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心理学的診断における諸問題(1) -精神遅滞の診断と知能検査(2)-

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(1)

心理学的診断における諸問題(1)

 一精神遅滞の診断と知能検査・(2)

藤  修 (教育学部) 目

はじめに 知能とは;ピネーの知能観,ウェークスラーの知能観 知能の発達;児童一般の発達曲線,精神遅滞児の発達曲線 知能指数の恒常性;児童一般における恒常性,精神遅滞児における恒常性 知能指数の変動因  発達的変動因;家庭環境,教育効果,年令的波動,障害の原因,環境の文化的水準  測定的変動因;検者と被検者との関係,練習効果,指導効果,検査のしかた,非知的要因 精神遅滞児の知的特質  臨床検査としてのビネー法;項目分析,スカッター分析   (以上高知大学教育学部研究報告書第1部第31号に記載)  臨床検査としてのウェクスラー法(213) ;下位検査の心理的意味,ディスクレパンシーの分析,プ   ロフィール分析 知能の測定と診断( )  知能水準の確定( );検査結果に及ぼす要因,知能検査の種類と知能水準,知能水準の確定(生   育史,教育歴,家族歴,面接と観察,心理検査,身体検査)  知能特質の解明( );知能構造の特質,反応内容  精神遅滞の診断( );知能検査結果と精神科診断,知能検査結果と教育的処ぐう 引用・参考文献      ( )の数字は頁数

 2.臨床検査としてのウェクスラー法

 臨床検査としてのウェクスラー法ではディスクレパンシーdiscrepancy・の分析,分散分析並び

に知能プロフィール分析などがある.ディスクレパンシー分析とは言語性知能指数と動作性知能指

数との差から知能の特質をみようとするものであり,分散分析法は12個の下位テストの評価点がど

んな形で分散しているかをみようとするものである.また知能プロフィル分析とは直接に分散分析

法の方法は使っていないが,下位テストの評価点から描かれたプロフィールの特質をみようとする

ものである.

 1)下位検査の心理学的意味

 wiseの下位検査が測定しようとする心理的機能を要約すると,表28のようになる.下位検査

の心理学的意味についてはウェクスラー(144J品川(J03)久間(66≒コーエンCohen,

j.<"'などか

それぞれまとめているが,ここではグラサーGlaSSer,A.J.(36)の臨床的所見をあげておく.

         表28の1 wiseの下位テストの意味−言語性検査一        (グラサー)

一 般 知 識 仮説:子どものもっているいろい・ろの一般知識についての質問から成っている.ここにもられている   知識は,子どもが普通社会的に経験していれば,習得できるといったものである.一般的に個人   のもつ知識の範囲はその個人の知的能力の指標である.知的に高ければ高いほど,関心や好奇心   がさかんであり,また精神的な刺激を求めようとする傾向かある.したがって知的な子どもは知  i,識か豊富である, 機能ご子どもか周囲の環境から得た一般知識のmを測定.このテストの解答には間接記憶力‥理解   力,連合的思考力,関心,読書能力などを必要とする.

(2)

214 般 的 理 解 算 数 問 題 類 似 問 題 語 い

絵画完成

絵画配列

 高知大学学術研究報告 第2自巻 人文科学 一一一一一一一一   -        理 論 的 仮 説      心 理 的 機 能 仮説:子どもは,学校,教育,日常の生活経験を通じて,社会的,“道徳的”な行動のしかたを習得   する.本下位テストではいろいろの行動場面か設定されていて,それぞれの行動場面における理   解と判断の範囲は個人の知的水準を反映している.知的能力か高く,興味と好奇心の高い子ども   は,知識か豊かで実際的な社会的問題を解決する能力か高い. 機能:日常の社会的行動場面における,実際的判断の利用能力の水準,良心や道徳心の発達度などを   測定,    テストの解答にはいろいろの場面での,常識的な判断か必要であり,実際的な知識をもってい   ると同時に,過去経験を社会的に許容される仕方で許価し,利用する能力か心要.また言語的表   現能力も必要である. 仮説:本テストは,数概念の操作能力は知能のーつの基準であるという仮説に立つ.これは,文化的   水準は数概念の利用に関係していて,文化的に高い人は知的に高いという日常の観察からきてい   る. 機能:抽象的数概念の利用能力を測定.これによって認知能力を明らかにする.またこの問題をとく   には注意集中能力と関係抽出能力も必要.さらに言葉で抽出された問題を,計算できるような式   に変える能力も必要で,十,−,×,÷の意味を知っておく心要がある, 仮説:我々はすべて環境的な,または対人的事象に適応しようと,絶えず努力している.この場合に   我々は分類的に物事の関連を理解しており,これは知能のーつの尺度でもある.物事を類似的に   弁別するといった関連づけの能力は一般知能に関係している.知的に高い人は創造性や想像性が   豊かで,そのために,物事の本質的関係を見分けることかできる.・ 機能:木テストは事物間の関係を抽出する能力を測定する.さ,らに間接記憶能力,理解能力,連合的   思考能力,関心と読書力,物事または概念間の関係を見分け,それを言語化する能力などを必要   とする. 仮説:ことぱの定義は言語的なサイン,シムボルを使って観念を再体制化することを味意していて,   これは長い間,知能のーつの基準とされてきた.語いは学習能力,言語的知識,観念の範囲など   の尺度である. 機能:このテストは一般知識の最良の尺度である.これによって,学習能力,知識や観念の豊富さ,   言語の種類,描象的思考力,思考過程などか分かる. 仮説:木検査と一般知能との関係はもっとも小さい.しかし,すべての知的活勁には機械的記憶か働   いており,また本テストは低知能の弁別力か高く,さらに注意の集中,自我統制力,アテンショ   ンスパーンなどを測定できる,などの理由からwise にも取り入れられている. 機能:簡単な場面での,子どもの注意の集中力や直接的記憶のスパーンなどか測定できる.またこの   テストに成功するには,精神的機敏さや情緒の安定か必要.      表28の2 wiseの下位テストの意味―勁作性検査一        (グラサー)        理論的仮説       心理的機能 仮説:見なれた事物を視覚的に理解し,本質的部分と非本質的部分を区別して,本質的部分の欠落に   気づく能力は知能の指標である. 機能:見なれた事物,形,生き物などを視覚的に確認し,本質的なものと非本質的な’ものとを見分け   る能力がこのテストには必要.また注意力と集中力も必要. 仮説:特定のカード場面の内容を理解し,他のカードの内容と論理的に関述づけて一つの物語を作る   のは知能のーつの指標である. 機能:知覚,視党的理解,系列的で因果的関係にある事象の関連づけ,全体への結合力などか必要と   される.また社会的知能といわれる,社会的機敏さや常識も分かる.

