公益社団法人
日本設計工学会
JOURNAL OF JAPAN SOCIETY FOR DESIGN ENGINEERING
設計工学
ONLINE ISSN: 2188-9023 PRINT ISSN: 0919-2948Volume 56, Number 6, Page 277-286 Category: Paper
Received date: 23 September 2020 Accepted date: 18 January 2021
J-STAGE Advance publication date: 3 March 2021 Publication date: 5 June 2021
Corresponding author: Masahide KITA (E-mail address: [email protected]) DOI: 10.14953/jjsde.2020.2907
Copyright©2021 Japan Society for Design Engineering
伝搬定数を用いたオーディオ用インシュレータの設計と振動伝達特性の解析
Theoretical Analysis and Design on Vibration Transmission Characteristics Using
Four Terminal Constant for Audio Insulators
喜多 雅英
* 1,西村 公伸
* 2(Masahide KITA) (Kiminobu NISHIMURA)
Abstract
Audio insulators used widely among audio users are convenient to control the reproduced sound under audio equipment despite the difference in their material and shape. However, there are no theoretical analysis of those works and effects. In this study, to clarify the works of common circular cone used as insulator, its vibration transmission characteristics is evaluated by driving impedance at input by using four-terminal matrix of insulator after describing its input-output by an equivalent circuit. Consequently, we could clarify that the circular cone has a changing frequency point to pass through or insulate the vibration related with material and shape. This tendency is also confirmed experimentally by measuring the attenuation of vibration velocity between input and output ends of them. Moreover, this method is also effective for composite structure to design the vibration transmission characteristic of entire system. This selective transferring characteristic will be useful to eliminate or insulate inevitable vibration.
Key words
audio insulator, vibration transmission characteristics, four terminal constant, circular cone, driving impedance, vibration reduction
*1 学生員,近畿大学大学院システム工学研究科(〒739−2116 東広島市高屋うめの辺1番), [email protected]
1
緒言 近年,スピーカやCD
