グリム童話翻訳の歴史的概観
- 著者による童話八編の新訳と共に
第l節 日本におけるグリム童話翻訳
梅
内
幸
信
一般に、海外の文学に関する研究は'特定の作家ないし文学の簡単な紹介から始ま-、続いてその文学作品の翻訳紹介 が行なわれ、ある程度作品の翻訳紹介が済んだ段階で'その作家の詳しい紹介と共に'本格的な文学研究が行なわれる。 この研究手続きにはうときとして若干の異同があるとはいえ、文学研究の基本的な道筋には'大きな変更は見られない。 つまり'文学研究においても'料理のコースにおけるように、胃の消化が支障な-進むように、軽いものから重いもの、 そして最後に、口直しへという具合に、研究が行なわれるのである。この意味において、文学研究における「メイン・ ディッシュ」は'言うまでもなく、作品および作家の研究ということになるであろうが、しかし、読者の立場から見れば' 作品そのもになると言わざるをえない。 日本において、﹃グリム童話集﹄ は、蘭学を通じてすでに江戸時代から紹介され'一八八七 (明治二〇)年に管了法に グリム童話翻訳の歴史的概観グリム童話翻訳の歴史的概観 二〇 ( -) よって日本語に翻訳された。その翻訳名は'﹃西洋古事神仙叢話﹄ であった。つま-'江戸時代に鎖国政策が取られてい たとはいえ、長崎では出島を通じてオランダからヨーロッパの文化が流入していたのである。オランダの政治家・文化人、 またさらには'これに続-宣教師たちを通じて、「グリム童話」は紹介されたのであろう。というのもう ﹃グリム童話集﹄ の根底を貫いている「勧善懲悪の精神」は、キリスト教の倫理とも通じるところが大いにある上に、これを一般民衆に分 か-やす-読-場合に'「グリム童話」は非常に便利なものであるからである。 グリム童話は'日本においてばかりではな-、世界各国においても、非常に愛読されている。古今東西、これほどの読 者を獲得している文学作品は'聖書を除外すれば'他には存在しないと言って良いほどである。その最大の理由は'グリ ム童話が'子どもにとっての格好の読み物であるということになるであろう。しかしながら、﹃グリム童話集﹄ の原題が' ﹃子どもと家庭のための童話﹄ であるという点からも分かるように、この童話集は、決して子どもだけのために書かれた のではなく、子ども以外の家庭の構成員、すなわち、おじいさんやおばあさん'お母さん、お父さんといった人々のため にも書かれたのである。グリム童話の研究に当たっては、この観点を看過してはならぬであろう。 実際、日本において現在、グリム童話というよ-、むしろ、童話一般が、爆発的と言って良いほどのブームをもたらし ( 2 ) ている。その火付け役を果たしたのは、恐ら-'﹃初版 グリム童話集﹄ であろうと思われる。すでにそれ以前に出版さ ( 3 ) れ て い た 、 金 田 鬼 一 氏 の ﹃ グ リ ム 童 話 集 ﹄ ( 岩 波 文 庫 、 全 五 巻 ) も 存 在 し て い る の に 、 ﹃ 初 版 グ リ ム 童 話 集 ﹄ の 方 が 、 大 変な売れ行きを示しているのである。その理由は'ひとえに、「初版」 というところにその理由が隠されていると考えら れる。岩波文庫の ﹃グリム童話集﹄ は'第七版からの翻訳である。思うに'一般の読者は、﹃グリム童話集﹄ が第七版ま で出版されているという事実を明確に知ってはいないのであろう。それゆえ、「初版」 と聞-と読者は、なにかしら 「最 も古-'最も原型に近いもの」、従ってまた、「本物である」 という印象を受けるのではなかろうか。ただし、﹃初版 グ 望 a l 葡 胡 顎 荊 W 崩 記 五 胡 篭 腰 - -1 1 - 叫 -1 農 だ ∼ 1 1 1 山 川 ¶ n -1 - お 目 m 奥 州 -心 付 コ m u -海 員 側 義 教 潜
リム童話集﹄ が好評を博したという、一層大きな理由は'その「残酷な面」であると言わねばならない。というのも'こ ( 4 ) の翻訳に連動する形で'「残酷シリーズ」ないし「恐怖シリーズ」が次々と出版されているからである。加うるに、その シリーズは'単に「グリム童話」に関するものばか-ではな-'「グリム童話よ-ももっと残酷な日本の童話」といった ( 5 ) タイトルで'続々と出版されている。 童話から少し目をそらして、映画界を覗いて見ると、こちらでも「リング」やら「らせん」やら'新たな恐怖を売り物 とする新作が相次いでいる。このブームは'今の日本の新現象かと思えば、どうやらそうでもない。映画の本場と言える アメリカでも'新種の恐怖映画がブームを引き起こしていると言われる。現代の無機質の若者には'恐怖が合うらしい。 筆者の目から見れば'現代の若者は個性に乏し-、それがゆえに逆に、強烈な個性を求めているように思われてならない。 恐怖は、快感とは違って、存在を凝縮させる力である。恐怖の凝縮力によって'若者たちは、自分の存在感を必死に確認 ( 6 ) しようと努めているのであろう。 いずれにせよ、﹃グリム童話集﹄ の第七版におけるよ-も'初版における方がt より多くの残酷な描写が見られること は確かである。しかしながら、このことを'グリム兄弟に噂虐趣味があったなどと理解してはならない。彼らが童話にお ( 7 ) いて残酷な場面を描写するのは、「勧善懲悪の精神」を説-ためのものである。つま-、悪を明確に罰することによって' 子どもに「善の勧め」を説-ことを目的としている。 ところで、日本における ﹃グリム童話集﹄ の代表的な翻訳を時代順に列挙すると、次の通りである。ただし、ここでは' 少な-とも「選集」 レベル以上のものだけを対象としている。ここで大いに役立つ文献は'野村弦氏が、「ドイツ文学」 ( 8 ) 第八〇号に掲載している書誌「日本におけるグリム研究文献」 である。 グリム童話翻訳の歴史的概観 二一
グリム童話翻訳の歴史的概観 一 ㌧ ﹃ 西 洋 古 事 神 仙 叢 話 ﹄ 桐 南 居 士 ( 管 了 法 ) 訳 ' 集 成 社 ' 東 京 一 八 八 七 年 。 二 ' ﹃ 八 ッ 山 羊 ﹄ 呉 文 聴 訳 ' 弘 文 社 ' 東 京 一 八 八 七 年 。 三 ㌧ ﹃ 独 逸 童 話 集 ﹄ 橋 本 青 雨 訳 、 大 日 本 国 民 中 学 会 、 東 京 一 九 〇 六 年 。 四 ㌧ ﹃ 家 庭 お 伽 噺 ﹄ 和 田 垣 謙 三 ・ 星 野 久 成 訳 ' 小 川 尚 栄 堂 ' 東 京 一 九 〇 九 年 。 五㌧ ﹃グリム御伽話﹄中島孤島訳、富山房'東京一九一六年。 六 ㌧ ﹃ グ リ ム 童 話 集 ﹄ 金 田 鬼 一 訳 ' ( 第 一 部 ) 「 世 界 童 話 大 系 」 第 二 巻 所 収 、 世 界 童 話 大 系 刊 行 会 ' 東 京 一 九 二 四 年 。 ( 第 二 部 ) 「 世 界 童 話 大 系 」 第 二 三 巻 所 収 ' 世 界 童 話 大 系 刊 行 会 、 東 京 一 九 二 七 年 。 七 ㌧ ﹃ 祖 稿 グ リ ム 童 話 全 集 ﹄ 田 中 梅 吉 訳 ' 東 京 堂 、 東 京 一 九 四 九 年 。 八 、 ﹃ グ リ ム 昔 話 集 ﹄ ︹ 全 五 冊 ︺ 関 啓 吾 ・ 川 端 豊 彦 訳 ' 角 川 書 店 、 東 京 一 九 五 四 -六 三 年 。 九 ㌧ ﹃ 完 訳 版 グ リ ム 童 話 集 ﹄ ︹ 全 五 巻 ︺ [ 第 一 巻 ・ 矢 崎 源 九 郎 訳 ' 第 二 巻 ・ 大 畑 末 吉 訳 ' 第 三 巻 ・ 植 田 敏 郎 訳 ' 第 四 巻 ・ 山 室 静 訳 ' 第 五 巻 ・ 国 松 孝 二 訳 ] 倍 成 社 、 東 京 一 九 五 四 -五 五 年 。 一〇、﹃学年別おはなし文庫 グリム童話三年生﹄土屋由岐雄著'倍成社、東京(初版一九五七年)一九九九年。 一 一 ㌧ ﹃ グ リ ム 童 話 集 ﹄ ︹ 全 三 冊 ︺ 相 良 守 峯 訳 ' 岩 波 書 店 ' 東 京 一 九 六 六 年 。 一二、﹃白雪姫﹄ (グリム童話集Ⅰ)、﹃ヘンゼルとグレーテル﹄ (グリム童話集=)、﹃ブレーメンの音楽師﹄ (グリム童 話 集 Ⅲ ) 、 植 田 敏 郎 訳 ' 新 潮 社 ' 東 京 一 九 六 七 年 。 一 三 、 ﹃ グ リ ム 童 話 全 集 ﹄ ︹ 全 三 冊 ︺ 高 橋 健 二 訳 、 小 学 館 、 東 京 一 九 七 六 年 。 一 四 ㌧ ﹃ 完 訳 グ リ ム 童 話 集 ﹄ ︹ 全 五 冊 ︺ 金 田 鬼 一 訳 ' 岩 波 書 店 ' 東 京 一 九 七 九 年 。 一五、﹃読みきかせ グリム名作劇場・二〇話﹄小学館'東京一九八九年。
