外来通院で治療を受けている切迫早産妊婦の日常生活の困難とその対処
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(2) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. 3.研究対象者:今回の妊娠において、外来通院のみで. た。最終的に、カテゴリー間の関連を検討した。. 治療を受けていた切迫早産の既往がある妊娠37週以降. 対処については、困難のサブカテゴリー毎に類似. の妊婦とした。ただし、研究協力への同意を得た後、. 性・相違性に基づいて分類し、同じ意味内容を持つ. 面接予定日前に分娩となった場合、産褥入院中の面接. コードを集めて、内容を適切に表現していると思われ. に同意が得られていた研究対象者も含めた。. る名前をつけた。. 4.用語の操作的定義. なおデータ分析は、研究の真実性・厳密性を高める. 1)困難:切迫早産と診断され外来通院で治療を受け. ために、助産学及び母性看護学の専門家や質的研究の. ている妊婦が日常生活を送るなかで、困ったこと、 戸惑ったこと、不安や心配だったこと、対処が難し. 経験者にスーパーバイズをうけて行った。 8.倫理的配慮:本研究は、研究協力施設ならびに研究 対象者に対し、研究目的・方法、研究協力の自由意思. かったこと 2)対処:困難に対し、工夫したこと、困難を回避す. 尊重、匿名性の厳守等について文書と口頭で説明し同 意を得て実施した。また、宮城大学研究倫理専門委員. るために行った行動や考え 5.調査期間:2018年6月∼9月. 会(承認番号:宮城大第79号)及び、研究協力施設の. 6.調査内容と方法:半構造化面接法により、インタ. 倫理委員会(承認番号:135)に申請し、承認を得て 行った。. ビューガイドを用いて40分程度の面接を1回行った。 面接場所は研究協力施設内の個室を確保し、面接内 容は許可を得て IC レコーダーに録音し、その逐語を. データとした。面接内容は、①基礎情報(年齢、妊娠・. Ⅳ.結 果 1.研究対象者の背景. 分娩回数、同居家族、職業の有無と内容、産前休業の. 研究対象者は初産婦1名、経産婦4名であり、インタ. 取得状況)、②切迫早産診断時の状況(診断時の妊娠. ビュー時点において4名は妊娠37週∼38週、1名は産褥. 週数・症状、医師や看護職からの説明や指示内容)、. 4日であった。. ③日常生活を送るうえでの困難、④困難への対処であ る。. 研究対象者の属性と切迫早産診断時の妊娠週数・症 状、医師の指示は表1に示す。. 7.データ分析方法:録音した IC レコーダーから逐語. 経産婦のうち、2名は育児と介護のダブルケアに直面. 録を作成、その内容をデータとした。困難と対処に着. していた。. 目して切片化し、ナンバリングを行い、コード化した。. 2.外来通院で治療を受けている切迫早産妊婦の日常生 活の困難. 困難については、それぞれのコードの意味内容の類 似性・相違性に基づいて分類し、同じ意味内容を持つ. 外来通院で治療を受けている切迫早産妊婦の日常生活. コードを集めてサブカテゴリー化し、サブカテゴリー. の困難は、9つのカテゴリーに集約された(表2)。以. の類似性・相違性に基づいて分類しカテゴリー化し. 下、カテゴリーは【 】で、サブカテゴリーは〈 〉で. 表1 研究対象者の背景. A. B. C. D. E. 年齢. 20代後半. 30代前半. 20代前半. 20代前半. 30代前半. 経産. 1経産. 1経産. 1経産. 3経産. 初産. 夫. 夫. 夫. パートナー. 子(2歳). 子(3歳). 子(2歳). 子(5歳・2歳・1歳). 同居家族. 夫. 義父母 職業. 会社員. 会社員. 専業主婦. 専業主婦. 事務職. 診断時週数と症状. 34週 頸管長短縮. 25週 子宮収縮 頸管長短縮. 23週 子宮収縮 頸管長短縮. 26週 頸管長短縮. 28週 子宮収縮 頸管長短縮. 医師の指示. 安静. 安静・内服. 安静・内服. 安静・内服. 内服. 特記事項. 実父母の通院の送 迎・付き添いを実 施中. ― 46 ―. 義母が癌のため 通院治療中.
