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学習指導要領 道徳 の内容と解説 1 学習指導要領改訂のポイント 2 2 学習指導要領 道徳 の内容と解説 4 3 道徳の 内容 一覧表 10 光村図書出版株式会社

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光村図書出版株式会社

1 学習指導要領改訂のポイント………

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2 学習指導要領「道徳」の内容と解説 ………

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3 道徳の「内容」一覧表 ………

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   学習指導要領改訂のポイント  平成 20 年3月に告示された学習指導要領は,「生き る力」という理念を再確認し,その理念を実現するた めの「確かな学力」の育成と道徳教育の充実が図られ た。ここでは,道徳教育の充実に関する主な改訂のポ イントを挙げる。 ⑴ ��������������������������要かなめとして」学校���  活動全体�通じて行うも�であること�明確化  (参照「第 1 章 総則 第1の2」及び「第3章 道徳 第2」)  今回の改訂に先立って教育再生会議(平成 10 年 10 月〜平成 20 年 1 月)はその最終報告において,道徳 教育の充実を図るために道徳の時間の教科化を提言し た。結果として今回の学習指導要領の改訂では道徳の 時間の取り扱いは従来通りとなったが,道徳教育の実 質的な充実を図る視点から,道徳の時間を学校全体で の学校教育の要(中心の核)として明確に位置づけた。 ⑵ ���内容�学校��全体�通じて行う内容であ  ること�明確化  (参照「第 1 章 総則第1の2」及び「第3章 道徳 第2」「第3章   道徳 第3の1の(2)」)  道徳の時間に取り上げられる「内容」について,「い ずれの学年においてもすべて取り上げること。」とい う記述が追加され,内容の指導に漏れがないよう強調 された。また,各教科等においても,道徳の「内容」 について,それぞれの特質に応じて適切に指導するこ とも明確に記載された。なお,これまでの「2- ⑵人間愛, 思いやりの心」から「感謝」の価値を取り出し,「2-⑹感謝,報恩」として新設された。  ⑶ ����推進�師�中心に�全�師が協力して�  ����推進すること�明確化  (参照「第3章 道徳 第3の1の(1)」)  校長の方針の下に,道徳教育推進教師(道徳教育の 推進を主に担当する教師)を置き,全教師の協力の下, 道徳教育の全体計画や道徳の時間の年間指導計画を作 成し,密接な連携の中で家庭・地域社会とも連携を図 り,効果的な道徳教育を推進することが明記された(詳 しくは,「道徳教育の指導計画作成のポイント」を参 照)。 ⑷ �����指導内容�重点化�図る  (参照「第3章 道徳 第3の1の(3)」)  指導計画を立てる際には,生徒の発達段階や特性を 踏まえて指導内容の重点化を図ることが強調された。 また,指導の重点化においては,これまでの「規律あ る生活」ができる,「自分の将来を考え,国際社会に 生きる日本人としての自覚が身に付く」に加えて,「自 他の生命を尊重」することや,「法やきまりの意義の 理解を深め,主体的に社会の形成に参画する」ことが 示された。 ⑸������指導�一層�工夫�求める  �����������������������������������������   (参照「第3章 道徳 第3の3の(2)」「第1章 総則 第1の2」)    道徳の時間に生かす体験活動として,新たに「集   団宿泊活動」が加わり,「ボランティア活動」「自   然体験活動」等と合わせて,これらの体験活動を   道徳の時間で生かしていく一層の工夫を求めてい   る。  ��������������������������������������������������������������������   教材�開�と�用    (参照「第3章 道徳 第3の3の(3)」)    教材の開発や活用に関しては,「先人の伝記,    自然,伝統と文化,スポーツなどを題材とし,生   徒が感動を覚えるような魅力的な教材」と具体的   に示し,改めて,郷土や伝統に根ざした感動教材   の開発と活用を求めている。  ��������と�用�����������と�用����������と�用��� (参照「第3章 道徳 第3の3の(4)」)    今回の改訂では,「確かな学力」を育成するた   めの改善事項として,「言語活動の充実」を全教   育活動において求めている。言語はあらゆる学習   活動,コミュニケーションや感性・情緒などの基   盤となる。国語科で培った言語能力を基本に,そ   の他の教育活動においても言語活動を指導計画の   中に位置づけることでより確かなものにしていく   ことを求めているのである。道徳の時間において   も,「自分の考えを基に,書いたり話し合ったり   するなどの表現する機会を充実し,自分とは異な   る考えに接する中で,自分の考えを深め,自らの   成長を実感できるよう工夫すること」と示された。   しかし,ここでいう「工夫」とは,新しい指導方   法を求めているのではない。なぜなら,道徳の時

