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ステレオタイプを利用した異文化理解授業の一考察 : コメントから見る受講生の意識変化を中心に

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Academic year: 2021

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ステレオタイプを利用した異文化理解授業の一考察

――コメントから見る受講生の意識変化を中心に─

曽 源深

1.はじめに 日本は国際化が進み、在留外国人の数が増えつつある。法務省の「在留 外国人統計」によると、2015 年から 2019 年までの5年間で、日本にいる 総在留外国人は 250 万人余りから 346 万人余りに増加しており、つまり毎 年7%~8%も増え続けている。また、法務省の「出入国管理統計表」に よると、2018 年日本に入国した外国人の総数は 3,000 万人を突破した。日 本は多文化共生社会になりつつあり、日本人は日本にいながらにして異文 化の背景をもつ人や文化に接触する機会が十分にある時代になっている。 異文化といかに付き合うかは、もはや外国語専攻の人だけでなく、だれに とっても重要なスキルの一つになってきている。一方、外務省の「海外在 留邦人数調査統計」によると、平成 30 年の海外に在留する日本人の総数 は約 139 万人で、日本総人口の約1%しか占めていない。異文化理解を深 めるために最も望ましいのは海外への留学やそこでの生活であるが、それ ができているのはごく一部の人であることが窺える。 今の日本の大学では、異文化理解に関する講座が多く設けられており、 大学生は日本を出ることなく異文化理解を進めることが可能である。しか し、より深くより広く異文化理解を深めるために考えなければならない課 題が残されていないわけではない。

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2.異文化理解力の育成に役立つ異文化理解授業とは 2.1 異文化理解力の構成 異文化理解力とは、異なる文化背景をもつ人を良く理解し、一緒に生き ていく能力である。異文化理解力を考える際によく使われるのが山岸・井 下・渡辺(1992)の異文化対処力のモデルである。このモデルは、「カルチュ ラル・アウェアネス」「状況調整能力」「自己調整能力」「感受性」の4つ の機能領域から構成されているが、「状況調整能力」は個人をとりまく状 況に対処する一般的能力であり、異文化環境下で特に重要となるものでは なく、感受性は他の三つの機能領域のどれとも関連づけられる(山岸・井 下・渡辺,1992)。このモデルの4つの機能領域で、「知識」は「状況調整 能力」の中の一項目に過ぎず、むしろ技能や価値観に関する項目が多い。 渡辺(2002)によると、このモデルの鍵は、「調整」という考え方と「アウェ アネス」という考え方で、この「アウェアネス」とは「気づき」のことで ある。これはつまり、異文化と接触する時に自文化と相手文化との違いに 気づき、それに応じて対応法を調整するのが異文化理解の鍵であることを 意味しているのであろう。異文化理解において異文化に関する「知識」は 重要ではあるが、その習得には限度があり、「調整」と「アウェアネス」 のような実践的なスキルの方が異文化交流では有効で、異文化理解を深め るための授業では「知識」より重視されるべきであろう。 2.2 有効な異文化理解授業の進め方 大学の異文化理解授業は現状では知識重視の教育が主流であり、実践面 への取り組みは明らかに遅れている(川那部,2006)。これまでしばしば 教育現場などで行われてきたような、単なる外国に関する断片的知識を提 供するだけの表面的な異文化理解の方法は、現状を固定化するだけで、何 の変化ももたらさない(溝上・柴田,2009)。籔田(2015)は、「文化的背 景の違う人々との関わりは、時には異文化衝突を生み、葛藤や抵抗をもた