一 六 、 ﹃ グ リ ム 童 話 ﹄ ( 上 ・ 下 ) 池 内 紀 訳 ' 筑 摩 書 房 ' 東 京 一 九 九 二 年 。 一七、﹃子どもに語る グリムの昔話﹄ ︹全六巻︺佐々梨代子・野村弦訳、こぐま社、東京一九九〇⊥九九三年。 一 八 ㌧ ﹃ グ リ ム 童 話 集 ﹄ ( 全 四 巻 ) 池 田 香 代 子 訳 ' 講 談 社 ' 東 京 一 九 九 五 年 。 一九㌧ ﹃グリム童話集﹄ リディアポストマ (絵)、ウィルヘルム菊江 (訳)'西村書店、新潟一九九五年。 二〇㌧ ﹃完訳 グリム童話 - 子どもと家庭のメルヒエン集 - ﹄ (hh.ォ)小棒俊夫訳'ぎょうせい'東京一九九七 年。 二 一 、 ﹃ 初 版 グ リ ム 童 話 集 ﹄ ︹ 全 四 巻 ︺ 吉 原 高 志 ・ 吉 原 素 子 訳 ' 白 水 社 、 東 京 一 九 九 七 年 。 二二㌧ ﹃ベスト・セレクション 初版グリム童話集﹄吉原高志・吉原素子訳'白水社、東京一九九八年。 二 三 ㌧ ﹃ グ リ ム 童 話 ﹄ ( 小 学 館 世 界 の 名 作 一 六 ) 原 作 / グ リ ム 兄 弟 ' 監 修 / 西 本 鶏 介 ' 文 / 乾 備 美 子 、 小 学 館 、 東 京 一 九 九 九 年 。 二四、﹃こどもと大人のためのメルヘン 二五、﹃こどもと大人のためのメルヘン グ リ ム 童 話 ﹄ ポ プ ラ 社 、 東 京 一 九 九 九 年 。 グリム童話Ⅱ﹄ ポプラ社'東京一九九九年。 すでに述べたように、ここでは選集レベル以上のものが列挙されている。しかしながら、日本におけるグリム童話の翻 訳史においては'個別の童話やい-つかの童話の翻訳という形式を採った絵本が最も多いことが、容易に看取される。し かも'それらの童話の物語は'子どもの年齢別に、様々な形で翻案されたものが圧倒的に多数である。この意味において、 十番目の翻案は'「学年別おはなし文庫」という条件が付けられている点でも、非常に興味深い。恐らく'さらに詳細な リストを作成してみれば、この種の翻案と、この種の翻案に基づ-絵本が、その大多数を占めることは容易に予測される。 グリム童話翻訳の歴史的概観
グリム童話翻訳の歴史的概観 従って'このリストからもれている子ども向きの選集・絵本が、これ以外にもかな-存在することはお断-しておかな-てはならない。 筆者の経験によれば'グリム童話をなんらかの形で知っている学生は多いのであるがt LかLt彼らの大半は'絵本・ 映画等を通じてグリム童話に出会ってお-'グリム兄弟の ﹃グリム童話集﹄ そのものを通じて知っている学生は'驚-ほ ど少ない。グリム童話は有名であるが、しかし'﹃グリム童話集﹄ そのものは'案外読者に知られていないのである。
第二節 グリム童話の翻案について
﹃グリム童話集﹄ は、確かに'本来家庭における子どもばか-ではな-'大人のためにも書かれたのであるが、しかし、 現代における読者ということになると、やは-'大人よ-は子どもの方が圧倒的に多数を占めるであろう。ただし'ここ において留意しなければならないことは'これらの子どもたちが読むグリム童話は'大半は翻案になるテキストであると いう事実である。 実際、﹃白雪姫﹄一つを取ってみてもう恐ら-﹃グリム童話集﹄ の中に収められている形での物語が子どもたちによっ て読まれることは、現代において極めて稀であると思われる。むしろ、それぞれの時代において'それぞれの国の比較的 無名の作家'ないし詩人が書き換えたテキストの方が読まれていると言えよう。試みに'幼稚園児向けに書き換えられた ﹃しらゆきひめ﹄を読んでみると'グリム童話に見られる反復描写がかな-省略され'継母の三度に亙る白雪姫殺害のた ( 9 ) くらみは、毒リンゴ一回に限定されている。また'継母は、焼けた鉄の靴を履かされて処刑されるのではな-'白雪姫を ( 2 ) 殺す目的で'王子と白雪姫の結婚式へ 「まほうのほうき」に乗って出かける途中で、雷に当たって死ぬ形を採っている。恐ら-'この描写は'焼けた鉄の靴を履かせて殺すという中世の処刑法が'現代では一般に馴染みのないものとなってい るからなのであろう。 この種の翻案は'低年齢層の子どもに向けた絵本では、頻繁に見られるものである。と-わけ'子どもが独-で読むよ うに作られている絵本では'オリジナルなグリム童話は'皆無と言って良いほどに少ない。これも止むを得ないことであ るとはいっても'望ましいのは'やはり'おばあさんやおじいさん、あるいはお母さんやお父さんが'ときどき解説を交 えながらオリジナルのグリム童話を子どもに読んで聞かせることであろうと思われる。これによって、家庭内における親 子の杵も強められるというものである。テレビを見た-'テレビ・ゲーム'あるいは個人的な趣味の追求が主流となって′ いる現代において'親子の交流は'益々少な-なってきている。しかしながら'世代間を繋ぐ親子の交流が減ってきてい ることは'次世代へ予想以上の悪しき影響を与えると考えられる。子どもは、親を模倣する。とはいえ'そこに全く会話 が媒介しないとすれば、子どもは親の外面的態度のみを模倣することとなって、肝腎の精神面は'なかなか模倣できない という結果をもたらすであろう。
第三節 ﹃グリム童話集﹄ の版について
﹃グリム童話集﹄と聞-とうなにかしら現在あるような形で'初めから一定数の童話が収録されていたかのような印象 を与えるが'しかし、この童話集は、一八二一年に初版第一巻が、続いて一八一五年に初版第二巻が出版されて以来'一 八五七年に第七版が出版されるまでに、その童話の収録数ばか-ではな- 'かな-の童話は、文体上・内容上の修正を施 (」) (S) されている。それどころか'初版以降削除された童話や新たに追加された童話も少なからず存在している。ちなみに'初 グリム童話翻訳の歴史的概観グリム童話翻訳の歴史的概観 ( 2 ) 版以降の収録童話数を列挙すれば、次の通-である。 一㌧初版 (第一巻一八二一年'第二巻一八一五年)一五六 二 、 第 二 版 ( 一 八 一 九 年 ) 三 、 第 三 版 ( 一 八 三 七 年 ) 四 、 第 四 版 ( 一 八 四 〇 年 ) 五 、 第 五 版 ( 一 八 四 三 年 ) 六 、 第 六 版 ( 一 八 五 〇 年 ) 七 、 第 七 版 ( 一 八 五 七 年 ) 一六一 一 六 八 一 七 八 一九四 二 〇 〇 二 〇 〇 次に、これまで出版されている ﹃グリム童話集﹄全訳の中で、現在入手しうる代表的なものを調べてみると、それらは 異なった版を用いて訳出していることが分かる。版の種類をその項目の冒頭に明記して、それらの翻訳を列挙すると次の 通りである。 一 ㌧ 「 第 七 版 」 ' ﹃ 完 訳 グ リ ム 童 話 集 ︹ 全 五 冊 ︺ ﹄ 金 田 鬼 一 訳 、 岩 波 書 店 ' 東 京 一 九 七 九 年 。 二 ㌧ 「 第 七 版 」 、 ﹃ 完 訳 版 グ リ ム 童 話 集 ﹄ ︹ 全 五 冊 ︺ [ 第 一 巻 ・ 矢 崎 源 九 郎 訳 、 第 二 巻 ・ 大 畑 末 吉 訳 ' 第 三 巻 ・ 植 田 敏 郎 訳 ' 第 四 巻 ・ 山 室 静 訳 ' 第 五 巻 ・ 国 松 孝 二 訳 ] 倍 成 社 ' 東 京 一 九 八 〇 年 。 三 ㌧ 「 第 二 版 」 、 ﹃ 完 訳 グ リ ム 童 話 - 子 ど も と 家 庭 の メ ル ヒ エ ン 集 - ﹄ ︹ 全 二 巻 ︺ 小 棒 俊 夫 訳 、 ぎ ょ う せ い ' 東 京
