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JAIST Repository: 科学技術予測の深化とグローバル展開 : ホライズン・スキャンへの挑戦と国際連携の拡大

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(1)

Japan Advanced Institute of Science and Technology

JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/

Title

科学技術予測の深化とグローバル展開 : ホライズン・

スキャンへの挑戦と国際連携の拡大

Author(s)

斎藤, 尚樹; 横尾, 淑子; 浦島, 邦子; 林, 和弘; 栗

林, 美紀

Citation

年次学術大会講演要旨集, 31: 393-396

Issue Date

2016-11-05

Type

Conference Paper

Text version

publisher

URL

http://hdl.handle.net/10119/13968

Rights

本著作物は研究・イノベーション学会の許可のもとに

掲載するものです。This material is posted here

with permission of the Japan Society for Research

Policy and Innovation Management.

(2)

シナリオ3 シナリオ4 シナリオ 1 シナリオ 2 学習能力高 技術の 制御力低 技術の 制御力高 脆弱なユートピア < Utopia and vulnerability > 未経験の暗闇 < Naïve darkness > 希望と知恵 < Hope and wisdom >

利己主義者の社会 < Era of egoism >

2B19

科学技術予測の深化とグローバル展開

~ ホライズン・スキャンへの挑戦と国際連携の拡大

○斎藤 尚樹 (文部科学省科学技術・学術政策研究所), 横尾 淑子,浦島 邦子,林 和弘,栗林 美紀(科学技術・学術政策研究所) 1.予測調査の経緯・現状と課題 科学技術・学術政策研究所(以下「NISTEP」)では、中長期的な科学技術イノベーション政策検討・策定のための基礎情報とすべく、今後 30 年程度の科 学技術発展、並びにこれによる社会的課題の解決や経済・社会変化の方向性について、これまで約 5 年毎に科学技術予測調査を実施してきた。第 5 期科学 技術基本計画策定プロセスへのインプットを図るべく、2013 年から 2015 年にかけて実施した最新の第 10 回科学技術予測においては、将来社会ビジョンの 検討、及びこれを踏まえた分野別科学技術予測の結果に立脚し、2030 年をターゲットイヤーとした将来社会の姿及びその実現を目指すに当たっての戦略・ 留意点を取りまとめる「シナリオプランニング」を行った。シナリオ作成に当たっては、図表 1 に示す 6 つの重点テーマを設定し、産学官の多様な有識者 の参画による集中討議やインタビュー等の実施を通じ、各々のテーマに則した個別シナリオを作成した。更に、これらシナリオを国際的視点に立って横串 に再構成・統合すべく、「リーダーシップ」(日本の強みを活かし、国際拠点を形成しイノベーションをリード)、「国際協調・協働」(グローバルな課題 解決に貢献)、「自律性」(日本の弱み・課題を克服し、国の社会・生活の存続基盤を確保)の 3 つの視点を設定し、「世界の中の日本」と題するワークシ ョップの開催等を通じ、統合シナリオの作成を行った。 [ 図表 1 シナリオプランニングの主要テーマと統合シナリオの作成 ] 当該検討・シナリオ作成の過程で、我が国の技術力や人的 資源等の強みを活かして国際協調・協働に繋げることが可能 な「災害対応」(レジリエントな社会インフラの構築)、及び 我が国が課題先進国として先行事例・研究フィールドを提供 し、自律的な課題解決を図りつつ、これを近い将来高齢化社 会の諸課題に直面する世界のマーケットに向けたビジネス チャンスとしてリーダーシップの発揮に繋げていくことが 期待される「高齢化対応」(健康長寿社会の実現)の 2 つの 課題解決シナリオが、今次予測活動及びその成果の国際展 開・発信に最も好適なテーマとしてクローズアップされた。 更に、近年の ICT 活用による研究データ共有・利用の機会拡 大に伴い、オープンサイエンスの潮流が国際的に顕著となっ ており、研究推進手法や社会との関係性が今後大きく変革す る可能性もあることから、前述のような課題解決のシナリオ を検討・展開するに際しても、こうした潮流を横断的に考慮 すべき状況となっている。 そこで、NISTEP では、今次予測調査の取組・成果の国際 的展開の一環として、災害対応(減災)及び高齢化社会対応 の 2 テーマについて、海外主要国から関係専門家の参画を得 て、オープンサイエンスの概念を付加しつつ、シナリオ検 討・展開のための国際ワークショップを開催した。 (2016 年 3 月 3 日~4 日、於・東京理科大学) 2.「減災・高齢社会の未来」~予測国際ワークショップの討議結果及び示唆 本ワークショップでは、国内外計 15 ヶ国の科学技術政策及び予測専門家、並びに防災・高齢社会対応の専門家を交えた計 35 名(ファシリテータ含む) の参加を得て、2030 年をターゲットイヤーとし、将来の社会・経済的状況、及びこれらに大きなインパクトを及ぼしうる科学技術イノベーションの検討を 軸として、国際的視点に立脚した課題解決に向けたシナリオの検討・作成を行った。シナリオ作成に際しては、時間的制約も考慮し、将来社会の方向性を 決定する主要な変化要因(ドライビングフォース)を2つ抽出して縦軸・横軸を設定し、将来像を 4 象限に切り分けてのシナリオ検討を行うとともに、発 現可能性は小さいものの、仮に発現した場合には社会的インパクトが極めて大きい事象(ワイルドカード)を抽出・特定した第 5 のシナリオを併せて検討・ 作成した。これらシナリオの記述に当たっては、参加者の拡がりに即応した多様な視点も考慮しつつ、一般のオーディエンスやステイクホルダーにもイメ ージを想起させやすい形の「ストーリー仕立て」とするなどの工夫を加えた。 (1) 減災に係るシナリオ検討結果 減災については、2グループに分かれての討議を行った。グループ1では、多種多様な災害を①自然災害・②人災・③複合災害の 3 カテゴリに類型化 した上で、象徴的災害として①地震(又はそれに起因する災害)、②原子力災害、③地すべりの 3 件を採り上げ、各々の減災に係るキーファクター(ドラ イビングフォース)として「技術」と「知識」(学習能力)の 2 要素を抽出した。討議の結果、これら 3 災害各々の 2 要素軸に則した状況想定(シナリオ の要素項目)は図表2のように整理された。これら各シナリオのタイトル(メインコンセプト)は図表3に示す通りである。 [ 図表2 災害ごとの状況想定(グループ1) ] [ 図表 3 減災シナリオのタイトル(グループ1) ] 技術による制御 技術による制御力が高い状況 技術による制御力が低い状況 原子力 原子力安全のための高い基準の必要性 放射能汚染 持続性の無い技術(廃棄物管理?) 地すべ り 地すべりを予防するシステム 全球観測システムの性能不十分 (負の 投資になる懸念から整備が進まない) 地盤安定化のための対策 地震 建物の耐震構造 二次的な影響の理解が限定的 学習能力 学習能力が高い状況 学習能力が低い状況 原子力 原子力課題に対する説明責任の高さ -