(3)

積木模様 組  合  せ

符号問題

迷路問題  心理学的診断における諸問題(1) (佐藤) -一一 215 仮説:抽象的な二次元の幾何学図形を分析し,結合し,再生する能力は知能の一つの指標. 機能:抽象的図形の知覚,分析,総合,再生の能力,また論理的推理能力も空間関係の理解に働く.   非言語的概念形成,視運動的協応能力も測定される. 仮説:部分を結合して全体とする能力は知能の一つの基準である.部分の結合という点では積木模様   に似ているが,次の点でちがう.本テストの呈示刺激は積木とはちかい,抽象的な幾何図形でな   くて,見なれた事物であり,さらに図形を完成するには模写ではなくして,推論か必要である., 機能ご知覚,視遜動的な共応能力,簡単な組み合わせの能力などか必要.また部分と全体との関係を   視覚的に予測し,はじめ何か分らなかった目標を次第に明きらかにしてゆくといった柔軟性も必.   要.    本テストは日常生活の中にある材料を組み合せて,・全体に結合する能力を測定している.積木   模様とちがう点は積木模様は模様になるよう積木を組み合せていけぱよいが,本テストでは,各   図形のキーを見つけて,何を作っているのかを前もってはっきりさせておかねばならない. 仮説:シンボルと形,またはシンボルと文字との結びつきを覚え,一定時間内に紙と鉛筆で再生させ   る能力は知能の指標である, 機能:視連動的巧緻性,特に鉛筆の操作能力が必要.また呈示材料を一定の関連をもつ文脈の中に取   り入れる能力も必要.連合速度とその正確さか木テストの決め手. 仮説:前もって見通しをたて,紙迷路で正確に移行する能力は知能の指標である. 機能:本テストには目標と見通しをたてる能力,鉛筆を紙から離さないように,などの教示への注意   力,鉛筆の操作能力,すなわち視覚運動の協応能力,早さと正確さの能力などか必要とされる.

2)ディスクレパンシー分析

(1)一般的傾向

ウェクスラー法の特徴の一つは言語性知能指数

5 0 4 0 3 0 2 0 10 ︵%︶ V・−55 −45 1  |  I P −46 −36 N 1 10

F―IQ,動作性知能指数P-IQ,全検査知能指

数F−IQの3種が算出できる点にある.V−

IQとP−IQの差をディスクレパンシー得点,

N=572 discrepancy

score (以下D得点という)とい

     う.D得点は知能診断ではよくとり上げられて

2511679 一  一 3512623 一  一 -15−5 15  |  |  | −6  5  6 127 181 118     42.1      ; 図13 精薄児のD得点分布(品川) 35−263 rD roo <M r-l CO いる.  精神遅滞児のディスクレパンシー分析の研究 では言語性知能と動作性知能のいずれか優位で あるかに関心が向けられてきた.これを最初に とりあげたのはシーショアSeashore, H.B/"' で, wiseの標準化対象児としての,55名の精 薄児の結果を分析した.その結果,動作性優位 (P>V)は30人,言語性優位(V>P)は22人, 残り3人は差なしであった.その後,多くの人 がこの問題をとり上げ,精薄児ではVくPの傾 向があるという結果を得た研究が少なくない.  品川(104・105)はD得点とパーソナリティ特性 との関係の研究の一環として精神薄弱児をとり 上げたが,図13(104'のように,精薄児では動作 性優位となっている.後述のように, wiseの 標準化では言語性得点と動作性得点との間には

(4)

216 研  究  者 ソムプソン(129)   1962 ヤ  ツ 1951 グ(149) ア チ ソ ン(9)   1955 野(56) ア ル パ ― (6)   1967

高知大学学術研究報告 第28巻 人文科学

   表29 言語性知能と動作性知能の比較

対象数 年令平均 - 309  11 - 40  12 - 80 9:6 -165 713 平均 SD 一 平均 SD 平均 SD 一 平均 SD 一 平均 SD 全検査 07.74 10.91 59.0 12.4 69以 − 54.4 − 62.73  9.52 I 一 言語性 - 69.35  ■7.18 - 67.75  10.60 - 66.3  6.5 56.6 − 63.86  8.70 一一 動作性 - 72.12  9.04  59.40 12.40 - 56.8  8.7 61.1 − 68.21 12.12 D得点 一 一2.77 + 8.75*   * 一 + 9.5 *   * -4.5 4.3 * * 備 考 黒人先天性梅毒児 黒 人 施設児 ア ノレ ノヽ? ― (4)    1958  30 13: 6 平均 SD 54.4  6.96  60.3 − 7.66 52.1  9.08 十8.2

施設児

シ ャ ー プ(107)   1957  50 8∼16才 平均 SD 64.38 12.15 64.70 16.69 69.70  9.30 -5.0 *    *

特殊学級児

ウェクスラー(141)   1941 134 10∼49才

平均

SD

IQ50∼65の対象

者を評点で比較

VくP

ウェクスラー法 スローアン(113)   1945 50 21才 平均, SD

平均IQ66の対象

者で

VくP ウェクスラー法 ロ ー ゼ ン(S9)   1968 49 11才

平均

SD

68.8 11.1 67.2  7.9 73.7 13.5 -6.5

施設児

ス タ シ イ(117)    1951  70 11 : 11

平均

SD

66.1  8.48 66.6  7.0 71.6 10.9 十6.0

学 校

ス タ シ イ(118)   1955  150 12: 6

平均

SD

68.35 11.86 70.25  8.22 73.29 13.81 −3.04

学 校

フォンダホスト(137)   1953 38 15 平均 SD 62.18  7.17 61.74  7.15 70.05  9.92 -8.76*    * ウ ェ ッ プ(HO)   1963 20 15

平均

SD

67.87  7.36 68.37  4.30 73.63 11.67 −5.26

黒 人

スローアン(U2)   1951  50 13: 5 平均 SD 58.3  9.5 59.7  6.2 64.6 12.7 -4.9

学 校

東   (10)  62 7∼17 平均 SD 61.2 12.04

65.21

12・94

67.1-9 11.75 -1.98

養護学校

ノ々  ロ  フC13)     1959  53 13: 0 平均 SD 62.6  9.8 63.3  8.5 68.9 12.2 −5,6

家族性精薄

(5)

ワ ッ ト レイ(145)    1957 サンダーロック(95)    1952 心理学的診断における諸問題(1) (佐藤)       -7 0 − -90 10∼16 平均 SD 平均 SD 76.89 一 一 59.0 11.4 75.07 − ・ 62.8  9.7 83.31 一 一 62.6 12 4 -8.24 十〇.2 小学校 病院内学校 217

差がないようにデザインされていることを思うと,精薄児では動作性優位の傾向が強いように思わ

れる`.この点について他の研究の概要をまとめると,表29のようになる.これを通覧すると,言語

性優位という結果のものもあるか,全体的傾向としては動作性優位となっている.このことから精

薄児の知的特性について次のように説明されている.すなわち,言語性知能は抽象的能力を,動作

性知能は実際的・具体的能力を意味しており,精薄児は抽象的,言語的能力に劣り,動作的,具体

的能力に優れているao3)しかし実際に,はサラサンSarasan,

S.B.(92)や大西(81)もいうとおり,動

作性知能検査の実行にも,言語的機能が自己一言語化の過程として働いていることはいうまでもな

い.ただ,動作性知能検査は言語性のそれに比べて自己一言語化が動作に随伴して生じるので,

言語自体を駆使して思考をすすめなくてもよいので,それだけ精薄児でも動作性検査が容易と予想

される.さらにwiseを臨床的によく用いた人なら,誰でも知っているように,精薄児は言語性

よりも動作性問題で積極的,能動的に取り組む傾向かある.これらの,いわゆる非知的要因の働き

が一部には機能的に動作性優位につながっていることも否定できない.事実,蛯崎(4

2)らは非行少

年を対象に情意の変化とwiseの変化との関係を研究し,情意機能がよくなると,言語性知能が

アップするといい,久保田(59)は特殊学級児を追跡テストし,対人的情緒の安定などが言語性知能

のアップにつながるという.