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らすが、それを乗り越えるときに自己変容が起こり、新たな段階へ進むこ とができる」と述べている。知識だけでは不十分で、受講生は異文化衝突 を生むことなく、表面的に理解したと勘違いしたまま授業が終わってしま う恐れがある。いかに異文化衝突を生ませ、葛藤と抵抗をもたらし、受講 生の意識の自己変革を起こせ、「調整」と「アウェアネス」のような実践 的なスキルを身につけさせるかが、有効な異文化理解授業の鍵となると考 えられる。 3.ステレオタイプについて 3.1 ステレオタイプとは何か ステレオタイプについて、渡辺(1995)は「人がある社会的集団に関す るさまざまな情報をカテゴリー化した認識的な知識であり、ふつうある文 化や社会の中で広く人びとによって共有されているものを指す」と説明し ている。ステレオタイプへの過度な拘りは、そのカテゴリーの中のすべて の事柄に同じ特性を強いて、集団の中にある個人の特異性を見損ない、偏 見や差別をもたらす危険性がある。そして異文化交流におけるステレオタ イプと実像の隔たりが異文化衝突を引き起こすことになる。 3.2 ステレオタイプと異文化理解 Barna(1988)はステレオタイプを異文化コミュニケーションの障害の 一つとして挙げている。浜口(2000)によると、ステレオタイプの形成に は相手国との交流不足やマスコミの偏った報道などの原因が考えられる。 交流の浅い対象をマスコミ報道や短期間の接触だけを根拠にステレオタイ プ化し、そんなレッテルを貼ったまま接するならば、そこに生じるステレ オタイプと実像との乖離が交流の障害となるのは十分に考えられる。そこ で異文化衝突が生まれ一時は交流に支障をきたすことがあっても、それを 乗り越えることができれば異文化理解の向上につながることだろう。しか しステレオタイプは気づかれていないことが多く、溝上・柴田(2009)は

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「ある社会で『常識』や『真理』『事実』などと呼ばれている物は、その 社会の文化が作り上げ、その文化の構成員に押し付けた特有の物であると 認識し、自分の物の見方や世界観を修正する必要がある」と述べている。 そもそも文化には多様性があり、国や国民の全体的なイメージに正しい答 えを与えることは難しい。それゆえ授業では受講生のステレオタイプを修 正するのではなく、まずは自分のもつステレオタイプに気づかせ、それを 考えさせることで異文化理解力の向上を図る方が効果的と考えられる。 4.論考概要 4.1 論考の目的と論考方法 本稿は 2019 年度春学期に私が担当した「日中文化交流入門」で受講生 から提出されたコメントを分析し、論考を加えるものである。授業ではま ずアンケート調査を取り、履修生が実際に抱いていたステレオタイプとし ての中国や中国人を徐々に明らかにすることができた。その結果を授業で 示すことで受講生の異文化理解力を深められるよう指導すると同時に、授 業後の履修生たちのコメントを集約し、山岸・井下・渡辺(1992)が異文 化対処力モデルの鍵とした「アウェアネス」に関連する「カルチュラル・ アウェアネス」機能と、その下位項目にある「自文化(自己)への理解」・ 「非自民族中心主義」・「外国文化への興味」の三つがコメントに現れてい るかを確認し、そこに生じた意識の変化に注目してみた。 4.2 実践概要 対象としたのは第6回から 10 回までの授業である。1回の授業時間は 90 分。第1回の授業でアンケート調査を取り、受講生のもつ中国や中国 人へのイメージと、異文化接触経験があるならば、その具体的な場面を自 由記述の形で調査した。アンケートに示された代表的なステレオタイプイ メージを取り上げ、5回分の授業テーマを設定した。履修登録は 195 名だ ったが実際に受講したのは 185 名前後となった。

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授業の到達目標は、「カルチュラル・アウェアネス」の三つの下位項目 を参考に設定した。つまり、特定のステレオタイプに関する講義を通し、 ①自文化への理解を促すこと、②相手の立場で物事を考えることができる ようになること、③中国文化への興味を引き起こすことの3点である。 毎回の授業の後、受講生に疑問点、意見や感想を自由記述の形で書くよ うに求めた。 4.3 授業の流れ まず、全体の 15 回の授業構成を説明する。授業の最初の5回はガイダ ンスと異文化理解に関する諸理論を講じた。上述した通り、授業の初回で アンケートを取り、調査の結果に応じて5回の授業の内容を決めた。6回 目からは受講生が抱いていたステレオタイプに関連する5回の授業を行 なった。毎回授業後にコメントを文書で求め、その内容を分析した。次の 授業の始め 30 分を「導入」部分とし、前回の授業に関する受講生の代表 的な疑問点や独特なコメントをいくつか取り上げ、それに答えたり受講生 と一緒に考えたりして、他者の視点で物事を考える柔軟性と異文化に対す る寛容性を育むことを狙った。残り5回は受講生が関心を示した内容の講 義をした。 4.4 授業初回のアンケート調査結果 初回で、中国や中国人に対するイメージ、過去の異文化接触体験や具体 的な場面について自由記述の形でアンケート調査を実施した。回答人数は 138 名。 まず、過去に接触体験があるという回答は 116 名で、全体の 80%を超 えていた。具体的な接触の場面で最も多かったのは「観光客との関わり」 で、半数以上を占めていた。「観光客に道を聞かれた」「アルバイトで接し た」「繁華街でよく見かけた」などが挙げられる。 その他の回答として、「海外旅行に行ったことがある」「友人・アルバイ ト先に外国人がいる」「留学したことがある」などが挙げられる。

