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Research Journal of JAPEW 29:37-55, ボールルームダンスの指導法に関する研究 事例報告 音楽の特徴を生かした即興的な交流を取り入れたボールルームダンス指導試案 田島正浩 ( 筑波大学大学院 ) 村田芳子 ( 筑波大学 ) A Study relati

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事例報告

ボールルームダンスの指導法に関する研究

─音楽の特徴を生かした即興的な交流を取り入れたボールルームダンス指導試案─

田島 正浩(筑波大学大学院) 村田 芳子(筑波大学)

A Study relating to Ballroom Dance Lecture Methods in Public Education

─A Proposal for Ballroom Dance Lectures Integrating Improvisational

Communication using musical characteristics─

Masahiro TAJIMA(Tsukuba University) Yoshiko MURATA(Tsukuba University)

要 旨 日本においてボールルームダンスは,その歴史的変遷から競技ダンスを中心に発展してきた。そのため現在 日本においては,既成の型の習得から入り,時間をかけて踊りを研鑽・改良していく指導法が主流となっている。 そこで本研究では,ボールルームダンスの指導法の導入部に着目し,既成の型の習得を中心とする指導ではなく, 各種目1)の持つ音楽性やリズムの特徴,表現感を大切にし,学習者が即興的に交流しながら踊り,その特性を楽 しみながら学習を進めるボールルームダンスの指導スタイルを提案し,その重要性を論じることを目的とする。 ボールルームダンス指導試案では,以下の 3 点に着目して作成・実施された。第一に,ダンスの学習を初心 の学習者にもイメージしやすい表現と重ね合わせ,第二に,各種目の特徴のある音楽表現2)を即興的に交流しな がら学び進められる様な構成を試み,特にスムーズな授業の展開を重視した。第三に,これらの指導試案は,ボ ールルームダンスの本来の姿に存在する即興の“リード&フォロー3)”の学習に注目し,学習者がそれぞれのダ ンス音楽を感じ,全身で表現を楽しみながら展開する点が特徴である。このような学習を通して,身体的な国 際文化交流感覚を身につけるとともに,教育としてのボールルームダンスの新たな方法の可能性が示唆された。 Abstract

In Japan, ballroom dance has been developed competition-style centered through its historical transitions. Because of that, the ballroom dance lecture methods, which are being made mainstream in nowadays Japan, are spending plenty of time starting from learning established figures to gradually polishing and improve the dance. The aim of this study is to argue the importance of the introduction of ballroom dance lectures, instead of centering them on learning established figures, the understanding of the importance of the musicianship, rhythmical sense and expressional feeling contained in every dance, and the proposal of a new ballroom dance lecture style that enables the students learn the specific characteristics of each dance joyfully through improvisational communication.

The ballroom dance lecture plans are composed focusing on the following 3 points. First, the lectures are trying to be easily imaginable even by beginner students, second, learning each dance’s characteristical musical expression through improvisational communication while emphasizing the learning flow. Third, the lecture plans zoom-in on the improvised “lead and follow”-learning, which is an original character of ballroom dance, where, as a characteristic, students develop lectures by feeling each dance’s music and enjoying full body expressions. Through the proposed learning method the potential of a new way of ballroom dance as general education is suggested, while the students acquire physical intercultural communication awareness.

Key words: Ballroom Dance, Lecture Methods, Characteristics of Music, Improvisation

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Ⅰ 緒言 Ⅰ-1 研究の背景 平成20年度新学習指導要領の改訂で中学校 1 ・ 2 学年におけるダンス必修化が示された。現在, 我が国の舞踊教育は小学校,中学校,高校と「表 現・創作ダンス」,「フォークダンス」,「リズムダ ンス・現代的なリズムのダンス(以下リズム系ダ ンス)」の 3 つの内容で構成されている。片岡は「生 涯学習時代」へ向けて「これからのダンス教育を 充実させていくためには,まず第 1 に多種多様な ダンスの分類に基づく学習内容の配列と指導法の 検討,第 2 にはそれに対応する指導者の養成や施 設・設備の充実,教員の男女比の改善などがなさ れなければならない。」(片岡2002,p.128)と述 べている。 本研究で取り上げるBallroom Dance(ボールル ームダンス)とは,日本で一般的に「社交ダンス」 「ソシアルダンス」と呼ばれるダンスでのことで, 公益社団法人日本ダンススポーツ連盟(以下 JDSF)によると「 2 歳から90歳を超える会員層」 とある様に,正に生涯学習・生涯スポーツとして 踊 ら れ て い る ダ ン ス で も あ る。 英 語 でSocial Danceというと社交型のダンス全般を包含する為, Ballroom Danceというのがこのダンスを指し示す 固有名詞である。その名の通り,Ballroom(舞踏室) で踊られ洗練・体系化されてきた歴史のあるダン スである。「10ダンス」と呼ばれるWaltz(ワルツ), Viennese Waltz(ヴェニーズワルツ),Tango(タ ンゴ),Slow Foxtrot(スローフォックストロット), Quick Step(クイックステップ),ChaChaCha(チ ャチャチャ),Samba(サンバ),Rumba(ルンバ), Paso Doble(パソドブレ),Jive(Jive)の10種目 をみても,Classic,Latin,Jazz,Rockといった 世界各国発祥の音楽とその多様なリズムに乗せて 踊られるリズムダンスである。 発祥の国々では,老若男女が世代を超え,ダン ス自体学習経験がなくとも,自然に音楽を楽しみ ながら,自由に関わって踊られる。その様子は洋 画のシーン等でもよく見られるが,パーティーや 家の中での何気ないダンスまで,日常から非日常 を含めた生活に根付いている。それがボールルー ムダンスの本来の姿である。 日本では実施人口が「200万人余り」と言われ ているが,JDSFでは会員数「約45,000名」の内, 登録競技選手が「約20,000名」とその半数近くも おり(JDSF2012),全国各地で多くの競技会が開 催されていることから「競技ダンス」という名称 でも呼ばれて競技で関わる人も多い。財団法人日 本ボールルームダンス連盟(以下JBDF)による と会員(登録教師)数は「13,000名」おり,ボー ルルームダンス教師はほとんどが競技選手(また は競技引退者)である。競技を目的としない人の 中には,ダンスパーティーや発表会等でのデモン ストレーションを目標に習っている人も多く,そ の学習スタイルは,振付けを覚え鍛錬し,本番に 向かってレッスンを受けるスタイルとなる。それ 以外にもパーティーのダンスタイムやダンスホー ル等で社交ダンスとして踊れる様になる為に習う 人や,公民館等の公共施設を利用したサークル活 動も多数あるが,「公共施設によるサークル活動 は極めて熱心であるが,楽しく踊って自由に交流 を楽しむというよりは,指導者に教わり習うスタ イルが主流であり,開放性と広がりに欠ける」 (JBDF,2001,p45)とある。また,日本におけ るボールルームダンス享受の状況として,「愛好 者の活動状況はきわめて熱心なものである」が「専 門化,マニア化」がみられ,「この世界の閉鎖性 と過剰な競技志向による弊害が示唆されている。」 (JBDF,2001,p45)ともあるように,問題点が 指摘されている。 その為,現在日本で主流となっているボールル ームダンスの指導法では,競技や発表を目的とせ ず,社交ダンスとして健康や交流を求め習う場合 であっても,例えば映画『Shall we ダンス?』 (1996)での初心者のマンボ指導風景に見られる 様に,最初に振付けも含めた既成の型の習得から 入り,徐々に踊りの技術を研鑽・改良していくと いう流れで,時間を掛けた指導が行われている。 このことからも教える側の競技ダンス学習からの 影響と,その指導内容を窺い知ることが出来る。 永井(1991)によると,日本では長年の風営法 の規制により,未成年がボールルームダンス文化 を享受する環境が整備できず,1985年に漸く民間 のボールルーム教授所の未成年の立ち入りが許可 された。その後ジュニア層の競技会等も開催され はじめ,小中高生も徐々に国際大会を含めた大会

