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エマージングリスクとしてのCOVID-19―科学と政策の間のギャップを埋めるには―

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【レター】

エマージングリスクとしてのCOVID-19

―科学と政策の間のギャップを埋めるには―*

COVID-19 as an Emerging Risk: How to Bridge the Gap between Science and Policy

岸本 充生**

Atsuo KISHIMOTO

Abstract. In this paper, I considered the novel coronavirus pandemic as general as possible from the aspects of

emerging risks and the relationship between science and policy. For the former, it was proposed to institutionalize mechanisms such as national risk assessments carried out in other countries, and for the latter, to visualize the process from scientific facts to the determination of risk management measures. In addition, responding to the novel coronavirus requires the involvement of experts not only from a medical point of view, but also from a behavioral point of view.

Key Words: emerging risks, COVID-19, risk assessment, risk management, trans-science

起きたことに対しては,その直後からたくさん の報告書,論文,書籍が出版され,どうすれば良 かったのかに関する後知恵での考察があふれるこ とになる。本稿もその1つといえばそのとおりで あるが,できるだけ一般化可能な観点から,異な る種類のリスクにも適用可能な考察をしてみよう と思う。具体的には,エマージングリスクをどう 予測するかという観点と,不確実な科学を政策に どうつなげるべきかという観点である。 1. 再発防止の落とし穴 大きな事件や事故が発生すると,「再発防止」 の名のもとに,大きな予算がつけられ,次の機会 には迅速に対応できるように,組織が新設あるい は再編され,法律が新設あるいは改正され,場合 によっては,当該ハザード対策のための研究機関 が設置される。東日本大震災の直後は,平安時代 に発生した貞観津波に関する研究成果が防災対策 に生かされていなかったことが問題視され,地質 調査や古文書調査といった歴史津波の研究が大き くフィーチャーされた。その結果,東北地方の太 平洋沿岸部以外にも多数の地域で過去に大津波が 発生していた可能性が指摘された。しかし,これ らの事象(ハザード)は頻度としては非常に小さ いため,次に起きるハザードが同じタイプのもの である可能性は客観的にみると非常に低い。労働 災害や製品事故などと違って,低頻度大規模災害 は同じハザードが近いうちに「再発する」可能性 は非常に小さいにもかかわらず,「再発防止」が 大義名分になり,客観的に見ると費用対効果の悪 い対策に莫大な予算がつぎ込まれることになる。 何もしないでおくと繰り返されるタイプの事象に だけ「再発防止」は有効である。実際に,東日本 大震災のあとに起きた自然災害は例えば,広島市 の土砂災害(2014年,死者77名)であり,御嶽 山の噴火(2014年,死者行方不明者63名)であ り,熊本地震(2016年,死者 50名)であり,西 日本豪雨による大洪水(2018年,死者行方不明 日本リスク研究学会誌 29(4): 237–242 (2020) * 2020年4月5日受付,2020年4月5日受理

** 大阪大学データビリティフロンティア機構(Osaka University, Institute for Datability Science) (兼)社会技 術共創研究センター (Research Center on Ethical, Legal and Social Issues)

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者271名)であった。また,ロシアのチェリャビ ンスクには2013年に隕石が落下し,幸い死者は いなかったものの,衝撃波により1000人以上が 負傷した。感染症の分野でも,2003年頃のSARS (重症急性呼吸器症候群),2009 年頃の新型イン フルエンザや2014年からアフリカの3国を中心に 発生したエボラ出血熱に対する「再発防止」策 が,新型コロナウイルスのパンデミック対応にど れほど効果があったか検証すべきである。 予防が重要であることは,環境保護,保健医 療,防災など様々な分野で繰り返し指摘されてい るものの,まだ起きていないことに対して,予算 を付けたり,対策を行ったりすることは現実には 非常に難しい。 2. 専門家も「起きたこと」に影響を受け すぎる 21 世紀に入ってから,2001 年のアメリカ同時 多発テロ事件,2007年に始まった世界金融危機, 2011 年の東日本大震災と原子力発電所事故,そ して2020年の新型コロナウイルスのパンデミッ クと,種類は異なるものの,いずれも我々が想定 していていなかった規模の事象,いわゆるブラッ クスワンを経験している。これらは事前には,少 数の専門家からは警鐘が鳴らされていたかもしれ ないが,社会全体としては喫緊の「リスク」とし て認識されていなかった。世界経済フォーラム (World Economic Forum; WEF)は,世界の有識者