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  間の言語活動――「書く」「話し合う」「発表する」   は,まさに「自分とは異なる考えに接する中で,   自分の考えを深め,自己の成長を実感」するため   に行われるものであるからだ。言い換えれば,道   徳の時間の言語活動がその目的を十分に果たすよ   うな指導の工夫が期待されているのである。  �������������������������������������������� (参照「第3章 道徳 第3の3の(5)」)    情報モラルの指導について,「生徒の発達の段   階や特性等を考慮し,第 2 に示す道徳の内容との   関連を踏まえ」て指導するよう明記された。道徳   の時間における情報モラルの指導については,基   本的なルールや自他の権利の尊重,責任といった   道徳的価値に基づいた「判断力の育成」をどう図   っていくかを考えることが求められているのであ   る。情報機器の操作の習得や危険回避の方法など   の具体的な練習などに陥らないよう留意する必要   がある。 ⑹ ��授業�公開や地域�材�開発等�通じて�地  域社会や家庭と�一層�連携�図る  (参照「第3章 道徳 第3の4」)  これまでも家庭・地域と学校が連携を密にして道徳 教育を進めるよう求められていたが,今回の改訂で, さらに授業の公開や,地域教材の開発等に保護者や地 域の人々の参加を求める記述が加わった。学校での道 徳教育の推進と,地域と家庭とが共通理解の下に一丸 となって取り組むことに期待がかけられている。