プレーヤ,アンプなどを支持する目的で,金属製の円錐が用いられ,主に円錐の頂 点を床側として底面側に機器を載せて使用されているが,その逆方向でも使われ,インシュレータとして普 及してきた.さらに円錐のみでなく,円錐と円柱の組み合わせ1), 2),円柱,四角柱(立方体,直方体等),球3), その他様々な形状ならびに材質のものが市場をにぎやかし,それぞれに効果をうたっている.しかし,これ らは再生音に何らかの効果を与えると言われているが,効果についてはメーカー側の感覚的・印象的説明は あるものの科学的根拠はなく,ユーザーが使用して納得するか否かにとどまっている.したがって,インシュ レータと呼ばれているが,実際,金属製のインシュレータが機器に対してどのように働いているかは不明で あり,また,形状は様々であっても固体であるため,インシュレータ(振動絶縁)として動作しているかは疑 問である.特に円錐など断面積が変化する場合,使用する方向により特性が逆転する可能性もあり,載置機 器にどのような影響を及ぼすか,インシュレータの特性を解析しておく必要がある.さらに,大きさや材質 などは振動伝達の周波数特性に影響する可能性が高く4),目的に応じてインシュレータを設計することが可 能となる. ここでインシュレータの使用法は,上に機器を載置するだけであることを踏まえれば,機器への効果は, 機械力学的な側面に限定されると考えて差支えない5).筆者らはこれまで,固体内の振動伝搬に関する波動 方程式に対し,入出力部に有限な境界条件を与えて得られるインシュレータの振動伝搬特性について報告し てきた6).一方で,振動源の内部インピーダンスや負荷インピーダンスが変われば解析し直す必要があり, 特に複雑な構造の系に対して扱いにくい面が残っていた. そこで本報告では,インシュレータの動作の解明と最適な効果を得るための設計法を見出すことを目指し, 円錐形状および,断面積が変化しない円柱形状を採り上げ,その振動伝達特性の解析を理論的・実験的に試 みる.球形状や特殊な形状を除いて,立方体などを含めて主だった形状のインシュレータの振動伝達特性の 把握ができるものと考える.これまで同様の研究としては,主に超音波領域で固体ホーンの音響的伝搬特性 について,形状による共振特性の変化や振幅拡大率,アクチュエータの設計など種々検討7), 8)されているが, インシュレータが目的とする可聴域での振動伝搬特性は言及されていない.具体的には,まず音響管や音響 ホーンの解析9)を参考に,入出力関係を伝達マトリクスにより表す.伝達マトリクスは,機械力学における 振動伝搬に関する波動方程式を,極端な境界条件(固定端および自由端)の下で解くことで与えられ10), 11), 加振点から見たインピーダンス特性を伝達マトリクスで評価することが可能となる.厳密には,境界におけ る振動の結合状態を把握する必要があるが,簡単のため,要素間の結合は密であると仮定する.線形モデル であれば,四端子素子を直列接続し,伝達マトリクスの積として全体の伝達マトリクスを求めることができ, 複雑な構造に対しても数値計算が可能となる.また,得られた評価式に形状因子や材質因子を導入して,駆 動点でのインピーダンスの周波数特性のシミュレーションを行う.実験的考察では,真鍮を用いて作製した 円柱と円錐に対し,振動伝搬特性を測定し,シミュレーション結果と比較する. 結果として,カットオフ周波数より低い周波数帯域において,入力から見たインピーダンスは,円柱や頂 点から底面に向かう場合の円錐では,断面積に依存するが,周波数には依存しないことが示された.一方, 底面から頂点に向かう円錐では,低周波数ではインピーダンスが高く,周波数の増加とともに減衰し,ある 周波数で頂点から底面に向かう場合よりインピーダンスが小さくなり,その後,増加してカットオフ周波数 に至ることが判明した.つまり,円錐形状では使用する方向により,ある周波数を境に振動伝搬と振動絶縁 を入れ替えることがで,目的に応じてその周波数を形状や材質により制御することにより振動絶縁または振 動除去の特性を選定できることが見出された.2
ホーン内部における波動伝搬と四端子等価回路 インシュレータを構成する要素の代表として,図1
(a
)の円柱と(b
)に示す円錐(厳密には上底面の面積が 十分に小さい円錐台)を採り上げる.なお,図1
(c
)は複雑な構造の一例として円錐と円柱の縦続接続の例を 示している.円柱は角柱なども含めて断面積が一定の要素であり,円錐は,距離とともに断面積が増加また は減少する要素である.また,実際の使用状況を考慮し,円錐要素の端部には外部との結合部として,薄い 円柱を接続して解析を進める.さらに円錐については,振動伝達方向による特性の違いを考慮し,A
)頂点(
Throat
)から底面(Mouth
)へ向かうNormal
方向,B
)底面から頂点へ向かうInverse
方向の2
方向について解析する.円錐の断面積は,
Throat
およびMouth
でそれぞれS
tおよびS
mとし,Throat