(3) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. 表2 日常生活の困難のカテゴリーと対処 困難のカテゴリー 医療者からの安静指示の不明確さ. 困難のサブカテゴリー. 対処. 医療者からの早産徴候の説明と安静指示の不明確さ 医療者に自分自身の安静度を質問する難しさ. 早産徴候の自己判断の不確かさ. 子宮収縮抑制薬の効果への疑問と副作用. 不確かさの解消のためにインターネットを検索する 自分なりの判断基準を決める 医療者には細かく質問しない. 切迫早産の自覚症状と早産徴候を自己判断する難しさ. 安静へ意識を向ける 胎動の有無や位置を判断基準とする. インターネット上の情報に頼った結果戸惑う. インターネット検索をし尽す. 子宮収縮抑制薬の効果への疑問. 指示通り内服する 副作用は薬の効果があることと捉える. 子宮収縮抑制薬の副作用のつらさ. 安静度を高めて内服を減らす 家族サポートを得て安静を保つ 妊婦健康診査に備えて期間限定で安静にする 症状の程度によって仕事を調整する. 家事・仕事に追われるつらさ. 子宮収縮抑制薬の内服時間の調整. 安静を維持する生活活動調整の難しさ. 身体的負担を調整して家事をする 何も対処できなかった 安静維持によるセルフケアの難しさ 切迫早産を肯定的に受け止める. 父母の病気療養による安静の難しさ. 父母の体調より自分の体調を優先する 実家のサポートを得る 夫のサポートを得る. 安静より上の子の世話を優先せざるを得ない. 上の子が不在の時間を安静に過ごす 上の子の昼寝を利用する. 上の子の世話と安静との折り合い. 上の子への対応を変える 上の子の発達段階に応じた世話の大変さ 上の子の遊びと自分の安静を保つこととの. 藤. 夫の切迫早産の症状および自宅安静に対する理解不足. 夫の切迫早産への理解不足と不十分な サポート. 夫が仕事のため家にいる時間が少なく頼れない. 他者に上の子との遊びを任せる 子宮収縮の程度を判断しながら上の子と遊ぶ 夫に説明して理解を求める 症状をアピールして夫の気遣いを促す 夫がいる時間に頼みごとを集約する 夫を頼れないことは割り切る 夫に任せずに家事が行える方法を探す. 夫の行う家事が自分の思い通りではないことの不満足感 行き届かない家事に目をつぶる 夫へかける言葉を選ぶ 夫が行う育児が自分の思い通りではないことの不満足感 家族サポートへの抵抗感. 夫より胎児を優先する意識をもつ. 家事への妻としての責任感. 夫の在宅の有無による生活の調整. 義父母との関係性による頼りにくさ. 義父母を頼らず自分で対応する 正期産に入るまで安静を遵守する 気分転換をする. 早産になることへの不安. 切迫早産であることを受け止める 過去の出産経験による安心感. 入院や早産への予期的不安. 胎児の成長発達の情報を得る 早産で生まれた場合の児に対する不安. 胎児の成長による安心感 病院の設備による安心感. 切迫早産による入院の可能性に備える予期的不安 公的・社会的サポート利用のしにくさ. 公的サポートの利用しにくさ. 入院の可能性に備えた準備 入院しないという気持ちを持つ 利用しにくいシステムは利用しない. 社会的ポートの利用のしにくさ. ― 47 ―.
