「糖尿病の病態と診断」
1 ふたつの糖尿病の違いを知ってください 非糖尿病に比し2~4倍の頻度 非糖尿病に比し3~6倍の頻度 成人失明原因の第2位 (3000人/年) 透析導入の第1位 (16000人/年) 下肢切断原因の第1位 (3000人/年)糖尿病の慢性合併症
インスリン不足による持続的な高血糖により 全身に様々な血管合併症を来たす 網膜症 腎症 脳血管障害 心血管病変 神経障害 末梢動脈疾患 青:細小血管症(1,2型共通) 赤:大血管症(2型に多い)膵 島
細胞 分泌ホルモン ホルモン作用 α細胞 グルカゴン 血糖上昇、異化促進 β細胞 インスリン 血糖降下、同化促進 δ細胞 ソマトスタチン グルカゴン、インスリン分泌抑制 グルカゴン インスリン 5健常状態と1型糖尿病でのインスリン分泌
健常者 (pmol/min) 800 血 中 イ ン ス リ ン 値 600 400 200 基礎分泌 追 加 分 泌 6 10 14 18 22 2 6 (時) 朝食 昼食 夕食Polonsky KS et al.:N Engl J Med 318:1231-1239, 1988 より改変
糖尿病における成因と病態の概念
1型糖尿病と2型糖尿病の特徴
発症機構 家族歴 発症年齢 肥満度 自己抗体 糖尿病の分類 自己免疫を基礎としたβ細胞破壊. 遺伝素因(HLA)に何らかの誘因が 加わり発症 他の自己免疫疾患の合併が少なく ない 家系内発症は2型より頻度が低い 全世代でみとめられる(若年で多 いわけではない) 肥満とは関係ない GAD抗体,IAA,ICA,IA-2抗体など 膵島関連自己抗体陽性率が高い インスリン分泌低下やインスリン 抵抗性をきたす複数の遺伝因子 に,過食・運動不足などの環境 要因が加わりインスリンの作用 不足を生じて発症する 家系内血縁者にしばしば糖尿病 がある 40歳以上に多い 若年発症も増加している 肥満または肥満の既往が多い ほとんど陰性 1型糖尿病 2型糖尿病 9糖尿病の成因分類
Ⅰ. 1型 A. 自己免疫性 B. 特発性 Ⅱ. 2型 Ⅲ. その他の特定の機序、疾患によるもの A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの ①膵β細胞に機能に関わる遺伝子異常 ②インスリン作用の伝達機構に関わる遺伝子異常 B. 他の疾患、条件に伴うもの ①膵外分泌疾患 ②内分泌疾患 ③肝疾患 ④薬剤や化学物質によるもの ⑤感染症 ⑥免疫機序によるまれな病態 ⑦その他の遺伝症候群で糖尿病を伴うことの多いもの Ⅳ. 妊娠糖尿病 10糖尿病の臨床診断のフローチャート
糖
尿
病
糖尿病型 • 空腹時血糖 ≧126 • 75gOGTT 2時間値 ≧200 • 随時血糖値 ≧200糖尿病の診断
• HbA1c (NGSP値) ≧6.5%* • 糖尿病特有の自覚症状 (口渇、多飲、体重減少など) • 糖尿病網膜症 * 米国(ADA)の診断基準では、HbA1cの値のみで診断可能。 血糖値の異常が2回糖尿病の自覚症状
1型糖尿病の発症経過
Trigger Event(コクサッキーウイルスなど) インスリン 分泌減少 顕性 糖尿病 インスリン 依存状態 Eisenbarth GS NEJM 314:1360-68, 1986を改編 残存膵 β 細胞量 (% ) 100 20 活動性 免疫異常 自己抗体の出現 ICA IAA GAD IA-2 3か月以内:急性発症1型糖尿病 数年以上:緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM) 1週間前後:劇症1型糖尿病急性発症1型糖尿病診断基準(2012)
1. 口渇、多飲、多尿、体重減少などの糖尿病(高血糖)症状の出現後、 おおむね3か月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る。 2. 糖尿病の診断早期より継続してインスリン治療を必要とする。 3. 膵島関連自己抗体が陽性である。 4. 膵島関連自己抗体が証明できないが、内因性インスリン分泌が欠乏 している(空腹時血清Cペプチド<0.6 ng/mlを、内因性インスリン分泌 欠乏の基準とする)。 判定: 上記1~3を満たす場合、「急性発症1型糖尿病(自己免疫性)」と診断す る。1、2、4を満たす場合、「急性発症1型糖尿病」と診断してよい。 内因性インスリン分泌の欠乏が証明されない場合、あるいは膵島関連 自己抗体が不明の場合には、診断保留とし、期間をおいて再評価する。膵島関連自己抗体
