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肝硬変患者におけるSFMC測定の意義

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Academic year: 2021

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仙台市立病院医誌 25,125−127,2005 索引用語  肝硬変

 SFMC

慢性DIC

肝硬変患者におけるSFMC測定の意義

藤 橋 島 加 松 矢 リ    ウ 芳 一

 由

木 藤 々 佐 遠 子 哉

智和

森 川 大

ヲ  ウ   一 子 昭   紀 新 安 義

はじめに

 生体内において血液凝固が活性化されるとトロ ンビンが形成される。このトロンビンの作用によ り,フィブリノーゲンからフィブリノペプチドA およびフィブリノペプチドBが遊離してフィブ リンモノマーができる。生成されたフィブリンモ ノマーはフィブリノーゲンやフィブリン/フィブ リノーゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degrada− tion products:以下FDP), Dダイマー等と結合 して可溶性フィブリンモノマー複合体(soluble fibrin monomer complex:以下SFMC)として 血中に存在する1)。SFMCは血液凝固の初期に血 中に現れ凝固活性をいち早く反映するため,播種 性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome:以下DIC)や各種血栓症 の凝固充進状態の指標として有用とされてい る2A−7)。  近年,フィブリノーゲンからフィブリノペプチ

ドAが遊離されて生じるフィブリンモノマー

(desAA−fibrin)を免疫源とした特異的なモノク ローナル抗体F405が開発された8)。私たちはこ の抗体を用いた定量的なSFMC測定試薬の基礎 的検討を行った。  一方,肝機能が低下した肝硬変では凝固因子の 産生低下のほかに,血液凝固充進による凝固因子 の消費がすすみ慢性DICが起こっていると考え られている9)。今回この肝硬変におけるSFMC測 定の意義について検討したので報告する。 対 象  健常と思われた当院職員102名と,肝硬変と診 断された当院の入院および外来患者34名を対象 とした。検体は3.13%クエン酸ナトリウム加血漿 を使用した。精度管理血漿も用いた。

測定方法

 SFMCはSFMC測定試薬オートLIA FMを

使用し,全自動血液凝固線溶測定装置STA−Rを 用いて測定した。血漿FDPはナノピアP−FDPを 用いてSTA−Rにて測定した。 結 果

 1.SFMC測定の基礎的検討

 1) 同時再現性  低濃度,中濃度,高濃度のプール血漿を用いて 10回連続測定した。CVはそれぞれ7.2%,3.3%, 2.7%と良好であった(表1)。  2) 日差再現性  一70℃に保存した低濃度,中濃度のプール血漿 と低濃度,高濃度の精度管理血漿を,測定時に 37℃に融解して連日10日間測定した。CVはそれ ぞれ6.3%,3.0%,3.1%,1.4%と良好であった(表 2)。 表1.同時再現性 仙台市立病院中央臨床検査科 *同 消化器科 低濃度 中濃度 高濃度 η mean(μ9/mL) SD CV(%) 10 5.22 0.38 7.2 10 37.48 1.24 3.3  10 134.35 3.62 2.7 Presented by Medical*Online

(2)

126 表2.日差再現性 低濃度 中濃度 QC(L) QC(H) π mean(μ9/mL)

SD

CV(%) 10 4.40 0.28 6.3 10 3632 1.10 3.0 10 14ユ7 0.44 3.1 10 83.13 1.18 1.4 QC:精度管理血漿(L:低濃度・H:高濃度)  3)希釈直線性  高濃度のプール血漿を,正常血漿で段階希釈し 2重測定した。およそ200μg/mLまで直線性が認 められた(図1)。  4) 採血後の室温と冷蔵における経時変化  健常と思われた当院職員2名の血液を,室温お よび5℃にそれぞれ2,4,6,8時間保存した後,遠 心分離した血漿を用いて測定した。室温で4時間 を過ぎると,やや上昇する傾向がみられた(図2)。 (μ9’mL) 250 200 呈 i5・ V5100 50 0 0 1 9 8

7旬

 / β01‘  ×

5︵

  率

4倍

  釈

3希

2 1 0 図1.希釈直線性  (μ9∫mL)

 7

 6

      ..{o・・..

 5

04       +S1室温

i3     ...S15℃

ω

2      −e−S2室温

 1      ・e・S25°C

 O

    O   2   4   6   8          経過時間(h)   図2.採血後の室温と冷蔵における経時変化

 5)健常人におけるSFMC値

 健常と思われた当院職員102名を対象とした結 果,5.4±2.2(平均±2SD)Pt、g/mLであった。  2.肝硬変患者における検討

 1)血漿FDPとの相関

 線溶の指標として広く用いられている血漿

FDPとSFMCの比較検討を行った。相関係数

r=0.247と相関は認められなかった(図3)。  2)Child−Pugh分類による比較  肝硬変の重症度を判定する指標としてChild− Pugh分類が使用されている。これは脳症,腹水の 出現の有無,アルブミン,ビリルビン,PT活性値 により肝硬変をA,B, Cの三つのステージに分け る分類である。今回child−Pugh分類のA, B, c