 (2)知能水準とディスクレパンシー  精薄児の言語性と動作性の差に関する,次の問題は知能水準によってどんな特色がみられるかと いうことにある.臨床的経験によると,高水準の知能をもつ子どもにみられるように,知能水準  (具体的にはF−IQ)が高くなるにつれて,V−IQが優位となる傾向がある.精薄児についてみ ると,まず品川(104;は精薄児574名をIQ別に分けて,言語性と動作性の関係を明らかにしてい        表30 知能指数段階別V−IQとP−IQの優位性の比較     ( )は% I Q 25-29 30-39 40-49 50−59 60−69 小 計 -70-79 80−89 一 小 計 10以上 0 4 7 C O               1 15 − 39 − 34 6 − 40 V−IQの優位

10以下│  計

L O C 5 O C < I     1 2 2 32 − 89 − 48 13 − 61  5 (12) ;;jc4o.2) 35ぐ37.6タ 47ぐ39.2; -128ぐ39.9) 82 C48. O;〉 19 (33. 9) 101 C44.5) V- IQとP- IQの関係    P−IQの優位 10以上 o C S l C O           2 33 46 -104 -44 22 -66 10以下 - 1  11  23  24  22 - 81 - 41  13 - 54 計 -1 (-14) 2〕(57.3) 57 (61.2) 68 (56.7) 1 (14) 1〕にo) 1 C 1.2) 5 C 4. 3) 185 (57.6)ト 8 C 2. 5; 85ぐ49.7) 35 C62. 5; -120 C52.9) 4 C 2. 3) 2 C 3. 6; 6( 2 6川 計 7 ClOO) j:〕 (100) 93 ClOO) 120 ClOO) -321 cioo; -171 ClOOタ 56 ClOOタ -227 cioo;

(6)

218        高知大学学術研究報告 第28巻 人文科学 る.表30によると,重度(25―29)を除いていずれも,動作性の優位がうかがえる.重度について は例数も少なく,またwiseでは適切に検査することも灘しいので,ここでは一定の傾向は指摘 できない.  バンダーホストvanderhost,L.(137)も対象児を軽度と境界線に分けてこの問題を検討し,いず れも動作性優位を明らかにしている.すなわち,軽度ではV―IQ 63.6, P―IQ 65.4,境界線で は71.8と82.0となっている.

 (3)障害発生因とディスクレパンシー

 精神遅滞の発生因とディスクレパンシーとの関係は器質性organicityの有無の鑑別の資料の一

つとして取り上げられることが多い. ニューマンNevvmam,

j.Bア6’は231名の精薄児(CA7才∼

       16才,

IQ50以上)を家族性,未分化性,脳損傷

表31 発生類型と知能指数(ベック) 分 類 器 質 性 (12 才) (21 名) 匹 器質性の疑 (10 才) (48 名) 一 非器質性(A) (11 才) (29 名) 一 非器質性 (10 才) (11 名) I Q -FIQ V I Q P I Q 一一 FIQ V I Q P I Q -FIQ V I Q P IQ -FIQ V IQ P I Q I  Q      一 平 均  S D       - 56.34  10.14  62.44  11.00  58.00  11.91 一一  61.33  11.15  65.70  10.46  62.94  13.32  69.38   9.57  70.76   8.89  74.21  13.11  69.40   8.20  73.50   9.75  73.05  12.50 性の3・群に分けてwiseを実施し,前2者では 動作性優位の傾向かみられるが,脳損傷性では 言語性と動作性との間に差はなかったという.  ベックBeck, H.S.<"'らは器質性,その疑 いのあるもの,非器質性の3群の精薄児で表31 のような結果を得ている.器質性精薄ではV >P傾向か認められ,両IQの差は有意である という.これに対して,非器質精薄ではV<P の傾向かある..  器質性の有無とディスクレパンシーとの関係 に・ついてはI,内因性または家族性の精薄ではV <P傾向かあると,ほぼ一致した結論がでてい るか,器質性精薄についてはV>Pの傾向を 指適しているもの(6・16・8o・142)と,差かないとす るもの(lo・7°'とがある.しかし器質性精薄にお いてV<Pとの結果を得ているものはないよう である.

 5)プロフィール分析

 これはwiseが診断性検査としてもつ特性の一つで,プロフィールから知能の構造を明らかに

し,診断や指導に役立てようとするものである.おおまかにいうと,ビネー法のスカッター分析に

相当する.       ト '‘

 (1)精薄児の知能プロフィール      .

 プロフィール分析の第一の関心はwiseの下位検査の実行に特色があ'るかどうかである.ベル

モンドBelmont,

I.‘17)は軽度精薄児71名と正常児49名について表32のようなwiseの下位得点を

得ている.精薄児で難しい下位検査は語い,算数,一般知識などで,反対にやさしいのは組合せ,

積木,絵画完成などである.正常児では算数,類似,数唱などがやさしく,符号,迷路,一般的理

解などか難しい.

 正常児と精薄児の下位検査の特質をさらに明らかにするために,両群の下位テストを直接に比較

すると,図14のようになる.図のOの基本線は,正常児につい七各下位検査の平均からの逸脱度を

計算し,これをoとしたものである.そして図示されている精薄児の棒グラフはこのOを基点とし

(7)

心理学的診断における諸問題(1) (佐藤)       -表32 正常児と精薄児の下位テスト得点 219

卜Jに二

。、卜

-算 類 語 数 般 般 数 似 い 唱 知 理 間 間 間 間 絵 画 完 絵 画 配 積 木 模 組  合・ 符 号 問 迷 路 問 -F-IQ V- 10 P- IQ

平均 10.6  9,4 12.6 11.5 11.0 11.5 11.4 11.1 8   9   6   5   I   I   I     9 0   9   9   9 1 106 107 103 順 位 O O C s J ■ ^ H       1 2.5 6 2.5 4   5   7   9   0   1                       1   1 平 均 4.2 3.9 4.0 0 8 0  1 3 4 0 5 1り 5 2 5  5 4.5 6 4 4 61 63 65 順 位 9   1       1 1 0 U-1 >-f2 4 CNl -^  ゝ 1 3 7.5 2   1 6 7.5

て,精薄児について下位テストの平均からの逸脱度を表示したものである.図から分るように,精

薄児では6個の言語性検査のうち5個に相対的な弱さがみられる反面,6個の勁作性検査のうち4

個で相対的な強さがみられる.したがって精薄児は正常児に比べてIQが低いのみでなく,知能

構造にも特殊性があって,言語能力verbal

skillに関連した知的機能に劣ることが明らかである.

ベルモンドの解釈とは別に,これをバウマイスターBaumeister,

A. A.<"'の因子分析的研究の結

果から解釈すると,精薄児は一般知能や言語的能力を必要とするテスト項目に弱く,動作的,知覚

的能力を要する項目に強いといえよう.

 ガーラーエGallaghet,

J. L.ら36(a)は優秀児(F−IQ

125∼145) ,普通児(F−IQ90∼110).

遅滞児(F―IQ40∼75)のwiseを分析し,遅滞児は優秀児とは反対に,語い,一般知識,絵画

配列などで最も成績が悪く,組合せ,数唱,絵画完成などで成績か良いことを明らかにした.これ

は精薄児は知覚能力perceptual

organization を必要とするテストに優れ,言語的能力を必要とす

るテストで劣っていることを示しているとした.

 ソンプソンThompson,

j. M.<""は優秀児400名(CA10才,

IQ

133) ,遅滞児309名(CA

10

才, IQ68)にwiseを実施し,その結果をガーラーエらの方法で分析した.結果はほぽガーラー

エらに一致していて,優秀児は類似,一般的知識,一般的理解などで高い得点を示し,反対に符

号,絵画配列,組合せなどで低い得点を示した.一方,遅滞児は絵画配列,積木模様,組合せなど

で高い得点をとり,一般知識,語い,算数などで低い得点を示した.