(4) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. 示す。また、研究対象者の語りは「 」で示す。. 抽出された。. 1)【医療者からの安静指示の不明確さ】 切迫早産を指. 8)【入院や早産への予期的不安】 症状が悪化すると. 「先 摘された妊婦は、診断時の医師の説明について、. 〈早産になることへの不安〉を抱き、早産になった場. 生は上の子がいるのも分かった上で『入院難しいよ. 合の子どもの姿を想像することで〈早産で生まれた場. ね。じゃあ自宅で安静にしてください』だったので。. 合の児に対する不安〉を抱いていた。また、急な入院. 上の子の世話はしつつでいいのかな?ぐらいな感じで. の可能性があるため〈切迫早産による入院の可能性に. 捉えたんですけど」 と語り、〈医療者からの早産徴候. 備える予期的不安〉を抱いていた。. の説明と安静指示の不明確さ〉を感じていたが、〈医. 9)【公的・社会的サポートの利用しにくさ】 妊婦は、. 療者に自分自身の安静度を質問する難しさ〉を抱いて. 公的サポートについて医療者から助言を受けたり、社. いた。. 「ファミリーサポー 会的サポートを調べたりしたが、. 2)【早産徴候の自己判断の不確かさ】 外来通院治療を. トの登録もしようと思ったんですけど、登録のときに. 受けている切迫早産妊婦は、【医療者からの安静指示. 限って子宮頸管短めって言われると……。2時間ぐら. 「お の不明確さ】に困惑しながらも日常生活を送り、. いの説明あったりするんですよね。だからちょっと行. 腹の張りって言っても感じ方、人それぞれのようで、. けなかったりして。」 との語りのように、〈公的サポー. どういったことが危険な張りなのかっていうのが、例. トの利用しにくさ〉、〈社会的サポートの利用しにく. えば『カチカチになる』とか言われてもいまいちピン. さ〉があった。. と来なくて。」 の語りに見られるように〈切迫早産の. 3.外来通院で治療を受ける切迫早産妊婦の日常生活の 困難への対処. 自覚症状と早産徴候を自己判断する難しさ〉を感じ、 自分なりに解決策を求めて〈インターネット上の情報 に頼った結果戸惑う〉という困難を抱いていた。. 外来通院で治療を受ける切迫早産妊婦の日常生活にお ける困難への対処を困難のサブカテゴリー毎に分類・整. 3)【子宮収縮抑制薬の効果への疑問と副作用】 研究対. 理し、44通りの対処を行っているという結果が得られた. 象者5名の内4名が、子宮収縮抑制薬を内服しながら. (表2)。以下、対処を《 》で示し、困難のカテゴリー. も〈子宮収縮抑制薬の効果への疑問〉を抱き、内服を. とサブカテゴリー毎に記載する。. 続けることで〈子宮収縮抑制薬の副作用のつらさ〉を. 1)【医療者からの安静指示の不明確さ】の対処 《不確. 感じていた。. かさの解消のためにインターネットを検索する》、《自 、《医療者には細かく質問 分なりの判断基準を決める》. 4)【安静を維持する生活行動調整の難しさ】 外来通院. しない》の3つを行っていた。. で治療を受ける切迫早産妊婦は、安静指示を受けた が、家庭環境や就業状況により〈家事・仕事に追われ. 2)【早産徴候の自己判断の不確かさ】の対処 《安静へ 意識を向ける》、《胎動の有無や位置を判断基準とす. るつらさ〉、〈安静維持によるセルフケアの難しさ〉、. る》、《インターネットを検索し尽す》の3つを行って. 〈父母の病気療養による安静の難しさ〉があった。. いた。. 5)【上の子の世話と安静との折り合い】 研究対象者4 名が経産婦であり、乳幼児期の上の子の育児をしてお. 3)【子宮収縮抑制薬の効果への疑問と副作用】の対処 . り、〈安静より上の子の世話を優先せざるを得ない〉. 《指示通り内服する》、《副作用は薬の効果があること. 状況や、〈上の子の発達段階に応じた世話の大変さ〉、. と捉える》、《安静度を高めて内服を減らす》の3つで. 〈上の子の遊びと自分の安静を保つこととの. 藤〉が. 抽出された。. あった。 4)【安静を維持する生活行動調整の難しさ】の対処 . 6)【夫の切迫早産への理解不足と不十分なサポート】 . 《家族サポートを得て安静を保つ》、《妊婦健康診査に. 妊婦は夫を頼りにする一方、〈夫の切迫早産の症状お. 備えて期間限定で安静にする》、《症状の程度によっ. よび自宅安静に対する理解不足〉や〈夫が仕事のため. て仕事を調整する》、《子宮収縮抑制薬の内服時間の. 家にいる時間が少なく頼れない〉、〈夫の行う家事が自. 調整》、《身体的負担を調整して家事をする》、《何も. 分の思い通りではないことの不満足感〉、〈夫の行う育. 対処できなかった》、《切迫早産を肯定的に受け止め. 児が自分の思い通りではないことの不満足感〉という. る》、《父母の体調より自分の体調を優先する》の8つ. 困難を抱いていた。. を行っていた。. 7)【家族サポートへの抵抗感】 家族サポートを得て日. 5)【上の子の世話と安静との折り合い】の対処 《実家. 常生活を送る中で〈家事への妻としての責任感〉や. のサポートを得る》、《夫のサポートを得る》、《上の子. 〈義父母との関係性による頼りにくさ〉という困難が. が不在の時間を安静に過ごす》、《上の子の昼寝を利用. ― 48 ―.