群別にSFMCと血漿FDPについて比較検討し

た。統計学的に有意差は認められなかったが,

SFMCと血漿FDPのどちらも肝硬変のステージ

が進むにつれて増加する傾向がみられた(図4)。 考 察  今回私たちはフィブリンモノマーに対するモノ

クローナル抗体F405を用いたオートLIA FM

を使用し,測定機器STA−RでSFMC定量測定

試薬の基礎検討を行った。同時再現性,日差再現 性はおおむね良好で,希釈直線性もおよそ200 μg/mLまで良好な結果が得られた。採血後の室 温と冷蔵における経時変化では,室温で4時間を 過ぎるとやや上昇する傾向がみられた。このこと (μ9’mL)  45 .ii

Zl

li

● ●  ●   ● ・ ● ● ● ●     ● ●     ●

y=O。506x+9.556 r=0.247 P=0.159 nニ34 ●  0      5      10     15     20     25     30          血漿FDP     (μピmL) 図3.肝硬変患者におけるSFMCと血漿FDPと   の相関 Presented by Medical*Online

(3)

(μ9/mL)

SFMC

(μ9/mL)

血漿FDP

  A  B  C      A  B N=  20   8    6     N=  20    8    図4.Child−Pugh分類による比較

C6

から,採血後2時間以内の遠心分離が望ましいと 思われた。  肝硬変患者における検討として,線溶の指標と して広く用いられている血漿FDPとの比較検討

を行った。SFMCと血漿FDPでは相関は認めら

れなかった。SFMCはトロンビンの作用による初 期の凝固活性化を,血漿FDPはプラスミンの作 用による線溶活性化を反映しており,異なった位 相を捉えているためと考えられた。またChild− Pugh分類による比較検討では, SFMCと血漿 FDPのどちらも,肝硬変の重症度が進むにつれ増 加する傾向がみられた。血漿FDP上昇が示す線 溶充進とともに,肝硬変の代償期から非代償期に かけて徐々に進行する凝固充進の存在の可能性が SFMC上昇により考えられた。このことは,肝硬 変における凝固障害は単なる線溶充進によるもの ではなく,先行する血液凝固充進による慢性DIC に起因することを示唆するものと思われた。慢性 DIC状態にある肝硬変では,何らかの要因が加わ ると容易に急性DIC状態となり,凝固系の復元力 が低下しているため,合併したDICの治療は困難 となるlo・11)。したがって,早期に急性DICへの移 行を診断し対応する必要がある。凝固元進状態の

定量的評価が可能なSFMCを測定することに

よって,果たして早期診断が可能であるのかどう か今後の検討が必要である。 ま と め 1.SFMC測定試薬オートLIA FMは再現性, 127 直線性,安定性などの基礎的検討結果が良好であ り,日常検査として有用であると思われた。  2.肝硬変における凝固障害は単なる線溶充進 状態ではなく,先行する凝固充進(SFMC上昇)に よる慢性DICであることが確認された。  最後に,この検討にあたりご協力いただいた当 院職員の皆様に心より深謝いたします。 ︶ 1 ︶ 2 ︶ 3 ︶ 4 ︶ 5 ︶ 6 ︶ 7 ︶ 8 ︶ 9 10) 11) 文 献 松田道生:フィブリノーゲンの誘導体,とくに可 溶性フィブリン(soluble fibrin)とDダイマー(D dimer)について:その生成と存在様式について の考察 その1.可溶性フィブリン.血栓止血誌 8:24−32,1997 和田英夫他:凝固線溶マーカーの有用性.臨床 病理48:301−307,2000 和田英夫 他:DIC症例における可溶性フィブ リン値.臨床病理49:813−817,2001 谷みね子他1新しい可溶性フィブリンモノ マー試薬(オートLIA⑪FM)の検討:左心耳血 栓症診断の有用性.医学と薬学48:600−605, 2002 福田晃子 他:経口抗凝固療法における可溶性 フィブリンモノマー測定の意義.医学と薬学48: 606−611,2002 福[ヨ晃子他:「F405」による血漿可溶性フィブ リンモノマー測定と造血幹細胞移植症例の検討. 日本検査血液学会雑誌4:127−135,2003 児玉隆夫 他:可溶性フィブリン:人工関節置 換術後の深部静脈血栓症の早期診断マーカーと しての有用性について.アークメディア16: 1183−1191,2003 田中誠司他:フィブリンモノマーおよび可溶 性フィブリンに対する新しいモノクローナル抗 体とそれを利用したラテックス免疫比濁法によ る試薬の開発.医学と薬学48:587−594,2002 Tytgat G N et al:Metabolism of fibrinogen in cirrhosis of the Iiver. JCIin Invest 50:1690− 1701,1971 森 和夫 他:重症肝硬変に併発したDIC症候 群に対するAntithrombin III(At−III)濃縮製剤 の使用経験.基礎と臨床16:4817−4826,1982 矢島義昭 他:エンドトキシン血症とDICを合 併した肝硬変症の1例.現代医療19:1179−1183, 1987 Presented by Medical*Online

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