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生活環境学研究 No.8 2020
現代生活における洗濯板の活用法
ー洗濯板による洗浄効果の検証ー
キーワード:洗濯板,洗濯機,手洗い,洗浄効果,損傷
中川 真佑
[指導教員:武庫川女子大学講師 古濱 裕樹]
1. 研究の背景と目的
私は昔の暮らしにとても興味を持っていて,洗濯板が今も
主婦の間で使用されていることをあるテレビ番組の特集で
知った。実際,どれほど多くの家庭に洗濯板が存在し,使用
されているのかをそれぞれの家庭状況を踏まえた上でアン
ケート調査を行うと同時に大学生の洗濯板に関しての意識と
認知度も調査した。さらに,洗濯板の歴史についても調査
し,洗濯板の本質について考察した。また,調査結果を踏ま
えて実際の洗濯板の洗浄性や損傷について洗濯機や手洗いと
比較実験していくことにした。現代生活における洗濯板の活
用法とそれが暮らしに及ぼす今後の可能性について明らかに
したい。
2. 研究方法
2-1 アンケート調査
2018年11月末から12月中旬の期間で武庫川女子大学の女
子学生200人を対象に洗濯板についての意識調査アンケート
を行った。調査内容は,洗濯板に対する認知度について,洗
濯板に対するイメージについて,洗濯について,洗濯板の普
及についてである。
2-2 文献調査
過去の研究資料や本,インターネット文献をもとに,洗濯
板についての歴史を調査した。
2-3 汚染布作成用の試薬と染料,洗浄に使用した洗剤
酢酸,酢酸ナトリウム,弁柄,オレイン酸,パルミチン
酸,トルエン,オイルブラックBW,牛脂,ヤシ油,オレン
ジⅡ,市販墨滴,液体合成洗剤,固形石鹸
2-4 試験布の作成
湿式人工汚染布〈(財)洗濯科学協会〉以外は以下の汚染
布(5.0×5.0cm),MA試験布(15.0×15.0cm)を自身で作
成し,各種洗濯板と洗濯機,手洗いでの洗浄に使用した。
・土顔料(弁柄)付着布
・油性汚れ(強極性,中極性)汚染布
・親水性汚染布(オレンジⅡ付着布)
・MA試験布
・墨汚染布
また,作成した汚染布はカナキン布(綿100%,平織り,
(株)猪商店 No.110114,15.0×15.0cm)の中央或いは上
部に縫い付けた。(MA試験布は25.0×25.0cm)
2-5 洗浄実験条件
以下の図1に示す洗濯板(木製洗濯板:35.5×16.0cm
(株)土佐龍,プラスチック製洗濯板:32.9×15.0cm コー
ナン商事(株),スポンジ製洗濯板:
31.0×12.0cm(株)
サンコー)で湿式人工汚染布を洗浄する実験では摩擦回数
10回,20回,30回に分けて洗浄を行った。
図1 使用した洗濯板
上から下に摩擦する動作を摩擦回数1回とカウントした。
湿式人工汚染布以外の汚染布は汚れが落ちなくなるまで洗
浄を行った。また,手洗いと洗濯板の波目を使用せずに洗
浄を行った際に揉み洗いを適用した。揉み洗いは布の上部
と下部を両手で持ち,揉み込むようにして上下に摩擦をする
ことを揉み洗いとした。洗濯機はタテ型((株)日立製作
所 BEATWASH BW-DV100A)が水道水2400mL,液体合
成洗剤20mL,洗い12分,すすぎ2回,脱水6分とし,ドラム
式(シャープ(株)Washer&Dryer ES-WD641)は水量多
め,液体合成洗剤20mL,洗い20分,すすぎ2回,脱水5分と
した。洗浄し,乾かした布は分光測色計(CM-2600d コニカ
ミノルタ(株))で反射率を測定し,K/S値と洗浄効率を
算出した。
2-6 損傷試験条件
綿ニット(糸密度タテ39本/インチ・ヨコ43本/イン
チ,(株)色染社)の損傷試験においてはマイクロスコー
プ(サンコー(株)DILITE30)を使用し,200倍に拡大し
て試験布の観察を行った。MA試験布は以下のカナキン布に
カッティングプリンター(ブラザー工業(株)SDX1000)
で穴をあけた図2のものを使用し,洗濯板と手洗いは摩擦回
数30回を条件とした。
図2 作成したMA試験布
卒
業
研
究
要
旨
(
論
文
)
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3. 結果および考察
3-1 アンケート調査
全体的に洗濯板に対する認知度は高いが,使用のイメージ
