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高知県土佐市の石灰岩植生

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Academic year: 2021

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(1)

   高 知 県 土 佐 市 の 石 灰 岩 植 生

      山   中   二   男

The Limestone Vegetation in Tosa-shi,Kochi Prefecture

       .

Tsugiwo Yamanaka

       は じ め に  土佐市は高知市の西南,仁淀川下流の西に位置し,もとの高岡郡高岡町,宇佐町など8町村の合 併によりできたものである(5万分の1地形図須崎および伊野).南部海岸ぞいの宇佐町は漁業で 知られているが,高岡町を中心とする盆地には水田がひらけ,ビニール温床による園芸も盛んであ り,また北部の丘陵地帯にはミカン類がひ,ろくつくられている.高岡盆地の北側には仏像構造線が 東西に走り,それよ'り以北は古生代ペルム紀の虚空蔵山層群となっていて,この南縁にそって石灰 岩かおり,ことにもとの北原村から高岡町天崎にわたって各地に露出している(甲藤ほか1960-1).  この地方の石灰岩地帯の植生については,くわしいことがほとんどわかっていなかった.そのた め1965年の春から秋にかけておこなった調査め結果をここにまとめておきたいと思う.なお神谷で の予備調査には黒岩和男氏の援助をうけたこどを記し,感謝の意を表する.        調 査 地 と 植 生  石灰岩露出地とその周辺部をひろく踏査したが,とくに植生調査の対象としては,もとの北原村 神谷のタチバナの多いところ,おなじく宇都木北部(5万分の1地形図では六分−となっているあ たり)のモモ,ウメ,ビワなどが多く野生する地域,およびもとの高岡町鴨川付近と天崎のアラカ シ林をえらび,組成は第1表にまとめてあらわした.  これらの地域は海抜およそ100∼200mの丘陵である.石灰岩が露出していないところ(丘陵の下 部は中生層,盆地は冲積層)の気候的極盛相は,おもにコジイを主とし,ときにスダジイがあり, ところによりタブ,イヌマキ,イチイガシ,ヤマモガシ,イスノキなどの混生する林かおり,また 最近はハナガガシの優占するところも明らかにされて注目をひいている(山中1965).丘陵地では おそらくコジイークロバイ群集か最も広い範囲を占めていたものと思われるが,よくひらけた地域 のため,まとまった残存林はあまり見られない.  植生の荒れている傾向は石灰岩地帯でも例外でなく,比較的もとの状態を保っているアラカシ林 でも,再三にわたる人為の影響をうけているとみなされる.そのほかの場所では,ススキ,トダシ バ,チガヤなどの多い草地がひろく見られ,林もエノキ,ムクノキ,ネムノキ,アカメガシワ,ヌ ルデ,クマノミズキなどの多い二次林が少なくない.ただそのような場所でも,石灰岩地帯の本来 の植生の組成要素とみなされるイヌビワ,シロダモ,ナツテン,ビワ,クスドイゲ,ナワシログ ミ,クチナシなどは少なくない.  神谷のタチバナの生ずるところは,‘ このような二次的な植生の占める地域内では,狭いながら比 較的よくもとの状態を保っている.大きな岩塊の露出するやや乾燥した斜面に,樹高5m内外,胸 高直径の大きなものは35 cm をこすタチバナか群生し,樹下にはイヌビワ,ナンテン,トベラ,ク スドイゲ,ナワシログミなどか多い(第1図).また付近にはモモやウメも見られる.  宇都木の丘陵の南むきの斜面も植生の荒れがいちじるしいか,エノキ,ムクノキ,アカメガシ ワ,ヌルデ,クマノミズキなどの落葉樹にまじってイヌ・ビワ,クスドイゲなどか多い.またモモが

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20 高知大学学術研究紹告 第14巻  自然科学 I 第3号       _ Quadrat number** Altitude (m)' Exposure Steepness