(5) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. する》、《上の子への対応を変える》、《他者に上の子と. Ⅴ.考 察 困難の9カテゴリーの関係性をみると、 【医療者から. の遊びを任せる》、《子宮収縮の程度を判断しながら上. の安静指示の不明確さ】 、 【早産徴候の自己判断の不確か. の子と遊ぶ》の7つを行っていた。 6)【夫の切迫早産への理解不足と不十分なサポート】. さ】 、 【子宮収縮抑制薬の効果への疑問と副作用】の3カ. 「お腹を、 の対処 《夫に説明して理解を求める》や、. テゴリーは治療に伴う日常生活の困難であり、 【安静を維. あえてちゃんとアピール的に押さえてると(夫が) 『大. 持する生活行動調整の難しさ】 、 【上の子の世話と安静と. 丈夫?張ってる?』って言うようにはなりました。」. の折り合い】 、 【夫の切迫早産への理解不足と不十分なサ. の語りのように、《症状をアピールして夫の気遣いを. ポート】 、 【家族サポートへの抵抗感】の4カテゴリーは. 促す》、《夫がいる時間に頼みごとを集約する》、《夫を. 家族・仕事の状況による安静維持のための日常生活の困. 頼れないことは割り切る》、《夫に任せずに家事が行え. 難と考えられ、 【入院や早産への予期的不安】と【公的・. る方法を探す》、《行き届かない家事に目をつぶる》、. 社会的サポートの利用しにくさ】は独立した困難と捉え られる。また、切迫早産の治療に伴う日常生活の困難と. 《夫へかける言葉を選ぶ》の7つを行っていた。 7)【家族サポートへの抵抗感】の対処 《夫より胎児を 優先する意識を持つ》、《夫の在宅の有無による生活の. 家族・仕事の状況による安静維持のための日常生活の困 難は、入院や早産への予期的不安に影響しあっており、. 調整》、《義父母を頼らず自分で対応する》の3つで. 医療者からの安静指示の不明確さや早産徴候の自己判断. あった。. の不確かさの程度は家族・仕事の状況による安静維持の. 【入院や早産への予期的不安】の対処 《正期産に入 8). ための日常生活の困難の程度と関連していた(図1) 。. るまで安静を遵守する》、《気分転換をする》、《切迫早. そこで、以下に4つの分類ごとに困難とその対処につ. 産であることを受け止める》、《過去の出産経験による. いて考察を述べる。. 安心感》、《胎児の成長発達の情報を得る》、《胎児の成. 1.切迫早産の治療に伴う日常生活の困難とその対処. 長による安心感》、《病院の設備による安心感》、《入院. 切迫早産の治療方針や症状の判断が日常生活に影響し. の可能性に備えた準備》、《入院しないという気持ちを. ていることから、ここでは医療者の関わり方と看護支援. 持つ》の9つが行われていた。. について考察していく。. 9)【公的・社会的サポートの利用しにくさ】の対処 . 【医療者からの安静指示の不明確さ】は医療者から具. 《利用しにくいシステムを利用しない》という1つで. 体的な行動指示がなく、妊婦の認識が曖昧なままだった. あった。. ことで具体的な日常生活をイメージできず、戸惑いに繋 がったと考えられる。この困難に対し、《不確かさの解 消のためにインターネットを検索する》ことや《自分な. 家族・仕事の状況による 安静維持のための日常生活の困難. 医療者からの安静指示の不明確さ. 安静を維持する生活行動調整の難しさ 上の子の世話と安静の折り合い. 早産徴候の自己判断の不確かさ. 夫の切迫早産への理解不足と 不十分なサポート. 子宮収縮抑止薬の効果への疑問と副作用. 家族サポートへの抵抗感. 入院や早産への予期的不安. 図1 日常生活の困難の関連性. ― 49 ―. 公的・社会的サポートの利用しにくさ. 切迫早産の治療に伴う日常生活の困難.