については否定的なものが目立っていた。また,洗濯板が自
宅にあっても使用していない人が見られた。よって,洗濯板
は学生の間において使用されておらず,関心の度合いが低い
ということが見受けられた。
3-2 洗濯板の歴史
洗濯板はヨーロッパが発祥の地であり,
1797年に発明さ
れた。日本には明治中期に伝わり,タライと共に洗濯には欠
かせない道具となった1)
。日本と西洋の洗濯板での洗浄にお
ける共通点は布の素材が木綿製の丈夫な生地で白物であるも
のを使用することであった。以上の過去の洗濯板に対して現
在使用されているのは,布地を傷めない素材,小さいサイズ
のものなど機能性も高まり,使用しやすいものへと変化して
いた。
3-3 各種洗い方による洗浄,損傷比較
図3 オレンジⅡ付着布の洗濯板,洗濯機,手洗いによる洗浄
図3の洗浄結果から親水性汚れは洗浄性の高さ,損傷の小
ささのいずれに対してもタテ型洗濯機での洗浄が最も良かっ
た。また,綿ニットの洗浄において木製洗濯板はタテ型洗濯
機の次に洗浄性の良かった手洗いとほぼ洗浄性は変わらず,
綿ニットの損傷はタテ型洗濯機の次に小さかったため,すぐ
に汚れを落としたいときに木製洗濯板で洗うと有効的である
ことがわかった。逆にプラスチック製洗濯板の洗浄性は最も
悪く,損傷も手洗いの次に大きかったため,綿ニットなどの損
傷を受けやすい素材の洗浄に向いていないことがわかった。
図4 強極性油汚れの各種洗い方による洗浄効率
次に,疎水性汚れ(土顔料,油性,墨)は汚れの種類に
よって効果的な洗い方は異なった。
土顔料汚れは手洗い(揉み洗い)が有効であった。土顔料
汚れは油性と墨汚れに比べて比較的汚れが落としやすかっ
たためではないかと推測する。また,油性汚れのような落と
しにくい汚れはプラスチック製洗濯板+洗濯機で洗うと最も
汚れは落ちると考えていた。しかし,図
4の洗濯機の結果か
ら,実際は再汚染を受けやすいということがわかった。つま
り,落ちにくい汚れである程,洗浄による機械力が大きいと
洗浄力は高まるが,布への損傷や再汚染に影響するので綿や
麻の織物など丈夫な素材を洗うときに活用することを推奨す
る。
また,洗濯板の中で最も損傷が小さかったスポンジ製は機
械力が小さい分,疎水性汚れなど落としにくい汚れには効果
的ではないが,洗濯板自体に多くの水分を含むことができる
ので親水性汚れには向いていると考える。
さらに,墨汚れは木製が最も高い洗浄性を示した。この結
果は洗濯板の材質,波目の形状が汚れ落ちに関係していると
考える。汚れと洗濯板の関係性について深く検討していく必
要がある。
4. 結論および今後の課題
各汚れに対する洗濯板の洗浄性,損傷結果から,洗濯板は
洗浄効果に差がつく機械力に大きく影響していると考える。
よって,洗濯機の前に洗う予洗いとして洗濯板が使用され
るのは,機械力を大きくすることでより汚れ落ちが良くな
ると考えられているからだと推測する。また,洗濯板は予洗
いによる労力・手荒れ軽減,使用の満足感,木製を使用する
ことによる癒し効果など洗濯という行為の補助的なものとし
て活用していくべきである。さらに,油性汚れのような手洗
い,洗濯機のみでは簡単に落とせない強力な汚れを落とすた
めの予洗いとして使用することを推奨する。そして,節水,
節電になることから,経済面や環境面に良い影響を与えるこ
とができる。
しかし,昔の道具を使うことによる長所,短所がはっきり
表れていないため,汚れや布の種類によってどの材質の洗濯
板を使用すれば良いのか明確ではない。今後,洗濯板を多く
の人に使用してもらうようにするためには今回実験に使用し
た汚れだけでなく,無極性油汚れや化粧汚れなど様々な汚れ
に対する洗浄性を明確にしていく必要がある。さらに,洗濯
板に限らず現代では使われていない他の昔の道具でも現代生
活に役立つ魅力が存在するのではないかと考える。
昔のものを現代生活に合うものへと変化させ,活用してい
くことで日常生活が豊かになるという考え方を忘れず今後も
昔のものに触れ続けたいと思う。
注及び参考文献
1) 後藤景子: 時空を超えた洗濯の話,奈良女子大学,日本油化学
会,日本油化学会創立60周年記念「オレオサイエンスフェア」講
演要旨,2012年8月
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