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   学習指導要領「道徳」の内容と解説 1 主として自分自身に関すること  (1) 望ましい生活習慣,節度・節制   望ましい生活習慣を身に付け,心身の健康の増  進を図り,節度を守り節制に心掛け調和のある生  活をする。  生活習慣というものは他者や社会とあまり関係がな い,個人的な嗜好の問題であるように見える。けれど も実は,習慣は第二の天性といわれるように,外面的 なもののようでありながら我々をいちばん深いところ で規定し,深い影響を及ぼしているものである。節度, 節制とは,ともすれば安楽に流れる習慣を保ち,支え る役割を果たすと考えられる。節度,節制を,単なる 決まり,規律の問題にとどめず,より深い生き方を支 える問題としてとらえるべきであろう。   (2) 希望・勇気,強い意志   より高い目標を目指し,希望と勇気をもって着  実にやり抜く強い意志をもつ。  「強い意志」という部分に注目してこの項目をとら えることがよくあるが,「より高い目標」とひとまと めに内容を理解したい。  「より高い目標」を難しく考える必要はあるまい。 それぞれが自分の将来の姿として思い描いている夢と 考えればいいだろう。我々にとって難しいのは,その 夢を抱き続けることである。現代の社会は,さまざま な魅力あふれるものに満ちている。しかもそれらは, 少しがんばるだけで手に入れられる所に置かれている。 自分の思い描いた夢に近づけないと感じたとき,我々 の目は,ともすれば,それら魅力あふれるものに向き, 夢への思いが薄れることがあろう。強い意志とは,そ のようなときに,夢のほうを,すなわち,自分の思い 描いた将来の姿を,より大切にしようとする力のこと である。  (3) 自律,自主,誠実・責任   自律の精神を重んじ,自主的に考え,誠実に実  行してその結果に責任をもつ。  我々は,他者から命じられることをただ行うのでも, 付和雷同的に他者に追従するのでもなく,自らの考え に基づいて行動していく必要がある。その際に,自分 の行為がどのような結果を生み,どのような影響を及 ぼすかを前もってきちんと考えることが不可欠である。  たとえ善意に基づく行動,理想を目ざした行動で あったとしても,十分考えずにその行動を取った場合 に,意に反する結果,影響が生じる可能性は決して低 いとはいえない。結果に責任をもつとは,このように, 行動を起こす前に,その結果,影響についてまず熟慮 しておくということなのである。本項でいう自律もま た,単に自重するという意味ではなく,このような熟 慮を行う態度を指すと取るべきであろう。   (4) 真理愛,真実の追求,理想の実現   真理を愛し,真実を求め,理想の実現を目指し  て自己の人生を切り拓ひらいていく。  真理を探究し真実を尊重するのは,知的存在として の人間の本質に根ざした欲求である。知的欲求そのも のは幼少のころから人間に備わっているが,社会に次 第に深い関心を向け,自己のアイデンティティを本格 的に問い始める中学生の時期には,この欲求が,理想 的な社会像,理想的な人間像を知り,そこに到達した いという願いとなって姿を現してくる。この願いが, よりよいものに向かおうとする思いに持続的な力を与 えるのである。  もっとも,複雑で高度な現代社会では,この願いの 向かう先である理想像が,どこにどのような姿で存在 するのかを知るには,時に非常に困難であろう。しか し,それにくじけずに願いを抱き続けることが大切で あることを伝えたい。  (5) 向上心,個性の伸長 自己を見つめ,自己の向上を図るとともに,個  性を伸ばして充実した生き方を追求する。  中学生の時期は,「自分とは何者なのか」というア イデンティティの探求が本格的に始まる。それまでも, 自分が何者なのかはおのずと規定されていて,本人も 理解していたはずである。それに変化があったわけで はないのに,自分に対する問いかけが始まる。だとす れば,この問いに対する答えもまた,最終的には自分