 ソンプソンとガーラーエの結果には多少の差はあるが,大きくは次の点で一致している.すなわ

ち,優秀児は言語的理解能力を要する検査項目で強さをみせ,知覚能力を必要とする項目で相対的

な弱さを示している.他方,遅滞児はこれと反対に,知覚能力を要する項目に優れ言語的能力を要

(8)

220 高知大学学術研究報告 ,第28巻.人文科学. + 2.4  2.2  2.0  1.8 s o   4   −   ・ I   I C V l C >   I   I 1   1  0.8  0.6  0.4  0.2   0 −0.2 −0.4 −0.6 -0.8 0 CM  一 一1 1 一 一 -1.4 -1.6 -1.8 -2.0 -2.2 −2.4 一般知識 一般理解 算数問題 類似問題 語い問題 数唱問題 絵画完成 絵画配列 積木模様 組合せ 符号問題 迷路問題

       図14精薄児の逸脱度

する項目で劣っている.

 以上の外に,精神遅滞児のwiseのパターン分析にはいろいろの研究がある.それらを序列法

で示すと,表33のとおりである.数唱問題と迷路問題は代替問題であるので,省略してあるが,こ

の表を通覧すると,ほぼ一致した傾向がみられる.すなわち,精薄児に最も難しい問題は語い,算

数,一般的知識などであり,反対にやさしいのは組合せ,絵画完成,積木模様などの問題である.

これらの傾向を因子分析にみると,さきに述べた因子分析的解釈と同じになるだろう.

 (2)知能水準と知能プロフィール

 精神遅滞児のプロフィール分析の結果は知能水準にも関係があることか予想される.品川(108)は

574名の精薄児を知能水準からIQ40∼49,

50∼59,∧60∼69, 10∼79の4群に分けて,知能構造を

とり上げた.それを基礎にプロフィールをまとめると,図15のようになる.全体の曲線を含めて各

曲線はよく似ている.代替問題をのぞくと,言語性では一般的理解と類似が比較的やさしく,算数

と一般的知識は難しい.動作性では積木模様と絵画完成が比較的に容易で,絵画配列と符号が難し

い       ` '

 この品川の結果は天野の研究(7'ともほぽ一致しており,精薄児の知能プロフィールに関しては知

能水準による大きな差は少ないように思われる.またアルパーalper,

A. E."'も713名の施設精

(9)

サ 研  究  者 ンダロック(95) ダ19夕19 19 19ンぐ ぐイぐ ぐ バ ス フ バ’ フ ウ ガ イmエ ぐ   ぐ ア ノレ   (19 ベル   (19 品   (19 ノヾ   (19 児   (19 佐 tスト(137) 1 ミ _C118) ^ N ・ ' ^ v -" " N . ^ ^ 5 5 ン 5 8 0 5 9シ 6 0 レー(32) ヤー(33)   ツ 6 3 )   ナ 6 5 )   ノ ヽ e 6 7 ) プ(HO) −(6) マ 67) 66) □ 59) 54) 東 C1957; ント(17)  川(106)  フ(13) 藤(96) 一般知識 一般理解 算数問題 類似問題 単語問題 数唱問題 絵画完成 絵画配列 積木模様 組合問題 符号問題 迷路問題

心理学的診断における諸問題(1)

(佐藤)

   表33精薄児のソヽeターン分析

対 象 数 年 0   8   0   a \ Q /   C O U -> ( O               1   3   5 3 1 0 0   2 0 2 0 0 7 1 3 7 1 5 7 4 5 3 6 5  令 -10-16 11-16 7 −16 8 −14 8-14 9 −16 8 −16 13-16 6 −14 5-16 8−10 9 −16 FIQの 平均 SD 14 一  一 7 10 2 36 H 評価点  1 59  11 62  7 68  12 68  7 63  10 57  8 68  7 67  8 63  10 61  10 62  − 63  9 69以下 61,乙 12 58  12 49 3  一 〇4    9` N = 74 0→こ)全体 下 位 − ア ス ト 221 迷路問題 符号問題 組み合せ 積木模様 絵画配列 絵画完成 − 数  唱 語  い 類似問題 算数問題 一般理解 一般知識 9   7   8   9   8   7   8   0   8   7   7   8   7   3   7                                               I 5 9 7 4 5 7   8 1 0 . 1 0   7 1 0 7 7   9   8   0   7   9                   1 ” 1 0 5  50−59 4   5  N = 95 1 0 4 3 4 6 1 0 5 1 0 6 4 4 5 0   4   9   6 1 8 1 0 9 8   9   9   9   9   0                           1 0   6   9   6   5   3 1 ●゛`、    ご・ 60−69   6   N = 120 70−79 7 1 2 2 1 2 1 2 2 2 3 3 2 3 4cノ1 6   4   5   7   6   6   5   8   5   6   8   6   0   1   9                                                               1 3 6 6 3 8   9  N = 171 Total 574 2 1 1 2   1   2   3   3   1   1   4   1   1   3   V £ 3                                                                         3 1 0 5   3 5 4 8 1 1 7 5   9 4   8 8   8 図15 知能プロフィール(品川)

(10)

222

高知大学学術研究報告 第28巻 人文科学

薄児について同種の研究を行ない,知能水準による知能プロフィールの差はあまりないと述べてい

る.

 (ろ)鑑別診断と知能プロフィール

 ① 境界線児との鑑別       ・

 精神遅滞の診断の実際で難しい問題の一つは精薄児と境界線児との鑑別である.ウェクスラ

(141)は成人用の尺度でIQ

50∼65のものとIQ66∼79のものとについて,下位テストの鑑別診断

的価値をあきらかにしている.それによると,両者の差は数唱問題以外の下位テストにはっきりと

認められ,特に積木模様と類似問題の結果の差は大きく,最も弁別力のあるテストだとしている.

表34 境界線児と精神薄弱児の比較(児玉) 下位テスト 一般的知識 一般的理解 算数問題 類似問題 単語問題 数唱問題 絵画完成 絵画配列 積木模様 組合せ問題 符号問題 迷路問題   N     評 I Q70-79 一一  6.38  7.21  6.54  6.88  5.17  6.75  6.38  5.71  7.67  6.33  7.17  6.17  50名  価  点 I Q69以下   4.11   4.65   2.91   4.94   4.36   3.21   5.49   2.60   6.04   6.13   3.44   4.70   65名 表35 有意差のある徴標   標       徴 1.一般知識一単  語 2.一般的理解一絵画完成 3.算   数一単   語 4.類  似一絵画配列 5.単  語一絵画配列 6.絵画完成一絵画配列 7.絵画完成一迷  路 8.絵画配列一位  木 9.絵画配列一符  号 10.積   木一迷   路 11.組 合 せ一迷   路 精薄児 - N  N  N  P  P P X N O P X 差 2.27 2.55 3.63* 1.94 0.81 3.54* 0.89 3.11* 1.63 0.20 3. 73* 1.47 境界線児 O P P N N X N X P N N

 wiseについてみると,児玉‘5゛'らはIQ

70

∼79の境界線児50名と精薄児65名に実施した結

果を表34のようにまとめている.精薄児は境界

線に比してすべての下位テストで劣っている

か,特に符号,算数,数唱,絵画配列で劣って

いて,これらの検査から両者を弁別できるとし

ている・.一方,単語,絵画完成,組合せでは両

群間に大差はない.