(3)

[ 図表6 高齢社会対応の4シナリオのタイトル及び要素項目の主な特性 ] (3) ワークショップからの示唆 本ワークショップの全体討議を通じ、今次会合の主眼の一つであったオープンサイエンスと各テーマの関わりについて、減災については、オープンサ イエンスの重要な一潮流である市民科学(シチズンサイエンス)の進展に関連して、より社会に開かれた形での研究進展に向けた問題提起として、災害 に対する一般の人々の関心や学習能力がシナリオのケース設定の軸(キーファクター)の一つとして挙げられた。高齢社会対応については、研究の国際 的プラットフォーム構築など、オープンサイエンスの進展による学術的発展の可能性が指摘された。 各テーマに係る国内外の多様な専門家による討議を通じ、国際的視点からのシナリオ展開の今後の方向性に係る示唆として、減災については、長期的 思考に基づく持続的な投資や計画の重要性に係る言及がなされた他、国内でのシナリオ討議・検討では見られなかった視点として、気候変動や開発の進 捗に伴う環境変化も変化を誘引する重要な要素として採り上げられた。高齢社会対応については、高齢者自身の生活ではなく、増加する高齢者を支える 社会のあり方や社会の様々な構成員の役割に係る言及がなされた点、更には社会の安定性に係る論点として、家族制度の崩壊、格差や貧困、政治情勢の 不安定化、更には移民問題や地域間・国家間の緊張などマクロな社会・国際情勢面の要因が挙げられた点が、国内でのシナリオ討議では見られなかった 新たな視点であった。こうした点については、今回の討議成果や得られた政策的示唆に立脚しつつ、今後国際協力・協働のあり方に係るグローバルな検 討と併せて、各国固有の事情・要因に見合った付加的な検討を行うとともに、関連分野の専門家やステイクホルダーも交え、今後の科学技術イノベーシ ョン進展の可能性や将来インパクトについて、掘り下げた討議・検討や戦略の肉付けを行っていくことが期待される。 3.今後のホライズン・スキャンへの挑戦と国際的展開の方向性 本年 1 月に閣議決定された第 5 期科学技術基本計画では、グローバルなニーズを先取りする研究開発の推進のための方策として、国際連携・協力を念頭 に置いた国際機関等との連携による科学技術予測、及び長期的な変化を探索(予測活動実施のための前提・参照情報として:いわゆるホライズン・スキャ ニング)するための分析体制を横断的に構築するとともに、その成果を社会実装に繋げるための情報共有・フォローアップの体制・仕組みを構築するとの 方針が明記されている。