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自身で探すしかない。  けれども,この問いはある意味で,自分自身を疑い 否定する問いである。自分の欠点にのみ目が向く可能 性もありうる問いである。そのようなときに,だれで もよさをもっているのだということや,その人自身の よさがどこにあるのかということを周囲が伝えられれ ば,この自己探求にとって大きな支えとなるのである。 2 主として他の人とのかかわりに関すること  (1) 礼儀   礼儀の意義を理解し,時と場に応じた適切な言  動をとる。  日常のあいさつなどの基本的な礼儀は,小学校の低 学年からきちんと身に付けるよう指導されている。こ のような基本的な型は,礼儀の不可欠な要素であるが, 中学生はさらに礼儀の意義を理解する必要がある。  中学生ともなれば,大人を含めさまざまな人と出会 う機会も増えてくるだろう。そのような場合,大人に 準じた行動を暗黙のうちに求められることもあろうし, 大人と同じ儀礼を覚えるべき場面もあるかもしれない。 基本的な礼儀の意義を理解していれば,このようなとき に,求められている行動が何かを察しやすいだろうし, 少なくとも失礼にあたる行動を取ったり不快感を抱か せたりすることはなくなるにちがいない。礼儀の意義 の理解は,型をまねる礼儀から出て,その場にふさわ しい言動を臨機応変に取れるようになるために欠かせ ないものといえよう。  (2) 人間愛,思いやりの心 温かい人間愛の精神を深め,他の人々に対し思  いやりの心をもつ。  だれともかかわりをもたずに生きている人間はいな い。「袖擦り合うも他生の縁」というが,さまざまな 事柄が全地球規模の広がりをもつ現代では,それこそ 地球の裏側の人間とでも,物やサービス,情報を介し てなんらかの縁をもっている。他者とかかわりをもつ のが人間の常態だとすれば,だれに対しても,身近な 人に対するのと基本的には同じ配慮をもって接するの が当然であろう。  他者に対するときに,利害を計算したり,好き嫌い の感情に動かされたりすることもあろう。それは排除 しきれないことかもしれないが,だれとでもかかわり があるのだとすれば,利害や好悪に基づく態度が,直 接の利を生まない人や好きでない人を無視し排除する ような態度につながっていいはずはない。  身近な人に対する思いやりの気持ちと本質的に全く 同じ配慮を,だれに対してももつことが,自然であり, かつすばらしいものであることを伝えたい。  (3) 友情,信頼 友情の尊さを理解して心から信頼できる友達を  もち,互いに励まし合い,高め合う。  遊び仲間という意味での友達ならば,ずっと以前か らもっていたはずである。けれども,中学生にとって, 友人はそれまでとは全く違った意味で重要な存在とな る。  次第に多くの知識を身に付け,また抽象的・理論的 な思考能力も発揮する中学生は,自分自身について, 自分の生きている社会について,さまざまな関心や疑 問を抱き始める。それまでは,精神的に家族に抱かれ ながら過ごしていたのが,今や家族を離れて,それら の問題を,自分の問題として自分自身の力で考えよう とし始める。もちろん,その基礎はまだぜい弱であり 不安定であるが,そのときに友人が互いによりどころ となり自立を支え合う存在となる。こうして,友人は 人格の深いところで互いを理解し合い,信頼し合うよ うな存在になるのである。  (4) 男女の理解・尊重 男女は,互いに異性についての正しい理解を深  め,相手の人格を尊重する。  中学生が異性の魅力に心をひかれるようになるのは 当然のことである。その関心が,自分にはない,異性 である部分に寄せられるのも当然といえよう。けれど も,ともすれば,その「異性である部分」が,興味本 位の身体的側面であることがある。また,ステレオタ イプな社会的性役割に凝り固まったような「男らしさ」 「女らしさ」という側面のこともある。いずれも,異 性を一人の人間として見られないでいる点では同じ問 題をもっている。  「異性についての正しい理解」とは,興味に流され

