig. 9 Chamber shapes
CA C/R=17.0 C/R=18.0 TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 10 Distribution of equivalence ratio
3 2 1 0 Equivalence Ratio へ燃焼ガスの一部が流入したのち,燃焼室内の流動が低下し, 十分な空気の導入が行われていないためと考えられる.大型 ディーゼル機関では高BMEP 化に伴い噴射期間自体が長くな ることから,高圧縮比化により燃焼室容積が小さくなるとリ エントラント形状や小径トロイダル型は噴霧と既燃ガスが燃 焼期間中に干渉しやすくなるため,干渉が少ない浅皿燃焼室 を採用するのが望ましい.また,燃焼期間短縮のために噴射 圧を高圧化する場合には,壁面熱損失の増加も懸念されるた め,火炎到達までの時間が長い大口径の浅皿燃焼室による熱 損失低減効果も期待される. 4.3 供試エンジンへの適用・詳細検討 これらの検討結果から,次に現在の多気筒エンジンへの浅 皿燃焼室適用を検討した.先の燃焼室検討において,噴霧が 既燃ガスを取り込みにくい浅皿大径燃焼室口径φ90mm は,当 量比の高い領域が早期に減少する特徴があり,燃焼期間を短 縮することで燃料消費率の改善が得られると考えられる.し かし,燃焼室の隅部で当量比の高い領域が滞留する傾向と, 燃焼室入口での流動低下が見受けられたため,センターコー ン部分はφ90mm の形状を踏襲し,燃焼室底部の滞留抑制を狙 って,燃焼室底部径はφ90mm より小さくした.更に燃焼室入 口での流動低下を抑制するため,燃焼室壁面をテーパー状に 15 .3 1m m Ø90mm Ø100mm 17 .3 4m m Shallow (φ90mm) Shallow (φ100mm) Fig. 14 Chamber shapes
CA (φ90mm) Shallow (φ100mm) Shallow TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 15 Distribution of equivalence ratio
Calculated region
Fig. 16 Volume change of high equivalence ratio
Ø90mm 21 .7 8m m Ø63.6mm 15 .0 3m m Re-entrant Shallow
Fig. 11 Chamber shapes of re-entrant and shallow dish
CA Re-entrant Shallow TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 12 Distribution of equivalence ratio
Calculated region
Fig. 13 Volume change of high equivalence ratio
3 2 1 0 Equivalence Ratio 3 2 1 0 Equivalence Ratio
布する.燃焼室深さが浅くなったC/R=18.0 では,底部の当量 比の高い領域の広がりが十分でなく,噴霧による燃焼室内の 流動が低下したものと考えられる.その結果C/R=17.0 では, クランク角度30deg ATDC にて,ピストン燃焼室の中から当 量比の高い領域が,燃焼室の外へ流出するが,C/R=18.0 では, 燃焼室内に当量比の高い領域が残ってしまう.膨張行程に入 り燃焼室底部の高当量比の領域が低温化し,Smoke や CO の 再酸化が不十分になると考えられる. このように,問題点としては,大きく分けて2 つ考えられ る.一つは燃焼初期の壁面衝突後に,噴霧による筒内流動が 低下してしまうこと.もう一つは燃焼後期の燃焼室隅部の流 動が低下し,高い当量比の領域が燃焼室内で滞留することで ある.これに対して,ノズル噴孔諸元の変更と燃焼室の変更 を用いた噴霧の高分散化と低流動化等の例(5)もみられるが,こ こでは先ずノズルを変更することなく,燃焼室の形状変更の みにより問題解決を試みた. 4.2 燃焼室形状の予備検討 具体的な解決策としては,2 種の燃焼室が考えられる. 1 つは,衝突噴霧を積極的に利用して燃焼室内外への分散を 促進する(6)(7)方法である.即ち燃焼室の小径深皿化,更にはリ エントラント型燃焼室によって,燃焼室内の流動を高めるこ とが可能と考えられる(8). もう一つは燃焼室側壁面を遠ざけることにより,自由噴霧 的な発達を行わせ,壁面衝突後に再び燃焼室中心に向かう既 燃ガスとの干渉による噴霧流速の低下を抑制し,且つ流動が 滞留する燃焼室隅部へ直接噴霧を導入する方法である(9).