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「中国や中国人に対するイメージ」という質問項目に対して、「声が大き い」、「ルールを守らない」、「お金持ちが多そう」、「爆買いが好き」、「派手 な色の服が好き」、「観光客が多い」などの観光客関連の回答が多数見られ た。その他「勉強が得意」「受験に熱心」等教育に関する回答や、「キャッ シュレス社会」「食べ残しが多い」「挨拶に対する考え方が違う」「時間にルー ズ」「お金に執着する」といった文化や社会現状に関する回答もあった。 4.5 授業の内容 アンケートでは観光客に由来するステレオタイプ的なイメージがもっと も多く、「声が大きい」・「金持ちが多そう」・「爆買いが好き」・「ルールを 守らない」という4つのステレオタイプに分類できた。さらに「勉強が得 意」、「受験への熱意が違う」というステレオタイプもあり、大学生にとっ て身近な教育分野への関心が見られた。以上の調査結果をもって図1のよ うに5回分の授業テーマを設定した。 図1 実践授業の日付と内容 日付 内容 5 月 1 6 日 おしゃべりの声が大きい文化的な理由 5 月 2 3 日 お金持ちが多い:ビザの緩和措置から見る観光客の増加 6 月 6 日 爆買いについて―理由と現状を知る 6 月 1 3 日 ルールを守らないことについて―もし私が外国へ行ったら 6 月 2 0 日 中国人であれば勉強が得意?-中日教育における比較 5.コメント分析結果及び考察 5.1 コメントのデータ分析 上述した山岸・井下・渡辺(1992)の異文化対処力のモデルの「カルチュ ラル・アウェアネス」の下位三項目に沿ってコメントを分析した。もしも

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コメントの中にこの三つの要素の一つでも感知できたなら「異文化理解に 積極的である」と判断する。もしも自分の属している集団の文化を外部の 視線で見ることができるならば、「自文化(自己)への理解」が感知でき、 自文化への気づきが見られると捉える。また、もしも自分の属している集 団の文化で他の文化の物事を判断していないのであれば、「非自民族中心 主義」が感知でき、「相手の立場で物事を考えることができる」と捉える。 これに「外国文化への興味」を加えた三要素のいずれもが感知できず、さ らに異文化に対して消極的でステレオタイプに拘った考え方が見受けられ れば「異文化理解に消極的」と判断する。 また、これらとは別に、対照データとして当該実施前にも中国や中国人、 中国文化に関する感想や意見を受講生に求めて収集しておいた。 以下の図2は各回のコメント収集数である。 図2 コメント分析データ 回数 事前回 1 2 3 4 5 日付 4 月 2 5 日 5 月 1 6 日 5 月 2 3 日 6 月 6 日 6 月 1 3 日 6 月 2 1 日 回 収 枚 数 139 145 134 127 148 147 有 効 枚 数 66 72 68 54 77 74 積 極 的 35 59 58 46 65 60 消 極 的 31 13 10 8 12 14 1~5回で収集できたのは合計 701 件で、中には無関係な内容もあった ため、有効と見なされたのは 345 件だった。三項目のどれかが入っている 「積極的」と判断したコメントは、合計で 288 件、有効件数の 83.48%を 占めた。三項目がなく、異文化に対して消極的な意見やステレオタイプ 的な考えが観察され、「消極的」と判断されたのは 57 件で、有効件数の 16.52%となった。 授業実施前の対照データでは「積極的」は 52 件で 53.03%、「消極的」 は 31 件で 46.97%を占め、限られたデータ収集ではあるが、この両者の差