 天野(s)も精神薄弱児と境界線児との知的差を

とり.あげ,表35のような結果を得ている.天野

はIQ

40∼69の精神児q3名とIQ

70∼79の境

界線児47名を対象に,W!SCの12個の下位検査

相互について得点の差を求め,差が両群に有意

'にみられた組み合せを,表のように徴標として

まとめた.表中,Nとは差が−2以下になるも

のか多いことを,Pは差+2以上になるものが

多いことを,またOは差か+1∼−1の間にあ

るものが多いことを,それぞれ示す.またXは

差がP,0・,Nになる人数に差がないことを示

す.たとえば標徴1では精薄児群では一般知識

と単語問題の得点の差が−2以下になるもの

か多く/境界線見群では両テスト項目の得点に

有意差のないものが多いことを示す.この表で

みると,精薄児と境界線児とは知能水準がちが

うのみでなく,知能構造にも差があることが分

る.

‘② 器質性の有無の鑑別

 wiseの下位検査によって器質性の有無か鑑

別できるかどうかは,精神遅滞の類型的診断か

らも,重要である.

 ベック(15)は器質性精神薄弱児と非器質性精

薄児115名にテストし,各個人について下位検

査得点の平均を求め,その平均と各テスト得点

の差を算出し,下位テスト得点を分析,比較し

(11)

       心理学的診断における諸問題田 (佐藤)        225

た.それによると,知能プロフィールには固有の傾向はみられなかった.その後,ベック(16)は脳

波測定結果とけいれん発作の有無から精薄児を器質性と非器質性に分けてwiseの下位検査を検

討したところ,器質性の精薄児は非器質性よりも,下位検査の得点の分散が大きかったという.こ

のときの分散は最高得点の下位検査と最低得点の下位検査の得点の差として測定されている.

 東(10)は内因性精薄児と外因性精薄児について,序列法に基づいてwiseの知能でロフィールに

特定の類型があるかどうかを検討したところ,否定的結果がでたと述べている.また大西(80)も

各下位テストについて内因性精薄と外因性精薄との間に得点の差があるかどうかという観点から,

この問題をとり上げた.その結果,ある対象群では有意な差がみられなかったが,別に新しく対象

群を作って検討したところ,言語性では一般的理解,算数,数唱,動作性では絵画配列,積木模

様,組合せ,符号,迷路のそれぞれで有意差がみられたという.しかもいずれにおいても,内因性

精薄が優れていた.この大西の結果は,両群のIQがかなりちがい,内因性の精薄児のIQがか

なり高いので,内因性と外因性の固有の差とはみられない.

 器質性の有無の鑑別についても,一貫した結果が得られていない. これには器質性の判別基準の

差,゛器質性の障害だとしても,その質的,量的なちがい,

wiseの分析方法のちがいなども,影

響しているように思われる.

      知能の測定と診断

 診断は医学的にも,心理学的にも臨床活動として治療とともに大切である.両者は相互不離の関

係にあって,治療は診断を前提としている.知能の診断も同じで,特に精神遅滞児における知能の

診断は重要な臨床活動であって,その結果は常に子どもの発達をすすめる方向に利用されなければ

ならない.

 精神薄弱に関する知能の診断では次のことが明らかにされなければならない.

 1L知能水準の確定

 2●知能の特質      `

 3.精神薄弱の診断

 1.知能水準の確定

 個人の知能水準は,一般的には標準化された知能検査で測定され,知能指数または知能偏差値で

表示される.一見これは簡単のようだが,実際にはそれほど容易ではない.その主な理由をみる

と,第一に知能検査の結果は子どもの知的能力のみでなく,いろいろの要因によって変動する.第

二に知能検査によって知能水準がちがうことも少なくない.

 1)知能検査の結果に及ぼす要因

 知能検査の結果に及ぼす要因は大きく分けて,子どもの側の要因と子ども以外にある要因,すな

わち内的要因と外的要因とになる.

 (1)内的要因:主なものをみると,次のようになる.

  器質的障害:聴力または視力の障害,手先きの機能障害,疾病,脳障害,一時的疲労など.粗

 大な障害で一見して明らかな場合もあるが,軽度で判然としない障害も少なくない.脳障害では

 注意の転動distraction,過活動性hyperactivity,固執性perseverationなどのほかに知,覚の

 異常がテストの実行に影響することもある.

  情緒の状態:検査への関心の有無,拒否癖I,恥しがりまたは自信のなさによる不十分な応答,

 おちつきのなさ,神経症やその他の精神障害などがテスト成績に大きな影響を与える.特に知的

(12)

224

高知大学学術研究報告 第2日巻 人文科学

 に問題がある場合には,情緒が不安定になりやすく,そのため成績が振るわないことも少なくな

 い.

  吃音,構音障害,言葉の不明瞭などの言語障害は応答への意欲を低下させることがある.

 以上,主な内的要因を挙げたが,知能検査を実施する場合には,テスト中の被験者の態度や動作

を十分に観察し,内的要因の有無を確かめ,それかテストの実行に及ぼした効果について十分検討

することが大切である.被験者の外観から簡単に内的要因が分る場合には,問題は少ないが,生育

歴の調査,身体検査,医学的検査,親との面接などを通じて内的要因が判明する【場合も少なくな

い. この意味においても,知能の診断は知能検査の実施だけでなく,広く個人の身心の状況を検討

する中で行なわれなければならないといってよい.

 (2)外的要因:主なものは次のとおりである.

  検査場面:検査室の整備状況,採光,騒音,机や椅子の状況,子どもと検者の坐る位置なども

 子どもの側の疲労や注意力の減退をもたらし,テストの実行に影響する.小・中学校で実施する

 場合には放課時間や給食時間にテストが行なわれると,子どもの遊びや食事への願望を高め,テ

 ストヘの参加度を低めることになるときもある.また時に検査机の上に使用中の,あるいは使用

 しない余分のテスト材料やテストの手引か放置されて,子どもの実行を阻害することもある.

  検査者の状況:検査者の態度,服装,しゃべり方など,検査者の個人的要因をはじめ,ラポー

 トの形成,検査者の検査に対する知識.経験,技能などの専門的能力,検査者の制限時間の誤

 認,判断の誤りによる採点評価の不適切などもテスト成績に作用する.ひどい場合には子どもの

 生活年令の算出の誤りもある.

 検査場面や検査者の側の要因は検査者自体の性格,配慮,努力にかかわることで,看過されがち

である.このため検査する人は他の検査専門家による他者検討やテープコーダーによる自己検討を

ときどき行なう必要がある.

 (ろ)検査自体の問題:現行の知能検査は知能を果して的確に測定しうるのかという,知能検査

の存在自体にかかわる問題もある.ある人は,知能の重大な側面である創造性は現行の知能検査で

は測定しえないといい,またある人は,現行の知能検査は理論的に考えられる知能をすべて十分に

測定していないという.これらの議論の解決は知能検査のみからできるものでなく,知能観そのも

のにかかわるもので,難しい問題である.しかしこのような議論かあることは,いろいろの心理検

査のうちで比較的に安定した尺度であるとされている知能検査でさえも,重大な問題をもつことを

暗示している.

 すべて現行の知能検査は,一応,心理統計学的に標準イビされたものである.しかし知能検査の中

には標準化の手続きに欠陥かあったり,標準化後の,時代的,社会的変化からみて不適切と思われ

るものもある.このような知能検査自体がもつ欠陥によって,知能水準の確定が難しいこともあ

る.

 2)各種知能検査と知能水準      ,

 一定の標準化手続を経ている知能検査を同一個人に適切に使用したからといって,必ずしも同じ

結果か得られるものではない.多くの場合,テスト結果,すなわちIQやSSがちがうことが少

なくないのか現実である.この原因の一つに標準偏差の大き岑を含めて,検査の構成のちがいがあ

る.