即ち 燃焼室の大径浅皿化,センターコーン角度の鈍角化等である. ここでは上記2 つの燃焼室の代表例として,図 11 のように, 燃料噴霧の流れが異なる燃焼室形状でシミュレーションを行 い,ベース形状と比較を行った.計算は前述の表 2 で示した 条件を用いて実施した. 図12 の当量比分布の変化では,小径リエントラント燃焼室 では,クランク角度6deg ATDC で高当量比の領域は燃焼室壁 面へ到達し,燃焼室底部へ向かう.クランク角度12deg ATDC では壁面に沿って燃焼室底部へと当量比の高い領域が広がり, 18deg ATDC で燃焼室中央に到達する.24deg ATDC で逆スキ ッシュ流により燃焼室外へと流出するという大きな縦渦を形 成する. 一方,大径浅皿燃焼室ではクランク角度6deg ATDC では燃 焼室壁面まで高当量比の領域は到達せず,12deg ATDC では燃 焼室底部へ衝突後,高当量比部分は壁面に沿って広がり,一 部はヘッド下面側へ広がり消滅する.18deg ATDC 以降では燃 焼室隅部で当量比の高い領域がわずかに滞留するのが確認で きる. 図12はスワールの影響を考慮しない観察断面のみでの分布 であるため,さらに燃焼室内の高い当量比体積の変化を調査 した. 図13 は燃焼室内全体での当量比>3.0 の体積の時間変化を示 している.ベース形状とリエントラント形状はよく似た傾向 を示しているが,大径浅皿燃焼室は,燃焼室内での高当量比 体積は燃焼早期に減少に転じるものの,その後高当量比の体 積の減少が停滞する.リエントラント型やトロイダル型は壁 面衝突後,燃焼室中央へ向かう流動になり噴霧に既燃ガスを 取り込みながら燃焼が進むが,大径浅皿燃焼室の場合は,壁 面衝突後,燃焼ガスがヘッド下面,スキッシュ領域へ向かう 流動を形成し,噴霧と既燃ガスの干渉が少なく,早期に当量 比の高い領域が減少するものと考えられる.一方,燃焼後期 の高当量比領域の滞留は,燃焼室の側壁面からヘッド下面側 Table 2 Calculation condition
Ne 1200rpm
q
(Load) 211mm
3/st
(75%)
IVC / EVO 563deg / 121deg
Swirl Ratio Rs 1.58 (PWA)
Initial Condition Pcyl 240kPa
Tcyl 391K
O2 20.495wt%
CO2 2.514wt%
H2O 0.806wt%
N2 76.185wt%
SOI -3deg ATDC
Nozzle 8-φ0.173mm-155° 20 .4 3m m 22 .0 4m m Ø75mm C/R=17.0 C/R=18.0 Fig. 9 Chamber shapes
CA C/R=17.0 C/R=18.0 TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 10 Distribution of equivalence ratio
3 2 1 0 Equivalence Ratio へ燃焼ガスの一部が流入したのち,燃焼室内の流動が低下し, 十分な空気の導入が行われていないためと考えられる.大型 ディーゼル機関では高BMEP 化に伴い噴射期間自体が長くな ることから,高圧縮比化により燃焼室容積が小さくなるとリ エントラント形状や小径トロイダル型は噴霧と既燃ガスが燃 焼期間中に干渉しやすくなるため,干渉が少ない浅皿燃焼室 を採用するのが望ましい.また,燃焼期間短縮のために噴射 圧を高圧化する場合には,壁面熱損失の増加も懸念されるた め,火炎到達までの時間が長い大口径の浅皿燃焼室による熱 損失低減効果も期待される. 4.3 供試エンジンへの適用・詳細検討 これらの検討結果から,次に現在の多気筒エンジンへの浅 皿燃焼室適用を検討した.先の燃焼室検討において,噴霧が 既燃ガスを取り込みにくい浅皿大径燃焼室口径φ90mm は,当 量比の高い領域が早期に減少する特徴があり,燃焼期間を短 縮することで燃料消費率の改善が得られると考えられる.し かし,燃焼室の隅部で当量比の高い領域が滞留する傾向と, 燃焼室入口での流動低下が見受けられたため,センターコー ン部分はφ90mm の形状を踏襲し,燃焼室底部の滞留抑制を狙 って,燃焼室底部径はφ90mm より小さくした.更に燃焼室入 口での流動低下を抑制するため,燃焼室壁面をテーパー状に 15 .3 1m m Ø90mm Ø100mm 17 .3 4m m Shallow (φ90mm) Shallow (φ100mm) Fig. 14 Chamber shapes
