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トレーディングカードゲームにおける勝負を拮抗に導くアルゴリズムの提案

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Academic year: 2021

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2015年度 卒 業 論 文

トレーディングカードゲームにおける

勝負を拮抗に導くアルゴリズムの提案

指導教員:渡辺 大地 講師 三上 浩司 准教授

メディア学部 ゲームサイエンス ゲームイノベーション プロジェクト

学籍番号 

M0111159

小林 周平

(2)

2015年度 卒 業 論 文 概 要 論文題目

トレーディングカードゲームにおける

勝負を拮抗に導くアルゴリズムの提案

メディア学部 氏 指導 渡辺 大地 講師 学籍番号 : M0111159 名 小林 周平 教員 三上 浩司 准教授 キーワード trading card game, 拮抗, 優劣, カード入れ替え, NPC 対戦

トレーディングカードゲーム (TCG) はトレーディングカードにゲーム要素を加えたテー ブルゲームである。近年ではデジタルゲームとしての TCG も多くあり、デジタルの TCG ではプレイヤー同士はもちろんのこと、人が操作をしないキャラクター (NPC) と対戦す ることができるものがほとんどである。本研究では対戦ゲームにおいて勝負が肉薄し拮抗 したものであるほど良い勝負であると仮定し、TCG において拮抗した勝負を実現させる アルゴリズムの提案を行った。TCG においては相手より優位な状態になるように立ち回 ることが戦略の基本的な考え方として存在しているが、これに着目して現在の優劣の判断 をし判断結果に応じて調整を行うことによって拮抗した勝負が実現可能になると仮定しア ルゴリズムを作成した。優劣の判断は TCG の要素の優位性を抽出し比較することでプレ イヤー間の優劣を算出した。また、優劣の判断により算出された値を用いて調整を行い、 勝負を拮抗に導くアルゴリズムを作成した。本研究では提案手法を検証するためのゲー ムを制作し、4 名の被験者の協力を得て手法を適用していない状態でのプレイと手法を適 用していない状態でのプレイとを比較した。比較実験を行った後にアンケートをとり、ア ンケート結果から本手法により拮抗した勝負に導くことができることを示した。しかし、 一手でゲームに大きな影響が出るカードに対して対応し切れていない懸念といった点が今 後の課題として残った。

(3)

目 次

第 1 章 はじめに 1 1.1 研究背景と目的 . . . . 1 1.2 論文の構成 . . . . 3 第 2 章 トレーディングカードゲームの概要 4 2.1 トレーディングカードゲームの特徴 . . . . 4 2.2 ゲームの準備と流れ . . . . 4 2.3 デジタルの TCG . . . . 5 第 3 章 ゲームのルール設定 6 3.1 カードの種類 . . . . 6 3.2 ユニットカードの状態 . . . . 7 3.3 場について . . . . 7 3.4 アタックについて . . . . 8 3.5 CPについて . . . . 8 3.6 トリガー効果について . . . . 9 3.7 デッキ切れについて . . . . 9 3.8 対戦準備 . . . . 9 3.9 ゲームの流れ . . . 10 3.10 カードリスト . . . 10 第 4 章 研究手法 12 4.1 優劣の判断 . . . . 12 4.2 調整方法 . . . 13 第 5 章 検証と考察 16 5.1 優劣の判定式と調整法の検証 . . . . 16 5.2 考察 . . . 17 第 6 章 まとめ 20 謝辞 21

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(5)

図 目 次

3.1 ユニットカード . . . . 6 3.2 マジックカード . . . . 6 3.3 トラップカード . . . . 6 3.4 アップ状態とダウン状態のカード . . . . 7 3.5 本ゲームの場 . . . . 8 3.6 アタックの例 . . . . 9

(6)

表 目 次

5.1 どちらの方が拮抗した勝負ができたと感じたか . . . 18 5.2 どちらの方が面白いと感じたか . . . 18 5.3 どちらの方が対戦相手が強いと感じたか . . . 19