には同一物質で構成された受け皿(薄い円柱),
Mouth
には円柱が接続され外部と結合されている.図において,左側端部 を加振し,右側端部から外部に伝達される.また,加振源から流入する振動エネルギーの大小を評価するため, 加振点から見たインシュレータのインピーダンスにより振動伝搬特性の評価を試みる.2.1
固体内の波動伝達特性と四端子定数 固体内を伝搬する振動は,断面積が連続的に変化する梁の縦振動として解かれる.しかし,インシュレー タで用いられる円錐は断面積の広がりが急であり,厳密な解を求めるのは困難ではあるが,近似的な特性の 把握は可能と考える.円柱および円錐における理論解析は,音響ホーン9)や梁の縦振動問題12)と同様に進め ることができるので,ここでは要約のみを示す.中心軸をx
軸とし,x
における内部の応力p
(x,t
)は,次の 波動方程式で与えられる10), 11).ここでc
は伝搬速度,S
(x
)は断面積である.∂
2p
(x,t
)∂x
2+
1
S
(x
)dS
(x
)dx
∂p
(x,t
)∂x
=
1
c
2∂
2p
(x,t
)∂t
2 (1
)2.2
等価四端子回路を用いた入出力関係の表現 加振点から見たインピーダンスZ
0はZ
0= p
(0,t
)/u
(0,t
)により与えられるので,波動方程式の解からp
(0,t
) およびu
(0,t
)を求めればよい.ここで境界条件として,加振点で振動速度をu
0exp
(j
ωt
),出力端(x = h
)では, (i
)固定端(電気的に開放端)u
(h,t
)= 0
,および,(ii
)自由端(電気的に短絡端)p
(h,t
)= 0
を仮定した(1
)式 の解は,応力と振動速度を電圧と電流に置き換えることにより,集中定数系四端子電気回路網における出力 端の(i
)開放と(ii
)短絡における入出力関係に相当する.すなわち,インシュレータの入出力関係を図2
に 示す四端子電気回路に等価できる.そこで,出力端に負荷インピーダンスZ
L= p
(h,t
)/u
(h,t
)が接続される ことを考慮するなら,振動伝達における以下の入出力関係を得る.Fig. 1
Side views of audio insulators shaped in column and cone
(a
)Column
(b
)Circular cone
(c
)Composite cone
p
(0,t
)= Ap
(h,t
)+ Bu
(h,t
) およびu
(0,t
)= Cp
(h,t
)+ Du
(h,t
) (2
) ここでA
∼D
は,図2
の四端子回路網の伝搬定数であり,A
とC
は固定端,B
とD
は自由端の仮定の下で 得られた定数で,次式で定義される.A =
p
p
((h,t
0,t
)) u(h,t)=0,
B =
p
(0,t
)u
(h,t
)p(h,t)=0,
C =
u
(0,t
)p
(h,t
)u(h,t)=0,
D =
u
(0,t
)u
(h,t
)p(h,t)=0 (3
) 結局,加振点でのインピーダンスZ
0は,加振点の断面積S
0を考慮し,(2
)式およびZ
L= p
(h,t
)/u
(h,t
)の関 係を用いて,次式で求められる.Z
0=
p
(0,t
)S
0u
(0,t
)=
AZ
L+ B
S
(0CZ
L+ D
)=
A
ρ
c+ B
S
(0C
ρ
c+ D
) (4
)2.2.1
円柱 断面積はS
(x
)= S
で一定であり,(1
)式の第二項は0
となる.この一般解p
(x,t
)および振動速度u
(x,t
)は, 音響管に対して得られる解と同じ形で,(i
),(ii
)の境界条件を代入すると,p
(0,t
)= cos kh p
(h,t
)+ jρc sin kh u
(h,t
)u
(0,t
)= j
1
ρc
sin kh p
(h,t
)+ cos kh u
(h,t
) (5
) となり,以下の伝搬定数を得る.A
1= cos kh,
B
1= j
ρc sin kh,
C
1= j
1
ρc
sin kh,
D
1= cos kh
(6
)2.2.2
円錐 図1
(b
)において,円錐の頂角をθ
,高さをh
とすると,断面積S
(x
)はNormal
方向およびInverse
方向 に対して以下のように与えられる.π xtan
θ
2
2 (Normal
方向)S
(x
)=
(7
)π
(h
−x
)tan
θ
2
2 (Inverse
方向) このとき(1
)式の一般解p
(x,t
),振動速度u
(x,t
)は球面波の解を参考に,Normal
方向に対して,p
(x,t
)=
1
x
(λ
1e
− jkx+
λ
2e
jkx)e
jωtNormal
方向 (8
)u
(x,t
)=
1
jk
ρcx