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に参加する様になった。JDSF(2012)には「ジ ュニア選手の全国大会は,約600名の子ども達が 一堂に会する大会に発展。その輪は全国的に広が っています。」とあり,子どものボールルームダ ンス人口が徐々に増えてきている。また,JDSF の傘下団体で,大学生組織である全日本学生競技 ダンス連盟は,1948年の設立時に東京六大学と関 東圏の 2 大学の 8 校からのスタートが,現在では 加盟大学「約170校」,学生数「約4000人」で活動 しており(JDSF,2012),日本では競技ダンスを 主として若年層にボールルームダンスが享受され ている現状が見受けられる。 また,風営法の下,未成年者がボールルームダ ンスと関わることの出来なかった時代背景から, しばらくの間ボールルームダンスが大人だけのも のとなり,発祥諸国の様に,老若男女世代を超え て踊り交流するダンスといった生活の中の根付き もなかなか見られない。その結果,国際的に活躍 する人々等,例えば日本人ノーベル賞受賞者の悩 みの種としてパーティーでのボールルームダンス が挙げられることも度々報じられている。 一方,教育としてのボールルームダンスの指導 法に関しては,学校学習用教材として全国体育学 習研究会と提携してJBDFの学校学習創造支援プ ロジェクト委員会からDVD教材や教本等(JBDF, 2005,2006,2008)も作成されているが,その指 導内容も基本的に既成の型の習得が主軸となり, 決まった数種のステップとフィギュアを組み合わ せたアマルガメーションの学習4)を中心に組み立 てられている。このような既成の型の習得を中心 とした場合の問題点は,教師から学習者への指導 に対して,学習者から引き出す学習が時間的にも 内容的にも少なくなってしまうということが挙げ られる。これらは,「教師の指導性の原則は,子 どもの自発性・自主性を生かす方向で発揮されな くてはならない」,「特に,これからは「教える/ 教えられるが」が一方方向ではなく,相互のやり 取りの中でともに創る「双方向の授業」が求めら れる」(村田2011)といった視点からも問題とい えよう。また,型を覚えることにばかり気を取ら れてしまうと,村田が「リズム系ダンスの学習内 容」の一つとして挙げている「音楽の吟味」(村 田2012)といった内容の欠如や,ダイナミックに 全身を自由に使った学習,授業におけるひと流れ の構成5)も難しくなることが挙げられる。これら の教育の視点から,誰にでもすぐに踊り出せ,そ れぞれのダンスが持つ特性を楽しみながら学習で きるスタイルの指導法研究が求められる。型の学 習については,教育の中で学習者が自然と自主的 に興味を持ち,習いたいと思ってからダンス教室 やダンスサークル等で専門家から習得していくの がより得策であるとも考えられる。 以上の背景から,本研究ではボールルームダン スの指導法における導入部に着目し,プログラム 構築の必要性を主軸として研究を行った。 Ⅰ-2 研究目的 筆者自身が幼少の頃より,国内外で習得・経験 してきたボールルームダンスの教授法と,学校に おけるダンス教育の研究を,T大学を拠点として 数年に渡り行ってきた。 本研究では,その研究成果の報告として,学習 者がそれぞれの各種目の音楽を感じ,音の波や特 徴的なリズムの中で身体を揺らし,即興的に他者 との関わりを持つというボールルームダンスの特 性を見出し,楽しみながら学習できる様に,従来 からの型の習得を中心とした指導とは基本的に異 なるボールルームダンスの指導法を提案すること を目的とした。また,生涯学習としても,年齢・ 経験を問わずに学べるプログラム構成を試みた。 Ⅱ 研究方法 Ⅱ-1 文献・映像資料等による調査 日本におけるボールルームダンスとその歴史的 変遷については,永井良和氏の著作に依拠し,出 版年1991年以降を筆者が付け加えて概観した。 各種目の歴史や文化を含む舞踊的背景について は 山 崎(1999),Nebenzahl(2004) に 依 拠 し, リズムや動きの特徴を含むダンスのテクニカルな 面については,国内外で筆者が二十数年間受けて きた数々のレクチャーより習得した内容を基に説 明を加えた。ダンスのタイミングや音楽のベース リズムとなるパーカッションリズムの表記につい ては,音楽家でプロのパーカッショニストの細川 ひとみ氏にご協力頂いた。 現在日本で主流となっているダンス指導法につ

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いては,ボールルームダンスに関する文献や教材 等の映像に加え,筆者が実際に受講した講習会の JBDF学校学習支援プロジェクト委員会「はじめ てのボールルームダンス指導者講習会」,JDSF「公 認指導員研修会」や民間のダンススクール,地域 のダンスサークル等での指導内容をベースにその 指導法を分析し,問題点を整理した。 Ⅱ-2 指導の実施と指導試案の作成 各種目の指導試案については,先ず「10ダンス」 内 で 同 じ リ ズ ム グ ル ー プ のWaltzとViennese WaltzをWaltzとしてまとめ,ジャズリズムで同 系 のSlow FoxtrotとQuick StepをFoxtrotと し て まとめた。また,難易度的にも易しく,パーティ ーダンスとして踊られるBlues(ブルース)も同 リズムグループのFoxtrotに加え,Mambo(マン ボ)はCha Cha Chaに,Jitterbug(ジルバ)は Jiveにとそれぞれ同リズム系統のダンスに組み込 むことにより全8種に絞った。 2009年と2010年に,T大学で行われた授業「ダ ンス特別実習Ⅱ(フォークダンス・社交ダンス)」 (週 1 回,全10回)の指導内容より試案を作成し, 主に2011年度の同授業において指導の実施を行 い,実施内容を基に,学生の反応(授業内の感想 や授業後の感想文)等を入れつつ,再修正し,指 導試案を作成した。 指導の対象は, 3 年間とも体育専攻の学生を中 心とする受講生が30名程(舞踊専攻の学生,大学 院生,留学生,研究者含む)であった。 本文中の聞き取り調査については,大学入学以 前の学校でのダンス学習経験とそのイメージにつ いて,2012年度授業受講者30名の内,ダンスを専 門としない学生19名に対して行った。 これらの実践を通して考案した新しいボールル ームダンス指導試案は,取り上げた 8 つの種目毎 に,その舞踊的背景と特徴,指導の詳細について 論じる。 Ⅲ ボールルームダンスの特性と指導法 Ⅲ-1 日本におけるボールルームダンスの変遷 ここでは,日本におけるボールルームダンスの 歴史的変遷を概観し,日本でどのようにして人々 に受け入れられてきたかといった時代の背景を把 握し,表 1 の年表にまとめた。 日本にボールルームダンスが紹介された1858年 から今日までの歴史的変遷を概観すると,遣外使 節や公使達の外交ダンス期とダンスホールやモ ボ・モガ文化に見られるダンスブーム,戦時期の 西洋文化否定による衰退期と戦後の第二次ブー ム,メディアを通したボールルームダンスのブー ム等の各期に区分することができる。特に,1946 年の教師協会設立(日本社交舞踏教師協会)によ り戦後教師団体の再組織化が成された以降は,そ こをターニングポイントとして一貫して指導者層 が競技者を主軸としてきたボールルームダンス界 の変遷を見て取ることができる。 このことから,指導法の研究においても競技ダ ンスが中心となっており,型の習得と鍛錬という スタイルが主流になっていった背景が示唆された。 Ⅲ-2 日本におけるボールルームダンスの指導法 日本でボールルームダンスを習い始めると,先 ず 教 室 で 教 え ら れ る 内 容 と 言 え ば, 前 述 の MamboやBlues等の比較的簡単なステップで構成 されるダンスを教えられることが多い。その指導 法は,先ずベーシックフィガー(例えば,Mambo ならニューヨーク,クカラチャ,フルターン,ハ ーフターン等)を教師が一つずつ踊って見せなが ら教え,一通りの足型を繰り返し覚えてから音楽 に合わせて踊るというスタイルである。その指導 の順は,WaltzになってもTangoになっても基本 的には変わらず,先ず一連の足型を覚えてから相 手と組み,その後振付けを覚えてから音楽で踊る という手順である。 JBDF学校学習支援プロジェクト委員会作成の DVD教材では,一連の型を覚える前に,音楽の リズムに合わせてカウントを言ったり,足踏みや ウォーキングをしたりという導入部が設けられて いるものの,そのリズムの取り方と指導の流れも 含め,後に中心として教えられるフィギュアのカ ウントに近いものが取り上げられ,型の中のリズ ム6)といった感が残り,全身を使った自由なリズ ム7)の表現とまでは言えない内容である。指導の 流れは「ステップ→フィギュア→アマルガメーシ ョン」という指導順により,指導された一連の足 型を各々が覚えてから,漸く相手と合わせて踊る