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1

はじめに

1.1

研究背景と目的

トレーディングカードゲーム(以下 TCG)はトレーディングカードと呼ばれる 収集を目的としたホビーを用いて行うテーブルゲームである。「Magic: The Gath-ering」[1] から始まり、テーブルトーク RPG などのテーブルゲームファンを中心 に世界に広がった。日本でも「日本語版マジック:ザ・ギャザリング」[2] の発売を 皮切りに「ポケモンカードゲーム」[3] や「遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム」 [4]などが発売され国内でも TCG が広まっていった。日本ではアニメと連動した TCGが多く存在する。近年では「WIXOSS」[5] で開発段階からアニメとの連動を 企画するなど一般的になってきている。それとは逆に、「ヴァイスシュヴァルツ」 [6]や「Precious Memories」[7] などのように既存のアニメ作品のキャラクターを集 めた TCG も多くある。また、「CODE OF JOKER」[8] などデジタルゲームとし ての TCG も多くあり、デジタルの TCG ではインターネットを用いて遠くのプレ イヤーとの対戦を行えたり、プレイヤー同士はもちろんのこと、人が操作をしない キャラクター (NPC) と対戦することができる。変わったところでは、MMORPG と TCG を組み合わせた「HEX」[9] はその組み合わせの新しさで大きな注目を集 めた。少し毛色が変わるが、アーケードゲームにおいて「LORD of VERMILION」 [10]のような実物のカードを装置で読み込みゲームを行うトレーディングカード アーケードゲーム (TCAG) も存在する。

(8)

近年では TCG に関する研究も行われてきており、佐藤ら [11] は RFID タグを用 いることでプレイヤー自身が育てたオリジナルなカードで対戦や交換をするといっ た新たな楽しみを付与したカードゲームを開発した。野瀬ら [12] は TCG における シャッフル手法についてシミュレーションプログラムを用いて分析し、各シャッフ ル手法の特徴、時間の長短に応じて適切なシャッフル手法が変わる可能性、複数の シャッフル手法の組み合わせの際に実行順が結果に大きく影響を与えることを実験 的に示した。中村 [13] は TCG のゲーム AI についてモンテカルロ木探索をベース とした NPC を実装しルールベース型の NPC と対戦させることで、TCG において モンテカルロ木探索の有用性を示した。 また、プレイヤーに楽しんでもらうことが TCG に限らずゲーム全般の目的であ る。プレイヤーを楽しませる方法のひとつとしてゲーム AI を強化することがあげ られる。生井ら [14] は将棋を題材にプレイスタイルについての調査を行い、人は どこに着目してプレイスタイルを感じるのかを明らかにし、これをもとにプレイ スタイルを模倣する将棋プログラムを試作し、評価を行った。上田ら [15] は遺伝 的アルゴリズムを用いてプレイヤーに合った強さと多様さ持った不自然さの無い AI群を生成するシステムを提案し、オセロに適用して評価を行った。池田ら [16] はプレイヤーを楽しませるために必要な技術を列挙し、モンテカルロ碁を用いた 場合の簡単なアプローチを提案し、予備実験を行った。佐藤ら [17] は強化学習に より獲得した行動パターンが機械的と感じてしまう問題を解決するため、人間の 持つ身体的制約をエージェントに持たせることで人間らしい行動パターンを獲得 する手法を実現し、自律的に行動パターンを獲得しつつも人間らしい振る舞い持 たせることができる可能性を示した。吉谷ら [18] はプレイヤーが選択した行動な どからプレイヤーの価値観を推定し NPC の行動選択に活用することでプレイヤー の満足度が高い NPC を生成する手法を提案し、比較的単純なゲームにおいての有 用性を示した。中野ら [19] は Mario AI においてモンテカルロ木探索法の一種であ る UTC アルゴリズムと遺伝的アルゴリズムを組み合わせて自動的に人間のプレイ を模倣するシステムを提案した。