1000人程度に今後10年間のグローバルリスク注1 を,発生可能性(likelihood)と発生した際の影響の 大きさ (Impact) をそれぞれ 5 段階で評価しても らったアンケートの結果を含んだ報告書(グロー バルリスク報告書)を発表しており,毎年1月に 最新版が公表される。2020年1月に公表された最 新の第15版では,「感染症の急速な及び大規模な 拡 大 (Rapid and massive spread of infectious diseases)」は,取り上げられた30項目の中で,影 響の大きさは 3.5∼4.0の間で上位3分の1程度で あったが,発生可能性は2.5∼3.0の間で下から4 番 目 の 低 さ で あ っ た (World Economic Forum, 2020)。これまでも,グローバルリスク報告書で は,「今後10年間」のリスクを評価しているにも かかわらず,順位は毎年変動し,直前の事象に大 きな影響を受けてきた。例えば,2010年代前半 は金融危機の影響を,その後は,移民問題,極端 気象や大量破壊兵器,そして直近では「気候変動 対策の失敗」が躍進している。たとえ「有識者」 であっても,目の前に起きていることの影響を強 く受けてしまうのが現実である。利用可能性 ヒューリスティックは,マスメディアや井戸端会 議の影響を受ける一般人だけでなく,専門家こそ が自覚的にならなければならない。しかし,「ま だ起きてないこと」を認識することは専門家で あってもそもそも非常に難しい。 3. 起きていないことに備える仕組みと障 まだ起きていないことに社会の関心を向け,予 算措置を含め,きちんと備えるにはどうすれば良 いのだろうか。まずは,何が「起きていない」の かを知ることである。しかし,「起きていないこ と」は理屈のうえでは無限に存在する。正確に言 うならば,「起きそうだけどまだ起きていないこ と」である。まさに「リスク」の大きさが問題な のである(岸本,2018a)。先に取り上げたグロー バルリスク報告書はアンケートベースであるの で,有識者といえども,すべての事象に通じてい るわけではなく,各々は経済の専門家であった り,気候変動の専門家であったりするため,自ら の専門分野以外では一般人と同様のリスク認知で あってもおかしくない。 想定外をなくすために,欧米諸国では21世紀 に 入 っ て, ナ シ ョ ナ ル リ ス ク ア セ ス メ ン ト (National Risk Assessment;NRA)を制度化してき た(岸本,2019)。これは各分野の専門家が,で きるだけ客観的な情報をもとに,国としてのリス クを発生可能性と影響の大きさの二軸のマップ上 に可視化し,政策の基礎とする仕組みである。英 国が 2004 年に開始し,欧州連合 (EU) 理事会が 2009 年に加盟国に実施を勧告し,さらには経済 開発協力機構(OECD)のハイレベルリスクフォー ラムも推奨したことで,日本以外の先進国ではお おむね取組みが行われている。通常,テロなどの 意 図 的 な 脅 威 を 含 む す べ て の ハ ザ ー ド ( all hazard ) を対象として,今後 5 年間の発生可能性 と影響の大きさが検討され,詳細は機密とされる が,結果の概要はウェブサイト等で公表される。 また,リスク評価を実施するだけではなく,その 情報をもとに,国としてのリスク対策の優先順位 を付け,対応能力の増強を図るという全体戦略も 同時に立てられる。 しかし,まだ起きていない(が,今後起きそう