こうしたホライズン・スキャニングは、将来大きなインパクトをもたらす可能性のある変化の兆候(Emerging Issues/Weak Signals)をいち早く捉える ことを目的として、英国やオランダ、欧州議会をはじめとする先進諸国・機関で実施されており、情報収集・分類、取得情報の分析(インパクトの大きさ や変化の実現可能性の評価等)、分析結果の展開の 3 つの基本プロセスから構成される。これら欧州諸国・機関では、幅広い対象についてホライズン・ス キャンが実施されているが、社会・経済・環境・政治の各側面でインパクトをもたらす可能性のある新興科学技術領域に焦点が当てられることが多く、予 測活動の前段階、あるいは予測プロセスの一部として位置づけられている。我が国においても、既に英国(首相首席科学顧問のチーム)及びロシア等主要

先進国との間で本分野に係るバイの交流・協力を進めている他、国際機関との連携として、OECD や APEC(技術予測センター)、ASEAN 等との連携・協力の拡

大・深化を図っている状況である。前節で紹介した本年 3 月の予測国際ワークショップにおいても、海外の第一線のファシリテータの指導・協力を得つつ、 こうしたホライズン・スキャニングの最新手法を一部導入しつつ、予測シナリオの検討深化・展開を図ったところである。今後、我が国ではこれまで科学 技術分野の予測活動を中核的に担ってきた NISTEP(科学技術予測センター)を中心として、第 5 期基本計画に示された方針を踏まえつつ、国内外関係機関 との連携・協力の下、予測とホライズン・スキャニングを車の両輪として進めていく予定としている(図表7参照)。

こうした予測活動及びホライズン・スキャニングに係る国際連携・成果展開の一環として、高齢社会に係るシナリオの検討深化と国際展開に向け、2017

年 2 月に米国ボストンで開催予定の全米科学振興協会(AAAS)年次大会(メインテーマは「Serving Society through Science Policy」)において、当研究

所の主導により「Serving Aging Society Globally through Science, Technology, and Innovation Policies」と題する国際シンポジウムを開催すべく提 案を行ったところ、当該提案が公式プログラムとして採択された。本シンポジウムでは、我が国の他、米・欧・アジアの科学技術予測、イノベーション政 策分析、保健医療研究等のハイレベルの専門家を招聘し、高齢社会の将来像及び課題解決・国際戦略展開の方向性について、グローバルかつ学際的視点か らの討議を行う予定である。 こうした国際的な成果発信・展開及び関係機関・専門家との連携拡大を通じ、当所がリードする科学技術予測活動及び成果の更なる深化・発展や活用促 進を図ることにより、セクターや分野の壁を越えて、我が国国内での課題解決シナリオの更なるブラッシュアップやグローバルな政策・戦略への効果的展 開を図ることができるものと考えており、今後も国際連携・協力の推進と並行して、引き続き産業界や学界など幅広い関係専門家・ステイクホルダーとの 連携・協働を強化していく所存である。 財政状況 健全 社会の一体性 高 シナリオ1インフラ投資の費用対効 果が高い。 大規模インフラ投資は比 較的容易。メンテナンス は低コスト。 マスカスタマイゼーショ ン。 持続的発展・成長が課題。 財政状況 不健全 インフラ投資の費用対効 果が低い。 ある程度のインフラ投資 は可能。 パーソナライゼーション。新しい社会像の共創が 題。 シナリオ3 インフラ投資の費用対効果 が低い。 大規模インフラ投資は困難。 メンテナンスは高コスト。 自給自足、分散独立。 ハードランディングが課題。 シナリオ4 インフラ投資の費用対効果 が高い。 大規模インフラ投資は困難。 メンテナンスは低コスト。 大量生産・大量消費モデル。 ソフトランディングが課題。 社会の一体性 低 シナリオ2シナリオ2:不平等な未来 シナリオ 1:共に幸せに シナリオ 3:オリンポス陥落* シナリオ 4:天国か地獄か、行き着く先は? [*オリンポス陥落:ホワイトハウスがテロリストに占拠され、大統領が人質に取られたという設定で描かれた 米国映画の題名。映画中で、ホワイトハウスのコード名として「オリンポス」が用いられている。 ] 地震 - 建築法規が何も執行されない 一般 地域、国、国際的レベルに応じたデータ開示 政治的行き詰まり 社会的責任が果たされない 縁故主義 これら 4 シナリオに加え、第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として「国際的に制御不能となった感染症」が採り上げられ、十分な情報が行き渡らず社 会的大混乱が起こる可能性(Catastrophic Scenario)と、適切な初動を促し国際的協力体制が構築される可能性(Optimistic Scenario)が討議された。