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というダンス教室の指導スタイルと基本的に変わ らないスタイルであるとも言える(表 2 )。 この指導法から見えてくる問題点は,特に初心 者の学習において,その音楽表現(音楽に合わせ た動き)がステップカウントに縛られた固い動き に成り易いということと,ステップ学習に追われ ることで,覚えることに対する焦りが生じてしま ったり,ダンスの特性や表情までを感じ取り楽し みながら学習を進める余裕がなくなってしまった りすることである。また,一通りのフィガーを男 女それぞれが覚えない限りは,音楽に合わせてパ ートナーと組み踊ることも出来ない為,指導に多 くの時間を要してしまう。教師が一人の場合,男 女それぞれのステップ指導をしていると,片方を 教えている間にもう一方に空白の時間が生まれ, 流動的な授業構成にもならない。 その点では,現在のダンス教育におけるリズム 系ダンスの 2 人組で行う即興ダンスの様に,すぐ に音楽に合わせて学習者がその場で持ち合せてい る身体知を生かし,音楽に合わせて踊り交流学習 表1 日本におけるボールルームダンスの歴史的変遷と略年表 外交ダンス期 1858(安政 5 ) 日米修好通商条約により横浜が開港。神奈川や横浜に各国の領事館がおかれ,公使は夜会を開き外交をする。 1867(慶応 3 ) パリ万博の幕府使節の渋沢栄一が舞踏会の記録を残す。異文化として西洋のダンスに対して肯定的な印象。 1883(明治16) 鹿鳴館での舞踏会が始まる:井上馨外務卿をホストに,皇族や政府要人,外国公使,お雇い外国人等を招待。 第一次   ブーム期 1920(大正 9 ) 日本初の営業ダンスホール「鶴見花月園舞踏場」オープン。 1920代~(大正 ~昭和)戦前 「モボ・モガ文化」の中,若者の間で大流行する。モボ・モガ文化とはモダンボーイ・ モダンガール文化の略で,モダンとは「現代的,近代的」(広辞苑)とある様に,当 時最先端とされた西洋文化の影響を受けた人々の文化のことである。 1930(昭和 5 ) 日本舞踏教師協会設立:技術書解読を中心としたボールルーム指導研究も進められる。 戦時   衰退期 1932(昭和 7 ) 五・一五事件:政党内閣は終わりを告げ,軍人内閣の挙国一致体制の下「西洋のダンスは時局に逆らうもの」とされる。 1938(昭和13) 国家総動員法交付。翌年「宝塚会館」「花月園」がその歴史に幕を閉じる。 戦後   復活期 1945(昭和20) 終戦後GI専用の娯楽施設としてダンスホールが復活。 1946(昭和21) 日本人入場者を対象としたダンスホールも開業:「マリーゴールド」(銀座)「グランド東京」(新宿)等。 第二次ブーム~競技ダンス中心期 1946(昭和21) 日本社交舞踏教師協会(NATD)設立:教師団体の再組織化が成される。 1947(昭和22) 学生ダンスパーティー開催。学生達も各学校でクラブを組織。教授所に通う学生も増えた。 1948(昭和23) 新橋「フロリダ」で早慶戦開催。「風俗営業取締法」が成立し,ダンスホール,ダンス教習所は再び規制対象になる。 1950(昭和25) NATD社団法人格取得→日本舞踏競技連盟(日競連)」が結成される。 1951(昭和26) 全日本ダンス選手権開催。 1962(昭和37) 世界選手権日本代表初派遣(桝岡組,丸山組,小嶋組,篠田組) 1969(昭和44) 世界選手権が日本での初開催。 1970(昭和45) 「風俗営業取り外しに関する委員会」が結成。 1985(昭和60) 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」施行。ダンス教授所の未成年立ち入り許可(午後10時まで) 1993(平成 5 ) 日本インターナショナルダンス選手権にジュブナイル(12歳未満)部門新設。翌年ジュニア部門(16歳未満)も新設。 1998(平成10) ジュニア世界選手権に日本代表選手初派遣。(田島(筆者)・齋藤組,石原・杉崎組,瀬古組) 1998(平成10) 第 1 回車いすダンス選手権大会が日本(幕張メッセ)で開催。長野パラリンピック開会式でも車椅子ダンスが披露される。 1998(平成10) 風営法改正案決議案閣議決定・交付・施行:ボールルームダンススクールの風営法適応除外。 1996(平成 8 )~ 2005(平成17) 映画『Shall we ダンス?』日本アカデミー賞独占の快挙。TV番組『ウリナリ芸能人社交ダ ンス部』,『シャル・ウィ・ダンス・オールスター社交ダンス選手権』と高視聴率で全国的 に話題となる。家庭用ダンスエクササイズプログラムCORE Rhythms『コアリズム』(2005)。 2006(平成18) リード&フォロー特性を活かしたブラインド(視覚障害者)ダンスも全日本選手権が開催。

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の機会を持つというスタイルが,ボールルームダ ンス指導の授業づくりにとっても参考になると思 われる。本来、社交型のダンスは,発祥の国々で の前述した様なダンスシーンからもわかる様に, 学習経験の有無に関わらず,初めから音楽に合わ せて自由に即興的に関わりを持ち踊ることができ るダンスであるという特性があることも忘れては ならない大切なポイントである。 また,ダンス教室であれば,当然ながら教師が 専門のダンサーなので,アマルガメーションを習 う中でも,教師が踊る姿を見るだけでダンスの雰 囲気やフィーリングを含めた特性を楽しむ機会が あるが,学校教育においては教師が必ずしも専門 のダンサーではない為,ダンス教室型の指導では, 学習の質も保証されず,問題がより深刻化するこ とも考えられる。 学生への聞き取り調査によると,ステップや振 付け習得中心型のダンス教育(ボールルームダン ス以外のダンスも含む)を経験し,結果的にダン ス全般に対して苦手意識や嫌なイメージを持って しまったというその原因の多くに,覚えることば かりに追われてしまうことでそのダンスの特性や 音楽特性,文化性までを含めた本来あるべき学習 がなされていないという問題点が見えてきた。調 査を行った学生の中での割合をみても,大学入学 以前のダンス授業(体育祭・運動会発表練習等含 む)からその様な苦手意識や嫌なイメージを持っ てしまっていた学生が舞踊専攻の学生以外では19 名中14名であった。 体育というフィジカルな運動量に視点を置いて も,足型に気を取られてしまうことで全身への意 識が滞り,上体の動きを硬くしてしまう。その結 果動きが部分的となりダイナミックな全身運動を 阻害してしまう要因ともなる。 したがって,スムーズな授業の展開を重視した 授業,専門のダンス教師の指導でなくとも学習者 がそれぞれのダンス特性を身体全体で感じられる 学習,全身運動と総運動量の確保,学習経験の有 無に関わらず,初めから音楽に合わせて即興的に 踊り他者と関わることができる授業構成が必要で あると思われる。 次章ではここで明らになった従来の指導法の問 題点を解決すべく,各ダンス種目の文化性や特性 も見出しながら,指導試案を種目毎に作成してい く。 表 2  現在主流のボールルームダンス指導の展開 展開 1 展開 2 展開 3 ステップ, カウント フィギュア アマルガメーション Ⅳ ボールルームダンス各種目解説と指導試案 ここでは,実践で取り上げた 8 つのボールルー ムダンス種目の特徴,音楽性,歴史,文化等を含 めた舞踊的背景を明らかにした上で,指導試案の 詳細を種目毎に論じる。表 3 は,本文中の指導試 案の授業展開を種目別に要約してまとめたもので ある。授業展開は一つの展開につき,教師の説明 部も含めて10 ~ 20分程度で行える様に作成した。 指導内容は,初心の学習者にもイメージしやす い表現と重ね合わせ,Waltzの三拍子リズムから はスウィング動や波のRise& Fall,Tangoのシャ ープなスタッカートアクション,Foxtrotのバッ クビートスウィング,ラテン系のヒップアクショ ン,バウンスアクション,ボディーコントラクシ ョンといった各種目の特徴のある音楽表現を,全 身で即興的に楽しみながら学習が進められる様な 構成を試みた。 また,Paso DobleとJiveの学習以外は,基本的 に全て円型学習から始めて学習空間の共有意識を 高め,それぞれの音楽特徴を踊り表す学習と,即 興的な交流学習から入っている。その中でもラテ ン系のRumba,ChaChaCha,Sambaといったダ ンスの学習では,特にラテンパーカッションのリ ズム表現を取り上げ,Waltz,Tango,Foxtrotと いったボールルームダンス系の学習では,スウィ ングの表現やメロディアス&スタッカートの表現 といった音楽の小節や一連のリズムのまとまりの 表現から学習を始める様にした。 特に,これらの指導試案は,ボールルームダン スの本来の姿に存在する即興のリード&フォロー の学習を,教師リード,学習者リード,2人組の 即興等の学習等の中で可能にし,授業中の教師の 指導と学習者の関わりも全てが一種のリード&フ ォローと捉えられる様に,スムーズな授業展開に も重点をおいている。