Total number of species

Characteristic species of association ’  ^Nandineto-Cyclobalanobsidetmn) 2 JLriobotrya j叫')onica  七厘対比−”・ 3 Nandina damestica  (れ回eゴc 。 ?ごiesof alliance, 2 Flcus ere““でと7;gfゐj  比ぷこ坑ご  Neolitsea sericea  Adi・todaphi・le lancifolia  撫お昌二首こ忿乙 。,  尽ads・ura iaponica 3 Gardenia jasminoides t. grandiflora  公方ヅ犀麗叩尚s  Camellia japonica  穴れ銘惚 4 Ardisia japonica  o助丿砂゜即″j砂゜″姐“`U . j驚旨こ  Ardisiaかusilla  体臨篇雲 。。,  Rubus buergeパ  Companions* 2比にヅに尹ぶ  Rhus javanica  ざ址な竹本  Cel£is sinpiisisv. japonica  大辻昌江門  Citrus tachibana  訟窃言なご7馬 /回,心  B7・ousionetia feazinofei  詣銚江こ  Celastrus orbiculalus  Sゴ仁帽詔 。 ご昌な惣爵 ・泌77z  Rosa multiflora  Euonymus alatus  Y iburnum dilatatuni  jZ;SZ;じλ酋7tS7 5μ,zzz7,z  Indig可eΓa psetidotinctoria  れ尽鸞忿 。  Chanuiecypari s obtttsa Table 1 2170E3039 1170E3040 jり 十十 ぐぐ + (十)  1  3 (十)(2)  ●  ● (十)2 2 ・ 2 1十 CO 昌1 2 2 1  3 (十)  ●  十 (十)2 ( ・一 十・eal+111いいs (十)  + (十) (十)  十  1  2 {十} {十} (十)  十  1 ・ 1 1 φ 一 一 一 I I り (十) {十} jj 十十 ぐC ・・● 1 + 十・・争ゆ  Z'ノ  り ・1・・2十十> ■ . crj ・ T︱I ・ +1 (十)       5 jj 十・・・・・2・・・・31+1十・+1十十十十・十・・       ぐ.ぐC 4 140en3022 (+)  2 (十) CM ■ ■  5  6  7  8  110 130 120 120 WNW wsw ENE ENE  30  20  5  10  25  46  36  42 r 3 ● 一 一 c v ] . > . . . . c r >                     ・ く       ぐ   ‘ 一   一 ・ ゆ 十 ・ ・ 一 一 一 ● ・・一・ 3j +−12 r.ぐ 2 (十)  2 十十・・一一・ ぐぐ  5 1) 十 (1)  I’j 十十・十十一一・一・・・・  1 ぐ 一一・I  +  + (十)・・・十一・一一十 {十} (十) ・十  十,  十  十  2 (十)  5  + (十)    リー ・・・十十e一一一    く!‘   ^\^\ (十) 十・・・十一一 (十)  + (十)  1  4  2 ^ ^ / ' N " N 十 十 十 ぐ C ぐ ・・十1・十 十・十 (十) 十・+2十・t十 (十) 3・・・・・︱・・十 {十} + + + ・ト + りI 十十 ぐぐ 5 (十) (十)     IjI ・’+・1十・・十・・・十十・1十十十     !‘j‘ リー 十十十 ぐ‘I tノ 十十 ! ・十・十十・十 十・十 00  00115N14 9160一〇36  1 (十)  5 (十) (十) 雨          j e一・4s十十・・・・十1・・十十・          ぐ    ︱ ・・十十    ︱ 十} ゆ一一・ (十) (十) {十} 5 (す) 巾 (十) 3 十・・十 十十十・十十十十 ぐ ●・1 {十}             ︱ 十 ・ ・ ・ ・ 十             1 (十)  1 (十)  + (十) (十) Se

(3)