グループ 2 では、多様な災害種のうち、①温暖化に起因する災害(過大な季節変動、農村部の洪水、スーパー台風、海面上昇等)、②その他自然災害(地 震、火山噴火、津波等)、③ヒューマン(システム)エラー(大停電、大規模交通事故、有害薬品漏洩等)の3カテゴリに類型化した上、発生する災害の影 響度(程度又は頻度)、災害への関心度の2軸をキーファクター(ドライビングフォース)として抽出した。この2軸に則して、各々の災害の特性を 4 象限 に整理してみると、図表 4 の通りとなった。これら4象限毎のシナリオのタイトル(気象用語のアナロジー)は図表5に示す通りである。 [ 図表4 災害毎の特性分布整理図(グループ2) ] 災害の関心度:高い 季節 変動 海岸 浸食 森林 火災 新興疾患 (感染症) 都市の大火災 スーパー 台風 大停電 地域紛争 戦争・ 食料不足 交通事故: 大規模 航空、列車、船舶 水危機 (水不足) アジアでの洪水 津波 都市での 洪水 地震 集中 豪雨 生態系 の変化 生息領域の変化 (面積縮小) アフリカの 干ばつ 海面 上昇 火山 農村部 の洪水 砂漠化 有害薬品漏洩 工場からの 災害の関心度:低い [ 図表5 減災シナリオのタイトル及び主な対象(グループ2) ] 更に、グループ2では、第5のシナリオ(ワイルドカード)として、新興感染症、地震、大停電、火山活動、津波が採り上げられた。 (2) 高齢社会に係るシナリオ検討結果 高齢社会セッションでは、我が国を含む参加各国の高齢化に関する現状・将来見通しに係る話題提供をベースとして、将来の高齢社会の方向性に大き

な影響を及ぼす要因をリストアップし、キードライバーとして「社会の一体性」(Social Cohesion)及び財政状況(Financial Situation)の 2 軸を抽出

した。これら 2 軸に則し、4 象限それぞれのシナリオについて、要素項目を検討・整理し、図表6に示す特性及びタイトルを付したシナリオを作成した。 (本セッションでは、4 グループに分かれた上、各グループが分担して 1 象限毎のシナリオを検討し、それぞれビジュアライズされたストーリー仕立ての シナリオ案を作成するという手法を採った。) 加えて、発現頻度は低いが、発現した場合将来社会に多大なインパクトを及ぼす第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として、薬剤耐性菌の猛威(Peak Antibiotics)が採り上げられ、多くの野生動物・家畜が死に至って食料不足が顕在化し、旅行・労働など人の移動に制限が課せられるとともに、貿易・ グローバル化の崩壊、生産性の大幅低下、短命化等が惹起されるカタストロフィックなシナリオが討議された。 シナリオ3 シナリオ4 シナリオ 1 シナリオ 2 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度高 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度低 災害の影響低 災害の影響 高 風 < Wind > 災害そのものは想定されるが、 現象として捉えられない、または 何らかの理由で対策が取られて いない災害 暴風 < Storm > ごくまれに起こるか、災害範囲が 限定的なため関心が低い。しかし 一度起こると人的・社会的な被害 は大きい災害 そよ風 < Breeze > 発生頻度が高く、影響が大きい ため、対策が進んで被害が小さ く抑えられる災害 台風 < Typhoon > 突発的または想定範囲を超え、 人的・社会的被害がかなり大き い災害 災害の影響:相対的に低い 災害の影響:2000~2015 に比べ高まる 地震 - 建築法規が何も執行されない 一般 地域、国、国際的レベルに応じたデータ開示 政治的行き詰まり 社会的責任が果たされない 縁故主義 これら 4 シナリオに加え、第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として「国際的に制御不能となった感染症」が採り上げられ、十分な情報が行き渡らず社 会的大混乱が起こる可能性(Catastrophic Scenario)と、適切な初動を促し国際的協力体制が構築される可能性(Optimistic Scenario)が討議された。