CA (φ90mm) Shallow (φ100mm) Shallow TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 15 Distribution of equivalence ratio
Calculated region
Fig. 16 Volume change of high equivalence ratio
Ø90mm 21 .7 8m m Ø63.6mm 15 .0 3m m Re-entrant Shallow
Fig. 11 Chamber shapes of re-entrant and shallow dish
CA Re-entrant Shallow TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 12 Distribution of equivalence ratio
Calculated region
Fig. 13 Volume change of high equivalence ratio
3 2 1 0 Equivalence Ratio 3 2 1 0 Equivalence Ratio
広げ,燃焼室の入口径はφ90mm 以上としたものを 2 種検討し た.図14 に燃焼室形状を示す. これまでと同様な条件におけるシミュレーション解析によ れば,図15 のように,ピストン燃焼室の壁面近傍で当量比の 高い領域が形成される.しかしながら口径φ90mm のものは, 噴霧が壁面へ衝突後燃焼室底部と上部へと2 分される.また 燃焼室底部は少しくぼんでいるため,高当量比領域が滞留す る. 図16 は高当量比体積の時間変化を調査した結果である.口 径φ90mm のものは,わずかに当量比の高い領域が滞留してい るが,口径φ100mm のものは,当量比の高い領域が早期に消 滅する.これは,図13 の大径浅皿燃焼室の課題であった燃焼 室隅部の滞留部分を減らすことを目的に,図14 のように燃焼 室の底部径を減少させ,さらに燃焼室の壁面をテーパー状に 広げたことにより,高当量比領域がキャビティ内からスキッ シュ領域へと流出していくためと考えられる. 排出ガスのCO の生成部位については,詳細化学反応シミ ュレーションソフト;Reaction Design 社製 FORTÉ を用いて調 査を行った.計算条件は前述の表2 を用いた.図 17 に CO の 質量分率の分布を示す.トロイダル型では,燃焼室の中心付 近に CO の濃度の高い領域が残るが,浅皿燃焼室では,燃焼 室の外側に分布し,おおよそ当量比の高い領域と一致する. このため高当量比領域の低減により,CO,Smoke の排出量 が低減すると考えられる.
Fig. 19 Comparison of rate of heat release Ne=1200rpm, BMEP=1.65MPa, BSNOx=1.0g/kWh, SOI=-4degATDC
Fig. 20 Effect of chamber on fuel consumption and emissions Ne=1200rpm, BMEP=0.88MPa, BSNOx=1.0g/kWh, SOI=7.7degBTDC CA Toroidal (φ75mm) (φ100mm) Shallow TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 17 Distribution of CO mass fraction
Fig. 18 Effect of chamber on fuel consumption and emissions Ne=1200rpm, BMEP=1.65MPa, BSNOx=1.0g/kWh
0.12 0.08 0.04 0 CO 5. 燃焼室の確認実験 詳細検討の結果から図14 の Shallow(φ100mm)の燃焼室形 状のピストンを作成し,評価を行った.エンジンの諸元は表1 の通りでピストンの燃焼室形状のみが異なる.図18 に実験結 果を示す.試験条件は,Ne=1200rpm,BMEP=1.65MPa(75%負 荷),HP/(HP+LP)=0.8 とし,噴射開始時期を変化させた.吸気 マニホールド圧;Pinm を,高圧段と低圧段の VGT の開度に よって調整した. 新規形状の燃焼室にて同等のCO の排出率でありながら, Smoke の改善と,燃料消費率では約 3%の改善が得られた. 図19 に噴射開始時期-4degATDC の熱発生率を示す.