 高知県士.佐市の石灰岩植生   (山中) 一一一一 Clerod。 「ron trichotomicm £)eutzia scabra Orixa japonica 欧;ゴ≒尤昌 一 Paederia scandensヽ、、?■jiairci AI呻elopsis bre。ipedunc。lata 訟ごj雲だ⊇ 欧tゴj忿訟 。J  S・inome・ 「i。。■in ac.・utum  諮丿子回ミゴE臨 。。(。piphyt。) 4翻汰二に芯;ご≒ ”・;。ididat.・。  穴7二 ! j57;jダjj“叩面s V,μ7/)゜incus  勁ヅフ皐ぶ犀;7雫回叩。抑白 営ぬ己惚首位 . 鴛訟悍紹ヤ Galium pogonanthum I l l b o ? ) O ? i i T i e ≪ . Lvcorisradioは χ/iolagrypoごeras tぷオt心血に.tigri?1・uni (十)  + (十)     j、、ノjj ・・・十十十十十・     ぐくぐぐ (十)(十)  十 (十)  + 十・十1・十十・・・・・・・ ・十十  (十)  + (十)  +  十 + 2 十+11十十・・十十十・十十 (十)  +  +  +  +  + 十 十 j 十十十・・十・・・・1 ぐ - ト (十)C 十・・・・・十・1 ・十十十・十十 j 十・十 +・十 (十)  十  +  1  十  2  十  十       5り ・・・十十十十十・・・・・・.       C’l、 + ・++・・+・ +・+ 十 十・十十十 (十) (十)  十  + (十) 1十 十 十 21 ‘、ノー十+1十十十・・ ぐC、  + (十) ・・︱・十十・・・・十十・・・ * 1−4 C3・r£omi・l,。・。l.μilcaltc。。,Cy。lbo・1)りgon goerijigtli。Hrachypodium sylvaticumt S£ephani。。      }apo711ca十

  2−3 Primus jamasaki。ra十,−4 Pteris cretica+   3−I Rhiis succedanea十,

 -4 Bela.・川■candachlnensis, Agrimojiui一■bi.losrt, Yo・。Tigiaja・pan・ica,      Younvia dentic。lala, Rohdeaμゆo≪ica十

  4-4 G 「'tiini sb・・元,m,。\'。 ecii・iilosbermon・ Rostt tりi,cノritratana. Pi。eraria Jobata十

  5−3 Sola?!。.mりra t i。。7μ。十

  6−4 Card。,I・ine hnpatiens, Oエalis cornici。.lata, Chrysanthemum mah.Ibioi, Lacluca indica

     V  laci?lia£a, Allium gl‘ayi十

  7−I Fagara t 「CDltllOはes十,−4 Poりgon II川,・,。冲融atum十

  8−2 Rh・us sylvestris十,−3 Aralia e.laia十,−4 Cirsiitin nt・*J>onici≪Jiv. shikokianttm十

  9−I GtocJi・は・toil obovatu-m.十,−4 Akehia trifoliaは十

 10-3 Poiirtdiaea villosa十,・−4P£eris ,m,有ifida. Scutellaria indicaヽk'。  parx。げolia 十

** Locality : 1-2, Kodani ; 3-6, Utogi ; 7-8, Narukawa ; 9-10, Amasaki.

いたるところに生じ,しばしばウメも見られ,凛地や岩壁では早春これらの花が目をひく(第2図). またビワも多く,ところによりいちじるしく群生しているのが注目される.なおヤブサンザシが少 なくないことや,シロバナハンショウヅル,ヤハズマンネングサなどの好石灰植物があるのもめだ ち,日あたりのよいところにはヒメウラジ‘口が多い.  鴨川や天崎のアラカシ林は,樹高4∼5mにとどまる叢林であるか,石灰岩地帯のアラカシ林に はこのような亜高木林が多い.ビワ,クスドイゲ,クマノミズ牛などをまじえ,林床にはツルコウ ジ,ヤブコウジ,ジャノヒゲ,コヤブラン,シュンラン,フユイチゴ,テイカカズラなどか常在し ている.       考     察  土佐市の石灰岩地帯の植生が一般に荒れていることは,ひろく二次的な群落の存在していること から明らかであるがノもともとこの地域ではアラカシを主とする林が広い範囲を占めていたことは

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22 高知大学学術研究報告 第14巻  自然科学 I 第3号         一一一一一一一

Fig. 1、Ci/riisはchihanaon limestone.