グループ 2 では、多様な災害種のうち、①温暖化に起因する災害(過大な季節変動、農村部の洪水、スーパー台風、海面上昇等)、②その他自然災害(地 震、火山噴火、津波等)、③ヒューマン(システム)エラー(大停電、大規模交通事故、有害薬品漏洩等)の3カテゴリに類型化した上、発生する災害の影 響度(程度又は頻度)、災害への関心度の2軸をキーファクター(ドライビングフォース)として抽出した。この2軸に則して、各々の災害の特性を 4 象限 に整理してみると、図表 4 の通りとなった。これら4象限毎のシナリオのタイトル(気象用語のアナロジー)は図表5に示す通りである。 [ 図表4 災害毎の特性分布整理図(グループ2) ] 災害の関心度:高い 季節 変動 海岸 浸食 森林 火災 新興疾患 (感染症) 都市の大火災 スーパー 台風 大停電 地域紛争 戦争・ 食料不足 交通事故: 大規模 航空、列車、船舶 水危機 (水不足) アジアでの洪水 津波 都市での 洪水 地震 集中 豪雨 生態系 の変化 生息領域の変化 (面積縮小) アフリカの 干ばつ 海面 上昇 火山 農村部 の洪水 砂漠化 有害薬品漏洩 工場からの 災害の関心度:低い [ 図表5 減災シナリオのタイトル及び主な対象(グループ2) ] 更に、グループ2では、第5のシナリオ(ワイルドカード)として、新興感染症、地震、大停電、火山活動、津波が採り上げられた。 (2) 高齢社会に係るシナリオ検討結果 高齢社会セッションでは、我が国を含む参加各国の高齢化に関する現状・将来見通しに係る話題提供をベースとして、将来の高齢社会の方向性に大き

な影響を及ぼす要因をリストアップし、キードライバーとして「社会の一体性」(Social Cohesion)及び財政状況(Financial Situation)の 2 軸を抽出

した。これら 2 軸に則し、4 象限それぞれのシナリオについて、要素項目を検討・整理し、図表6に示す特性及びタイトルを付したシナリオを作成した。 (本セッションでは、4 グループに分かれた上、各グループが分担して 1 象限毎のシナリオを検討し、それぞれビジュアライズされたストーリー仕立ての シナリオ案を作成するという手法を採った。) 加えて、発現頻度は低いが、発現した場合将来社会に多大なインパクトを及ぼす第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として、薬剤耐性菌の猛威(Peak Antibiotics)が採り上げられ、多くの野生動物・家畜が死に至って食料不足が顕在化し、旅行・労働など人の移動に制限が課せられるとともに、貿易・ グローバル化の崩壊、生産性の大幅低下、短命化等が惹起されるカタストロフィックなシナリオが討議された。 シナリオ3 シナリオ4 シナリオ 1 シナリオ 2 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度高 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度低 災害の影響低 災害の影響 高 風 < Wind > 災害そのものは想定されるが、 現象として捉えられない、または 何らかの理由で対策が取られて いない災害 暴風 < Storm > ごくまれに起こるか、災害範囲が 限定的なため関心が低い。しかし 一度起こると人的・社会的な被害 は大きい災害 そよ風 < Breeze > 発生頻度が高く、影響が大きい ため、対策が進んで被害が小さ く抑えられる災害 台風 < Typhoon > 突発的または想定範囲を超え、 人的・社会的被害がかなり大き い災害 災害の影響:相対的に低い 災害の影響:2000~2015 に比べ高まる

(4)

[ 図表6 高齢社会対応の4シナリオのタイトル及び要素項目の主な特性 ] (3) ワークショップからの示唆 本ワークショップの全体討議を通じ、今次会合の主眼の一つであったオープンサイエンスと各テーマの関わりについて、減災については、オープンサ イエンスの重要な一潮流である市民科学(シチズンサイエンス)の進展に関連して、より社会に開かれた形での研究進展に向けた問題提起として、災害 に対する一般の人々の関心や学習能力がシナリオのケース設定の軸(キーファクター)の一つとして挙げられた。高齢社会対応については、研究の国際 的プラットフォーム構築など、オープンサイエンスの進展による学術的発展の可能性が指摘された。 各テーマに係る国内外の多様な専門家による討議を通じ、国際的視点からのシナリオ展開の今後の方向性に係る示唆として、減災については、長期的 思考に基づく持続的な投資や計画の重要性に係る言及がなされた他、国内でのシナリオ討議・検討では見られなかった視点として、気候変動や開発の進 捗に伴う環境変化も変化を誘引する重要な要素として採り上げられた。高齢社会対応については、高齢者自身の生活ではなく、増加する高齢者を支える 社会のあり方や社会の様々な構成員の役割に係る言及がなされた点、更には社会の安定性に係る論点として、家族制度の崩壊、格差や貧困、政治情勢の 不安定化、更には移民問題や地域間・国家間の緊張などマクロな社会・国際情勢面の要因が挙げられた点が、国内でのシナリオ討議では見られなかった 新たな視点であった。こうした点については、今回の討議成果や得られた政策的示唆に立脚しつつ、今後国際協力・協働のあり方に係るグローバルな検 討と併せて、各国固有の事情・要因に見合った付加的な検討を行うとともに、関連分野の専門家やステイクホルダーも交え、今後の科学技術イノベーシ ョン進展の可能性や将来インパクトについて、掘り下げた討議・検討や戦略の肉付けを行っていくことが期待される。 3.今後のホライズン・スキャンへの挑戦と国際的展開の方向性 本年 1 月に閣議決定された第 5 期科学技術基本計画では、グローバルなニーズを先取りする研究開発の推進のための方策として、国際連携・協力を念頭 に置いた国際機関等との連携による科学技術予測、及び長期的な変化を探索(予測活動実施のための前提・参照情報として:いわゆるホライズン・スキャ ニング)するための分析体制を横断的に構築するとともに、その成果を社会実装に繋げるための情報共有・フォローアップの体制・仕組みを構築するとの 方針が明記されている。