(9)

本研究では勝負が肉薄し拮抗したものであるほど面白い勝負であると仮定し、 TCGにおいて勝負を拮抗に導くアルゴリズムを提案する。先行事例として、藤井 らの研究 [20] を挙げる。藤井らは TCG において強化学習法を用いてプレイヤーの プレイスタイルを学習し成長する戦略学習機構を実現し、計算機実験により人間 プレイヤーと対戦する TCG において、藤井らの戦略学習機構が利用できることを 示した。しかし、予め対戦を行わなければならない、コストが考慮されていない、 本研究で目的とする拮抗した勝負の実現には適していないといった問題点がある。 TCGにおいては相手より優位な状態になるように立ち回ることが戦略の基本的 な考え方として存在している。本研究では、現在の優劣の判断をし判断結果に応 じて調整を行うことによって拮抗した勝負が実現可能になると仮定しアルゴリズ ムを作成した。 また、提案手法を評価・検証するための TCG を作成し、これに本手法を適用し た状態と適用していない状態で比較実験を行い拮抗した勝負が実現できたかどう かを評価・検証した。比較実験から、手法を適用していない状態よりも手法を適 用した状態の方が拮抗した勝負になったという結果となり、本手法により拮抗し た勝負に導くことが可能であることを示した。

1.2

論文の構成

本論文は全 5 章で構成する。1 章は研究背景と目的、2 章では一般的なトレーディ ングカードゲームについての説明を述べる。3 章では本研究で使用するゲームの説 明を行う。4 章では本研究手法である優劣の判断と調整法の説明を行う。5 章では 3章で説明したゲームに 4 章で説明した手法について検証と考察を行う。最後に 6 章で本研究を統括する。

(10)

2

トレーディングカードゲームの概要

2.1

トレーディングカードゲームの特徴

トレーディングカードゲーム (TCG) とは、イラストやストーリーの描かれた カードを収集して楽しむ「トレーディングカード」を使用したテーブルゲームで ある。一般にユーザーはプレイヤーやデュエリストと呼ばれるが本稿ではプレイ ヤーと呼称する。1 対 1 で対戦を行うものがほとんどで、2 対 2 で対戦を行うルー ルも存在するものもある。

2.2

ゲームの準備と流れ

TCGではプレイヤーがデッキを構築し、これを用いて対戦を行う。デッキとは プレイヤーが様々な種類のカードの中からゲームで設定されている基準に基づき 構築するカードの束である。カードの種類は大きく分けて 2 種類ある。ひとつはユ ニットカードで、カードの戦闘力を表す数値やカードの持つ能力などが記載され ており、相手のユニットカードと戦闘力を比べて相手のユニットカードやプレイ ヤーと戦闘を行うことができる。もうひとつはマジックカードで、使用するため に支払うポイント (コスト) や使用したときの効果などが記載されており、ユニッ トカードの戦闘を有利にするなどの補助を行うことができる。

(11)

また、卓上に領域を設定する。主な領域として「山札」「手札」「場」「捨て札」 がある。山札はデッキが裏向きに置かれる領域である。手札は山札から引いたカー ドを手に持っておく領域である。場は手札から出したユニットカードで戦闘を行 う領域である。捨て札は使用済みのカードを置く領域である。 一般的なゲームの流れは次の通りである。 1. 先攻・後攻を決め、山札からカードを規定数引き手札とする。 2. 山札からカードを引く。 3. 手札からユニットカードを場に出したり、マジックカードを使用する。 4. 場のユニットカードで相手のユニットカードやプレイヤーと戦闘する。 5. 相手に手番を渡す。 2∼5 を決着がつくまで繰り返す。プレイヤーに規定のダメージを与えると勝利 といったルールが多い。なお、山札からカードを引くことをドロー、戦闘を仕掛 けることをアタック、一連の手番をターンと呼ぶ。