想像に難くない.小さな谷ぞいや北むきの斜而にコク サギの生ずるところもあるか,地形の変化かあまりい ちじるしくないのと乾燥によって,コクサギの優占す るところは,もとからほとんどなかったものと思われ る.また高知県に多いイワシデ林がこの地域に存在し たことも考えられない.  アラカシ林の存在したことを裏づける理由として は,今なお一部にアラカシか優占していることはもと より,この地域全域を通じてナンテン,ビワ,クスド イゲなどが多く見られることと,アラカシ林を含む常 緑広葉樹林の組成要素か数多く存在することなどがあ げられる(第1表).このようなアラカシ林はアラカ シーナンテン群集(山中 1955)であることには問題 がない.  この地域では,シロバナハンショウヅル,ヤハズマ ンネングサ,ビワなどのほかは,石灰岩ととくにむす びつきのはっきりした植物いわば典型的な好石灰植物 とみなすべきものはほとんど見られない.これは植生の荒廃か直接原因となったものではなく,も とからの傾向と考えられる.しかし,そのほかに注憲すべき植物がないわけではなく,タチバナや ヤブサンザシの存在,モモ,ウメなどの野生がそれである.  タチバナは高知県の海岸ぞいのタブまたはシイの優占する常緑広葉樹林内にしばしば自生してい るほか,石灰岩地川:にも産地がかなり知られており.ことに内陸での分布はほとんど石灰岩に限ら れている.とくに好石灰植物とはみなされないが,南方系植物が石灰岩上に隔離してあらわれる例 を考え・ると興味あることである.ヤブサンザシも稀な植物で,それがこのように石灰岩上に多い例 は注目してよいであろう.  モモやウメの石灰岩地帯における野生は,わが国のほかにもその例が少なくない(吉岡 1964, 山中・黒岩 1965).これは逸出とみなされたり,またもとからめ自生らしいという考えもあった りするか,野生状態をなしているところの多くが石灰岩地価であることだけは考慮しておくべきで ある(山中・黒岩 1965).ちなみにこの地方では,野生のモモをニガモモと称し,ときに接木の 台木とするほかは,まったくかえりみない.花では栽培のものとほとんど区別できないか,果実は 熟する前の6月にしらべたところでは, 大きさが平均3.1×2.4×2. 2 cm>重さ 9.4gで,おなじ石灰岩地に栽培して いるモモ(品種名不詳)の5.2×5.0× 4.5cm> Sl.igと,そのちかいは明らか である.高知県のほかの石灰岩地帯に野 生しているモモも,ほぼおなじ大きさの 離核性のものである.なおビワの自生の ものも一般に果実は小さいか,この地方 ではかなり大形の栽培品に近いものかお り,逸出したものがまじっている可能性 がないとはいえないので注意を要する. このようなことは,人家に近く,植生が

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 高知県土佐市の石灰岩植生   (山中) -荒れていて,付近におなじ植物が栽培されているときに,とくに考えなければならない. 2ろ       ま  と  め  高知県土佐市の丘陵地の石灰岩地帯では,植生の荒れがめだっている.しかし,もともと大部分 がアラカシーナンテン群集に占められていたもの,と考えられ,現在もなお一部にそれが残ってい る.そのほかタチバヂの生ずるところかおり,またモモやウメが多く野生していることなども注目 される.       文     献 甲藤次郎・小島丈児・須鎗和巳・沢村武雄 1960-1 : 高知県地質鉱産図および同説明書.

Yaraanaka, T. 1955 : Studies on the limestone vegetation in Shikoku, Japan. Res. Rep. Kochi   Univ. 4 (2), 1-12. 山中二男 1965 : 四国のハナガガシについて.植研40(寄稿中). ・黒岩和男 1965 : 高知県における二三石灰岩地帯の植物相と植生.高知大学教育学部研報No. (昭和40年9月20日受理)   17, 95-109. 吉岡重夫 1964 : 北九州市の植物.       Summary

 Limestone areas on hills in the・north of Tosa-shi, Kochi Prefecture, are mostly occupied by the secondary vegetation, but the evergreen oak community dominated by Quercusglauca is found in places (Table ・1). The edaphic climax 'in these limestone areas is such an oak community which is included in the Nandineto・(:lyclobal・lopside£urn(Yamanaka 1955). There are several noticeable species including calciphilous plants. such as Clematis sim。nsii. Sedum tosaense,Ribes  fasciculatum, Eriobotr:yajatonica. and Citrus tachihana.It is also noteworthy that Pr皿t4。s persicaand Prunus munie grow wild in limestone areas.

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