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なこと)を想定することは想像力や認知の観点か ら困難であることに加えて,責任という観点から も困難が予想される。すなわち,発生可能性を検 討したという点だけで,その後,ハザードが実際 に生じた場合に,(発生する可能性があると知っ ていたにもかかわらず有効な対策を打たなかった という)不作為の責任を問われる可能性である。 実際にそうでなかったとしても,その恐れがある と予想されただけで,まだ起きてない事象を公式 に検討すること自体が躊躇されることがありうる だろう注2。この問題を回避するためには,リス クを検討した結果,その時点で利用可能な最善の 科学的知見のもとでは,リスクの大きさが社会に とって無視できると判断したことを,エビデンス をきちんと提示したうえで社会に分かりやすく説 明していた場合には,責任の追及を行わないこと を社会が約束することが必要だろう。 4. 起き始めたことにどう対処するか 起きていないことに対処することは困難である が,起き始めたことには何らかの対処をしなけれ ばならない。起き始めた時点では通常,科学的な 不確実性が非常に大きい。大地震や大噴火の前兆 かもしれない地殻変動,パンデミックにつながる かもしれない新興感染症の発生情報,それなりに 確度の高いテロ組織等からの攻撃の可能性といっ た低頻度高影響のリスクも,「起き始めた時点」 が必ず存在し,少しずつ更新されていく科学的 ファクトに基づいて,最適な政策的対応を導き出 すというプロセスが求められる。しかし,この科 学的ファクトから政策までのプロセスを混然一体 と実施することは,個人レベルの意思決定であれ ばさほど問題はないかもしれないが,公的意思決 定の場合,混乱のもととなる。意思決定に至るプ ロセスは,科学的ファクト,ベースラインのリス ク評価,リスク管理オプションの列挙,各リスク 管理オプションの影響評価(人々の行動への影響 も含む),リスク管理措置の決定の順に進み,理 想的には段階ごとに区別されることが望ましい。 最低限,意思決定の透明化のためにはリスク評価 部分とリスク管理部分とは区別される必要があ る。つまり,リスクの評価は,科学的ファクトに 基づき,できるだけ価値判断を加えずに,一定の 仮定と推論をもとに実施される。これに対して, リスク管理は,リスク評価の結果を重要なエビデ ンスの一つとして,他の社会的・経済的な要因も 考慮しながら実施される。両者の機能的区別は, あらかじめ決めたリスク管理措置を正当化するた めに科学的ファクトやリスク評価が歪められると いうことが起きないようにするための先人たちの 知恵なのである。 新型コロナウイルスへの対応においても,科学 的ファクトとリスク管理措置の関係については, 試行錯誤が続いている。2月半ばに,「新型コロ ナウイルス感染症対策専門家会議」が設けられた が,首相は2月27日,専門家会議への諮問を経る ことなく,全国の小学校,中学校,高等学校,特 別支援学校の臨時休業を要請した。他方で,政治 家の判断を排除して,科学者にリスク管理措置の 決定まですべてを期待する声もある。政府の新型 コロナウイルス感染症対策本部が専門家会議を設 置した際に,専門家会議のミッションは「新型コ ロナウイルス感染症対策本部の下,新型コロナウ イルス感染症の対策について医学的な見地から助 言等を行う」こととされた。これは先に示したプ ロセスのうち,最後のリスク管理措置の決定以外 のすべてを含むように読めるし,実際にその後, 専門家会議が検討し,提言した内容からすべてを 担っている(担わされている)ことが分かる。し かし,「医学的な見地から」と書かれているよう に,メンバーのほとんどが医学・生物学を専門と している。リスク管理オプションの列挙やそれら の社会への影響や人々の行動に及ぼす影響の評価 は,社会の様々なアクターの相互連関性やそれに 基づくトレードオフの可能性や,意図しない行動 変容が起きる心理的要因まで含めて検討しなくて はならず,医学・生物学を中心とするいわゆる科 学者の守備範囲をはるかに超える。現状では,こ のような「医学的な見地」以外の部分すべてを政 治家の判断(直感)に委ねる建付けになってし まっている。これは政府が「専門家」として,人 文社会科学系の研究者を最初から想定していな かったからではないだろうか。 新型コロナウイルスのような感染症のパンデ ミック対策に必要な「専門家」には,社会心理学 者,行動科学者,経済学者といった人文社会科学 系の専門家からの知見も必要不可欠であるはずで ある。英国では,新型コロナウイルスへの対応を 巡る問題は人々の行動がカギであることから,政 府の首席科学顧問と主席医務官が共同議長を務め る緊急時科学諮問グループ(SAGE)が2月13日に 行動科学の専門家からなる専門家チームを発足さ