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Ⅳ-1 Waltz:ワルツ Ⅳ-1-1 Waltzの舞踊的背景と特徴 ボールルームダンスにおいてWaltzと言うと Slow Waltzと呼ばれるWaltzを指す。その名の通 りゆったりした曲調にのせて身体を振り子の様に スウィングさせ,浮遊感や波の様な上下動を伴い, 回りながら踊り進めていくダンスである。 そのルーツは大きく分けて二つある。「フラン ス起源説」(フランスのプロヴァンス地方で踊ら れていた「ヴォルド」というダンス)と「ドイツ 起源説」(南ドイツからオーストリアにまたがる 地方の「レントラー」という民族舞踊,あるいは フランス人が「アルマンド」と名付けたドイツ民 衆の踊り)である。確かなのは,12世紀頃から民 衆の間で踊られていたダンスが,徐々に王侯貴族 達をも魅了していったということである。ルネサ ンスの頃,ヨーロッパ各地に渡り,踊りが風紀を 乱すという理由で弾圧された時期もあったが,や がてヨーロッパ中に流行し,日本でも馴染みの深 いシューベルトをはじめ,シュトラウス親子など 多くの作曲家たちが競って名曲を残している。19 世紀の終わりにアメリカに渡り,Boston Waltzと いうメロディーにあわせてゆっくりと踊るスタイ ルが生まれた。更に1905年フランスでFascination (邦題:魅惑のワルツ)がAudrey Hepburn主演「昼 下がりの情事」の主題歌として大ヒットしSlow Waltzが定着した。 1 分間に30小節程度の演奏を(Slow)Waltz, シュトラウス父子らが大成しウィーンの舞踏会等 でも踊られる速いテンポ( 1 分間に60小節程度の 演奏)のものをViennese Waltzとして踊られる。 音楽性に合ったダンス自体の運動特徴として は,三拍子の中での全身を使ったスウィングアク ションがその特徴として挙げられる。組むホール ドに対し,身体の両サイド(脇の下~体側~脚部 にかけて)を振り子時計の振り子の様に「ボーン」 と左右に振りながら踊り進められていく。踊りの 中での上下動のことをRise&Fallと言い,英語表 現としては元々「波の動きや波の様な上下動」を 表すときにも使われる言葉である。 Waltzのリズムとアクセントを五線譜で表すと 以下のようになる。 1 拍目が強拍で, 2 , 3 拍目で振り子がスウィン グする様に,優雅に音が浮遊する。1拍目に着地 し,そのエネルギーで 2 , 3 拍目を浮き上がり, また次の 1 拍目で着地するという様に,浮遊感と 表 3  ボールルームダンス指導試案における指導の展開(詳細はⅣ-1-2より本文中に記載) ダンス種目 展開 1 展開 2 展開 3 展開 4 展開 5 Waltz ワルツ 円型リズム学習:身体パーツスウィング ブランコ/クラゲワルツ 音楽表現学習: パラシュートワルツ 世界一周の旅 2 人組の即興学習: クラゲのワルツ パラシュートの旅 等 グループ即興学習→ 見せ合い学習 (クラスの約半数ずつ) 感想タイム→ まとめ Tango タンゴ 「タンゴタイガー」円型リズム学習: 「シャッ」「ガオッ」 といった鋭い表現 音楽表現学習: メロディアス スタッカート 2 人組の即興学習: タンゴタイガーで対決 対極の表現: 「デブ猫のタンゴ」等 グループ創作学習→ 見せ合い学習 ( 1 分~ 1 分半ずつ) 感想タイム→ まとめ Foxtrot フォックスト ロット 円型リズム学習: パーツスウィング スウィング・ウォーク フリーウォーク学習: エレガント/カジュアル 曲別のスピード変化 二重円型学習: 二重円ブルース→ LOD8)でペアブルース 見せ合い学習: デモンストレーション ( 2 人組,クラス半数ずつ) 感想タイム→ まとめ Rumba ルンバ 円型リズム学習:パーカッション表現 (円型触覚トレーニング) ペアワーク: クカラチャ&ウォーク (体重移動の中で行う) ペアワーク: コネクションの有無→ 二者間の動きの変化 見せ合い学習: デモンストレーション ( 2 人組,クラス半数ずつ) 感想タイム→ まとめ ChaChaCha チャチャチャ 円型リズム学習:パーカッション学習→ 「あちこちチャチャチャ」 円型リズム学習: 即興ウォークリード (教師から学習者へ) リズム学習: シンコペーション, ワパチャ9)学習含む 二重円型学習: ペアマンボ,ペアサルサ →見せ合い学習 感想タイム→ まとめ Samba サンバ 「からだパーカション」円型リズム学習: 「サンバボール」 円型学習: シェイキングアクション コントラクション等含む 2 人組の即興学習: ペアで即興サンバ (パートナーチェンジ有) グループ即興学習→ 見せ合い学習 感想タイム→まとめ Paso Doble パソドブレ 闘牛のイメージ学習:マタドール/ケープ (半数ずつグループ分け) 闘牛イメージ表現学習: 「闘牛場マーチ」: マタドール&ケープ 音楽表現学習: 「フラメンコパート」 音楽表現指導と練習 グループ学習: グループ即興→ 見せ合い学習 感想タイム→ まとめ Jive ジャイブ リズム学習:レパートリーの指導 →レパートリーの練習 グループ掛け合い学習: 2 グループ対面 ダンスバトル風 曲別グループ学習: ジャズ,ロック,R&B, Pops(曲別の 4 グループ) 見せ合い学習: グループ学習の発表 ( 1 分~ 1 分半ずつ) 感想タイム→ まとめ