2.3

デジタルの

TCG

近年ではデジタルゲームとしての TCG も多くある。デジタルの TCG ではイン ターネットを用いて遠く離れた場所にいるプレイヤーとでも対戦ができるなどテー ブルゲームには無いデジタルゲームならではのシステムもある。また、デジタル の TCG ではプレイヤー同士の対戦に加え、人が操作をしないキャラクター (NPC) と対戦することができるものがほとんどである。

(12)

3

ゲームのルール設定

本研究で用いるゲームは、既存のいくつかのゲームルールをベースに製作した ものである。既存の TCG から、よくある要素である「デッキの構築」「効果持ち ユニットカード」「効果のみのカード」「コストの支払い」といった要素を抽出し、 TCGとしての要素は十分に備えた。

3.1

カードの種類

本ゲームのカードは 2 章で説明したユニットカード・マジックカードの他にト ラップカードが存在する。このトラップカードはトラップ領域という専用の領域 に予め伏せて置いておくカードで、ユニットカードがアタックする直前に使用す ることができる強力な補助カードである。ユニットカード 2 種類、マジックカー ド 5 種類、トラップカード 7 種類が存在する。図 3.1 ∼ 図 3.3 でそれらの一例を 示す。 図 3.1: ユニットカード 図 3.2: マジックカード 図 3.3: トラップカード

(13)

3.2

ユニットカードの状態

本ゲームのユニットカードにはアップ状態・ダウン状態という 2 種類の状態が存 在する。これはアタックが可能かどうかを表し、アップ状態はアタック可能、ダウ ン状態はアタック不可能となる。アップ状態はカードを縦向きに、ダウン状態は カードを横向きにすることで表現する。図 3.4 は各状態の様子である。また、ユ ニットカードの状態を変更する際、アップする・ダウンすると表現する。 図 3.4: アップ状態とダウン状態のカード

3.3

場について

本ゲームの場は前列・後列に別れていて、前列に 3 枚・後列に 2 枚のユニット カードを配置できる。図 3.5 で本ゲームの場を示す。アタックを行うのは前列の カードのみで、後列に配置したカードは効果の発動のみとなる。また、後列のカー ドの効果は正面の 2 枚に作用する。例えば後列の左のカードの効果は前列左のカー ドと中央のカードに対して作用する。

(14)

図 3.5: 本ゲームの場

3.4

アタックについて

前列に置かれたユニットカードがアタックすると正面の相手ユニットカードと 戦闘を行い、アタックを受けたカードの数値の低い場合は捨て札に送られる。ア タックしたカードはダウンする。なお、カードがアタックやカードの効果により 捨て札に送ることを破壊すると表現する。また、正面にユニットカードが居ない 場合は相手プレイヤーに 1 点のダメージを与える。このダメージが 5 点になると 敗北となる。図 3.6 でアタックの一例として相手のユニットカードが中央と右に 配置されている場合、左のカードは相手プレイヤーへのアタックとなり、中央の カードは正面の相手ユニットとの戦闘となることを示す。

3.5

CP

について

マジックカード・トラップカードにはそれぞれに使用コストが数値で設定され ており、使用コストを支払える限り使用することができる。このコストの支払い には CP(コストポイント) を使用する。CP はターンを重ねるごとに最大値が増加 していき、最大 5 まで増加する。また、ターンのはじめに最大値まで回復する。

(15)

図 3.6: アタックの例

3.6

トリガー効果について

マジックカードには使用したときの効果とは別にトリガー効果が存在する。ア タックを行う直前に山札の一番上のカードを表にし、それがマジックカードであっ た場合にそのカードのトリガー効果が発動する。めくれたカードは効果の有無に かかわらず捨て札に置く。

3.7

デッキ切れについて

TCGでは山札が 0 枚になることをデッキ切れと呼ぶ。デッキ切れが起きた時点 で敗北とするゲームも多いが、本ゲームでは捨て札をシャッフルし山札として再度 使用する。この時、ペナルティとして 1 点のダメージを受ける。ただし、現在の ダメージが 4 点の場合はペナルティを受けない。