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異がステレオタイプを利用した授業の異文化理解力向上への有効性を示し ている。 5.2 文化の氷山モデルから受講生のコメントの変化の分析 文化を説明する時に、よく用いられるのが文化の氷山モデルである。文 化を海を漂う氷山にたとえ、海の上にある部分を「見える文化」、海の下 にある見えない部分を「見えない文化」に分けるモデルである。「見える 文化」は行動や現象などで、「見えない文化」はその背後にある価値観・ 歴史・宗教観などの本質的なものである。「見える文化」を支えているの は 「見えない文化」であり、 「見えない文化」まで見えてくるということ は、異文化への理解が深いこと示すと言えよう。 5.2.1 実施前のコメント分析 当該授業実施前の対照データの中で、多数の行動や現象に関するコメン トが見られた。 (1) 中国に行った時に中国人は支払いをほとんど携帯で済ませていて 驚いた。 (2) 日本では主流である SNS が中国であまり使われていない。 (3) 観光客を見ると、一度に大量の買い物をしている気がする。 (4) 中国の箸は日本より長く、縦に置くと聞いたことがある。 (5) 中国は年齢を数え年で数える。 (6) 日本は基本毎日お風呂に入るけど、中国は毎日は入らないと聞い たことがある。 (7) トイレに仕切りがないというのも文化でしょうか? (8) 日本人は時間に少し余裕を持ち行動するが中国人は 20 分は遅れ てくるイメージが強い。 これらのコメントは、行動や現象だけに触れ、背後にある価値観や理由

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の分析は含まれていない。また、コメントの情報源はメディアや友達、 街中で見かけた観光客、海外旅行で観察したことなど深い交流が伴わな い一方的な教えや観察のものが多い。Adler(1975)の「異文化の適応の 五段階」の中の表面的な文化しか見えない第一段階の「異文化との接触」 に該当すると言えよう。 5.2.2 当該授業実施後のコメント分析 当該授業実施後のデータでは、現象だけのコメントがほぼなくなった。 考えられる理由として、当該授業で受講生が抱いていたステレオタイプを 分析し、背後にある理由や価値観を提示し、受講生に考えさせた結果、本 来自分がもっていたステレオタイプや気づいた現象の背後にある理由につ いて考え始め、それが異文化に対する再発見と柔軟な考え方がもつ重要性 に気づくきっかけになったと考えられる。 (9) 中国人に対する私のイメージの一つで、「声が大きい」というも のがあった。私は「なぜそうなのか?」という疑問を持たずに今 まで生きてきたが、昨年、中国語の講義を受け、その中で中国語 には声調というものがあり、それをはっきりさせるため話し声が 大きくなるのだと学んだ。私はそれを知り、とても納得したし、 他国の文化を学ぶ大切さを身を持って気づかされた。 (10) 日本人の「つまらない物ですが」について思ったことは、なぜ、 つまらない物を人に渡すのか、と大人になるにつれ違和感を少し 覚えてきました。 (11) 今まで意識していなかったが、たしかに私たちの生活は文化に基 づいているものだと思いました。他の国とのスタイルの違いに対 して感心したり、否定的な感情を抱くこともあるが、それで終わ るのではなく、その国の文化などの背景について学ぶことで文化 間の平等意識が高まると思いました。 (12) 先生が講義中に言っていた「他国のルール守れますか」という話