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スウィング感の中で音楽が進行していくダンスで ある。 Ⅳ-1-2 Waltzの指導試案 三拍子は,「日本人のリズム感に馴染みがない ので難しい」というのが小倉(1977)や鷲津(1992) もその著書で説明している様に定説であったが, 日本語の表現でも波を表現する「どんぶらこ」「ざ ぶーん」や振り子の「ビューン」「ヒューン」と 言った語のリズムと動きのイメージは,三拍子の 上下動とスウィングに当てはまるものである。そ してWaltzの音楽を聞けば,学習者も自然に左右 に体を揺らし始める。したがって,このスウィン グ動と波の昇降イメージを身体で思い浮かべて 1 小節ずつ感じると,初心者の学習であっても,よ りWaltzらしさを感じた中で自然と学習が進めら れるであろう。 指導試案では,Waltzの舞踊特性から,Rise&Fall とスウィングが生み出す浮遊感と曲線,スピード の緩急を伴った移動,その動作が生み出すドレス や燕尾服が「ふわっと」空気に包まれる衣装の動 きのイメージ(浮遊感)にも着目して指導する。 表現設定の例としては,水中の漂う生物であった り空中でふわふわと漂うものであったりと質感に 音楽の持つ波を重ねて表現するといったアイディ アが挙げられる。 初心者クラスであっても,基本のステップから 教え始めるのではなく,先ず学習者にはイメージ の中でブランコやパラシュート等に乗ってもら い,Waltzの三拍子の波の中でステップ・タイミ ングや進行方向は自由に設定し,空中散歩を楽し んでもらう。従来の指導法では,フィギュアに沿 ってステップを正しく踏むことが重視され,特に 初心の学習者にとっては,音楽がとめどなく演奏 される様なひと流れの繋がりが失われがちであっ た。よってステップは自由として,Waltz音楽の スウィング感を表すには「ブランコの動き」とい う様に,音楽性と伴う動きのイメージに焦点を当 てた指導を進める。大きなストライドでゆったり 進んでも良し,細かい足使いでリズムを砕く様に 進んでも良し,大きなストライドと細かい足遣い を1小節内で混ぜても良し,ストップ・モーショ ンを織り交ぜて緩急を付ける等も可能である。 [展開 1 ]全員で円型から始め,教師始めダンス 経験者等のクラスリーダーが交互に数種のWaltz のリズム感に合った即興表現を約 1 ~ 2 分参考動 作として見せ,学習者と共有する。次に身体の各 パーツを使ったスウィング動の学習から全身での ブランコのイメージを用いた学習に移行する。ブ ランコ・スウィングは前後動のみならず,左右や 斜め回転等のバリエーションに富ませ,教室中の 空間を大きく移動しながら,教師が提示した参考 動作以外にも多くの表現が生まれる様に随時指導 する。すれちがう他者との掛け合いも楽しめる様 にして,次にパラシュートやクラゲ等の浮遊感を 含むイメージの学習へと移行する。 [展開 2 ]パラシュートワルツ(世界一周の旅) 選曲はAround The World(邦題:80日間世界一 周の旅)が良いだろう。Waltz音楽はClassicから Popsまで広く世界で親しまれ,世界各国の言語 や楽器を使って演奏された曲も多い為,それらを 用いて同リズムの音楽から文化差異を感じ体現・ 学習するのも良い。Classic音楽や映画音楽を使 用した場合などは,パラシュートにタイムマシー ンも搭載して,当時の雰囲気や人々の様子を思い 浮かべながら踊り進めていくことも面白い。旅の 中で,その音楽発祥の地にも降り立ち,例えば「さ ぁウィーンに到着!舞踏会をイメージして音楽に 身を委せてみましょう。」といった様に,世界中 を踊りと音楽を通して旅してまわる。その様なと きもステップは自由とし,学習者のリクエストで 必要とあらば,教師や経験者がすぐにまねのでき るワルツステップを数種提示する程度に留め,あ くまでも全体を通して音楽の流れとスムーズな授 業展開を大切にしたい。各自がパラシュートに乗 ったイメージで,既習のスウィング動と浮遊感を ミックスして踊り学習を進める。 [展開 3 ] 2 人組の即興に発展させ,パートナー チェンジをしながら学習を進める。ペアワークの 中では全種目ともに,コミュニケーション所作と ダンスマナーの学習も欠かさずに行う。それぞれ 曲の雰囲気に合わせて,挨拶のダンス表現も砕け た感じからエレガントまで幅広く行うことも指導 上のポイントとして挙げられる。挨拶はパートナ ーチェンジ毎に欠かさず行う様に指導する。表現 設定については,教師側から提供するのみならず, 学習者にWaltzの「ふわっとした浮遊感覚」や「ビ

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ューンと振れるスウィング感覚」を伴う動きのイ メージ・アイディアを募り,題材として授業を進 めていくことも自主的で有効な学習手段となる。 [展開 4 ]ペア学習の最後のパートナーと一緒に 近くのペアと四人組になり,グループ即興の学習 に移る。進行補助として学習の広がりを持たせ る為,教師はリズムにのることだけではなく,リ ズムを崩すことも対極の表現の学習に内包し,多 様な動きを楽しみながら学んでいける様に指導す る。例としてパラシュートの表現では「風や天候 の変化(弱~強,突風,乱気流,晴天,雷雨等)」, 海の浮遊生物(クラゲやタコ等)の表現に関して は「波の大きさやスピードの変化」「水位の変化 (水が干上がっても良し)」「温度変化に伴う内的 変化(凍る~溶ける~茹で蛸など)といった変化 や,脚の多さを両手両足を素早く駆使して表現し てみたり,参加者同士の交流の中でクラゲが「ビ リビリッ」と刺したりするといった内容も考えら れる。発表による見せ合い学習は,約半数ずつで 二回に分けて行い[展開 5 ]の感想タイムとまと めに入る。 全体を通した要点は,三拍子の波の中で足型に 囚われることなくWaltzの音楽とその表現特性を 楽しみ,よりスムーズに空間内を切り開く様に移 動し,一緒に踊っている他者との掛け合いと表現 の設定イメージ10)も意識しながら即興的に動き を生み出していくことである。学習時の服装につ いては,燕尾服とドレスを各自が準備するという ことはなかなか難しいので,運動着の上に長丈の カーディガンやロングスカートなどの風を孕みや すい素材の上着を纏い,衣装と風の浮遊感も含め て体感の中で学びが進められるとより良いだろ う。 Ⅳ-2 Tango:タンゴ Ⅳ-2-1 Tangoの舞踊的背景と特徴 Tangoは音楽的にもArgentine Tango(アルゼ ンチンタンゴ)のイメージがある様に,ラテン文 化発祥のダンスであるが,ボールルームダンスの 中ではContinental Tango(コンチネンタルタン ゴ)として成立し踊られている。言わばアルゼン チンからヨーロッパに輸入され,リフォームされ たダンススタイルとも言える。19世紀にスペイン からアルゼンチンに伝えられたものが,バンドネ オンの演奏が用いられてからダンス音楽として一 般に浸透した経緯がある。同じく19世紀初頭に Argentine Tangoはパリで大流行し,ヨーロッパ 各地で第一次タンゴブームが起こった。パリに Tangoが渡った数年後にはイギリスにも渡り,皇 室大舞踏会でも披露されている。イギリスの Castle夫妻がボールルームダンスとして取り入れ ると,わずか十年弱でヨーロッパ中で大流行した。 オリジナルであるArgentine Tangoの歴史は, 1880年ごろラプラタ川河口の大都市周辺で誕生し たと言われている。スペインやイタリアからの貧 しい移民や船乗りが,キューバから持ち帰ったリ ズムを元にミロンガという音楽が生まれ,これが 発展してTangoになった。初期には発祥の背景か ら偏見・差別を受け「下品なダンス」と言われて いたが,パリでのタンゴ熱に煽られ,アルゼンチ ンの上流階級も容認するダンスとなる。今やアル ゼンチンといえばTangoという世界的な知名度を 得ている。 Continental Tangoのスタイルと特徴は,その ラテンダンス・オリジンの特異性からも他のボー ルルームダンスとはホールドの組み方や表現方法 等が異なる。Tangoのホールドは,よりコンパク トに組み,他のボールルームダンス種目では女性 の左手が相手の腕の上にあるのに対し,Tangoは 男性の腕から脇の下に入り込む様にして組む。コ ンパクトにホールドを組むことにより,シャープ な表現を可能にし,Tango音楽に特徴的なスタッ カートのリズムに合わせた動きも可能となる。特 にこのスタッカート表現に注目すると,学習にお いてもTangoらしさが見られ,音楽表現の特性に 触れられるだろう。Continental Tangoの演奏ス ピードは, 1 分間に30小節前後である。シリアス 写真 1  Waltz: 2 人組の即興:スウィングから浮遊へ