(6) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. りの判断基準を決める》という対処を行っており、自分. 看護者は、内服状況や作用・副作用の問診を行い、子宮. なりの解釈もしながら自己の身体状況を詳細に観察・判. 収縮抑制薬の使用による日常生活の困難をアセスメント. 8). 断しながら行動する という先行研究と同様の結果が得. し、妊婦に合った対処法を共に考えることや、必要時は. られた。一方で、外来通院治療では、受診行動をとらな. 医師へ繋げるというケアが必要だと考えられる。. ければ医療者との接点がなく、関係性を構築する時間を. 2.家族・仕事の状況による安静維持のための日常生活 の困難とその対処. 得難いという特徴から、《医療者には細かく質問しない》 14). という独特の対処が明らかになった。槻木ら は、妊婦. 外来通院で治療を受ける切迫早産妊婦にとって安静を. 健康診査で妊婦は医療者に対して「話しやすい(聞きや. 維持する生活行動や家族の関わりが影響している困難で. すい)こと」、「自分に声をかけてもらい確認してもらう. あり、仕事の背景や家族構成を考慮した看護のあり方を. こと」、「不安や疑問を相談できること」、「分かりやすく. 考察する。. 説明してもらうこと」、「自分を知ってくれていること」. 【安静を維持する生活行動調整の難しさ】は、家事や. を望んでいると報告しており、看護支援として、妊婦が. 仕事など、日常の生活行動を調整しながら安静を保つ難. 質問しやすい環境や雰囲気を整え、安静生活の具体例を. しさを表している。特に、〈父母の病気療養による安静. 提示した上で疑問や質問がないか働きかけをしていくこ. の難しさ〉は、昨今の家族をめぐる社会の動向を反映し. とが重要だと考えられる。. ている。近年、晩婚化・晩産化等を背景に、「育児と介. 次に【早産徴候の自己判断の不確かさ】という困難. 護のダブルケア」問題が指摘されており、本研究でも2. は、妊婦が自覚する症状が一様ではないために判断が難. 名がダブルケアに直面していた。父母の病気と上の子の. しいこと、また、インターネット上の情報が多岐にわた. 育児に加え、自身が切迫早産の診断を受けたことでこの. り、十分な取捨選択が行えないことが背景にあると考え. 困難が発生し、《切迫早産を肯定的に受け止める》こと. られる。先行研究において、妊婦は子宮収縮を痛みやけ. で困難な状況を受け入れようと気持ちを切り替え、早産. いれん、腹痛、圧迫感や膨満感、歩きにくさなど様々に. 徴候の悪化があれば《父母の体調より自分の体調を優先. 9). 自覚し表現しており 、何らかの腹部の状態を感じてい. する》という対処を行っていた。ダブルケアの認知度は. るが、それを子宮収縮と捉えておらず医療者に伝えられ. まだまだ低いが、社会問題として顕在化し直面する人の. ないこと、切迫早産妊婦が腹部症状を予防するには妊婦. 増加も予想される15)ことから、家族背景のアセスメント. が自分自身の状況を理解し判断できるための知識・情報. は、育児の協力者としてのみではなく、妊婦が家族への. 10). を提供する重要性が示唆されており 、本研究において. ケア提供者となっている可能性を捉える必要があると考. もそれを支持する結果が得られた。妊婦はこの困難への. える。. 対処として、《安静へ意識を向ける》、《胎動の有無や位. また、本研究の対象者である経産婦4名は、安静の必. 置を判断基準とする》としており、妊婦自らの判断によ. 要性についての理解を得るのが難しい乳幼児期にある上. る行動であるが、確信が持てない中で実施していた。本. の子の育児をしていたことで、【上の子の世話と安静と. 