 この問題を精神薄弱の診断を中心にみると,まず集団検査と個別知能検査との関係がある.精神

薄弱児の診断に従事したことがある人なら,誰でも知っているようにに集団検査と学習成績から知

的遅滞の疑いがあるものを選んで,個別検査をしても,その多くが知的に正常という結果になるこ

(13)

0 1 1 9 6 8 8 6   6 9 2 6 5 1 7 3 0 9 5 1 6 68 14 8 0 6 5 1 7 F − 58 4 O J O S 6 1 6 62 7 −

心理学的診断における諸問題(1)

(佐藤)

とが少なくない.表36は幼児の結果である.こ

れは松坂(64)が5,6才の幼児(幼児用田中B

式知能検査を実施し,

IQ 75 以下のものを選ん

で,田中ビネーを実施した結果である.

IQ 75

1以下とされた120名の子どものうち,77名(62

%)が知的に正常範囲にあるとされている.幼

児だから特にこの傾向か大きいともいえるが.

小学生についても,この傾向は否定できないの

は臨床経験の教えるところである.すなわち,

我々の経験によると,集団検査で劣とされた子

どものうち,個別検査で同様の結果が得られる

のはほぽ2,

30%にすぎない.

 集団知能検査と個別検査の妥当性の問題は別

225

 表36 個別検査の結果  (松坂)

    _

I   Q I  男    女  |  計

 ∼ 59 60∼69 70∼79 80∼89 90∼99 100∼109 110∼119 120∼129  計I −   6   6   8 2 1 1 3 4   2   0           6 2   ’ 2 8 1 1 1 5 1 6   6 − 6 0 C V l O O 4   9 1   1 6   9 3   2 10  2 120

におくとしても,ここでいえることは,精神遅滞の診断には個別知能検査を使用すべきであるとい

うことである.

 次に,精神遅滞の診断によく使用されているビネー法とウェクスラー法との関係についてみてみ

たい.一般に,ビネー法は言語性のテスト項目に重点がおかれているといわれ,

wiseは言語性

と動作性とに分けられている.したがってビネーの結果はWISCの動作性よりも言語性の結果と

関係が深いと考えられる.さらにwiseの標準偏差は15であり,ビネー法のそれはスタンフォー

表37 ビネーIQとwise

IQ

との関係

研  究  者  D イ95  G ネ ス ス ノレ(75) ローアンCn2) C1951J タ シ C1921) −(U7) サンダロック(95)   C1952; シ ャ ー プ(107)   C1957) □ − ル ス(88) C1962) タG ス  シ ― (118) 955) バンダホスト(137)   C1953) 年  令 104 4 0 7 0 9 0 5 0 46 150 19 9∼16 9∼16 7∼16 10∼16 8∼16 9∼16 7∼16 11∼16 平均等 ピネー I Q M SD  「 M SD  「 M SD  「 M SD  「 M SD  「 M SD  「 M SD  「 M SD  「 5 0 5 1 5 6   5 5 7 6 8 9 5 4 0 6 1 7 6 5 7 9 6 5 9   5 V 一 一 一 一 0 6 5 6   7

wise- IQ

   P

-一 一 5 3 4 6 1 6 72H一 67769 326616 300618 077715 5926 6 810 515 692rj 7 70121 627一 73 8 − 7010一

(14)

 226        高知大学学術研究報告 第28巻 人文科学

ドビネーで16,

TK式田中ピネーで16.7であって,ビネー法の平均はwiseよりも低いことにな

る.表37はwiseとビネー法の相関研究をまとめたものである.とれでみると,予想されたよう

に,ビネーのIQとwiseのV−IQまたはF―IQとは相関が高いが,これに比べて,

P―IQ

との相関は低い.

 また,ビネーのIQはwiseの3種のIQよりも,いずれも低い傾向がうかがわれよう.特に

P−IQはビネーIQよりもかなり高い・

 これらの相関的研究の結果は,

wiseとビネーとは理論的にはほぽ同じものを測定しているとい

えるが,両テストの間には一方のテストをもって他方のテストと換えうるほどの,実質的な等価性

はないことを示している.これを測定・診断論的にいうと,精神迦滞児の診断ではビネーとwise

を併用しても差し支えないといえる. というよりも,高木(131)もいうように.知能検査の結果はい

ろいろの要因によって変動するので,一種の検査で知能水準を決めるのは危険なことが多く,ピネ

ーとwiseを併用した方がよい・

 観点を変えて精神遅滞の診断におけるビネー法とwise法の限界をみると,一般的にwiseは

軽度精神薄弱の診断で比較的に安定した結果が得られるが,重度精神遅滞の診断には適さない.テ

スト問題が十分でないとともに,たとえば日本版wiseではIQ36以下は算出でき.ないようにな

っているためである.アメリカ版wiseではこれが46となっていて,それ以下のIQの算出に,

オグドンOgdon,

D. P.<"'の修正式,

F―IQ=

(SS) (

.727)+27.4やシルバースタインsilver-sTein, A. B.<""の修正式,

V―IQ=

(SS)

1.260十37.029,

P―IQ=

(SS)

1.393 + 30.336が使

用されていることもあるが,我が国ではこの試みにない.

 ろ)知能水準の確定

 前節でとり上げた原因をみても分るように,ある個人に知能検査を実施して特定の結果か得られ

たとしても,それがまちかいなくその個人の知能水準であると,即断できない.

 理論的には臨床的活動としての測定と診断とは分けて考えるのかよい.測定は観察や調査と並ん

で診断の先行活動である.測定は,臨床家などが,たとえば,叱ヽ理学か開発した客観的な人間理解

の一方法としての,知能検査を使って個人を客観的,静的に評定しようとする試みであり,診断は

測定資料やその他の資料をもとに,個人を主観的,全体的,力動的に理解しようとする試みであ

る. これを知能検査を中心に考えてみると,個人にあるテス・卜を実施し,その結果を一定の方法で

整理し,IQを算出し,中または劣など,と知能水準を決めるのは知能の測定である.診断はこの

あとに続く,臨床家の活動である.

 以上を具体的に述べると,ある子どもに田中ビネー法を実施しでIQ

65が得られた.同法の分類

段階によると,これは劣で,軽度精神薄弱の水準にあたる.ここまでは知能の測定である.このあ

とに続く活動が診断であって,具体的には.

IQ65は本当にその個人の知能水準の実態を明示して

いるかどうかを検討することである.この診断活動には知能検査の結果,反応内容の分析,後述の

知能的特質の分析,テスト中の子どもの行動の観察などりデータめ他に,次のものが参考にされ

る.

 (1)生育史の調査

 生育史は個人についていろいろのことを教えるが,知能水準の確定に関する情報としては子ども

の心身の発達がある.特に乳幼児期の心身の発達の調査は知能の発達水準に目ぽしをつけるために

は欠かせない.一般に精神薄弱児は心身の発達か一様に遅れる傾向がある.頭定期や始歩期をはじ

め,始語期も,基本的生活習慣,語い,情緒や社会性などの発達も知能の発達と関係が深く,精神

薄弱児ではこれらの発達も遅れがちになるレ

 おおまかにいって,心身の発達に関して精神薄弱児は正常児に比べて発達は全般的に遅れがちで

(15)

心理学的診断における諸問題(1)

(佐藤)

227

ある.これに反して,IQが精神薄弱のレベルにあって,知的遅滞がみとめられても,精神薄弱以

外の障害,たとえば,自閑症,失語症,絨黙症などの場合には,生育史からみると,全体的にか,

または部分的にか,身心の発達が正常かまたはそれに近いことが多い. 知能検査の結果が低くて

も,全体的にみて生育史的に身心の発達が正常であれば,そのテスト結果は十分検討を要するだろ

つ・

 (ろ)教育歴の調査

 保育所,幼稚園または小学校などにおける対人的適応や学業成績の状況などは子どもの知能の発

達と深い関係にあることがある.学業成績についてみると,学業不振の原因は知能,性格,身体,

環境などいろいろの面に求められ,知能に原因があるのは一部であるが,普通以上の学業成績が保

持されている場合には,たとえ悪い知能検査の結果が得られても,それは知能の異常を示すもので

はないことは確かである.また対人的適応の失敗にもいろいろの原因があるが,知的遅滞もその一

つである.孤立したり,年少の子どもばかりと遊んだりする子どもの場合などに,ときにこれかみ

られる.