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ない異性の身体に対する理解であり,固定化された社 会的性役割にとらわれない理解のことである。異性へ の関心そのものは肯定的に受け入れつつ,その関心が 一人の人間としての異性に向かうような指導をすべき である。  (5) 寛容・謙虚 それぞれの個性や立場を尊重し,いろいろなも  の見方や考え方があることを理解して,寛容の心  をもち謙虚に他に学ぶ。  今回の改訂で,旧学習指導要領の「謙虚に他に学ぶ 広い心をもつ」という文言に「寛容の心」が加わり, 互いの違いを認め合い学び合うことがいっそう強調さ れた。  現代は多様な価値観が混在する時代である。それぞ れの価値観が,それぞれに正しさを主張しながら存在 している状況の中で,我々はつい「どんな価値観でも, その人がいいと思えばいい。」「自分には自分の考えが ある。」などと考えがちである。けれども,これは, 複雑な現実を前にして,それを真しん摯しに受け止める努力 を停止してしまった態度から生じる考えであろう。多 様な価値観を受け入れるのと「何でもいい。」と考え るのとは異なる。自分が正しいと思うことが本当に正 しいのかを常に検討する姿勢,他者の考えをおかしい と決めつけずに絶えず理解しようと努める姿勢が,多 様な価値観を受け止める前提になければならない。こ の姿勢が,本項でいう,寛容の心をもって謙虚に他に 学ぶことなのである。  (6) 感謝,報恩 多くの人々の善意や支えにより,日々の生活や  現在の自分があることに感謝し,それにこたえる。  今回の改訂で,これまで 2-(2) に含まれていた「感謝」 の文言が取り出され,新しい内容項目として設置され た。小学校の学習指導要領では,低学年から高学年ま で一貫して「感謝」の項目が2の視点の最後に置かれ ているが,今回の改訂で中学校においても同じ位置に 本項が置かれた意義は大きい。  人は,物理的にも精神的にも,他者とのかかわりが なければ生きてゆけない存在である。中学生の時期は 自立心の強く,ともすると周囲の人々を疎ましく思う こともあろう。しかし,一方では,不安定な心を抱え て悩み苦しむのもこの時期である。周囲の人々の支え の大きさを実感しやすいこの時期に,改めて「生かさ れている自分」の存在に気づき,心の底から込み上がっ てくる「ありがたい」という思いを大切にしたい。こ の「感謝」の気持ちが,他者と自分の絆をより深める とともに,さらには,自分を取り巻く自然環境や社会 へと広がっていくとき,まさに道徳教育の目標である ところの「人間としての生き方についての自覚」が深 まっていくのである。 3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること  (1) 生命尊重 生命の尊さを理解し,かけがえのない自他の生  命を尊重する。  人命は何にましても尊い。その人命を守り救うため に医療体制が整備され,さまざまな介護等の機関が設 置された。ところが皮肉なことに,逆にそのために, 我々が日常生活の中で人の生死に直接触れる場面は極 端に限られるようになり,ともすればその重さを実感 しにくくなった。その一方で,さまざまな報道や娯楽 媒体の中では,絶える間もなく人の死が報じられ,演 じ,描かれる。我々は,このような仮想的な人の死に は日常的に接しながら,実際の人命の重さに触れる機 会はほとんどないという,奇妙な状況のもとで日々を 過ごしている。  また,バイオテクノロジーの急激な進展とともに, 生命の問題は,これまでの常識を超える形をとって現 れるようになった。仮想的な場面でのみ生死の問題に 触れている状況の中では,このような科学技術の圧倒 的な力にきちんと向かい合う判断がいっそう困難にな るのは,当然のことである。  人間をはじめとするあらゆる生命の尊さを実感し, 真摯にその問題を考える機会を,道徳の時間は提供し なければならない。  (2) 自然愛,畏敬の念 自然を愛護し,美しいものに感動する豊かな心  をもち,人間の力を超えたものに対する畏敬の念  を深める。