自己抗体(GAD,IA2,ICA)の集積により1型糖尿病の発症率が増加する 自己抗体 発症早期陽性率 ICA 60~80% IAA 40~90 % GAD抗体 60~80% IA-2抗体 60~80% ZnT-8抗体 60%■ICA(islet cell antibody)
凍結ヒト膵切片の間接免疫蛍光抗体法で測定。 ■IAA(insulin autoantibody) 高親和性・低結合能のインスリンに対する抗体。 インスリン治療開始前に測定する。 ■GAD抗体 GABA合成に必要なグルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD)の抗体。分子量からGAD65とGAD67が 存在し、T1DMではGAD65が特異的。神経疾患 Stiff-man症候群では両者陽性。 ■IA-2抗体 ICAの標的抗原の一つとしてクローニング。膵β 細胞分泌顆粒に存在するICA512に対する抗体。 ■ZnT-8抗体 膵島のインスリン分泌顆粒膜に高発現するZinc transporter-8に対する抗体。 17
SPIDDM:緩徐進行型1型糖尿病
• SPIDDM:slowly progressive
type 1 diabetes mellitus(insulin dependent diabetes mellitus) 必須項目 1. 経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵 島細胞抗体(ICA)が陽性である。a) 2. 糖尿病の発症(もしくは診断)時、ケトーシスもしくはケトアシドーシスは なく、ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならない。b) 判定:上記1、2を満たす場合、「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」と診断す る。 a)Insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体,インスリン自己抗体(IAA)もしくは亜鉛輸 送担体8(ZnT8)抗体に関するエビデンスは不十分であるため現段階では診断基準に含ま ない。 b)ソフトドリンクケトーシス(ケトアシドーシス)で発症した場合はこの限りではない。 18
劇症1型糖尿病 (1B型)
Trigger Event 残存膵 β 細胞量 (%) 100 20 インスリン 依存状態 診断基準 1-3すべての項目を満たすもの 1 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシス、ケト アシドーシスに陥る 2 初診時の随時血糖が288mg/dL以上であり、かつ HbA1c<8.5%である 3 発症時の尿中Cペプチド<10μg/日、または空腹時血清 Cペプチド<0.3ng/mLかつグルカゴン負荷後(食後2時 間)Cペプチド<0.5ng/mLであるShibasaki S et al. Endocrine J 57: 211-9, 2010
H&E stain Insulin Glucagon
日付 講師 演題名 第1回 2011年4月9日 徳島大学 糖尿病臨床・研究開発 センター 黒田 暁生先生 1型糖尿病のコントロールするコツ 第2回 2011年9月10日大阪府立母子保健総合医療センター和栗 雅子先生 1型糖尿病と妊娠~目標に向かって妊娠前管理~ 第3回 2012年1月28日三菱商事 関西支社 診療所池田 雅彦先生 もしもAWA DM.comのメンバーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら 第4回 2012年4月28日大津市民病院神内 謙至先生 1型糖尿病を持ちながら生活するということ 第5回 2012年9月8日岡山大学病院野口 洋文先生 膵島移植と膵島再生療法について 第6回 2013年1月26日国立病院機構京都医療センター村田 敬先生 自己管理って、なんだろう? 第7回 2013年4月20日南昌江内科クリニック南 昌江先生 夢を追い続けて~インスリンと共に 35年~ 第8回 2013年9月28日大分県立病院瀬口 正志先生 大分県立病院の1型糖尿病の実情