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で鋭いTangoのダンス・イメージだが,そのウォ ーキングスタイルは,フットワークから「虎や猫 が獲物を歩み寄り,狙いを定めてアタックするよ うに」と表現し指導することができる。 Tangoの基本ダンスリズムを五線譜に表すと, となり,Slowで獲物を狙う様に近づき,Quickで アタックするイメージを持つと,音のアクセント やスタッカートがより強調され,Tangoの特徴で あるシャープさをより踊り表すことができる。 Ⅳ-2-2 Tangoの指導試案 [展開 1 ]本指導試案では,Tangoの上記の様な イメージから,虎の様な鋭くしなやかな動きを用 い,音楽に乗せて自由に空間を動き回る「タイ ガーウォーク」と題した学習からスタートする。 Tango音楽のスタッカートを感じて表現できる様 に意識し,手足をフリーに使い,例えば虎が「シ ャッ」「ガオッ」と獲物に向かう様なスピード感 と緊迫感を音楽性に重ねられる様に指導をする。 [展開 2 ]Tangoは,前述の様な鋭く刻まれるス タッカートに加えて,メロディアスで流れる様な 演奏が融合した緩急の大きな音楽である。ここで はその「鋭く刻む」「流れる様にとめどなく」や 「スピーディー」「スローモーション」等の対極の 表現も織り交ぜながら指導を進めていくことによ り,音楽表現学習の幅を広げ,変化に富んだダン ス学習とする。また,徐々に学習者同士が,すれ ちがい際の掛け合い意識も持てる様,指導を進め る。 [展開 3 ] 2 人組の即興学習では,虎のイメージ を引き継いで対決の設定にする。SlowとQuickの タイミングを自由に織り交ぜ,相手の隙を目掛け アタック/リアクトして即興的に踊り交流し,約 30秒毎にパートナーチェンジを数回行う。対極の 表現指導としては,獲物に狙いを定める虎が物音 を立てずに歩み寄る様な「無音ウォーク」や,シ リアスで迫力のある表現から一転した「デブ猫の タンゴ」等と設定イメージを切り替え,どんどん シチュエーションに変化を持たせることも考えら れる。 [展開 4 ]グループに分かれて,それぞれ 1 分~ 1 分半程度の曲で創作学習を行う。曲は同じ曲で あっても,それぞれグループで異なる曲であって も良い。創作された作品は,お互いに見せ合い学 習に繋げ,人やグループによって多様な表現も学 ぶ機会を提供し,[展開 5 ]の感想とまとめの中 で共有する。教師も感じた点を挙げてフィードバ ックする。 Ⅳ-3 Foxtrot:フォックストロット Ⅳ-3-1 Foxtrotの舞踊的背景と特徴 Foxtrotとは,その文字上の意味からも読み取 れる様に「狐(fox)の歩み(trot)」といった語 意で,アメリカで発生しイギリスで完成されたダ ンスである。そのダンス動作は,前後に自然に歩 く運動が基本となり,「10ダンス」の中ではSlow FoxtrotとQuick StepがこのFoxtrotの類に入る。 4 拍子で主にJazz音楽で踊られるダンスで, 1 分 間に28 ~ 30小節くらいのものをSlow Foxtrot, 1 分間に52小節前後のものをQuick Stepで踊る。 音楽史的には,Jazz音楽の前身であるRagtime (ラグタイム)音楽が生まれ,Charleston(チャ ールストン)やSwing(スウィング)などのダン スが続々と誕生し,20世紀の初頭アメリカからや ってきたジャズ音楽は,ヨーロッパ中に衝撃を与 えていた。1912年“カフェ・ド・パリ”でのダン スで絶賛を浴びたイギリス人ダンサーのCastle夫 妻(Fred Astaire等にも多大な影響を与えたダン サー)が,流行していたJazz系音楽のダンスに, ブリティッシュスタイルのエレガンスをプラスし Castle Walkという歩行中心のスタイルを考案し た。この原型スタイルがSlow Foxtrotに繋がる。 英国に留学しダンスを習うと,そのJazz音楽に 乗せた粋な雰囲気に加えて「リムジンが走りゆく 写真 2  タンゴタイガーの即興(グループ学習)

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様にスムーズに踊る」「飛行機がフライト中に旋 回する様に滑らかな方向転換とRise&Fallを踊 る」といったエレガントな指導表現が用いられ教 えられる。このことが示す様に,「動きの流暢さ」 を大きな特徴とするダンスである。 5 種目のボールルームダンス(Waltz・Tango・ Slow Foxtrot・Quick Step・Viennese Waltz)の 中では,Tango以外,全てがスウィングダンスで ある。「Jazz音楽を聴いて体を動かせ」と言われ たらSwing Jazzという音楽用語もある様に,バ ックビート・アクセントに乗せてリズミカルなス ウィング動が自然と生じる。 といったSwing Jazz の基本リズムに対して,基本のダンスタイミング が Slow(1,2)~Quick (3)~Quick(4)で,一小節掛けてスウィングす るイメージを持つと捉えやすい。先程「リムジン の様に優雅にとめどなく」といった表現があった が,ペアで組んだ二人の身体とその足元から頭の 天辺までの全体が,どのような軌跡を描いて進ん でいくかといった動きのイメージも持ちつつ学習 に入ると良いだろう。 Ⅳ-3-2 Foxtrotの指導試案 [ 展 開 1 ]ここでは 先 ずFoxtrotの 語 源に 戻り, 「(Trot)歩く」ことにフォーカスを当てる。最初 に一曲の音楽に乗せた多様なリズム表現(バック ビートの取り方や身体のスウィングも含め)でウ ォーキングのバリエーションを教師が実際にいく つか示す。その後すぐに円型でのリズム学習に入 り,音楽に合わせて身体の各パーツを使った色々 なスウィングを試し学習する。続いて教師リード のウォーキングを行い,前後ウォークのみならず 円周に沿った斜めのウォークや,円型を崩した 様々な方向転換も組み合わせ,一曲の中でも多様 なリズムと進行方向のバリエーションを共有する。 [展開 2 ] 2 曲目からは「フリーウォーク学習」 と題して,各自が[展開 1 ]の内容を参考にしな がらも自由に多様なウォーキングリズムと身体の スウィング感を模索体験できる様に指導する。慣 れてきたら,曲の後半からは徐々に動きのフォー マルやエレガンスといった英国スタイルの身体文 化イメージも動きのイメージに加えて意識させ, 文化的なイメージも楽しみながら学習する。更 に,リムジンや飛行機といった乗り物等を動きの イメージとして設定し,重ね合わせ「大空を旋回 して空間を切り開いていく様に進む」等,その乗 り物の動きのイメージに沿って自由に音楽を表現 できる様に導いていく。この様なゆったりとした 壮大な動きのイメージに対する対極の表現や崩し については, 3 曲目にFoxtrot音楽の中でもテン ポの早い音楽で踊られるQuick Stepを用いて学習 する。出来れば同じ曲目のSlow Foxtrotバージョ ンとQuick Stepバージョンを入手編集し,一曲間 で曲をどんどん切り換えながら進められると,よ りそのリズム変化をダイレクトに感じて学習が進 められる。軽快なリズムのQuick Stepでは,その 名の通り素早い足捌きで,例えば「脚分身クイッ クステップ」と題し,即興表現タイムを設ける。 [展開 3 ]Foxtrotの曲でパーティーダンスとして 踊られるBluesは,Rise&Fallもなく簡単なステッ プの中で初心者でもすぐに習得可能なダンスであ る。ここでも先ずはステップを覚えてから音楽に 合わせるという指導法は用いずに,最初から音楽 をかけて,音楽の中で自然にステップを習得し踊 り進めていける様,円型の教師リードで学習を進 める。男性女性が分かれてそれぞれのステップを 覚えてから組んで踊るというスタイルではなく, 二重円型で内円に女性が入り円の外に向かい,外 円に男性が並び内側に向き女性に向かい合う様に して立ち,音楽に乗せて全員で一緒に踊り始める スタイルとする。その後ペアワークへ移り,LOD に並びパートナーチェンジを入れて練習する。 写真 3  二重円型でのBlues学習の様子