3.8

対戦準備

プレイヤーはユニットカード・マジックカードを組み合わせたデッキを作成す る。この時カードの総数が合計 24 枚になるようにする。加えて、使用するトラッ プカードを 3 枚まで選択しトラップ領域に伏せて置く。

(16)

3.9

ゲームの流れ

ゲームの流れは次の通りである。 1. 先攻・後攻を決め、山札からカードを 5 枚引き手札とする。 2. CPの最大値を 1 増加し、最大値まで回復する。 3. 自分の場のユニットカードをすべてアップする。 4. 山札から 2 枚カードを引く。(先攻 1 ターン目のみ 1 枚) 5. 手札から好きなだけユニットカードを場に出したり、マジックカードを使用 できる。 6. ターンプレイヤーから順にトラップカードを使用する。 7. 山札の一番上をめくり、トリガー効果を解決する。めくったカードは捨て札 に置く。 8. アップ状態のユニットカードでアタックできる。(先攻 1 ターン目のみ 1 枚) 9. 相手にターンを渡す。 2∼9 をどちらかが 5 点のダメージを受けるまで繰り返す。

3.10

カードリスト

本ゲームのカードリストは次の通りである。() 内は使用コスト、[] 内はトリガー 効果である。 • ユニットカード 前衛ユニット:パワーが高い基本的なユニットカードである。 後衛ユニット:後列に置くことで前列のカードのパワーを常に+500 する。

(17)

• マジックカード ドロー:(1) 1 枚引く。 [1 枚引く。] パワー:(1) 1 ユニットのパワーを常に+500 する。 [このターン中ユニッ トカード 1 枚のパワーを 500 上げる。] ブレイク:(2) ユニットカード 1 枚を破壊する。 [パワー 1000 以下のユ ニットカード 1 枚を破壊する。] ロスト:(2) 相手の手札を 1 枚ランダムに捨てる。 [相手は手札を 1 枚 ランダムに捨てる。] チャージ:(0) CP を 1 回復する。 [CP を 1 回復する。] • トラップカード 鉄壁:(1) このターン中ユニットカード 1 枚のパワーを 2000 上げる。 破壊:(5) 場のすべてのユニットカードを破壊する。その後あなたの CP 最大値を 0 にする。 停止:(5) 場のすべてのユニットカードをダウンする。 帰還:(3) ユニットカード 1 枚を手札に戻す。 蘇生:(2) 捨て札からユニットカード 1 枚をランダムに選び場に出す。 妨害:(2) このターン中すべての相手後列のユニットカードの補助効果 を無効化する。 修復:(0) CP を 1 回復する。

(18)

4

研究手法

4.1

優劣の判断

TCGプレイヤーの間では手札や場のカードなどの優位性をアドバンテージと呼 び、これを取り合うことが戦略の基本的な考え方である。このアドバンテージと して考えられる要素を抽出することで、TCG において優劣の判断が可能であると 考えた。 本研究で使用するゲームではプレイヤーのアドバンテージは「場のユニットカー ド数」「手札のユニット数」「トラップ数」「ダメージ数」に終始すると考えること ができる。これらを比較して優劣の判断を行う。 NPCがこのターンに破壊するユニットカードの枚数を a、プレイヤーが前のター ンに破壊した ユニットカードの枚数を b、NPC がこのターンに与えたダメージの 点数を c、NPC が前のターンに受けたダメージの点数を d、現在のダメージの点 数差を e、手札のユニットカードの枚数差を f 、未使用のトラップカードの枚数差 を g、導かれる優劣度を S とおき、次の式から優劣の判断を行う。計算は CPU の ターン開始時に行うこととする。 S = (a− b + f + g) 2 + c− d + e (4.1) 優劣度 S が 1.0 以上なら優勢、-1.0 以下なら劣勢と判断する。