一 九 八 五 年 。 四 ㌧ 「 初 版 」 ' ﹃ 初 版 グ リ ム 童 話 集 ﹄ ︹ 全 四 巻 ︺ 吉 原 高 志 ・ 吉 原 素 子 訳 、 白 水 社 ' 東 京 一 九 九 七 年 。 五 ㌧ 「 第 七 版 」 、 ﹃ グ リ ム 昔 話 集 ﹄ ︹ 全 三 冊 ︺ 関 啓 吾 ・ 川 端 豊 彦 訳 ' 角 川 書 店 ' 東 京 一 九 九 九 年 。 ところで'ドイツにおける 「ドイツ古典叢書出版社」 から出版された ﹃グリム童話集﹄ (一九八五年) は、グリム童話 ( 2 ) 研究の現在生存している研究者の中で'第一人者と言えるハインツ・レレケ教授が編集出版したものである。ここにおい て彼は、第三版に基づいて編集している。ところが'同様に彼が、それ以前に編集出版し、レクラム文庫に収められてい る ﹃グリム童話集﹄ (全三巻'一九八〇年) は'第七版に基づいている。一般に、研究者にとって'先達の研究者に追随 することは、なんとな-憤られることであろう。従って'他の研究者とは違った研究方法ないし研究成果を提出したいと いう願望は'もっともなことである。しかしながら'﹃グリム童話集﹄ の編集ないし翻訳に関して異なった版に基づくと いう研究方法の根底には'奇をてらうこと以上の理由が存在すると思われる。言うまでもなく'「初版」は'「オリジナル のもの」という点で、その存在価値と翻訳価値をもっている。同様に、「第七版」は、「最終の'完全なもの」という点で、 その存在価値と翻訳価値をもっている。そうすると'「第二版」と 「第三版」 は'いかなる存在価値をもつことになるの であろうか。 グリム兄弟が初版を出版したとき、子どもの道徳的教育に杓子定規的にこだわる批判家たちは、﹃グリム童話集﹄ に見 られる残酷な描写や不道徳な描写は、子どもの道徳的教育という点で好まし-ないと避難したのであった。この批判は' 全面的に正しいものとは言えなかったのであるがt LかLt 確かに行き過ぎの観がある描写もあるにはあったのである。 そこで'グリム兄弟は、第二版において'家庭内暴力や殺人'近親相姦'性的描写等を部分的に削除したのであった。 グリム童話翻訳の歴史的概観
グリム童話翻訳の歴史的概観 ( 」 ) 従って'第二版以降において、「あまりにも残酷なもの」 は'ほぼその姿を消すこととなったのである。 初版第一巻は一八一二年に'そして、初版第二巻は一八一五年に'グリム兄弟がアルニムに勧められたゲオルク・ライ マ-社から出版された。部数は'九〇〇部であった。第二版は一五〇〇部出版されたが、これも初版同様売れ行きが悪く、 一八五六年に再版される段階になっても残部があ-、それどころか、一九五〇年に至っても'六マルクで提供されていた ( 2 ) と言われる。アルニムの考えによれば'初版の売れ行きが悪かった原因は'第一に「学問的な注釈と序文が添えられてい ( 」 ) たこと」、第二に 「挿絵が欠けていたこと」 であった。この忠告に基づいて改訂された第二版の売れ行きも芳しくなかっ たのであるが、しかし'五〇の童話を選んで同じライマ-社から出版された ﹃グリム童話選集﹄ の方は'かなり好調な売 れ行きを示したのであった。一五〇〇部出版されたこの選集は、一八二五年以降'一八三三年'一八三六年'一八三九年' 一八四一年、一八四三年'一八四四年、その後出版社を変えて、ベルリーンのドゥンカー社から一八五〇年、一八五三年' 3 一八五八年と、九回版を重ねている。ある意味では'この ﹃グリム童話選集﹄ の人気によって 「グリム童話」 は有名に なったと言えるのである。 2) 初版および第二版において、グリム兄弟は'その出版謝礼を諦めざるをえなかった。しかし、﹃グリム童話選集﹄ の好 調な売れ行きにもかかわらず、全-謝礼を支払わなかったライマIに不満を覚え、ついに'グリム兄弟は'第三版をゲッ ティンゲンのディ-テリヒ社から出版することとなる。グリム兄弟は、一八三七年の 「ゲッティンゲン大学七教授追放事 件」もあって、なんらかの出版謝礼を期待せざるをえない状況に追い込まれていたと考えられる。しかしながら'﹃グリ ム童話集﹄ の出版社を変えたという事態は'﹃グリム童話集﹄ 改訂の過程において、かな-大きな変化を意味していると 言わざるをえない。というのも'この三版以降'初めてグリム兄弟は'ブレンタ-ノとアルニムの童話形式から脱皮し、 従来の古い民謡の調子を踏まえながら'グリム兄弟独自の童話形式を確立したと考えられるからである。﹃少年の魔法の
( ァ ) 角笛﹄のもつ「魅力的で、芸術的で、擬古調の」調子を乗-越えたとき、初めて「グリム童話」が誕生したと言えるであ ろう。この意味において、第三版は、﹃グリム童話集﹄改訂の歴史において、重要な位置を占めている。恐らく,レレケ も'この点を重視して、「ドイツ古典叢書」に第三版を収録したと思われる。
第四節 グリム童話八編の新訳
童話の研究方法に関しても、文学研究に関する方法と同様に、主として次のような七つの方法が考えられる。 一㌧作品の構造・文体研究 二㌧作品の歴史と解釈に関する研究 三 ㌧ 伝 記 ・ 書 誌 学 ・ 史 料 学 的 研 究 四㌧社会学・現実問題の観点からの研究 五、芸術・芸術家の観点からの研究 六㌧哲学的観点からの研究 七㌧心理学的・精神分析学的観点からの研究 一、二、三の研究方法は別として、四、五㌧六、七㌧と-わけ七の研究方法を採る場合には'グリム兄弟が最も心血を 注いだ第七版が役立つと考えられる。グリム兄弟が'民衆の問に広まっている童話を'一字一句変えずに'そのまま忠実 グリム童話翻訳の歴史的概観グリム童話翻訳の歴史的概観 に収録したと考えて、﹃グリム童話集﹄を民俗学的な資料と見なすとすれば'かな-の幻滅を味わうことになるであろう。 というのも'グリム兄弟は'収録した童話をそのまま童話集の中に収めているのではな-'文体を整えた-'不十分な箇 所を補ったり、あるいは加筆したりしている。そもそも、彼らは'一つの童話に様々な類話が存在する場合には、それら の類語を比較・検討しながら'一つの一貫した童話に作-上げているのである。この意味において'グリム童話は'確か に「民俗童話」ではあるものの、部分的にはグリム兄弟の「創作童話」であるという局面ももっているのである。 童話の解釈に際しては'通常の文学作品'とりわけ短編小説や長編小説と違って、一つ一つの単語のもつイメージとシ ンボルが重要な役割を果たすゆえに'他人の翻訳に基づいた場合、大きな誤解が生ずる可能性が大である。それにまた、 翻訳というものは、そもそも'なんらかの意味において、訳者の「思い入れ」が大き-反映しているものである。ところ が、その「思い入れ」が、逆に、童話の解釈の大きな妨げとな-かねないのである。従って'童話の解釈者は'必然的に' まずは自分なりの翻訳を試みなければならない。 様々な年齢層に向けられて出版される童話の翻訳'あるいは翻案についても'種々の観点から論ぜられねばならぬであ ろう。しかし、このことは、今後の研究のテーマとし、ここでは取-敢えず、今回の翻訳の指針を次に掲げるだけにして お き た い 。 一㌧翻訳の底本としては'「ドイツ古典叢書」に収められている﹃子どもと家庭のための童話﹄ (第三版)を用いた。 二㌧ 「段落」 の形式は'第三版における形式を踏襲した。 三 ㌧ 漢 字 は ' す べ て 「 ル ビ 」 を 付 し て 、 使 用 し た 。 四㌧翻訳は'極力原文から離れないように努めた。
五、「韻」を踏んでいる個所に関しては'そのニュアンスが看取されるように訳出した。 最後に、筆者がこれまで深層心理学的解釈を試みた童話の翻訳を提示する。 グリム童話八編 か え る お う べ っ し ょ う て つ ﹃ 蛙 の 王 さ ま ﹄ ( 別 称 、 ﹃ 鉄 の ハ イ ン リ ヒ ﹄ K H M こ グリム兄弟・作