2{
λ
(11 + jkx
)e
− jkx+
λ
(21
− jkx
)e
jkx} e
jωt となる.ただし,λ
1およびλ
2は境界条件によって決定される積分定数である.円柱と同様に2
種類の境界 条件の下,積分定数を求めることにより,p
(a,t
)=
1
ka
{khcos k
(h
− a
)− sin k
(h
− a
)} p
(h,t
)+ jρc
h
a
sin k
(h
− a
)u
(h,t
)u
(a,t
)=
− j
1
ρc
(ka
)2{k
(h
− a
)cos k
(h
− a
)−
(1
+ k
2ah
)sin k
(h
− a
)} p
(h,t
)Normal
方向(9
)
+
h
ka
2{kacos k
(h
− a
)+ sin k
(h
− a
)} u
(h,t
) を得,以下の伝搬定数を得る.A
2=
1
ka
{khcos k
(h
− a
)− sin k
(h
− a
)}
B
2= j
ρc
h
a
sin k
(h
− a
)Normal
方向 (10
)C
2=
− j
1
ρc
(ka
)2{k
(h
− a
)cos k
(h
− a
)−
(1
+ k
2ah
)sin k
(h
− a
)}
D
2=
h
ka
2{kacos k
(h
− a
)+ sin k
(h
− a
)}
ここで,伝送行列F
をF =
A B
C D
(11
) と定義すると,Inverse
方向では図2
に示すように,(a
)のNormal
方向に対して入出力関係が入れ替わり,(b
) のようになる.ここで回路網理論13)に基づいてInverse
方向の伝送行列は,Normal
方向で得られた伝送行 列F
の逆行列F
−1として求められる.なおThroat
と受け皿間の伝達は,受け皿の厚みが非常に薄く,球面 波として広がらずに伝達すると仮定し,Throat
の先端に同じ面積S
tの円柱が接続されると仮定している.2.3
インシュレータの構造の反映(要素の縦続および並列接続) インシュレータは直方体や円柱の場合,単体で使用されるが,円錐の場合,頂点側に薄い円柱が床などの 保護用に挟まれ,底面側にも円柱を接続させる構造が採られることが多い.さらに図1
(c
)に示すように二 段に重ねた構造なども採用されている.伝送行列を用いるなら,こうした複雑な構造を回路網の縦続および 並列接続により表現でき,全体の伝送行列を求めることができる.一例として,図1
(c
)に示す構造に本手 法の応用を試みる.両端の円柱は振動源の内部インピーダンスおよび負荷インピーダンスとして,インシュ レータと同一素材の特性インピーダンスを仮定する.このとき,円錐および円柱の伝搬定数(6
)および(10
) 式を用い,伝送行列F
dを次式により得ることができる.Fig. 2
Four terminal equivalent circuit for input and output of insulator
(a
)Normal direction
(b
)Inverse direction
F
d=
A
dB
dC
dD
d=
A
2B
2C
2D
2A
1B
1C
1D
1A
2B
2C
2D
2 (12
)3
加振点におけるインピーダンス特性と振動伝達特性の実験結果との比較 加振点におけるインピーダンスを(4
)式により評価し,実測値との振動伝達特性の比較を試みる.3.1
単一の駆動点インピーダンスの周波数特性 各形状に対する四端子定数A
∼D
を用い,(4
)式によりZ
0を求める.素材には一例として真鍮を採用し, 円柱および頂角の異なる4
種類の円錐に対しインピーダンス特性の比較を行う.計算に用いた各パラメータ を表1
に示す.また,負荷インピーダンスは円柱や円錐と同じ材質の特性インピーダンスρc
とした.図3
(a
) に円柱,(b
)に一例として頂角90
度の円錐に対して得られた加振点でのインピーダンスの実部を示す.ただ し,縦軸は加振源の内部インピーダンスρc
で割って規格化している. 図3
(a
)に示す円柱では,周波数に依存せず一定のインピーダンス特性を示す.一方,(b
)に示す円錐では,Normal
方向で円柱同様一定値であるのに対し,Inverse
方向では周波数の増加に伴いインピーダンスが減 少し,8.3kHz
付近でNormal
方向のインピーダンスと交差(この交差する周波数を「交差周波数F
s」とする)し, さらに減少している.振動源からインシュレータへ伝達される振動エネルギーは,インピーダンス整合の考 えに基づくと,駆動点インピーダンスと振動源の内部インピーダンスρc
の比に関係し,交差周波数以上の 帯域ではInverse
方向,それ以下の帯域ではNormal