(19)

4.2

調整方法

本研究で使用するゲームでは「山札」「トラップ領域」「CPU の手札」が非公開 情報であるため見た目としてはルールを逸脱することなく調整を行うことができ る。そこで、これら非公開情報を操作することでアドバンテージを調整してプレー ヤーの優劣を互角に近づける。判断式で導き出された優劣度 S の絶対値を調整回 数とし、次に引くカードの入れ替えや手札のカードのすり替えなどを行う。 調整の優先順は次の通りである。ただし、カードのすり替えは CPU 側にのみ適 用する。アドバンテージを上げること優先することで強化が主となり見た目が派 手になる。カードのすり替えは大きな変化であり、山札の並び替えよりも破綻の リスクが大きいため優先度を下げている。 1. 劣勢側の山札を並び替えてアドバンテージを上げる。 2. 優勢側の山札を並び替えてアドバンテージを下げる。 3. 劣勢側のカードをすり替えてアドバンテージを上げる。 4. 優勢側のカードをすり替えてアドバンテージを下げる。 各調整の詳細は次の通りである。番号の順に調整を試み、調整が行えたら番号 の順に再度調整を試み、調整回数の分繰り返す。 • 劣勢側の山札を並び替えてアドバンテージを上げる調整 1. 前衛ユニットの総数 (前列+手札) が 2 枚以下の時、前衛ユニットカード を山札の上に置く。 2. 後衛ユニットの総数 (前列+手札) が 1 枚以下の時、後衛ユニットカード を山札の上に置く。 3. トリガーを有用なマジックカードにする。 • 優勢側の山札を並び替えてアドバンテージを下げる調整

(20)

1. 後衛ユニットカードの総数 (後列+手札) が 2 枚以上の時、後衛ユニット カードを山札の上に置く。 2. 手札にマジックが無い時、チャージを山札の上に置く。 3. トリガーをユニットカードにする。 • 劣勢側のカードをすり替えてアドバンテージを上げる調整 1. 前衛ユニットカードの総数 (前列+手札) が 2 枚以下の時、手札のカード を前衛ユニットカードに変更する。 2. 後衛ユニットカードの総数 (前列+手札) が 1 枚以下の時、手札のカード を後衛ユニットカードに変更する。 3. デッキに相手の場を崩せるカードがない (後衛ユニットの支援だけでは ユニットを倒せない) 時、手札のカードをブレイクに変更する。 4. 次のアタック時にダメージが 5 になる時、現在の CP で使用できる防御 トラップカード (帰還・蘇生・停止・破壊) に変更する。 5. デッキに相手の場を崩せるカードがない (後列カードの支援だけでは相 手カードを倒せない) 時、トラップカード 1 枚を破壊に変更する。 • 優勢側のカードをすり替えてアドバンテージを下げる調整 1. 後衛ユニットカードの総数 (後列+手札) が 2 枚以上の時、手札のカード を後衛ユニットカードに変更する。 2. 手札にマジックが無い時、手札のカードをチャージに変更する。 また、すり替える調整を行う際に対象となるカードの選択基準と優先度は次の 通りである。 • 劣勢側のすり替え 1. チャージ以外のマジックカードが手札に無い時、チャージを対象とする。

(21)

2. 相手の手札が 0 枚の時、ロストを対象とする。 3. 後衛ユニットカードの総数 (前列+手札) が 3 枚以上の時、後衛ユニット カードを対象とする。 4. 前衛ユニットカードの総数 (前列+手札) が 4 枚以上の時、前衛ユニット カードを対象とする。 5. 現在使用コストが支払えないマジックカードを対象とする。 • 優勢側のすり替え 1. ブレイクを対象とする。 2. ドローを対象とする。 3. パワーを対象とする。 4. 相手の手札が 1 枚以上の時、ロストを対象とする。 5. チャージ以外のマジックカードが手札にある時、チャージを対象とする。 6. 後衛ユニットカードの総数 (前列+手札) が 3 枚以上の時、後衛ユニット カードを対象とする。 7. 前衛ユニットカードの総数 (前列+手札) が 4 枚以上の時、前衛ユニット カードを対象とする。