 (5)家族歴の調査

 両親,祖父母,きょうだいなどについて健康や疾病歴,学歴または学校への適応状況,職業的適

応,家族の間柄その他を聴取すると,子どもの精神発達について有意義な資料か得られることがあ・

る.

 (4)面接と観察

 子どもに面接し,表情や態度を観察し,さらにいろいろと質問をして,その反応を通じて子ども

の感情や知的状況を知ることも大切である.また面接で,頭蓋,顔面,四肢,皮膚などにういて奇

形や異常があるかどうか,観察の目を向けるのがよい.精神薄弱児には身体的異常または奇型がみ

られる場合かある.

 小さい子どもの場合にはプレイルームでおもちゃで遊んでいる状況を観察するのがよい.この場

合,身体のおおまかな神経,運動的機能や手指の働きなど微小な運動機能にも目を向けることか大

切である.

 (5)心 理 検 査

 社会生活能力検査やベンダーゲシタルト検査などの結果も知能の発達と深い関係をもつ場合かあ

る.三木(87)によると,社会生活能力と知能の相関は約0.86であり,またコピッツKoppitz,

E.M.

(576)の幾何学図形の模写能力と知能との相関は-0.85である. したがって,これらの検査によって

知能の発達も推則できる場合がある.しかしこれらの能力は生活環境に左右されることも大きいこ

とを常に知っておく必要がある.     \

 (6)脳波測定を含む身体検査

 医学的検査の中で最もよく知的発達を示すものは脳波測定の結果である.特に,外因性にして

も,内因性にしても,精神薄弱児では脳波的にいろいろの特性を示す場合が多いといわれる.設備・

の有無や経費などから,これはすべての子どもに実施することはできないが,現在ではルーティン

な医学検査の一つとなっている.

 以上.簡単にみたが,知能検査による知能水準の確定も,単に測定の段階で終ることなく,いろ

いろのデータを集めてケーススタディ的に行なう必要がある.このようにして確めた知能水準も不

変というものでなく,教育やその他の状況によって変化しうることは常に知っておかなければなら

ない.

(16)

 228       高知大学学術研究報告 第28巻 人文科学

 2.知的特質の解明

 さきにもみたように,精神薄弱児は知能水準か低いのみでなく,知能の構造にも特殊性があると

いえる. したがって知能検査による精神薄弱の診断にも知能特質の解明は欠かせない・

 1)知能構造の特質

 既に述べたように,田中ビネーでは主として項目分析やスカッター分析を通じて,またwise

ではV−IQとP−IQの差または知能プロフィールなどを通じて知的構造の特質が明らかにな

る. したがってここでは今までに触れなかった,知能構造または特質の解明における,診断論的問

題の2,3について述べたい.      j

 スカッター分析に関することであるか,精神薄弱児の知能プロフィールは正常児に比べて,不均

衡の傾向が大きいかどうかが時々とり上げられる.林(3S)│はIQ・57∼72'の中学1年の精薄児と正常

児に田中ビネーを実施し図16のように,精薄児の知能プロフィールでは不均衡か大きいことを明ら

図形の記憶 精神薄弱児 (aMす)   −−一一正常児      (CA 12オ) i(話) の不−一一正常児 戸理   (cA 8才) の記憶

      図16 精神薄弱児と正常児との比較べ田中びね一式検査合格率)

かにした.すなわち,正常児のプロフィールはいずれも,大体円形に,すなわち,正常児ではいず

れも各問題で1,2才の差かあるにしても,年令相応の問題が解決されていて,プロフィールは大

体円形になっている.これに反し,精薄児では各問題で年令以下の問題しか解決されておらず,し

かもMAに関連してみると,文の記憶7才級から,数概念と図形の記憶11才級まで広く分布し,

プロフィールはだ円形に近くなっている.

 ジャスダックJastak,

Z.<"'は知的可能性指数Altitude

Q‘uotient(AQ)の考え方を導入して,

操作主義的に検査結果から精神薄弱を診断しようとした.彼によると,知能は可能性capacityま

たは潜在能力latent

power を意味し,これは最高得点をとった下位検査に表現され,その成熟水

準をAQとした.そして精神薄弱者はいずれのテストにおいても同性,同令の者に比べて2,3

(17)

心理学的診断における諸問題(1)

(佐藤)

229・

パーセッタイル以下の得点しかとらないとした. 図17に示す3例はいずれもIQは62で,得点か

らすると,精神薄弱である.しかし知能プロフィールのパターンをみると,Aは語い得点(AQ)

で97で,正常に近く,Bの絵の不合理得点は103で,正常である.これに対し,Cの下位テスト得

点はいずれも70以下である.ジャスタックによると,精神科診断ではAは「知的に正常,分裂性性

格」で,Bは同じく「知的に正常で」,「精神病質人格」であり,cは「遺伝性精神薄弱で性格的

に安定している」・,

描画 ・・・-・-・・

算数  1 133   1 絵の不合理 語い

・・・・・-       図17 1QとAQ

 武藤(^3>はジャスタックの理論をwiseで検討している.彼は精神薄弱児施設にいる36名を対象

にとり上げ,図18に示すように,そのう.ち9名について事例報告している.施設入所後の発達の経

過などから,AとB児は正常児であったといい,

E,F,Gの3児も精薄児ではないとした.そして

本当に精薄児といえるのはC児であるとした.

 武藤の結果には臨床心理学的ないし精神医学的診断の結果がないので,問題かあるが,ジャスタ

ックの考えをとり入れてみたところに,意義があろう.

 ジャスタックの診断論はドルと同じく,精神薄弱を欠陥とおさえ,しかも操作主義的な精神薄弱

の概念規定に立脚している.この理論が臨床的に有効かどうかは今後,検討を要する問題である

が,我々の臨床的経験に一致するところもある. すなわち,たとえばwiseで精神薄弱レベルの

IQが得られても,下位検査の中に評価点10に近いか,またはそれ以上の得点がみられる場合に

は,その後の再検査で確めると,IQは正常に近ずく傾向がある.事実,足立(■tl)はwiseでF

―IQ79以下の子どもについて,①V−IQとP−IQのいずれかが8o以上,②下位テストの評価

点に10以上のものが一つある,③指テストの結果が当該グループの平均以上にあるという3条件を

設定して,3年後に再テストした.その結果によると,これらの3条件のいずれもみたしていない

児童のIQはいずれも精神薄弱レベルとされている79以下であったが,いずれかの条件にあてはま

る者では79以下にとどまっていたのは66.7%であるという.