こうしたホライズン・スキャニングは、将来大きなインパクトをもたらす可能性のある変化の兆候(Emerging Issues/Weak Signals)をいち早く捉える ことを目的として、英国やオランダ、欧州議会をはじめとする先進諸国・機関で実施されており、情報収集・分類、取得情報の分析(インパクトの大きさ や変化の実現可能性の評価等)、分析結果の展開の 3 つの基本プロセスから構成される。これら欧州諸国・機関では、幅広い対象についてホライズン・ス キャンが実施されているが、社会・経済・環境・政治の各側面でインパクトをもたらす可能性のある新興科学技術領域に焦点が当てられることが多く、予 測活動の前段階、あるいは予測プロセスの一部として位置づけられている。我が国においても、既に英国(首相首席科学顧問のチーム)及びロシア等主要

先進国との間で本分野に係るバイの交流・協力を進めている他、国際機関との連携として、OECD や APEC(技術予測センター)、ASEAN 等との連携・協力の拡

大・深化を図っている状況である。前節で紹介した本年 3 月の予測国際ワークショップにおいても、海外の第一線のファシリテータの指導・協力を得つつ、 こうしたホライズン・スキャニングの最新手法を一部導入しつつ、予測シナリオの検討深化・展開を図ったところである。今後、我が国ではこれまで科学 技術分野の予測活動を中核的に担ってきた NISTEP(科学技術予測センター)を中心として、第 5 期基本計画に示された方針を踏まえつつ、国内外関係機関 との連携・協力の下、予測とホライズン・スキャニングを車の両輪として進めていく予定としている(図表7参照)。

こうした予測活動及びホライズン・スキャニングに係る国際連携・成果展開の一環として、高齢社会に係るシナリオの検討深化と国際展開に向け、2017

年 2 月に米国ボストンで開催予定の全米科学振興協会(AAAS)年次大会(メインテーマは「Serving Society through Science Policy」)において、当研究

所の主導により「Serving Aging Society Globally through Science, Technology, and Innovation Policies」と題する国際シンポジウムを開催すべく提 案を行ったところ、当該提案が公式プログラムとして採択された。本シンポジウムでは、我が国の他、米・欧・アジアの科学技術予測、イノベーション政 策分析、保健医療研究等のハイレベルの専門家を招聘し、高齢社会の将来像及び課題解決・国際戦略展開の方向性について、グローバルかつ学際的視点か らの討議を行う予定である。 こうした国際的な成果発信・展開及び関係機関・専門家との連携拡大を通じ、当所がリードする科学技術予測活動及び成果の更なる深化・発展や活用促 進を図ることにより、セクターや分野の壁を越えて、我が国国内での課題解決シナリオの更なるブラッシュアップやグローバルな政策・戦略への効果的展 開を図ることができるものと考えており、今後も国際連携・協力の推進と並行して、引き続き産業界や学界など幅広い関係専門家・ステイクホルダーとの 連携・協働を強化していく所存である。 財政状況 健全 社会の一体性 高 シナリオ1インフラ投資の費用対効 果が高い。 大規模インフラ投資は比 較的容易。メンテナンス は低コスト。 マスカスタマイゼーショ ン。 持続的発展・成長が課題。 財政状況 不健全 インフラ投資の費用対効 果が低い。 ある程度のインフラ投資 は可能。 パーソナライゼーション。新しい社会像の共創が 題。 シナリオ3 インフラ投資の費用対効果 が低い。 大規模インフラ投資は困難。 メンテナンスは高コスト。 自給自足、分散独立。 ハードランディングが課題。 シナリオ4 インフラ投資の費用対効果 が高い。 大規模インフラ投資は困難。 メンテナンスは低コスト。 大量生産・大量消費モデル。 ソフトランディングが課題。 社会の一体性 低 シナリオ2シナリオ2:不平等な未来 シナリオ 1:共に幸せに シナリオ 3:オリンポス陥落* シナリオ 4:天国か地獄か、行き着く先は? [*オリンポス陥落:ホワイトハウスがテロリストに占拠され、大統領が人質に取られたという設定で描かれた 米国映画の題名。映画中で、ホワイトハウスのコード名として「オリンポス」が用いられている。 ] 地震 - 建築法規が何も執行されない 一般 地域、国、国際的レベルに応じたデータ開示 政治的行き詰まり 社会的責任が果たされない 縁故主義 これら 4 シナリオに加え、第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として「国際的に制御不能となった感染症」が採り上げられ、十分な情報が行き渡らず社 会的大混乱が起こる可能性(Catastrophic Scenario)と、適切な初動を促し国際的協力体制が構築される可能性(Optimistic Scenario)が討議された。