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 自然,芸術,宗教的情操という,極めて重要な事柄 に関する項目である。広範な領域にかかわる内容をも つため,実際に授業を行う際には,焦点を絞る必要が あるだろう。  自然に関していえば,「自然を愛し」ではなく「自 然を愛護し」となっていることからも,自然に関心を 寄せるということから一歩進んで,より積極的に自然 を大切にするよう働きかけることが求められているこ とがわかる。現代が抱える環境問題の大きさを理解す れば当然のことであろう。もっとも,自然を単に愛護 の対象としてのみとらえては,この項目の広く深い意 義を矮わいしょう小化することになりかねない。人間もまた自 然の一部であることを忘れてはならない。  (3) 人間の強さと気高さ,生きる喜び 人間には弱さや醜さを克服する強さや気高さが  あることを信じて,人間として生きることに喜び  を見いだすように努める。  人間は二律背反的な存在である。極めて卑小で脆ぜい 弱 じゃく な面もあれば,どれほど大きな自然の力を前にして も,どれほど重い人間の生命を前にしても,それに対 峙するだけの力をもっている。また,すぐに挫折し, どれほど打ちひしがれるような体験があっても,そこ から再び立ち上がって歩み続けることもできる。  このような二面性をもった存在であるからこそ,人 間にとっては,希望を抱くことや信じることが大切に なり,それらを通じて,弱く卑しい人間が強く気高く なりうるのである。一見矛盾するようなこの場面を, 中学生ともなれば感じ取れるようになるのである。ち なみに,小学校の学習指導要領にこの項目はない。 4 主として集団や社会とのかかわりに関すること  (1) 遵法の精神,権利・義務,規律・秩序 法やきまりの意義を理解し,遵守するとともに,  自他の権利を重んじ義務を確実に果たして,社会  の秩序と規律を高めるように努める。  規範意識とは,決まりにただ従えばいいという意識 ではない。本項目の後半にある権利・義務の十分な理 解や,次項で述べられる社会連帯の意識が伴って初め て,十分に成熟した規範意識が生まれうる。これらの ものは不即不離の関係にあって,もし規範意識が低下 しているとしたら,決まりが定める権利・義務関係や 社会連帯にもすでにほころびがあると思われる。  本項の指導の際には,決まりを守る重要性とともに, 決まりが守る権利・義務関係や社会連帯意識等も視野 に入れた指導を行いたい。  (2) 公徳心・社会連帯 公徳心及び社会連帯の自覚を高め,よりよい社  会の実現に努める。  公徳心や社会連帯の意味を具体的に考えるには,近 年重視されるようになったボランティア活動を思い起 こすのがよいだろう。ボランティア活動は「かわいそ うだから」という同情に基づく活動ではない。同情は ボランティア活動と無関係ではないとしても,根拠で もない。同情からではなく,あたりまえだから行うの がボランティア活動のはずである。この「あたりまえ」 という意識は,「同じ社会に住んでつながりをもって いる人間どうしだから」という意識から生まれる。こ れが社会連帯の意識であり,公徳心を支える意識であ る。  (3) 正義,公正・公平 正義を重んじ,だれに対しても公正,公平にし,  差別や偏見のない社会の実現に努める。  公正,公平は,原則として明確な事項だが,具体的 な個々の場面でどのような行動が公正,公平かは,極 めて複雑で判断が難しい問題である。  また,差別や偏見は無知から生まれることがよくあ る。すなわち,差別と知って差別することよりも,差 別とは思わずに行ったことが差別につながってしまう ことが,また,偏見だとは思いもせずに偏見を抱いて いることがよくある。  上記のような観点から考えると,公正さ,公平さを 保ち,差別や偏見に陥らないようにするためには,不 正を退け正義を重んじる毅然とした態度とともに,実 際場面における複雑な状況を理解し分析する能力や, 自己を反省的に考える力,さまざまな知識を必要とす るといえよう。この項目の指導の際にも,これらの諸 点に配慮する必要があろう。

