体 外 衝 撃 波 結 石 破 砕 術 と内視 鏡 的 乳 頭 切 開 術 に よ り治 癒
せ しめ た胆 嚢 分 岐 異 常 を呈 したMirizzi症
候 群 の 一例
岡 山中央病 院 内科
高 井
研 一,国
富
三 絵,大
田
祥 子
岡 山中央病 院 外科
松 岡
順 治,黒
瀬
匡 雄,小
島
一 志
(平成8年3月19日
受稿)
Key words: Mirizzi症 候 群, ESWL,
EST
緒 言 胆 嚢 頚 部 や 胆 嚢 管 に 嵌 頓 した 結 石 に よ り総 肝 管 が 狭 窄 し胆 汁 流 出 障 害 を 来 す 病 態 は, 1948年 Mirizziが 報 告 し1)以来 一 般 にMirizzi症 候 群 と 呼 ば れ て い る.そ の 治 療 は 外 科 的 手 術 が 基 本 で あ る が,最 近 で は体 外 衝 撃 波 結 石 破 砕 術(以 下 ESWLと 略 す)と 内 視 鏡 的 治 療 の 組 み 合 わせ に よ り結 石 の 除 去 が 可 能 で あ っ た 症 例 の 報 告 が 見 られ る様 に な っ た2)3).今 回我 々 は 腹 痛,発 熱 と 黄 疸 を主 訴 と し て 来 院 し た 高 齢 者 に 対 し て 抗 生 剤 に よ る治 療 を行 い一 旦 は症 状 の 改 善 をみ たが, 再 度 同 様 の 症 状 に て 来 院 し た た め,超 音 波 下 で 確 認 さ れ た 胆 嚢 管 内結 石 と思 わ れ た 結 石 に 対 し てESWLを 施 行 し た.結 石 は 破 砕 さ れ そ の 時 点 で の 内視 鏡 的 逆 行 性 胆 管 造 影(以 下ERCと 略 す)に て 下 部 肝 管 に分 岐 し た 胆 嚢 管 内 に 嵌 頓 し た結 石 に よ るMirizzi症 候 群 と診 断 し た.幸 い 内視 鏡 的 乳 頭 切 開 術(以 下ESTと 略 す)に よ り結 石 除 去 に成 功 し た の で 報 告 す る. 症 例 症 例: 83歳,男 性 主 訴:腹 痛,発 熱 と黄 胆 家 族 歴:特 記 す べ き事 項 な し 既 往 歴: 64歳 白 内 障 手 術, 66歳 脳 内 出 血 83歳 前 立 線 全 摘 術 初 回 入 院 現 病 歴:平 成7年6月 腹 痛,嘔 吐 並 に39.3℃ の 発 熱 を来 し近 医受 診 し た.腹 部 所 見 に 乏 し く 検 尿 異 常 に て尿 路 感 染 を疑 わ れ た. 2日 後 血 液 検 査 に て 肝 機 能 異 常 が 見 られ 腹 部 超 音 波 で 総 胆 管 と思 わ れ る部 位 に 直 径2.2cm大 の 結 石 を認 め た た め 総 胆 管 結 石 症 に よ る胆 道 感 染 と考 え 抗 生 剤 の 投 与 を うけ た.翌 日 よ り解 熱 し,黄 疸 も消 褪 し た た め 非 手 術 的 処 置 を希 望 して 当 院 紹 介 と な っ た. 入 院 時 現 症:体 格 中 等 度,血 圧120/64mmHg 体 温36.4℃,全 身状 態 は 比 較 的 良 好 で あ っ た. 腹 部 所 見 に て圧 痛 な く,下 腹 部 に 前 立 腺 摘 出術 の 手 術 痕 を認 め た. 入 院 時 検 査 所 見:表1に 示 し た.一 般 検 査 で は 白血 球 増 多 な く, CRPも 正 常 で あ っ た.肝 機 能 検 査 に て 軽 度 黄 疸 と γ-GTPの 上 昇 を認 め る 以 外 著 変 な か っ た. 入 院 後 経 過:入 院 後 腹 痛,発 熱 な く入 院 後3 日 目 にERCを 施 行 した(図1).総 肝 管 は1.5 cmに 拡 張 し左 右 の 肝 内 胆 管 の 拡 張 も見 ら れ た が 明 らか な結 石 陰 影 は 認 め な か っ た.腹 部 超 音 波 に て 直 経2.3cm×1.2cm大 の 結 石 陰 影 を 胆 嚢 管 と 思 わ れ る部 位 に 認 め た(図2). CTで は 明 ら か な結 石 影 は確 認 出 来 な か っ た.以 上 よ り胆 道 149
150 高 井 研 一:他5名
系 に結 石 が 存在 しその為 の 炎症 と考 え たが,自
覚 症状 の 消失,検 査 所見 の改 善,患 者本 人 の強
い希 望 もあ り退 院,経 過 観 察 とした.