グループ 2 では、多様な災害種のうち、①温暖化に起因する災害(過大な季節変動、農村部の洪水、スーパー台風、海面上昇等)、②その他自然災害(地 震、火山噴火、津波等)、③ヒューマン(システム)エラー(大停電、大規模交通事故、有害薬品漏洩等)の3カテゴリに類型化した上、発生する災害の影 響度(程度又は頻度)、災害への関心度の2軸をキーファクター(ドライビングフォース)として抽出した。この2軸に則して、各々の災害の特性を 4 象限 に整理してみると、図表 4 の通りとなった。これら4象限毎のシナリオのタイトル(気象用語のアナロジー)は図表5に示す通りである。 [ 図表4 災害毎の特性分布整理図(グループ2) ] 災害の関心度:高い 季節 変動 海岸 浸食 森林 火災 新興疾患 (感染症) 都市の大火災 スーパー 台風 大停電 地域紛争 戦争・ 食料不足 交通事故: 大規模 航空、列車、船舶 水危機 (水不足) アジアでの洪水 津波 都市での 洪水 地震 集中 豪雨 生態系 の変化 生息領域の変化 (面積縮小) アフリカの 干ばつ 海面 上昇 火山 農村部 の洪水 砂漠化 有害薬品漏洩 工場からの 災害の関心度:低い [ 図表5 減災シナリオのタイトル及び主な対象(グループ2) ] 更に、グループ2では、第5のシナリオ(ワイルドカード)として、新興感染症、地震、大停電、火山活動、津波が採り上げられた。 (2) 高齢社会に係るシナリオ検討結果 高齢社会セッションでは、我が国を含む参加各国の高齢化に関する現状・将来見通しに係る話題提供をベースとして、将来の高齢社会の方向性に大き

な影響を及ぼす要因をリストアップし、キードライバーとして「社会の一体性」(Social Cohesion)及び財政状況(Financial Situation)の 2 軸を抽出

した。これら 2 軸に則し、4 象限それぞれのシナリオについて、要素項目を検討・整理し、図表6に示す特性及びタイトルを付したシナリオを作成した。 (本セッションでは、4 グループに分かれた上、各グループが分担して 1 象限毎のシナリオを検討し、それぞれビジュアライズされたストーリー仕立ての シナリオ案を作成するという手法を採った。) 加えて、発現頻度は低いが、発現した場合将来社会に多大なインパクトを及ぼす第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として、薬剤耐性菌の猛威(Peak Antibiotics)が採り上げられ、多くの野生動物・家畜が死に至って食料不足が顕在化し、旅行・労働など人の移動に制限が課せられるとともに、貿易・ グローバル化の崩壊、生産性の大幅低下、短命化等が惹起されるカタストロフィックなシナリオが討議された。 シナリオ3 シナリオ4 シナリオ 1 シナリオ 2 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度高 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度低 災害の影響低 災害の影響 高 風 < Wind > 災害そのものは想定されるが、 現象として捉えられない、または 何らかの理由で対策が取られて いない災害 暴風 < Storm > ごくまれに起こるか、災害範囲が 限定的なため関心が低い。しかし 一度起こると人的・社会的な被害 は大きい災害 そよ風 < Breeze > 発生頻度が高く、影響が大きい ため、対策が進んで被害が小さ く抑えられる災害 台風 < Typhoon > 突発的または想定範囲を超え、 人的・社会的被害がかなり大き い災害 災害の影響:相対的に低い 災害の影響:2000~2015 に比べ高まる 地震 - 建築法規が何も執行されない 一般 地域、国、国際的レベルに応じたデータ開示 政治的行き詰まり 社会的責任が果たされない 縁故主義 これら 4 シナリオに加え、第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として「国際的に制御不能となった感染症」が採り上げられ、十分な情報が行き渡らず社 会的大混乱が起こる可能性(Catastrophic Scenario)と、適切な初動を促し国際的協力体制が構築される可能性(Optimistic Scenario)が討議された。