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せ,次々と助言を行っている注 3。つまり,疫学 者や公衆衛生学者らからなるモデリングを専門と するグループが感染拡大のシミュレーションを繰 り返すのと並行して,行動科学を専門とするグ ループが,学校閉鎖,自己隔離,社会的距離と いった様々なリスク管理オプションが人々の行動 や社会に与える影響に関するエビデンスを集めて いるのである。 5. 科学と政策の間をどちらから埋めるか 不確実性に対しては「分からない」と率直に認 め,真理を追究していればよい科学の論理と,時 間的・予算的制約の中で意思決定を迫られ,「何 もしない」ことも1つの意思決定になってしまう という政策の論理には常に大きなずれがある。こ のギャップは,ときには科学側から埋められ,と きには政策(政治)側から埋められる。専門家会 議からの呼び掛けや提言は前者,学校の臨時休業 の要請は後者に相当する。しかしどちらも,無理 のある飛躍を伴わざるを得ない。前者の極端な例 としては,原子力規制庁が,原子力発電所の敷地 内にある断層が「活断層」であるか否かについ て,科学者(グループ)に白黒の判断をさせ,そ の判断がそのまま運転の可否に直結していたこと を想起させる。活断層であるか否かは常に大きな 不確実性が伴うこと,かつ,白黒の判断が管理措 置に直結することが分かっていたらその判断に少 なからぬ心理的影響を及ぼさざるを得ないこと, 等を考えると,無理のある仕組みであった。科学 側からギャップを埋めることの限界を露わにした 案件であったといってよいだろう。 他方,科学と政策の間のギャップを政治側が埋 める場合は,政治家の直感に頼ることになりがち で,政策が経済や社会に与える影響が事前に予測 できていないために,社会に大きな混乱を引き起 こすことになる。意図した直接的な影響だけでな く,意図しない副次的影響が生じることもある。 こうした政治的判断が実施されやすい背景の1 つに,「直接的な国民負担」と「間接的な国民負 担」の非対称性があることも指摘しておきたい。 国民や民間企業が税金という形で金銭的な負担を 負っていることを私たちはよく知っている。しか し,国民や民間企業の負担はこれだけではない。 新たな規制が導入されると,それを遵守するため に追加的な支出を行ったり,得ていた収入が減っ たりすることによって,金銭的な負担を負う。税 金を「直接的な国民負担」とするとこちらは「間 接的な国民負担」といえる。国民や民間企業から 見たら両者は同じように「負担」であるのに対し て,政治や行政から見れば,両者は全く異なって 見える。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐた めの学校の臨時休業という措置は後者であり,政 治や行政から見たらそれに伴う諸々のコストは見 えづらい。「直接的な国民負担」である税金の支 出を巡っては,「血税」という言葉があるように, その使途を決めるにあたっては非常に慎重なプロ セスが用意されている注 4。ところが,国民に とって同じ「負担」であるにもかかわらず,日本 では,後者の「間接的な国民負担」については, その扱いが極端に軽いのである注5 6. 科学と政策の間を可視化する 不確実な科学を具体的な政策につなげるための 理想的な手順は次のようなものだろう。政府は, いわゆる科学者からなる第一の専門家会議にま ず,科学的ファクトの整理とそれに基づくベース ラインとなるリスク評価(不確実性が大きい場合 は複数シナリオとその帰結を含む)を依頼し,そ の報告を受ける。これと並行して,行動科学者, 経済学者や心理学者を含む専門家からなる第二の 専門家会議が,リスク管理オプションを複数挙げ る。挙げられたリスク管理オプションは,第一の 専門家会議にフィードバックされ,それらのリス ク管理オプションのリスク削減効果を,最初に推 計したベースラインとの比較として推計する。こ れらの予測を踏まえて,第二の専門家会議が,多 様なステークホルダーから情報提供を受けつつ, 複数のリスク管理オプションについて,人々の行 動変容や脆弱なサブ集団への影響も含む社会経済 的影響の評価を行う。最終的には政策決定者(政 治家)がそれらのリスク管理オプションの中か ら,リスクの予測と社会経済的影響の予測を眺め ながら,それを選んだ理由を示しつつ,リスク管 理措置を決定する。 もちろんこれは理屈の上での話であり,新型コ ロナウイルスのケースのように急を要する場合 に,こういった手順を踏むことは難しいし,専門 家の人選も含めて平時からの訓練をしておかない と,かえって迅速な意思決定を妨げる可能性もあ ることに注意すべきである。そのために,まず, 科学的ファクト,ベースラインのリスク評価,リ スク管理オプションの列挙,リスク管理オプショ