表1 入院時検査所見
2回 目入 院 現 症 歴:退 院 後 著 変 は な か っ た が 平 成7年7 月 末 に 腹 痛 を 自覚,発 熱,黄 疸 も 出 現 し た た め 8月1日 再 入 院 と な っ た. 入 院 時 現 症:血 圧120/68mmHg,体 温37.8℃, 軽 度 黄 疸 を認 め る.腹 部 は 平 担 で 圧 痛 は 認 め な か っ た. 入 院 時 検 査 所 見:表1に 示 し た.一 般 検 査 に て 白血 球 増 多, CRP 1.8mg/dlと 炎 症 所 見 を認 め, GOT, GPTの 上 昇, ALP, LAP, γ-GTPの胆 道 系 酵 素 の上 昇,そ し て 黄 疸 が 見 られ た. 図1 初 回入 院 時 のERC像 総 肝 管,左 右 の肝 内 胆管 の拡 張 が 認 め られ る。よ く見 れ ば腫 大 した胆 嚢 管 が続 み とれ る。結 石 影 は認 め ら れ ない 。
入院 後経 過:入 院後 抗生 剤 の投 与 にて 炎症 を
お さえた.腹 部 超 音波 に よて前 回入 院時 と同様
に 胆 嚢 管 と思 わ れ る 部 位 に 直 径2cm弱 の 結 石 陰 影 を 認 め た.入 院 後3日 目 に はGOT 43I.U, GPT 64I.U, γ-GTP 198I.U,ビ リル ビ ン1.0 mg/dlと 肝 機 能 の 改 善 と黄 疸 の 消 失 をみ た.炎 症 所 見 の 消 失 を み た段 階 で シ ー メ ン ス 社 製 リ トス ター プ ラ ス に よ るESWLを 超 音 波 下 に 施 行 し た(合 計2回,総 衝 撃 波 数7000発).超 音 波 下 で 破 砕 確 認 後, ESTを 行 っ た.図3に 摘 出 し た ビ 系 結 石 を示 し た.そ の 時 のERC像 を 図4に 示 し た.総 肝 管 は 拡 張 し,胆 嚢 管 は 総 肝 管 下 部 に 分 岐 し て い た.胆 嚢 は 造 影 さ れ た が,胆 嚢 内 に は結 石 は 認 め な か っ た. EST後 は 合 併 症 も な く 順 調 に 経 過 し,入 院 後22日 目 に 退 院 した.現 在 ま で 再 発 は 見 ら れ て い な い. 図2 初 回 入院 時 の 腹部 超 音 波 像 拡 張 した胆 嚢 管 内 に2.3cm×1.3cm大 の 結石 陰影 が 認 め られ る。 考 察 Mirizzi症 候 群 は 胆 嚢 頚 部 また は胆 嚢 管 に嵌 頓 した 結 石 及 び そ れ に 伴 な う炎 症 の た め,総 肝 管 に機 械 的 な 狭 窄 な い しは 閉 塞 を来 す 病 態 と定 義 さ れ て い る. 1965年Clemettら は4)本 症 候 群 の 成 立 ・進 展 過 程 を① 胆 嚢 管 が 総 肝 管 と並 走 す る. ② 胆嚢 管 な い し は 胆 嚢 頚 部 へ の 結 石 の 嵌 頓,③
152 高 井 研 一:他5名 炎 症 や 結 石 自体 に よ る総 肝 管 の 閉 塞,④ 繰 り返 す 胆 管 炎 そ して 肝 硬 変 へ の 進 展 の4項 目 を あ げ て い る.我 々 の 症 例 は ほ ぼ 前 記4項 目 を満 た し て い る と思 わ れ る.当 症 例 の 胆 嚢 管 は 下 部 総 肝 管 よ り分 岐 して い る が,一 般 に は 胆 嚢 管 分 岐 異 常 は2∼3%と い わ れ,そ の う ち下 部 分 岐 異 常 は43%位 と い わ れ て い る5).我 々 の 症 例 も下 部 分 岐 型 で あ り胆 石 成 因 との 関 連 を示 唆 す る報 告6)も あ り興 味 深 い.一 方 最 近 で は 各 種 画 像 診 断 の 進 歩 に よ り初 回 発 作 時 に確 認 が つ き胆 管 炎 を く り 返 す 症 例 は稀 と な っ て き て い る し肝 硬 変 ま で 呈 す る症 例 は ま ず 認 め ら れ な く な っ た.そ の た め 最 近 で はMirizzi症 候 群 とい うよ りMirizzi sign
と で も称 す る 方 が よ い との 意 見 も あ る7)8). 図3 EST時 の乳 頭 部 内視 鏡 像 摘 出 した ビ リル ビ ン系 結 石 が 認 め られ る。 図4 2回 目入 院 時 のERC像 総 肝 管 の 拡 張 と,総 肝 管 下 部 に分 岐 した胆 嚢 管 が認 め られ る。 胆 嚢 に は 結石 は認 め られ ない 。
さて治療 で あ るが,外 科 手術 が 基本 といわ れ
て い る.し か し近年 の 内視 鏡,結 石 破 砕機 器 の
進 歩 は手術 治療 の種 々 の 問題 点の解 決 に成 果 を
あ げ て い る. Martinら2)は 経 乳 頭 的 胆 嚢 ドレナ ー ジ チ ュ ー ブ の 挿 入 及 びESWLに よ り本 症 候 群 を治 癒 しえ て い る.本 邦 に お い て 坂 本 ら3)は我 々 と よ く似 た症 例 にESWLとESTを 併 用 し て 結 石 除 去 に 成 功 した と報 告 してい る.元 来ESWL は コ レ ス テ ロー ル 系 石 に 破 砕 効 果 が よ い と い わ れ て い るが,本 例 の ご と く色 素 石 で あ っ て も破 砕 さ れ る こ と を 今 ま で に 我 々 は 度 々 経 験 して き て い る.そ の た め 総 胆 管 結 石 症 に 対 して は 石 の 性 状 に か か わ り な く, ESWLを 多 くの 例 で 第 一 選 択 と し て き た.