梅
内
幸
信
・
訳
む か し む か し 、 b < N の 願 い が ま だ か な え ら れ た こ ろ の こ と , b l 亮 の 部 さ ま が 衝 ん で お り ま し た 。 部 さ ま に は お 鵬 さ ま が い ひ め う つ -す え ひ め う つ -お お ぜ い ぴ じ よ み て ん と う て'どのお姫さまも美しかったのですが、わけても末のお姫さまがとても美しく'大勢の美女を見てきたお天道さまさ ひ め か お て う つ -ふ し ぎ お も お う し ろ え、このお姫さまのお顔を照らすたびに、どうしてこんなに美しいものかと不思議に思うほどでした。王さまのお城の そ ば に 、 う っ そ う と 斬 っ た 邦 き な 都 が あ り ま し た 。 そ し て , 都 の 朝 の 鋸 を と っ た 都 い 酔 新 郎 の Y -に , 覇 が わ い て い ま し あ つ ひ ひ め も り は い い ず み す わ た い く つ き ん た。とても暑い日には、お姫さまは森に入って、すずしい泉のほとりに座-ました。そして、退屈したときには'金の だ た か な お -う ひ め だ い す あ そ マリを出して、それを高-ほう-投げては'落ちて来るのを受けとめていました。それが、お姫さまの大好きな遊びでし た。 ひ き ん う と ひ め て じ め ん お ある日のこと、この金のマリが'受け止めようとのばしていたお姫さまのかわいい手をそれて、地面に落ち'そのまま い ず み み ず な か お ひ め い ず み き ん さ が き ん まっすぐ泉の水の中へころげ落ちてしまいました。お姫さまは'泉をのぞきこんで金のマリを探しましたが'金のマリ か げ か た ち み い ず み ふ か そ こ み か な ひ め な は影も形も見えません。泉は深-て'底も見えない-らいでした。悲し-なったお姫さまは、泣きだしてしまいました。 グリム童話翻訳の歴史的概観グリム童話翻訳の歴史的概観 三二 お お こ え な す こ な ぐ さ ひ め な か な ますます大きな声で泣きましたが、そうしたところで少しも慰められませんでした。こうして、お姫さまが泣き悲しん よ こ え ひ め い し あ わ でいると'だれかが呼びかける声がしました。「どうしたんだい'お姫さん'まった-石っころでさえ憐れみた-なるく な こ え ひ め み ま わ い つ ぴ き か え る め らいに泣いてるね。」どこからその声がしているのかと'お姫さまがあたりを見回すと'一匹の蛙が目にとまりました。 か え る み に く あ た ま す い め ん か え る ひ め その蛙は'ぼてぼての醜い頭を水面からつきだしていました。「あら'ピチパテヤの蛙くんじゃない」 と'お姫さま い な き ん い ず み な か し ず な は言いました。「あたしが泣いているのはね'あたしの金のマリが泉の中へ沈んでしまったからなの。」 「泣くのはやめな か え る い ほ う ほ う み と よ」と'蛙が言いました。「ぼ-がきっといい方法を見つけるからさ。でも、ぼ-があんたのマリを取-もどしたら'お 鵬さんはぼくになにをくれるんだい。」お鵬さまは,一計いました。「喧くんの衡しいものならなんでもあげるわ,あたし ふ く し ん じ ゆ ほ う せ き あ た ま き ん か え る い の服だって'真珠だって、宝石だってね。それに、あたしの頭にのっけてる金のかんむ-だって。」すると、蛙は言い ふ く し ん じ ゆ ほ う せ き き ん す ました。「あんたの服も、真珠や宝石も、金のかんむ-も、ぼ-はいらないよ。でも、ぼくを好きになってくれて'ぼく な か ま い あ そ と も し ょ く じ す わ き ん さ ら た を仲間に入れて'遊び友だちにして'食事のときあんたのとなりに座らせて'あんたの金の皿で食べさせて'あんたの の ね や -そ -き ん み ず そ こ コップで飲ませて'あんたのベッドで寝させてもらえるのを約束して-れるのだったら'ぼ-は金のマリを水の底から き ひ め い や く そ く き ん と き もって来てやるよ。」 「いいわよ」と'お姫さまは言いました。「なんでも約束するわ、あんたが金のマリを取って来て-約束を受けとると'蛙は頭を水の中に沈めて、下の方へもぐって行きました。それからしばら-して' う き かえる くち -さ なか ひめ れ さ え す れ ば ね 。 」 し か し ' み ず な か に 水の中で似たものどうLでt や -そ く う か え る ひ め こ こ ろ な か か ん が か え る か え る お姫さまは'心の中では'こう考えていました。「ばかな蛙のおしゃべ-じゃない。蛙は' な に ん げ ん な か ま グァグァ鳴いていりやいいのよ、どうせ人間の仲間になんかなれっこないわ。」 あたま みず なか しず した ほう ゆ か え る み ず 蛙は水をか じ ぶん うつく きわけ浮かんで来ました。蛙は'口にマリをくわえていて、それを草の中へほう-だしました。お姫さまは、自分の美 き ん ふ た た め お お よ ろ こ ひ ろ あ は し ま ま しい金のマリを再び目にすると、大喜びで、マリを拾い上げ、それをもってさっさと走-だしました。「待って、待っ か え る さ け は や は し てよ」と、蛙は叫びました。「ぼ-もいっしょにつれてってよ。ぼ-は'あんたみたいに早-走れないんだから。」 しか
ひ め こ え さ け ひ め か え る こ え き し、グァグァとう お姫さまのうしろから声のかぎ-叫んでも、むだでした。お姫さまは'蛙の声を聞こうともしないで' い そ し ろ か え か え る わ す か え る ふ か み ず な か 急いでお城に帰り'すぐに、かわいそうな蛙のことなど忘れてしまいました。そこで蛙は、しかたな-また深い水の中 ゆ におりて行かなければな-ませんでした。 つぎ ひ ひめ おう なみ だいじん しよくたく 次の日のこと'お姫さまが'王さまや並いる大臣たちと食卓についてt だい りせき かいだん あ -き ん さ ら た 金の皿で食べていると'ピチパテヤ、ピチパ うえ っ さけ チヤとう なにやら大理石の階段をはい上がって来るものがあ-ました。そして'上に着-と'それはドアをたたいて'叫 ひ め す え ひ め ひ め びました。「お姫さ-ん'末のお姫さ-ん'ドアをあけてよ。」 お姫さまは' か え る ひ め けてドアをあけると'そこにいたのはあの蛙だったのです。お姫さまは' そ と み お も だれが外にいるのか見ようと思って'かけつ ふ た た し よ く た く あわててドアをバタンとしめて'再び食卓 し ん ば い お う ひ め む ね ま ヂ な わ につきましたが、とても心配でなりませんでした。王さまはう お姫さまの胸が激し-ドキドキ鳴っているのが分か-まし い そ と お お お と こ たので、こう言いました。「おい、おまえ'なにをこわがっているんだね。ドアの外に大男でもいて'おまえをさらって お お お と こ ひ め い お お お と こ ゆこうとでもいうのかね。」 「いいえ'大男などではあ-ません」 と'お姫さまは言いました。「大男ではな-て'むか か え る も り き ん み ず な か と き か え る な か ま い つくような蛙なの。あたし、きのう森であたしの金のマリを水の中から取って来て-れたら、あの蛙を仲間に入れてあ か え る や く そ く か え る み ず な か で -か ん が げるって、あの蛙と約束したの。でも、あたし、あの蛙が水の中から出て来るなんて、ちっとも考えなかったわ。な か え る い ま そ と き な か は い のに'あの蛙は、今ドアの外に来ていて'中に入って'あたしのところにこようとしてるんです。」 お と さ け こ え き をたたく音がして、叫び声が聞こえました。 そのとき、またドア ひ め す え ひ め 「 お 姫 さ -ん ' 末 の お 姫 さ -ん 、 ドアをあけてよ' ヽ■ しy きのうぼくに言ったこと、 グリム童話翻訳の歴史的概観