(18)

250 積 木 高知大学学術研究報告 第28巻 人文科学 A児(71・94・70) 。 知識 、、。 D児(53・65・53)    知識  . 数唱 G児(40・77・64)   知識 数唱  図18  註

n

SB

B児(70・80・76) ,n 知識 数唱 E児(58・84・67)   知識 数唱 H児(58・77・63)   知識  _ 数唱 wiseの知能プロフィール 1.大円は評価点10,小円は同じく7を示す, C児(54・64・53) F児(65・78・68) I児(73・64・64) 数唱

      2.( )内の数字はV-SQ,

P- IQ,

F- IQを示す.

 以上,知能構造のプロフィールについて3者の意見をみたか,共通していえることは,精神薄弱

児は下位テストの殆んどすべてで年令以下の得点をとっており,反対にいずれかのテストで年令以

上の得点が得られた場合には,精神薄弱と診断するには疑問かあるので他のデーターとともに検討

すべきであるということである.

 知能構造の診断論的問題の最後にwiseによる知能構造でよくとり上げられるV−IQとP一

一IQの差,すなわちD得点の診断論的問題について若干のべておく.

 D得点が知能構造の診断でよく問題にされるのは次の理由による.すなわち,これは大多数の人

ではD得点はOまたはそれに近いことが仮定されていて,D得点かある程度以上に大きい場合に

(19)

心理学的診断における諸問題(1!

(佐藤)

は,平均からの逸脱が大きく,知的構造や知的

行動になんらかの診断的意味があるのではない

かということによる.事実,米国のwiseの

標準化の過程(102)では表38のように,

V―IQ平

均とP―IQの平均の差はOになるようにデザ

イツされている. しかし臨床の実際ではD得点

がOということは余りなく,大低の場合,いく

らかの差はある. とすればD得点かどの程度の

大きさであれば,臨床的に意味があるかが問題

となろう.まず米国のwiseの標準化対象(99)

についてD得点の分布をみると図19のとおりで

ある.これでみるとD得点は正常分布曲線をな

していて,対象児の3分の1では得点は12.3点

以上であり,3分の2ではO∼12.3点の内にあ

ることが分る.

 表39と表40は,フィールドFielc!,

j.G/""が

推計学的および臨床的視点からD得点の生起確

表39 異常性という意味のD得点 251 年 令 L n ' " ^ 7   o o 9 10  11  12  13  14  15 合 計 表38 D一得点   D一得点 1   5   4 c j < z >   0   一         一 0 , 2 0 . 0 0 . 2 e n C O 0   0 0,5 0,8 7 0 0 0 差のSD - 12.7  12.0  11.9  12.1  12.0  12.3  12.3  12.0  14.7  13.3  12.0  12.5 N=各年令とも200人

率を計算したものである.たとえば7,6才でD得点が10以上になるのは5回に1回偶然に起り,

15点になると,

100回に5回しか偶然によって起らない.

FREQUENCY 36 −30 −24 −18 −12 −6  0 +6 +12 +18 +24 +30 +36    図19 D得点の分布(5∼15才2200ケース)(シーショア) 表40 D得点の確率 毎集団でこの 程度の差か生 れる確率 - 50  25  20  10 5 2 1 1         0 7凭 - 9.0 15.4 17.2 22.0 26.3 31.2 34.6 44.1 年 10凭 - 8.0 13.8 15.4 19.7 23.5 ■28.0 31.0 39.5 令 13凭  9,4 13.1 14.6 18.8 22.4 26.6 29.5 37.6 差偶然におこ る確率 0 5 0 0 5 2 5 2 2 1 0 0 0 1 0 0 1 7凭 年 5.1 8,8 9.8 12.5 15.0 17.8 19.7 25.2 令 -10凭∼13易 9   7   I     ● 3   6 7.4 9.5 11.4 13.5 15.0 19.1

(20)

 2砲        高知大学学術研究報IL.∠堕28巻 人文科学

 以上の事実からみて,D得点が大体15くらい以上ある場合には臨床的に問題となるといってよ

い.事実,我々の臨床的経験(135)からすると,10以下く;らいの差では子どもの教科学習,関心,興

味,行動のしかたなどにそれほどの特色は生まれない.

 参考にV−IQとP―IQの差と脳障害との関係についてみると,既述のように,一般的に脳障

害をもっものはV<Pの傾向があるが,ホロイドHolryd,

jブ4oらによると,この差が25以上あっ

たとき, 66%のものか脳障害であったが,9以下の場合には脳障害と診断できたのは20%という.

この点についての諸結果は必ずしも一致していないが,V一LOとP−IQの差がかなり大きいと

きにはその原因を慎重に検討する必要がある.

 12個の下位テストからプロヽントされる知能プロフィールはどの子どもにおいても,凹凸かあるの

が普通である.しかし言語性検査と動作性検査のそれぞれにおいて,各個人について評価点の平均

から1標準偏差,すなわち3以上の差がある場合には,その下位検査の特殊性について検討する必

要があろう.

 2)反応内容

 知能検査の反応内容ないし課題解決過程にも,子どもの発達水準,経験,家庭の実態などか反映

されるのはヘウイトHewitt,

P.<"'の研究からみても,明らかである,たとえば,TK田中ビネー

検査法で「帽子とはなんですか」に反応できなかった子どもに,「帽子とはどんなものですか」と

きくと,正しく反応することが多い.また,それにも反応できなかった子どもに「帽子は何をする

ものですか」ときくと,正反応が得られる.これはwiseの単語問題についてもいえることであ

る.知的に低い子どもほど具体的に思考しがちである.さ.らにwiseの「指をちょっと切ったと

きにどうするか」に対して,「すぐ血止めをする.それでも止まらなかったらほうたいをし,また

病院へ行く」と答える.これは「ほうたいをする」と同じく,粗点は2であるが,その反応の奥に

ある知的な機能には大きな差があって,前者の反応はかなり知的に高い子どもでないと期待できな

い.「小さい子がけんかをしてきたらどうしますか」に対して,「なぐる」と反応すれば,攻撃的

な性格傾向がみとめられようし,また「パンを買いに行ってなかったら,どうするか」に対して,

かなり年長の子が「おかあさんにいう」と答えると√母への依存性も問題になるときがある.

 動作性検査の反応過程にも子どもの知的機能が反映する.たとえば田中ビネーのビーズ玉のひも

通し問題で,解決できない子どもの中で,一人の子はI無茶苦茶にひもを穴に押し込み,他の子はひ

もを一方の穴から他方の穴へと通そうとして,穴から出てきたひもの先きを他方の手の指で握って

ひっばることかできない場合かおる.どちらも不合格であるが.後者は前者に比べ,手段と目的関

係が十分理解されていなくて,知的発達の水準はかなり低いといえる.またwiseの組み合せ問

題の中,たとえば「顔」の組み合せで問題解決のポイントは右目と眉との関係を把握することで,

この関係が明らかになると,課題の解決は早い.「顔」の「ひたい」の部分の関係は多くの子ども

がすぐに理解するが,それか理解できなかったり,またはそれをロひげと誤認する場合には知的に

問題である場合か多い・

 このように,課題解決の過程や反応の内容の分析によっても!Q以外に,子どもの知的水準や知

的活勁の特質か明らかにできる.知能検査に習熟している者であれば,テストの進行につれて,こ

のような分析をし,IQが算出される前に,大体どれくらいの発達かか予測できるものである.

 3,精神遅滞の診断

 精神薄弱は知的遅滞を中核症状としているか,これは知能だけの問題でなく,いろいろの面にか

かわる障害である.知能検査のみで精神薄弱の診断を行なってはならない理由の一つはここにもあ

る. ここでは精神薄弱の診断における知能検査の問題の2,3をとり上げたい.

参照

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