トロイ ダル燃焼室形状と比べて熱発生パターンに違いがみられ,燃 焼初期の予混合的な燃焼部分が抑えられ,拡散燃焼部分が増 加している.また熱発生期間が短縮されており,Smoke と燃 料消費率の改善に寄与していると考えらえる. 負荷の低い領域についても比較を行った.図20 に試験結果 を示す. Ne=1200rpm,BMEP=0.88MPa(40%負荷)での燃焼 室違いの比較である.同等過給圧の条件では,トロイダル型 に比べて浅皿燃焼室では燃料消費率の改善が得られるものの, Smoke,CO の排出量が増加している.これは先の図 17 の CO の分布から,低噴射量条件において,トロイダル燃焼室では 温度の高い燃焼室中央で CO が再酸化されるが,浅皿燃焼室 では温度の低い外周部分で CO が再酸化されずに排出される と考えられる.過給圧を高めると希薄化の効果で CO の排出 率は低下するが,Smoke については,大きな変化が得られな かった. この課題は更なる噴射系諸元と筒内流動の最適化などで改 善が可能と考えられる.今回噴射系諸元の変更は行わなかっ たため,低負荷では高過給による希薄化と,噴射時期の遅延 を行うことでCO,Smoke の再酸化促進を行った.ここでは, ベースのトロイダル燃焼室に対して過給圧を15kPa 程度高め た時のNe=1200rpm での部分負荷性能曲線を図 20,図 21 に示 す.トロイダル型燃焼室から新規形状の燃焼室に変えること で,低・中負荷領域(BMEP<0.88MPa)は Smoke 排出量に大き な違いは見られないが,BMEP>0.88MPa で改善し,高過給化 の効果により,CO 排出率が低減した.燃料消費率は,中・高 負荷域(BMEP=1.32MPa~1.76MPa)で改善し,C/R=17.0 に対し て最大約2%改善した. 6. ま と め 大型ディーゼルエンジンの実用燃費改善を目的として,幾 何圧縮比の増加とIVC の遅延を組み合わせ,膨張比はそのま まに,有効圧縮比の低減を行った.また排出ガス悪化抑制を 目的として,燃焼室形状の変更を行った.得られた知見を以 下に示す. (1) 幾何圧縮比の増加と IVC を遅延し,有効圧縮比の低減を 行った.高負荷においては,燃焼時期を早期化することがで き,燃料消費率の改善効果が得られた.しかしながら,幾何 圧縮比を増加すると,IVC 遅延の有無によらず,CO,Smoke が悪化した. (2) 幾何圧縮比を増加した燃焼室内での CO,Smoke 排出量の 増大の要因解析のため数値シミュレーションを用いて,燃焼 室内の当量比の高い領域の変化を調査した.燃焼初期の燃焼 室隅部での燃焼によって,燃焼室底部と隅部に,当量比の高 い領域ができやすくなる.また既燃ガスと噴霧の干渉によっ て流動が抑制され,燃焼室内の高い当量比の領域が燃焼室外 へ流出しにくくなる. (3) 噴霧中に既燃ガスを取り込みにくい浅皿大径燃焼室では, 当量比の高い領域が早期に減少する.しかし口径を広げたこ Fig. 21 Effect of chamber on fuel consumption (Ne=1200rpm)
広げ,燃焼室の入口径はφ90mm 以上としたものを 2 種検討し た.図14 に燃焼室形状を示す. これまでと同様な条件におけるシミュレーション解析によ れば,図15 のように,ピストン燃焼室の壁面近傍で当量比の 高い領域が形成される.しかしながら口径φ90mm のものは, 噴霧が壁面へ衝突後燃焼室底部と上部へと2 分される.また 燃焼室底部は少しくぼんでいるため,高当量比領域が滞留す る. 図16 は高当量比体積の時間変化を調査した結果である.口 径φ90mm のものは,わずかに当量比の高い領域が滞留してい るが,口径φ100mm のものは,当量比の高い領域が早期に消 滅する.これは,図13 の大径浅皿燃焼室の課題であった燃焼 室隅部の滞留部分を減らすことを目的に,図14 のように燃焼 室の底部径を減少させ,さらに燃焼室の壁面をテーパー状に 広げたことにより,高当量比領域がキャビティ内からスキッ シュ領域へと流出していくためと考えられる. 排出ガスのCO の生成部位については,詳細化学反応シミ ュレーションソフト;Reaction Design 社製 FORTÉ を用いて調 査を行った.計算条件は前述の表2 を用いた.図 17 に CO の 質量分率の分布を示す.トロイダル型では,燃焼室の中心付 近に CO の濃度の高い領域が残るが,浅皿燃焼室では,燃焼 室の外側に分布し,おおよそ当量比の高い領域と一致する. このため高当量比領域の低減により,CO,Smoke の排出量 が低減すると考えられる.