破 砕 さ れ た石 はESTに よ り 容 易 に 摘 出 除 去 で き る ため,高 齢 者 や,全 身状 態 の 悪 い 手 術 困 難 例 に 対 し て有 効 な 方 法 と考 え られ る.三 管 合 流 部 嵌 頓 結 石 や 胆 嚢 総 肝 管 内 瘻 を も包 括 した 広 義 のMirizzi症 候 群 の 治 療 に 対 し てESWLを 第 一 選 択 と す る 非 手 術 的 治 療 法 を行 う ケ ー スが 今 後 と も存 在 す る と考 え られ る. 結 論 胆 嚢 管 に 嵌 頓 し た結 石 に よ り腹 痛,発 熱 と黄 疸 を 来 し たMirizzi症 候 群 に 対 し てESWLと ESTを 施 行,結 石 を摘 出 除 去 し た.非 侵 襲 的 で 時 間 的 に も経 済 的 に も負 担 の 軽 いESWL+EST 療 法 はMirizzi症 候 群 に ま ず 試 み ら れ て よ い 非 手 術 的 治 療 と考 え る.
文
献
1) Mirizzi PL: Sindrome del conducto hepatico.
J Int Chir (1948) 8, 731-777.
2) Martin DF Tweedle DEF and Rao PN: Endoscopic gallbladder catheterisation
and extracorporeal
shockwave lithotripsy in the management of Mirizzi's Syndrome. Endoscopy
(1988) 20, 321-322.
3) 坂 本 龍,徳 島 き子,黒 崎 雅 之,小 林 史 枝,池 田 隆 明,戸塚 慎 一,稲 葉 博 之,小 松 達 司,進 藤 仁,宮 川 八平,佐 藤 千 史: ESTとESWLに て 治 療 し え たMirizzi症 候 群 の1例.
Gastroenterological
Endoscopy (1995) 37, 2517-2521.
4) Clemett AR: The roentgen features of Mirizzi's Syndrome. Am J Roentgenol Radium Ther Nucl
Med (1965) 94, 480-483.
5) 野 村 俊 之,多 田 秀 樹,西 原 徳 文,安 達 岳 似,神 本 信 介,松 本 太 一 三,安 住 治 彦,塩 崎 道 明,戸 田 勝 典,霧 野 良 一,竹 田 喜 信,大 柴 三 郎:胆 嚢 管 分 岐 異 常 の 検 討.胆 道(1994) 8, 3-8. 6) 松 田 徹,山 口 尚,深 瀬 和 利:下 位 胆 の う管 症 の 検 討.胆 道(1987) 1, 111-116. 7) 藤 原 史 郎,岡 本 英 三,桑 田 圭 司,豊 坂 昭 弘,大 橋 秀 一,飛 田 忠 之,鈴 木 栄 太 郎,山 中 若 樹,山 崎 元,藤 元 治 朗; Mirizzi症 候 群12例 の 検 討.胆 と 膵(1982) 3, 899-904. 8) 大 藤 正 雄,高 沢 五 郎:胆 の う癌 特 に 早 期 胆 の う癌 の 臨 床,日 本 消 化 器 病 学 会 誌(1969) 66, 146.154 高 井 研 一:他5名
A case of Mirizzi's
syndrome
with abnormal
branched
cystic duct managed
by extracorporeal
shock wave lithotripsy
and endoscopic
sphincterotomy
Kenichi
TAKAI, Mie KUNITOMI, Sachiko
OHTA,
Junji
MATSUOKA, Masao KUROSE and Kazushi
KOJIMA
Okayama Central Hospital 2-18-19
Hokancho,
Okayama 700, Japan
We report a case of Mirizzi's syndrome managed by extracorporeal shock wave lithotripsy and endoscopic sphincterotomy. An 84-year-old man who was suspected of choledocholithiasis but preferred non surgical treatment was transfered to our hospital. The stone impacted in the
dilated cystic duct was removed by endoscopic sphincterotomy after fragmentation by extracorporeal shock wave lithotripsy. Endoscopic retrograde cholangiography revealed that the dilated cystic duct branched into the lower common hepatic duct. Long-term results should be assessed carefully, but extracorporeal shock wave lithotripsy in combination with endo scopic sphincterotomy for Mirizzi's syndrome should be actively attempted because it is a non-invasive and effective technique.