グリム童話翻訳の歴史的概観 わす あんたは忘れたの。 い ず み み ず い すずしい泉の水のほと-で言ったことをさ。 ひ め す え ひ め お姫さ-ん'末のお姫さ-ん' ドアをあけてよ。」 三四 お う い や -そ -ま も い すると'王さまは言いました。「約束をしたのなら'やは-守らなきやならんよ。行って'ドアをあけてあげなさい。」 お鵬さまが掛って、ドアをあけると,鴫がピョンピョンはねて朝に射り,お鵬さまの那く雛をかいかけて,イスのとこ き か え る さ け あ ひ め ろまでやって来ました。蛙はそこでとまって、叫びました。「ぼ-をあんたのそばに上げてよ。」お姫さまは、そうして あげようとはしなかったので,とうとう部さまが,そうするよう郎じました。鴫はイスの烏に力がると,こう一一計いまし た。「さあ,あんたの釦の鋸を,もっとぼくの郡に戯づけてよ。ぼくたちが,いっしょに釦べれるようにね。」お鵬さまは、 そうしてあげましたが、しかし、いやいやながらそうしていることは,ほかのだれの酌にもちゃんとかかりました。か魁 はたらふく釦べましたが,お鵬さまの邪は、ほとんど1蝪も配即にのどを蹴りませんでした。そして,献雛に,鴫は一計 ま ん ぷ -つ か う え し ん し つ き ぬ と と の いました。「もうぼ-は満腹して、疲れたから'ぼ-を上にあるあんたの寝室へつれてって'絹のベッドを整えてよ。そ ね ひ め な れ い こ く か え る うして'いっしょに寝ようよ。」すると、お姫さまは、泣きだしてしまいました。冷酷な蛙がこわかったのです。それに' こ ん ど じ ぶ ん う つ -ね さわるのもいやなのに'今度は、自分の美し-てきれいなベッドに寝かしてあげなければならないからです。しかし、 お う お こ め ひ め い や -そ -ま も か え る 王さまは'怒った目つきでお姫さまをにらんで'こう言いました。「約束したことは'ちゃんと守らにゃならん。蛙は、 な か ま ひ め い か え る ゆ おまえの仲間なんだから。」お姫さまが、いやだと言いはってみても'むだなことでした。蛙をいっしょにつれて行かな ひ め お こ に ほ ん ゆ ぴ か え る う え ゆ -てはな-ませんでした。それで'お姫さまは、すっか-怒ってしまい'二本指で蛙をつまんで、上へつれて行きまし 雪 男 か 層 朋
た 。 そ し て 、 ヽ■ -∨ 言いました。 と こ ろ が t はうりつ ひ め は い か え る な か い か お姫さまはベッドに入ると、蛙をベッドの中に入れる代わ-に' や す か え る 「これでゆっく-休めるでしょう このいやらしい蛙め。」 か え る お も か べ 蛙を思いっき-壁にたたきつけて'こう し た お し が え る め い わ か お う じ お う じ 下に落ちたものは、死に蛙ではなく、やさし-てすてきな目の、生きている若い王子さまでした。王子さ ちちおや みと ひめ あい とも しゆじん まは'法律によっても'父親によっても認められましたので、お姫さまの愛する友だちとな-、ご主人さまとな-ました。 ふ た り ま ん ぞ く い つ し よ ね む つ ぎ ひ あ さ ひ ひ か り ふ た り め は く ば は ち と う だ て ば し や い ち だ い こうして、二人は満足して一緒に眠-ました。次の日の朝、陽の光で二人の目がさめると'白馬八頭立の馬車が一台 き う ま あ た ま は ね か ざ う ま き ん く さ り ば し や わ か お う やって来ました。どの馬の頭もダチョウの羽で飾られ、馬は金の鎖でつながれていました。馬車のうしろには'若い王 め し つ か た わ か お う ち ゆ う じ つ け ら い ち ゆ う し ん ち ゆ う し ん さまの召使いが立ってお-ました。これが'若い王さまの忠実な家来'忠臣ハインリヒでした。忠臣ハインリヒは' し ゆ じ ん か え る か か な か な む ね き む ね ご主人さまが蛙に変えられたとき'ひど-悲しんで、その悲しみのあま-'胸がはち切れないようにと'胸のまわ-に て つ さ ん ぼ ん ば し や わ か お う -に ば し や 鉄のタガを三本はめさせなければな-ませんでした。けれども、この馬車は、若い王さまを国へおつれする馬車なのです。 ち ゆ う し ん ふ た り ば し や な か の ふ た た ば し や た こ こ ろ お う 忠臣ハインリヒは'お二人を馬車の中へ乗せ、そして'再び馬車のうしろに立ちました。ハインリヒの心は'王さま す く よ ろ こ ば し や す す お う じ ほ う と が救われた喜びでいっぱいにな-ました。馬車がしばら-進むと'王子さまは'うしろの方でなにかがほじけ飛ぶよう は れ つ お と き お う じ む こ え な、破裂する音を聞きました。そこで、王子さまはふり向いて、声をかけました。 ば し や 「ハインリヒ'馬車がこわれるぞ。」 し ゆ じ ん ば し や 「 い い え 、 ご 主 人 さ ま t . 馬 車 で は ご ざ -ま せ ぬ ぞ 。 し ゆ じ ん か え る か ご主人さまが蛙に変えられて' し ゆ じ ん い ず み な か ご主人さまが泉の中におられて、 わ た く し む ね お お く る み 私の胸は大きな苦しみに満たされたのでございました。 グリム童話翻訳の歴史的概観
グリム童話翻訳の歴史的概観 む ね き お と そのとき、胸がほじけぬようにとはめたタガの、はち切れる音でございました。」 三六 い ち ど い ち ど もう一度'さらにもう一度とt おも と思いました。けれどもそれは' と ち ゆ う は れ つ お と お う じ ば し や 途中で破裂する音がしました。そのたびに王子さまは、馬車がこわれるのではないか か鋸のご封此さまが断われ朝せになられたという覇びのあまり、郎酎ハインリヒが む ね き お と 胸にはめたタガのはち切れる音にすぎませんでした。 はい ﹃ 灰 か ぶ り ﹄ ( * I 2 二 二 かね も おとこ つ ま び よ う き ある金持ちの男がお-ましたが、その妻が病気になりました。 つ ま じ ぶ ん し ち か か ん ひ と り 妾は、自分の死が近づいたことを感じとると'一人 む す め じ ぶ ん ま く ら よ 娘を自分の枕もとに呼んで、 かみ だよ。そうすれば'神さまは、 えのそばについててあげるよ。」 し か み し ん こ こう言いました。「ねえ'おまえ、どんなときでも神さまを信じて'いい子にしているん た す か あ て ん ご く み ま も いつでもおまえを助けて-ださるだろうLt 母さんも、天国からおまえを見守って'おま そう一計って、お郎さんは酢をとじて、かくなりました。鵬は、郁耶お郎さんのお獣に い な か み し ん こ ふ ゆ ゆ き し ろ ぬ の は か 行って泣きました。そして、神さまを信じ'いい子にしてお-ました。でも、冬がきて、雪が白い布のように'お墓をお は る ふ た た ぬ の と さ か ね も べ つ つ ま む か おいました。やがて、春がきて'再びその布を取-去ると'その金持ちは'別の妻を迎えました。 つま ふたり むすめ き こ かお しろ ぎゃく こころ なか よご その妻は'二人の娘をつれて来ました。つれ子たちは'顔は自-てきれいでしたが'逆に'心の中は汚れて真っ黒 ま くろ こ ひ ぴ は じ へ や でした。ですから'かわいそうなまま子にとっては'つらい日日が始ま-ました。「なんてやつが部屋にいるんだい」 ま ま こ い は ん た じ ぶ ん り よ う り お ん な で ゆ まま矧とつれ子たちは言いました。「ご飯を食べたかったら、だれだって自分でかせぐんだよ。料理女は出て行け。」