グループ 2 では、多様な災害種のうち、①温暖化に起因する災害(過大な季節変動、農村部の洪水、スーパー台風、海面上昇等)、②その他自然災害(地 震、火山噴火、津波等)、③ヒューマン(システム)エラー(大停電、大規模交通事故、有害薬品漏洩等)の3カテゴリに類型化した上、発生する災害の影 響度(程度又は頻度)、災害への関心度の2軸をキーファクター(ドライビングフォース)として抽出した。この2軸に則して、各々の災害の特性を 4 象限 に整理してみると、図表 4 の通りとなった。これら4象限毎のシナリオのタイトル(気象用語のアナロジー)は図表5に示す通りである。 [ 図表4 災害毎の特性分布整理図(グループ2) ] 災害の関心度:高い 季節 変動 海岸 浸食 森林 火災 新興疾患 (感染症) 都市の大火災 スーパー 台風 大停電 地域紛争 戦争・ 食料不足 交通事故: 大規模 航空、列車、船舶 水危機 (水不足) アジアでの洪水 津波 都市での 洪水 地震 集中 豪雨 生態系 の変化 生息領域の変化 (面積縮小) アフリカの 干ばつ 海面 上昇 火山 農村部 の洪水 砂漠化 有害薬品漏洩 工場からの 災害の関心度:低い [ 図表5 減災シナリオのタイトル及び主な対象(グループ2) ] 更に、グループ2では、第5のシナリオ(ワイルドカード)として、新興感染症、地震、大停電、火山活動、津波が採り上げられた。 (2) 高齢社会に係るシナリオ検討結果 高齢社会セッションでは、我が国を含む参加各国の高齢化に関する現状・将来見通しに係る話題提供をベースとして、将来の高齢社会の方向性に大き

な影響を及ぼす要因をリストアップし、キードライバーとして「社会の一体性」(Social Cohesion)及び財政状況(Financial Situation)の 2 軸を抽出

した。これら 2 軸に則し、4 象限それぞれのシナリオについて、要素項目を検討・整理し、図表6に示す特性及びタイトルを付したシナリオを作成した。 (本セッションでは、4 グループに分かれた上、各グループが分担して 1 象限毎のシナリオを検討し、それぞれビジュアライズされたストーリー仕立ての シナリオ案を作成するという手法を採った。) 加えて、発現頻度は低いが、発現した場合将来社会に多大なインパクトを及ぼす第 5 のシナリオ(ワイルドカード)として、薬剤耐性菌の猛威(Peak Antibiotics)が採り上げられ、多くの野生動物・家畜が死に至って食料不足が顕在化し、旅行・労働など人の移動に制限が課せられるとともに、貿易・ グローバル化の崩壊、生産性の大幅低下、短命化等が惹起されるカタストロフィックなシナリオが討議された。 シナリオ3 シナリオ4 シナリオ 1 シナリオ 2 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度高 (気候変動に伴う極端気象による)災害への関心度低 災害の影響低 災害の影響 高 風 < Wind > 災害そのものは想定されるが、 現象として捉えられない、または 何らかの理由で対策が取られて いない災害 暴風 < Storm > ごくまれに起こるか、災害範囲が 限定的なため関心が低い。しかし 一度起こると人的・社会的な被害 は大きい災害 そよ風 < Breeze > 発生頻度が高く、影響が大きい ため、対策が進んで被害が小さ く抑えられる災害 台風 < Typhoon > 突発的または想定範囲を超え、 人的・社会的被害がかなり大き い災害 災害の影響:相対的に低い 災害の影響:2000~2015 に比べ高まる

(5)

[ 図表7 国内外における科学技術予測とホライズン・スキャニングの新展開 ]

<参考文献>

1) 科学技術・学術政策研究所「第 10 回科学技術予測調査~国際的視点からのシナリオプランニング」、NISTEP REPORT No.164(2015 年 9 月)

2) 同・科学技術予測センター「『減災・高齢社会の未来』シナリオの検討-第7回予測国際会議 ワークショップ開催報告」、NISTEP NOTE(政策のための

科学)No.20(2016 年 7 月)

3) 同・科学技術動向研究センター「ホライズン・スキャニングに向けて~海外での実施事例と科学技術・学術政策研究所における取組の方向性」、「STI

Horizon-イノベーションの新地平を拓く-」2015. Vol.1, No.1(http://doi.org/10.15108/stih.00005)

参照

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