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 (4) 役割と責任の自覚・集団生活の向上   自己が属する様々な集団の意義についての理解  を深め,役割と責任を自覚し集団生活の向上に努  める。  我々は皆,さまざまな集団に属している。集団の中 には,友人仲間のように,人間的なつながりで結び付 き,集団を維持するための特別の仕組みや決まりなど はほとんど必要としないものもある。けれども,学習 活動の班や学級集団,さらに学校というように,何か の機能を果たす集団やある程度以上大きな集団になる と,必然的に,内部での機能の分化や役割の分担が必 要になってくる。また,集団を維持するための決まり が必要になってくる。  中学生の時期は,学級集団を超えて,クラブ,生徒 会活動など,より複雑で大きな集団の一員として過ご すことも増えてくる。こういった集団の一員であるた めには,その集団の存在理由,目的,機能などを理解 したうえで,自分が果たすべき役割を自覚的にとらえ ていく必要が生じる。  (5) 勤労,社会奉仕 勤労の尊さや意義を理解し,奉仕の精神をもっ  て,公共の福祉と社会の発展に努める。  今回の改訂で,小学校低学年にも勤労の項目が加 わった。勤労や奉仕活動の意義の理解をより深め,こ れらに向かう態度をさらに自発的,積極的なものにし たいということであろう。  現代の中学生にとっては,学校や家庭を中心とした 自分の生活と,将来の勤労などを通じての社会参加と は直接つながりにくく,そのため,勤労や奉仕活動を 通じて社会とつながりをもち,社会に貢献することの 意義も見えにくくなっているように思われる。ボラン ティア活動の意義が強調されるのも,一つには,この つながり自体を実感できる体験となりうるからであろ う。道徳の時間においても,このようなつながりが意 識できるように配慮することが望まれる。   (6) 家族愛,充実した家庭生活  父母,祖父母に敬愛の念を深め,家族の一員として  の自覚をもって充実した家庭生活を築く。  小学校高学年の学習指導要領と比べたとき,中学校 では「家族の一員としての自覚をもって」という言葉 が用いられているのが注目される。主体的に自分と家 族とのかかわり合い,自分にとって家族がもつ重要さ をとらえ直したうえで,家庭生活を送ることが求めら れているといえよう。  第二の誕生を迎えるこの時期,自分を守り育ててく れた家族が,自分を束縛する存在に見え,煩わしく思 えてくることがあるかもしれない。それは自己を確立 し,家族から精神的に独立していく過程の中では,あ る意味で当然のことであるけれども,これと家族の拒 否とは異なる。家族との関係を見直し,新たな関係を 築き,そこで自分が果たすべき役割を見いだすことが 必要なのである。  (7) 愛校心,よりよい校風の樹立 学級や学校の一員としての自覚をもち,教師や  学校の人々に敬愛の念を深め,協力してよりよい  校風を樹立する。  前項の「家族」,本項の「学級や学校」,そして,次 項の「地域社会」と,ともに小学校高学年の学習指導 要領では用いられていない「自覚をもつ」という言葉 が使われている。これらの項目が扱う集団や社会の一 成員であることを意識的にとらえ直したうえで,そこ で自分が果たすべき役割を主体的に探ることを求めて いるのである。  本項は,学級・学校という集団に関しての項目であ る。校風というものは,ある意味で不思議なものであ る。活動や決まりとして明確に定められているわけで もないのに,学校の活動全体から醸成され,学校全体 を包む雰囲気として存在している。学校全体に存在す るものであるから,生徒や教師が入れ替わっても受け 継がれていく。本項目を扱う際も,読み物資料を基に, 自分の学校全体の醸し出すよさを感じ取るところに指 導をつなげたい。  (8) 郷土愛,先人への尊敬・感謝,郷土の発展   地域社会の一員としての自覚をもって郷土を愛  し,社会に尽くした先人や高齢者に尊敬と感謝の  念を深め,郷土の発展に努める。  社会構造,産業構造が激変し,人口の流動も激しく

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なったため,旧来の地域社会は,都市,農村部ともに 大きく変容し,生活共同体としての役割が脆弱になっ ているといわれる。これは,社会連帯の意識が希薄化 しているという問題ともつながりをもつ。このような 状況の中で,学校には,地域社会とのつながりをいっ そう深めつつ,共同体を新たに育てるための一翼を担 うことが期待されよう。  生徒が地域に貢献してきた先人のことや地域の歴史 を学んで,地域社会に対する関心を高め,自らと地域 社会とのつながりを自覚するように指導したい。  (9) 愛国心,伝統の継承と文化の創造 日本人としての自覚をもって国を愛し,国家の  発展に努めるとともに,優れた伝統の継承と新し  い文化の創造に貢献する。  自分が生まれ育った国を愛し,なんらかの貢献をし たいと思うのは,ある意味で自然な感情である。した がって,愛国心をことさら称揚し,強調する必要もな いが,逆に愛国心を言下に否定する必要もない。けれ ども,政治,経済,文化,情報,環境などのあらゆる 問題が,国という境界が意味をもたないほどに世界中 で影響を及ぼし合っている現代においてなお,ナショ ナリズムは大きな問題を生んでいる。愛国心が偏狭な 姿勢につながったときの危険性は,十分に意識してお くべきであろう。  このような危険を避けるためにも,必要なのは,自 国の伝統と文化をより深く正しく理解することである。 新しい文化の創造も,他国の文化・伝統に対する深い 理解,尊重も,そこからしか始まらないのである。  (10) 日本人としての自覚,人類愛   世界の中の日本人としての自覚をもち,国際的  視野に立って,世界の平和と人類の幸福に貢献す  る。  前項でも述べたように,現代は,政治,経済,文化, 情報,環境などのあらゆる問題が,国境を越えて影響 を及ぼし合う時代であり,さまざまな問題の解決に, 国際的視野が必然的に求められる時代である。国際的 視野は,国際問題を考えるときだけでなく,我々自身 の問題を考えるときにすでに求められる。さらに敷延 すれば,世界の平和,人類全体の幸福もまた,自分自 身の問題とつながる。  けれども,我々は,このようなつながりを十分に意 識しているとは必ずしもいえない。また,世界的なつ ながり合いを意識していたとしても,それぞれの問題 がそれぞれの文化,地域で実際にどのような影響をも たらすのかを知らないことも多い。  他国,異文化の深い理解と,それが自分自身につな がっているということとをあわせて実感できるような 指導が求められよう。 (現代教育文化研究所所長・副読本編集委員 小川信夫)