Fig. 19 Comparison of rate of heat release Ne=1200rpm, BMEP=1.65MPa, BSNOx=1.0g/kWh, SOI=-4degATDC
Fig. 20 Effect of chamber on fuel consumption and emissions Ne=1200rpm, BMEP=0.88MPa, BSNOx=1.0g/kWh, SOI=7.7degBTDC CA Toroidal (φ75mm) (φ100mm) Shallow TDC 6deg ATDC 12deg ATDC 18deg ATDC 24deg ATDC 30deg ATDC
Fig. 17 Distribution of CO mass fraction
Fig. 18 Effect of chamber on fuel consumption and emissions Ne=1200rpm, BMEP=1.65MPa, BSNOx=1.0g/kWh
0.12 0.08 0.04 0 CO 5. 燃焼室の確認実験 詳細検討の結果から図14 の Shallow(φ100mm)の燃焼室形 状のピストンを作成し,評価を行った.エンジンの諸元は表1 の通りでピストンの燃焼室形状のみが異なる.図18 に実験結 果を示す.試験条件は,Ne=1200rpm,BMEP=1.65MPa(75%負 荷),HP/(HP+LP)=0.8 とし,噴射開始時期を変化させた.吸気 マニホールド圧;Pinm を,高圧段と低圧段の VGT の開度に よって調整した. 新規形状の燃焼室にて同等のCO の排出率でありながら, Smoke の改善と,燃料消費率では約 3%の改善が得られた. 図19 に噴射開始時期-4degATDC の熱発生率を示す.トロイ ダル燃焼室形状と比べて熱発生パターンに違いがみられ,燃 焼初期の予混合的な燃焼部分が抑えられ,拡散燃焼部分が増 加している.また熱発生期間が短縮されており,Smoke と燃 料消費率の改善に寄与していると考えらえる. 負荷の低い領域についても比較を行った.図20 に試験結果 を示す. Ne=1200rpm,BMEP=0.88MPa(40%負荷)での燃焼 室違いの比較である.同等過給圧の条件では,トロイダル型 に比べて浅皿燃焼室では燃料消費率の改善が得られるものの, Smoke,CO の排出量が増加している.これは先の図 17 の CO の分布から,低噴射量条件において,トロイダル燃焼室では 温度の高い燃焼室中央で CO が再酸化されるが,浅皿燃焼室 では温度の低い外周部分で CO が再酸化されずに排出される と考えられる.過給圧を高めると希薄化の効果で CO の排出 率は低下するが,Smoke については,大きな変化が得られな かった. この課題は更なる噴射系諸元と筒内流動の最適化などで改 善が可能と考えられる.今回噴射系諸元の変更は行わなかっ たため,低負荷では高過給による希薄化と,噴射時期の遅延 を行うことでCO,Smoke の再酸化促進を行った.ここでは, ベースのトロイダル燃焼室に対して過給圧を15kPa 程度高め た時のNe=1200rpm での部分負荷性能曲線を図 20,図 21 に示 す.トロイダル型燃焼室から新規形状の燃焼室に変えること で,低・中負荷領域(BMEP<0.88MPa)は Smoke 排出量に大き な違いは見られないが,BMEP>0.88MPa で改善し,高過給化 の効果により,CO 排出率が低減した.燃料消費率は,中・高 負荷域(BMEP=1.32MPa~1.76MPa)で改善し,C/R=17.0 に対し て最大約2%改善した. 6. ま と め 大型ディーゼルエンジンの実用燃費改善を目的として,幾 何圧縮比の増加とIVC の遅延を組み合わせ,膨張比はそのま まに,有効圧縮比の低減を行った.また排出ガス悪化抑制を 目的として,燃焼室形状の変更を行った.得られた知見を以 下に示す. (1) 幾何圧縮比の増加と IVC を遅延し,有効圧縮比の低減を 行った.高負荷においては,燃焼時期を早期化することがで き,燃料消費率の改善効果が得られた.しかしながら,幾何 圧縮比を増加すると,IVC 遅延の有無によらず,CO,Smoke が悪化した. (2) 幾何圧縮比を増加した燃焼室内での CO,Smoke 排出量の 増大の要因解析のため数値シミュレーションを用いて,燃焼 室内の当量比の高い領域の変化を調査した.燃焼初期の燃焼 室隅部での燃焼によって,燃焼室底部と隅部に,当量比の高 い領域ができやすくなる.また既燃ガスと噴霧の干渉によっ て流動が抑制され,燃焼室内の高い当量比の領域が燃焼室外 へ流出しにくくなる. (3) 噴霧中に既燃ガスを取り込みにくい浅皿大径燃焼室では, 当量比の高い領域が早期に減少する.しかし口径を広げたこ Fig. 21 Effect of chamber on fuel consumption (Ne=1200rpm)
可視化によるガソリン直噴エンジンのすす生成に関する研究
*植木 毅1) 村瀬 栄二2)
Investigation of Soot Formation in an Optically Accessible DISI Engine
Takeshi Ueki Eiji Murase
In order to reduce soot emitted from Direct Injection Spark Ignition (DISI) engine, the key is to figure out a soot formation process which is timing during combustion and the location in a cylinder. In this study, the soot formation process was revealed by a piston fuel film analysis and soot spatial distribution analysis which were measured by an optically accessible engine. High density of soot is not located on the piston cavity but in the special area of the exhaust side combustion chamber during fast idle operation. In addition, the soot formation continues to increase as time goes on.