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[展開 4 ]最後に組んだパートナーと二人組でデ モンストレーションをする。クラスの半数ずつで 見せ合い学習を終えたら[展開 5 ]のフィードバ ックタイムへと繋げる,教師は一連の流れが個々 のステップ指導でぶつ切りにならぬ様にスムーズ な進行に努める。 Ⅳ-4 Rumba:ルンバ Ⅳ-4-1 Rumbaの舞踊的背景と特徴 Rumbaとは元々 DanceやPartyという意味を持 ち,キューバで流行していた踊り全般に命名され た言葉で,カリブ海地方の踊りの「ソン」等の影 響を色濃く受けたラテンの愛を表現する情熱的な ダンスである。1930年代前半にはニューヨークの ナイトクラブで踊られ始め,ヨーロッパに伝わっ たのは1945年頃である。当時ヨーロッパでは,官 能的なダンスを踊る愛情表現を好む典型とされた フランス人ダンサー達に特に受け入れられて大流 行した。 ラテンダンスの曲と言うと,総体的にアップテ ンポで速いものをイメージするが,このRumba は 1 分間に21小説前後の演奏で,比較的ゆったり した音楽である。 といったパーカッションの基本リズムに乗せて, ダンスの基本リズムは, で,「4 」の音でステップはいったん終り,「1」の 音はステップしないが重心を移動してヒップアク ションを起こしたり,体をストレッチしたりと上 体は踊り(動き)続ける。タイミングに遊びや引 っ張りをつけてから「パッ」と止まる等,フリー ズのアクションや緩急を含む対極の表現を見せる こともある。ヒップアクションは,ラテンダンス 全般に特徴的なアクションで,足元から脚部,上 体を通り,フロアと身体間のプレッシャーが重心 に近い骨盤可動域周辺に表れ,重心の移動と共 に生まれるアクションである。ヒップと言っても 腰だけを振っている訳ではなく,フロアと身体間 の圧力が生み出す運動であることを注意して指導 する。またRumbaのキューバン・アクションの 基礎動作の一つに重心の移動とともに骨盤軌道 で左右に西洋数字の8を描くフィギュア・エイト という動きがある。この運動は,ChaChaChaや Sambaの基本運動にも通じる運動で,Rumbaは ラテンダンスの中でも非常にゆっくりした曲調な 為,ラテンダンス全般の基礎テクニックを磨く要 素が無数にちりばめられたダンスであるとも言え る。 Ⅳ-4-2 Rumbaの指導試案 [展開 1 ]Rumbaも基本的にスムーズな授業展開 を心掛けるが,ラテンダンスの基礎のダンスであ るということと,その細かいビートを刻みながら もゆったりとした音楽性であることから,最初に 円型でパーカッションのビートに合わせ,足裏, 掌,身体各パーツの触覚トレーニングに焦点を当 てた指導を行う。教師は先ず,自由な体重移動に 伴う足裏と床のコネクション感覚や,壁や隣の人 の手を使った触覚意識のトレーニングと即興的な コミュニケーション活動を提示し,徐々に 2 人組 の活動へと移行していく。 [展開 2 ] 2 人組の活動では,左右の体重移動と 足裏の触覚トレーニングの延長動作として,上半 身のコンプレッション(圧縮運動)と両手を繋い だプッシュ&プルのコネクション交流により,左 右のクカラチャ(サイド・戻る・閉じるという基 本フィガー)の指導も流れの中で済ませる。ボデ ィとフロア間のコンプレッションから体重が足裏 の前後を通過していく感覚を体得させ,そのまま Rumbaのウォーク指導へと繋げる。ウォークは前 後,左右,斜め,円型といった多様な方向とタイ ミングにバリエーションを持たせる様に工夫する。 [展開 3 ]パートナーワークを深める為,曲の中 で即興的にウォークやクカラチャを自由に組み合 わせ,接触の有無による身体間のコネクションの 感じ方と動きの変化についても学習する。教師は ラテンダンスの基礎的な性差表現にも言及し,学 習の中では男女の役割を交代して表現を学ぶとい うアイディアも,他者の身体表現を想像し交流す るという機会を提供することから,斬新ながら思 い遣りの気持ちも育み有意義な学習法となる。 [展開 4 ]何度かパートナーチェンジをしたらク ラスの半数ずつに分かれ,最後のパートナーと即 興のデモンストレーションタイムを設けて見せ合

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いの学習を行う。最後に[展開 5 ]の感想のフィ ードバックの共有とまとめをする。ラテンダンス の音楽は,全ての種目で,クラッシックなものか ら現代の新曲まで幅広く,世代別流行による選曲 アレンジも学習に幅を持たせるファクターとなり 得る。 Ⅳ-5 ChaChaCha:チャチャチャ Ⅳ-5-1 ChaChaChaの舞踊的背景と特徴 ChaChaChaは,他のラテンダンスに比べて歴 史的に新しいダンスである。「ウーマンボ」とい う掛け声でも一般に知られるMamboを発展・構 成されたダンスで,1954年キューバで踊られ始め た。その後,他国でもすぐに普及し,先ずアメリ カのダンスホールで踊られる様になり,1957年に はヨーロッパでも大流行した。 四拍子の中で「4 & 1」のカウントで踊られる ステップ(QQS)の音楽表現から派生し,ダン ス名が“ChaChaCha”となったというのが定説 である。 1 分間に31小節前後と,Rumbaに比べ ると大分テンポが早くなる。動きの特徴には Rumbaでも取り上げたヒップアクションもあるが, 「1234 & 1234 & …」とカウントを捉えた素早く 小刻みなレッグアクションと身体ダイレクション の素早い転換動作にも注目して指導する。リズム 展開が早い分,歩幅もよりコンパクトにきびきび とした動作イメージで,上体は素早い体重移動の 為に若干前傾させ,斜め上に引き上げる様に意識 して動きのしなやかさを保つ。ホールドを組んだ 時も,互い身体間のテンションやある程度体重を 預けるプレッシャーは存在するが,アーム全体を 固めている訳では無いということを理解しておく 必要がある。このホールドの状態は,全てのダン ス種目に共通して言えることで,一見「組んでい るし,ホールドと呼ぶくらいだから(語感から) 固めているんだろうな。」と考えがちではあるが, 特に動きの早いラテンダンスで完全に固めてしま うと,互いに身体的負担も増えてしまう為,基礎 知識として十分に指導する必要がある。 Ⅳ-5-2 ChaChaChaの指導試案 [展開 1 ]先ず音楽をかけて,円型で教師主導の 即興ウォークリードを行う。学習者は教師の即 興的なリードをフォローしながら,同時にリズ ム感を含めた音感を養い,時計回り,反時計回 り,円型を崩した素早い動きの転換動作等と共に, ChaChaChaのリズム特性表現である素早い身体 の切り返しを自然に体得していく。円型を崩した 段階からは「あちこちチャチャチャ」と題し,教 室中に散らばる様に 8 小節程度 2 ウォークス~ロ ック(かけるステップ), 2 ウォークス~シャッ セ(開いて閉じて開く), 2 ウォークス~チェッ ク(方向転換の為に戻るステップ)等の簡単なス テップの中で自由に移動し,ChaChaChaのリズ ムに慣れ親しむ。 [展開 2 ]二曲目には,学習者の中からリーダー を数名選び,交代で指名して即興のウォークリー ドをしてもらう。教師リードの中で示したもの以 外にも色々なリズムの組み合わせが出る様,教師 はサポートをしながら指導を進めていく。 [展開 3 ]三曲目では,更にブレイクタイミング を含んだシンコペーションやワパチャのリズムを 指導し,リズム取りの引き出しを増やしていく。 [展開 4 ]四曲目でパートナーを見つけて 2 人組 になり,二重円型の教師リードで簡単なMambo やSalsa(サルサ)のステップを踊ってみる11) 簡単なステップで,例えばベーシックムーブメン トからニューヨーク,ハンドトゥーハンド,フル ターン,ハーフターン程度が良いが,ここでもス テップの正誤に拘らず(リズムを表現して関われ ていればステップは無くても自由で良い),音楽 と運動の流れとスムーズな授業展開を大切に指導 写真 4  足裏の触覚トレーニングの様子(Rumba)