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   道徳の「内容」一覧表

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第1学年及び第2学年 第3学年及び第4学年 第5学年及び第6学年 中 学 校 1  主として自分自身に関すること ⑴望ましい生活態度 ⑴自立,思慮,節度ある生活 ⑴生活習慣の見直し,  節度・節制 ⑴望ましい生活習慣, 節度・節制 ⑵勤勉・努力 ⑵努力,忍耐 ⑵希望・勇気,不とう不屈 ⑵希望・勇気,強い意 ⑶善悪の判断,勇気 ⑶善悪の判断,勇気 ⑶自由,自律・責任 ⑶自律,自主,誠実・責 任 ⑷正直,明朗 ⑷反省,正直,明朗 ⑷誠実,明朗 ⑸真理,進取,創意 ⑷真理愛,真実の追求,理想の実現 ⑸個性伸長 ⑹個性伸長 ⑸向上心,個性の伸長 2  主として他の人との かかわりに関すること ⑴礼儀 ⑴礼儀 ⑴礼儀 ⑴礼儀 ⑵温かい心,親切 ⑵思いやり,親切 ⑵思いやり,親切 ⑵人間愛,思いやりの心 ⑶友情,助け合い ⑶友情,信頼,助け合い ⑶友情,信頼,男女の協力 ⑶友情,信頼 ⑷男女の理解・尊重 ⑷謙虚・広い心 ⑸寛容・謙虚 ⑷感謝 ⑷尊敬・感謝 ⑸感謝,報恩 ⑹感謝,報恩 3  主 と し て 自 然 や 崇 高 な も の と の か か わ り に 関 す る こ と ⑴生命尊重 ⑴生命尊重 ⑴生命尊重 ⑴生命尊重 ⑵自然愛,動植物愛護 ⑵自然愛,動植物愛護 ⑵自然愛,環境保全 ⑵自然愛,畏敬の念 ⑶敬虔 ⑶敬虔 ⑶敬虔,畏敬の念 ⑶人間の強さと気高さ,  生きる喜び 4  主として集団や社会とのかかわりに関すること   ⑴規則尊重,公徳心 ⑴規則尊重,公徳心 ⑴公徳心,遵法, 権利・義務 ⑴遵法の精神,権利・  義務,規律・秩序 ⑵公徳心,社会連帯 ⑵公正・公平,正義 ⑶正義,公正・公平 ⑶役割の自覚と責任 ⑷役割と責任の自覚・  集団生活の向上 ⑵勤労,奉仕 ⑵勤労,奉仕 ⑷勤労,社会奉仕 ⑸勤労,社会奉仕 ⑶家族愛,役に立つ喜び ⑶家族愛,楽しい家庭 ⑸家族愛,家族の幸せ ⑹家族愛,充実した 家庭生活 ⑷愛校心,楽しい学校 ⑷愛校心,楽しい学級 ⑹愛校心,よりよい校風 ⑺愛校心,よりよい 校風の樹立 ⑸郷土への愛着 ⑸郷土愛 ⑺郷土愛,愛国心 ⑻郷土愛,先人への尊敬・  感謝,郷土の発展 ⑹愛国心,国際理解 ⑼愛国心,伝統の継承 と文化の創造 ⑻国際理解,親善 ⑽日本人としての自覚,

参照

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