KEY WORDS: Heat engine, Spark ignition engine, Measurement, Particulate Matter, Soot (A1) 1.ま え が き 地球環境意識の高まりにより,自動車エンジンに対する低 エミッションの要求がますます厳しくなっている.自動車メ ーカや研究機関では,環境負荷の低いエンジンの研究・開発 が積極的に行われている(1)-(6).このような状況の中,欧州で は粒子状物質(Particulate Matter,以下 PM)の規制が強化さ れ,PM 粒子数の規制導入が決まった.我々は,ガソリンエン ジンを対象に,この PM 規制,さらには後の規制強化に対応す るエンジンコンポーネントの開発を進める上で,筒内での PM 生成およびその生成要因を解明することが重要であると考え, エンジンベースでの筒内 PM 解析に取り組んでいる(7).本研究 では,まずモード走行時における PM 排出から,PM 排出が多い 条件における PM 生成要因について考察し,その裏付けを燃焼 の直接観察により行った.さらに,PM 生成の詳細解析として, PM 生成に影響が大きいと考えるピストンウェットの計測,そ してレーザ誘起赤熱法(Laser Induced Incandescence,以下 LII 法)をエンジンに適用し,筒内の PM 可視化から,PM の生 成要因について考察したので,報告する. 2.実験装置と方法 2.1. 筒内可視化エンジン 燃焼の可視化には,表 1 に示すエンジンをベースに,図 1 に示す筒内観察用の可視化加工を施した可視化エンジンを用 いた.可視化気筒は,#6 気筒とし,リア側に 3 つの窓をシリ ンダヘッドに設け,観察窓と光源窓の役割を果たすことによ り,噴霧から燃焼まで一連の現象を把握することができる. 各窓の有効径はφ12.5mm で,今回,撮影は中央の窓から実施 し,撮影には,高速度ビデオカメラ(Photron 製,FASTCAM SA1.1, 撮影速度 20000 フレーム/s)を用いた.各窓はサファイア製 で,先端の窓を凹形状とし,図 2 に示すように上死点側をほ ぼ全域観察することができる.評価インジェクタは,図 3 に 示すファンスリット噴霧を用いた(8).なお,本可視化エンジ ンは,常用運転領域全域で可視化することが可能である. *2013 年 5 月 22 日受理.2013 年 5 月 22 日 自動車技術会春季 学術講演会において発表. 1)(株)日本自動車部品総合研究所 (445-0012 愛知県西尾市 下羽角町岩谷 14 番地) 2)トヨタ自動車(株)(471-8572 愛知県豊田市トヨタ町 1 番地)
Table1 Engine and DI injector specification
29deg. Injection directionSpray type Fan shaped spray
Direct Injection Injection system 12.0 : 1 Compression ratio
φ83mm × 77mm Bore × StrokeDisplacement 2.5L
V6 Type
29deg. Injection directionSpray type Fan shaped spray
Direct Injection Injection system 12.0 : 1 Compression ratio
φ83mm × 77mm Bore × StrokeDisplacement 2.5L
V6 Type
Fig.1 Optically Accessible DISI engine High speed video camera
Spark plug DI injector
Piston Optical window
Combustion chamber
Fig.1 Optically Accessible DISI engine High speed video camera
Spark plug DI injector