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ンの影響評価,リスク管理措置の決定,を分離し て思考する習慣を身に着けることが必要である。 これらを分けて議論しないと,例えば,リスク管 理措置が急に変わった場合に,その原因が,科学 的ファクトが変わったからなのか,リスク評価が 変わったからなのか,リスク管理オプションの選 択が変わったからなのかが分からないし,想定と 異なる影響が生じた際に,どの想定を修正すべき なのか分からなくなる。 新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落する と,福島第一原子力発電所事故の直後と同様に, 政府に「科学顧問(グループ)」を常設すべきだ という議論が出てくるかもしれない。しかし,そ の際に注意すべき点は,科学顧問に求められるこ とは,伝統的な科学自体に関する判断ではなく (そんなものは教科書を読めば分かる),科学的事 象ではあるがデータが不十分であるため不確実性 が大きく,さらには意思決定に様々なリスクト レードオフが伴うようなケースについての判断で ある。まさに本稿で,科学と政策の間,と称した 部分であり,ポストノーマルサイエンス,あるい は, ト ラ ン ス サ イ エ ン ス 部 分 と も 呼 ば れ る (Gluckman, 2014)。これには唯一の解は存在せず, 適切な検討スコープと適切な手順が確保されてい ることこそが解決策の妥当性を担保できる。その ためには,科学顧問に求められる資質は,(基礎 科学に重きが置かれがちな)経歴や実績ではな く,科学的不確実性と公的意思決定の間に大きな ギャップが存在することを認識し,その部分を可 視化し,それを埋めるために適した専門家を集 め,適切なプロセスを用意できる能力なのであ る。 注1  グローバルリスクは,この先10年以内にも しそれが発生したら大きなマイナスの影響 を複数の国や産業に与えうる不確実な事象 や状態,と定義されている。 注2  原子力規制庁が 2018 年 3 月 7 日に公表した 「原子力発電所の火山影響評価ガイドにおけ る「設計対応不可能な火山事象を伴う火山 活動の評価」に関する基本的な考え方につ いて」において,「これ(注:巨大噴火)を 想定した法規制や防災対策が原子力安全規 制以外の分野においては行われていない。 したがって,巨大噴火によるリスクは,社 会通念上容認される水準であると判断でき る。」と書かれた。公共政策において取り上 げられた瞬間に「社会通念上容認されない 水準」と判断されるおそれがあると理解さ れれば,あえて公共政策に取り上げないと いう戦略的判断につながる恐れがある。 注3  正確に言うと,もともと 2009年の新型イン フルエンザ対応で結成した「行動とコミュ ニケーションに関する科学的パンデミック インフルエンザグループ(SPI-B&C)」のう ちのSPI-Bを再招集したのである。健康心理 学,社会心理学,人類学,歴史学といった 分野の専門家が集められた。参考, The role of behavioural science in the coronavirus outbreak 14th March 2020. https://assets. publishing.service.gov.uk/government/uploads/ system/uploads/attachment_data/file/873732/07- role-of-behavioural-science-in-the-coronavirus-outbreak.pdf (2020年4月3日アクセス) 注4  税金については,憲法にも「内閣は,毎会 計年度の予算を作成し,国会に提出して, その審議を受け議決を経なければならな い。」(第 86 条)と書かれているように,長 い時間を掛けて決められ,執行後は会計検 査院が検査する。 注5  新たな規制が導入されることで必要となる 規制遵守費用については,日本では「行政 機関が行う政策の評価に関する法律」に基 づいて,「規制の事前評価(規制影響評価)」 が,パブリックコメント(政令の場合)あ るいは閣議決定(法律の場合)の前までに 実施・公表されることになっている。しか し,残念ながら,対象が法律と政令に限定 され,重要な規制の多くが制度の対象外と なっているうえに,多くのケースで規制遵 守費用は「推計が困難である」だとかの理 由で定量化されていない(岸本,2018b)。 参考文献

Gluckman, P. (2014) Policy: The art of science advice to government. Nature 507, 163–165. 岸本充生(2018a) エマージング・リスクの早期発 見と対応―公共政策の観点から―, 保険学雑誌, 642, 37–60. 岸本充生(2018b) 規制影響評価(RIA)の活用に向 けて:国際的な動向と日本の現状と課題,関東

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学院大学経済経営学会研究論集「経済系」,

275, 26–44.

岸本充生(2019) ナショナルリスクアセスメント, 13-4, 日本リスク研究学会編『リスク学事典』

丸善出版.

World Economic Forum (2020) The Global Risks Report 2020. 15th Edition.

参照

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