い さ ん に ん む す め き き も の と は い い ろ ふ る き う言うと'三人は、娘の着ていたきれいな着物をはぎ取って'灰色の古ぼけたうわっぼりを着せ、ばかにしながらはや したて,鵬を郎覇へつれて衝きました。そこで、鵬は,とてもつらい恥部をしなければなりませんでした。酢は師の で ま え お み ず は こ ひ に た せ ん た -ね え 出前に起きて、水を運び、火をおこして'煮炊きをし、洗濯をしなければなりませんでした。おまけに'このお姉さんた ちは、ありとあらゆるいじわるを郭是しては,鵬をいじめたり,ののしったりするのでした。また,お離さんたちは, えんどう朝やひら朝を配の鞘へぶちまけるので,鵬は射ったままで,朝を鋸いださなければなりませんでした。配に なって,さんざん郎いて碗きっても,鵬は掛郎ではなく,かまどのそばの配の朝で眠らなければなりませんでした。 それで,鵬は,いつもほこりまみれで,離れて単音したので,まま鋸とつれ手たちは,この鵬を「配かぶり」と酔び ま し た 。 ある師のこと,お須さんが郡へ師かけることになりました。そこで,お須さんは, 'ォルのつれ手たちに,おみやげにな に が 卸 し い か と た ず ね ま し た 。 「 き れ い な 新 郎 を ね 」 と , b l N ル の つ れ 手 が 一 一 針 う と , も う b l " ル の つ れ 手 は 、 し ん じ ゆ ほ う せ き 「真珠と宝石を ね」とl一計いました。「ところで、配かぶり、おまえはなにが衡しいんだい」と,お須さんはたずねました。「お須さん,お か え と う ぼ う し さ い し よ こ え だ お き は い い 帰りのとき'お父さんの帽子にあたった最初の小枝を'折って来てちょうだいね」と、灰かぶりは言いました。さて、お と う ふ た り こ き も の し ん じ ゆ ほ う せ き か か え み ち あ お あ お 父さんは、二人のつれ子たちのおみやげに'きれいな着物と'真珠と宝石を買いました。そして、帰り道で'青青とした き と お き こ え だ と う ぼ う し お と う 木のしげみを通ったとき、ハシバミの木の小枝がお父さんにふれて'帽子が落ちてしまいました。そこで、お父さんは' こ え だ お か え い え か え と う こ の ぞ し な じ な は い その小枝を折って'それをもち帰-ました。家に帰ると'お父さんは'つれ子たちには望みの品品をあげ'灰かぶりには こ え だ は い と う れ い い か あ は か い こ え だ は か う え う ハシバミの小枝をあげました。灰かぶ-は'お父さんにお礼を言い'お母さんのお墓へ行って'その小枝をお墓の上へ植 な な み だ は か み ず えました。そして、そこでおいおい泣きましたので'その涙で'お墓は、水がまかれたようになってしまいました。や が て , そ の 中 根 は 邦 き く な っ て 、 り つ ば な か に な り ま し た 。 鋸 か ぶ り は 、 郁 耶 T l i か そ の 和 の へ か っ て 、 如 い て ほ お 靴 り グリム童話翻訳の歴史的概観
グリム童話翻訳の歴史的概観 三八 い ち わ こ と り き う え き は い の ぞ お をしました。すると'そのたびに'一羽の小鳥が木の上にやって来て'灰かぶ-が望むものを'なんでも落として-れる の で し た 。 お う え ん か い ひ ら え ん か い お う じ は な よ め さ が み つ か か ん つ づ ところが、あるとき'王さまが宴会を開-ことにな-ました。この宴会は'王子さまが花嫁を探すために'三日間続-ふ た り こ え ん か い ま ね ふ た り は い よ い ことになっておりました。二人のつれ子たちも'この宴会に招かれてお-ました。二人は'灰かぶ-を呼んで'こう言い か み く つ こ し と が ね つけました。「あたしたちの髪をとかして'靴をみがいて、それから、腰の留め金をきつ-しめてお-れ。あたしたちは' お う じ え ん か い お ど は い い な 王子さまの宴会で踊るんだからね。」灰かぶ-は、言われるままにしましたが、つい泣いてしまいました。というのも、 は い い お ど ゆ ゆ る ま は い ね が 灰かぶりもいっしょに行って、踊りたかったからです。そこで、行くのを許して欲しいと'灰かぶ-はけんめいにお願い ま ま は い み き お ど しました。でも'まま矧は'「いいかい'灰かぶり、おまえは'身につけるものも'着るものもないし'踊れもしないの え ん か い せ き で い い は い つ づ ね が ま ま に'宴会の席に出ようって言うのかい!」と言いました。灰かぶりが'続けてお願いをすると'とうとうまま矧は'こう い い つ ぱ い ま め に じ か ん ど お ひ ろ あ つ 言いました。「それじゃ、どんぶ-一杯のひら豆をぶちまけてあるから'それを二時間で'もと通-拾い集めな。 い む す め う ら ど に わ で さ け い え ら'いっしょにつれて行ってあげるよ。」 娘は、裏戸から庭へ出て'こう叫びました。「ねえ'家バトちゃ-んう そ ら し た こ と り き ま め ひ ろ て つ だ ちゃ-ん、お空の下の小鳥たち- 、みい-んなここへやって来て、あたしの豆拾い手伝ってえー' そした やま 山バト ま め な べ な か いいお豆は'お鍋の中へ' わ る ま め え ぶ く ろ な か 悪いお豆は'餌袋の中へ。」 だ い ど こ ろ ま ど すると'台所の窓から、 した こ とり に わ しろ こ はい き つづ やま はい く 二羽の白い小バトが入って来ました。 む のこ はい き これに続いて、山バトが入って来ると' は い お そら しまいには空 の下にいる小鳥が'バタバタと群れをなして、残らず入って来て、 灰のまわ-に降-ました。そうして、小バトたちは、
あ た ま あ さ は じ こ と り 頭を上げ下げして、コツ、コツ、コツ、コツと'つっつき始めました。そこで'ほかの小鳥たちも'コツ、コツ'コツ' コ ツ と , つ っ つ き 緋 め ま し た 。 や が て 、 い い 朗 を 配 ら ず ど ん ぶ り の 朝 へ 鋸 い 鄭 め ま し た 。 3 1 4 酎 剛 と た た な い う ち に 、 中 部 たちは、もう恥部を耶炉けて、また配らず,敢んで衝きました。そこで、鵬は、朝の禦たどんぶりをまま鋸のところ ゆ え ん か い ゆ お も は い ま ま へもって行きました。これでいっしょに宴会へ行けると思うと'灰かぶりはうれしくな-ました。ところが'まま矧は' こう一計いました。「だめだよ、配かぶり、おまえには新郎がないし,おまえは離れやしない。いっしょにつれて衝けない き は い な ま ま い に は い ぶ ん ま め は い な か よ。」これを聞いて、灰かぶ-が泣きだすと'まま矧は'こう言いました。「どんぶり二杯分のひら豆を,灰の中からちゃ んと削いだすことができたら,いっしょにつれてってあげるよ。」ところが,覇の朝では,「そんなこと,できっこない さ」と郭孝いました。こうして、まま鋸は,どんぶり一に融のひら朝を,配の朝へぶちまけました。でも、鵬は、郵即 に わ で さ け い え や ま そ ら し た こ と り から庭に出て'こう叫びました。「ねえ、家バトちゃ-ん、山バトちゃ-ん、お空の下の小鳥たち- 、 き ま め ひ ろ て つ だ やって来て'あたしの豆拾い手伝ってえー、 みい-んなここへ ま め な べ な か いいお豆は'お鍋の中へ' わ る ま め え ぶ く ろ な か 悪いお豆は、餌袋の中へ。」 だ い ど こ ろ ま ど すると、台所の窓からt Lた こ とり に わ しろ こ はい き 二羽の白い小バトが入って来ました。 む のこ はい き の下にいる小鳥が'バタバタと群れをなして'残らず入って来て' あ た ま あ さ は じ つ づ や ま は い く そ ら これに続いて、山バーが入って来ると、しまいには空 は い お こ 灰のまわ-に降-ました。そうして'小バトたちは、 こ とり 頭を上げ下げして、コツ、コツ、コツ'コツとう つっつき始めました。そこで'ほかの小鳥たちも、コツ、コツ、コツ、 はじ コツと、つっつき始めました。やがて' グリム童話翻訳の歴史的概観 ま め の こ な か ひ ろ あ つ さ ん じ ゆ つ ぷ ん いい豆を残らずどんぶ-の中へ拾い集めました。こうして、三十分とたたない 三九