(22)

5

検証と考察

5.1

優劣の判定式と調整法の検証

本研究では 3 章で説明したゲームを作成し、4 章で説明した優劣の判断と調整法 を適用して検証実験を行った。まず著者が想定通りの効果が確認できるかを確認 する。その後 3 名の被験者に、手法を適用していないゲーム (typeA) と手法を適用 したゲーム (typeB) を渡し、typeA をプレイしてもらった後、typeB をプレイして もらい、ゲームプレイ後、アンケート調査を行った。なお、被験者には typeA と typeBの違いは伏せた状態で検証実験を行った。被験者や NPC の使用するデッキ はこちらで予め用意した。それぞれのデッキ内容は次の通りである。被験者には 自身のデッキ内容のみを公開した。 • 被験者のデッキ 前衛ユニット 10 枚 後衛ユニット 6 枚 パワー 3 枚 ブレイク 3 枚 チャージ 2 枚 鉄壁 1 枚

(23)

帰還 1 枚 停止 1 枚 • NPC のデッキ 前衛ユニット 10 枚 後衛ユニット 6 枚 ドロー 3 枚 ロスト 2 枚 チャージ 3 枚 妨害 1 枚 蘇生 1 枚 破壊 1 枚

5.2

考察

著者自身による検証では拮抗した勝負が実現できていると感じ取れた。自分と NPCとが互いに後1枚で勝負が決まるというギリギリの勝負か多かったためであ る。また、4 名の被験者での検証実験の結果、typeB の方が拮抗した勝負ができた という回答が多く得られた。回答が若干バラけているのは、typeA は拮抗しないと いうことは無いがそのときのカードの引きにより拮抗することも十分ありうるか らであると考える。このことから、本手法により勝負を拮抗に導くことができた といえる。また、typeB の方が拮抗した勝負ができたと答えた被験者は typeB の 方が面白いと答え、拮抗した勝負は面白いということが確認できた。どちらが強 いと感じたかについては、typeA でゲームになれた被験者が typeB に挑むためそ の分被験者にアドバンテージがある。このアドバンテージ差に本手法の調整が入 り typeB が強いと感じたと考えられるため、本手法が有効に働いた証といえる。

(24)

表 5.1: どちらの方が拮抗した勝負ができたと感じたか typeA 0人 どちらかといえば typeA 0人 どちらも大差は無い 2人 どちらかといえば typeB 1人 typeB 1人 表 5.2: どちらの方が面白いと感じたか typeA 0人 どちらかといえば typeA 0人 どちらも大差は無い 1人 どちらかといえば typeB 2人 typeB 1人 しかし、「破壊のトラップカードが強すぎて運ゲーな感じもした」という意見も あり、1 手でゲームの状況が大きく変わるカードに対しては対応しきれていない懸 念がある。

(25)

表 5.3: どちらの方が対戦相手が強いと感じたか typeA 1人 どちらかといえば typeA 0人 どちらも大差は無い 0人 どちらかといえば typeB 2人 typeB 1人

(26)

6

まとめ

本研究では、TCG において拮抗した勝負を実現することを目的に、その場の優 劣を判定し調整を行うアルゴリズムを作成し、既存の TCG を元に制作したゲーム に適用させた。検証実験では本手法を適用することによって拮抗した勝負が実現 できることが確認できた。また、拮抗した勝負は面白い勝負であるということが 確認でき、本手法の有用性を示した。今後の展望として、本手法では一手でゲーム の状況に大きな影響を与えるカードに対応しきれていない部分がある。また、本 手法では直近の状況から優劣を判断し調整を行うため、ターンをまたいで効果が 発動するカードには対応できない可能性もある。これらに対応できるようにする ことで本手法の有用性が高まると考えられる。