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が印象に残りました。海外に行ったことがなかったのでこんなふ うに考えたことはありませんでした。日本にいる中国人の方が、 日本の習慣やルールを理解しているとも限らないのに日本のルー ルを押し付けて悪く言うのは良くないことだと思いました。 (9)~(12)は当該授業実施後のコメントの例である。(9)~(10) のように、どうしてそのようなステレオタイプをもっているかを考えるコ メントが多くなった。(11)と(12)には、非自文化中心主義の考え方に 気づき、他人の立場で物事を考える柔軟な考え方ができるようになったこ とを示している。 行動や現象の背後にある理由を授業で理解し、異文化の人々の行動に理 解を示した「積極的」なコメントもあるが、一方、異文化衝突を不可避と 捉えるコメントも少なからず見られた。 (13) 自分の生まれ育った環境と違う環境(旅行など)に行った時に、 その国の文化や習慣に合わせて楽しむべきなのだ。集団で乱すよ うな観光客はほんとうによくないと思います。日本に来る観光客 でも、道をふさいだり、周りの日本人がしないような行動を取る のは迷惑行為だと思います。 (14) 中国人が観光でビザを使い、日本や他の国に行き、爆買や国の良 さを認知してもらい、経済が回るメリットはあるが、観光客のマ ナーが悪く、観光地の汚れなどが目立ち、トラブルが起きるデメ リットがあるので、トラブルを起こした観光客は、ビザを発行さ せない方が国の為になると思いました。 (13)と(14)のコメントから、授業はあくまでもステレオタイプを例 として使って異文化理解を考えることで、だれかを批判することではない ことを、事前に受講生に確実に理解してもらう必要があることに気づいた。 内容分析の結論として、コメントの内容を氷山モデルの角度から観察し

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た結果、多数の受講生は物事を行動や現象の「見える文化」レベルで捉え るだけでなく、その背後にある理由を考え始めたことが観察された。異文 化理解力の向上に効果が見られると判断でき、データでの分析の結果と一 致するが、授業の目的と手段を予め受講生に確実に示す必要があることが 反省点として挙げられる。 6.おわりに 本論は異文化理解授業の実践結果であり、受講生がもっているステレオ タイプを授業の内容として利用することが異文化理解力の向上に効果があ るかどうかを論考した。五回実施したステレオタイプを利用した異文化理 解授業の結果、一部効果が見られない受講生もいたが、コメントの内容か ら多数の受講生に異文化に対する気づきから本質への関心という思考転換 が観察された。受講生の異文化理解力の向上に効果があったと言えよう。 現状の異文化理解授業は知識重視の場合が多いが、今論考を経て、受講 生の異文化理解力を高める上で一番重要なのは、異文化に関する知識では なく、受講生に異文化衝突を経験させ、今まで受講生がもっていた価値観 をもう一度考え直させることであると感じた。どの国の文化にも多様性が あり、教師自身がもっている文化に関する知見もその多様な文化の中の一 部に過ぎない。知識だけを教えていては、また新しいステレオタイプを形 成させてしまう可能性は否めない。 受講人数が多く、代表的なコメントしか授業で取り上げることができな くて、一人一人の疑問に答えたり全てのコメントにフィードバックできな かったことを残念に思う。今後は少人数の授業でこのような取り組みを実 施してみたい。また、コメント評価にはどうしても主観が入ってしまい、 どうすればより客観的に分析できるかを今後の課題としたい。このような 取り組みが更に有益なものになるように、今後もさらなる工夫や検討を続 けていきたいと思う。

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参考文献・資料 山岸みどり,井下 理,渡辺文夫(1992)「『異文化間能力』測定の試み」,『現代 のエスプリ』299, 201-214. 渡辺文夫(2002)『セレクション社会心理学22 異文化と関わる心理学』,東京:サ イエンス社,59-61. 川那部和恵(2006)「異文化理解教育における実践的アプローチの可能性」,『教 育実践総合センター研究紀要』15, 53-60. 溝上由紀,柴田 昇(2009)「『異文化理解』と外国語教育―教養教育の一形態とし て―」,『愛知江南短期大学紀要』38, 31-42. 籔田由己子(2015)「グローバル人材とグローバルマインド育成に関する一考 察」,『清泉女学院短期大学研究紀要』34,53-62. 浜口美由紀(2000)「異文化間に生じるイメージ・ギャップに関する一考察──ス テレオタイプのスペイン像を中心として」,『長崎大学留学生センター紀要』 8,83-100. 渡辺文夫(1995)『異文化接触の心理学 : その現状と理論』,東京:川島書店,187. Barna,L. M.(1988) Stumbling blocks in intercultural communication. Samovar,

L.A. & Porter,R.E. Intercultural communication:A reader,337-346. California:Wadsworth Publishing.

Adler,P. S.(1975). The transitional experience:An alternative view of culture shock. Journal of Humanistic Psychology,15(4),13–23.

参照

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