Piston Optical window Combustion chamber とで燃焼室隅部での流動が低下し,燃焼後期に当量比の高い 領域が滞留しやすい.これに対して燃焼室壁面をテーパー状 に広げ既燃ガスを燃焼室外へ導くことで,燃焼室内の当量比 の高い領域は早期に減少し,Smoke の低減が可能と考えられ る. (4) 検討したピストンを用いた試験から,中・高負荷領域で は燃料消費率とSmoke の改善効果が得られた.しかし,負荷 の低い領域ではSmoke 排出量が増加した.これは燃焼室口径 を広げることで衝突噴霧による混合が抑制されたためと考え られる.このため低・中負荷では高過給による希薄化や燃料 噴射圧の増加などの他,噴射系諸元と筒内流動との最適化が 必要と考えられる. 謝 辞 本研究は,新エィシーイーの出資会社の年間研究費と国土 交通省の「次世代大型車開発・実用化促進プロジェクト」の 中の「次世代バイオディーゼルエンジン大型車の技術基準等 策定に関する調査」の費用により推進したことを記載し,謝 意を表す.また,独立行政法人 交通安全環境研究所の協力 に感謝する. 記号・略語の説明 Ne :機関速度 q :噴射量 BMEP :正味平均有効圧 Pb :吸気マニホールド圧 A/F :空燃比(空気質量流量/燃料質量流量) DOC :ディーゼル酸化触媒 DPF :ディーゼルパティキュレートフィルタ LNT :リーンNOx トラップ EGR :排気ガス再循環 HP/(HP+LP) :HP-EGR 比率 O2in :吸気酸素濃度 HP-EGR :高圧ループEGR LP-EGR :低圧ループEGR HP-T/C :高圧段過給機 LP-T/C :低圧段過給機 HPC :高圧段コンプレッサ LPC :低圧段コンプレッサ HPT :高圧段タービン LPT :低圧段タービン I/C :インタクーラ Regr :EGR 率 SOC :燃焼開始時期 SOI :噴射開始時期 TDC :上死点 Pcyl :筒内圧 Tcyl :筒内温度 Pmax :最高筒内圧 ROHR :熱発生率 IVC :吸気弁閉弁時期 EVO :排気弁開弁時期 C/R :幾何学的圧縮比 C/Reff :有効圧縮比 BSFC :正味燃料消費率 BSCO :正味CO 排出率 BSNOx :正味NOx 排出率 BSTHC :正味HC 排出率 ηv :体積効率 CA :クランク角度 参 考 文 献 (1) 橋本宗昌ほか:燃料消費率と排出ガスの同時低減を目指し た 2 段過給システムの検討,自動車技術会論文集, Vol.44, No.2,P.319-325 (2013) (2) 足立隆幸ほか:高過給・広域多量 EGR の多気筒ディーゼ ルエンジンにおけるハイプレッシャループおよびロープレッ シャループEGR の効果,自動車技術会論文集,Vol.40,No.4, P.1047-1052 (2009) (3) 足立隆幸ほか:高応答型過給機と HP-EGR および LP-EGR の効果的利用による高過給・広域多量EGR ディーゼルエンジ ンの過渡性能の向上,自動車技術会論文集,Vol.42,No.1, P.195-200 (2011) (4) 足立隆幸ほか:燃料噴射系の改良および幾何圧縮比アップ による高過給・広域多量EGR ディーゼルエンジンの熱効率向 上,自動車技術会論文集,Vol.42,No.5,P.1099-1104 (2011) (5) 稲垣和久ほか:高分散噴霧と筒内低流動を利用した低エミ ッション高効率ディーゼル燃焼―燃焼コンセプトの提案と単 気筒エンジンによる基本性能の検証,自動車技術会論文集, Vol.42,No.1,P.219-224 (2011) (6) 江原拓未ほか:壁面に沿うディーゼル噴霧の挙動,日本液 体微粒化学会,微粒化vol.6,NO.13,P.2-8 (1997) (7) 常本秀幸ほか:ホールノズルにおける壁面衝突噴霧の発達 過程,自動車技術会論文集 Vol.27,No.2,P.39-45 (1996) (8) 金尚奎ほか:ディーゼル機関における燃焼室形状の改良に よる排気低減,第 21 回内燃機関シンポジウム講演論文集, P.135~140 (2010) (9) 吉冨正幸ほか:Tier3 エンジン ecot3 の開発(2),コマツ技報, Vol52,NO.158,P.20-26 (2006)