1型糖尿病患者会~AWA DM.com~
第13回1GATAライブ グループデスカッション 特別講演次のAWA DM.comは
2018年1月20日
• 1月、4月、9月に開催
詳しくは以下HP参照ください。 http://tokutokyo.org/guidance/dm.html -14 -10 -6 -2 2 6 10 14 0 20 40 60 80 1002型糖尿病の自然経過と病態の関係
IGT Diabetes 糖尿病診断 罹病期間(年) Monnier L et al. Diabetes Metab 31:101-109, 2005 NGT 222型糖尿病発症に関与する環境因子
食習慣:過食、脂質過剰摂取
運動習慣:運動量の減少
肥満(内臓型脂肪蓄積)
喫煙習慣
加齢:高齢化
ストレス:社会構造の複雑化、経済の低迷
肥満者において脂肪細胞は肥大化している
日本医師会雑誌: 136(Suppl. 1), S2-S13, 2007.(一部改変) 普通体重者 軽度肥満 高度肥満 脂肪細胞は球形で細胞間に余 裕有り。 直径は70~90ミクロン。 脂肪細胞は明瞭に肥大し、細胞 間に隙間がない。直径は100ミ クロンを超えている。 しかし140ミクロン程度が限度で ある。 脂肪細胞は肥大し、100ミクロン を超えるとともに、未熟な球形の 小型脂肪細胞が生じている。 画像提供: 国際医療福祉大学病理学 杉原 甫 注意 危険レプチン↑ PAI-1↑ TNF-α↑ FFA↑ アディポネクチン↓ 肥大脂肪細胞 レプチン↓ PAI-1↓ TNF-α↓ FFA↓ アディポネクチン↑ 小型脂肪細胞 肥満 脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカイン
2型糖尿病では肥満・非肥満いずれも
膵β細胞量が低下する
肥 満 No diabetes IFG Type 2 diabetes No diabetes Type 2 diabetes 0 1 2 3 Be ta -c e ll v o lu m e ( %) p<0.05 p=0.05 p<0.05 p<0.01 非肥満Butler et al. Diabetes 2003;52:102–10 26
非糖尿病 (経口血糖降下薬)2型糖尿病
2型糖尿病とβ細胞の破壊
(Sakuraba H. et al. Diabetologia 45: 85-96, 2002)
インスリンmRNA ハイブリダイゼーション法 27 200 100 0 血糖値 (mg/dl) インスリン 分泌動態 10 8 4 6 0 2 食物から血中への 糖の流入 (mg/kg・分) 朝食 昼食 夕食 健常人 糖尿病
健常人と2型糖尿病患者での「糖の流れ」
28 4 6 0 2 肝・糖取り込み速度 (mg/kg・分) 6 4 0 2 筋・脂肪 糖取り込み速度 (mg/kg・分) 4 0 2 肝・糖放出速度 (mg/kg・分) 朝食 昼食 夕食 健常人糖尿病健常人と2型糖尿病患者での「糖の流れ」
29小腸から分泌されるインクレチン
小腸 ブドウ糖 K細胞 L細胞 インスリン分泌 α β GIP GLP-1 グルカゴン分泌 胃 膵臓 30Glucagon-Like Peptide-1 Glucose Insulinotropic Polypeptide DPP-4
2型糖尿病患者と非2型糖尿病患者
におけるインクレチン効果
Nauck M et al. Diabetologia. 1986;29:46–52. 時間(分) イ ン ス リ ン ( m U / L ) n m o l/ L 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 80 60 40 20 0 180 60 120 0 非糖尿病 (n=8) 2型糖尿病 (n=14) 時間(分) イ ン ス リ ン ( m U / L ) n m o l/ L 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 80 60 40 20 0 180 60 120 0 経口グルコース負荷 静脈内 (IV) グルコース持続注入 インクレチン 効果 2型糖尿病では インクレチン効果が 減弱している。 31