研究の対象者はいずれも早産には至らず、早産予防に効. の折り合い】の困難に繋がっていた。この困難には家族. 果的な対処が行えていたと考えられるが、看護者が、妊. などから協力を得て対処をしていたパターンと、上の子. 婦が行う対処の効果をフィードバックすることで、妊婦. の生活を中心に置きながら自己の対処法を工夫している. がより確信を持って対応できるのではないかと考える。. パターンが見受けられた。. 外来通院で治療を受ける切迫早産妊婦は、安静保持の. 核家族化が進む中、妊婦の最大のサポーターとして夫. ために自宅で過ごす時間が増え、インターネットを利用. の存在に期待するところは大きい。しかし、本研究では. する時間が増加すると推察されるが、インターネット上. 【夫の切迫早産への理解不足と不十分なサポート】とい. の情報の信頼性を十分に確認していない上、情報量は膨. う困難が抽出された。切迫流早産で長期入院している妊. 大であることから〈インターネット上の情報に頼った結. 婦の夫の心理的特性として、夫には「切迫流早産への知. 果戸惑う〉という困難に繋がっていると考えられる。妊. 識や治療の不確かさ」があり、深刻さがわからないこと. 婦はこの困難に《インターネットを検索し尽す》という. が指摘されている16)。本研究における〈夫の切迫早産の. 対処を行っており、納得できるまで膨大な情報を調べる. 症状および自宅安静に対する理解不足〉の背景には、夫. ことに労力を費やしていた。よって今後は、医療者の視. の知識不足や、妊婦にとっても安静指示や自己判断の難. 点から信頼性を吟味し、信頼できる情報サイトを提示し. しさがあったため、夫が理解することがより難しい状況. ていくことが看護支援として重要であると考えた。. であったことが要因と考えられる。そこで、切迫早産の. 【子宮収縮抑制薬の効果への疑問と副作用】について、. 症状・治療、家族の協力の必要性について夫に説明する. ― 50 ―.
(7) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. ためのパンフレットを作成するなど、妊婦と夫が共通の. への対処は、《気分転換をする》、《入院しないという気. 認識を持てるような看護援助が重要であると考えられ. 持ちを持つ》のように、自分の考え方を切り替え、《正. る。. 期産に入るまで安静を遵守する》、《入院の可能性に備え. 一方で、 【家族サポートへの抵抗感】のように、家族. た準備》など、自ら考えて行動を起こすことであり、医. のサポートがあっても困難が解消しない場合も示され. 療者に相談する対処は行われていなかった。外来通院で. た。〈家事への妻としての責任感〉は、安静を保つため. 治療を受けている妊婦は、正期産に入るまで、胎児の情. に夫から家事の協力を得ていても、それを申し訳なく感. 報を得ながら不安と向きあい、自分の考え方を切り替え. じていることや共働きであっても夫の疲労を優先して家. て安心できる理由付けをしながらも、入院の可能性に備. 事をするといった行動として抽出された。夫への協力の. えた準備を行っていることが見えてきた。しかし看護支. 働きかけのみではなく、妻が家事への責任感から解放さ. 援として、妊婦の対処能力に依存しすぎず、落ち込みや. れる意識変容を支援することが必要と認められた。ま. 不安、イライラなどの感情を表出する機会を意図的に設. た、義父母が近くに住んでいても〈義父母との関係性に. けることが必要である。. よる頼りにくさ〉があることが挙げられた。これは、精. 4.公的・社会的サポートの利用への困難とその対処 わが国では、合計特殊出生率が1.57に低下したことを. 