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する。パートナーチェンジは, 4 小節間のフリー ウォークで新しいパートナーを見つける。ペアマ ンボ(サルサ)の最後の曲で組んでいたパートナ ーと再びペアになり,クラスの半数で分かれてデ モンストレーションの見せ合い学習をする。マン ボやサルサのみでなく,学習した内容を自由に再 構成して踊り,[展開 5 ]の感想のフィードバック, 共有とまとめをする。軽快なリズムのラテンダン スでは,踊りはじめの挨拶・握手やハイタッチ等 を元気良く,踊り終わりにはお礼のお辞儀や「あ りがとう!バイバーイ!」等の挨拶も元気良く行 う様に勧める。 Ⅳ-6 Samba:サンバ Ⅳ-6-1 Sambaの舞踊的背景と特徴 Sambaは,リオのカーニバルでも世界的に有名 なブラジル発祥のダンスである。ブラジルはかつ てポルトガル領で,歴史は奴隷制の時代まで遡り, アフリカ民族と南米インディオ族との多様な交流 がSambaの成立に大きな影響を与えた。1948年に Sambaはヨーロッパに新しいダンスとして紹介 されたが,そのスタイルは当時ブラジル上流階級 の間で踊られ「ブラジル風タンゴ」とも呼ばれて いた「マシーシ」をベースに作られたものである。 よってボールルームダンスのSambaはカーニバ ルのSambaとは異なるスタイルで踊られる。リズ ム的には現在でも,Sambaのリズムのヒット曲が 毎年の様に生まれており,日本でも歌謡曲やサン バフェスティバル等で非常に馴染みのあるリズム のダンスである。 英国で完成されたSambaのスタイルは,ブラジ ルのSambaに比べると若干テンポを落としたもの で, 2 人組の即興を元にステップが構成されてい った。Sambaのアクションにはヒップアクション も入るが,Sambaリズムの特徴的なアクションと しては,ボディーコントラクションとバウンスアク ション,シェイキングアクションが挙げられる。コ ントラクションは体幹部を中心に(胸/臍),バウ ンスは膝の屈伸を使い,身体がバウンドする感覚 を全身運動で表現して踊る。基本のタイミングは, の「1a2・3a4」である。このタイミングはバウン スアクションからも見られ,膝の屈伸運動の中で 説明するとカウント「1」でグッと曲げて床との 間にプレッシャーをつくり(特に脚部前面の筋肉 を意識),次の「&」カウントから直後の「a(16 部音符タイミング)」にかけてプッレシャー反動 と伸脚運動によりヒールを上げ上体を持ち上げ (脚部後ろ側の筋肉を意識),カウント 2 の音で再 びヒール着地し,膝もゆるめて一つのバウンドが 終了する。よってボディーアクションの特徴は, RumbaやChaChaChaと共通の骨盤フィギュア・ エイトのヒップアクションに加えて,脚部のバウ ンス・アクションと体幹部のコントラクションの 融合によって説明される。音楽の持つシンコペー ションをはじめとした多様なリズム表現を可能と する為,上体は色々な遊びのアクションが入れら れる様にフレキシブルに保つことが重要となる。 ラテンダンスの中でこのSambaとPaso Dobleは, ダンスパーティーや競技会等のフロア上で踊る場 合,フロアの外周を進んでいくダンススタイルで, LODの流れに沿って踊るということも学習の中 で押さえてから指導を進める。 Ⅳ-6-2 Sambaの指導試案 [展開 1 ]音楽をかけて円型レクチャーから入る。 一曲目は,各自の立ち位置で「サンバdeからだ パーカション」「サンバボール」と題し,ラテン 打楽器の打つリズムに乗せて,身体の各パーツを 動かしてみる。全身でボールが音に伴ってボヨヨ ンと弾む感じも体得し,音楽のリズムとバウンド 感を合わせて学習する。 [展開 2 ]円型のまま教師リードで,より細かいビ ート表現のシェイキングアクション(マラカス音

をイメージ)を手,脚,ショルダー,ヒップ,体 幹部といった身体の各部を使って体得する。手は 簡単に出来ても,脚や他の部位となると動きが鈍 くなることが多いが,各部位内にシェイカーが入 り,そこから音を出して演奏に参加するイメージ にすると,初心者でも簡単に体得できるだろう。 [展開 3 ]以上のリズムを自由に組み合わせて, ペアでSambaの即興学習に移る。相手の即興リー ドをものまねでフォローし,どんどんリード&フ ォローの役割を交代しながら動きのバリエーショ

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ンを増やしていく。数回パートナーチェンジをし て踊り,関わりの中で学習を進める。 [展開 4 ]次の曲ではペア即興の最後のパートナ ーと一緒に,ペアワーク~ 4 人組~ 8 人組(円型) へと応用移行し,更にバリエーションと空間的な 広がりの中で,ダイナミックな運動を作り上げて いく。 8 人組の曲が終わった時点で,見せ合いの 時間を持ち,学習者同士が他者の音楽表現とアイ ディアの多様性を楽しみながら共有・学習できる 様にする。[展開 5 ]で感想フィードバックの時 間を取り,それぞれの学習に役立つ様な建設的な ディスカッションとなる様に,教師側もフィード バックのコメントをしてまとめる。ブラジルと言 えばサッカーが有名だが,Sambaのステップとサ ッカーのステップのリズム感には通じる点が多く, シャッセ&ポイントの動作とサッカーのサイドステ ップからのボールパスの動作を重ねて表現する等, スポーツの表現も含めてダンスを教えていくこと も可能である。実際にサッカー部の学生やサッカ ーが好きな学生は,この「Sambaといえばブラジ ル」「ブラジルサッカー選手の素晴らしいリズム感」 を見て経験知として持っているので,Sambaの授 業を通してダンス授業全般に対するモチベーショ ンが上がることが多い。他の学習者にとっても, Sambaは前述の通り流行りの音楽でもあり,現代 のリズムのダンスとして教えられているHip Hopと 同様に,現代っ子にファミリアな音楽リズムでと ても乗りやすいダンスであると言える。 Ⅳ-7 Paso‌Doble:パソドブレ Ⅳ-7-1 Paso‌Dobleの舞踊的背景と特徴 Paso Dobleというダンスが描くドラマは,スペ インの闘牛をモティーフにしたものである。男性 は闘牛士(マタドール)を演じ踊り,女性はその マタドールが闘牛に向かってひるがえすケープ (村田(2011)の「新聞紙になって」に近い表現) やフラメンコダンサー,闘牛等を一曲の中で踊り 表現する。 踊りの原型となったのは,行進曲の「パルドゥ ーブル」というフランスの児童行進曲が「エルソ レオ」として1800年代にマタドール達の入場に用 いられたスタイルからである。 曲の早さは, 1 分間に60小節程度(行進曲なの で 2 拍で 1 小節)で踊られる。音楽的特徴と伴う ダンスの特徴としては,Paso Dobleの曲には「ハ イライト」と呼ばれる音の区切りを設けた盛り上 がり箇所が 3 カ所あり,その箇所をそれぞれ第1 ~第 3 ハイライトと呼び,「ジャン」と音がいっ たんストップすることから日本では第1ハイライ トを「第 1 ジャン」また第 2 ,第 3 をそれぞれ「第 2 ,第 3 ジャン」と呼ぶこともある。ハイライト の振付は,その音楽の節目に合わせたピクチャー ポーズとなることが多い。他のラテンダンスと比 べると重厚感のあるダンスで,闘牛というテーマ からも,命を掛けて闘いの中で自らのフロアにお けるテリトリーをダンス表現によって示すといっ たキャラクターのあるダンスである。この様に闘 牛場の様子やフラメンコといったスペインの文化 と,その表現が散りばめられた中で踊り進めてい くPaso Dobleだが,その中でもマタドールのケー プアクションやフラメンコダンサーのフラメンコ タップ,マタドールと闘牛の対決表現等と,デフ ォルメすることでとても多様で面白い即興表現学 習となり得る要素の多いダンス種目であるとも言 える。 男女が組んだ表現の中にも二人の身体動作の連 動で見せる「ケープを振り回す闘牛士」を連想さ せる表現も多く,代表的なベーシックフィガーの 中にはシャッセケープがある。このシャッセケー プでは,マタドール(男性)のシャッセ動に伴う ケープ(女性)のラウンドしたケープアクション を魅せる表現で踊り進められる。 Ⅳ-7-2 Paso‌Dobleの指導試案 [展開 1 ]学習者を 2 グループに分ける。半数分 の布(バスタオル等)を用意する。布を持ってい る人と持っていない人でペアになる。 [展開 2 ]「闘牛場マーチ」と題し,布を持った人 写真 5  「サンバdeからだパーカッション」

参照

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