方向で伝達される振動エネルギーが大きくなることが 示される.これらの結果はインシュレータが振動伝達の方向に選択性を持つことを表し,振動伝達方向によ る駆動点インピーダンスの違いが載置機器の振動状態に影響を与えていると考えられる.また本手法は,有 限な負荷インピーダンスを与えて解いた場合6)と同様の結果が得られることも確認した.Table 1
Parameter of insulators
Parameters Column Circular cone Density Velocity Radius of Throat Radius of Mouth Height Minute length Apex angle Specific Frequency ρ c rt rm h a θ Fs (kg/m3) (m/s) (m) (m) (m) (m) ( ) (Hz) 8600 3480 1.25×10-2 2.00×10-2 − − − 8600 3480 5.00×10-4 1.00×10-2 3.55×10-2 1.87×10-3 30 2200 8600 3480 5.00×10-4 1.00×10-2 1.65×10-2 8.66×10-4 60 4800 8600 3480 5.00×10-4 1.00×10-2 9.50×10-3 5.00×10-4 90 8300 8600 3480 5.00×10-4 1.00×10-2 5.48×10-3 2.89×10-4 120 14400 (
a
)Column
Fig. 3
Comparisons of driving impedance for insulator related to transmitting direction
(b
)Circular cone
(θ= 90
)3.2
振動減衰特性 数値計算で得られた振動伝達特性を検証するため,表1
に示すパラメータを用いて,円柱および円錐形状 のインシュレータを作製して実験的に比較する.測定はインシュレータの上下を無反射ガラス板で挟み,そ の上部に荷重としてスピーカを載せて,インシュレータのThroat
またはMouth
側を加振し,加振側と伝達 側それぞれの振動速度レベルを,レーザドップラ振動計を用いて測定した.測定システムの概略図を図4
に 示す.インシュレータへの加振は,ガラス板に対して垂直方向の振動を与えるため,圧電振動板をガラス板 に接着剤で固定し,サインスイープ信号を用いて加振した.圧電振動板は非線形な周波数特性を持つが,入 出力間のレベル差を評価することで影響を回避した.また,使用したガラス板は振動計のレーザ光が透過し, インシュレータの各面が直接測定できることを確認している.振動伝達特性の比較は,各面の振動速度レベ ルの測定値に対し,1kHz
毎の周波数ポイントで入出力間の振動速度レベルの差を求め,Throat
を加振した場合を
Normal
方向,Mouth
を加振した場合をInverse
方向として,各方向の振動速度レベルの減衰量を評価する. 図
5
(a
)に円柱,(b
)に頂角90
度の円錐に対する振動減衰量の比較を示す.図中の各周波数ポイントの値 は,その周波数の前後100 Hz
の平均値として求めている.(a
)の円柱では,Normal
およびInverse
方向 の振動減衰量に違いは見られず,平坦な周波数特性を示す.一方で(b
)に示す円錐では,特定の周波数を境 に16dB
程度,Normal
方向の振動減衰量がInverse
方向より高くなる傾向が得られた.この周波数以下で は両者に大きな差はみられないが,この周波数以上で両者に差が生じ始め,この点を交差周波数F
sとして 求めた.図3
(b
)では7
∼8kHz
付近となり,前章の90
度に対する数値計算結果で得られた交差周波数F
sと ほぼ一致する傾向が得られた.また,図6
に頂角に対する交差周波数F
sの特性を示す.破線は理論値であ り,◆は実測値である.ただし,結果はMouth
の半径を固定したものである.円錐が持つ交差周波数F
sは,Mouth
の半径を固定した場合,角度の増加に伴い上昇し,数値計算と同様の傾向を示すことが確認された. したがって,円錐を用いたインシュレータでは,材質や形状により決定される交差周波数F
sを境に,高 周波数領域でInverse
方向は振動伝達,Normal
方向で振動絶縁しやすい振動伝達の方向特性を併せ持つこ とが実験的にも確認された.Fig. 5
Experimental results of vibration attenuation characteristics related to transmitting
directions
(
b
)Circular cone
(θ= 90
) (a
)Column
3.3