神的な安静が保てない困難であり、義父母を頼らないと いう行動に繋がっていた。外来通院で治療を受ける切迫. 契機に様々な子育て支援施策がとられてきた18)。本研究. 早産妊婦にとって家族のサポートは療養生活に欠かせな. の対象者はファミリー・サポート・センターの利用を検. いが、妊婦自身のサポートへの意識や関係性を見極める. 討したが、手続きが利用を阻む要因となっていた。現在. 必要性が示された。. は公的・社会的サポートは様々に展開されているが、看. 以上のような家族・仕事の状況による安静維持のため. 護者はこれらのサービスがいつでも、誰もが利用しやす. の日常生活の4つの困難に対して、妊婦自身は25通りと. い資源ではないと認識する必要がある。本研究の対象者. 6). いう多数の対処を行っていた。名取、有井 が外来通院. は、《利用しにくいシステムを利用しない》という対処. 中の切迫早産妊婦について自分なりの解釈をしながら自. を行っており、妊婦に対して情報提供するのみでは不十. 己管理方法を見出したことを報告しており、本研究にお. 分である。このことから、看護者には、公的・社会的サ. いても妊婦なりの多様な工夫をしていることが明らかと. ポートのメリットとデメリットを把握しつつ、利用しや. なった。この多数の対処の中でも、家族のサポートを求. すいようにつなぐ役割が求められていると考えられる。. めるための言葉がけの工夫やサポートが得られやすい時. 5.本研究の限界 本研究では、研究対象者が少なく、また初産婦が1名. 間の調整をしているという共通性があった。また、家族 のサポートが得られにくい、または躊躇される場合は、. であることや、実父母・義父母が比較的近くに住んでい. 自分の考え方を切り替え、子宮収縮や体調を自己判断し. るという地域特性があることなどから、研究結果を一般. ながら仕事・家事・育児の調整を図っていることが明ら. 化するには限界がある。今後、対象人数を増やし検討を. 11, 12). が、外来通院をしている切迫早産妊. 重ねていくことが課題であると考える。また、1施設で. 婦に対して「できていることを賞賛する」という看護を. の調査であったことで研究協力施設の特徴が結果に影響. 見出していることから、まずは妊婦が行う多様な工夫を. していることが考えられることから、対象施設を増やし. 認めることが大切であると考える。. 施設による偏りを解消していく必要がある。. かになった。金. 17). 加えて、大槻 が患者の病態だけでなく家族背景など を十分に配慮し個々にきめ細かく対応することによっ. Ⅵ.結 論. て、さらなる早産の減少に資していく努力が求められて. 本研究では、外来通院で治療を受けている切迫早産妊. いると述べているように、今後は、一人一人の家族背景. 婦の日常生活の困難について、妊娠37週以降に同意が得. や職場背景、妊婦の考え方をアセスメントした上で、具. られた妊婦5名を対象に半構造化面接法にて調査を実施. 体的な知識・情報を提供する、個別的な保健教育がより. した。 日常生活の困難は【医療者からの安静指示の不明確. 重要となると考えられた。 3.入院や早産への予期的不安による困難とその対処. さ】、【早産徴候の自己判断の不確かさ】、【子宮収縮抑制. 外来通院で治療を受ける切迫早産妊婦は、入院してい る切迫早産妊婦同様に、早産への不安を抱いていた。ま た、外来通院の切迫早産妊婦特有の不安としては、入院 の可能性に備える予期的不安を抱いていた。予期的不安. 薬の効果への疑問と副作用】、【安静を維持する生活行動 調整の難しさ】、【上の子の世話と安静との折り合い】、 【夫の切迫早産への理解不足と不十分なサポート】、【家 族サポートへの抵抗感】、【入院や早産への予期的不安】. ― 51 ―.