グリム童話翻訳の歴史的概観 こ と り し ご と か た づ うちに'小鳥たちは'もう仕事を片付けて' まま ゆ 四〇 の こ そ と と い む す め また残らず外へ飛んで行ってしまいました。そこで、娘は'どんぶ-をま はい ま母のところへもって行きました。そして、灰かぶりは' ま ま い ところが'まま矧は'こう言いました。「なにをしたって' き も の お ど よ。着物ももってないし'踊れないしね。あたしたちが' え ん か い ゆ お も これでいっしょに宴会へ行けると思って、うれしくなりました。 ゆ だめなんだよ、おまえはね。おまえは'いっしょに行けない は じ は な し い ま ま こ し ま い 恥かくだけの話だよ。」こう言うと'まま矧は'つれ子姉妹を で つれて、出かけてしまいました。 い え は い か あ は か い よ 家にもうだれもいなくなると'灰かぶ-は'お母さんのお墓に行って'こう呼びかけました。 からだ 「ハシバミちゃん'ゆらゆらぐらぐら体をゆさぶってね' き ん ぎ ん お あたしに金と銀を落としてね。」 と り き ん ぎ ん い と お き も の き ぬ ぎ ん い と し う わ ぐ つ お すると'いつもの鳥が金と銀の糸で織った着物と、絹と銀の糸で刺しゅうをほどこした上靴を落として-れました。 む す め き も の き え ん か い で こ し ま い ま ま は い わ 娘は、その着物を着て、宴会へ出かけました。つれ子姉妹やまま矧は、それが灰かぶ-だとは分からずに、どこかよそ く に お う じ ょ ち が か ん が ご う か い し よ う み は い う つ -み の国の王女に違いないと考えていました。豪華な衣装を身につけると、灰かぶ-は'それほど美し-見えたのでした。 さ ん に ん は い ゆ め お も は い い ま い え か ん が 三人は、それが灰かぶ-だとは夢にも思いませんでした。灰かぶ-は、今ごろ家にいて'ごみにまみれていると考えて お う じ は い で む か て と は い お ど は じ お う じ ひ と お ど いました。王子さまは、灰かぶ-を出迎えると'手を取って、灰かぶ-と踊-始めました。王子さまは'ほかの人とは踊 は い て は な ひ と き は い お ど お う じ ろうとせず'灰かぶ-の手を離そうとしませんでした。だれかほかの人が来て、灰かぶりと踊ろうとすると、王子さまは' ひ と あ い て い 「この人は'ぼ-のお相手だよ」と言いました。 お う じ ひ く お ど ひ -は い い え か え お う じ 王子さまは'日が暮れるまで踊-ました。日が暮れると'灰かぶ-は、家へ帰ろうとしました。ところが'王子さまは'
お く い お う じ う つ -む す め む す め し 「ぼ-が送ってあげよう」と言いました。それというのも、王子さまは、その美しい娘が'どこの娘なのか知りたかっ たからです。でも,配かぶりは,封かさまの酢からうまくのがれて、ハト小敵の鵬へ批びこみました。さて、部かさまが
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い ち ち お や は い か ん が ま ま こ こんだのだが」と言いました。すると、父親は、「灰かぶ-じゃあるまいな」と考えましたので'まま矧とつれ子たちに 郡と鋸をもってこさせて,ハト小敵を禦!ォOにこわしました。でも,朝にはだれもおりませんでした。そこで,鮎の都 たちが朝へ射ると、鋸かぶりが離れた鄭雛を鄭て,配の朝に軒」ろんでいました。そして、根さなランプのぼんやりとし た輔が、厳裂の朝にともっていました。それというのも、配かぶりは,すばやくハト小敵を瀧りぬけて,ハシバミのか い は い き も の は か う え のところへ行っていたからでした。そこで'灰かぶ-は、きれいな着物をぬいで、それをお墓の上へかけました。すると' と り き も の は こ さ は い は い い ろ き だ い ど こ ろ は い な か いつもの鳥が、その着物をまた運び去ってしまいましたので'灰かぶ-は'灰色のうわっぱ-を着て、台所の灰の中へ もぐりこんでしまっていたのでした。邪の&,髪訂郎しく緋まると、お須さんお郎さんとつれ手たちは、覇び師かけました。躍かぶりは、ハシバミのか
いよ のところへ行って、こう呼びかけました。 からだ 「ハシバミちゃん'ゆらゆらぐらぐら体をゆさぶってね、 き ん ぎ ん お あたしに金と銀を落としてね。」 とり まえ ひ ごう か きもの お す る と ' あらわ 現れると、 いつもの鳥が'前の日よ-ももっと豪華な着物を落としてくれました。 は い き も の き え ん か い 灰かぶ-が、この着物を着て宴会に う つ -お ど ろ お う じ は い く だれもかれもが、その美しきに驚いてしまいました。ところが、王子さまは'灰かぶりが来るのをずっと グリム童話翻訳の歴史的概観グリム童話翻訳の歴史的概観 四二 ま は い く て と は い ひ と り お ど も の き 待っていましたので、灰かぶ-が来ると、すぐにその手を取って、灰かぶ-一人だけと踊りました。ほかの者たちが来て' は い お ど あ い て も と お う じ ひ と あ い て い ひ く 灰かぶ-に踊-のお相手を求めると'王子さまは、「この人は、ぼ-のお相手だよ」 と言いました。そうして'日が暮れ は い い え か え お う じ い い え は い み ましたので、灰かぶ-は家へ帰ろうとしました。すると'王子さまは'いっしょについて行ってう どの家に入るか見よう は い お う じ い え に わ な か と に わ としました。ところが、灰かぶ-は'王子さまのそばからのがれて'家のうしろの庭の中へ跳びこみました。庭には、 お お き い つ ぽ ん は み は い き -つばで大きなナシの木が一本生えていて、みごとな実がた-さんなっていました。灰かぶ-は'このナシの木に'すば の ぼ お う じ は い い わ お う じ しっこくよじ登-ましたので、王子さまは'灰かぶ-がどこへ行ったのやら、分からなくなりました。ところが'王子さ ま ち ち お や か え き ち ち お や い む す め に まが'待っていると、父親が帰って来ましたので、父親にこう言いました。「よその娘が'ぼくのそばから逃げて'あの き う え の ぼ お も ち ち お や は い か ん が い え も の お の ナシの木の上によじ登ったと思うんだが。」 父親は、「灰かぶ-じゃあるまいな」 と考えたものですから、家の者に斧を き き き , つ , え もってこさせると、ナシの木を切-たおしてしまいました。ところが、木の上には、だれもお-ませんでした。そうして' い え も の だ い ど こ ろ は い は い は い な か ね は い 家の者たちが台所に入ると'灰かぶ-は、いつものように、灰の中に寝ころんでいました。それというのも、灰かぶ-き は ん た い と き う え と り う つ -い し よ う か え じ ぶ ん ほ い い ろ は'ナシの木の反対がわから跳びお-て、ハシバミの木の上にいるいつもの鳥に美しい衣装を返して、自分の灰色のう き わっぼりを着てしまっていたからなのです。 み つ か め と う か あ こ し ま い で は い か あ は か い 三日目に'お父さんとお母さん'つれ子姉妹たちが出かけると、灰かぶ-は、またお母さんのお墓に行って'ハシバミ き む よ の木に向かって、こう呼びかけました。 からだ 「ハシバミちゃん'ゆらゆらぐらぐら体をゆさぶってね' き ん ぎ ん お あたしに金と銀を落としてね。」