複合インシュレータの振動減衰特性 図1
(c
)に示す構造に対し,(12
)式で得られた伝送行列F
dを用いてInverse
方向の伝送行列F
'
dを求め, 表2
の各値を用いてインピーダンスを計算した結果を図7
(a
)に示す.ここで用いた円錐の高さは,表2
に 示した90
度の場合の50%
程度で,円錐単体の交差周波数F
sは13.3kHz
であるのに対し,2
段に重ねた複 合型では,F
sは5.6kHz
に低下した.また前節同様に試験片を作製し,振動速度のレベル差を求めた図7
(b
) の振動減衰特性の結果でも,5
∼6kHz
を交差周波数として,それ以降の周波数領域ではNormal
方向で振動 減衰量が増加する,図7
(a
)の数値計算結果と同様の傾向が得られた.したがって伝搬定数を用いた本手法 は,単純な要素を組み合わせた複雑な構造に対しても振動伝達におけるエネルギー伝搬の周波数特性を推定 できることが示された.Fig. 6
Comparison between simulation and measurement value related with specific
frequency
Fsand apex angle
θTable 2
Parameters of composite insulator
Parameters Column Circular cone Density Velocity Radius of Throat Radius of Mouth Height Minute length Apex angle Specific Frequency ρ c rt rm h a θ Fs (kg/m3) (m/s) (m/s) (m/s) (m) (m) ( ) (Hz) 8600 3480 1.25×10-2 1.25×10-2 1.10×10-2 − − − 8600 3480 2.00×10-4 5.00×10-3 4.80×10-3 2.00×10-4 90 13300Fig. 7
Comparison between numerical analysis and experimental result
(b
)Experimental result
(a
)Numerical simulation result
4
載置機器の振動低減効果 これまでで得られた円錐の振動伝達特性が,実際に載置機器の振動状態に対してどのように影響するかに ついて,載置機器の振動状態の変化を測ることで実験的に検討する.測定対象として市販のオーディオ用ア ンプを採用し,筐体加振時におけるシャーシ上部の振動速度レベルを,スキャニング振動計を用いて測定し た.図8
に測定システムの概略図を示す.測定ではシャーシ全体に126
箇所の測定点を設定し,各点につき10
回の平均化された振動速度レベルを測定した.頂角が60
度と90
度の円錐および円柱各4
個をアンプの 下に設置し,インシュレータによる振動速度レベルの違いを比較した.アンプへの加振は,別の加振システ ムから,測定対象のアンプ上部(スピーカから1m
の地点)で音圧レベルが80dB
となるよう正弦波信号をス ピーカから放射し,アンプ全体を音響的に加振した.ただし,測定対象のインシュレータはアンプの下面に ある脚4
カ所の下に設置した.また円錐は床側をThroat
とし,Mouth
側にアンプを載せた. 図9
に一例として,10kHz
で加振した際の振動速度レベルの分布を比較した結果を示す.図で(a
)は円柱, (b
)は90
度の円錐を用いた場合の結果を示している.図では円錐の使用により,振動速度レベルが高いこと を示す青や紫色の領域が減少し,レベルが低いことを示す黄や緑色の領域の増加が見られ,全体でみると(b
) は,各測定点で平均1.4dB
程度の振動低減効果が得られた. 各形状に対する振動速度レベルの比較を図10
に示す.低周波領域ではほとんど見られないが,表1
に示 す交差周波数4.8kHz
や8.3kHz
以降の領域を見ると各円錐の振動速度レベルが,円柱より1
∼3dB
程度低 下する結果が得られた.さらに円錐に限るなら,90
度より60
度の方が,振動速度レベルの減少が低周波数 側に寄り,さらに減少量も高い結果が得られた.これは図6
の形状に依存した交差周波数F
sの違いとそれ に伴う機器の振動低減効果との対応を示すもので,周波数に依存しない円柱に比べ,円錐が載置機器の振動 状態に対して影響を及ぼすとともに,目的に応じた設計の可能性をも示すものと考えられる.Fig. 8
Schematic diagram for experimental arrangement
Fig. 9
Comparison of vibration velocity distribution
(10kHz
)(