(8) 日本母性看護学会誌 Vol. 21 No. 2 2021. 【公的・社会的サポートの利用しにくさ】の9つのカテ ゴリーが抽出され、困難のサブカテゴリーに対しそれぞ れ1∼9つの対処、全部で44通りの対処が行われてい た。 さらにこの9カテゴリーは、切迫早産の治療に伴う日 常生活の困難、家族・仕事の状況による安静維持のため の日常生活の困難、入院や早産への予期的不安、公的・. 5)中井章人:早産をめぐる最近の話題─切迫早産治療から予 防治療への転換,周産期医学,48(4),405-409,2018.. 6)蓼沼由紀子,今関節子:切迫早産により入院中の妊婦の予 期的不安,母性衛生,46(2),267-274,2005.. 7)今村麻乃,中村康香,跡上富美 他:入院している切迫早 産妊婦の肯定的な体験について,母性衛生,54(2),346-. 353,2013.. 8)名取初美,有井良江:外来通院切迫早産妊婦の日常生活に おける活動と安静の自己管理の方略,日本母性看護学会. 社会的サポートの利用しにくさの大きく4つに分類さ れ、看護支援は、妊婦自身が工夫している多様な対処を 賞賛して支持し、早産徴候の自己判断による日常生活調 整と服薬ができるような安静支援と信頼できる情報提 供、妊婦の背景をアセスメントした上で、家族の切迫早 産及び安静への理解を促し効果的サポートを見出すこ と、妊婦が不安を表出する機会を設け、公的・社会的サ ポートが利用しやすいようにつなぐ役割が求められてい るとの示唆を得た。. 誌,8(1),31-36,2008.. 9)MacKinnon, K.: Living With the Threat of Preterm Labor:. Women ’ s Work of Keeping the Baby In. J Obstet Gynecol Neonatal Nurs, 35(6), 700-708, 2006. DOI: 10.1111/j.15526909.2006.00097.x. 10)Weiss, M.E., Saks, N. P., & Harris, S.: Resolving the uncertainty of preterm symptoms: women’s experiences with the onset of preterm labor, J Obstet Gynecol Neonatal Nurs, 31(1), 66-76, 2002.. 11)金英仙:外来通院している切迫早産妊婦の腹部症状予防の ための対処行動を促す看護援助─妊婦の体験している切迫 早産症状について説明すること─,兵庫県母性衛生学会. 謝 辞 本研究にご協力いただきました対象者の皆さま、施設. 誌,21,8-13,2012.. 12)金英仙:外来通院している切迫早産妊婦の腹部症状予防のた めの対処行動を促す看護援助,日本母性看護学会誌,14 (1) ,. の皆さまに感謝申し上げます。 本研究は、第21回日本母性看護学会学術集会にて発表 した。. 57-64,2014.. 13)岡邑和子,鎌田奈津,槻木直子 他:外来通院中の切迫 早産と診断された妊婦に提供した早産予防のための看護 支援,兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要,. 利益相反. 24,55-66,2017.. 14)槻木直子,岡邑和子,杉原真理 他:妊婦健診で妊婦が求. 本研究において、開示すべき利益相反はない。. めていること,兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究 所紀要,24,67-77,2017.. 引用文献 1)母子衛生研究会:母子保健の主なる統計,49,母子衛生研 究会,2019.. 2)大槻克文:切迫早産治療と予後の現状,産婦人科の実際, 66(7),807-813,2017.. 15)ソニー生命保険株式会社:ダブルケアに関する調査2018,. https://www.sonylife.co.jp/company/news/30/nr_180718.html,. (検索日:2020年8月1日).. 16)御代田亜子,塩野悦子:切迫流早産で長期入院している妊 婦の夫の心理的特性,宮城大学看護学部紀要,7(1),53-. 3)国立医薬品食品衛生研究所:医薬品安全性情報,11(21),. http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly11/21131010.pdf, (検. 索日:2020年8月1日).. 4)EUROPEAN MEDICINES AGENCY: Restrictions on use. of short-acting beta-agonists in obstetric indications - CMDh endorses PRAC recommendations, http://www.ema.europa. eu/docs/en_GB/document_librar y/Referrals_document/ Short-acting_beta-agonists/Position_provided_by_CMDh/ WC500153129.pdf,(検索日:2020年8月1日).. 61,2004.. 17)大槻克文:切迫早産/前期破水治療の現況─周産期学シン ポジウム調査研究をもとに,主に副作用に関して,周産期 医学,48(5),550-554,2018.. 18)厚生労働統計協会:国民衛生の動向2019/2020,66,23,. ― 52 ―. 2019..
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