と り い ち ま い き も の お は い み き も の すると'いつもの鳥は'一枚の着物を落として-れましたが、それは灰かぶ-が'これまで身につけたどの着物よりも
新
軒
な
も
の
で
し
た
。
烏
配
は
、
朝
鮮
釦
で
で
き
て
い
ま
し
た
。
配
か
ぶ
り
が
梨
か
に
朝
れ
る
と
,
な
み
い
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服
服
は
、
朝
き
の
あ
ま
り
,
い お う じ は じ お は い ひ と -お ど は い お ど 言うことばもあ-ませんでした。王子さまは、初めから終わ-まで'灰かぶ-一人だけと踊-ました。灰かぶりを踊りの あ い て も と ひ と お う じ ひ と あ い て い お相手に求める人がいると'王子さまは、「この人は'ぼくのお相手だよ」と言いました。 ひ く は い い え か え お う じ は い さて'日が暮れると、灰かぶ-は、家に帰ろうとしました。王子さまは'おともをするつも-でしたが、灰かぶりは' お う じ に は い ぜ ん ぶ き ん う わ ぐ つ ひ だ り ほ う 王子さまのもとから逃げてしまいました。ところが'灰かぶ-はう全部金でできた上靴の左の方をなくしてしまいまし た。それというのも,封かさまが,即断の烏にねばねばしたコールタールをぬらせておいたからです。それで,朝の郡 -つ は な の靴は、コールタールにくっついて離れなかったのです。 お う じ く つ と つ ぎ ひ 王子さまは、その靴を取-'次の日' く つ か ね も お と こ い き ん く つ あ し あ その靴をもって'金持ちの男のところへ行って'この金の靴に足の合うひとを 郭に邸是い,と一一針いました。そこで,霊ルのつれ不軌那たちは、覇びました。それというのも,ォルはきれいな朋を あ ね -つ つ ぎ ま は い ま ま ゆ していたからです。姉が靴をもって、次の間に入って、はいてみようとしました。まま母も、そこについて行きました。 あ し ゆ び お お あ し は い く つ ち い ま ま ところが'足の指が大き-て'どうしても足が入-ません。それに、その靴が小さすぎたのです。そこで'まま矧は' む す め ほ う ち よ う あ し ゆ び き き さ き あ し あ る ひ つ よ う い 娘に包丁をわたして'「足の指なんか、切-なさい。お妃になれば、足で歩-必要もないんだから」と言いました。 願めは,朋の鋸を駆り酢として、朋をむりやりおしこんで,部かさまのところへ衝きました。部かさまは,鵬を那齢とし う ま の で ふ た り は か と お く て馬に乗せ'いっしょに出かけました。ところが、二人は'あのお墓のそばを通らなければなりませんでした。そこに来 に わ こ き , つ J え よ ると'二羽の小バトが、ハシバミの木の上にとまっていて、こう呼びかけました。 み 「ふりかえって、ふ-かえって'見てごらん' グリム童話翻訳の歴史的概観 暑 謂 出 割 m 叫 ぶ 司 り m m 割 り 叩 瑚 -「 榊 w l " 刊 川 場 讃 絹 割 ヨ 剖 朝 出 幻 小 飼 F Z 畜 J " 臼 宙 潮 I d ︼ 日 当 丁 前 期 封 叫 や 仙 封 -折 井 = 罰 5 7 F 功 利 山 岳 川 習 習 仙 川 叫 州 川 り 対 お ぷ 朝 羽 山 m 川 H ㌔グリム童話翻訳の歴史的概観 く つ な か ち み 靴の中には血がいっぱい'見てごらん' く つ ち い 靴が小さすぎるのさ、 よ め な か ほんとの嫁さんは'まだおうちの中なのさ。」 お う じ それで'王子さまは' はなよめ はなよめ いえ むすめ あし み ち み おう じ うま む 娘の足を見ると'血があふれでているのが見えました。王子さまは、馬の向きをかえて、にせ むすめ はなよめ ひと り むすめ くつ の花嫁を花嫁の家へつれもどしました。そうして'「この娘は'ほんとの花嫁でないので'もう一人の娘に靴をはかせ て 衡 し い 」 と , 部 か さ ま は 一 一 計 い ま し た 。 そ こ で 、 い 鵜 と の 郡 が , 邪 の 酢 に 射 り ま し た 。 朋 の 都 は 、 配 の 朝 に 射 り ま し た が , ところが,朝敵は、かかとが邦きすぎました。すると、まま鋸は,鵬に郎hをわたして,こう一計いました。「かかとを、 き ちょっと切りなさい。 く つ な か 靴の中へおしこんでt で Lょに出かけました。 びかけました。 き さ き あ し あ る ひ つ よ う む す め き あ し お妃になれば、足で歩く必要もないんだから。」 娘は、かかとをちょっと切って'む-や-足を へ や で お う じ ゆ お う じ む す め は な よ め う ま の 部屋から出て'王子さまのところへ行きました。王子さまは'娘を花嫁として馬に乗せ'いっ ふ た り き と お き う え に わ こ よ 二人が'ハシバミの木のそばを通りかかると、その木の上に二羽の小バトがとまっていて、こう呼 み 「ふりかえって'ふ-かえって'見てごらん' く つ な か ち み 靴の中には血がいっぱい、見てごらん、 く つ ち い 靴が小さすぎるのさ' よ め な か ほんとの嫁さんは、まだおうちの中なのさ。」
お う じ む す め あ し み ち -つ し ろ -つ し た う え ほ う ま か み 王子さまが娘の足を見おろすと、血が靴からあふれでて、白い靴下が上の方まで真っ赤にそまっているのが見えまし お う じ う ま む は な よ め は な よ め い え お う じ む す め た。そこで'王子さまは'馬の向きをかえ、にせの花嫁を花嫁の家へつれもどしました。王子さまは'「この娘も'ほん は な よ め む す め か ね も お と こ こ た との花嫁ではない。もうほかに娘はおらんのかね」とたずねました。「お-ません」と'金持ちの男は答えました。 な て ま え か な い ち い は い む す め 「もっとも、亡-な-ました手前の家内ののこしました小さ-て、灰だらけのきたない娘がおるにはおるのでございます お う じ は な よ め お う じ む す め き ま い が'あれは王子さまの花嫁になどなれるものではあ-ません。」王子さまは'「その娘をここへつれて来て欲しい」と言 は は お や ひ と ま え だ いました。ところが、母親は'「まあ、とんでもございません。あれは'きたなすぎまして'人前になど出せるものでは ございません」と翫えました。それでも,部争さまは,なにがなんでもかいたいと一l針いはりましたので、配かぶりが酔び は い て あ た ま あ ら お う じ い お う だされることになりました。そこで'灰かぶ-は、手と頭をきれいに洗い、そうして'王子さまのところへ行って、王 じ ま え お う じ は い き ん -つ て わ た は い ひ だ り あ し 子さまの前でおじぎをしました。すると'王子さまは'灰かぶりに金の靴を手渡しました。そこで'灰かぶ-は'左足