(27)

謝辞

本論文執筆にあたり、特に渡辺先生・阿部先生には多大なご迷惑をおかけした ことを大変申し訳なく思っております。同時に、それでも熱心にご指導くださった ことを深く感謝いたします。 また、半年早く卒業して行った元同期の皆様方には協力や相談に多々付き合っ てくれたことに感謝します。 胸を張れる人間になります。

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参考文献

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(29)

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ヤー. Master’s thesis, 法政大学大学院紀要 (情報科学研究科編), 2014. http: //hdl.handle.net/10114/9783.

[14] 生井智司, 伊藤毅志. 将棋における棋風を感じさせる AI の試作. 研究報告ゲー ム情報学 (GI), Vol. 2010-GI-24, No. 4, pp. 1–7, 2010.

[15] 上田陽平, 池田心. 遺伝的アルゴリズムによる人間のレベルに適応する多様 なオセロ AI の生成. 研究報告ゲーム情報学 (GI), Vol. 2012-GI-27, No. 5, pp. 1–8, 2012. [16] 池田心, Simon Viennot. モンテカルロ碁における多様な戦略の演出と形勢の 制御: 接待碁 AI に向けて. ゲームプログラミングワークショップ 2012 論文集, pp. 47–54, 2012. [17] 佐藤祐一, 片寄晴弘. ビデオゲームエージェントの自律的行動獲得と観測情報 の信頼性に着目した獲得行動パターンの分析. 研究報告エンタテインメント コンピューティング (EC), Vol. 2012-EC-23, No. 17, pp. 1–8, 2012.

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(30)

[19] 中野雄基, 美添一樹, 脇田建. 進化計算と UCT による Mario を人間らしくプ レイする AI. ゲームプログラミングワークショップ 2013 論文集, pp. 81–88, 2013.

[20] 藤井叙人, 片寄晴弘. 戦略的トレーディングカードゲームのための戦略獲得手 法. 情報処理学会論文誌, Vol. 50, No. 12, pp. 2796–2806, 2009.

図 3.5: 本ゲームの場 3.4 アタックについて 前列に置かれたユニットカードがアタックすると正面の相手ユニットカードと 戦闘を行い、アタックを受けたカードの数値の低い場合は捨て札に送られる。ア タックしたカードはダウンする。なお、カードがアタックやカードの効果により 捨て札に送ることを破壊すると表現する。また、正面にユニットカードが居ない 場合は相手プレイヤーに 1 点のダメージを与える。このダメージが 5 点になると 敗北となる。図 3.6 でアタックの一例として相手のユニットカードが中央と右に 配
図 3.6: アタックの例 3.6 トリガー効果について マジックカードには使用したときの効果とは別にトリガー効果が存在する。ア タックを行う直前に山札の一番上のカードを表にし、それがマジックカードであっ た場合にそのカードのトリガー効果が発動する。めくれたカードは効果の有無に かかわらず捨て札に置く。 3.7 デッキ切れについて TCG では山札が 0 枚になることをデッキ切れと呼ぶ。デッキ切れが起きた時点 で敗北とするゲームも多いが、本ゲームでは捨て札をシャッフルし山札として再度 使用する。この時、ペナ
表 5.1: どちらの方が拮抗した勝負ができたと感じたか typeA 0 人 どちらかといえば typeA 0 人 どちらも大差は無い 2 人 どちらかといえば typeB 1 人 typeB 1 人 表 5.2: どちらの方が面白いと感じたか typeA 0 人 どちらかといえば typeA 0 人 どちらも大差は無い 1 人 どちらかといえば typeB 2 人 typeB 1 人 しかし、 「破壊のトラップカードが強すぎて運ゲーな感じもした」という意見も あり、1 手でゲームの状況が大きく変わるカード

参照

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